説明

水洗便器

【課題】水道管からの給水圧が低くても十分に便器内洗浄が行えタンクを小型化した水洗便器を提供する。
【解決手段】本発明は、圧送した洗浄水により洗浄される水洗便器1であって、洗浄水吐出部4,51を備えた便器本体10と、洗浄水を貯留するタンク71と、このタンクに貯留された洗浄水を洗浄水吐出部4,51に圧送して洗浄水吐水部から吐水させるポンプ72と、タンクから洗浄水吐出部への給水タイミングと同期して(図5のt2参照)水道管6から洗浄水をタンクに供給する給水制御手段2,8と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洋式の水洗便器に関し、詳しくはリム通水部と前記ゼット孔とからそれぞれ洗浄水を吐水可能としたサイホンゼット式の水洗便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、便器本体の上部開口周縁に形成され、洗浄水を前記便器本体内壁に流下させて便器本体内部を洗浄するようにしたリム通水部と、便器本体の底部に形成したトラップ流入口に対向する位置に開口し、洗浄水を前記トラップ流入口に向けて吐出することによりサイホン現象を強制的に生起させて汚物などを排出するようにしたゼット孔とを備える洋式の水洗便器がある。
【0003】
かかる水洗便器の中にあって、洗浄水を貯留するロータンクを廃止して見栄えを向上させ、前記リム通水部及びゼット孔とに水道管から直接給水可能とした構成を有する水洗便器も知られている。
【0004】
かかるタンクレスの水洗便器は、タンクがないことからスマートであり高級感がある一方、水道の給水圧力が低いところでは汚物を排出するために必要な洗浄流量が得られず、設置することが難しいという課題があった。
【0005】
そこで、水圧が十分でない場合でもタンクレスとして設置できるようにすることを目的として、水圧が低くても便器本体内を十分に洗浄できる構成を備える水洗便器が提案された。
【0006】
例えば、水道管と接続されて水道管内の水を洗浄水として供給可能な給水管と、給水管と接続されて便器本体を洗浄水により洗浄可能な洗浄手段とを備え、前記便器本体に固定されたカバー内に、前記給水管から給水される洗浄水を加圧して便器本体に供給可能な加圧ポンプを隠蔽して設けたものがある(例えば、特許文献1を参照。)。
【0007】
また、やはりタンクレスの水洗便器であって、便器本体内に前記ゼット孔に連通させた貯留タンクと、同貯留タンク内の水を洗浄水としてゼット孔に圧送するポンプとを設けたものも知られている。前記貯留タンクは、前記リム通水部と連通させてリム通水部へ給水するときにタンク内へも貯留可能としている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0008】
【特許文献1】特開2003−138623号公報
【特許文献2】特許第2800421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記特許文献1に開示された水洗便器は、水道管と接続した給水管に直接ポンプを取付けた構造であるため、ポンプを駆動すると、例えば前記水道管から分岐された他の水栓端末への給水能力が低下するおそれがあり、複数の水洗便器を取付けた場合の他の使用者に、あるいは水道管を共有する他の水栓端末の使用者に迷惑をかけるおそれがあった。
【0010】
また、上記特許文献2に開示された水洗便器では、ポンプを駆動してゼット孔へ圧送する洗浄水はタンク内の貯留水なので上述した問題が生じるおそれはないが、リム通水部へ給水するときにタンク内へも貯水するようにしているため、リム通水用の流量が減少してしまうおそれがあり、流量の制御が難しかった。また、貯留タンクとポンプとを便器本体に組み込んだ場合、特にポンプのメンテナンスが面倒で手間がかかるおそれがあった。また、例えば既存の水洗便器にこれらを後付けすることが極めて困難であった。
【0011】
さらに、上述した便器本体の上部に配設するロータンクを廃止して、貯留タンクを設ける場合には、貯留タンクを小型化する必要がある。
【0012】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、水道の給水圧力が低いところであっても十分な洗浄水量を確保して汚物を確実に排出することができる水洗便器を提供することを目的としている。
また、本発明は、タンクを小型化することができる水洗便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の発明は、圧送した洗浄水により洗浄される水洗便器であって、リム通水部とゼット孔が形成されたボウル部、及び、トラップ排水路を備えた便器本体と、洗浄水を貯留するタンクと、このタンクに貯留された洗浄水をゼット孔に圧送してゼット孔から吐水させるポンプと、水道管からの洗浄水をリム通水部及びタンクに選択的に供給する洗浄水供給手段と、リム通水部及びゼット孔から洗浄水を所定の順番で吐水させると共に、ポンプによりゼット孔から洗浄水を吐水させるとき、洗浄水供給手段により水道管から洗浄水をタンクへ供給させる給水制御手段と、を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、先ず、通常、便器本体の上部に配設するロータンクを廃止し、スマートで高級感のある水洗便器となることができ、水道の給水圧力が低いところであっても十分な洗浄水量を確保して汚物を確実に排出することができる。また、洗浄水供給手段により、水道管からの洗浄水をリム通水路及びタンクに選択的に供給するようにしているので、リム通水路への洗浄水量を十分に確保でき、且つ、タンク内に所望の容量で貯水することが短時間で行える。さらに、リム通水部には洗浄水を水道管からタンクを経由せずに供給するため、タンクにはゼット孔から吐水する洗浄水量だけを貯留しておけばよいのでタンク容量が小さい小型のものを利用することができる。また、タンク内に洗浄水を補給しながらゼット孔から吐水するので、所定量のゼット洗浄水量が必要であっても、初期に貯留しておく水量は所定量よりも少ない量ですむため、タンクの容量がより小さな小型のものを利用することができる。
【0014】
本発明の第2の発明は、圧送した洗浄水により洗浄される水洗便器であって、洗浄水吐出部を備えた便器本体と、洗浄水を貯留するタンクと、このタンクに貯留された洗浄水を洗浄水吐出部に圧送して洗浄水吐水部から吐水させるポンプと、タンクから洗浄水吐出部への給水タイミングと同期して水道管から洗浄水をタンクに供給する給水制御手段と、を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、先ず、通常、便器本体の上部に配設するロータンクを廃止し、スマートで高級感のある水洗便器となることができ、水道の給水圧力が低いところであっても十分な洗浄水量を確保して汚物を確実に排出することができる。また、タンク内に洗浄水を補給しながらゼット孔から吐水するので、所定量のゼット洗浄水量が必要であっても、初期に貯留しておく水量は所定量よりも少ない量ですむため、タンクの容量がより小さな小型のものを利用することができる。
【0015】
本発明の第1の発明又は第2の発明において、好ましくは、タンクの容量は、2〜3リットルである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の水洗便器によれば、水道の給水圧力が低いところであっても十分な洗浄水量を確保して汚物を確実に排出することができる。さらに、本発明の水洗便器によれば、タンクを小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、便器本体の上部開口周縁に形成したリム通水部と、便器本体の底部に形成したトラップ流入口に向けて開口したゼット孔とを備え、前記リム通水部と前記ゼット孔とからそれぞれ洗浄水を吐水可能とした水洗便器において、水道管に連通連結した給水管に、第1導水路と第2導水路とを洗浄水供給手段を介して連通連結し、前記第1導水路をリム通水部と連通連結させる一方、前記第2導水路には、前記水道管からの水を貯留するタンクとこのタンク内の貯留水を第3導水路を介して前記ゼット孔に供給するポンプとを具備するポンプユニットを配設したものである。
【0018】
すなわち、水道の給水圧力が低いところであっても十分な洗浄水量を確保して汚物を確実に排出することができるように、水道管からの水を、便器本体の上部開口周縁に形成されたリム通水部とタンクとに選択的に給水可能とし、ゼット孔に給水する場合は、前記水道管から給水されてタンク内に貯留した水をポンプによって強制的に圧送するようにしている。なお、水源から前記水道管へ給水される水は、上水に限らず中水であってもよい。
【0019】
前記洗浄水供給手段は、開閉弁と流路切換弁との組合せにより構成することができ、これを負圧破壊弁などとともに給水管に設けてバルブユニットに組込み、このユニットごと便器本体内に収納配設することができる。
【0020】
本実施形態では、前記バルブユニットとして、前記水道管に連通連結した給水管に取付けた定流量弁と、この定流量弁の下流側に順に配設した前記開閉弁及び前記流路切換弁、さらには負圧破壊弁を具備する構成としている。そして、前記流路切換弁を介して前記第1導水路及び第2導水路を給水管に連通連結している。
【0021】
このように、複数のバルブ機構をコンパクトに一纏めにして便器本体内に収納しているので、弁などの機構が露出せず、水洗便器を設置するトイレルームなどの美観を損なうことがない。また、コンパクトにユニット化しているので便器本体内に収納しても便器全体は大型化することがなく、水洗便器自体のスマートな外観を損なうおそれもない。
【0022】
また、本実施形態に係る水洗便器では、使用者が、円滑に便器洗浄を行えるように、前記リム通水部と前記ゼット孔とに所定のタイミングで給水する給水制御手段を備えている。この給水制御手段は、前記リム通水部に給水した後、前記第1導水路から前記第2導水路へ流路を切換えるとともに前記ポンプを駆動して、前記タンクからゼット孔へ給水して汚物を排出し、その後、流路を前記第1導水路へ切換えて前記リム通水部に給水して前記便器本体内を水封し、その後、再度流路を第2導水路へ切換えて前記タンクに所定量まで水補給するように給水制御している。したがって、便器本体内部の洗浄から汚物排出、さらに、その後の便器本体内の封水作用を円滑かつ速やかに行うことができる。
【0023】
また、この給水制御において、前記タンクから前記ゼット孔への給水タイミングに同期して前記水道管から前記タンクへ水補給するようにすることが好ましい。すなわち、ゼット孔からの洗浄水吐出に合わせて、タンク内へ洗浄水を追いかけ補給するのである。したがって、小型のタンクであっても十分な水量をゼット孔へ供給でき、また、その後、定量まで水補給する時間も短縮化できる。
【0024】
すなわち、使用者が便器洗浄操作をすると(このとき、タンク内には所定量貯水されているものとする)、水道管からの水は、先ず前記第1導水路を通りリム通水部へと流れ、リム通水部からの吐水による便器本体内部に形成されたボウル部の1次洗浄が行われる。
このリム通水部への流量、すなわち1次洗浄用の給水量は、タイマーによる時間管理で制御することができる。
【0025】
次いで、前記制御手段は流路切換弁を第2導水路側へ流路を切換えるとともに、前記ポンプを駆動する。これにより、前記ゼット孔へ貯留水が洗浄水として圧送され、この洗浄水により前記トラップ流入口に連通するトラップ排水路内に負圧が生じ、前記ボウル部内の溜め水が呼び込まれトラップ排水路内にサイホン作用が生じ、汚物などの排出が開始される。ポンプによるタンク貯留水の圧送量についても、前記タイマーによりポンプ駆動時間を管理することで制御することができる。
【0026】
所定時間ポンプを駆動した後、ポンプを停止するが、このときに前記制御手段は、流路を前記第1導水路へ切換えて、水道管からの水を前記リム通水部に給水する。すなわち、ボウル部内の2次洗浄を行うとともに、ボウル部内を水封する。この2次洗浄におけるリム通水部への流量、すなわち水封に必要な水量に関しても、制御手段はタイマーによる時間管理で制御するとよい。なお、前記2次洗浄のために流路を第2導水路へ切り換えるタイミングとポンプの駆動を停止するタイミングとは、略同時とすることが好ましいが、両者を必ず同タイミングとする必要なない。
【0027】
そして、所定時間経過後、制御手段は再度流路を第2導水路へ切換えて前記タンクに所定量まで水を補給する。この場合の水量制御は、タンクにフロートスイッチを設けておき、このフロートスイッチからの信号を受けて、洗浄水供給手段をOFFする。すなわち、制御手段は前記開閉弁及び流路切換弁を閉成する。
【0028】
このように、本実施形態によれば、便器本体の上部に通常配設されるロータンクを廃止し、スマートで高級感のあるタンクレスの水洗便器となすことができるとともに、流路を切換えることによって、リム通水部とゼット孔へ選択的に水道管からそれぞれ直接導水できることから、水道の給水圧力が低いところであっても十分な洗浄水量を確保して汚物を確実に排出することができる。しかも、1次洗浄、2次洗浄のいずれにおいてもリム通水部への給水量を十分に確保でき、さらに、便器洗浄後の封水作用も円滑かつ速やかに行えるとともに、タンク内に所望の容量で貯水することも短時間で行える。さらに、水道を共有している水栓端末などがあっても、ポンプユニットのタンク内に貯留した洗浄水を用いるので、短時間に多量の水を使用しても前記水栓端末の水圧が急激に低下するなどの悪影響を及ぼすおそれがない。
【0029】
また、本実施形態に係る水洗便器では、前記ポンプユニットを、前記便器本体の外部に設置している。
【0030】
したがって、例えばポンプが故障した場合や定期点検などの際にポンプユニットに関するメンテナンスが容易に行える。さらに、製造側からすれば、既存のタンクレスの水洗便器に若干設計変更を加えるだけで、ポンプユニットを後付け可能な水洗便器となすことも可能である。
【0031】
ところで、前記ポンプユニットと前記ゼット孔とは、中途に大気開放弁を設けた第3導水路で連通連結することができる。前記大気開放弁により、第3導水路と大気とが連通するため、便器本体内の溜水の水位とタンク内の水位とが異なっている場合でも水の流動を防止できる。
【0032】
また、前記大気開放弁の下流側には逆止弁を取付けるとなおよい。この逆止弁により、便器本体内の溜水がタンク内へ逆流することを確実に防止することができる。
【0033】
以下、この発明の実施形態を図面に基づき、より具体的に説明する。なお、本実施形態に係る水洗便器はサイホンゼット式の洋式水洗便器としている。図1は本実施形態に係る水洗便器の正面図、図2は同水洗便器の後方からの斜視図、図3は同水洗便器の模式的説明図、図4は同便器本体内部に収納したバルブユニットを含む配管の説明図、図5は同水洗便器における洗浄時のタイムチャートである。
【0034】
水洗便器1は、図1及び図2に示すように、便器本体10の上面開口部に開閉自在に配設された便座11と、この便座11の上に同じく開閉自在に配設された便蓋12とを具備しており、前記便器本体10の後部には機能部ケーシング13を設けている。この機能部ケーシング13内には、図示しない局部洗浄装置と後述するバルブユニット2とを収納配設している。なお、図2中、13aは前記局部洗浄装置が具備する温風ファン用の吸気口である。
【0035】
便器本体10内部は、図3に示すように、隔壁16によりボウル部14とトラップ排水路15とに区画されており、前記ボウル部14の上部周縁にはリム部17が形成され、このリム部17のやや後部側には、水源3に連通するリム通水部4を形成している。41はリム通水開口である。
【0036】
また、前記トラップ排水路15は、前記ボウル部14の後下部に形成したトラップ流入口15aと、便器本体10の下面略中央に開口した排水口15bとを連絡するように略逆U字状に形成されている。15cはトラップ排水路15の最上部分となる堰部、15dはこの堰部15cの下流側をなす直管部である。
【0037】
また、ボウル部14の底部には、前記トラップ流入口15aに向けて洗浄水を噴射するゼット孔51を前記トラップ流入口15aと対向する位置に設けている。5は前記便器本体10内に配設され、略J字状に形成されたゼット用通水管であり、先端に前記ゼット孔51を開口したノズル51aを設けている。
【0038】
本実施形態に係る水洗便器1は、上記構成において、前記水源3に連通連結した水道管6に給水管R0を連通連結し、この給水管R0に、前記リム通水部4と連通連結する第1導水路R1と第2導水路R2とを洗浄水供給手段8を介して連通連結し、前記第2導水路R2に、前記水道管6からの水を貯留するタンク71とこのタンク71内の貯留水を前記ゼット孔51に供給するポンプ72とを具備するポンプユニット7を配設したことに特徴がある。
【0039】
すなわち、図1〜図4に示すように、トイレ室Qの壁体W(図3を参照)に外部から臨ませて配管した水源3に水道管6を連結し、同水道管6の先端を便器本体10の機能部ケーシング13内に伸延させ、その終端を、バルブユニット2を取付けた給水管R0に接続している。
【0040】
ここで、便器本体10の機能部ケーシング13内に配設された前記バルブユニット2は、図3に示すように、前記水道管6と連通連結した給水管R0の上流側から、定流量弁21と、この定流量弁21の下流側に順に配設したソレノイド式の電磁開閉弁22及び前記流路切換弁23からなる前記洗浄水供給手段8と、このバルブユニット2内に設けた前記流路切換弁23から伸延し、それぞれ負圧破壊弁24を設けた2本の下流側給水管を伸延させて構成している。
【0041】
そして、前記下流側給水管の一方に第1導水路R1を、他方に第2導水路R2を連通連結し、前記第1導水路R1の先端側をなすリム通水管42を前記リム通水部4内に伸延させ、前記リム通水管42の先端に取付けたノズル43を前記リム通水開口41に臨ませる一方、前記第2導水路R2の終端を、前記タンク71の上壁71dに貫通させてタンク71内に開口している。そして、このタンク71に付設したポンプ72を介して第3導水路R3を前記上壁71dから伸延させて前記ゼット用通水管5の始端に連通連結している。
なお、図3中、61は前記水道管6に設けたバルブ部であり、止水弁61aとストレーナ61bとを内蔵している。また、62は水道管6から分岐して前記局部洗浄装置へ給水するための分岐流路である。
【0042】
かかる構成により、水源3からの給水圧力が低いところであっても、水道管6からの水は前記リム通水部4とタンク71とに選択的に給水されることから、タンク71内に貯留した水をポンプ72によって強制的に前記ゼット孔51へ圧送することができ、十分な洗浄水量を確保して汚物を確実に排出することができる。
【0043】
ところで、本実施形態においては、前記第3導水路R3には、上流側すなわち前記タンク71側から図6に示す大気開放弁25と、図7に示す逆止弁77とを設けている。したがって、第3導水路と大気とが前記大気開放弁25により連通し、便器本体10内の溜水の水位とタンク71内の水位とが異なっている場合でも水の流動を防止できるとともに、前記逆止弁77により、便器本体10内の溜水がタンク71内へ逆流することを確実に防止している。
【0044】
なお、大気開放弁25を示す図6において、25aは入水口、25bは出水口であり、前記第3導水路R3と連通している。また、25cは複数の爪体25dを放射状に設け、各爪体25d間に前記第3導水路R3を大気に開放する開口部25eを形成するとともに(図6(a)のI−I線における端面図を示す図6(c)を参照)、背面に弁座25fを設けた弁本体であり、ガイド軸25gに沿って上下動可能に装着されている。25kは前記弁本体25c及び前記ガイド軸25gを配設した弁室25hを形成するケーシングであり、上面には大気開放口25jが形成されている。かかる構成により、水の流入が無い場合、図6(a)に示すように、前記開口部25eを介して第3導水路R3は大気と連通し、便器本体10内の溜水の水位とタンク71内の水位とが異なっている場合でも水の流動を防止できる。一方、水の流入がある場合は、弁本体25cは図6(b)に示すように、上方へ押し上げられ、弁座25fがシート部25mと密着して水が大気開放口25jへ漏れることを防止できるようにしている。
【0045】
また、逆止弁77を示す図7において、77gは第3導水路R3内に取付けられる弁ケーシングであり、前記第3導水路R3と連通する入水口77aと出水口77bとを形成するとともに、その間に弁室77dを形成している。77cはこの弁室77d内に配設した弁本体であり、前記入水口77aに臨むように形成されたシート部77eに密着して前記入水口77aを封止するようにスプリング77fにより付勢されている。77hは前記弁本体77cに装着したシールリング、77jは前記ケーシング77gと第3導水路R3の内側壁との間に介設したOリングである。かかる構成により、第3導水路R3内における水の流れる方向は、図7(b)に示すように、一方向(入水口77a側から出水口77b側)に規制される。すなわち、第3導水路R3内における水は前記タンク71側からゼット孔51へは流れるが、ゼット孔51側からタンク71側へは流れることがない。
【0046】
ポンプユニット7は、便器本体10の外部に設置しており、本実施形態では、図2に示すように、便器本体10を挟んで水道管6とは反対側に配設している。便器本体10の後部には前記トラップ排水路15の直管部15dが形成されており、本実施形態では、前記直管部15dの左右側に形成された凹部18にポンプユニット7を配設している。したがって、ポンプユニット7がトイレ室Q内で著しく邪魔になることがない。しかも、便器本体10に対して外付けされ、なおかつポンプ72をタンク71の前面壁71aに取付けることで、ポンプ72のメンテナンスが容易となっている。本実施形態では、図2に示すように、前記直管部15dを袴部19で被覆し、この袴部19の側面19aに配管挿通用孔19bなどを形成している。
【0047】
また、ポンプユニット7のタンク71は、略矩形箱型に形成しており、底壁71bをポンプ72側へ向けて下方傾斜させ、タンク71内の貯留水73を効率的に排出可能としている。71cはタンク支持脚である。
【0048】
また、タンク71にはフロートスイッチ74を設けるとともに、空気吸入を兼ねるオーバーフロー管75を上壁71dから前記バルブユニット2内に伸延させている。前記オーバーフロー管75は、バルブユニット2内に伸延しており、同バルブユニット2内における第1導水路R1に設けた負圧破壊弁24に連通している。
【0049】
上記構成により、本実施形態に係る水洗便器1は、上述したように水源3からの水をリム通水部4とタンク71とに選択的に給水することができ、ゼット孔51に給水する場合はタンク71内の貯留水73をポンプ72によって強制的に圧送することができるので、水源3からの給水圧が低い地域などに設置しても問題なく汚物排出処理が可能であり、さらに、例えば前記水源3に他の水栓端末などが接続されていた場合に、水洗便器1において短時間に多量の水を洗浄用に用いても、前記水栓端末の水圧が急激に低下するなどの悪影響を及ぼすおそれもない。
【0050】
また、本実施形態に係る水洗便器1は、前記電磁開閉弁22及び前記流路切換弁23、さらに、前記ポンプ72及びフロートスイッチ74を、前記機能部ケーシング13内に配設した図示しない制御盤に電気的に接続しており、この制御盤により、便器洗浄水の給水を制御している。すなわち、前記制御盤が給水制御手段として実質的に機能している。なお、図1〜図4中、72aはポンプ72と前記制御盤とを接続する配線、74aはフロートスイッチ74と制御盤とを接続する配線である。
【0051】
ここで、制御盤により担われる給水制御手段による給水制御について、図3及び図5を参照しながら説明する。
【0052】
この給水制御手段はタイマーを備えており、図5に示すように、基本的には予め定めた所定のタイミングで前記リム通水部4と前記ゼット孔51とに給水するようにして、給水量についても時間により制御している。
【0053】
水洗便器1の使用者が、例えば便器本体10内に設けた洗浄スイッチ(図示せず)を押下するなどして洗浄操作を実行すると、制御盤はバルブユニット2の電磁開閉弁22及び流路切換弁23を開成する駆動信号を出力して(t1)水道管6と第1導水路R1側とを連通させ、水をリム通水部4に給水する。水道管3からの水はこのリム通水部4を通り、1次洗浄水としてリム通水開口41からボウル部14内に吐出され、ボウル部14の内壁を旋回しながら洗浄を開始する。このとき、ポンプユニット7のタンク71内には所定量の貯留水73があるものとする。したがって、フロートスイッチ74はON状態である。
【0054】
所定時間経過すると(t2)、制御盤は前記第1導水路R1から前記第2導水路R2へ流路を切換える駆動信号を流路切換弁23に出力するとともに、前記ポンプユニット7のポンプ72に駆動信号を出力して駆動させる。したがって、水道管3からの水は第1導水路R1へは流れずに第2導水路R2へ流れ込む。すなわち、水は、水道管6→定流量弁21→電磁開閉弁22→流路切換弁23→第2導水路R2→タンク71と流れてタンク71内に流入するとともに、このタンク71内の貯留水73が、ポンプ72の駆動により、ポンプ72→第3導水路R3→ゼット用通水管5→ゼット孔51へと圧送され、ゼット孔51からトラップ流入口15aに向かって噴出された洗浄水によりトラップ排水路15内に負圧が生じ、ボウル部14内の溜め水が呼び込まれトラップ排水路15内にサイホン現象を生起させ、汚物を排出口15bへと流出させるゼット洗浄が実行される。かかるゼット洗浄に要する水量はおよそ20リットル/min必要であるが、このように、タンク72内に補給しながらゼット洗浄を行うので、タンク72の容量は2〜3リットル程度の小型のものとすることが可能となる。
【0055】
また、このゼット洗浄に要する時間も予め定められており、その所定時間が経過すると(t3)、制御盤は前記ポンプ72を停止させる停止信号を出力してポンプ72の駆動を停止するとともに、流路切換弁23に駆動信号を出力して流路を再び前記第1導水路R1へ切換える。これにより、水道管3からの水は2次洗浄水として前記リム通水部4に給水され、便器本体10のボウル部14内を水封する。なお、この水封に要する時間も予め設定されており、この時間まではタイマーを用いた時間管理による給水制御となっている。
【0056】
かかる水封時間が経過すると(t4)、制御盤は流路切換弁23に駆動信号を出力して流路を再び第2導水路R2へ切換え、タンク71内に水道管3からの水を補給する。
【0057】
その後、タンク71内に水が所定量貯留されるタイミング(t5)で制御盤は電磁開閉弁22に閉弁駆動信号を出力する。しかし、この電磁開閉弁22は電磁弁を備えたパイロット部とダイヤフラムを用いた主弁とから構成されており、主弁が完全に閉止するまでにタイムラグがあるので水道管6からの水は制御盤から閉弁駆動信号が出力された後もタンク72内に流入する。
【0058】
そして、タンク71内の貯留水73が所定量に達すると、フロートスイッチ74がONし(t6)、このフロートスイッチ74からの信号を受けた制御盤は、流路切換弁23に駆動信号を出力して流路を再び第1導水路R1へ切換え、電磁開閉弁22が完全に閉止されていない場合に流入する水をリム通水部4からボウル部14内に流入させる。
【0059】
以上、実施形態を通して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0060】
例えば、洗浄水供給手段8の構成は、電磁開閉弁22と流路切換弁23を直列に設けるのではなく、給水管R0を分岐して各分岐流路にそれぞれ電磁開閉弁を設け、各電磁開閉弁に第1導水路R1、第2導水路R2を連通連結しても構わない。
【0061】
また、第3導水路R3とゼット用通水管5とを、理解を容易にするために区別して説明したが、前記第3導水路R3の概念は前記ゼット用通水管5を含むものであっても構わない。
【0062】
また、給水制御において、前記第2導水路R2へ流路が切り換えられた状態で第3導水路R3を用いてゼット洗浄を行った後、ボウル部14内を水封するために流路を再び前記第1導水路R1へ切換える際に、上述した例では流路を切り換えるタイミングとポンプ72の駆動を停止するタイミングとを略同時として説明したが、両者のタイミングは必ずしも一致させる必要はない。例えばボウル部14内の水封時にゼット孔51からの吐水があっても構わない。
【0063】
さらに、上述してきた水洗便器1は、ポンプユニット7を予め備えた構成として説明したが、例えば、既設のタンクレスの水洗便器に、ポンプユニット7を後付けすることも可能である。その場合、機能部ケーシング13内にはバルブユニット2を配設する空間を確保しておくとともに、便器本体10の後部に設けた袴部19に代えて化粧カバーなどを着脱自在に取付け、さらに、この化粧カバー及び便器本体10に、配管に必要なスペースや挿通穴などを予め設けておくとよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係る水洗便器の正面図である。
【図2】図1に示す水洗便器を後方からの斜視図である。
【図3】図1に示す水洗便器の模式的説明図である。
【図4】図1に示す水洗便器の便器本体内部に収納したブル部ユニットを含む配管の説明図である。
【図5】図1に示す水洗便器における洗浄時のタイムチャートである。
【図6】大気開放弁の説明図である。
【図7】逆止弁の説明図である。
【符号の説明】
【0065】
1 水洗便器
2 バルブユニット
3 水道管
4 リム通水部
5 ゼット通水管
6 水道管
7 ポンプユニット
8 洗浄水供給手段
10 便器本体
14 ボウル部
15 トラップ排水路
22 電磁開閉弁
23 流路切換弁
51 ゼット孔
71 タンク
72 ポンプ
73 貯留水
R1 第1導水路
R2 第2導水路
R3 第3導水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧送した洗浄水により洗浄される水洗便器であって、
リム通水部とゼット孔が形成されたボウル部、及び、トラップ排水路を備えた便器本体と、
洗浄水を貯留するタンクと、
このタンクに貯留された洗浄水を上記ゼット孔に圧送してゼット孔から吐水させるポンプと、
水道管からの洗浄水を上記リム通水部及び上記タンクに選択的に供給する洗浄水供給手段と、
上記リム通水部及び上記ゼット孔から洗浄水を所定の順番で吐水させると共に、上記ポンプにより上記ゼット孔から洗浄水を吐水させるとき、上記洗浄水供給手段により水道管から洗浄水を上記タンクへ供給させる給水制御手段と、
を有することを特徴とする水洗便器。
【請求項2】
圧送した洗浄水により洗浄される水洗便器であって、
洗浄水吐出部を備えた便器本体と、
洗浄水を貯留するタンクと、
このタンクに貯留された洗浄水を上記洗浄水吐出部に圧送して洗浄水吐水部から吐水させるポンプと、
上記タンクから洗浄水吐出部への給水タイミングと同期して水道管から洗浄水を上記タンクに供給する給水制御手段と、
を有することを特徴とする水洗便器。
【請求項3】
上記タンクの容量は、2〜3リットルである請求項1又は請求項2に記載の水洗便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−146655(P2007−146655A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70692(P2007−70692)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【分割の表示】特願2004−75231(P2004−75231)の分割
【原出願日】平成16年3月16日(2004.3.16)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】