説明

水洗便器

【課題】 節水型の水洗便器の排水性能をより向上させる水洗便器を提供することを課題としている。
【解決手段】 ケース体内に収容された、一端を自由端とする回転式弁1を備えた可動トラップ2がその他端においてケース体開口を介して便器本体3の排水口部6に接続され、この可動トラップ2の自由端とした終端7は、モータ駆動の回転駆動軸8の回転にともなう回転式弁1の回転によって開閉可能とされ、初期通水時には上向き位置にある可動トラップ2の終端7が汚物排出時には下方向に回転されて洗浄水と汚物が排出される回転トラップ方式の水洗便器であって、初期通水時には上向き位置にある可動トラップ2の終端7を汚物排出時には回転式弁1で閉じた状態で下方向に回転させた後、回転式弁1を回転させて可動トラップ2の終端7を開放して洗浄水と汚物が排出されるようにした可動トラップ開閉機構を備えていることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、回転トラップ方式の水洗便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅等のトイレに設置される水洗便器には、様々な構成と構造を有する各種のものが提供されており、例えば図4及び図5に例示される自動排出機構を備えた水洗便器としてこの出願の出願人より提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この自動排出機構式の水洗便器では、モータ10が接続された回転軸11に支持され、自由端とした終端7が上下方向に回転及び反転自在とされた可動トラップ2が、ボウル4から延びる排水路5に配設されているとともに、この可動トラップ2は、外部排水管に連通する、シュートと呼ばれるケース体12内に収容されている。このような可動トラップ2には、例えば蛇腹ホース等の屈曲自在な管体を使用することができる。
【0004】
また、この水洗便器では、リム13等に洗浄水を供給する給水路に電磁弁14が配設されてもいる。モータ10及び電磁弁14は、制御部15に電気的に接続されており、動作制御可能となっている。
【0005】
例えば以上の構成を有する水洗便器では、通常の溜め水時には、図5(a)のように、可動トラップ2の終端7が上方を向いて配置され、ボウル4の内部にこの終端7までの高さ(給水ライン)に水が溜められ、封水される。
【0006】
用便後に排出動作がスイッチ等を介して入力されると、電磁弁14が開動作し、ここを通じてボウル4内に洗浄水が供給される。その後、モータ10が動作し、図5(b)(c)のように回転軸11が回転して可動トラップ2の終端7を下方に回転させる。この可動トラップ2の終端7の回転にともなってボウル4内の汚物Dが洗浄水とともに外部排水管に向かって流出し、便器外に排出される。
【0007】
汚物Dが完全に排出された後には、モータ10により回転軸11が逆回転し、可動トラップ2を反転させて図5(a)の初期状態に戻し、再び、ボウル4の内部に給水ラインまで貯水して封水する。そして、電磁弁14が閉動作する。
【0008】
このような自動排出機構式の水洗便器は、従来の水洗便器のように、汚物排出時に汚物の排出に直接関与せずサイフォン作用を起こすためのみに使用される洗浄水を必要としないため、節水型であり、また、静音型の水洗便器として注目されるものである。
【特許文献1】特開平9−256447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の水洗便器は節水化及び静音化に優れた水洗便器であるが、節水型の水洗便器であるが故に、その排水性能をより向上させることが望まれてもいる。
【0010】
例えば、上記の水洗便器において、用便後の汚物Dは、図6(a)に示したように、ボウル4底部の排水路5に溜まる。この汚物Dの排出は、上記のように可動トラップ2の終端7の下方への回転にともなって洗浄水とともにボウル4内の汚物Dが外部排水管9に向かって流出するものである。この場合、図6(b)に示したように可動トラップ2内の洗浄水は、可動トラップ2の回転時に汚物Dに先行して外部排水管9に向かって流出し、それを追って汚物D、そしてボウル4内の洗浄水の順番で外部排水管9に流出していくことになる。ここで、汚物Dをできるだけ遠くに流すためには、外部排水管9内で汚物D後方にある洗浄水が多ければ多いほどよい。したがって、一定量の洗浄水で排水性能をより向上させるためには、外部排水管9内への汚物Dの流出時に、汚物Dに先行して流出する洗浄水を抑え、汚物D後方にある洗浄水を多くするようにすることが必要となる。
【0011】
本願発明は、以上の通りの背景から、節水型の水洗便器の排水性能をより向上させる水洗便器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、上記の課題を解決するものとして、ケース体内に収容された、一端を自由端とする回転式弁を備えた可動トラップがその他端においてケース体開口を介して便器本体の排水口部に接続され、この可動トラップの自由端とした終端は、モータ駆動の回転駆動軸の回転にともなう回転式弁の回転によって開閉可能とされ、初期通水時には上向き位置にある可動トラップの終端が汚物排出時には下方向に回転されて洗浄水と汚物が排出される回転トラップ方式の水洗便器であって、初期通水時には上向き位置にある可動トラップの終端を汚物排出時には回転式弁で閉じた状態で下方向に回転させた後、回転式弁を回転させて可動トラップの終端を開放して洗浄水と汚物が排出されるようにした可動トラップ開閉機構を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願発明によれば、初期通水時には上向き位置にある可動トラップの終端を汚物排出時には回転式弁で閉じた状態で下方向に回転させた後、回転式弁を回転させて可動トラップの終端を開放することで、外部排水管内において、汚物に先行して流出する洗浄水を抑え、汚物後方にある洗浄水を多くすることができ、排水性能をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本願発明は以上のとおりの特徴をもつものであるが、以下に図面に沿って実施例を示し、さらに詳しく発明を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本願発明の水洗便器の一実施形態を模式的に例示した側断面図である。例えばこの図1に示したように、まず、従来と同様に、本願発明の水洗便器では、ケース体(図1中図示せず)内に収容された、一端を自由端とする回転式弁1を備えた可動トラップ2がその他端においてケース体(図1中図示せず)開口を介して便器本体3のボウル4から延びる排水路5の排水口部6に接続されている。そして、回転式弁1は可動トラップ2の自由端とした終端7に設けられた回転駆動軸8に連結されており、モータ駆動の回転駆動軸8の回転にともなって回転式弁1が矢印Aの方向に沿って回転及び反転することで開閉動作が行われ、可動トラップ2の終端7が開閉可能とされた可動トラップ開閉機構を備えている。
【0016】
回転式弁1の材質については特に制限されることはなく、樹脂等の折れ曲がることなく十分な強度を有する適宜な材質を採用することができる。また、回転式弁1の形状については可動トラップ2の終端7を密閉することができる形状であれば特に限定されることはない。
【0017】
可動トラップ2の終端7は、従来と同様に、例えばモータ(図1中図示せず)が接続された回転軸11に支持され、矢印B方向に沿って下上方向に回転及び反転自在とされることが考慮される。
【0018】
以上のような構成を有する水洗便器は、汚物排出時に以下のように動作する。例えば、図2(a)に示すように、初期の通水時には、可動トラップ2の終端7が上向き位置に配置され、ボウル4の内部にこの終端7までの高さ(給水ライン)に水が溜められ、封水されている。用便後の汚物Dは、ボウル4底部の排水路5に溜まる。
【0019】
汚物排出時には、排出動作がスイッチ等を介して入力されると、モータ駆動で回転駆動軸8が回転して回転式弁1が矢印A方向に沿って回転して閉動作し可動トラップ2の終端7が閉じられる。その後、図2(b)に示すように、可動トラップ2の終端7が閉じられた状態で、可動トラップ2の終端7が、その可動トラップ2の他端が接続されているボウル4から延びる排水路5の排水口部6よりも下方の位置に配置されるように回転される。この時、可動トラップ2の終端7は回転式弁1で閉じられているので、ボウル4内の水が可動トラップ2から排出されることはない。また、ボウル4底部の排水路5の汚物Dは、可動トラップ2の終端7方向(矢印C方向)に向かって移動し、可動トラップ2の終端7近傍に溜まることになる。
【0020】
その後、ボウル4内に洗浄水が供給され、図2(c)の矢印のように回転式弁1が開動作し、可動トラップ2の終端7が開放されて、洗浄水とともに汚物Dが外部排水管(図2中図示せず)に向かって流出し、便器外に排出される。これによって、図3に示したように、外部排水管9内への汚物Dの流出時に、汚物Dが先行して外部排水管9に流出することになり、結果として、汚物Dに先行して外部排水管9に流出する洗浄水を抑え、汚物D後方にある後追いの洗浄水を多くすることができて、外部排水管9内で汚物Dをより遠くまで流すことができ、排水性能を向上させることができる。
【0021】
汚物Dが完全に便器外に排出された後は、可動トラップ2を反転させて図2(a)の初期状態に戻し、再び、ボウル4の内部に給水ラインまで貯水して封水される。
【0022】
本願発明の水洗便器は、以上のような汚物排出時の動作を行う制御手段が備えられていてもよい。この制御手段によれば、モータ駆動による回転駆動軸8の回転によって回転式弁1が開動作または閉動作して可動トラップ2の終端7が開閉する所要時間や、可動トラップ2の終端7が上向き位置から下方の位置に配置されるまでの時間、可動トラップ2の終端7が下方の位置に配置されてから回転式弁1が開動作を開始するまでの時間等を予め設定しておくことで、スイッチ等の入力により、回転式弁1や可動トラップ2の動作を制御するそれぞれのモータが所定時間後に所定時間回転及び反転されて、上記の汚物排出時の動作を行うことが可能である。
【0023】
以上の例は、図2(a)にあるように、可動トラップ2の終端7が上向き位置に配置されている状態を初期状態としているが、例えば、図2(b)にあるように、可動トラップ2の終端7が閉じられた状態で、可動トラップ2の終端7が、その可動トラップ2の他端が接続されているボウル4から延びる排水路5の排水口部6よりも下方の位置に配置されている状態を初期状態とすることも考慮される。
【0024】
以上のような可動トラップ開閉機構を備えた水洗便器は、従来の便器に比べて、排水性能がより向上するものである。
【0025】
もちろん本願発明の水洗便器は、以上の例によって限定されるものではない。その細部において様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本願発明の水洗便器の一実施形態を模式的に例示した側断面図である。
【図2】(a)(b)(c)本願発明の水洗便器の汚物排出動作を模式的に例示した側断面図である。
【図3】本願発明の水洗便器において外部排水管に汚物が流出した様子を模式的に例示した図である。
【図4】従来の水洗便器を模式的に例示した側断面図である。
【図5】従来の水洗便器の汚物排出動作を模式的に例示した図である。
【図6】(a)従来の水洗便器において汚物排出動作前の様子を模式的に例示した側断面図である。(b)従来の水洗便器において外部排水管に汚物が流出した様子を模式的に例示した図である。
【符号の説明】
【0027】
1 回転式弁
2 可動トラップ
3 便器本体
4 ボウル
5 排水路
6 排水口部
7 終端
8 回転駆動軸
9 外部排水管
10 モータ
11 回転軸
12 ケース体
13 リム
14 電磁弁
15 制御部
D 汚物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース体内に収容された、一端を自由端とする回転式弁を備えた可動トラップがその他端においてケース体開口を介して便器本体の排水口部に接続され、この可動トラップの自由端とした終端は、モータ駆動の回転駆動軸の回転にともなう回転式弁の回転によって開閉可能とされ、初期通水時には上向き位置にある可動トラップの終端が汚物排出時には下方向に回転されて洗浄水と汚物が排出される回転トラップ方式の水洗便器であって、初期通水時には上向き位置にある可動トラップの終端を汚物排出時には回転式弁で閉じた状態で下方向に回転させた後、回転式弁を回転させて可動トラップの終端を開放して洗浄水と汚物が排出されるようにした可動トラップ開閉機構を備えていることを特徴とする水洗便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−63591(P2006−63591A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245862(P2004−245862)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】