説明

水洗式便器

【課題】便器本体に供給する洗浄水の水量が変動しても、節水化を図りつつ便器洗浄を良好に行うことができる水洗式便器を提供する。
【解決手段】水洗式便器は、便鉢部20及び便器排水路30を有した便器本体10と、便器洗浄装置40とを備えている。便器排水路30は、上昇流路32と、下降流路33とから構成され、便器洗浄装置40が便器本体10に設定水量の洗浄水を供給した際の便鉢部20及び上昇流路32に貯留された封水の水位よりも高い位置に上昇流路32から下降流路33に変化する下端側に形成された頂部34を有している。便器洗浄装置40は、設定水量よりも少ない最低水量と、設定水量よりも多い最高水量との間で便器本体10に供給する洗浄水の水量が変動する。便鉢部20及び上昇流路32は、便器洗浄装置40が便器本体10に最低水量の洗浄水を供給した際の封水の水位が流入口31の上端部から規定高さH以上になるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水洗式便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には従来の水洗式便器が開示されている。この水洗式便器は、便器本体と、この便器本体に洗浄水を供給する便器洗浄装置とを備えている。便器本体は、便鉢部と、この便鉢部の下流側に連通した便器排水路とを有している。便器排水路は、便鉢部の下部に流入口を設けて斜め上方に延びた上昇流路と、この上昇流路の上端部に連通して下方に延びた下降流路とから構成されている。便器排水路は上昇流路から下降流路に変化する下端側に形成された頂部を有している。
【0003】
便器洗浄装置は、便器本体に洗浄水を供給した際に便鉢部及び上昇流路に貯留された封水の水位が頂部よりも低くなるように、便器本体に供給する洗浄水の水量をコントロールしている。この便器洗浄装置は、流量計を設けて積算流量を管理することにより、給水圧にかかわらず所定の給水量を供給することができる。また、この便器洗浄装置は、封水の水位を検知する反射型センサを設けて水位を検知することにより、所定の水位になるよう洗浄水を供給することができる。このように流量計や反射型センサを設けることによって、この便器洗浄装置は封水の水位が確実に便器排水路の頂部よりも低くなるように洗浄水を供給することができる。
【0004】
この水洗式便器は、封水の水位が便器排水路の頂部よりも低いため、次の便器洗浄の初期に便器洗浄装置から供給する洗浄水は、便鉢部及び上昇流路に貯留された封水の水位を高くすることに利用される。つまり、この水洗式便器は、便器洗浄の初期に便器洗浄装置から供給する洗浄水が頂部から下降流路に溢れ出さず、サイホン作用の発生等による汚物等の排出に利用することができる。このため、この水洗式便器は、洗浄水を無駄に排水しないため、節水を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−90746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この水洗式便器では、封水の水位が頂部よりも低くなるように、便器洗浄装置によって便器本体に供給する洗浄水の水量をコントロールしなければならない。この便器洗浄装置において、確実に封水の水位が頂部よりも低くするようにコントロールするためには、流量計を設けたり、反射型センサを設けたりしなければならない。このため、水洗式便器の構成部品が増え、便器洗浄装置の制御が複雑化してしまう。また、便器洗浄装置に流量計や反射型センサを設けたとしても、水量を一定に制御することは現実的には困難である。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、便器本体に供給する洗浄水の水量が変動しても、節水化を図りつつ便器洗浄を良好に行うことができる水洗式便器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の水洗式便器は、便鉢部、及びこの便鉢部の下流側に連通した便器排水路を有した便器本体と、この便器本体に洗浄水を供給する便器洗浄装置とを備えた水洗式便器であって、
前記便器排水路は、
前記便鉢部の下部に流入口を設けて斜め上方に延びた上昇流路と、この上昇流路の上端部に連通して下方に延びた下降流路とから構成され、
前記便器洗浄装置が前記便器本体に設定水量の洗浄水を供給した際の洗浄後の待機状態における前記便鉢部及び前記上昇流路に貯留された封水の水位よりも高い位置に前記上昇流路から前記下降流路に変化する下端側に形成された頂部を有しており、
前記便器洗浄装置は、
前記便器本体に洗浄水を供給する際の諸条件により、前記設定水量よりも少ない最低水量と、前記設定水量よりも多い最高水量との間で前記便器本体に供給する洗浄水の水量が変動するものであり、
前記便鉢部及び前記上昇流路は、
前記便器洗浄装置が前記便器本体に前記最低水量の洗浄水を供給した際の前記便鉢部及び前記上昇流路に貯留された封水の水位が前記流入口の上端部から規定高さ以上になるように形成されていることを特徴とする。
【0009】
この水洗式便器では、便器洗浄の実行により、多くの場合、便鉢部及び上昇流路に貯留された封水の水位が便器排水路の頂部よりも低い位置になる。このため、この水洗式便器は、封水が貯留される際に封水が下降流路側に溢れ出すことが殆どなく、便器排水路より下流側に無駄に排水されることを抑制することができる。よって、この水洗式便器は、便器洗浄装置が便器本体に供給する洗浄水の水量を少なくして、節水化を図ることができる。また、この水洗式便器では、便器洗浄装置が便器本体に供給する洗浄水が最低水量であっても便鉢部及び上昇流路に貯留された封水の水位が流入口の上端部から規定高さ以上になる。つまり、日本工業規格で規定された封水高さ(50mm以上)を満たすことができる。このため、この水洗式便器は良好に使用することができる。
【0010】
また、この水洗式便器では、使用者が用便をした際、便鉢部及び上昇流路に貯留された封水が頂部から下降流路に溢れ出さない、若しくは溢れ出る量が少ない。このように、この水洗式便器は、封水が便器洗浄を開始する前に無駄に排水されることを抑制することができるため、節水化を図ることができる。また、便鉢部及び上昇流路に貯留された封水の殆どを汚物等の排出に利用することができる。このため、この水洗式便器は便器洗浄を良好に行うことができる。
【0011】
さらに、封水の水位よりも高い位置に頂部を有しているため、便器排水路よりも下流側の排水管内の圧力の変動による封水切れがおこり難い。このため、このような封水切れが原因で便器本体に洗浄水を供給することが殆ど無くなり、節水を図ることができる。また、封水切れが殆ど無くなるため便器の品質の向上を図ることができる。
【0012】
また、この水洗式便器では、使用者が排泄した大小便によって便鉢部及び上昇流路に貯留された封水の水位が上昇する。このように、この水洗式便器は、便器洗浄装置が便器本体に洗浄水を供給せずに便鉢部及び上昇流路に貯留された封水の水位を上昇させ、封水の位置エネルギーを増大させることができる。この増大した封水の位置エネルギーは、便器洗浄の際に便器本体に供給される洗浄水との相乗効果により、便器排水路にサイホン作用を発生させる等、便器排水路から汚物等を良好に排出することに利用することができる。特に、この水洗式便器は、頂部の高さを高く設計できるため、頂部の高さを高くすることによって封水の位置エネルギーを増大して、汚物等をさらに良好に排出することができる。
【0013】
したがって、本発明の水洗式便器は、便器本体に供給する洗浄水の水量が変動しても、節水化を図りつつ便器洗浄を良好に行うことができる。
【0014】
前記頂部は、前記便器洗浄装置が前記最高水量の洗浄水を前記便器本体に供給した際に前記便鉢部及び前記上昇流路に貯留された封水の水位以上の位置に形成され得る。この場合、便器洗浄装置が最高水量の洗浄水を便器本体に供給しても封水が確実に頂部から下降流路側に溢れ出ないようにすることができる。このため、この水洗式便器は洗浄水を無駄に便器排水路より下流側に排水せず、洗浄水を有効に利用して便器洗浄を良好に行うことができる。
【0015】
前記便鉢部は、前記流入口の下端部から連続して形成され、前記流入口の上端部の高さ付近から前記頂部の高さ付近まで急激に立ち上げられた急傾斜面を有し得る。この場合、便器洗浄装置から便器本体に供給する洗浄水の水量が通常の変動内(最低水量と最高水量との間の変動)で変動して封水の水位が昇降しても、便鉢部に形成される封水の水面の面積の変動を少なくすることができる。このため、この水洗式便器は、その使用者に洗浄水の水量の変動が気付かれずに、使用者が違和感なく利用することができる。
【0016】
前記急傾斜面は前記流入口の近傍に形成され得る。この場合、封水が貯留される便鉢部の下部の容量が少なくなるため、封水の水位を容易に上昇させることができる。つまり、封水の位置エネルギーが容易に高まり、その封水の位置エネルギーを利用して、便器洗浄を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例の水洗式便器を示す断面図である。
【図2】実施例の水洗式便器を示す平面図である。
【図3】実施例の水洗式便器において封水の水位上昇を示す断面図である。
【図4】実施例の水洗式便器の洗浄パターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の水洗式便器を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
<実施例>
実施例の水洗式便器は、図1及び図2に示すように、便器本体10と便器洗浄装置40とを備えている。便器本体10は、便鉢部20、及びこの便鉢部20の下流側に連通した便器排水路30を有している。便鉢部20は上部開口の周縁部に棚状に形成されたリム通水路21を有している。
【0020】
便器排水路30は上昇流路32と下降流路33とから構成されている。上昇流路32は、便鉢部20の下部に前後方向に開口した流入口31を設けて便鉢部20の背面に沿って斜め上方に延びている。下降流路33は上昇流路32の上端部に連通して下方に延びている。下降流路33は下端部を排水接続具50の上端開口に連通している。排水接続具50は下端部を図示しない床面に引き出された排水管に連通している。
【0021】
便器排水路30は上昇流路32から下降流路33に変化する下端側に形成された頂部34を有している。頂部34は、便器洗浄装置40が便器本体10に設定水量の洗浄水を供給した際の便鉢部20及び上昇流路32に貯留された封水の水位L1よりも高い位置に形成されている。また、この頂部34は、後述するように、便器洗浄装置40が便器本体10に最高水量の洗浄水を供給した際の便鉢部20及び上昇流路32に貯留された封水の水位L3とほぼ同じ高さに形成されている。このため、この水洗式便器は、封水が貯留される際に封水が下降流路33側に溢れ出すことがなく、洗浄水を無駄に便器排水路30より下流側に排水してしまわない。よって、この水洗式便器は便器洗浄装置40が便器本体10に供給する洗浄水の水量を少なくして、節水化を図ることができる。
【0022】
便鉢部20は、流入口31の下端部から連続して形成され、流入口31の上端部31Aの高さ付近から便器排水路30の頂部34の高さ付近まで急激に立ち上げられた急傾斜面22を有している。急傾斜面22は流入口31の近傍に形成されている。このため、封水が貯留される便鉢部20の下部の容量が少なくなるため、封水の水位を容易に上昇させることができる。つまり、封水の位置エネルギーが容易に高まり、その封水の位置エネルギーを利用して、便器洗浄を良好に行うことができる。
【0023】
便鉢部20及び上昇流路32は、後述するように、便器洗浄装置40が便器本体10に最低水量の洗浄水を供給した際の便鉢部20及び上昇流路32に貯留された封水の水位L2が流入口31の上端部31Aから規定高さH(50mm)以上になるように形成されている。つまり、最低水量の洗浄水が貯留された際に、封水の水位L2が規定高さH以上になるように、便鉢部20及び上昇流路32の形状及び大きさ(容量)が決められている。このように、この水洗式便器は、日本工業規格で規定された封水高さ(50mm以上)を満たすことができ、良好に使用することができる。
【0024】
便器洗浄装置40は、弁ユニット41と、弁ユニット41に設けられたリム側開閉弁42A及びジェット側開閉弁42Bの開閉を制御する制御装置43と、弁ユニット41の上流側に連結された給水管47と、弁ユニット31に下流側に連結されたリム側給水管48A及びジェット側給水管48Bとを有している。
【0025】
弁ユニット41は、便器本体10の後部に取り付けられた取付金具Kによって便器本体10の後端部後方に配置されている。弁ユニット41は、給水管47の下流端が連結した給水路44と、この給水路44の上流端を分岐して形成したリム側給水路46A及びジェット側給水路46Bとを有している。給水管47は図示しない給水源に連通している。弁ユニット41は、給水路44に設けられた定流量弁45と、リム側給水路46Aに設けられ、リム側給水路46Aを開閉するリム側開閉弁42Aと、ジェット側給水路46Bに設けられ、ジェット側給水路46Bを開閉するジェット側開閉弁42Bとを有している。
【0026】
リム側給水路46Aの下流端にはリム側給水管48Aが連結し、ジェット側給水路46Bの下流端にはジェット側給水管48Bが連結している。リム側給水管48Aは下流端にリムノズル49Aを連結している。ジェット側給水管48Bは下流端にジェットノズル49Bを連結している。リムノズル49Aは、便鉢部20の先端側からみて左側の後方に配置されており、リム通水路21に沿って洗浄水を吐水するリム吐水口が先端部に貫設されている。ジェットノズル49Bは、上昇流路32の下端部に取り付けられており、上昇流路32に沿って洗浄水を吐水するジェット吐水口が先端部に貫設されている。
【0027】
次に、このように構成された水洗式便器を使用者が利用して便器洗浄行う工程を説明する。
【0028】
[待機状態]
使用者に使用される前の待機状態では、水洗式便器は、図3に示すように、先の便器洗浄によって便鉢部20及び上昇流路32に貯留された封水の水位L4が頂部34よりも低い位置にある。
【0029】
[使用者の用便]
使用者が用便をした際、使用者が排泄した大小便Fによって便鉢部20及び上昇流路32に貯留された封水の水位は水位L5に上昇する。このように、この水洗式便器は、便器洗浄装置40が便器本体10に洗浄水を供給せずに便鉢部20及び上昇流路32に貯留された封水の水位を上昇させ、封水の位置エネルギーを増大させることができる。この増大した封水の位置エネルギーは、便器洗浄の際に便器本体10に供給される洗浄水との相乗効果により、便器排水路30にサイホン作用を発生させる等、便器排水路30から汚物等を良好に排出することに利用することができる。
【0030】
[便器洗浄(第1リム洗浄)]
使用者の用便後、図示しない便器洗浄スイッチが操作されると、図4に示すように、先ず、制御装置43がリム側開閉弁42Aを設定時間の間、開弁して第1リム洗浄を実行する。第1リム洗浄の実行によって、リム吐水口から水量R1の洗浄水がリム通水路32に沿って吐水され、便鉢部20に流入する。
【0031】
リム吐水口から吐水される洗浄水の単位時間当たりの流量Qは、弁ユニット41に設けられた定流量弁45の個体差や、給水圧の変動等の諸条件によって、設定流量Q1よりも少ない最低流量Q2と、設定流量Q1よりも多い最高流量Q3との間で変動する。このため、第1リム洗浄でリム吐水口から吐水される洗浄水の水量R1も設定水量よりも少ない最低水量R1minと、設定水量よりも多い最高水量R1maxとの間で変動する。なお、この水洗式便器は充分な洗浄性能を満足する給水圧で便器本体に洗浄水が供給される。具体的には流動圧が0.5MPa以上の条件下でこの水洗式便器は使用される。
【0032】
第1リム洗浄が実行されると、洗浄水が便器排水路30の頂部34から下降流路33側に溢れ出すとともに、便鉢部20内の水位が上昇する。
【0033】
[便器洗浄(ジェット洗浄)]
次に、制御装置43は、ジェット側開閉弁42Bを設定時間の間、開弁してジェット洗浄を実行する。この際、ジェット側開閉弁42Bはリム側開閉弁42Aが閉弁する直前に開弁する。ジェット洗浄の実行によって、ジェット吐水口から水量Jの洗浄水が上昇流路32に沿って吐水される。
【0034】
ジェット吐水口から吐水される洗浄水の単位時間当たりの流量Qは、第1リム洗浄の際と同様、設定流量Q1よりも少ない最低流量Q2と、設定流量Q1よりも多い最高流量Q3との間で変動する。このため、ジェット洗浄でジェット吐水口から吐水される洗浄水の水量Jも設定水量よりも少ない最低水量Jminと、設定水量よりも多い最高水量Jmaxとの間で変動する。
【0035】
ジェット洗浄が実行されると、ジェット吐水口から大量の洗浄水が勢いよく便器排水路30に流入する水勢と、便鉢部20内の水位が上昇した洗浄水の位置エネルギーとの相乗効果により、便器排水路30の大部分に洗浄水が充満し、サイホン作用が発生する。これにより、汚物等が便鉢部20及び便器排水路30から排出される。ジェット洗浄の終了間際には、便鉢部20内の洗浄水の殆どが排出されるため、サイホン作用は終了する。
【0036】
[便器洗浄(第2リム洗浄)]
次に、制御装置43は、再度、リム側開閉弁42Aを設定時間の間、開弁して第2リム洗浄を実行する。この際、リム側開閉弁42Aはジェット側開閉弁42Bが閉弁する直前に開弁する。第2リム洗浄の実行によって、リム吐水口から水量R2の洗浄水がリム通水路32に沿って吐水される。
【0037】
リム吐水口から吐水される洗浄水の単位時間当たりの流量Qは、第1リム洗浄及びジェット洗浄の際と同様、設定流量Q1よりも少ない最低流量Q2と、設定流量Q1よりも多い最高流量Q3との間で変動する。このため、第2リム洗浄でリム吐水口から吐水される洗浄水の水量R2も設定水量よりも少ない最低水量R2minと、設定水量よりも多い最高水量R2maxとの間で変動する。
【0038】
第2リム洗浄が実行されると、便鉢部20及び上昇流路32に封水が貯留される。この際、リム吐水口から吐水された洗浄水の水量が最低水量R2minであっても、図1に示すように、上昇流路32の流入口31の上端部31Aから規定高さH(50mm)以上に封水の水位L2が形成される。
【0039】
また、リム吐水口から吐水された洗浄水の水量が最高水量R2maxである場合には、便器排水路30の頂部34の高さとほぼ同じ高さまで封水が貯留され、封水の水位L3が形成される。このように、この水洗式便器は、第2リム洗浄の実行により、リム吐水口から吐水された洗浄水を頂部34から下降流路33側に溢れ出さず、洗浄水を無駄に排水しない。よって、この水洗式便器は便器洗浄装置40が便器本体10に供給する洗浄水の水量を少なくして、節水化を図ることができる。
【0040】
この水洗式便器は、便鉢部20に急傾斜面22が形成されているため、リム吐水口から吐水された洗浄水の水量が変動して、封水が水位L2〜L3の間で昇降しても、図2に示すように、便鉢部20に形成される封水の水面の面積の変動を少なくすることができる。このため、この水洗式便器は、その使用者に洗浄水の水量の変動が気付かれずに、使用者が違和感なく利用することができる。
【0041】
水洗式便器は、第2リム洗浄が終了すると、待機状態に復帰する。
【0042】
以上説明したように、実施例の水洗式便器は、便器本体10に供給する洗浄水の水量が変動しても、節水化を図りつつ便器洗浄を良好に行うことができる。
【0043】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例では、便器排水路の頂部は、便器洗浄装置が便器本体に最高水量の洗浄水を供給した際に便鉢部及び上昇流路に貯留された封水の水位とほぼ同じ高さに形成されているが、設定水量の洗浄水を供給した際に便鉢部及び上昇流路に貯留された封水の水位より高い位置であれば、それよりも低い位置に形成してもよい。
(2)実施例では、便器本体の上昇流路の下端部にジェットノズルを設け、便器洗浄装置が第1リム洗浄、ジェット洗浄、第2リム洗浄の順に便器洗浄を実行するが、ジェットノズルを設けずにリム通水路のみに洗浄水を吐水し、便鉢部及び上昇流路に封水を貯留させるものでもよい。
(3)実施例では、便器洗浄装置が給水源から洗浄水を直接的に便器本体に供給するものであるが、洗浄タンクを有し、給水源から供給された洗浄水を洗浄タンクに貯留し、洗浄タンクから便器本体に洗浄水を供給するものであってもよい。(4)実施例では、上昇流路の流入口の近傍に急傾斜面が形成されているが、急傾斜面は流入口の近傍でなくてもよい。また、急傾斜面が形成されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10…便器本体
20…便鉢部
22…急傾斜面
30…便器排水路
31…流入口
31A…(流入口の)上端部
32…上昇流路
33…下降流路
34…頂部
40…便器洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢部、及びこの便鉢部の下流側に連通した便器排水路を有した便器本体と、この便器本体に洗浄水を供給する便器洗浄装置とを備えた水洗式便器であって、
前記便器排水路は、
前記便鉢部の下部に流入口を設けて斜め上方に延びた上昇流路と、この上昇流路の上端部に連通して下方に延びた下降流路とから構成され、
前記便器洗浄装置が前記便器本体に設定水量の洗浄水を供給した際の洗浄後の待機状態における前記便鉢部及び前記上昇流路に貯留された封水の水位よりも高い位置に前記上昇流路から前記下降流路に変化する下端側に形成された頂部を有しており、
前記便器洗浄装置は、
前記便器本体に洗浄水を供給する際の諸条件により、前記設定水量よりも少ない最低水量と、前記設定水量よりも多い最高水量との間で前記便器本体に供給する洗浄水の水量が変動するものであり、
前記便鉢部及び前記上昇流路は、
前記便器洗浄装置が前記便器本体に前記最低水量の洗浄水を供給した際の前記便鉢部及び前記上昇流路に貯留された封水の水位が前記流入口の上端部から規定高さ以上になるように形成されていることを特徴とする水洗式便器。
【請求項2】
前記頂部は、前記便器洗浄装置が前記最高水量の洗浄水を前記便器本体に供給した際に前記便鉢部及び前記上昇流路に貯留された封水の水位以上の位置に形成されていることを特徴とする請求項1記載の水洗式便器。
【請求項3】
前記便鉢部は、前記流入口の下端部から連続して形成され、前記流入口の上端部の高さ付近から前記頂部の高さ付近まで急激に立ち上げられた急傾斜面を有していることを特徴とする請求項1又は2記載の水洗式便器。
【請求項4】
前記急傾斜面は前記流入口の近傍に形成されていることを特徴とする請求項3記載の水洗式便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−41793(P2012−41793A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186010(P2010−186010)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】