説明

水洗便器装置

【課題】 水洗便器の取付部の平面度がずれていても、トラップ部の収容されたケース本体を水密性を確保しながら固定できる水洗便器装置を提供すること。
【解決手段】 内側のボウル部1から延びる排水路2に、自由端とした上下に反転回動する後端が外部排水管5に連通するトラップ部3を内部に収容したケース本体6の配設される水洗便器4である。水洗便器4の下方開口に一体形成され周設された取付部41に、前記ケース本体6が一体形成された鍔部61を介して接合固定されるとともに、同鍔部61が水洗便器4の外部排水管5のフランジ51と固定される水洗便器装置である。水洗便器4の取付部41とケース本体6の鍔部61とを、少なくとも上下方向に変位可能とする可撓性を有した固定具8を介し固定させて成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水洗便器装置に関し、特に、内側のボウル部から延びる排水路に、自由端とした上下に反転回動する後端が外部排水管に連通するトラップ部が内部に収容されたケース本体の配設される水洗便器を有して成る水洗便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような水洗便器装置として、従来から、例えば特開2002−173971号公報として開示された、図3に示すような、内側のボウル部1から延びる排水路2に、自由端とした上下に反転回動する後端が外部排水管5に連通するトラップ部3を内部に収容したケース本体6の配設される水洗便器4であって、この水洗便器4の下方開口に一体形成され周設された取付部41に、前記ケース本体6が一体形成された鍔部61を介して接合固定されるとともに、同鍔部61が前記水洗便器4の外部排水管5のフランジ51と固定されるものが知られている。
【0003】
この種の水洗便器装置では、ケース本体6に一体形成された鍔部61を、外部排水管5のフランジ51と密着させ水密性を確保し固定することが重要な要素の一つとなっている。したがって、上記鍔部61には、図4に示すように、前記水洗便器4の外部排水管5のフランジ51にゴムパッキン7を載置して介在させ、ボルト等を用いて固定される構成が採用されている。
【0004】
しかしながら、この構成では、焼成するときにその下方開口にひずみの生じた陶器製の水洗便器4の取付部41に、ケース本体6に一体形成された鍔部61を接合固定する場合、図5に示すように、床平面Fに水洗便器4をがたつきの無いよう固定したときに、上記水洗便器4の開口に周設され一体形成された取付部41のひずみによる平面度のずれに、その鍔部61も馴染み反ることとなる。このため、水密性確保に関し、十分とは言えないことが想定され、施工状態によっては排水の水漏れや臭気漏れの生ずることが懸念される。
【0005】
そこで、例えば上記ゴムパッキン7の厚みを、水洗便器4の取付部41に生ずるひずみ吸収の可能な程度まで厚くして対応することも考えられる。しかしながら、ゴムパッキン7の厚みを変えることは、逆にケース本体6の鍔部61を外部排水管5のフランジ51と密着させる固定具となるボルト締め付けの作業において、新たに作業バラツキの要因になるという問題をもたらすことが想定される。ボルト締め付け量が増加するからである。
【特許文献1】特開2002−173971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、水洗便器の取付部の平面度がずれていても、トラップ部の収容されたケース本体を水密性を確保しながら固定できる水洗便器装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願発明による水洗便器装置は内側のボウル部から延びる排水路に、自由端とした上下に反転回動する後端が外部排水管に連通するトラップ部を内部に収容したケース本体の配設される水洗便器であって、この水洗便器の下方開口に一体形成され周設された取付部に、前記ケース本体が一体形成された鍔部を介して接合固定されるとともに、同鍔部が前記水洗便器の外部排水管のフランジと固定されるという構成に対し、前記水洗便器の取付部と前記ケース本体の鍔部とを、少なくとも上下方向に変位可能とする可撓性を有した固定具を介し固定させたことを特徴としている。
【0008】
そして、前記固定具は、前記取付部に形成された貫通孔に挿通される軸の先端側に、該軸と交差方向に拡開変位する拡開片を有して成るのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本願発明の水洗便器装置は、自由端とした上下に反転回動する後端が外部排水管に連通するトラップ部を内部に収容したケース本体の配設される水洗便器の取付部に、当該水洗便器の外部排水管のフランジと固定されるケース本体の鍔部が、可撓性を有した固定具を介して上下方向に変位可能となるよう固定されるので、水洗便器の取付部の平面度がずれていても、トラップ部の収容されたケース本体を水密性を確保しながら固定できる。
【0010】
そして、ケース本体の鍔部が、水洗便器の取付部に形成された貫通孔に、固定具の頭部から他端側となる先端側の、軸と交差方向に拡開変位する拡開片が挿通されて、上下方向に変位可能となるよう固定具を介して当該貫通孔に係止されることとなるので、ケース本体は、当該固定具にて、水洗便器装置の設置現場までの搬送中においては水洗便器に固定されており、設置施工にあたって、その鍔部が、水洗便器の外部排水管のフランジとボルトを締付け固定されるにしたがって水平を保ったまま外部排水管のフランジに締付けられるので、施工勝手が良いという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1、2は、本願の請求項1、2に対応した一実施形態である水洗便器装置の要部を示している。この実施形態の水洗便器装置は、背景技術の項において述べた、図3に示したものと概略同じ構成を有しており、内側のボウル部1から延びる排水路2に、自由端とした上下に反転回動する後端が外部排水管5に連通するトラップ部(図3参照)を内部に収容したケース本体6の配設される水洗便器4であって、この水洗便器4の下方開口に一体形成され周設された取付部41に、前記ケース本体6が一体形成された鍔部61を介して接合固定されるとともに、同鍔部61が前記水洗便器4の外部排水管5のフランジ51と固定される水洗便器装置において、前記水洗便器4の取付部41と前記ケース本体6の鍔部61とを、少なくとも上下方向に変位可能とする可撓性を有した固定具8を介し固定させている。
【0012】
この場合、前記固定具8は、前記取付部41に形成された貫通孔42に挿通される軸82の先端側に、該軸82と交差方向に拡開変位する拡開片83を有して成ることとしてもいる。
【0013】
詳しくは、この水洗便器装置は、図3に示すように、上方が開口となったボウル部1が形成してあり、さらに水洗便器4の後部の内部に、外部排水管5に連通するトラップ部3を内部に収容したケース本体6が内装してある。このトラップ部3は、軟質塩化ビニル樹脂等の可とう性を有する軟質の合成樹脂材料による蛇腹状管体にて形成され、このトラップ部3前端の前側接続部がボウル部1の後端部に嵌め込んで接続してある。
【0014】
ケース本体6は、略平板状の鍔部61が合成樹脂製本体の下部に一体化されて、同本体後部の周壁とトラップ部3の後端の開口とが排水時において対向するようになっており、また、その本体前部にトラップ部3の導入口が設けてある。このケース本体6には、図1において両側となる取り付け穴(図示せず)に、トラップ部3を回動自在且つ上方から側方まで回動自在となるよう挿入して取り付けてあり、このトラップ部3の大部分がケース本体6の下側に配置収容される。
【0015】
この場合、鍔部61には、外部排水管5に連通するケース本体6下部の開口を挟んで両側に2箇所、貫通孔62、62が形成され、ケース本体6が外部排水管5のフランジ51と設置現場においてボルト固定されるようになっている。なお、このフランジ51には、鍔部61と密着し水密性を確保するためのゴムパッキン7を設置現場において載置する際に位置決めする溝が形成されている
上記ケース本体6内に設けられるトラップ部3は、図示していない駆動手段にて、自由端としたトラップ部3の後端が、上方から側方までを回動範囲として上下方向に反転自在に回動されるようになっている。この場合、トラップ部3は、ケース本体6に回転自在に取り付けた回転体がトラップ部3の後端に連結してあり、また同回転体が回転軸にて回転駆動されるように連結してある。従って、この回転軸を一方向に回転すると、トラップ部3の自由端とした後端が、図3に示すような上向きから、略横向きになる迄回動し、また、これとは逆方向に回転するとトラップ部3の自由端とした後端が上向きになるように回動する。
【0016】
固定具8は、この場合、例えばポリカーボネート樹脂などの合成樹脂にて、図2(a)に示すように、先端側の拡開片83が可撓性を有するよう形成されたもので、同拡開片83と頭部81とにおいて、軸82の挿通された取付部41の貫通孔42及び鍔部61の貫通孔62を介して被固定部材の水洗便器4とケース本体6とを、ケース本体6が上下方向に変位可能な状態に固定する。
【0017】
上記構成の水洗便器装置は、自由端とした上下に反転回動する後端が外部排水管5に連通するトラップ部3を内部に収容したケース本体6の配設される水洗便器4の取付部41に、当該水洗便器4の外部排水管5のフランジ51と固定されるケース本体6の鍔部61が、可撓性を有した固定具8を介して上下方向に変位可能となるよう固定される。
【0018】
この場合、図2(b)に示すように、水洗便器4の取付部41に形成された貫通孔42に、固定具8の頭部81から他端側となる先端側の、軸82と交差方向に拡開変位する拡開片83が挿通されて、ケース本体6の鍔部61が上下方向に変位可能となるよう固定具8を介して当該貫通孔42に係止されることとなる。これにより、ケース本体6は、当該固定具8にて、この水洗便器装置の設置現場までの搬送中においては水洗便器4に固定されており、設置施工にあたって、その鍔部61が、水洗便器4の外部排水管5のフランジ51とボルトを締付け固定されるにしたがって水平を保ったまま外部排水管5のフランジ51に締付けられ施工される。
【0019】
したがって、以上説明した水洗便器装置によると、自由端とした上下に反転回動する後端が外部排水管5に連通するトラップ部3を内部に収容したケース本体6の配設される水洗便器4の取付部41に、当該水洗便器4の外部排水管5のフランジ51と固定されるケース本体6の鍔部61が、可撓性を有した固定具8を介して上下方向に変位可能となるよう固定されるので、水洗便器4の取付部41の平面度がずれていても、トラップ部3の収容されたケース本体6を水密性を確保しながら固定できる。
【0020】
そして、ケース本体6の鍔部61が、水洗便器4の取付部41に形成された貫通孔42に、固定具8の頭部81から他端側となる先端側の、軸82と交差方向に拡開変位する拡開片83が挿通されて、上下方向に変位可能となるよう固定具8を介して当該貫通孔42に係止されることとなるので、ケース本体6は、当該固定具8にて、水洗便器装置の設置現場までの搬送中においては水洗便器4に固定されており、設置施工にあたって、その鍔部61が、水洗便器4の外部排水管5のフランジ51とボルトを締付け固定されるにしたがって水平を保ったまま外部排水管5のフランジ51に締付けられるので、施工勝手が良いという効果を奏する。
【0021】
なお、本発明は上記各実施例に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施例は適宜変更され得ることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本願発明の一実施形態である水洗便器装置の要部である、ケース本体鍔部の固定構造を示す側面図。
【図2】同固定構造の説明図。
【図3】従来例の水洗便器装置を示す概略構成図。
【図4】同水洗便器装置の外部排水管との固定構造全体を示す斜視図。
【図5】同水洗便器装置の、ケース本体鍔部の固定構造を示す側面図。
【符号の説明】
【0023】
1 ボウル部
2 排水路
3 トラップ部
4 水洗便器
41 取付部
42 貫通孔
5 外部排水管
51 フランジ
6 ケース本体
61 鍔部
8 固定具
82 軸
83 拡開片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側のボウル部から延びる排水路に、自由端とした上下に反転回動する後端が外部排水管に連通するトラップ部を内部に収容したケース本体の配設される水洗便器であって、この水洗便器の下方開口に一体形成され周設された取付部に、前記ケース本体が一体形成された鍔部を介して接合固定されるとともに、同鍔部が前記水洗便器の外部排水管のフランジと固定される水洗便器装置において、
前記水洗便器の取付部と前記ケース本体の鍔部とを、少なくとも上下方向に変位可能とする可撓性を有した固定具を介し固定させたことを特徴とする水洗便器装置。
【請求項2】
前記固定具は、前記取付部に形成された貫通孔に挿通される軸の先端側に、該軸と交差方向に拡開変位する拡開片を有して成ることを特徴とする請求項1に記載の水洗便器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−125139(P2006−125139A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317968(P2004−317968)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】