説明

水洗便器

【課題】エアギャップ装置から排出される余剰水を有効利用する。
【解決手段】水洗便器は、便器本体10用の洗浄水を貯留する洗浄タンク11と、局部洗浄用のノズル12に洗浄水を供給する給水路13に設けたエアギャップユニット30を備える。エアギャップユニット30は、貯水部39と、貯水部39の最高貯水位39Wよりも上方に配置した吐水口50と、貯水部39内の水を吸引してノズル12へ圧送するポンプ62を備える。局部洗浄時は、吐水口50から貯水部39内へ水を流下させながらポンプ62による吸水と圧送を行うとともに、ポンプ62で吸引されなかった余剰水を、貯水部39から溢れさせて、排水部35から洗浄タンク11内に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアギャップ装置を備えた水洗便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、便器本体と、便器本体用の洗浄水を貯留する洗浄タンクと、局部洗浄用のノズルに洗浄水を供給する給水路の途中に設けたエアギャップ装置とを備えた水洗便器が開示されている。エアギャップ装置は、貯水部と、貯水部の最高貯水位よりも上方に配置された吐水口と、貯水部内の水を吸引してノズルへ圧送するポンプとを備えている。局部洗浄が行われるときには、吐水口から貯水部内へ水を流下させながらポンプによる吸水と圧送を行うとともに、ポンプで吸引されなかった余剰水を貯水部から溢れさせるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−65455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のエアギャップ装置では、局部洗浄が行われている間に貯水部から溢れた余剰水を、便器本体の便鉢内に排出するようになっている。しかし、通常、局部洗浄は便鉢を洗浄する前に行われるので、便鉢に排出される余剰水は、便鉢の洗浄効果の向上に寄与することはない。また、貯水部から溢れる余剰水の流量は、単独で便鉢内の汚物を洗い流せるほど多くない。したがって、余剰水は無駄に排出されていることになる。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、エアギャップ装置から排出される余剰水を有効利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、便器本体と、前記便器本体用の洗浄水を貯留する洗浄タンクと、局部洗浄用のノズルに洗浄水を供給する給水路の途中に設けたエアギャップ装置とを備え、前記エアギャップ装置は、貯水部と、貯水部の最高貯水位よりも上方に配置した吐水口と、前記貯水部内の水を吸引して前記ノズルへ圧送するポンプとを備え、局部洗浄が行われるときには、前記吐水口から前記貯水部内へ水を流下させながら前記ポンプによる吸水と圧送を行うとともに、前記ポンプで吸引されなかった余剰水を前記貯水部から溢れさせるようになっている水洗便器において、前記エアギャップ装置が、前記貯水部から溢れた余剰水を前記洗浄タンク内に排出する排水部を備えているところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記洗浄タンクは、洗浄水を貯留する上面開放のタンク本体と、前記タンク本体に対しその上面の開口を塞ぐように取り付けられるタンクカバーとを備えて構成され、前記エアギャップ装置が、前記タンクカバーで囲まれた空間内に収容されて、前記タンク本体の最高貯水位よりも上方の位置に配置されているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記エアギャップ装置は、前記タンク本体に対して着脱可能な略水平なプレート状の支持部材と、通電により作動して前記貯水部における給水と吸水を行う機能部品とを備えており、前記機能部品が前記支持部材の上面側に取り付けられ、前記吐水口が、下方に向かって開口した状態で前記支持部材に設けられ、前記貯水部と前記排水部が前記支持部材の下面側に設けられているところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記給水路における前記ポンプよりも下流側には、前記ポンプよりも下方に位置するように温水タンクが設けられており、前記給水路における前記ポンプと前記温水タンクとの間には、バキュームブレーカが設けられているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
局部洗浄が行われている間、貯水部から溢れた余剰水が洗浄タンク内に貯留されて、洗浄タンク内の貯水量が増える。洗浄タンク内の貯水量が増えると、便器本体を洗浄する際に洗浄タンクから供給される洗浄水の流量も増えるので、洗浄効果が向上する。本発明によれば、エアギャップ装置から排出された余剰水を、便器本体の洗浄効果向上のために有効利用することができる。
【0011】
<請求項2の発明>
エアギャップ装置をタンクカバーで囲まれた空間内に収容したので、エアギャップ装置に対する異物の干渉を防止できる。また、エアギャップ装置は、タンク本体の最高貯水位よりも上方に配置されているので、タンク本体内の洗浄水中に浸漬される虞がない。
【0012】
<請求項3の発明>
機能部品は、吐水口から貯水部に至る水の流下経路、及び貯水部から溢れた余剰水の排出経路よりも上方に位置しているので、これらの経路を流れる水で濡らされる虞がない。また、エアギャップ装置は、その構成手段が支持部材によって一体化されているので、タンク本体に対する着脱時の作業性がよい。
【0013】
<請求項4の発明>
ポンプが停止した状態でポンプよりも下流側の水が温水タンク内に流下した場合、給水路におけるポンプと温水タンクとの間の領域が負圧になって、ポンプ内部の水が下流側へ吸い出され、ポンプ内が水切れ状態になることが懸念される。しかし、本発明では、ポンプと温水タンクとの間にバキュームブレーカを設け、給水路におけるポンプと温水タンクとの間の領域が負圧にならないようにしたので、ポンプ内部の水が下流側へ吸い出されることに起因してポンプ内が水切れ状態になることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1の水洗便器の一部切欠斜視図
【図2】洗浄タンクに取り付けたエアギャップ装置を斜め前方から視た状態をあらわす一部切欠斜視図
【図3】洗浄タンクに取り付けたエアギャップ装置を斜め後方から視た状態をあらわす一部切欠斜視図
【図4】エアギャップ装置を斜め前方から視た斜視図
【図5】エアギャップ装置のサブタンクを斜め前方から視た状態をあらわす一部切欠斜視図
【図6】サブタンクの縦断面図
【図7】サブタンクの水平断面図
【図8】規制部材の正面図
【図9】規制部材の分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図9を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態の水洗便器は、便鉢(図示省略)を有する便器本体10と、便器本体10内(便鉢内)を洗浄するための洗浄水を貯留する洗浄タンク11と、局部洗浄用のノズル12に洗浄水を供給するための給水路13と、給水路13の途中に設けたエアギャップユニット30(本発明の構成要件であるエアギャップ装置)と、ノズル12とエアギャップユニット30との間に設けた温水タンク14とを備えて構成されている。
【0016】
洗浄タンク11は、洗浄水を貯留する上面開放のタンク本体15(図2,3を参照)と、タンク本体15に対しその上面の開口を塞ぐように取り付けられるタンクカバー16(図1を参照)とを備えている。図3に示すように、タンク本体15内には、その上端の開口部の近くに位置するように給水バルブ17が取り付けられている。給水バルブ17の流入側接続部18は、タンク本体15の外面側に露出されている。給水バルブ17は、上向きのノズル側吐出部19と、水平右向きの便鉢側吐出部とを有している。便鉢側吐出部には、タンク本体15内に洗浄水を供給するための供給ホース20が接続されている。
【0017】
図1に示すように、タンクカバー16は、タンク本体15の外周を包囲する上面開放のカバー本体21と、カバー本体21の上面を塞ぐ蓋カバー22とから構成されている。カバー本体21には、便座23と便蓋24が取り付けられ、カバー本体21の内部には、ノズル12を含む局部洗浄機構や温水タンク14等の機器が収容されている。
【0018】
ノズル12用の給水路13のうちエアギャップユニット30よりも上流側の流路は、建物の壁面において水道配管に接続されたタンク外配管25と、タンクカバー16の底部においてタンク外配管25の下流端に接続され、カバー本体21とタンク本体15との隙間に収容された上下方向のタンク内配管26とによって構成されている。図3に示すように、タンク内配管26の下流端(上端部)は、給水バルブ17の流入側接続部18に接続されている。また、図1,3に示すように、給水路13のうちエアギャップユニット30よりも下流側の流路は、カバー本体21とタンク本体15との隙間に収容された上下方向の流出管27を備えて構成されている。流出管27の下流端(下端部)には温水タンク14が接続されている。
【0019】
図2〜4に示すように、エアギャップユニット30は、略水平な支持プレート31(本発明の構成要件である支持部材)を有し、この支持プレート31に複数の部材を組み付けて一体化(ユニット化)したものである。支持プレート31には、ノズル12に供給するための水を貯留するためのサブタンク32と、通電により作動してサブタンク32への給水を行う定流量弁付きの電磁開閉弁60(本発明の構成要件である機能部品)と、通電により作動してサブタンク32内の水を吸い上げてノズル12に圧送するためのポンプ62(本発明の構成要件である機能部品)と、ポンプ62内の水切れを防止するためのバキュームブレーカ63と、流出用接続部材64と、上記の部材32,60,62,63,64間を連絡するユニット内流路65とが一体的に取り付けられており、これらの部材32,60,62,63,64,65と支持プレート31とによってエアギャップユニット30が構成されている。
【0020】
図5,6に示すように、サブタンク32は、合成樹脂製であり、上面開放のハウジング33と、ハウジング33に対しその上面の開口部を塞ぐように組み付けられる蓋部材34とを備えて構成されている。図7に示すように、サブタンク32の平面形状は、右端部が略半円形をなし、それ以外の領域が左右方向に長い方形をなす。尚、本実施形態において、サブタンク32(ハウジング33)の幅方向は、水洗便器における前後方向と同じ方向を意味し、図7においては上下方向であり、水平面上においては後述する吐水口50から規制部材44を経て吸水口52側に向かう水の全体としての流動経路の方向(つまり、左右方向)と略直角に交差する方向、と定義する。
【0021】
図5〜7に示すように、ハウジング33は左右方向に長く、ハウジング33の底壁部には、その左側の端部をハウジング33の全幅に亘って略方形に開口させることによって排水部35が形成されている。排水部35の開口縁のうち右側縁部には、底壁部から立ち上がって排水部35側へ逆U字形に湾曲した形状の隔壁部36が形成されている。隔壁部36の略半円形をなす上端縁は、溢れ縁37となっている。
【0022】
ハウジング33の底壁部のうち略半円形をなす右端部は、右方に向かって上り勾配となった傾斜面38となっている。傾斜面38の最大高さ(右端の高さ)は、溢れ縁37よりも高くなっている。ハウジング33の底部のうち排水部35と傾斜面38の右端側部分とを除いた領域は、所定量の水を貯留するための貯水部39となっている。図6に示すように、左右方向における貯水部39の形成領域は、溢れ縁37から傾斜面38の下端縁よりも少し右方の位置に至る範囲である。幅方向においては、貯水部39はハウジング33の全幅に亘って形成されている。また、貯水部39における最高貯水位39W(後述する吐水口50からの水の供給動作が停止して貯水部39内の水が静止した状態において、貯水部39の貯水量が最大となったときの水位)は、溢れ縁37と同じ高さである。
【0023】
図5〜7に示すように、貯水部39の底面には、左右方向において傾斜面38の下端と隔壁部36と中間位置よりも少し隔壁部36に近い位置から上方へ直角に立ち上がる仕切部40が、一体に形成されている。仕切部40は、板面を幅方向と平行に向けた平板状をなし、仕切部40の上端縁は、溢れ縁37とほぼ同じ高さとなっている。また、幅方向における仕切部40の形成範囲は、貯水部39の前端よりも少し後方の位置から、貯水部39の後端に至る範囲である。貯水部39は、この仕切部40により、左側の吸水側貯水領域41Lと右側の吐水側貯水領域41Rとに仕切られている。また、仕切部40の後端は、ハウジング33(貯水部39)を構成する後壁部に連なっているのに対し、仕切部40の前端は、ハウジング33を構成する前壁部から離間しており、この前面壁と仕切部40の前端と間は、吸水側貯水領域41Lと吐水側貯水領域41Rとを連通する切欠部42となっている。
【0024】
図7に示すように、ハウジング33の前面壁と後面壁には、左右方向において、傾斜面38の下端と仕切とのほぼ中間位置に位置する左右一対の嵌合溝43が形成されている。図5,6に示すように、一対の嵌合溝43は、上下方向に延びており、嵌合溝43の上端は開放されている。また、嵌合溝43の下端は、貯水部39の底面よりも上方の位置に設定されている。この一対の嵌合溝43には、多孔状の規制部材44が取り付けられている。
【0025】
図8,9に示すように、規制部材44は、全体として、板面を幅方向と平行に且つ左右方向と直角に向けた正方形の板状をなす。規制部材44は、形状及び大きさが同一である2枚の正方形の規制板45を重ね合わせて構成されている。規制板45には、外周縁と平行な複数のスリット46が一定ピッチで並列して形成されており、規制部材44は、この2枚の規制板45を、互いに90°向きを変えた状態で重ねて構成されている。これにより、規制部材44には、互いに直角に交差するスリット46で構成される多数の細かい貫通孔部47が格子状に形成されている。
【0026】
図5〜7に示すように、規制部材44は、その前後両側縁部を上方から嵌合溝43に落とし込むように嵌合させることで、ハウジング33に取り付けられている。ハウジング33に取り付けられた規制部材44は、ハウジング33の内部空間を全幅に亘って左右に仕切っている。また、嵌合溝43の下端は貯水部39の底面よりも上方に位置するので、規制部材44の下端縁も、その全幅に亘って貯水部39の底面より上方に位置する。そして、規制部材44の下端縁と貯水部39の底面との間は、水が規制部材44による抵抗を殆ど受けずに流動できるようにするための連通路48となっている。連通路48の上端の高さ(規制部材44の下端縁の高さ)は、貯水部39の最高貯水位39Wよりも低い位置となっている。また、嵌合溝43に嵌合された規制部材44の上端縁は、後述する蓋部材34の下面及び吐水口50よりも少し下方に配置されている。
【0027】
図5,6に示すように、サブタンク32を構成する蓋部材34は、水平な蓋本体49と、蓋本体49の右端部において上下に貫通するように形成した吐水口50と、蓋本体49の左端側の位置から下方へ突出するように形成した貫通形態の筒状吸水部51とを一体に形成して構成されている。吐水口50は蓋本体49の下面に開口している。したがって、吐水口50は、規制部材44の上端縁よりも上方に位置し、貯水部39の最高貯水位39Wよりも高い位置で開口していることになる。そして、貯水部39と吐水口50との間には、貯水部39に貯留されている水が吐水口50側(上流側)へ逆流するのを防止するためのエアギャップ(吐水口空間)が形成されている。また、吐水口50の開口位置は、幅方向においてはサブタンク32(貯水部39)の中央であり、左右方向においては、吐水側貯水領域41Rの右端部であって傾斜面38と対応する位置である。
【0028】
筒状吸水部51の下端の開口は、吸水口52となっている。上下方向において、吸水口52の高さは、仕切部40の上端縁及び溢れ縁37(貯水部39の最高貯水位39W)よりも低い高さとなっている。したがって、貯水部39に水が貯留されると、その水の中に吸水口52が浸漬されるようになっている。また、図7に示すように、吸水口52の開口位置は、左右方向においては吸水側貯水領域41Lと対応する位置であり、幅方向においては切欠部42とは反対側の端部の位置となっている。
【0029】
図2〜6に示すように、蓋本体49の上面には、略L字形をなす吐水側接続部材53が、その下端面の開口を吐水口50に連通させた状態で取り付けられている。同じく蓋部材34の上面には、略L字形をなす吸水側接続部材54が、その下端面の開口を筒状吸水部51の上端に連通させた状態で取り付けられている。図5,6に示すように、この蓋部材34は、蓋本体49の周縁部をシールリング55を介してハウジング33の上端縁部に載置するようにしてハウジング33に組み付けられている。
【0030】
図2に示すように、支持プレート31には、その上面側を凹ませた形態の箱状をなす収容凹部56が形成されており、この収容凹部56内にはサブタンク32が収容されてボルト(図示省略)により固定されている。収容凹部56の底板部には、サブタンク32の排水部35と対応する排水用開口部57が形成されている。収容凹部56にサブタンク32を取り付けた状態では、吐水口50が支持プレート31よりも少し低い位置において下向きに開口し、貯水部39と排水部35が支持プレート31よりも下方に位置する。
【0031】
図2〜4に示すように、支持プレート31の上面には、電磁開閉弁60と、ポンプ62と、バキュームブレーカ63と、流出用接続部材64と、ユニット内流路65とが取り付けられている。電磁開閉弁60は、支持プレート31の左端部に配置され、その下面には、タンク本体15に取り付けられている給水バルブ17のノズル側吐出部19と接続するための接続ポート61(図4を参照)が設けられている。電磁開閉弁60は、通電により開閉駆動される。開弁状態では、所定の流量の水が電磁開閉弁60から下流側のサブタンク32へ供給され、閉弁状態では、サブタンク32側への水の供給が停止する。
【0032】
ポンプ62は、ギヤポンプからなり、支持プレート31の右端部に配置されている。ポンプ62は、通電により電磁開閉弁60の開閉と連動して作動する。電磁開閉弁60が開弁されると、ポンプ62が作動し、サブタンク32内の水が吸い上げられてノズル12側へ圧送され、電磁開閉弁60が閉弁されると、ポンプ62の駆動が停止し、サブタンク32内の水の吸い上げとノズル12側への水の圧送が停止する。バキュームブレーカ63は、ポンプ62内の水切れを防止するために設けたものであって、電磁開閉弁60よりも少し右方の位置に配置されている。図3に示すように、流出用接続部材64は、電磁開閉弁60の後方近傍位置に配置されている。
【0033】
図2〜4に示すように、ユニット内流路65は、第1〜第4流路66A〜66Dによって構成されている。第1流路66Aは、電磁開閉弁60の流出ポートとサブタンク32の吐水側接続部材53との間を接続し、これにより、電磁開閉弁60が吐水口50に接続される。第2流路66Bは、吸水側接続部材54とポンプ62の流入ポートとの間を接続し、これにより、ポンプ62が吸水口52に接続される。第3流路66Cは、ポンプ62の流出ポートとバキュームブレーカ63の流入ポートとの間を接続する。第4流路66Dは、バキュームブレーカ63の流出ポートと流出用接続部材64との間を接続する。
【0034】
上記構成になるエアギャップユニット30は、タンク本体15に対し、その上面の開口を支持プレート31で塞ぐような形態で取り付けられている。取付けの際には、電磁開閉弁60のポート61を給水バルブ17のノズル側吐出部19に接続する。また、流出用接続部材64には、温水タンク14から上方に延びた流出管27の上端部(上流端)が接続される。また、貯水部39と吐水口50はサブタンク32の内部に収容されているので、エアギャップユニット30をタンク本体15に取り付けた状態では、貯水部39と吐水口50との間のエアギャップ(吐水口空間)が、サブタンク32を構成する側壁部によってタンク本体15内における洗浄水の貯留空間から仕切られている。
【0035】
タンク本体15にエアギャップユニット30を取り付けた後は、カバー本体21の上面開口部にタンクカバー16の蓋カバー22を取付ける。これにより、エアギャップユニット30が、タンクカバー(蓋カバー22)で囲まれた空間内に収容され、タンク本体15よりも上方、即ちタンク本体15の最高貯水位よりも上方の位置に配置される。尚、エアギャップユニット30は、タンク本体15から外すことができるようになっている。
【0036】
次に、本実施形態の作用を説明する。局部洗浄を行うときには、使用者の操作により、電磁開閉弁60が開弁状態に切り替わるとともにポンプ62の作動が開始され、電磁開閉弁60から吐出された水が、第1流路66Aを通って吐水口50から貯水部39内へ流下する。この吐水口50からの給水が行われている間に、貯水部39の水が、吸水口52から吸い上げられ、第2流路66Bとポンプ62と第3流路66Cとバキュームブレーカ63と第4流路66Dと流出管27を順に通り、温水タンク14を経てノズル12に供給される。
【0037】
また、ポンプ62の吸水量は、吐水口50からの給水量よりも少量に抑えられているので、ポンプ62で吸引されずに貯水部39から溢れた余剰水は、排水部35からサブタンク32外へ排出される。ここで、サブタンク32はタンク本体15内に収容されており、排水部35が、タンク本体15内の上端位置において排水用開口部57を介して下方へ開口されている。したがって、貯水部39から溢れた余剰水は、排水部35と排水用開口部57を通って落下し、タンク本体15内に貯留される。余剰水がタンク本体15内に排出されると、洗浄タンク11内の貯水量が増える。洗浄タンク11内の貯水量が増えると、局部洗浄の後で便器本体10を洗浄する際に洗浄タンク11から便鉢に供給される洗浄水の流量も増えるので、洗浄効果が向上する。このように本実施形態によれば、エアギャップユニット30から排出された余剰水を、便器本体10の洗浄効果向上のために有効利用することが実現されている。
【0038】
また、局部洗浄が終わると、使用者の操作により、電磁開閉弁60が閉弁状態に切り替わるとともにポンプ62の作動が停止し、サブタンク32(貯水部39)に対する水の供給と、サブタンク32(貯水部39)からの吸水及びノズル12への圧送が停止する。ポンプ62による圧送が停止すると、流出管27内の水が下方の温水タンク14内に流れ落ちて流出管27が負圧になるため、第3流路66C及び第4流路66D内の水が温水タンク14側へ流出し、これに伴って第3流路66C及び第4流路66D内が負圧になる。したがって、第3流路66Cと第4流路66Dが負圧のままであれば、ポンプ62内の水が下流側(第3流路66C及び第4流路66D側)へ吸い出されて、ポンプ62内が水切れ状態となることが懸念される。
【0039】
その対策として本実施形態では、第3流路66C及び第4流路66D(給水路13におけるポンプ62と温水タンク14との間)にバキュームブレーカ63を設けた。これにより、第3流路66C及び第4流路66Dが負圧になったときには、バキュームブレーカ63が作動して第3流路66C及び第4流路66D内に外気が導入されるので、第3流路66C及び第4流路66Dが負圧のままになることが回避される。したがって、ポンプ62内部の水が下流側へ吸い出されることがなく、ポンプ62が水切れ状態になることを防止できる。
【0040】
また、本実施形態のエアギャップユニット30では、吐水口50から貯水部39へ水が流下するのに伴い、大きな気泡が発生したり、流下する水に小さい気泡が含まれたりすることは避けられない。もし、これらの気泡が吸水口52からポンプ62に吸い込まれると、ポンプ62でエア噛みが発生し、良好な吸水と圧送に支障を来すことになる。そこで、本実施形態では、ポンプ62におけるエア噛みを防止する手段として、気泡が発生するサブタンク32の内部に規制部材44を設けている。この規制部材44は、多数の細かい貫通孔部47を有する多孔状をなし、水平方向(吐水口50から流下した水が吸水口52に向かって流れる方向)において吐水口50と吸水口52との間を遮るように配置されている。これにより、吐水口50から貯水部39へ水が流下するのに伴って気泡が生じても、その気泡は、規制部材44のうちスリット46(貫通孔部47)が形成されていない部分に衝突して吸水口52側へ移動するのを規制される。したがって、気泡が吸水口52から吸い込まれるという事態が生じ難く、ポンプ62におけるエア噛みを抑制することができる。
【0041】
また、大きな気泡は貯水部39内の水面よりも上方に浮き上がるという点に着目し、規制部材44の下端縁を、貯水部39の底面よりも上方の位置に配置し、規制部材44の下端縁と貯水部39の底面との間に連通路48を形成した。この構成によれば、貯水部39に流下した水に含まれる気泡は、速やかに水面上へ移動するので、規制部材44によって吸水口52側への移動を規制される。一方、気泡の含有量が減少した水のうち貯水部39の底面に沿って低く流れるものは、規制部材44による抵抗を殆ど受けずに連通路48(規制部の下方)を通過することができる。また、水の一部は規制部材44の貫通孔部47を通過して吸水口52側へ流れていく。このように本実施形態によれば、貯水部39内を吸水口52に向かって流れる水の圧力損失を抑えながら、気泡の吸水口52への到達を確実に防止することができる。
【0042】
尚、本実施形態では、2枚の規制板45を異なる向きに重ねることによって規制部材44を構成したが、吐水口50から供給される水の圧力が低い場合には、スリット46が同じ向きに揃うように重ねた2枚の規制板45、又は1枚の規制板45によって規制部材44を構成してもよい。このようにすれば、規制部材44のうちスリット46の開口領域全体が水の通過を許容する空間となるので、水が通過可能な空間の開口面積が貫通孔部47よりも広くなり、低圧の水でも圧力損失が低減される。
【0043】
また、サブタンク32内には、貯水部39の底面における規制部材44と吸水口52との間の位置から立ち上がる仕切部40を形成し、この仕切部40により、貯水部39を、吸水口52を浸漬させる吸水側貯水領域41Lと、吐水口50及び規制部材44に臨む吐水側貯水領域41Rとに仕切った。この構成によれば、吸水側貯水領域41Lでは、吐水側貯水領域41Rにおいて吐水口50から流下した水の勢いや衝撃等の影響を殆ど受けずに済むので、水位が安定する。これにより、吸水口52近傍の水位が不安定になることに起因するポンプ62のエア噛みを防止することができる。
【0044】
また、規制部材44から吸水口52に至る水の流動経路と交差する幅方向において、仕切部40の形成範囲を、貯水部39の一部のみであり、且つ幅方向において後方へ片寄った領域とし、仕切部40の非形成領域を、吸水側貯水領域41Lと吐水側貯水領域41Rとを連通させる切欠部42とした。さらに、吸水口52と切欠部42を、幅方向において互いに非対応の位置関係となるように配置した。換言すると、吸水口52を、幅方向において切欠部42とは反対側(後端側)に配置した。この構成によれば、規制部材44を通過した水は、仕切部40のうち吐水側貯水領域41Rに臨む側面に沿った経路と、切欠部42を通過する経路と、仕切部40のうち吸水側貯水領域41Lに臨む側面に沿った経路とを順に移動するので、水が規制部材44から吸水口52に至るまでの移動経路が仕切部40を迂回する経路となり、水が規制部材44から吸水口52に至るのに要する時間が長くなる。これにより、規制部を通過した時点で水に気泡が含有していても、その気泡の多くが、吸水口52に到達するまでの間に水面上(吸水口52よりも高い位置)まで浮き上がるので、吸水口52に吸い込まれる虞がなく、ポンプ62におけるエア噛みを、より確実に防止することができる。
【0045】
また、吐水口50から貯水部39へ水が供給されるときには、その水が直接、貯水部39の水面に落下すると、衝撃によって気泡が発生し易くなるのであるが、本実施形態では、吐水口50から落下した水の一部は、落下方向(鉛直方向)に対して斜めに形成した傾斜面38のうち貯水部39から右方へ外れた領域に落下するようになっている。これにより、気泡の発生が抑えられている。
【0046】
また、洗浄タンク11は、洗浄水を貯留する上面開放のタンク本体15と、タンク本体15の上面と外周面を覆い隠すタンクカバー16とを備えて構成されている点に着目し、エアギャップユニット30を、タンク本体15の上方であってタンクカバー16で囲まれた空間内に配置した。この構成によれば、エアギャップユニット30に対する異物の干渉を防止できる。また、エアギャップユニット30を、タンク本体15の最高貯水位よりも上方の位置に配置したので、タンク本体15内の洗浄水中に浸漬される虞がない。
【0047】
エアギャップユニット30は、タンク本体15に対して着脱可能な略水平な支持プレート31と、通電により作動して貯水部39における給水と吸水を行う電磁開閉弁60とポンプ62とを備えている。そして、電磁開閉弁60とポンプ62を支持プレート31の上面側に取り付け、吐水口50を、下方に向かって開口した状態で支持プレート31に設け、貯水部39と排水部35を支持プレート31の下面側に設けた。この構成によれば、電磁開閉弁60とポンプ62は、吐水口50から貯水部39に至る水の流下経路、及び貯水部39から溢れた余剰水の排出経路よりも上方に位置することになるので、これらの経路を流れる水で濡らされる虞がない。また、エアギャップユニット30は、その構成手段が支持プレート31によって一体化されているので、タンク本体15に対する着脱時の作業性に優れている。
【0048】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、貯水部を洗浄タンクとは別体の部品としたが、貯水部は洗浄タンクに一体に形成してもよい。
(2)上記実施形態では、貯水部と吐水口との間のエアギャップ(吐水口空間)と、洗浄タンク内の空間とをサブタンクの周壁部で仕切ったが、吐水口空間と洗浄タンク内の空間とを、直接、連通させてもよい。
(3)上記実施形態では、エアギャップ装置を洗浄タンク内に収容したが、エアギャップ装置は洗浄タンクの外部に配置してもよい。
(4)上記実施形態では、機能部品を支持部材の上面側に配置したが、機能部品を支持部材の下面側(即ち、上下方向において貯水部及び排水部と同じ側)に配置してもよい。
(5)上記実施形態では、エアギャップ装置の構成手段を支持プレートによって一体化(ユニット化)したが、エアギャップ装置の構成手段は、タンク本体に対して個別に取り付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…便器本体
11…洗浄タンク
12…ノズル
13…給水路
14…温水タンク
15…タンク本体
16…タンクカバー
30…エアギャップユニット(エアギャップ装置)
31…支持プレート(支持部材)
35…排水部
39…貯水部
39W…貯水部の最高水位
50…吐水口
60…電磁開閉弁(機能部品)
62…ポンプ(機能部品)
63…バキュームブレーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体と、
前記便器本体用の洗浄水を貯留する洗浄タンクと、
局部洗浄用のノズルに洗浄水を供給する給水路の途中に設けたエアギャップ装置とを備え、
前記エアギャップ装置は、
貯水部と、
前記貯水部の最高貯水位よりも上方の位置に配置した吐水口と、
前記貯水部内の水を吸引して前記ノズルへ圧送するポンプとを備え、
局部洗浄が行われるときには、前記吐水口から前記貯水部内へ水を流下させながら前記ポンプによる吸水と圧送を行うとともに、前記ポンプで吸引されなかった余剰水を前記貯水部から溢れさせるようになっている水洗便器において、
前記エアギャップ装置が、前記貯水部から溢れた余剰水を前記洗浄タンク内に排出する排水部を備えていることを特徴とする水洗便器。
【請求項2】
前記洗浄タンクは、洗浄水を貯留する上面開放のタンク本体と、前記タンク本体に対しその上面の開口を塞ぐように取り付けられるタンクカバーとを備えて構成され、
前記エアギャップ装置が、前記タンクカバーで囲まれた空間内に収容されて、前記タンク本体の最高貯水位よりも上方の位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載の水洗便器。
【請求項3】
前記エアギャップ装置は、
前記タンク本体に対して着脱可能な略水平なプレート状の支持部材と、
通電により作動して前記貯水部における給水と吸水を行う機能部品とを備えており、
前記機能部品が前記支持部材の上面側に取り付けられ、
前記吐水口が、下方に向かって開口した状態で前記支持部材に設けられ、
前記貯水部と前記排水部が前記支持部材の下面側に設けられていることを特徴とする請求項2記載の水洗便器。
【請求項4】
前記給水路における前記ポンプよりも下流側には、前記ポンプよりも下方に位置するように温水タンクが設けられており、
前記給水路における前記ポンプと前記温水タンクとの間には、バキュームブレーカが設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の水洗便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−97531(P2012−97531A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248291(P2010−248291)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】