説明

水洗便器用薬液供給装置及び水洗便器用薬液供給方法

【課題】複数の水洗便器を有する施設において、水洗便器毎に配設する必要のないものでありながら、薬液を無駄なく効率的に供給する。
【解決手段】 小便器100に直接連結される枝管120ではなく、枝管120よりも上流側の水供給本管110中に薬液混合管部10を配設し、この薬液混合管部10に薬液を供給する構成である。従って、各枝管120を通過する洗浄用の水中には、水供給本管110を流れる間に所定量の薬液が混合されていることになるため、水洗便器用薬液供給装置1を小便器100毎に設ける必要のあった従来の技術と比較すると、構造が簡易になり、メンテナンス作業も容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗便器用薬液供給装置及び水洗便器用薬液供給方法に関し、特に、複数の水洗便器が設けられているトイレに配備するのに適した水洗便器用薬液供給装置及び水洗便器用薬液供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に水洗便器では、消毒、消臭、洗浄等の目的で様々な薬剤による処理が行われている。この薬剤処理の方法は水洗便器の型によっても異なるが、例えば、薬剤を便器内や洗浄水貯水タンク内に直接投入するもの、薬剤を洗浄水貯水タンクの給水部位に置くものなどがある。しかしながら、このような方法では、薬剤交換作業が頻繁であったり、不経済であったりという種々の問題があり、これらの問題は、使用回数の多い公衆便所においてはとりわけ大きいものがあった。
【0003】
そこで、従来、水洗便器に洗浄用の水を供給する配管と組み合わせて使用され、水洗便器に水が流れる度に該水洗便器に消毒、消臭、洗浄等を目的とした必要量の薬液を自動的に供給する水洗便器用薬液供給装置が知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特公昭49−21541号公報
【特許文献2】特開2003−96873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の水洗便器用薬液供給装置は、洗浄用の水を供給する水供給本管から枝分かれされ、各水洗便器に直接連結される枝管に配設されるものである。従って、上記水洗便器用薬液供給装置は、枝管毎に、すなわち、水洗便器の設置数に応じた数だけ必要となる。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、複数の水洗便器を有する施設において、水洗便器毎に配設する必要のない水洗便器用薬液供給装置及び水洗便器用薬液供給方法を提供することを課題とする。また、本発明は、水洗便器毎に配設する必要のないものでありながら、薬液を無駄なく効率的に供給できると共に、薬液濃度をほぼ一定に保つことができる水洗便器用薬液供給装置及び水洗便器用薬液供給方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明では、水洗便器に供給される洗浄用の水中に薬液を供給する水洗便器用薬液供給装置であって、
各水洗便器に枝管を介して連結される水供給本管中、前記枝管よりも上流側に介在配設される薬液混合管部と、
前記薬液混合管部に接続される薬液吐出管を介して薬液を供給する薬液供給機構と、
所定のタイミングで所定量の薬液を供給するように前記薬液供給機構の駆動を制御する制御部と
を有することを特徴とする水洗便器用薬液供給装置を提供する。
請求項2記載の発明では、前記薬液供給機構は、薬液流入管を介して薬液タンクに接続され、前記制御部により駆動制御されるポンプを備えてなることを特徴とする請求項1記載の水洗便器用薬液供給装置を提供する。
請求項3記載の発明では、前記制御部は、前記水供給本管中に介在配設した流量センサに電気的に接続され、流量センサにより水流発生時の電気信号を受信してから、所定時間経過後に所定時間のみ、前記ポンプを駆動制御するタイミング制御部が設定されていることを特徴とする請求項2記載の水洗便器用薬液供給装置を提供する。
請求項4記載の発明では、前記制御部は、さらに、前記流量センサにより検知される流量に応じた量の薬液を供給するように前記ポンプを駆動制御する出力制御部が設定されていることを特徴とする請求項3記載の水洗便器用薬液供給装置を提供する。
請求項5記載の発明では、前記流量センサが、前記薬液混合管部に付設されていることを特徴とする請求項3又は4記載の水洗便器用薬液供給装置を提供する。
請求項6記載の発明では、前記水供給本管には前記枝管が複数設けられ、その各枝管に前記各水洗便器が連結されており、前記薬液混合管部は、最も上流に位置する枝管よりも上流側において前記水供給本管に介在配設されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の水洗便器用薬液供給装置を提供する。
請求項7記載の発明では、水洗便器に供給される洗浄用の水中に薬液を供給する水洗便器用薬液供給方法であって、
各水洗便器に枝管を介して連結される水供給本管中に介在配設した流量センサにより、水流発生時の電気信号を受信してから、所定時間経過後に所定時間のみ薬液供給機構を駆動させ、前記枝管よりも上流側に薬液を供給することを特徴とする水洗便器用薬液供給方法を提供する。
請求項8記載の発明では、さらに、前記流量センサにより検知される流量に応じた量の薬液を供給することを特徴とする請求項7記載の水洗便器用薬液供給方法を提供する。
請求項9記載の発明では、前記水供給本管には前記枝管が複数設けられ、その各枝管に前記各水洗便器が連結されており、最も上流に位置する枝管よりも上流側において薬液を供給することを特徴とする請求項7又は8記載の水洗便器用薬液供給方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水洗便器に直接連結される枝管ではなく、枝管よりも上流側の水供給本管中に薬液混合管部を配設し、この薬液混合管部に薬液を供給する構成である。従って、各枝管を通過する洗浄用の水中には、該各枝管に至る前の段階で既に所定量の薬液が混合されていることになるため、水洗便器用薬液供給装置を水洗便器毎に設ける必要のあった従来の技術と比較すると、構造が簡易になり、メンテナンス作業も容易となる。また、薬液供給機構からは、制御部の駆動制御により、水供給本管に、所定のタイミングで所定量の薬液を供給する構成であるため、無駄なく効率的に薬液を供給できると共に、水供給本管を流れる水量に応じて薬液を供給することができる。
【0008】
特に、水供給本管中に介在配設した流量センサを配設し、水洗便器を使用することによって水流が発生した際の電気信号を受信してから、所定時間経過後に所定時間のみ薬液供給機構を駆動させるように制御する構成とすることが好ましい。薬液は、水洗便器に水が流れ始めてから流れ終わるまでの間、常時所定濃度で水中に含ませることも可能であるが、水が流れ始めてしばらくした後に所定濃度の薬液が供給され始め、水の流れが終了した時点でトラップに溜まるように供給する方が効率的で無駄がない。従って、上記のように制御することで、効率よく薬液を供給できる。
【0009】
また、流量センサにより検知される流量に応じて薬液供給機構の駆動を制御すると、流量に応じた薬液を混入させることができ、複数台の水洗便器のうち一部しか使用されない場合であっても、全てがほぼ同時に使用された場合であっても、薬液濃度をほぼ安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態を説明する。図1は、本実施形態の水洗便器用薬液供給装置1を適用したトイレ施設の概略構成を示す図である。このトイレ施設は、複数台の小便器100が設置されており、通常、壁面等に沿って、あるいは、壁面の裏側等に洗浄用の水を供給する水供給本管110が配設されている。水供給本管110には、複数の枝管120が接続されており、各小便器100は、その上部に設けた配管接続部100aをこれらの各枝管120に連結して配設されている。また、各小便器100は、それらに設けたフラッシュバルブ(図示せず)が手動により、あるいは、光センサによって人の離接を検知するなどして電動により開閉されると、水供給本管110及び対応する枝管120を通じて水が流れるようになっている。
【0011】
水洗便器用薬液供給装置1は、薬液混合管部10、薬液供給機構20及び制御部30を有して構成される。薬液混合管部10は、最も上流側に位置する枝管120よりもさらに上流側において、水供給本管110に介在配設され、配設後は、水供給本管110の一部を構成する。薬液混合管部10は、図2に示したように、両端に水供給本管110との接続口11が設けられており、各接続口11を水供給本管110に接続させて配設される。薬液混合管部10の側面には、図2(b)に示したように、吐出管接続口12が開設されており、該吐出管接続口12に薬液吐出管21が接続される。また、吐出管接続口12の開口位置よりも、水の流れ方向の上流側において、流量センサ22が設けられている。流量センサ22の構成は任意であるが、本実施形態では、図2(c)に示したように、水の流れを受けて回転するロータ22aと、該ロータ22aと共に回転する永久磁石22bと、その回転数を検知するホールICなどの磁気センサ22cとを備え、ホルダ22dに収容されて、薬液混合管部10に取り付けられている。磁気センサ22cの出力は、制御部30にケーブル23を介して送信される。
【0012】
薬液供給機構20は、上記した薬液混合管部10に一端が接続される薬液吐出管21と、薬液混合管部10に取り付けられる流量センサ22と、薬液吐出管21の他端が接続されるポンプ26と、一端が該ポンプ26に接続され、他端が、薬液タンク25に接続される薬液流入管24とを有して構成される。ポンプ26は、制御部30から送られてくる電気信号により駆動し、薬液流入管24を介して薬液タンク25から薬液を吸い上げ、薬液吐出管21に薬液を送出する。なお、薬液供給機構20は、小便器100の使用者からは見えないように、例えば、壁面の裏側に配置される。
【0013】
制御部30は、流量センサ22からの電気信号を受信し、ポンプ26を所定のタイミングで駆動させるタイミング制御部を有する。具体的には、流量センサ22により、薬液混合管部10を含む水供給本管110において、水が流れ始めたことを検知したならば、制御部30に設けたタイマにより時間を計測し、タイミング制御部が所定時間経過後にポンプ26を所定時間のみ駆動させるように制御する。いずれか少なくとも一つの小便器100を使用してフラッシュバルブが開くと水が流れ始めるが、流れ始めから流れ終わりまでの時間は、水圧によって異なるため、予め、トイレ施設毎に流れ始めから流れ終わりまでの全時間を計測しておき、流れ終わる前の所定時間のみ薬液を投入するようにタイマに時間設定する。
【0014】
また、制御部30は、流量センサ22によって検知された流量に従って出力を調整する出力制御部を備えている。これにより、薬液混合管部10を含む水供給本管110を流れる水量に応じて、薬液の供給量が増減され、薬液濃度が水量の増減に拘わらずほぼ一定に保たれる。
【0015】
本実施形態によれば、まず、いずれか少なくとも一つの小便器100が使用されてフラッシュバルブが開き、薬液混合管部10を含む水供給本管110内で水流が発生すると、流量センサ22の電気信号が変化するため、制御部30は、それにより水流が発生したタイミングを検知する。制御部30に設定したタイミング制御部は、予めタイマに設定された時間に従い、水流発生時から所定時間経過後、ポンプ26を駆動させる電気信号を送り、所定時間駆動させた後、ポンプ26の駆動を停止させる。例えば、水が流れ始めた時(水流発生時)から流れ終わりまでの時間を20秒とした場合、タイミング制御部は、タイマに設定した時間に応じて、例えば、水流発生時から10秒経過した後にポンプ26を駆動させ、その10秒後に駆動を停止する。これにより、小便器100に水が流れなくなっても、トラップに薬液が溜まることになるため、無駄なく効率的に薬液を供給でき、殺菌、滅菌、静菌、消臭等の各効果を高めることができる。
【0016】
一方、使用される小便器100の数によって、水供給本管110(薬液混合管部10を含む)内を流れる水の流量は変化する。水の流量の変化は、流量センサ22の電気信号の変化として検知されるため、制御部30に設定した出力制御部は、かかる電気信号に応じてポンプ26の駆動出力を調整する。これにより、より大量の水が流れる場合には、より多くの薬液がポンプ26の駆動により、薬液タンク25から吸い上げられて、薬液流入管24及び薬液吐出管21へ送られ、薬液混合管部10を介してその中を流れる水中に混入される。一方、水供給本管110内を流れる水がより少量の場合には、ポンプ26の駆動出力が抑制され、より少ない量の薬液が薬液混合管部10を介して混入されることになる。従って、本実施形態によれば、小便器100の使用数の変化により、水供給本管110内を流れる水の流量が変化しても、小便器100を流れる際の薬液濃度はほぼ一定に制御できる。
【0017】
また、本実施形態の水洗便器用薬液供給装置1のメンテナンス作業を行う場合、例えば、薬液の補給等を行う場合、従来の各小便器毎に配設されるものと異なり、1カ所のみで作業を行うことができるため、メンテナンス作業の省力化、コストの低減効果も大きい。
【0018】
なお、上記した説明では、小便器100に適用した場合を例に挙げているが、複数の大便器(和式、洋式のいずれも含む)が設置される公衆トイレ等の施設においても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態に係る水洗便器用薬液供給装置を適用したトイレ施設を示す概念図である。
【図2】図2は、上記水洗便器用薬液供給装置で用いた薬液混合管部及び流量センサの構造を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は(b)のA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 水洗便器用薬液供給装置
10 薬液混合管部
20 薬液供給機構
21 薬液吐出管
22 流量センサ
26 ポンプ
24 薬液流入管
25 薬液タンク
30 制御部
100 小便器
110 水供給本管
120 枝管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗便器に供給される洗浄用の水中に薬液を供給する水洗便器用薬液供給装置であって、
各水洗便器に枝管を介して連結される水供給本管中、前記枝管よりも上流側に介在配設される薬液混合管部と、
前記薬液混合管部に接続される薬液吐出管を介して薬液を供給する薬液供給機構と、
所定のタイミングで所定量の薬液を供給するように前記薬液供給機構の駆動を制御する制御部と
を有することを特徴とする水洗便器用薬液供給装置。
【請求項2】
前記薬液供給機構は、薬液流入管を介して薬液タンクに接続され、前記制御部により駆動制御されるポンプを備えてなることを特徴とする請求項1記載の水洗便器用薬液供給装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記水供給本管中に介在配設した流量センサに電気的に接続され、流量センサにより水流発生時の電気信号を受信してから、所定時間経過後に所定時間のみ、前記ポンプを駆動制御するタイミング制御部が設定されていることを特徴とする請求項2記載の水洗便器用薬液供給装置。
【請求項4】
前記制御部は、さらに、前記流量センサにより検知される流量に応じた量の薬液を供給するように前記ポンプを駆動制御する出力制御部が設定されていることを特徴とする請求項3記載の水洗便器用薬液供給装置。
【請求項5】
前記流量センサが、前記薬液混合管部に付設されていることを特徴とする請求項3又は4記載の水洗便器用薬液供給装置。
【請求項6】
前記水供給本管には前記枝管が複数設けられ、その各枝管に前記各水洗便器が連結されており、前記薬液混合管部は、最も上流に位置する枝管よりも上流側において前記水供給本管に介在配設されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の水洗便器用薬液供給装置。
【請求項7】
水洗便器に供給される洗浄用の水中に薬液を供給する水洗便器用薬液供給方法であって、
各水洗便器に枝管を介して連結される水供給本管中に介在配設した流量センサにより、水流発生時の電気信号を受信してから、所定時間経過後に所定時間のみ薬液供給機構を駆動させ、前記枝管よりも上流側に薬液を供給することを特徴とする水洗便器用薬液供給方法。
【請求項8】
さらに、前記流量センサにより検知される流量に応じた量の薬液を供給することを特徴とする請求項7記載の水洗便器用薬液供給方法。
【請求項9】
前記水供給本管には前記枝管が複数設けられ、その各枝管に前記各水洗便器が連結されており、最も上流に位置する枝管よりも上流側において薬液を供給することを特徴とする請求項7又は8記載の水洗便器用薬液供給方法。

【図1】
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【図2】
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