説明

水洗大便器

【課題】ボウル部内の洗浄水の貯水タンクへの逆流を防止しながら、洗浄水をボウル部内にオーバーフローさせることができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明は、加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器(1)であって、ジェット吐水口が形成されたボウル部(12)を備えた水洗大便器本体(2)と、洗浄水を加圧する加圧ポンプ(34)と、この加圧ポンプによって加圧された洗浄水をジェット吐水口へ導くジェット側給水路と、このジェット側給水路の途中に設けられたジェット吐水用バキュームブレーカ(36)と、加圧ポンプによって加圧すべき洗浄水を貯水する貯水タンク(32)と、この貯水タンク内の洗浄水の水位が所定の水位以上に上昇したとき、貯水タンクからオーバーフローした洗浄水を、ジェット吐水用バキュームブレーカの大気開放部に流下させるリリース水路(32d)と、を有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水洗大便器に関し、特に、加圧した洗浄水により洗浄される水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許3542622号公報(特許文献1)には、ポンプ作動衛生器具及び便器設備が記載されている。この水洗便器(衛生器具)は、ボウル部後方の、ボウル部の上端面よりも低い位置に配置された洗浄水を貯水するためのタンクと、このタンク内の洗浄水を加圧するポンプを備えている。このポンプは便器洗浄時に作動され、タンク内の洗浄水を加圧してボウル内に吐水させ、便器を洗浄するように構成されている。即ち、この水洗便器では、洗浄水をポンプにより加圧してボウル部内に吐出させているため、洗浄水を吐出させるための水頭圧を必要とせず、タンクを低い位置に配置することが可能になる。これにより、タンクを備えていながら全高の低い水洗大便器を実現している。また、この水洗便器においては、タンクからのオーバーフロー水は、ボウル部の壁面に形成された開口部に連通したオーバーフロー水路を通ってボウル部に流入するように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特許3542622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許3542622号公報記載の水洗便器では、オーバーフロー水路がボウル部の壁面に形成された開口部に連通されているため、何らかの理由によりボウル部内の水位が上昇した場合には、ボウル部内の洗浄水がオーバーフロー水路を通ってタンク内に逆流する虞があるという問題がある。また、タンクをボウル部の上端面よりも上方に配置すれば、逆流の虞はなくなるものの、全高の低いすっきりした外観の水洗大便器を構成することができなくなる。
【0005】
そこで、水洗大便器の全高を低く抑えながらボウル部内の洗浄水のタンク内への逆流を防止するには、ボウル部の上端面よりも下方にタンクを配置し、オーバーフロー水路がボウル部の上端面を越えてボウル部に延びるように構成することが考えられる。しかしながら、ボウル部の上端面を越えるようにオーバーフロー水路を構成すると、水洗便器の外観を悪化させるばかりでなく、ボウル部への排出口が汚れて非衛生的になるという問題がある。
【0006】
従って、本発明は、ボウル部内の洗浄水の貯水タンクへの逆流を防止しながら、洗浄水をボウル部内にオーバーフローさせることができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって、ジェット吐水口が形成されたボウル部、及びこのボウル部の底部から延びる排水トラップ管路を備えた水洗大便器本体と、ボウル部を洗浄する洗浄水を加圧する加圧ポンプと、この加圧ポンプによって加圧された洗浄水をジェット吐水口へ導くジェット側給水路と、このジェット側給水路の途中に設けられたジェット吐水用バキュームブレーカと、加圧ポンプによって加圧すべき洗浄水を貯水する貯水タンクと、この貯水タンク内の洗浄水の水位が所定の水位以上に上昇したとき、貯水タンクからオーバーフローした洗浄水を、ジェット吐水用バキュームブレーカの大気開放部に流下させるリリース水路と、を有することを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、ボウル部を洗浄する際、貯水タンクの洗浄水が加圧ポンプによって加圧され、ジェット側給水路を通ってジェット吐水口から吐水される。また、ジェット側給水路の途中には、ジェット吐水用バキュームブレーカが設けられている。さらに、本発明の水洗大便器はリリース水路を有し、このリリース水路は、洗浄水の水位が所定の水位以上に上昇して、貯水タンクから洗浄水がオーバーフローした場合に、洗浄水をジェット吐水用バキュームブレーカの大気開放部に流下させる。大気開放部に流下したオーバーフロー水は、ジェット側給水路、ジェット吐水口を通ってボウル部に流入し、排水トラップ管路から排出される。
【0009】
このように構成された本発明によれば、貯水タンクからオーバーフローした洗浄水を、ジェット吐水用バキュームブレーカの大気開放部に流下させ、排出しているので、ボウル部内の洗浄水の貯水タンクへの逆流を防止することができる。
【0010】
また、本発明は、加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって、ジェット吐水口及びリム吐水口が形成されたボウル部、及びこのボウル部の底部から延びる排水トラップ管路を備えた水洗大便器本体と、洗浄水をリム吐水口へ導くリム側給水路と、ボウル部を洗浄する洗浄水を加圧してジェット吐水口から吐水させる加圧ポンプと、この加圧ポンプによって加圧すべき洗浄水を貯水する貯水タンクと、この貯水タンク内の洗浄水の水位がボウル部の上端面よりも高い所定の水位以上に上昇したとき、貯水タンクからオーバーフローした洗浄水を、リム側給水路に流入させるリリース水路と、を有することを特徴としている。
【0011】
このように構成された本発明においては、ボウル部を洗浄する際、貯水タンクの洗浄水が加圧ポンプによって加圧され、ジェット側給水路を通ってジェット吐水口から吐水される。また、ボウル部を洗浄する際、リム吐水口からも洗浄水が吐水される。さらに、本発明の水洗大便器はリリース水路を有し、このリリース水路は、洗浄水の水位がボウル部の上端面よりも高い所定の水位以上に上昇して、貯水タンクから洗浄水がオーバーフローした場合に、洗浄水をリム側給水路に流入させる。リム側給水路に流入したオーバーフロー水は、リム側給水路、リム吐水口を通ってボウル部に流入し、排水トラップ管路から排出される。
【0012】
このように構成された本発明によれば、貯水タンクからオーバーフローした洗浄水を、リム側給水路に流入させ、排出しているので、ボウル部内の洗浄水の貯水タンクへの逆流を防止することができる。
【0013】
また、本発明は、加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって、吐水口が形成されたボウル部、このボウル部の後部上端面に形成され、オーバーフロー水をボウル部に流入させる排水溝、及びボウル部の底部から延びる排水トラップ管路を備えた水洗大便器本体と、吐水口から吐水されてボウル部を洗浄する洗浄水を加圧する加圧ポンプと、この加圧ポンプによって加圧すべき洗浄水を貯水する貯水タンクと、この貯水タンク内の洗浄水の水位がボウル部の上端面よりも高い所定の水位以上に上昇したとき、貯水タンクからオーバーフローした洗浄水を、排水溝に流下させるリリース水路と、を有することを特徴としている。
【0014】
このように構成された本発明においては、ボウル部を洗浄する際、貯水タンクの洗浄水が加圧ポンプによって加圧され、吐水口から吐水される。水洗大便器本体のボウル部後部上端面には、オーバーフロー水をボウル部に流入させる排水溝が形成されている。また、本発明の水洗大便器はリリース水路を備えており、このリリース水路は、貯水タンク内の洗浄水の水位がボウル部の上端面よりも高い所定の水位以上に上昇したとき、貯水タンクからオーバーフローした洗浄水を、排水溝に流下させる。排水溝に流下したオーバーフロー水は、ボウル部に流入し、排水トラップ管路から排出される。
【0015】
このように構成された本発明によれば、貯水タンクからオーバーフローした洗浄水を、ボウル部の上端面に形成された排水溝に流下させ、排出しているので、ボウル部内の洗浄水の貯水タンクへの逆流を防止することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、排水溝は、ボウル部の後部中央に、水洗大便器本体の前後方向に延びる溝である。
このように構成された本発明によれば、水洗大便器の外観を損なうことなく排水溝を設けることができる。さらに、汚物が侵入する可能性の少ない位置に排水溝が形成されているので、不衛生になることがない。
【0017】
本発明において、好ましくは、貯水タンクは、排水溝及び排水トラップ管路の側方に配置されており、リリース水路は、排水溝の側面に連通している幅広の水路である。
このように構成された本発明によれば、排水溝の側面に連通したリリース水路が幅広に構成されているので、リリース水路の高さを低く抑えながら十分な流路面積を確保することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の水洗大便器によれば、ボウル部内の洗浄水の貯水タンクへの逆流を防止しながら、洗浄水をボウル部内にオーバーフローさせることができる水洗大便器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による水洗大便器を説明する。
まず、図1乃至図11を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器を説明する。図1は、本実施形態による水洗大便器の右側面図である。図2は本実施形態による水洗大便器の上面図であり、図3は左側面図である。また、図4は本実施形態による水洗大便器を後方右斜め上から見た斜視図であり、図5は後方左斜め上から見た斜視図である。さらに、図6は、図2のVI−VI線に沿う断面図である。また、図7は、リム吐水及びジェット吐水の給水系統を示すブロック図である。なお、図2乃至6は、本実施形態による水洗大便器を、便座、カバー、局部洗浄装置、及びサイドパネルを取り外した状態で示している。
【0020】
図1に示すように、本発明の第1実施形態による水洗大便器1は、水洗大便器本体2と、水洗大便器本体2の上面に配置された便座4と、便座4を覆うように配置されたカバー6と、水洗大便器本体2の後方上部に配置された局部洗浄装置8と、を有する。また、水洗大便器本体2の後方には、機能部10が配置されており、この機能部10はサイドパネル10aにより覆われている。
【0021】
水洗大便器本体2は陶器製であり、汚物を受けるボウル部12と、このボウル部12の底部から延びる排水トラップ管路14と、ジェット吐水を行うジェット吐水口16と、リム吐水を行うリム吐水口18が形成されている。排水トラップ管路14は、ボウル部12の底部から後方、斜め上方に延びた後、下方に向かって延びて排水管Dに接続されている。ジェット吐水口16は、ボウル部12の底部に形成されており、排水トラップ管路14の入口に向けて洗浄水を吐出するように構成されている。リム吐水口18は、ボウル部12の左側上部後方に形成されており、ボウル部12の縁に沿って洗浄水を吐出するように構成されている。
【0022】
本発明の第1実施形態による水洗大便器1は、洗浄水を供給する水道に直結されており、水道の給水圧力によりリム吐水口18から洗浄水が吐出される。また、ジェット吐水に関しては、機能部10に内蔵された貯水タンクに貯水された洗浄水を加圧ポンプによって加圧して、大流量でジェット吐水口16から吐出させるように構成されている。
【0023】
次に、図2乃至図7を参照して、機能部10の構成を説明する。
図2乃至図7に示すように、機能部10には、リム吐水用の給水系統として、定流量弁20と、リム吐水用電磁弁22と、リム吐水用バキュームブレーカ24と、リム吐水用フラッパー弁26が内蔵されている。さらに、機能部10には、ジェット吐水用の給水系統として、タンク給水用電磁弁28と、タンク給水用バキュームブレーカ30と、貯水タンク32と、加圧ポンプ34と、ジェット吐水用バキュームブレーカ36と、ジェット吐水用フラッパー弁38が内蔵されている。さらに、機能部10には、リム吐水用電磁弁22、タンク給水用電磁弁28、及び加圧ポンプ34を制御する洗浄制御手段であるコントローラ40(図7)が内蔵されている。
【0024】
定流量弁20は、止水栓42a、分岐金具42b、及びストレーナ42c(以上、図7に図示)を介して入水口20aから流入した洗浄水を、所定の流量以下に絞るように構成されている。本実施形態においては、定流量弁20は、洗浄水の流量を16リットル/分以下に制限するように構成されている。また、定流量弁20を通過した洗浄水は、2つに分岐され、一方はリム吐水用電磁弁22に、他方はタンク給水用電磁弁28に流入するように接続されている。なお、本実施形態においては、定流量弁20は、水洗大便器本体2の後方左側に配置されている。
【0025】
リム吐水用電磁弁22は、コントローラ40の制御信号により開閉され、リム吐水口18から洗浄水を吐出、停止させるように構成されている。本実施形態においては、リム吐水用電磁弁22は、定流量弁20と同様に、水洗大便器本体2の後方左側に配置されている。
【0026】
リム吐水用バキュームブレーカ24は、リム吐水用電磁弁22を通過した洗浄水をリム吐水口18へ導くリム側給水路18aの途中に配置され、洗浄水のリム吐水口18からの逆流を防止している。また、リム吐水用バキュームブレーカ24は、ボウル部12の上端面よりも約25.4mm(約1インチ)上方に配置されており、逆流を確実に防止している。なお、本実施形態においては、リム吐水用バキュームブレーカ24は、水洗大便器本体2の後方中央の、排水トラップ管路14の上方に配置されている。
【0027】
リム吐水用フラッパー弁26は、リム吐水用バキュームブレーカ24の下流側のリム側給水路18aに配置され、洗浄水のリム吐水口18からの逆流を防止している。本実施形態においては、リム側給水路18aにリム吐水用バキュームブレーカ24とリム吐水用フラッパー弁26を直列に配置することによって、より確実に洗浄水の逆流を防止している。なお、本実施形態においては、リム吐水用フラッパー弁26は、水洗大便器本体2の後方左側の、ジェット吐水用フラッパー弁38の上方に配置されている。
【0028】
タンク給水用電磁弁28は、コントローラ40の制御信号により開閉され、洗浄水を貯水タンク32へ給水、停止させるように構成されている。本実施形態においては、タンク給水用電磁弁28は、定流量弁20と同様に、水洗大便器本体2の後方左側に配置されている。
【0029】
タンク給水用バキュームブレーカ30は、タンク給水用電磁弁28を通過した洗浄水を貯水タンク32へ導くタンク給水路32aの途中に配置され、洗浄水の貯水タンク32からの逆流を防止している。また、タンク給水用バキュームブレーカ30は、貯水タンク32の溢れ縁よりもよりも約25.4mm(約1インチ)上方に配置されており、逆流を確実に防止している。なお、本実施形態においては、タンク給水用バキュームブレーカ30は、水洗大便器本体2の後方中央の、排水トラップ管路14の上方に配置されている。
【0030】
貯水タンク32は、ジェット吐水口16から吐水すべき洗浄水を貯水するように構成されている。なお、本実施形態において、貯水タンク32は、図6に示すように、水洗大便器本体2の後方右側から、水洗大便器本体2後方中央の排水トラップ管路14の上方まで延びるように配置されており、約3リットルの内容積を有する。また、水洗大便器本体2の後方には、取付部である樹脂製の取付フレーム2aが固定されており、この取付フレーム2aは、水洗大便器本体2とは別体に構成され、貯水タンク32の周囲を取り囲むように概ね矩形状に形成されている。貯水タンク32は、その上端のフランジ部が取付フレーム2aと係合することにより、取付フレーム2aから吊り下げられている。
【0031】
さらに、本実施形態においては、タンク給水路32aの先端は貯水タンク32の底部近傍に開口されており、タンク給水路32aの先端が水没した状態で貯水タンク32への給水を行うことにより、給水時の騒音を低減している。また、貯水タンク32の内部には、フロートスイッチ32bが配置されており、貯水タンク32内の水位を検出するように構成されている。フロートスイッチ32bは、貯水タンク32内の水位が所定の貯水水位に達するとONに切り替わり、コントローラ40はこれを検知して、タンク給水用電磁弁28を閉鎖させるように構成されている。
【0032】
また、貯水タンク32の側面上部には、貯水タンク32内の水位が異常に上昇したとき、洗浄水をオーバーフローさせるためのリリース水路32dが設けられている。図5及び図6に示すように、このリリース水路32dは、貯水タンク32の側面から横方向に延びる概ね正方形断面の管であり、先端がジェット吐水用バキュームブレーカ36の大気開放部まで延びている。このため、貯水タンク32内の水位が溢れ縁であるリリース水路32dの底面よりも高くなると、貯水タンク32内の洗浄水はリリース水路32dを通って流出し、ジェット吐水用バキュームブレーカ36の大気開放部に流れ込む。これにより、貯水タンク32内の洗浄水が床面に溢れたり、溢れた洗浄水により機能部10が損傷されるのを防止している。また、本実施形態においては、リリース水路32dの底面は、ボウル部12の上端面よりも約35mm上方に位置決めされている。
【0033】
加圧ポンプ34は、貯水タンク32に貯水された洗浄水を加圧して、ジェット吐水口16から吐出させるように構成されている。本実施形態においては、加圧ポンプ34は、貯水タンク32の下方に、即ち、水洗大便器本体2の後方右側、排水トラップ管路14の側方に配置されている。また、図4に示すように、貯水タンク32の底面には下方に延びる2本のU字形の金属板32cが取り付けられており、加圧ポンプ34は、これらの金属板32cによって貯水タンク32の下方に吊り下げられている。
【0034】
また、加圧ポンプ34は、洗浄水を加圧するインペラ34a、及びこのインペラ34aを駆動するモーター34b(図7)を内蔵している。さらに、加圧ポンプ34には、水抜き用水栓34c(図7)が接続されており、この水抜き用水栓34cを開放することにより、メンテナンス時等に貯水タンク32内及び加圧ポンプ34内の洗浄水を排出できるように構成されている。また、加圧ポンプ34の下方には、水受けトレイ2bが配置されており、結露した水滴や漏水を受けるように構成されている。
【0035】
また、図4に示すように、貯水タンク32は、貯水タンク32から水洗大便器本体2の前方に向かって延びた後、Uターンして後方に向かうU字管34dを介して加圧ポンプ34に接続されている。さらに、加圧ポンプ34によって加圧された洗浄水は、排水トラップ管路14の後ろ側を、水洗大便器本体2を横断して延びる横断管34eを介してジェット吐水用バキュームブレーカ36に流入するように構成されている。なお、本実施形態においては、加圧ポンプ34は、貯水タンク32内の洗浄水を加圧して、洗浄水を最大約100リットル/分の流量でジェット吐水口16から吐出させるように構成されている。
【0036】
ジェット吐水用バキュームブレーカ36は、加圧ポンプ34の下流側に接続されており、ボウル部12内の溜水が貯水タンク32側へ逆流するのを防止すると共に、それらの間の縁切りを行うように構成されている。これにより、貯水タンク32内の貯水水位を、ボウル部12内の溜水水位よりも高く設定することが可能になる。また、ジェット吐水用バキュームブレーカ36の大気開放部には、貯水タンク32のリリース水路32dから流出した洗浄水が流れ込むようになっている。大気開放部に流入した洗浄水は、ジェット吐水用フラッパー弁38、ジェット側給水路16aを通って、ジェット吐水口16からボウル部12内に流入するように構成されている。なお、本実施形態においては、ジェット吐水用バキュームブレーカ36は、水洗大便器本体2の後方の、排水トラップ管路14の左側に配置されている。
【0037】
ジェット吐水用フラッパー弁38は、ジェット吐水用バキュームブレーカ36の下流側に接続され、洗浄水のジェット吐水口16からの逆流を防止している。本実施形態においては、ジェット吐水用バキュームブレーカ36とジェット吐水用フラッパー弁38を直列に配置することによって、より確実に洗浄水の逆流を防止している。ジェット吐水用フラッパー弁38を通過した洗浄水は、ジェット側給水路16aを通ってジェット吐水口16から吐出されるように構成されている。なお、本実施形態においては、ジェット吐水用フラッパー弁38は、水洗大便器本体2の後方の、排水トラップ管路14の左側に配置されている。即ち、排水トラップ管路14の右側に配置されている貯水タンク32に貯水され、加圧ポンプ34によって加圧された洗浄水は、横断管34eを通って、排水トラップ管路14に対して反対側の左側に至り、そこに配置されたジェット吐水用バキュームブレーカ36、ジェット吐水用フラッパー弁38及びジェット側給水路16aを通ってジェット吐水口16から吐出されるように構成されている。
【0038】
また、本実施形態においては、ジェット吐水用フラッパー弁38は、水洗大便器本体2の後方左側の、リム吐水用フラッパー弁26の下方に配置されている。従って、リム吐水用フラッパー弁26から延び、リム吐水口18に至るリム側給水路18aも、排水トラップ管路14に対してジェット側給水路16aと同じ側に配置されている。
【0039】
洗浄制御手段であるコントローラ40は、使用者による便器洗浄スイッチ(図示せず)の操作により、リム吐水用電磁弁22、加圧ポンプ34を順次作動させ、リム吐水口18及びジェット吐水口16からの吐水を順次開始させて、ボウル部12を洗浄するように構成されている。さらに、コントローラ40は、洗浄終了後、タンク給水用電磁弁28を開放して貯水タンク32に洗浄水を補給し、フロートスイッチ32bが規定の貯水量を検出すると、タンク給水用電磁弁28を閉鎖して給水を停止するように構成されている。従って、タンク給水用電磁弁28は、洗浄水補給手段として作用する。
【0040】
また、コントローラ40は、貯水タンク32への洗浄水の補給が開始された後、フロートスイッチ32bが所定の貯水水位を検出するまでの時間を計測する計時手段40aを内蔵している。さらに、コントローラ40は、計時手段40aによって測定された時間に基づいて、リム吐水口16からの洗浄水の吐水時間を調整する吐水時間調整手段40bを内蔵している。また、コントローラ40は、水洗大便器1が設置された室内の温度を測定する温度検出手段である温度センサ40cと、水洗大便器1内の洗浄水に凍結する虞がある場合に凍結防止運転を実行する凍結防止制御手段40dと、凍結防止運転の時間間隔をカウントするタイマー40eと、を有する。具体的には、コントローラ40は、CPU、メモリ、及びそれらを作動させるプログラムにより構成されている。
【0041】
次に、図8を参照して、ジェット吐水用バキュームブレーカ36の構成を説明する。図8は、ジェット吐水用バキュームブレーカ36の断面図である。図8に示すように、ジェット吐水用バキュームブレーカ36は、入水口44a、及び出水口44bが形成されたバルブ本体44と、このバルブ本体44内で鉛直方向に移動可能に配置されたバキュームブレーカコマ46と、バルブ本体44に取り付けられ、大気開放部48aが形成されたバキュームブレーカ本体48と、を有する。
【0042】
バルブ本体44の入水口44aは、鉛直上方に向けて開口しており、横断管34eに連通するように連結されている。また、出水口44bは、水平方向に向けて開口しており、ジェット吐水用フラッパー弁38の入口に連結されている。
【0043】
バキュームブレーカコマ46は、概ね円盤状の弁体部46aと、この弁体部46aの中心から鉛直上方に延びる軸部46bと、を有する。さらに、弁体部46aの下面には入水口44aを閉鎖する下面シール材46cが取り付けられ、弁体部46aの上面には大気開放部48aを閉鎖する上面シール材46dが取り付けられている。
【0044】
バキュームブレーカ本体48は概ね円筒状の部材であり、その下端に大気開放部48aが形成され、下部がバルブ本体44に嵌め込まれている。また、バキュームブレーカ本体48の中心軸線上には、バキュームブレーカコマ46の軸部46bを摺動可能に受け入れるガイド部48bが設けられている。軸部46bがガイド部48bに受け入れられることにより、バキュームブレーカコマ46は、下面シール材46cが入水口44aを閉鎖する下方位置と、上面シール材46dが大気開放部48aを閉鎖する上方位置との間で摺動可能に支持される。
また、バキュームブレーカ本体48上部には切欠部が形成されており、この切欠部に貯水タンク32のリリース水路32dの先端が挿入されている。これにより、リリース水路32dから流出した洗浄水は、バキュームブレーカ本体48の内部に流入し、大気開放部48aを通って出水口44bへ流出する。
【0045】
使用時において、入水口44aから洗浄水が流入すると、その水勢によりバキュームブレーカコマ46は上方位置に移動され、大気開放部48aが閉鎖される。これにより、入水口44aから流入した洗浄水は、出水口44bから吐出される。さらに、入水口44aからの洗浄水の流入が停止されると、バキュームブレーカコマ46は重力により下方位置に移動され、入水口44aが閉鎖される。これにより、出水口44bから入水口44aへの洗浄水の逆流が防止される。また、出水口44bは大気開放部48aと連通するので、入水口44aと出水口44bは縁切りされ、入水口44aに連通した貯水タンク32と、出水口44bに連通したボウル部12の水位は連動しなくなる。さらに、リリース水路32dから大気開放部48a内に洗浄水が流下した場合には、洗浄水は出水口44bから流出され、ボウル部12に流入する。
【0046】
本実施形態においては、バキュームブレーカコマ46が入水口44aを閉鎖するシート面は、ボウル部12の上端面よりも上方に位置決めされている。このため、ボウル部12内の洗浄水の水位が上昇した場合でも、ボウル部12内の洗浄水がジェット吐水用バキュームブレーカ36に逆流して、大気開放部48aから溢れ出ることはない。しかしながら、ボウル部12からの洗浄水の逆流は、ジェット吐水用フラッパー弁38によっても阻止されるので、ボウル部12の溜水水位よりも上方であれば、ジェット吐水用バキュームブレーカ36をボウル部12の上端面よりも低い位置に配置することもできる。
【0047】
ここでは、ジェット吐水用バキュームブレーカ36の構造を説明したが、リム吐水用バキュームブレーカ24及びタンク給水用バキュームブレーカ30も同様の構造を有する。また、リム吐水用バキュームブレーカ24のシート面はボウル部12の上端面よりも約25.4mm(約1インチ)上方に配置されており、また、タンク給水用バキュームブレーカ30のシート面は、貯水タンク32から延びるリリース水路32dの底面よりも約25.4mm(約1インチ)上方に配置されており、洗浄水の上流側への逆流を確実に防止している。
【0048】
次に、メンテナンス時における貯水タンク32及び加圧ポンプ34の取り外し手順を説明する。
貯水タンク32及び加圧ポンプ34の取り外す際には、まず、水洗大便器本体2の上に取り付けられた便座4、カバー6、及び局部洗浄装置8を取り外し、機能部10の上部を露出させる。次に、機能部10の両側に取り付けられているサイドパネル10aを取り外す。次いで、貯水タンク32の上方に配置されているリム吐水用バキュームブレーカ24、タンク給水用バキュームブレーカ30、及びジェット吐水用バキュームブレーカ36と、これらに接続されている配管を取り外す。さらに、貯水タンク32のフランジ部を取付フレーム2aに固定しているビスを取り外す。
【0049】
次に、貯水タンク32と加圧ポンプ34を接続しているU字管34dの接続部50a、50bを、サイドパネル10aを取り外すことによって露出された機能部10の側面から手を差し入れて取り外す。同様に、加圧ポンプ34と横断管34eの接続部50cを取り外す。また、加圧ポンプ34に接続されている電気コネクタ(図示せず)も取り外す。さらに、取付フレーム2aから吊り下げられている貯水タンク32を、水洗大便器本体2の上方に引き上げて取り外す。これにより、金属板32cによって貯水タンク32から吊り下げられている加圧ポンプ34も一体的に取り外される。
【0050】
次に、図9乃至図11を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器1の作用を説明する。図9は、水洗大便器1の洗浄時において各部が作動するタイミングを示すグラフであり、上段から順に、リム吐水用電磁弁22、タンク給水用電磁弁28、フロートスイッチ32b、加圧ポンプ34が作動するタイミングを示している。図10は水洗大便器1の洗浄作用を示すフローチャートである。
【0051】
まず、待機状態(図10のステップS0)において、便器洗浄スイッチ(図示せず)が操作されると、ステップS1に進み、1回目のリム吐水が開始される。即ち、図9の時刻t0において、使用者が便器洗浄スイッチ(図示せず)を操作すると、コントローラ40はリム吐水用電磁弁22に信号を送って開放させ、水道の給水圧力によりリム吐水口18から洗浄水を吐出させる。リム吐水用電磁弁22が開放されると、水道から供給された洗浄水が止水栓42a、分岐金具42b、ストレーナ42cを経て入水口20aから定流量弁20に流入する。定流量弁20では、水道の給水圧力が高い場合には、通過する洗浄水の流量が所定流量に制限され、給水圧力が低い場合には、洗浄水は流れを制限されることなくそのまま通過される。定流量弁20を通過した洗浄水は、さらに、水洗大便器本体2後方左側に配置されたリム吐水用電磁弁22を通過し、水洗大便器本体2後方中央の排水トラップ管路14の上方に配置されたリム吐水用バキュームブレーカ24に到達する。
【0052】
さらに、リム吐水用バキュームブレーカ24を通過した洗浄水は、水洗大便器本体2後方左側に配置されたリム吐水用フラッパー弁26に流入した後、水洗大便器本体2の前方に向かって流れ、リム側給水路18aを通って、ボウル部12上部の後方左側に開口したリム吐水口18から吐出される。リム吐水口18から吐出された洗浄水は、ボウル部12内を旋回しながら下方へ流下し、ボウル部12の内壁面が洗浄される。
【0053】
所定時間経過後、ステップS2に進み、ジェット吐水が開始される。即ち、コントローラ40は、図9の時刻t1において、加圧ポンプ34に信号を送りこれを起動させる。加圧ポンプ34が起動されると、貯水タンク32内に貯水されていた洗浄水が加圧される。水洗大便器本体2後方右側に配置された加圧ポンプ34によって加圧された洗浄水は、横断管34eを通って排水トラップ管路14の反対側に流れた後、排水トラップ管路14の右側に配置されたジェット吐水用バキュームブレーカ36に到達する。ジェット吐水用バキュームブレーカ36を通過した洗浄水は、水洗大便器本体2後方左側のリム吐水用フラッパー弁26の下に配置されたジェット吐水用フラッパー弁38に流入する。ジェット吐水用フラッパー弁38を通過した洗浄水は、水洗大便器本体2の前方に向かって流れ、リム側給水路18aの下側のジェット側給水路16aを通って、ボウル部12底部に開口したジェット吐水口16から吐出される。
【0054】
ジェット吐水口16から吐出された洗浄水は排水トラップ管路14内に流入し、排水トラップ管路14を満水にしてサイホン現象を引き起こす。このサイホン現象により、ボウル部12内の溜水及び汚物は、排水トラップ管路14に吸引され、排水管Dから排出される。なお、本実施形態においては、加圧ポンプ34によって加圧された洗浄水を約100リットル/分の大流量でジェット吐水口16から吐出させるので、排水トラップ管路14内のサイホン現象が急速に引き起こされ、ボウル部12内の溜水及び汚物は素早く排出される。好ましくは、ジェット吐水口16から吐出される洗浄水の最大流量は、約75乃至110リットル/分とする。
【0055】
所定時間経過後、コントローラ40は、図9の時刻t2において、リム吐水用電磁弁22に信号を送ってこれを閉鎖させ、リム吐水口18からの吐水を停止させる。即ち、時刻t1〜t2においては、ジェット吐水口16からの吐水及びリム吐水口18からの吐水が同時に行われる。リム吐水口18からの吐水からの吐水中に加圧ポンプ34を起動させ、ジェット吐水口16からの吐水を開始することにより、加圧ポンプ34の起動音はリム吐水の音によってマスクされ、目立たなくなる。
【0056】
加圧ポンプ34が起動され、貯水タンク32内の洗浄水がジェット吐水口16から吐水されることにより、貯水タンク32内の水位が低下する。貯水タンク32内に配置されたフロートスイッチ32bは、図9の時刻t3において、OFFとなり、水位が低下したことが検知される。
【0057】
次いで、図9の時刻t4において、コントローラ40は、加圧ポンプ34に信号を送り、加圧ポンプ34に内蔵されたモーター34bの回転数の漸減を開始させる。これにより、ジェット吐水口16からの吐水流量も時間に対してほぼ直線的に漸減される。
【0058】
次いで、図10のステップS3に進み、2回目のリム吐水が開始される。即ち、図9の時刻t5において、コントローラ40は、リム吐水用電磁弁22に信号を送ってこれを開放させ、リム吐水口18からの2回目の吐水を開始させる。これにより、吐水流量が漸減しているジェット吐水口16からの吐水にリム吐水口18からの吐水が重畳される。ここで、ジェット吐水口16から最大流量で吐水が行われている間は、排水トラップ管路14から排出される洗浄水の流量と、ジェット吐水口16から流入する洗浄水の流量がほぼ同等であるため、排水トラップ管路14内のサイホン現象は持続され、途切れることはない。さらに、ジェット吐水口16からの吐水流量を最大流量から漸減させることにより、サイホン現象が急激に途切れることによる大きなサイホン切れ音の発生が防止される。加えて、リム吐水口18からの吐水を重畳させることにより、吐水流量の低下はさらに緩やかになり、サイホン現象が途切れる際の音はさらに低減される。
【0059】
次いで、漸減しているモーター34bの回転数は、図9の時刻t6においてゼロとなり、加圧ポンプ34は停止する。時刻t1〜t6の間加圧ポンプ34を作動させることにより、所定のジェット吐水量の洗浄水がジェット吐水口16から吐出され、貯水タンク32内の貯水量は概ねゼロになる。加圧ポンプ34が停止されることによりジェット吐水口16からの吐水は停止される。これにより、ジェット吐水用バキュームブレーカ36のバキュームブレーカコマ46(図8)は入水口44aを閉鎖させ、ボウル部12内の溜水と貯水タンク32内の洗浄水が縁切りされる。本実施形態においては、コントローラ40は、ジェット吐水口16から最大流量で約2秒間吐水させた後、吐水流量を漸減させ、約1秒間で吐水流量がゼロとなるように加圧ポンプ34を制御している。好ましくは、約1.5乃至2秒間最大流量で吐水させた後、約1乃至5秒間で吐水流量がゼロとなるように制御する。
【0060】
リム吐水口18からの2回目の吐水によりボウル部12内の溜水の水位は上昇し、所定のリム吐水時間経過後、ボウル部12内は所定の溢流水位に到達する。図9の時刻t7において、コントローラ40は、リム吐水用電磁弁22に信号を送ってこれを閉鎖させ、リム吐水口18からの2回目の吐水を停止させる。なお、図10に示すフローチャートでは、簡単のため1回目のリム吐水の後、ジェット吐水が開始され、ジェット吐水の後2回目のリム吐水が実行されるように記載されているが、本実施形態においては、より詳細には図9に示すように、各吐水が重畳される期間が存在する。
【0061】
次いで、図10のステップS4に進み、貯水タンク32への洗浄水の補給が開始されると共に、コントローラ40に内蔵された計時手段40aは、貯水タンク32が規定の貯水量に復帰するまでの水補給時間の計測を開始する。即ち、リム吐水口18からの吐水が停止した後、所定の給水待ち時間が経過した時刻t8において、コントローラ40は、タンク給水用電磁弁28に信号を送り、これを開放させる。タンク給水用電磁弁28が開放されると、入水口20aから流入した洗浄水は、水洗大便器本体2後方左側に配置されたタンク給水用電磁弁28、タンク給水路32aを通過して、水洗大便器本体2後方中央の排水トラップ管路14の上方に配置されたタンク給水用バキュームブレーカ30に流入する。タンク給水用バキュームブレーカ30を通過した洗浄水は、排水トラップ管路14の右側に流れ、貯水タンク32の底部近傍まで延びるタンク給水路32aの先端から貯水タンク32内に流入する。洗浄水が流出するタンク給水路32aの先端は、貯水タンク32内でほぼ水没した状態にあるため、洗浄水が貯水タンク32内に流入する際の騒音が低減される。
【0062】
次いで、図10のステップS6においては、OFF状態のフロートスイッチ32bがONになったか否かが判断され、OFF状態である場合にはステップS6の処理が繰り返される。貯水タンク32内に洗浄水が流入し、貯水タンク32内の水位が規定の貯水量に達すると、フロートスイッチ32bがONになる(図9の時刻t9)。フロートスイッチ32bがONになると、ステップS7に進み、タンク給水用電磁弁28が閉鎖される。即ち、コントローラ40はタンク給水用電磁弁28に信号を送り、これを閉鎖させる。次いで、ステップS8に進み、計時手段40aは水補給時間の計測を終了する。
【0063】
次に、ステップS9においては、コントローラ40に内蔵された吐水時間調整手段40bにより、便器洗浄が次に行われた際の2回目のリム吐水時間(図9におけるt5〜t7)が決定される。まず、吐水時間調整手段40bは、計時手段40aによって計測された水補給時間の過去50回の移動平均値を計算する。即ち、タンク給水用電磁弁28を開放した時刻Ts(図9におけるt8)から閉鎖した時刻Te(図9におけるt9)までの経過時間である水補給時間Te−Tsの直近の過去50回分の平均値Tavを計算する。吐水時間調整手段40bは、この平均値Tavが5秒未満である場合には、水洗大便器1が通常圧である0.07MPa以上の給水圧の地域に設置されていると判断する。また、吐水時間調整手段40bは、平均値Tavが5秒以上7秒未満である場合には、水洗大便器1が給水圧の低い地域に設置されていると判断する。さらに、吐水時間調整手段40bは、平均値Tavが7秒以上である場合には、水洗大便器1が給水圧0.03MPa以下の超低圧地域に設置されていると判断する。
【0064】
さらに、吐水時間調整手段40bは、水洗大便器1が通常圧の地域に設置されていると判断した場合には、次回の便器洗浄時における2回目のリム吐水時間を3秒に設定する。また、吐水時間調整手段40bは、低圧地域と判断した場合には4秒に、超低圧地域と判断した場合には5.5秒に、2回目のリム吐水時間を設定する。これにより、水道の給水圧力が高い地域において、長時間リム吐水を行って洗浄水を無駄にしたり、水道の給水圧力が低い地域において十分な時間リム吐水を行わずに洗浄水が不足したりするのを防止することができる。
【0065】
また、上記のように、吐水時間調整手段40bは、直近の過去50回分の水補給時間の平均値Tavに基づいて次回の洗浄における2回目のリム吐水時間を設定していたが、過去の便器洗浄が50回に満たない場合には、過去全ての水補給時間を平均して平均値Tavを計算する。さらに、水洗大便器1設置後、初めて便器洗浄を行う場合には、洗浄水が不足することのないよう、2回目のリム吐水時間は5.5秒に設定される。
ステップS9において、次回便器洗浄が行われた際の2回目のリム吐水時間が決定されると、ステップS0の待機状態に戻る。
【0066】
次に、フロートスイッチ32b、タンク給水用電磁弁28等の不具合により、貯水タンク32への給水が停止されない場合の作用を説明する。
貯水タンク32内が規定の水位に達してもタンク給水用電磁弁28が閉鎖されない場合には、貯水タンク32内の水位は規定の水位よりも高く上昇し、やがて貯水タンク32の溢れ縁であるリリース水路32dの底面の高さに到達する。貯水タンク32の水位がリリース水路32dの底面よりも高くなると、貯水タンク32内の洗浄水はリリース水路32dを通って流出し、ジェット吐水用バキュームブレーカ36の大気開放部48aに流下する。
【0067】
貯水タンク32への給水中においては、加圧ポンプ34は作動されていないため、加圧ポンプ34からジェット吐水口16への洗浄水の流れはない。このため、ジェット吐水用バキュームブレーカ36のバキュームブレーカコマ46は、大気開放部48aと出水口44bが連通する下方位置にある。従って、リリース水路32dから大気開放部48aに流下した洗浄水は、出水口44bに流入し、ジェット側給水路16a、ジェット吐水口16を通ってボウル部12に流れ込む。これにより、貯水タンク32から溢れた洗浄水は、ボウル部12、排水トラップ管路14を介して排出される。
【0068】
次に、図11を参照して、コントローラ40に内蔵された凍結防止制御手段40cの作用を説明する。図11は水洗大便器1の凍結防止運転の処理を示すフローチャートである。
【0069】
まず、水洗大便器1において、便器洗浄が実行されていない待機状態であるステップS100に続いて、ステップS101の処理が実行される。ステップS101においては、コントローラ40の温度センサ40cによって測定されたトイレ室内の温度が、所定の凍結防止運転温度以下であるか否かが判断される。トイレ室内の温度が凍結防止運転温度よりも高い場合には、ステップS102以降の凍結防止運転は実行されず、ステップS100に戻ってステップS101の処理が繰り返し実行される。本実施形態においては、凍結防止運転温度は5゜Cに設定されている。また、使用者が、水洗大便器1に設けられた操作スイッチ(図示せず)により凍結防止運転を行うように設定した場合にも凍結防止運転が実行される。本実施形態においては、凍結防止運転は、操作スイッチ(図示せず)の特殊操作により設定されるように構成されている。即ち、本来他の機能を実行するための複数の操作スイッチ(図示せず)を同時に操作したり、所定時間押し続けたりすることによって、凍結防止運転が設定される。
【0070】
次に、トイレ室内の温度が凍結防止運転温度以下である場合には、ステップS102の処理が実行される。ステップS102においては、凍結防止制御手段40cは、リム吐水用電磁弁22を開放させる。リム吐水用電磁弁22を開放させることにより、水道から供給された洗浄水は水道の給水圧力により、止水栓42a、分岐金具42b、ストレーナ42c、定流量弁20、リム吐水用電磁弁22、リム吐水用バキュームブレーカ24、リム吐水用フラッパー弁26、及びリム側給水路18aを通り約15リットル/分の流量でリム吐水口18からボウル部12内に吐水される。これにより、これらの給水系統に滞留していた洗浄水が移動され、その凍結が防止される。約1秒経過後、ステップS103が実行され、凍結防止制御手段40cはリム吐水用電磁弁22を閉鎖させる。
【0071】
次いで、ステップS104においては、凍結防止制御手段40cは加圧ポンプ34を低速で回転させる。加圧ポンプ34が回転されると、貯水タンク32内の洗浄水は、加圧ポンプ34、ジェット吐水用バキュームブレーカ36、ジェット吐水用フラッパー弁38、及びジェット側給水路16aを通ってジェット吐水口16から吐水される。これにより、これらの給水系統に滞留していた洗浄水が移動され、その凍結が防止される。所定の凍結防止ポンプ作動時間である約20秒経過後、ステップS105が実行され、凍結防止制御手段40cは加圧ポンプ34を停止させる。なお、本実施形態においては、加圧ポンプ34は、ジェット吐水口16から約0.7リットル/分の流量で洗浄水が吐水される回転数で作動される。このような低流量でジェット吐水口16からの吐水を行うことにより、排水トラップ管路14内でサイホン現象を発生させることなく、上記給水系統に滞留している洗浄水を移動させることができる。これにより、サイホン現象発生による騒音が防止されると共に、洗浄水の浪費は最小限に抑えられる。
【0072】
次に、ステップS106においては、フロートスイッチ32bの状態が判断される。貯水タンク32内の洗浄水の貯水量は、加圧ポンプ34を約20秒間作動させたことにより低下されている。貯水タンク32内に設けられたフロートスイッチ32bは、貯水量が所定の補給貯水量以下になるとOFFになる。フロートスイッチ32bがOFFにされている場合にはステップS107に進み、ステップS107においては、凍結防止制御手段40dはタンク給水用電磁弁28を開放させ、貯水タンク32内の洗浄水を補給する。即ち、フロートスイッチ32b及びタンク給水用電磁弁28は、貯水量維持手段として機能する。タンク給水用電磁弁28を開放させることにより、水道から供給された洗浄水は、止水栓42a、分岐金具42b、ストレーナ42c、定流量弁20、タンク給水用電磁弁28、及びタンク給水用バキュームブレーカ30を通り貯水タンク32内に給水される。これにより、これらの給水系統に滞留していた洗浄水が移動され、その凍結が防止される。
【0073】
貯水タンク32内への給水により貯水タンク32の貯水量が規定の貯水量まで増加して所定の水位に上昇すると、ステップS106において、フロートスイッチ32bがONになったことが検出される。フロートスイッチ32bがONになったと判断されると、ステップS108に進み、ステップS108において、凍結防止制御手段40dはタンク給水用電磁弁28を閉鎖させる。次に、ステップS109において、コントローラ40に内蔵されたタイマー40eは、凍結防止運転が次に実行されるまでの間の時間の計測を開始する。ステップS110においては、タイマー40eによる計測開始後、凍結防止運転の所定の時間間隔が経過したか否かが判断される。本実施形態においては、凍結防止運転の時間間隔として、10分間が設定されている。
【0074】
ステップS110における処理は、凍結防止運転の時間間隔である10分間が経過していない場合には繰り返し実行され、10分間経過するとステップS100の待機状態に戻る。ステップS100の待機状態に戻ると、再びステップS101に進み、温度センサ40cによって測定された温度が凍結防止運転温度よりも高い温度に上昇しているか否かが判断される。トイレ室内の温度が依然として凍結防止運転温度以下である場合には、ステップS102に進み上記の処理が繰り返される。一方、トイレ室内の温度が凍結防止運転温度よりも高い温度に上昇している場合にはステップS100に戻り、ステップS101における判断が繰り返し実行される。
【0075】
また、水洗大便器1が凍結防止運転を行うように手動で設定されている場合にもステップS102以降の凍結防止運転が実行される。この凍結防止運転は、使用者が操作スイッチ(図示せず)により、凍結防止運転の設定を解除するまで繰り返される。上記のように、トイレ室内の温度が凍結防止運転温度よりも低い状態が継続した場合、及び使用者により凍結防止運転が設定されている場合には、ジェット吐水口16及びリム吐水口18からの吐水が、約10分間隔で間欠的に実行される。これにより、水洗大便器1の各部に滞留している洗浄水が移動され、その凍結が防止される。
【0076】
本発明の第1実施形態の水洗大便器によれば、貯水タンクからオーバーフローした洗浄水を、ジェット吐水用バキュームブレーカの大気開放部に流下させ、排出しているので、ボウル部内の洗浄水の貯水タンクへの逆流を防止することができる。
【0077】
また、本実施形態の水洗大便器によれば、オーバーフロー水をジェット吐水用バキュームブレーカの大気開放部に流下させているので、リリース水路をボウル部の上端面よりも低い位置に配置した場合にも、ボウル部内の洗浄水の貯水タンクへの逆流を防止することができる。
【0078】
次に、図12及び図13を参照して、本発明の第2実施形態による水洗大便器を説明する。図12は本実施形態による水洗大便器を前方左斜め上から見た斜視図であり、図13は後方右斜め上から見た斜視図である。本実施形態の水洗大便器は、貯水タンク内の洗浄水を、オーバーフローさせる排水経路が第1実施形態と異なる。従って、ここでは本実施形態による水洗大便器の第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成については同一の符号を附して説明を省略する。
【0079】
図12及び図13に示すように、本発明の第2実施形態による水洗大便器100は、水洗大便器本体102と、水洗大便器本体102の上面に配置された便座と、カバーと、局部洗浄装置と、を有する。また、水洗大便器本体102の後方には、機能部110が配置されており、この機能部110はサイドパネルにより覆われている。なお、図12及び図13は、水洗大便器100を、便座、カバー、局部洗浄装置、及びサイドパネルを取り外した状態で示している。
【0080】
水洗大便器本体102には、ボウル部12と、排水トラップ管路14と、ジェット吐水口16と、リム吐水口18が形成されている。また、本実施形態による水洗大便器100は、洗浄水を供給する水道に直結されており、水道の給水圧力によりリム吐水口18から洗浄水を吐出し、加圧ポンプによって加圧された洗浄水をジェット吐水口16から吐出させるように構成されている。
【0081】
さらに、水洗大便器本体102のボウル部12後方には、排水溝102cが形成されている。この排水溝102cは、ボウル部12の後部上端面の中央に、水洗大便器100の前後方向に延びるように形成された概ね長方形断面の凹部であり、そこに流入した洗浄水をボウル部12内に流下させるように構成されている。また、排水溝102cには、水洗大便器100の使用時において、局部洗浄装置(図12、13には図示せず)の洗浄用のノズル(図示せず)が収納されるように構成されている。
【0082】
図12及び図13に示すように、機能部110には、定流量弁20と、リム吐水用電磁弁22と、リム吐水用バキュームブレーカ24と、リム吐水用フラッパー弁26と、タンク給水用電磁弁28と、タンク給水用バキュームブレーカ30と、貯水タンク132と、加圧ポンプ34と、ジェット吐水用バキュームブレーカ36と、ジェット吐水用フラッパー弁38が内蔵されている。さらに、機能部110には、リム吐水用電磁弁22、タンク給水用電磁弁28、及び加圧ポンプ34を制御する洗浄制御手段であるコントローラ(図示せず)が内蔵されている。
【0083】
貯水タンク132は、排水溝102c及び排水トラップ管路14の側方に配置されており、その上部に、貯水タンク132内の洗浄水をオーバーフローさせるためのリリース水路132dが形成されている。このリリース水路132dは、貯水タンク132から水洗大便器100の斜め前方に向かって延びる幅広の水路であり、その先端は、排水溝102cの側面に連通している。また、貯水タンク132の溢れ縁であるリリース水路132dの底面は、ボウル部12の上端面よりも高い位置に位置決めされており、リリース水路132dから流出したオーバーフロー水は、ボウル部12の上端面よりも低い排水溝102cに落ちて、ボウル部12内に流入する。
【0084】
次に、本発明の第2実施形態による水洗大便器100の作用を説明する。本実施形態による水洗大便器100の便器洗浄作用、吐水時間を調整する作用、及び凍結防止運転は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0085】
ここで、フロートスイッチ(図12、3には図示せず)、タンク給水用電磁弁28等の不具合により、貯水タンク132への給水が停止されない場合の作用を説明する。
【0086】
貯水タンク132内が規定の水位に達してもタンク給水用電磁弁28が閉鎖されない場合には、貯水タンク132内の水位は規定の水位よりも高く上昇し、やがて貯水タンク132の溢れ縁であるリリース水路132dの底面の高さに到達する。貯水タンク132の水位がリリース水路132dの底面よりも高くなると、貯水タンク132内の洗浄水はリリース水路132dを通って流出し、水洗大便器本体102の排水溝102cに流下する。排水溝102cに流下したオーバーフロー水は、排水溝102cを前方に流れ、ボウル部12内に流れ込む。これにより、貯水タンク132から溢れた洗浄水は、ボウル部12、排水トラップ管路14を介して排出される。
【0087】
本発明の第2実施形態の水洗大便器によれば、貯水タンクからオーバーフローした洗浄水を、ボウル部の上端面に形成された排水溝に流下させ、排出しているので、ボウル部内の洗浄水の貯水タンクへの逆流を防止することができる。
【0088】
また、本実施形態の水洗大便器によれば、排水溝がボウル部の後部中央に水洗大便器本体の前後方向に延びるように形成されているので、水洗大便器の外観を損なうことなく排水溝を設けることができる。さらに、汚物が侵入する可能性の少ない位置に排水溝が形成されているので、不衛生になることがない。
【0089】
さらに、本実施形態の水洗大便器によれば、貯水タンクが排水溝及び排水トラップ管路の側方に配置されているので、リリース水路は、貯水タンクと排水溝を最短距離で連結することができる。
【0090】
また、本実施形態の水洗大便器によれば、リリース水路が排水溝の側面に連通し、幅広に形成されているので、リリース水路の高さを低く抑えながら十分な流路面積を確保することができる。
【0091】
次に、図14乃至図17を参照して、本発明の第3実施形態による水洗大便器を説明する。本実施形態による水洗大便器は、貯水タンク、加圧ポンプ、バキュームブレーカ等の配置が第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本実施形態による水洗大便器の第1実施形態とは異なる部分のみを説明する。図14は、本実施形態による水洗大便器を後方左斜め上から見た斜視図である。図15は本実施形態による水洗大便器の上面図であり、図16は図15のXVI−XVI線に沿う断面図であり、図17は図15のXVII−XVII線に沿う断面図である。なお、図14乃至17は、本実施形態による水洗大便器を、便座、カバー、局部洗浄装置、及びサイドパネルを取り外した状態で示している。
【0092】
図14乃至図17に示すように、本発明の第3実施形態による水洗大便器200は、水洗大便器本体202と、便座(図示せず)と、カバー(図示せず)と、局部洗浄装置(図示せず)とを有する。水洗大便器本体202の後方には、機能部210が配置されており、この機能部210はサイドパネル(図示せず)により覆われている。
【0093】
水洗大便器本体202は陶器製であり、ボウル部212と、排水トラップ管路214と、ジェット吐水口216と、吐水口218が形成されている。排水トラップ管路214は、ボウル部212の底部から後方、斜め上方に延びた後、下方に向かって延び、排水ソケット215に接続されている。この排水ソケット215は、壁面に設けられた排水管(図示せず)に接続される。
【0094】
次に、機能部210の構成を説明する。図14乃至図17に示すように、機能部210には、リム吐水用の給水系統として、定流量弁(図示せず)と、リム吐水用電磁弁222と、リム吐水用バキュームブレーカ224と、リム吐水用フラッパー弁226が内蔵されている。さらに、機能部210には、ジェット吐水用の給水系統として、タンク給水用電磁弁228と、貯水タンク232と、加圧ポンプ234と、ジェット吐水用バキュームブレーカ236と、ジェット吐水用フラッパー弁238が内蔵されている。さらに、機能部210には、リム吐水用電磁弁222、タンク給水用電磁弁228、及び加圧ポンプ234を制御する洗浄制御手段であるコントローラ(図示せず)が内蔵されている。
【0095】
本実施形態においては、リム吐水用電磁弁222は、水洗大便器本体202の後方ほぼ中央に配置されている。リム吐水用バキュームブレーカ224は、リム吐水用電磁弁222を通過した洗浄水をリム吐水口218へ導くリム側給水路218aの途中に配置されている。また、リム吐水用バキュームブレーカ224は、ボウル部212の上端面よりも約25.4mm(約1インチ)上方に配置されており、逆流を確実に防止している。なお、本実施形態においては、リム吐水用バキュームブレーカ224は、水洗大便器本体202の後方ほぼ中央の、排水トラップ管路14の上方に配置されている。
【0096】
リム吐水用フラッパー弁226は、リム吐水用バキュームブレーカ224の下流側のリム側給水路218aに配置され、洗浄水のリム吐水口218からの逆流を防止している。なお、本実施形態においては、リム吐水用フラッパー弁226は、水洗大便器本体202の後方左側に配置されている。
【0097】
タンク給水用電磁弁228は、コントローラの制御信号により開閉され、洗浄水を貯水タンク232へ給水、停止させるように構成されている。本実施形態においては、タンク給水用電磁弁228は、水洗大便器本体202の後方ほぼ中央に配置されている。
【0098】
貯水タンク232は、ジェット吐水口216から吐水すべき洗浄水を貯水するように構成されている。なお、本実施形態において、貯水タンク232は、図17に示すように、水洗大便器本体202の後方右側から、水洗大便器本体202後方中央の排水トラップ管路214の上方を越えて、水洗大便器本体202の後方左側まで、逆L字形に延びるように配置されている。また、水洗大便器本体202の後方には、取付部である取付フレーム202aが固定されている。
【0099】
さらに、本実施形態においては、タンク給水路232aの先端は貯水タンク232の上方に開口されており、タンク給水路232aと貯水タンク232内の洗浄水との間にエアギャップが設けられている。このため、貯水タンク232内の洗浄水がタンク給水路232aに逆流することはないので、タンク給水用のバキュームブレーカは省略されている。
【0100】
また、貯水タンク232の上部には、リリース水路であるオーバーフロー管232dが取り付けられている。このオーバーフロー管232dは、貯水タンク232上部のボウル部212の上端面よりも高い位置とリム側給水路218aを連通させるように設けられている。このため、貯水タンク232内の水位が、オーバーフロー管232dが接続されている高さまで上昇した場合には、貯水タンク232内の洗浄水は、オーバーフロー管232d、リム側給水路218aを通って、リム吐水口218からボウル部212内に排出される。また、オーバーフロー管232dは、貯水タンク232の、ボウル部212の上端面よりも高い位置に接続されているので、ボウル部212内の洗浄水がオーバーフロー管232dを通って貯水タンク232に逆流することはない。
【0101】
加圧ポンプ234は、貯水タンク232に貯水された洗浄水を加圧して、ジェット吐水口216から吐出させるように構成されている。本実施形態においては、加圧ポンプ234は、貯水タンク232の逆L字形の水平部分の下に、即ち、水洗大便器本体202の後方ほぼ中央に配置されている。
【0102】
また、図17に示すように、加圧ポンプ234には、貯水タンク232内を下方に延びる吸い込みノズル234aが取り付けられている。この吸い込みノズル234aは貯水タンク232の底部付近まで延びており、貯水タンク232内の洗浄水は、吸い込みノズル234aを介して加圧ポンプ234によって吸い上げられ、加圧される。さらに、加圧ポンプ234によって加圧された洗浄水は、ジェット吐水用バキュームブレーカ236に流入し、ジェット側給水路216aを通ってジェット吐水口216から吐出されるように構成されている。
【0103】
ジェット吐水用バキュームブレーカ236は、加圧ポンプ234の下流側に接続されており、ボウル部212内の溜水が貯水タンク232側へ逆流するのを防止すると共に、それらの間の縁切りを行うように構成されている。これにより、貯水タンク232内の貯水水位を、ボウル部212内の溜水水位よりも高く設定することが可能になる。なお、本実施形態においては、ジェット吐水用バキュームブレーカ236は、水洗大便器本体202の後方ほぼ中央に配置されている。
【0104】
ジェット吐水用フラッパー弁238は、ジェット吐水用バキュームブレーカ236の下流側に接続され、洗浄水のジェット吐水口216からの逆流を防止している。ジェット吐水用フラッパー弁238を通過した洗浄水は、ジェット側給水路216aを通ってジェット吐水口216から吐出されるように構成されている。なお、本実施形態においては、ジェット吐水用フラッパー弁238は、水洗大便器本体202の後方の、排水トラップ管路214上方に配置されている。即ち、貯水タンク232に貯水され、加圧ポンプ234によって加圧された洗浄水は、ジェット吐水用バキュームブレーカ236、ジェット吐水用フラッパー弁238及びジェット側給水路216aを通ってジェット吐水口216から吐出されるように構成されている。
【0105】
また、本実施形態においては、リム吐水用フラッパー弁226から延び、リム吐水口218に至るリム側給水路218aも、排水トラップ管路214に対してジェット側給水路216aと同じ側に配置されている。
【0106】
次に、本発明の第3実施形態による水洗大便器200の作用を説明する。
まず、待機状態において、便器洗浄スイッチ(図示せず)が操作されると、1回目のリム吐水が開始される。即ち、コントローラ(図示せず)はリム吐水用電磁弁222に信号を送って開放させ、水道の給水圧力によりリム吐水口218から洗浄水を吐出させる。入水口220aから流入した洗浄水は、水洗大便器本体202後方中央に配置されたリム吐水用電磁弁222を通過し、水洗大便器本体2後方中央の排水トラップ管路214の上方に配置されたリム吐水用バキュームブレーカ224に到達する。
【0107】
さらに、リム吐水用バキュームブレーカ224を通過した洗浄水は、水洗大便器本体202後方左側に配置されたリム吐水用フラッパー弁226に流入した後、水洗大便器本体202の前方に向かって流れ、リム側給水路218aを通って、ボウル部212上部の後方左側に開口したリム吐水口218から吐出される。リム吐水口218から吐出された洗浄水は、ボウル部212内を旋回しながら下方へ流下し、ボウル部212の内壁面が洗浄される。
【0108】
所定時間経過後、コントローラは、ジェット吐水を開始させる。即ち、コントローラは、リム吐水用電磁弁222に信号を送ってこれを閉鎖させ、また、加圧ポンプ234に信号を送りこれを起動させ、貯水タンク232内に貯水されていた洗浄水を加圧する。水洗大便器本体202後方中央に配置された加圧ポンプ234によって加圧された洗浄水は、排水トラップ管路214の上方に配置されたジェット吐水用バキュームブレーカ236に到達する。ジェット吐水用バキュームブレーカ236を通過した洗浄水は、ジェット吐水用フラッパー弁238に流入する。ジェット吐水用フラッパー弁238を通過した洗浄水は、水洗大便器本体202の前方に向かって流れ、ジェット側給水路216aを通って、ボウル部212底部に開口したジェット吐水口216から吐出される。
【0109】
ジェット吐水口216から吐出された洗浄水は排水トラップ管路214内に流入し、排水トラップ管路214を満水にしてサイホン現象を引き起こす。このサイホン現象により、ボウル部212内の溜水及び汚物は、排水トラップ管路214に吸引され、排水ソケット215を通って壁面に設けられた排水管Dから排出される。
【0110】
次いで、2回目のリム吐水が開始される。即ち、コントローラは、リム吐水用電磁弁222に信号を送ってこれを開放させ、リム吐水口218からの2回目の吐水を開始させる。リム吐水口218からの2回目の吐水によりボウル部212内の溜水の水位は上昇し、所定のリム吐水時間経過後、ボウル部212内は所定の溢流水位に到達する。さらに、コントローラは、リム吐水用電磁弁222に信号を送ってこれを閉鎖させ、リム吐水口218からの2回目の吐水を停止させる。
【0111】
次いで、貯水タンク232への洗浄水の補給が開始される。即ち、リム吐水口218からの吐水が停止した後、所定の給水待ち時間が経過した後、コントローラは、タンク給水用電磁弁228に信号を送り、これを開放させる。タンク給水用電磁弁228が開放されると、入水口220aから流入した洗浄水は、タンク給水用電磁弁228、タンク給水路232aを通過して貯水タンク232内に流入する。貯水タンク232内に洗浄水が流入し、貯水タンク232内の水位が規定の貯水量に達すると、タンク給水用電磁弁228が閉鎖され、1回の便器洗浄が終了する。
【0112】
また、貯水タンク232への給水系統の故障等により、貯水タンク232内の水位がボウル部212の上端面よりも高い所定の水位以上に上昇した場合には、貯水タンク232内の洗浄水は、オーバーフロー管232d、リム側給水路218aを通って、リム吐水口218からボウル部212内に排出される。これにより、洗浄水の貯水タンク232からの溢れが防止される。
【0113】
次に、図18及び図19を参照して、本発明の第3実施形態の変形例による水洗大便器を説明する。本変形例による水洗大便器は、水洗大便器本体の排水トラップ管路に接続されている排水ソケットが上述した第3実施形態とは異なる。図18は本変形例による水洗大便器の側面断面図であり、図19は、図18のXIX−XIX線に沿う断面図である。
【0114】
図18及び図19に示すように、本変形例による水洗大便器は、鉛直下方に延びる排水トラップ管路214の下端に排水ソケット250が接続されている。この排水ソケット250は、排水トラップ管路214に接続された入口端から鉛直下方に延びた後、水洗大便器本体202の前方に向けて直角に折れ曲がり、出口端が床面に設けられた排水管Dに接続されている。本変形例に使用されている水洗大便器本体は、本発明の第3実施形態に使用されている水洗大便器本体と同一であるが、排水ソケットを交換することにより、壁面に設けた排水管に接続する所謂P形配管にも、床面に設けた排水管に接続する所謂S形配管にも対応することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の第1実施形態による水洗大便器の右側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態による水洗大便器の上面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による水洗大便器の左側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による水洗大便器を後方右斜め上から見た斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態による水洗大便器を後方左斜め上から見た斜視図である。
【図6】図2のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】リム吐水及びジェット吐水の給水系統を示すブロック図である。
【図8】ジェット吐水用バキュームブレーカの断面図である。
【図9】水洗大便器の洗浄時において各部が作動するタイミングを示すグラフである。
【図10】水洗大便器の洗浄作用を示すフローチャートである。
【図11】水洗大便器の凍結防止運転の処理を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第2実施形態による水洗大便器を前方左斜め上から見た斜視図である。
【図13】本発明の第2実施形態による水洗大便器を後方右斜め上から見た斜視図である。
【図14】本発明の第3実施形態による水洗大便器を後方左斜め上から見た斜視図である。
【図15】本発明の第3実施形態による水洗大便器の上面図である。
【図16】図15のXVI−XVI線に沿う断面図である。
【図17】図15のXVII−XVII線に沿う断面図である。
【図18】本発明の第3実施形態の変形例による水洗大便器の側面断面図である。
【図19】図18のXIX−XIX線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0116】
D 排水管
1 本発明の第1実施形態による水洗大便器
2 水洗大便器本体
2a 取付フレーム
2b 水受けトレイ
4 便座
6 カバー
8 局部洗浄装置
10 機能部
10a サイドパネル
12 ボウル部
14 排水トラップ管路
16 ジェット吐水口
16a ジェット側給水路
18 リム吐水口
18a リム側給水路
20 定流量弁
20a 入水口
22 リム吐水用電磁弁
24 リム吐水用バキュームブレーカ
26 リム吐水用フラッパー弁
28 タンク給水用電磁弁
30 タンク給水用バキュームブレーカ
32 貯水タンク
32a タンク給水路
32b フロートスイッチ
32c 金属板
32d リリース水路
34 加圧ポンプ
34a インペラ
34b モーター
34c 水抜き用水栓
34d U字管
34e 横断管
36 ジェット吐水用バキュームブレーカ
38 ジェット吐水用フラッパー弁
40 コントローラ
40a 計時手段
40b 吐水時間調整手段
40c 温度センサ
40d 凍結防止制御手段
40e タイマー
42a 止水栓
42b 分岐金具
42c ストレーナ
44 バルブ本体
44a 入水口
44b 出水口
46 バキュームブレーカコマ
46a 弁体部
46b 軸部
46c 下面シール材
46d 上面シール材
48 バキュームブレーカ本体
48a 大気開放部
48b ガイド部
50a、50b、50c 接続部
100 本発明の第2実施形態による水洗大便器
102 水洗大便器本体
102c 排水溝
110 機能部
132 貯水タンク
132d リリース水路
200 本発明の第3実施形態による水洗大便器
202 水洗大便器本体
210 機能部
212 ボウル部
214 排水トラップ管路
215 排水ソケット
216 ジェット吐水口
216a ジェット側給水路
218 リム吐水口
218a リム側給水路
222 リム吐水用電磁弁
224 リム吐水用バキュームブレーカ
226 リム吐水用フラッパー弁
228 タンク給水用電磁弁
232 貯水タンク
232a タンク給水路
232d オーバーフロー管
234 加圧ポンプ
234a 吸い込みノズル
236 ジェット吐水用バキュームブレーカ
238 ジェット吐水用フラッパー弁
250 排水ソケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって、
ジェット吐水口が形成されたボウル部、及びこのボウル部の底部から延びる排水トラップ管路を備えた水洗大便器本体と、
上記ボウル部を洗浄する洗浄水を加圧する加圧ポンプと、
この加圧ポンプによって加圧された洗浄水を上記ジェット吐水口へ導くジェット側給水路と、
このジェット側給水路の途中に設けられたジェット吐水用バキュームブレーカと、
上記加圧ポンプによって加圧すべき洗浄水を貯水する貯水タンクと、
この貯水タンク内の洗浄水の水位が所定の水位以上に上昇したとき、上記貯水タンクからオーバーフローした洗浄水を、上記ジェット吐水用バキュームブレーカの大気開放部に流下させるリリース水路と、
を有することを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって、
ジェット吐水口及びリム吐水口が形成されたボウル部、及びこのボウル部の底部から延びる排水トラップ管路を備えた水洗大便器本体と、
洗浄水を上記リム吐水口へ導くリム側給水路と、
上記ボウル部を洗浄する洗浄水を加圧して上記ジェット吐水口から吐水させる加圧ポンプと、
この加圧ポンプによって加圧すべき洗浄水を貯水する貯水タンクと、
この貯水タンク内の洗浄水の水位がボウル部の上端面よりも高い所定の水位以上に上昇したとき、上記貯水タンクからオーバーフローした洗浄水を、上記リム側給水路に流入させるリリース水路と、
を有することを特徴とする水洗大便器。
【請求項3】
加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって、
吐水口が形成されたボウル部、このボウル部の後部上端面に形成され、オーバーフロー水を上記ボウル部に流入させる排水溝、及び上記ボウル部の底部から延びる排水トラップ管路を備えた水洗大便器本体と、
上記吐水口から吐水されて上記ボウル部を洗浄する洗浄水を加圧する加圧ポンプと、
この加圧ポンプによって加圧すべき洗浄水を貯水する貯水タンクと、
この貯水タンク内の洗浄水の水位が上記ボウル部の上端面よりも高い所定の水位以上に上昇したとき、上記貯水タンクからオーバーフローした洗浄水を、上記排水溝に流下させるリリース水路と、
を有することを特徴とする水洗大便器。
【請求項4】
上記排水溝は、上記ボウル部の後部中央に、上記水洗大便器本体の前後方向に延びる溝である請求項3記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記貯水タンクは、上記排水溝及び上記排水トラップ管路の側方に配置されており、上記リリース水路は、上記排水溝の側面に連通している幅広の水路である請求項4記載の水洗大便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−82031(P2008−82031A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263237(P2006−263237)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】