説明

水洗式大便器

【課題】停電時に便器洗浄を良好に実行することができる水洗式大便器を提供する。
【解決手段】水洗式便器は、便鉢部11を有する便器本体10と、人体検知センサー32A、局部洗浄装置31、暖房便座21等の便器本体10に取り付けられ、商用電源Pを電源として駆動する便器装置30と、電池55を電源として駆動し、便鉢部11に洗浄水を供給する便器洗浄装置50とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水洗式大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の水洗式大便器を開示している。この水洗式大便器は、洗浄水を貯留する洗浄タンクと、この洗浄タンクに貯留した洗浄水を便器本体に送水する加圧ポンプとを有する便器洗浄装置を備えている。この便器洗浄装置は、加圧ポンプの動作中に停電になると、その回転部の慣性力による回転によって、便器本体の封水部を水封するために必要な水量の洗浄水を便器本体に送水することができる。
【0003】
このため、この水洗式大便器は、便器洗浄を実行している途中に停電になっても、便鉢部の封水部を水封することができる。これによって、この水洗式大便器は封水部より下流側から便鉢部側に臭気が逆流することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−174944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の水洗式大便器は、便器洗浄を実行している途中に停電になった場合、封水部を水封するために洗浄水を便器本体に送水する便器洗浄装置を備えているものであって、停電時に通常の便器洗浄を実行することはできない。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、停電時に便器洗浄を良好に実行することができる水洗式大便器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水洗式便器は、便鉢部を有する便器本体と、
人体検知センサー、局部洗浄装置、暖房便座等の前記便器本体に取り付けられ、商用電源を電源として駆動する便器装置と、
電池を電源として駆動し、前記便鉢部に洗浄水を供給する便器洗浄装置とを備えていることを特徴とする。
【0008】
この水洗式大便器は、停電時であっても、便器洗浄装置が電池を電源として駆動することができるため、便器本体の便鉢部に洗浄水を供給することができる。また、便器装置は商用電源を電源とし、便器洗浄装置の電源である電池と切り離されているため、電池が便器洗浄装置の駆動以外に使用されない。このため、電池の電気消耗が少なく、停電時でも、繰り返し便器洗浄装置を駆動することができる。
【0009】
したがって、本発明の水洗式大便器は、停電時に便器洗浄を良好に実行することができる。
【0010】
前記電池は二次電池であり、この電池を充電する発電機を備え得る。この場合、発電機によって電池を充電することができるため、電池交換の手間を殆どなくすことができる。また、発電機を便器洗浄装置の駆動によって便鉢部に供給される洗浄水の水流を利用して発電するものにすれば、便鉢部に洗浄水を供給する際に自動的に電池を充電することができる。
【0011】
前記電池を商用電源から充電することができる充電回路を備え得る。この場合、電池の充電量が下がりすぎてしまうことを防止することができる。このため、便器洗浄装置が電池を電源として確実に駆動することができるため、便器洗浄を常に良好に実行することができる。
【0012】
前記充電回路は前記電池を設定した時間帯に充電し得る。この場合、水洗式大便器の使用頻度が高い時間帯よりも前の時間帯に電池を充電するようにすれば、その後に便器洗浄装置が繰り返し駆動されても電池の充電量の不足を招き難くすることができる。また、夜間の時間帯に電池を充電するようにすれば、安い電気料金で電池を充電することができる。
【0013】
前記充電回路の前記電池への充電をON−OFFする充電スイッチを備え得る。この場合、任意に電池を充電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1の水洗式大便器の概念図である。
【図2】実施例2の水洗式大便器の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の水洗式大便器を具体化した実施例1及び2について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
<実施例1>
実施例1の水洗式大便器は、図1に示すように、便鉢部11を有する便器本体10と、便器本体10に取り付けられた便器装置30と、便鉢部11に洗浄水を供給する便器洗浄装置50とを備えている。
【0017】
便鉢部11は、上部周縁に形成され、洗浄水が流れるリム通水路12を有している。便器本体10は便鉢部11の下流側に連通した便器排水路13を有している。便器本体10は、リム通水路12に沿って洗浄水を吐水するリムノズル14と、便鉢部11の下端に設けられ、便器排水路13に向けて洗浄水を吐水するジェットノズル15とを有している。リムノズル14は上流側にリム用給水路16が連結しており、ジェットノズル15は上流側にジェット用給水路17が連結している。リム用給水路16の上流端とジェット用給水路17の上流端とは合流しており、給水圧を有する給水源18に連通している。
【0018】
水洗式大便器は、便器本体10の後部上面に取り付けた便座ボックス20と、便座ボックス20の前面に回動自在に軸支した暖房便座21及び便蓋22とを備えている。暖房便座21は着座面の内側に面状ヒーターが貼付されている。この面状ヒーターは商用電源Pを電源として発熱する。これによって、暖房便座21は着座面を暖かくすることができる。
【0019】
また、水洗式大便器は、便座ボックス20内に収納した局部洗浄装置31、及び便器洗浄装置50を備えている。局部洗浄装置31は操作ボタンを設けたリモートコントローラー31Aを有している。リモートコントローラー31Aの操作ボタンを操作すると、リモートコントローラー31Aから局部洗浄装置31に操作信号が送信される。局部洗浄装置31は、商用電源Pを電源としており、リモートコントローラー31Aから送信された操作信号に応じて駆動する。
【0020】
便器洗浄装置50は、リム用給水路16に設けたリム用開閉弁51と、ジェット用給水路17に設けたジェット用開閉弁52と、リム用開閉弁51及びジェット用開閉弁52に開閉信号を送信する制御装置53とを有している。また、便器洗浄装置50は、リム用給水路16に設けられ、リム用給水路16内の水流によって発電する発電機54と、発電機54が発電した電気を蓄電するリチウムイオン二次電池55とを有している。便器洗浄装置50は、リチウムイオン二次電池55に蓄えた電気を利用して、制御装置53、リム用開閉弁51、及びジェット用開閉弁52を駆動する。さらに、便器洗浄装置50は便器洗浄を実行させる操作ボタン56を有している。
【0021】
便器洗浄装置50は、操作ボタン56が操作されると、制御装置53が所定の洗浄パターンに応じてリム用開閉弁51、及びジェット用開閉弁52に開閉信号を送信し、便器洗浄を実行する。洗浄パターンの一例として、先ず、リムノズル14から洗浄水を吐水するリム洗浄を実行し、その後にジェットノズル15から洗浄水を吐水するジェット洗浄を実行し、さらにその後に、リムノズル14から洗浄水を吐水するリム洗浄を実行するというものが挙げられる。つまり、便器洗浄は、最初のリム洗浄で便鉢部11の表面を洗浄するとともに便鉢部11内の洗浄水の水位を上昇させ、その後のジェット洗浄で便器排水路13内にサイホン作用を発生させて便鉢部11内の汚物等を排出し、さらにその後のリム洗浄で便鉢部11内に水封を形成する。
【0022】
水洗式大便器は、便器洗浄装置50に便器洗浄を実行させる自動洗浄装置32を備えている。自動洗浄装置32は商用電源Pを電源としている。自動洗浄装置32は便器本体10に近づく使用者を検知する人体検知センサー32Aを有している。自動洗浄装置32は、使用者が水洗式便器を使用した後、便器本体10から離れるのを人体検知センサー32Aが検知すると、便器洗浄を実行するように便器洗浄信号を便器洗浄装置50の制御装置53へ送信する。便器洗浄信号を受信した便器洗浄装置50の制御装置53は、所定の洗浄パターンに応じてリム用開閉弁51、及びジェット用開閉弁52に開閉信号を送信し、便器洗浄を実行する。
【0023】
また、局部洗浄装置31のリモートコントローラー31Aは便器洗浄ボタンを設けている。この便器洗浄ボタンが押されると、局部洗浄装置31を介して、便器洗浄装置50の制御装置53に便器洗浄信号が送信される。この場合も、便器洗浄信号を受信した便器洗浄装置50の制御装置53は、所定の洗浄パターンに応じてリム用開閉弁51、及びジェット用開閉弁52に開閉信号を送信し、便器洗浄を実行する。
【0024】
この水洗式大便器において、暖房便座21、局部洗浄装置31、及び自動洗浄装置32が便器装置30に該当する。
【0025】
このような構成を有する水洗式大便器は、非停電時は、自動洗浄装置32、又は局部洗浄装置31のリモートコントローラー31Aに設けられた便器洗浄ボタンを操作することによって、便器洗浄を実行することができる。一方、停電時は、便器洗浄装置50の操作ボタン56を操作することによって、便器洗浄を実行することができる。この際、リチウムイオン二次電池55に蓄えた電気を利用して、便器洗浄装置50である制御装置53、リム用開閉弁51、及びジェット用開閉弁52が駆動される。リチウムイオン二次電池55は、便器装置30である暖房便座21、局部洗浄装置31、及び自動洗浄装置32とは切り離されているため、便器洗浄装置50の駆動以外に使用されない。このため、リチウムイオン二次電池55の電気消耗が少なく、停電時でも繰り返し便器洗浄装置50を駆動することができる。
【0026】
したがって、実施例1の水洗式大便器は、停電時に便器洗浄を良好に実行することができる。
【0027】
また、リチウムイオン二次電池55は、リム用給水路16に設けられ、リム用給水路16内の水流によって発電する発電機54によって充電することができる。このため、便器洗浄の際に自動的にリチウムイオン二次電池55を充電することができる。また、電池交換の手間を殆どなくすことができる。
【0028】
<実施例2>
実施例2の水洗式大便器は、図2に示すように、リチウムイオン二次電池55を商用電源Pから充電することができる充電回路33を備えている点で実施例1の水洗式大便器と相違する。実施例1と同一の構成は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0029】
この水洗式大便器は、リチウムイオン二次電池55を充電することができる充電回路33を局部洗浄装置31、及び自動洗浄装置32に備えている。これら充電回路33は、夜間の時間帯、例えば、午前3時から午前5時の間、リチウムイオン二次電池55を充電するように設定されている。
【0030】
このため、水洗式大便器の使用頻度が高い朝の時間帯の前にリチウムイオン二次電池55を満充電の状態にすることができるため、その後に便器洗浄装置50が繰り返し駆動されてもリチウムイオン二次電池55の充電量の不足を招き難くすることができる。このように、リチウムイオン二次電池55の充電量が下がりすぎてしまうことを防止することができるため、便器洗浄装置50を確実に駆動することができ、便器洗浄を常に良好に実行することができる。また、夜間の時間帯であるため、安い電気料金でリチウムイオン二次電池55を充電することができる。
【0031】
局部洗浄装置31のリモートコントローラー31Aは充電回路33のリチウムイオン第2電池55への充電をON−OFFする充電スイッチを設けている。充電スイッチをONにすることによって、局部洗浄装置31の充電回路33がリチウムイオン二次電池55を充電することができる。このように、この水洗式大便器は、任意にリチウムイオン二次電池55を充電することができる。
【0032】
このような構成を有する水洗式大便器は、非停電時は、自動洗浄装置32、又は局部洗浄装置31のリモートコントローラー31Aに設けられた便器洗浄ボタンを操作することによって、便器洗浄を実行することができる。一方、停電時は、便器洗浄装置50の操作ボタン56を操作することによって、便器洗浄を実行することができる。この際、リチウムイオン二次電池55に蓄えた電気を利用して、便器洗浄装置50である制御装置53、リム用開閉弁51、及びジェット用開閉弁52が駆動される。リチウムイオン二次電池55は、便器装置30である暖房便座21、局部洗浄装置31、及び自動洗浄装置32とは切り離されているため、便器洗浄装置50の駆動以外に使用されない。このため、リチウムイオン二次電池55の電気消耗が少なく、停電時でも繰り返し便器洗浄装置50を駆動することができる。
【0033】
したがって、実施例2の水洗式大便器も、停電時に便器洗浄を良好に実行することができる。
【0034】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1及び2では、リチウムイオン二次電池を便器洗浄装置の電源としていたが、他の二次電池や大容量コンデンサーを便器洗浄装置の電源としてもよい。
(2)実施例1及び2では、リチウムイオン二次電池を便器洗浄装置の電源としていたが、一次電池を便器洗浄装置の電源としてもよい。この場合、電池を充電する発電機は不要となる。
(3)実施例1及び2では、リム用給水路に発電機を設けていたが、ジェット用給水路に発電機を設けてもよい。この場合、発電機をリム用給水路及びジェット用給水路の夫々に設けてもよいし、ジェット用給水路のみに設けてもよい。
(4)実施例1及び2では、リム用給水路内の水流によって発電する発電機を備えていたが、他の手段で発電する発電機であってもよい。
(5)実施例1及び2では、便器装置として、暖房便座、局部洗浄装置、自動洗浄装置を備えていたが、これらのうち少なくとも一つを備えていればよい。また、これらと同等の便器装置を備えていてもよい。
(6)実施例2では、夜間の時間帯にリチウムイオン二次電池を充電するようにしたが、他の時間帯にリチウムイオン二次電池を充電してもよい。
(7)実施例2では、局部洗浄装置及び自動洗浄装置に充電回路を備えたが、一方のみに充電回路を備えてもよい。
(8)実施例2では、局部洗浄装置のリモートコントローラーに充電スイッチを設けたが、充電スイッチを設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10…便器本体
11…便鉢部
30…便器装置(21…暖房便座、31…局部洗浄装置、32A…人体検知センサー)
33…充電回路
50…便器洗浄装置
54…発電機
55…リチウムイオン二次電池(電池)
P…商用電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢部を有する便器本体と、
人体検知センサー、局部洗浄装置、暖房便座等の前記便器本体に取り付けられ、商用電源を電源として駆動する便器装置と、
電池を電源として駆動し、前記便鉢部に洗浄水を供給する便器洗浄装置とを備えていることを特徴とする水洗式大便器。
【請求項2】
前記電池は二次電池であり、この電池を充電する発電機を備えていることを特徴とする請求項1記載の水洗式大便器。
【請求項3】
前記電池を商用電源から充電することができる充電回路を備えていることを特徴とする請求項2記載の水洗式大便器。
【請求項4】
前記充電回路は前記電池を設定した時間帯に充電することを特徴とする請求項3記載の水洗式大便器。
【請求項5】
前記充電回路の前記電池への充電をON−OFFする充電スイッチを備えていることを特徴とする請求項3記載の水洗式便器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−87503(P2013−87503A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229464(P2011−229464)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】