説明

水洗便器

【課題】 衛生陶器のような製造ばらつきの影響を受けないでガタツキのない部材開口の化粧キャップの固定方法を提供する。
【解決手段】 部材開口に固定される化粧キャップの取り付け構造であって、前記化粧キャップは、前記開口周囲の部材表面に当接するリング状のフランジ部と、前記開口の内方に位置する脚部とからなり、この脚部には、螺子が貫通固定される孔が設けられ、前記開口の内周面には、開口から内方に向かって漸次拡径したテーパ面を形成し、前記螺子を固定する際に、前記螺子先端が前記テーパ面に当接した状態で化粧キャップとともに前記テーパ面に沿って内方に移動可能であることを特徴とする化粧キャップの取り付け構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗面器や浴槽といった衛生設備機器のオーバーフロー孔などの開口周囲を覆う化粧キャップの取り付け構造及びそれを用いた衛生設備機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、洗面器のオーバーフロー孔の化粧キャップは、樹脂成形品や金属の部品にめっき等の表面処理を施したものを、ボウル面側に面するオーバーフロー孔周囲を覆うように固定して、主として意匠性の向上を図ったものである。
【0003】
上記化粧キャップは、通常、外観に現れるリング状のフランジ部とオーバーフロー孔内に挿入されるフランジ部から連設された脚部とにより構成されている。
【0004】
化粧キャップを固定する方法としては、オーバーフロー孔から流出される水を排水配管に誘導する接続管を利用するもので、この接続管のオーバーフロー孔近傍に設けられた係止部に、化粧キャップの脚部の弾性変形を利用して係止するフックを脚部に設け、オーバーフロー孔から脚部を押し込むことによって、フックと係止部が嵌合して化粧キャップが固定されるものがある。(例えば、特許文献1)
【0005】
【特許文献1】実開昭53−20142公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような化粧キャップの固定では、化粧キャップを固定する内部の接続管の構成が複雑になる。また、フックの固定の場合には、洗面器の接続管を陶器で一体に形成した流路で構成し、その洗面器のオーバーフロー孔内のボウル側開口と反対側の開口の周囲である洗面器周囲の端面を係止部として、接続管なしで固定することも可能である。
しかしながら、衛生陶器のような製造ばらつきがあるものでは、化粧キャップの平面部が陶器面に密接しないで、隙間をもって固定されることがあるので、化粧キャップにガタツキが生じるといった問題点を有していた。
【0007】
本発明は、衛生陶器のような製造ばらつきの影響を受けないでガタツキのない化粧キャップの固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、部材開口に固定される化粧キャップの取り付け構造であって、前記化粧キャップは、前記開口周囲の部材表面に当接するリング状のフランジ部と、前記開口の内方に位置する脚部とからなり、この脚部には、螺子が貫通固定される孔が設けられ、前記開口の内周面には、開口から内方に向かって漸次拡径したテーパ面を形成し、前記螺子を前記脚部の孔に固定する際に、前記螺子先端が前記テーパ面に当接した状態で化粧キャップとともに前記テーパ面に沿って内方に移動可能であることを特徴とする化粧キャップの取り付け構造とした。
【0009】
上記構成とすることで、化粧キャップは、脚部の孔に螺子を固定する際に、螺子が脚部を貫通し、螺子の先端がテーパ面に当接して、更に、螺子を押し込むと螺子の先端は、テーパ面に沿って滑り内方に移動するが、その際、螺子によって固定されている化粧キャップも同様に移動することになる。この移動は、化粧キャップのフランジ部が開口周囲の部材表面に当接して、螺子の移動が規制されるまで行われ取り付けが完了する。
【0010】
また、好ましい形態として、テーパ面を前記開口の内周面に形成された溝の底面に形成した。このような構成とすることで、例えば、化粧キャップに上下方向があったり、異型のフランジ部であったり、固定に際して方向性が要求されるような場合には、脚部の孔の位置を溝の位置を予め調整しておくことによって、化粧キャップを適切な位置に固定することでできる。
【0011】
また、好ましい形態として、脚部の先端は、開口内周面内に位置していることとした。この様な構成とすることで、例えば、オーバーフロー孔から排出される水が開口を経由して排水路に向かうことになるが、その際に、排水路の流路抵抗となるようなもの(従来のフックなど)が存在しないので、流水の圧力損失をもたらさず、良好なオーバーフロー性能を発揮できることになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、衛生陶器のような製造ばらつきの影響を受けないでガタツキのない部材開口の化粧キャップの固定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る洗面器の断面図、図2は図1の破線囲まれた部位Aの拡大図、図3は、オーバーフロー孔の内方(矢印B方向)から見た拡大図である。
【0014】
図1に示すように、陶器で形成される洗面器1は、水を溜めうるボウル部2と、水を排出する排水口3と、ボウル部2上縁のリム部4より低い位置で、洗面器を利用する場合の使用者の正面(図面では、右側)設けられたオーバーフロー孔5と、前記排水口3とオーバーフロー孔5とをつなぐ排水路6とからなっている。排水路6は、陶器で一体に形成されている。
【0015】
前記オーバーフロー孔5には、化粧キャップ7が固定されている。化粧キャップ7は、ボウル部2側に臨む円形リング形状のフランジ部8と脚部9とからなり、前記脚部には、螺子10が固定し得る孔9aが形成されている。
【0016】
また、オーバーフロー孔5の奥行きは、陶器の厚みに相当する内周面は、オーバーフロー孔5のボウル部2側の開口から内方(排水路側)向かって漸次拡径したテーパ面11が内周面全周に形成されている。
【0017】
なお、前記テーパ面11は、内周面全周に形成することなく、図3に示すようオーバーフロー孔5の内周面の一部に溝5aを形成し、その底面をテーパ面としても良い。この場合、テーパ面の位置が決まるので、それに合わせて、化粧キャップ7の脚部9の孔9aの位置を設定できるので、化粧キャップ7の上下、回転方向の位置を設定された位置に配置することが可能となる。
【0018】
また、化粧キャップ7の脚部9を円筒状とすることで、オーバーフロー孔の内周面は、化粧キャップ9の脚部9の内周面で覆われることになるので、表面が平滑であることによる汚れの付着や内周面がめっきや金属表面となるので、オーバーフロー孔内の意匠性も向上することが可能となる。このことは、従来、脚部に弾性を付与するために形成されたスリットが、脚部内周面に凹凸を形成し、その段差が使用者の目に触れることで、洗面器と化粧キャップとの一体感を損ね意匠性が低下してしまったことに対して優位性が有する。
【0019】
以上の構成からなる洗面器のオーバーフロー孔の化粧キャップの固定動作を化粧キャップとオーバーフロー孔のテーパ面を拡大して模式化した図4に基づいて説明する。
【0020】
先ず、図4(a)は初期状態で化粧キャップ7の脚部9をオーバーフロー孔5内に挿入した状態を示している。通常は、フランジ部8はオーバーフロー孔5の周囲の陶器面に、当接した状態で多少のガタツキをもって固定動作に入るが、化粧キャップの動きが理解しやすいようにフランジ8と洗面器1陶器面は、若干の隙間を空けている。
【0021】
次に、螺子10を脚部9に孔9a内に位置させ、螺子10を回転させ締めこむことで、化粧キャップ7を固定していく、螺子10は、孔9aを貫通し、オーバーフロー孔5内周面に形成されたテーパ面11に当接する。更に、螺子10を回転させ、テーパ面11に螺子10先端を押し付けると螺子10の先端は、図4(b)に示すようにテーパ面11を滑りながら内方(図示右側)に移動することになる。この際、化粧キャップ7は、螺子10に孔9aにガタツキなく固定されている状態であるので、螺子10の移動と化粧キャップ7の移動は一緒の動作となる。
【0022】
上記動作を続けると化粧キャップ7のフランジ部9がオーバーフロー孔5の周囲の陶器面に押し付けられ、螺子10の移動ができなくなるまで螺子10を締めこむことで、フランジ部8はオーバーフロー孔5の周囲の陶器面に付勢された状態で固定されるため、ガタツキのない固定が可能となっている。
【0023】
また、脚部9に先端は、オーバーフロー孔5の開口内周面内に位置している。排水路6内までに突出しない位置にすることで、流水の圧力損失をもたらさず、オーバーフローした水は、円滑に排水路6にまで流れ込み排水口3に至ることになる。
【0024】
更に、固定完了の際に、螺子の頭の部分は、化粧キャップ内周面と面一かそれより内側に来るように設定することで、内周面の意匠性、排水時の圧損を生じさせないようにできる。
【0025】
上記実施形態では、衛生陶器である洗面器の例を示したが、浴槽のオーバーフロー孔にも適用可能なことは当然であるが、その他の衛生設備機器に限らず、部材の開口周囲の意匠性向上や開口内の流路形成など部材の開口に固定する化粧キャップに適用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る洗面器の断面図
【図2】図1に係るA部拡大図
【図3】本発明のテーパ面の他の形態を示す部分外観図
【図4】(a)、(b)は本発明に係る動作を説明した図
【符号の説明】
【0027】
1…洗面器、2…ボウル部、3…排水口、4…リム部、5…オーバーフロー孔、5a…溝、6…排水路、7…化粧キャップ、8…フランジ部、9…脚部、10…螺子、11…テーパ面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材開口に固定される化粧キャップの取り付け構造であって、
前記化粧キャップは、前記開口周囲の部材表面に当接するリング状のフランジ部と、
前記開口の内方に位置する脚部とからなり、
この脚部には、螺子が貫通固定される孔が設けられ、
前記開口の内周面には、開口から内方に向かって漸次拡径したテーパ面を形成し、
前記螺子を前記脚部の孔に固定する際に、前記螺子先端が前記テーパ面に当接した状態で化粧キャップとともに前記テーパ面に沿って内方に移動可能であることを特徴とする化粧キャップの取り付け構造。
【請求項2】
前記テーパ面は、前記開口の内周面に形成された溝の底面に形成されていることを特徴とする請求項1記載の化粧キャップの取り付け構造。
【請求項3】
前記脚部の先端は、前記口内周面内に位置していることを特徴とする請求項1記載の化粧キャップの取り付け構造。
【請求項4】
前記請求項1乃至3の何れかに記載の化粧キャップの取り付け構造を利用した衛生設備機器。












【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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