水洗装置及び電着塗装装置、並びにそれらの装置を使用した洗浄水又は極液に含まれる固形物の粉砕方法
【課題】脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装工程における水洗工程で使用され、簡便であり、かつ洗浄水に含まれる固形物を、形成される塗膜の外観に悪影響を与えない程度まで粉砕させる手段等を提供すること。
【解決手段】脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装工程の後に設けられる水洗工程で使用される水洗装置1であって、水洗装置1は、洗浄に使用した後の洗浄水を貯留する貯留槽2を備え、貯留槽2が、前記洗浄水をラインミキサー4で処理した後に貯留槽2及び/又は他の貯留槽に送液する回生ライン3を備え、ラインミキサー4が内部に管状の液体流路を備え、前記液体流路が、前記液体流路の一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、前記区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一端側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備える水洗装置1を使用する。
【解決手段】脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装工程の後に設けられる水洗工程で使用される水洗装置1であって、水洗装置1は、洗浄に使用した後の洗浄水を貯留する貯留槽2を備え、貯留槽2が、前記洗浄水をラインミキサー4で処理した後に貯留槽2及び/又は他の貯留槽に送液する回生ライン3を備え、ラインミキサー4が内部に管状の液体流路を備え、前記液体流路が、前記液体流路の一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、前記区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一端側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備える水洗装置1を使用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗装置及び電着塗装装置に関する。さらに詳しくは、脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装工程の後に設けられる水洗工程で使用される水洗装置、及び電着塗装装置に関する。また、本発明は、これら水洗装置又は電着塗装装置を使用した、洗浄水又は極液に含まれる固形物の粉砕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車又は一般工業用の塗装ラインには、金属基材に塗装を行う前処理工程として、金属基材に付着した油脂を除去する脱脂工程が含まれ、また、金属基材に防錆性を付与する化成処理工程が含まれる。これらの各工程に続く段階では、脱脂や化成処理で使用した薬品を金属基材の表面から洗い流すための洗浄工程が設けられるのが一般的である。また、この塗装ラインが電着塗装ラインである場合、金属基材に電着塗装を行った後、形成された塗膜の表面に付着した余分な塗料を洗い流すために水洗工程が設けられる。
【0003】
このような水洗工程において、洗浄水は貯留槽に蓄えられ、この貯留槽に被洗浄対象物を浸漬して洗浄したり、貯留槽から汲み上げた洗浄水をシャワーとして被洗浄対象物に散布した後に、使用後の洗浄水を再び貯留槽に戻したりする場合がある。この場合、洗浄水は、一部貯留槽に新たに注ぎ足されたものを除いて、その大部分が再利用される。すると、洗浄水は、繰り返し使用される間に、化成処理の際に生じたスラッジやゲル化した塗料等といった工程由来の固形物の他、バクテリア、カビ、藻、スライム等といった生物由来の固形物を含むようになる。このような固形物が、洗浄工程後に金属基材の表面に付着し、塗装工程における塗膜に取り込まれると、塗装後の製品の外観を悪化させる一因となる。そこで、このような固形物を除去するための一例として、貯留槽に蓄えられた洗浄水を循環ラインにより循環させ、その循環ラインの途中にフィルター装置が設置される場合がある。固形物は、このフィルター装置によって除去され、洗浄水における固形物の量が常に一定水準以下に保たれる。
【0004】
しかしながら、フィルター装置により洗浄水に含まれる、このような塗装品質に悪影響を与える固形物を除去する方法では、捕捉された固形物によりフィルター装置が目詰まりし、徐々に装置の入口と出口との差圧が大きくなってくるためにフィルターを頻繁に交換する必要が生じるので、メンテナンスに要する工数が大きい。この点、生物由来の固形物については、貯留槽に蓄えられた洗浄水に殺菌剤等の薬剤を投入することにより抑制を図ることが可能であり、これにより、フィルター交換の頻度を減少させることも可能である。しかし、この場合には、洗浄水に投入する薬剤の分のコストの増大を招くことになる。
【0005】
そのため、洗浄水に含まれる固形物の全てをフィルター装置で除去するのではなく、洗浄水に含まれる固形物を塗装に悪影響を与えない程度まで粉砕し、フィルター装置への負担を軽減させる方法が検討されている。このような方法として、ロータ/ステータ型のラインミキサーを循環ラインに設置し、ロータとステータとの間に生じるせん断力によって洗浄水に含まれる固形物を粉砕する方法が挙げられる。しかしながら、この方法では、粉砕された固形物が2次凝集を起こして大粒径化したり、洗浄水に大量の泡を生じたりする場合がある。また、導入する設備の費用も比較的高い。
【0006】
これとは別に、特許文献1には、電着塗料が蓄えられた電着槽に分散セルを設けて、当該分散セルの内部に存在する塗料に対して超音波振動を加えることによって、凝集した電着塗料を分散させる方法が開示されている。この方法では、超音波振動によって液体中に生じたキャビテーションによって生じる瞬間的な衝撃によって、凝集した電着塗料を分散させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−8295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載された方法は、凝集した塗料粒子を元の正常な粒子に復元させることが目的であり、この方法では洗浄水に含まれる固形物を粉砕させることが難しい。加えて、特許文献1の実施例では、電着槽が20tの場合に3連2系統の超音波発生装置を必要としており、これを100tの容量を有する貯留槽に適用しようとすると、20系統の超音波発生装置が必要となるので、設備価格の面でも課題を有する。
【0009】
また、このような液体中の固形物の問題は、カチオン電着塗装工程の電着槽において使用される極液の循環装置でも同様に生じうる。極液は、電着塗装を繰り返すことにより酸の濃度が増大するので、循環装置によって循環され、循環中に適切な処理が施された後に再使用される。極液に含まれる酸は、カチオン電着塗料の中和のために使用された酸を由来とするものであり、酢酸等の有機酸であることが多い。すると、このような有機酸を資化するバクテリア等が、極液の循環装置内で増殖し、スライム等といった生物由来の固形物を生じさせる。このような固形物は循環装置や酸を電着塗料から分離する隔膜を詰まらせるおそれがある。このため、極液の循環装置においても、上述の洗浄水と同様に固形物の問題を生じうる。
【0010】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、第一には、脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装工程の後に設けられる水洗工程で使用され、簡便であり、かつ洗浄水に含まれる固形物を、形成される塗膜の外観に悪影響を与えない程度まで粉砕させる手段を提供することを目的とする。また、本発明は、第二には、電着塗装工程における極液に生じる固形物を、簡便に粉砕させる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、内部に管状の液体流路を備え、当該液体流路が、その一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、当該区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一旦側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備える構造、いわゆるベンチュリ管構造を有するラインミキサーにより洗浄水に含まれる固形物を処理すると、その固形物が、形成される塗膜の外観に影響を与えない程度まで粉砕されることを見出し、本発明を完成するに至った。また、本発明者らは、このようなラインミキサーが極液循環装置における固形物の粉砕にも好ましく適用可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
(1)本発明は、脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装工程の後に設けられる水洗工程で使用される水洗装置であって、前記水洗装置は、洗浄に使用した後の洗浄水を貯留する貯留槽を備え、前記貯留槽が、前記洗浄水をラインミキサーで処理した後に前記貯留槽及び/又は他の貯留槽に送液する回生ラインを備え、前記ラインミキサーが内部に管状の液体流路を備え、前記液体流路が、前記液体流路の一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、前記区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一端側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備え、前記ラインミキサーに前記洗浄水が供給される際の送液圧力が、0.05〜0.5MPaである水洗装置である。
【0013】
(2)上記水洗装置において、前記水洗工程が、前記洗浄水の一部を前記水洗装置の外部に排出し、排出された洗浄水に相当する分の給水を受ける非閉鎖系水洗工程であることが好ましい。
【0014】
(3)また、本発明は、極液及び電極を内部に収容する極液箱と、前記極液箱に収容された極液を、前記極液箱の外部に送液し、所定の処理を行った後に前記極液箱に返送する循環装置と、を備える電着塗装装置であって、前記循環装置が前記極液の流路にラインミキサーを備え、前記ラインミキサーが内部に管状の液体流路を備え、前記液体流路が、前記液体流路の一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、前記区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一端側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備え、前記ラインミキサーに前記極液が供給される際の送液圧力が、0.05〜0.5MPaである電着塗装装置である。
【0015】
(4)また、本発明は、脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装工程の後に設けられ、使用した洗浄水を同じ工程又は他の工程で再使用する水洗工程において、内部に管状の液体流路を備え、前記液体流路が、前記液体流路の一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、前記区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一端側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備えるラインミキサーに再使用される洗浄水を通過させ、前記ラインミキサーに前記洗浄水が供給される際の送液圧力を0.05〜0.5MPaとすることにより、再使用される洗浄水に含まれる固形物を粉砕処理する方法である。
【0016】
(5)上記方法において、前記水洗工程が、前記洗浄水の一部を前記水洗工程の系外に排出し、排出された洗浄水に相当する分の給水を前記水洗工程の系内に受ける非閉鎖系水洗工程であることが好ましい。
【0017】
(6)また、本発明は、極液及び電極を内部に収容する極液箱と、前記極液を前記極液箱の内部と外部との間で循環させる循環装置と、を備えた電着塗装装置において、内部に管状の液体流路を備え、前記液体流路が、前記液体流路の一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、前記区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一端側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備えるラインミキサーに循環する極液を通過させ、前記ラインミキサーに前記極液が供給される際の送液圧力を0.05〜0.5MPaとすることにより、循環する極液に含まれる固形物を粉砕処理する方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第一には、脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装工程の後に設けられる水洗工程で使用され、簡便であり、かつ洗浄水に含まれる固形物を、形成される塗膜の外観に悪影響を与えない程度まで粉砕させる手段が提供される。また、本発明によれば、第二には、電着塗装工程における極液に生じる固形物を、簡便に粉砕させる手段が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の各実施形態が適用される塗装工程の一実施態様を示すフロー図である。
【図2】図1における水洗工程(S20、S50又はS70)の一実施態様を示すフロー図である。
【図3】本発明の各実施形態で使用されるラインミキサー4を示す縦断面図である。
【図4】図3とは異なる形態のラインミキサー4aを示す縦断面図である。
【図5】本発明の水洗装置の第1実施形態を模式的に示した図である。
【図6】本発明の水洗装置の第2実施形態を模式的に示した図である。
【図7】本発明の水洗装置の第3実施形態を模式的に示した図である。
【図8】本発明の水洗装置の第4実施形態を模式的に示した図である。
【図9】本発明の水洗装置の第5実施形態を模式的に示した図である。
【図10】本発明の水洗装置の第6実施形態を模式的に示した図である。
【図11】本発明の電着塗装装置の実施形態を模式的に示した図である。
【図12】実施例1〜5並びに比較例3及び4で使用した試験装置の概略図である。
【図13】比較例1、5及び6で使用した試験装置の概略図である。
【図14】比較例2で使用した試験装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の各実施形態について説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではない。各実施形態について説明するにあたり、まず、これら本発明の各実施形態が適用される塗装工程の一実施態様について図面を参照しながら簡単に説明する。図1は、本発明の各実施形態が適用される塗装工程の一実施態様を示すフロー図である。図2は、図1における水洗工程(S20、S50又はS70)の一実施態様を示すフロー図である。
【0021】
本実施態様の塗装工程は、金属基材に電着塗装を施すものであり、脱脂工程S10、表面調整工程S30、化成処理工程S40、電着塗装工程S60及び焼付工程S80を備える。また、脱脂工程S10、化成処理工程S40及び電着塗装工程S60の後には、それぞれ水洗工程(S20、S50、S70)が設けられる。これらの水洗工程は、脱脂工程S10及び化成処理工程S40で金属基材に付着した薬品や、電着塗装工程S60で形成された塗膜の表面に過剰に付着した電着塗料を洗い流すために設けられる。
【0022】
脱脂工程S10は、金属基材の表面に付着した油脂を除去するための工程であり、例えば、アルカリ性の洗浄液を金属基材の表面にスプレーしたり、アルカリ性の洗浄液を貯留した槽に金属基材を浸漬させたりすることにより行われる。洗浄液としては、公知のものを特に制限なく使用することができる。脱脂工程S10を経た金属基材は、水洗工程S20に付され、表面に付着した洗浄液が洗い流される。水洗工程S20を経た金属基材は、表面調整工程S30に付される。
【0023】
表面調整工程S30は、その後の工程である化成処理工程S40において金属基材の表面に例えばリン酸亜鉛系等の化成処理が施される場合に設けられ、化成皮膜を形成させるための結晶核を金属基材の表面に形成させるための工程である。金属基材の表面に結晶核を形成させる表面調整剤としては、公知のものを特に制限なく使用することができる。表面調整工程S30を経た金属基材は、化成処理工程S40に付される。なお、化成処理工程S40における化成処理の種類によっては、表面調整工程S30を必要としない場合があり、その場合は表面調整工程S30を省略して化成処理工程S40を実施することができる。
【0024】
化成処理工程S40は、金属基材に耐食性を付与するために、金属基材の表面に化成皮膜を形成させるための工程である。金属基材の表面に化成皮膜を形成させる化成処理剤としては、公知のものを特に制限なく使用することができる。化成処理工程S40を経た金属基材は、水洗工程S50に付され、表面に付着した余分な化成処理剤や化成皮膜を形成する際に生じたスラッジが洗い流される。水洗工程S50を経た金属基材は、電着塗装工程S60に付される。
【0025】
電着塗装工程S60は、化成皮膜が形成された金属基材の表面に電着塗膜を形成させるための工程である。この工程では、アニオン又はカチオンの電荷を有する電着塗料が使用され、電着塗料が貯留された電着塗装槽に金属基材を浸漬しながら金属基材に電圧を印加付与することにより、金属基材の表面に塗膜を形成させる。例えば、カチオン電着塗料が使用される場合には、金属基材を負電極、電着塗装槽の内部に設けられた電極を正電極として電圧が印加されることにより、金属基材の表面にカチオン性である電着塗料が析出して塗膜となる。
【0026】
電着塗装槽の内部において金属基材と反対の電圧を印加させる部材は、隔膜(イオン交換膜)からなる壁面を有する極液箱であり、この極液箱の内部には、電極と極液とが収容される。例えば、カチオン電着塗料の場合、塗膜を形成させるための樹脂にアミノ基等のカチオン性官能基が含まれ、このカチオン性官能基が酢酸等の酸によって中和されてカチオンとなり、その対イオンである酢酸イオンが塗料中に含まれる。上記のように、金属基材に負電圧を印加すると、カチオンである樹脂は、金属基材の表面で中和されて析出し、塗膜となる。このとき、対イオンである酢酸イオンは、正の電極が収容された極液箱へ引き寄せられ、極液箱の内部に存在する極液に取り込まれる。そのため、極液箱の内部に含まれる極液は、徐々に酸濃度が高くなるので、極液循環装置により、極液箱の外部に取り出され必要な処理を受ける。処理を受けた極液は、極液循環装置によって極液箱に返送され、再使用される。
【0027】
電着塗料としては、公知のものを特に制限なく使用することができる。電着塗装工程S60を経た金属基材は、水洗工程S70に付され、形成された塗膜の表面に付着している過剰な電着塗料が洗い流される。水洗工程S70を経た金属基材は、焼付工程S80に付され、焼付処理を受ける。
【0028】
次に、水洗工程S20、S50及びS70について説明する。各水洗工程S20、S50、S70は、それぞれ、少なくとも1つ以上の水洗工程から構成されている。通常の水洗工程数は2〜5である。図2では3つの水洗工程から構成されている一実施態様を示し、第1水洗工程S21、S51、S71、第2水洗工程S22、S52、S72、及び第3水洗工程S23、S53、S73を含む。そして、これら第1水洗工程S21、S51、S71、第2水洗工程S22、S52、S72、及び第3水洗工程S23、S53、S73のそれぞれにおいて、この順序で洗浄水による金属基材の洗浄を行う。また、第1水洗工程から第2水洗工程、第3水洗工程に進むに従って、金属基材の清浄度は向上する。洗浄水による金属基材の洗浄としては、洗浄水に金属基材を浸漬したり、洗浄水を金属基材にスプレーしたりする方法が挙げられるが、特に限定されない。浸漬による洗浄が行われる場合には、各工程に設けられた貯留槽に蓄えられた洗浄水に金属基材が次々に浸漬されて洗浄されるので、洗浄水が繰り返し使用される。また、スプレーによる洗浄が行われる場合には、各工程に設けられた貯留槽に蓄えられた洗浄水を汲み上げて金属基材へのスプレーを行い、使用された後の洗浄水は再び貯留槽に戻されるので、洗浄水が繰り返し使用される。なお、水洗工程S20、S50及びS70における洗浄対象としては、金属基材そのもの、化成処理工程S40により形成された化成皮膜の表面、及び電着塗装工程S60により形成された塗膜の表面が考えられるが、本明細書において洗浄対象として「金属基材」と表示する場合、この「金属基材」という表示はこれらの洗浄対象のいずれかを意味する。
【0029】
既に述べたように、洗浄水は、繰り返し使用されることに伴って、化成処理によって生成したスラッジやゲル化した塗料といった工程由来の固形物の他、バクテリア、カビ、藻、スライム等といった生物由来の固形物を含むようになる。こうした固形物は、比較的大きな粒径を有しており、形成される塗膜中に取り込まれると、塗膜の外観を低下させる。そのため、特に、最後の水洗工程となる第3水洗工程S23、S53、S73で使用される洗浄水には、大きな粒径の固形物を含まないことが求められる。
【0030】
そのため、図2に示すように、第3水洗工程S23、S53、S73では、貯留槽に蓄えられた洗浄水の一部は、循環され、ラインミキサー4によって固形物が粉砕される。これにより、固形物は、塗膜の外観に悪影響を与えない程度に小粒径化される。なお、循環と同時に、循環される洗浄水の一部が排水され、排水された洗浄水に相当する量の純水又は工業用水が洗浄水として補充されてもよい。このように、洗浄水の一部を入れ替えながら洗浄を行う系を非閉鎖系水洗工程と呼ぶ。排出された洗浄水は、前段の水洗工程で再使用され、又は適切な排水処理を受けて廃棄される。
【0031】
一方、第1水洗工程S21、S51、S71や第2水洗工程S22、S52、S72のように、洗浄水が長期間にわたって入れ替えられずに使用される系を閉鎖系水洗工程と呼ぶ。図示しないが、閉鎖系水洗工程であっても、洗浄水に含まれる例えば電着塗料等の成分を、限外濾過により分離して、透過液を洗浄水として使用し、洗浄性を一定水準に維持することができる。また、図示しないが、第1水洗工程S21、S51、S71や、第2水洗工程S22、S52、S72にラインミキサー4を備えた循環ラインを設けて、洗浄水をラインミキサー4で処理してもよい。
【0032】
なお、図2では、第3水洗工程S23、S53、S73を非閉鎖系水洗工程として示し、第1水洗工程S21、S51、S71及び第2水洗工程S22、S52、S72を非閉鎖系水洗工程として示したが、これに限定されず、第2水洗工程S22、S52、S72が非閉鎖系水洗工程であってもよいし、第1水洗工程S21、S51、S71及び第2水洗工程S22、S52、S72が非閉鎖系水洗工程であってもよい。また、第1水洗工程、第2水洗工程及び第3水洗工程において、いずれもが閉鎖系水洗工程であってもよい。なお、図2及び上記説明では、第3水洗工程S23、S53、S73においてラインミキサー4で処理された洗浄水が、再び第3水洗工程S23、S53、S73で再使用されるが、他の工程で使用されてもよい。これについては、後述する本発明の各実施形態の説明において説明する。以上、図2に従って、水洗工程S20、S50又はS70がそれぞれ3つの水洗工程から構成される場合について述べたが、構成される水洗工程数が1または2の場合、及び4以上の場合でも、非閉鎖系水洗工程の数、位置、及びラインミキサー4で処理する水洗工程の数、位置も図2で述べたのと同様に設定することができる。
【0033】
次に、本発明の各実施形態で使用されるラインミキサー4について、図面を参照しながら説明する。図3は、本発明の各実施形態で使用されるラインミキサー4を示す縦断面図である。
【0034】
ラインミキサー4は、長さ方向の両端に洗浄水の流通する配管と接続される接続口45、46を備え、内部に管状の液体流路41を備える。ラインミキサー4によって処理される洗浄水は、液体流路41を通過する。この液体流路41は、その中途に、流路が狭くなる狭窄部42を備える。そして、液体流路41は、液体流路41の一端側45から狭窄部42に向けて縮径する縮径部43と、狭窄部42から液体流路41の他端側46に向けて拡径する拡径部44と、を備える。つまり、図3の実施形態において、液体流路41は、液体流路41の「全部の」区間において、当該区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部42と、液体流路41の一端側45から狭窄部42に向けて縮径する縮径部43と、狭窄部42から液体流路41の他端側46に向けて拡径する拡径部44と、を備える。
【0035】
このような液体流路41の構造は、ベンチュリ管とも呼ばれるものである。この液体流路41の一端側45から流入した洗浄水は、縮径部43を通過する間に加速を受け、狭窄部42に達したときに最大の流速となった後、拡径部44を通過する間に減速される。このため、液体流路41を流れる洗浄水は、ベルヌーイの定理より、狭窄部42において最も圧力が低くなる。このとき、洗浄水は、狭窄部42の付近において、周囲の圧力が自己の蒸気圧よりも低くなるために瞬間的に沸騰状態となって気泡を生じたり、周囲の圧力が低下することに伴って溶存している空気を遊離して気泡を生じたりする。このときに生じた微細な気泡は、キャビテーションとなり、やがて周囲の圧力が回復するにつれて押しつぶされて、衝撃波を発生させる。この衝撃波が洗浄水に含まれている固形物を粉砕するので、液体流路41を通過して他端側46から流出する洗浄水に含まれる固形物の粒径は、一端側45から流入したときの洗浄水に含まれる固形物の粒径よりも小さくなる。
【0036】
本発明は、ベンチュリ管を備えたラインミキサー4に洗浄水を通過させることにより、洗浄水から、塗膜の外観に悪影響を与えるような大粒径の固形物を減少させることができるとの新たな知見に基づいて完成されたものである。具体的には、特に50μm以上の粒径を有する固形物が塗膜に取り込まれると、電着塗装工程の焼付工程後、塗膜の研磨等の補修を必要とする場合が多いが、ラインミキサー4を使用することにより、このような粒径の固形物を著しく減少させることができる。
【0037】
ラインミキサー4への洗浄水の供給圧力は、0.05〜0.5MPaに設定される。この範囲であれば、洗浄水に含まれる固形物の大きさを、塗膜外観への影響の小さい50μm未満まで小さくすることができる一方で、圧力が過剰になることに伴う泡の発生を抑制することができる。ラインミキサー4への洗浄水の供給圧力は、0.06〜0.45MPaであることがより好ましく、0.08〜0.3MPaであることがさらに好ましい。
【0038】
ラインミキサー4において、縮径部43及び拡径部44の狭窄部42と対向する端部の内径D1と、狭窄部42の内径D2と、の比D1/D2は、1.5〜10が好ましく、2〜5がより好ましい。D1/D2がこの範囲であれば、大粒径の固形物を良好に粉砕することができる。なお、縮径部43の狭窄部42と対向する端部と、拡径部44の狭窄部42と対向する端部とが異なる内径を有していてもよい。この場合、縮径部43の狭窄部42と対向する端部の内径D1aと、拡径部44の狭窄部42と対向する端部の内径D1bとのいずれもが、上記D1/D2の比を満たしていることが好ましい。
【0039】
また、ラインミキサー4は、以下の3つの観点からも、上述の水洗工程で使用するのに適する。第1には、上述のロータ/ステータ型のラインミキサーと違って、大きなせん断力が加えられることに起因する固形物の二次凝集を生じさせず、かつ泡の発生を抑制できる点が挙げられる。第2には、構造が簡素でメンテナンスが容易であるので、特に自動車の塗装ラインのような大型の設備に適用した場合に、メンテナンスのコストを著しく低減させることのできる点が挙げられる。第3には、上述のフィルター装置によって洗浄水に含まれる固形物を除くのと違って、フィルター交換等の工数を大きく減少できる点が挙げられる。
【0040】
なお、ラインミキサー4による処理は、フィルター装置で固形物を除去するのとは異なり、固形物を粉砕して、塗膜に悪影響を与える粒径の固形物を減少させるものであり、洗浄水から固形物自体を除くものではない。そのため、ラインミキサー4のみによる固形物処理を閉鎖系処理工程で行うと、洗浄工程を繰り返すことに伴って、洗浄水中の固形物の絶対量が増加することになる。このような観点からは、ラインミキサー4による固形物処理は、非閉鎖系水洗工程で行われることが好ましい。
【0041】
ラインミキサー4の別の形態として、図4に示すラインミキサー4aが挙げられる。図4は、図3とは異なる形態のラインミキサー4aを示す縦断面図である。ラインミキサー4aは、内部にベンチュリ管構造を2つ有するものである。本発明において、このように、複数のベンチュリ管構造を有するラインミキサー使用してもよい。ラインミキサー4aは、上述のラインミキサー4と同様に、内部に液体流路41aを備える。液体流路41aは、一端側45から、順に、第1縮径部43a、第1狭窄部42a、第1拡径部44a、第2縮径部43b、第2狭窄部42b及び第2拡径部44bを経て、他端側46に至る。
【0042】
ここで、第1縮径部43a、第1狭窄部42a及び第1拡径部44aに注目すれば、液体流路41aは、液体流路41aの「一部の」区間において、当該区間の中途部で最も流路幅が狭くなる第1狭窄部42aと、液体流路41aの一端側45から第1狭窄部42aに向けて縮径する第1縮径部43aと、第1狭窄部42aから液体流路41aの他端側46に向けて拡径する第1拡径部44aと、を備えることになる。以下の各実施形態の説明では特に明記しないが、ラインミキサー4に代えて、このように複数のベンチュリ管構造を有するラインミキサーを使用してもよい。
【0043】
次に、本発明の実施形態として、上記水洗工程で好ましく使用することのできる水洗装置、及び上記電着塗装工程で好ましく使用することのできる電着塗装装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。図5は、本発明の水洗装置の第1実施形態を模式的に示した図である。図6は、本発明の水洗装置の第2実施形態を模式的に示した図である。図7は、本発明の水洗装置の第3実施形態を模式的に示した図である。図8は、本発明の水洗装置の第4実施形態を模式的に示した図である。図9は、本発明の水洗装置の第5実施形態を模式的に示した図である。図10は、本発明の水洗装置の第6実施形態を模式的に示した図である。図11は、本発明の電着塗装装置の実施形態を模式的に示した図である。
【0044】
[水洗装置の第1実施形態]
まず、本発明の水洗装置の第1実施形態について説明する。本実施形態の水洗装置1は、上述した水洗工程において好ましく使用されるものである。水洗装置1は、脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装工程を経た金属基材を洗浄するための装置である。なお、上述した水洗工程の説明では、第3水洗工程において、洗浄水の一部を排水し、かつ排水された洗浄水に相当する量の純水又は工業用水を洗浄水として供給することについて説明したが、以下の水洗装置1も、図示しないが、同様の機構を備えてよい。このことは、後に説明する各実施形態においても同様である。
【0045】
水洗装置1は、洗浄水(図示せず、以下同様である。)を貯留する貯留槽2を備える。脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装工程を経た金属基材は、貯留槽2に貯留された洗浄水中に浸漬され、余分な薬品又は塗料が表面から除去される。洗浄に使用された洗浄水は、そのまま貯留槽2に残るので、貯留槽2には洗浄に使用した後の洗浄水が貯留されていることになる。
【0046】
貯留槽2は、貯留槽2に貯留される洗浄水を抜き出すための回生ライン3を備える。回生ライン3は、上述の循環ラインに相当する。回生ライン3は、貯留槽2から洗浄水を抜き出すための一端が貯留槽2に接続され、その途中にポンプ5及びラインミキサー4が接続され、ラインミキサー4によって処理された洗浄水を貯留槽2に返送するために、他端が貯留槽2に接続される。ポンプ5は、回生ライン3を通して、貯留槽2に貯留された洗浄水を循環させる。
【0047】
ラインミキサー4については、既に説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。ラインミキサー4は、回生ライン3を流れる洗浄水に含まれる大粒径の固形物を粉砕する。そして、ラインミキサー4による固形物の粉砕処理を受けた洗浄水は、貯留槽2へ返送される。
【0048】
回生ライン3における洗浄水の循環圧力、すなわちラインミキサー4への洗浄水の供給圧力(運転圧力)は、上述のように、0.05〜0.5MPaに設定される。この範囲であれば、洗浄水に含まれる固形物の大きさを、塗膜外観への影響の小さい50μm未満まで小さくすることができる一方で、圧力が過剰になることに伴う泡の発生を抑制することができる。ラインミキサー4への洗浄水の供給圧力は、0.06〜0.45MPaであることがより好ましく、0.08〜0.3MPaであることがさらに好ましい。
【0049】
ここで、ラインミキサー4の運転時間及び洗浄水の循環流量、すなわち、ポンプ5の運転時間及び循環流量について説明する。図5は貯留槽2と回生ライン3とを備え、ラインミキサー4に洗浄水を循環供給して使用する一実施態様を示すものであるが、ラインミキサー4における固形物の粉砕処理は、貯留槽2に貯留されている洗浄水が均等にラインミキサー4で処理されることにより完結する。具体的には、貯留槽2に貯留された洗浄水は、運転開始後、ラインミキサー4で処理された洗浄水と処理が完結していない洗浄水との混合状態になっている。このような循環処理方式では次式で示される総循環回数が3以上であることが好ましい。
総循環回数=洗浄水の循環流量(t/時間)×運転時間(時間)/貯留槽2内液量(t)
総循環回数とは、上記式からも理解されるように、計算上、貯留槽2に貯留された洗浄水が回生ライン3およびラインミキサー4を通過する回数を意味する。総循環回数が3以上であれば、貯留槽2内の洗浄水のほぼ全量の処理が見込まれる。処理速度としては、一日当りの総循環回数が3以上となることが好ましい。一日当りの総循環回数が3未満の場合には、ラインミキサー4による処理速度が十分ではないおそれがあるため、安定した品質が得られにくい。一日当りの総循環回数が3以上の場合、循環回数が増すにしたがって、より安定した品質が得られるようになる。貯留槽2の内容量が5tを超える場合には、安定した品質を得るために一日当りの総循環回数が5以上となることが好ましい。なお、上記の循環回数を示す式における洗浄水の循環流量は、前述のラインミキサー4への供給圧力(運転圧力)が得られる流量であることが必要である。ラインミキサー4の運転は、長時間にわたる連続運転であってもよいし、運転及び停止を繰り返す間欠運転であってもよい。総循環回数が上記の数値以上となる処理を行うことにより、洗浄水に含まれる大粒径固形物の量が、塗膜の外観に影響を与えない程度まで減少する。化成処理で生じたスラッジやゲル化した塗料及び生物由来の固形物は常に発生している場合が多く、停止を伴わない長時間の連続運転の方が安定した品質が得られるので好ましい。一方、連続した運転で所定の総循環回数が得られれば停止し、一定時間後、再び運転を開始し、これらを繰り返す間欠運転でも十分な効果が得られる。処理の頻度は、これら固形物の発生頻度や量によって異なる。
【0050】
また、既に説明したように、ラインミキサー4は、洗浄水に含まれる固形物の大きさを塗膜の外観に影響を与えない程度まで小さくするものであり、フィルター装置のように洗浄水から固形物を除去するものではない。そのため、水洗装置1は、洗浄水の一部を水洗装置1の外部に排出し、排出された洗浄水に相当する分の水を洗浄水として給水する非閉鎖系水洗工程で使用されることが好ましい。
【0051】
[水洗装置の第2実施形態]
次に、本発明の水洗装置の第2実施形態について説明する。本実施形態の水洗装置1aもまた、上述した水洗工程において好ましく使用されるものである。なお、本実施形態の水洗装置1aの説明において、既に説明した実施形態の説明と重複する箇所については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0052】
水洗装置1aは、ラインミキサー4が2系統の回生ライン3のそれぞれの途中に直列配置4c及び並列配置4bで設けられる。このように、本発明において、ラインミキサー4は、直列配置4cで設けられてもよいし、並列配置4bで設けられてもよい。また、本発明において、ラインミキサー4は、複数の回生ライン3中に複数系統として設けられてもよい。
【0053】
ラインミキサー4が直列配置4c又は並列配置4bで設けられることにより、固形物の粉砕能力の向上又は単位時間当たりの処理能力の増大を図ることができる。なお、図6では、直列配置4c及び並列配置4bのそれぞれについて、2本のラインミキサー4が使用された場合を示したが、直列配置4c及び並列配置4bに含まれるラインミキサー4の本数は、これに限定されず、必要とされる粉砕能力及び処理能力を考慮して適宜決定すればよい。
【0054】
なお、水洗装置1aにおけるラインミキサー4の運転時間及び運転圧力は、第1実施形態の水洗装置1におけるものと同様である。ここに、前述した総循環回数の式において、洗浄水の循環流量とは2基のポンプ5の総流量である。また、水洗装置1aは、第1実施形態の水洗装置1と同様に、非閉鎖系水洗工程で使用されることが好ましい。
【0055】
[水洗装置の第3実施形態]
次に、本発明の水洗装置の第3実施形態について説明する。本実施形態の水洗装置1bもまた、上述した水洗工程において好ましく使用されるものである。なお、本実施形態の水洗装置1bの説明において、既に説明した実施形態の説明と重複する箇所については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
水洗装置1bは、シャワー装置6から洗浄対象である金属基材に洗浄水を噴射することにより、洗浄を行うものである。洗浄に使用された洗浄水は、貯留槽2に戻され、貯留される。貯留槽2で貯留された洗浄水は、回生ライン3により抜き出され、ポンプ5及びラインミキサー4を通過して再びシャワー装置6へと送られる。このように、洗浄水は、循環使用され、洗浄に使用される直前にラインミキサー4による処理を受ける。
【0057】
なお、水洗装置1bにおけるラインミキサー4の運転時間及び運転圧力は、第1実施形態の水洗装置1におけるものと同様である。また、水洗装置1bは、第1実施形態の水洗装置1と同様に、非閉鎖系水洗工程で使用されることが好ましい。
【0058】
[水洗装置の第4実施形態]
次に、本発明の水洗装置の第4実施形態について説明する。本実施形態の水洗装置1cもまた、上述した水洗工程において好ましく使用されるものである。なお、本実施形態の水洗装置1cの説明において、既に説明した実施形態の説明と重複する箇所については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
水洗装置1cは、貯留槽2の外部に設けられるポンプ5の代わりに槽内ポンプ7を貯留槽2の内部に設け、槽内ポンプ7が吸引した洗浄水を回生ライン3に導入する。回生ライン3に導入された洗浄水は、ラインミキサー4による処理を受け、再び貯留槽2へ返送される。
【0060】
なお、水洗装置1cにおけるラインミキサー4の運転時間及び運転圧力は、第1実施形態の水洗装置1におけるものと同様である。また、水洗装置1cは、第1実施形態の水洗装置1と同様に、非閉鎖系水洗工程で使用されることが好ましい。
【0061】
[水洗装置の第5実施形態]
次に、本発明の水洗装置の第5実施形態について説明する。本実施形態の水洗装置1dもまた、上述した水洗工程において好ましく使用されるものである。なお、本実施形態の水洗装置1dの説明において、既に説明した実施形態の説明と重複する箇所については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
水洗装置1dでは、貯留槽2から回生ライン3により抜き出された洗浄水が、ラインミキサー4による処理を受けた後に、貯留槽2に返送されるのではなく、他の槽8へ移送される。他の槽8は、別の工程で洗浄水を使用するための槽でもよいし、単に、貯留槽2に貯留されていた洗浄水を一時的に退避させるための槽でもよい。後者の場合、例えば、貯留槽2の内部を洗浄する場合等への利用が考えられる。
【0063】
なお、水洗装置1dにおいては貯留槽2に貯留された洗浄水を循環して処理することなく、ラインミキサー4を通過した洗浄液は処理が完結されて他の槽8に移送される。ラインミキサー4の運転圧力は、第1実施形態の水洗装置1におけるものと同様である。
【0064】
[水洗装置の第6実施形態]
次に、本発明の洗浄装置の第6実施形態について説明する。本実施形態の水洗装置1eもまた、上述した水洗工程において好ましく使用されるものである。なお、本実施形態の水洗装置1eの説明において、既に説明した実施形態の説明と重複する箇所については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
水洗装置1eでは、貯留槽2から回生ライン3により抜き出された洗浄水が、ラインミキサー4による処理を受けた後に、一部が貯留槽2に返送されるとともに、残りが前段の水洗工程の貯留槽9へ移送される。既に説明したように、例えば、第3水洗工程S23、S53、S73や第2水洗工程S22、S52、S72で使用された洗浄水を、それぞれ前段の水洗工程である第2水洗工程S22、S52、S72や第1水洗工程S21、S51、S71へ移送して再使用する場合があり、そのような場合に水洗装置1eが好ましく使用される。
【0066】
なお、水洗装置1eにおけるラインミキサー4の運転時間及び運転圧力は、第1実施形態の水洗装置1におけるものと同様である。また、水洗装置1eは、第1実施形態の水洗装置1と同様に、非閉鎖系水洗工程で使用されることが好ましい。
【0067】
以上、本発明の水洗装置について、第1から第6実施形態を示して具体的に説明したが、これらの実施形態は、それぞれを単独で用いてもよいし、複数の実施形態を組み合わせて用いてもよい。また、これらの実施形態について、本発明の範囲において、適宜変更を加えて実施してもよい。
【0068】
[電着塗装装置の一実施形態]
次に、本発明の電着塗装装置の一実施形態について、図11を参照しながら説明する。なお、本実施形態の電着塗装装置10は、既に説明した極液循環装置15を備える。そして、本実施形態の電着塗装装置10は、この極液循環装置15に特徴を有するものであり、その他の部分については従来公知の電着塗装装置と同様のものである。そのため、以下の記述では、極液循環装置15を中心に説明を行う。また、本実施形態の電着塗装装置10の説明において、既に説明した水洗装置の実施形態の説明と重複する箇所については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0069】
電着塗装装置10は、金属基材を浸漬して電着塗装を施すための電着槽11を備える。電着槽11の内部には、電着塗料(図示せず、以下同様である。)が貯留されるとともに、電極(図示せず、以下同様である。)及び極液(図示せず、以下同様である。)を収納し、隔膜(イオン交換膜)からなる壁面を有する複数の極液箱12が存在する。既に説明したように、極液箱12は、金属基材とは正負反対の電圧を印加するための部材である。
【0070】
電着塗装装置10における極液循環装置15は、極液箱12と、循環ライン13と、極液槽14と、ポンプ5と、ラインミキサー4とから構成される。極液箱12の内部に収容された極液は、循環ライン13によって極液箱12の外部に取り出されて、極液槽14へ運ばれ、純水による酸濃度調整等必要な処理を受ける。その後、極液は、ポンプ5、ラインミキサー4を通過して、再び極液箱12へ返送される。
【0071】
このように、極液は、必要な処理を受けつつ循環使用される。そのため、長期間にわたる循環使用に伴い、極液中に、藻が繁殖したり、微生物やカビ等からなるスライムが発生したりする場合がある。このような藻やスライムは、固形物となり、極液箱12や循環ライン13等といった極液循環装置15の目詰まりの原因となる。そのため、電着塗装装置10における極液循環装置15では、循環ライン13中にラインミキサー4を備えることにより、こうした固形物を粉砕させる。ラインミキサー4の構造及びその固形物の粉砕効果については、既に述べた通りであるので、その説明を省略する。
【0072】
電着塗装装置10では、上記のような極液循環装置15を備えるので、フィルター交換等の手間を要するフィルター装置を極液循環装置15に設けなくとも、また、生物由来の固形物発生防止のための抗菌剤処理やこれら固形物発生時の殺菌剤処理を行なわなくとも、極液に発生した固形物による極液箱12や循環ライン13等といった極液循環装置15の目詰まりが防止される。
【0073】
ラインミキサー4への極液の供給圧力(運転圧力)は、0.05〜0.5MPaに設定される。この範囲であれば、極液に含まれる固形物の大きさを、極液箱12や循環ライン13の目詰まりを防止できる程度まで小さくすることができる一方で、圧力が過剰になることに伴う極液中の泡の発生を抑制することができる。ラインミキサー4への極液の供給圧力は、0.06〜0.45MPaであることがより好ましく、0.08〜0.3MPaであることがさらに好ましい。
また、電着塗装装置10におけるラインミキサー4の運転時間は、第1実施形態の水洗装置1におけるものと同様に表すことができる。すなわち、総循環回数=極液の循環流量(t/時間)/極液槽14の内液量(t)×運転時間(時間)で計算される総循環回数が一日当たり3以上となることが好ましい。極液槽14の内液量が5tを超える場合には、一日あたりの総循環回数が5以上となることが好ましい。
【0074】
なお、上記水洗装置の説明でも述べたように、ラインミキサー4は、固形物を粉砕するために使用されるものであり、フィルター装置のように固形物自体を除去するものではない。通常の極液循環装置では、極液の酸濃度調整のために、純水や工業用水を補給し、補給量と同量の極液を一部排出する非閉鎖系が一般的であるので、極液中に固形物が蓄積するのを防止する観点では本願発明の好ましい適用が可能である。一方、本願発明を閉鎖系で適用する場合であっても極液循環装置や隔膜の目詰まりを抑制できるので効果は発現できる。
【0075】
以上、本発明の電着塗装装置について実施形態を示して具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態何ら限定されものではないので、上記実施形態について、本発明の範囲において、適宜変更を加えて実施してもよい。
【0076】
本発明は、脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装装置の後に設けられ、使用した洗浄水を同じ工程又は他の工程で再使用する水洗工程において、内部に管状の液体流路を備え、前記液体流路が、前記液体流路の一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、前記区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一端側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備えるラインミキサーに再使用される洗浄水を通過させ、前記ラインミキサーに前記洗浄水が供給される際の送液圧力を0.05〜0.5MPaとすることにより、再使用される洗浄水に含まれる固形物を粉砕処理する方法でもある。
【0077】
この方法は、既に説明した水洗装置にて好ましく実施されるものである。その詳細については、水洗装置についての上記説明で述べた通りであるので、ここでの説明を省略する。
【0078】
また、本発明は、極液及び電極を内部に収容する極液箱と、前記極液を前記極液箱の内部と外部との間で循環させる循環装置と、を備えた電着塗装装置において、内部に管状の液体流路を備え、前記液体流路が、前記液体流路の一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、前記区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一端側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備えるラインミキサーに循環する極液を通過させ、前記ラインミキサーに前記極液が供給される際の送液圧力を0.05〜0.5MPaとすることにより、循環する極液に含まれる固形物を粉砕処理する方法でもある。
【0079】
この方法は、既に説明した電着塗装装置にて好ましく実施されるものである。その詳細については、電着塗装装置についての上記説明で述べた通りであるので、ここでの説明を省略する。
【実施例】
【0080】
以下、実施例を示すことによりさらに具体的に本発明を説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0081】
図12〜14に、実施例1〜5及び比較例1〜6で使用した試験装置の概略図を示す。図12は、実施例1〜5並びに比較例3及び4で使用した試験装置の概略図である。図13は、比較例1、5及び6で使用した試験装置の概略図である。図14は、比較例2で使用した試験装置の概略図である。なお、図12〜14において、同一の機器には同一の符号を記した。
【0082】
まず、実施例1の試験について、図12を使用して説明する。試験液Aの7kgを容量10Lの貯留槽E2に貯留し、撹拌機E1(ヤマト科学株式会社製、製品名:スリーワンモーター)を200rpmで運転した。次に圧力計E6が0.06MPaになるように、ポンプE5(株式会社ナカキン製、ロータリーポンプ)の流量を設定し、試験液Aの循環を開始した。このとき、貯留槽E2内の試験液Aは、循環ラインE3を通り、ラインミキサーE4(ニチラク機械株式会社製、製品名:NRKマルチミキサー10A)を通過し、その後、貯留槽E2へ返送される。使用したラインミキサーE4は、内部に液体流路を有し、当該液体流路に3連のベンチュリ管構造が形成されている。試験液Aの循環時間である運転時間を5.5分間とし、処理液を得た。
なお、試験液Aは、電着塗料(日本ペイント株式会社製、商品名:パワーニックス330グレー)を固形分濃度が0.1質量%になるように純水で希釈して希釈液を作製し、この希釈液10kgに、35℃恒温水槽に発生したスライムを固形分として0.2g、及び酢酸ナトリウムを1g添加し、その後、撹拌機(ヤマト科学株式会社製、商品名:スリーワンモーター)を使用して、回転数350rpmにて24時間撹拌して作製した。試験液Aは、電着塗装工程における洗浄液のモデル液であり、スライム、及び酢酸ナトリウムでゲル化した電着塗料を固形物として含む。
【0083】
圧力計E6の圧力設定を変更したこと以外は、実施例1と同様の条件にて、実施例2及び3、並びに比較例3及び4の試験を行った。このときの圧力、流量及び運転時間は、表1及び2に示す通りとした。なお、運転時間は、総循環回数が10になるよう、次式により決定した。
運転時間(分)=10×貯留槽E2内液量(7kg)/循環流量(kg/分)
【0084】
実施例4及び5の試験は、試験液を試験液B又はCとしたこと以外は実施例2と同様の条件にて行った。
なお、試験液Bは、脱脂剤(日本ペイント株式会社製、商品名:サーフクリーナー53NF)を純水で希釈し、電導度を600μS/cmに調整した液と、リン酸亜鉛化成処理剤(日本ペイント株式会社製、商品名:サーフダインSD−5350R−1)を純水で希釈し、電導度を600μS/cmに調整した液(化成処理液)と、を質量比1:1で混合して混合液を作製し、この混合液10kgに、別途上記化成処理剤で冷延鋼板に化成処理を施した際に生じたスラッジを固形分として0.2g、及び35℃恒温水槽に発生したスライムを固形分として0.2g添加し、その後、撹拌機(ヤマト科学株式会社製、商品名:スリーワンモーター)を使用して、回転数350rpmにて24時間撹拌して作製した。試験液Bは、化成処理工程における洗浄液のモデル液であり、スライム及びスラッジを固形物として含む。
【0085】
また、試験液Cは、酢酸を純水で電導度が600μS/cmになるように希釈した希釈液10kgに、35℃恒温水槽に発生した藻を固形分として0.2g添加し、その後、撹拌機(ヤマト科学株式会社製、商品名:スリーワンモーター)を使用して、回転数350rpmにて24時間撹拌して作製した。試験液Cは、電着塗装装置における極液のモデル液であり、藻を固形物として含む。
【0086】
次に、比較例1の試験について、図13を使用して説明する。比較例1で使用した試験装置は、実施例1等で使用した図12で示す試験装置からラインミキサーE4を除いたものであり、その他の構成については、実施例1等で使用した試験装置と同じである。比較例1の試験は、図13で示す試験装置を使用したこと以外は、実施例1の試験と同様に行った。また、比較例5及び6の試験については、試験液Aを試験液B又はCに変更したこと以外は、比較例1の試験と同様に行った。比較例1、5及び6における総循環回数は、上記と同様に10回とした。このときの試験液の流量は毎分13kgであり、運転時間は5.5分間であった。
【0087】
次に、比較例2の試験について、図14を使用して説明する。比較例2の試験では、比較例1で得られた処理液1.8kgを試験液として、容量3Lの貯留槽E2aに貯留し、撹拌機E1を100rpmで運転した。ここで、比較例2の試験で使用した試験液は試験液Aを由来とするものであるが、比較例2の試験で、試験液Aを使用せずに比較例1で得られた処理液を使用した理由は、比較例2で使用した後述のポンプE5aが他の実施例及び比較例で使用したポンプE5と異なるので、ポンプの違いによる影響を除外するためである。次に、ポンプE5a(池本理科工業株式会社製、チュービングポンプ)の流量を毎分60gとなるように設定し、試験液の循環を開始した。このとき、貯留槽E2a内の試験液は、循環ラインE3aを通り、超音波振動子E7(株式会社日本精機製作所製、製品名:US−150T、超音波発信器E8の出力150KW、発振周波数20KHz)を装着した容量0.5Lの超音波処理層E9を通過し、その後、貯留槽E2aへ返送される。このような循環運転を行い、処理液を得た。なお、比較例2の総循環回数は、他の実施例及び比較例と同様に10回とした。このときの運転時間は、5時間であった。
【0088】
実施例1〜5及び比較例1〜6のそれぞれについて、処理液の濾過時間、処理液の濾過残渣、及び試験中における試験液の発泡状態を評価した。その結果を表1及び2に示す。なお、濾過時間は、各実施例及び比較例で得られた処理液の1kgを300メッシュのナイロン製の濾布を用いて自然落下により濾過し、濾過が終了するまでに要した時間を調べることにより求めた。また、濾過残渣は、各実施例及び比較例で得られた処理液の1kgを300メッシュのナイロン製の濾布を用いて濾過し、濾過前後の濾布の質量差を調べることにより求めた。
【0089】
また、発泡状態は、循環運転中の試験液の発泡状態を目視で観察して評価した。評価基準は、下記の通りである
◎ 発泡はほとんど観察されない
○ 少し発泡が観察されたが、実用上の影響はない
△ 発泡が観察され、わずかに実用上の影響がある
× 著しく発泡が観察され、実用上の影響が大きい
【0090】
また、運転圧力は、圧力計E6における圧力であり、ラインミキサーE4の運転圧力を意味する。表1及び2において、ラインミキサーE4を有しない図13及び14に示す装置を使用した比較例については、運転圧力の欄を「−」で表示した。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
表1及び2から理解されるように、本発明所定のベンチュリ管構造を有するラインミキサーE4を備えた試験装置を使用した実施例1〜4の試験では、濾過時間及び濾過残渣ともに小さな数値となり、大きな粒径の固形物が少ないことがわかる。ここで、濾過に使用した濾布は300メッシュであるので、濾過残渣として残った固形物は、粒径が約50μm以上であり、塗膜の外観に影響を与えるものである。このため、本発明所定のベンチュリ管構造を有するラインミキサーE4を使用することにより、試験液(洗浄水)に含まれる、塗膜の外観に影響を与える固形物を、塗膜の外観に影響を与えない程度まで粉砕できることがわかる。また、電着塗装装置の極液の循環装置を模した試験である実施例5でも、本発明所定のベンチュリ管構造を有するラインミキサーE4の有効性が確認できた。
【0094】
これに対して、本発明所定のベンチュリ管構造を有するラインミキサーを備えない試験装置を使用した比較例1、2、5及び6では、塗膜の外観に影響を与えるような大粒径の固形物が処理液中に多く存在することがわかる。また、比較例3及び4から、本発明所定のベンチュリ管構造を有するラインミキサーを備えた試験装置を使用した場合であっても、運転圧力が0.05〜0.5MPaの範囲でなければ、大粒径の固形物が十分に粉砕できない、又は著しく発泡して実用上の問題があることがわかる。
【符号の説明】
【0095】
1 水洗装置
2 貯留槽
3 回生ライン
4 ラインミキサー
41 液体流路
42 狭窄部
43 縮径部
44 拡径部
45 液体流路の一端側
46 液体流路の他端側
5 ポンプ
6 シャワー装置
7 槽内ポンプ
8 他の槽
9 前段の水洗工程の貯留槽
10 電着塗装装置
11 電着槽
12 極液箱
13 循環ライン
14 極液槽
15 極液循環装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗装置及び電着塗装装置に関する。さらに詳しくは、脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装工程の後に設けられる水洗工程で使用される水洗装置、及び電着塗装装置に関する。また、本発明は、これら水洗装置又は電着塗装装置を使用した、洗浄水又は極液に含まれる固形物の粉砕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車又は一般工業用の塗装ラインには、金属基材に塗装を行う前処理工程として、金属基材に付着した油脂を除去する脱脂工程が含まれ、また、金属基材に防錆性を付与する化成処理工程が含まれる。これらの各工程に続く段階では、脱脂や化成処理で使用した薬品を金属基材の表面から洗い流すための洗浄工程が設けられるのが一般的である。また、この塗装ラインが電着塗装ラインである場合、金属基材に電着塗装を行った後、形成された塗膜の表面に付着した余分な塗料を洗い流すために水洗工程が設けられる。
【0003】
このような水洗工程において、洗浄水は貯留槽に蓄えられ、この貯留槽に被洗浄対象物を浸漬して洗浄したり、貯留槽から汲み上げた洗浄水をシャワーとして被洗浄対象物に散布した後に、使用後の洗浄水を再び貯留槽に戻したりする場合がある。この場合、洗浄水は、一部貯留槽に新たに注ぎ足されたものを除いて、その大部分が再利用される。すると、洗浄水は、繰り返し使用される間に、化成処理の際に生じたスラッジやゲル化した塗料等といった工程由来の固形物の他、バクテリア、カビ、藻、スライム等といった生物由来の固形物を含むようになる。このような固形物が、洗浄工程後に金属基材の表面に付着し、塗装工程における塗膜に取り込まれると、塗装後の製品の外観を悪化させる一因となる。そこで、このような固形物を除去するための一例として、貯留槽に蓄えられた洗浄水を循環ラインにより循環させ、その循環ラインの途中にフィルター装置が設置される場合がある。固形物は、このフィルター装置によって除去され、洗浄水における固形物の量が常に一定水準以下に保たれる。
【0004】
しかしながら、フィルター装置により洗浄水に含まれる、このような塗装品質に悪影響を与える固形物を除去する方法では、捕捉された固形物によりフィルター装置が目詰まりし、徐々に装置の入口と出口との差圧が大きくなってくるためにフィルターを頻繁に交換する必要が生じるので、メンテナンスに要する工数が大きい。この点、生物由来の固形物については、貯留槽に蓄えられた洗浄水に殺菌剤等の薬剤を投入することにより抑制を図ることが可能であり、これにより、フィルター交換の頻度を減少させることも可能である。しかし、この場合には、洗浄水に投入する薬剤の分のコストの増大を招くことになる。
【0005】
そのため、洗浄水に含まれる固形物の全てをフィルター装置で除去するのではなく、洗浄水に含まれる固形物を塗装に悪影響を与えない程度まで粉砕し、フィルター装置への負担を軽減させる方法が検討されている。このような方法として、ロータ/ステータ型のラインミキサーを循環ラインに設置し、ロータとステータとの間に生じるせん断力によって洗浄水に含まれる固形物を粉砕する方法が挙げられる。しかしながら、この方法では、粉砕された固形物が2次凝集を起こして大粒径化したり、洗浄水に大量の泡を生じたりする場合がある。また、導入する設備の費用も比較的高い。
【0006】
これとは別に、特許文献1には、電着塗料が蓄えられた電着槽に分散セルを設けて、当該分散セルの内部に存在する塗料に対して超音波振動を加えることによって、凝集した電着塗料を分散させる方法が開示されている。この方法では、超音波振動によって液体中に生じたキャビテーションによって生じる瞬間的な衝撃によって、凝集した電着塗料を分散させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−8295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載された方法は、凝集した塗料粒子を元の正常な粒子に復元させることが目的であり、この方法では洗浄水に含まれる固形物を粉砕させることが難しい。加えて、特許文献1の実施例では、電着槽が20tの場合に3連2系統の超音波発生装置を必要としており、これを100tの容量を有する貯留槽に適用しようとすると、20系統の超音波発生装置が必要となるので、設備価格の面でも課題を有する。
【0009】
また、このような液体中の固形物の問題は、カチオン電着塗装工程の電着槽において使用される極液の循環装置でも同様に生じうる。極液は、電着塗装を繰り返すことにより酸の濃度が増大するので、循環装置によって循環され、循環中に適切な処理が施された後に再使用される。極液に含まれる酸は、カチオン電着塗料の中和のために使用された酸を由来とするものであり、酢酸等の有機酸であることが多い。すると、このような有機酸を資化するバクテリア等が、極液の循環装置内で増殖し、スライム等といった生物由来の固形物を生じさせる。このような固形物は循環装置や酸を電着塗料から分離する隔膜を詰まらせるおそれがある。このため、極液の循環装置においても、上述の洗浄水と同様に固形物の問題を生じうる。
【0010】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、第一には、脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装工程の後に設けられる水洗工程で使用され、簡便であり、かつ洗浄水に含まれる固形物を、形成される塗膜の外観に悪影響を与えない程度まで粉砕させる手段を提供することを目的とする。また、本発明は、第二には、電着塗装工程における極液に生じる固形物を、簡便に粉砕させる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、内部に管状の液体流路を備え、当該液体流路が、その一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、当該区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一旦側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備える構造、いわゆるベンチュリ管構造を有するラインミキサーにより洗浄水に含まれる固形物を処理すると、その固形物が、形成される塗膜の外観に影響を与えない程度まで粉砕されることを見出し、本発明を完成するに至った。また、本発明者らは、このようなラインミキサーが極液循環装置における固形物の粉砕にも好ましく適用可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
(1)本発明は、脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装工程の後に設けられる水洗工程で使用される水洗装置であって、前記水洗装置は、洗浄に使用した後の洗浄水を貯留する貯留槽を備え、前記貯留槽が、前記洗浄水をラインミキサーで処理した後に前記貯留槽及び/又は他の貯留槽に送液する回生ラインを備え、前記ラインミキサーが内部に管状の液体流路を備え、前記液体流路が、前記液体流路の一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、前記区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一端側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備え、前記ラインミキサーに前記洗浄水が供給される際の送液圧力が、0.05〜0.5MPaである水洗装置である。
【0013】
(2)上記水洗装置において、前記水洗工程が、前記洗浄水の一部を前記水洗装置の外部に排出し、排出された洗浄水に相当する分の給水を受ける非閉鎖系水洗工程であることが好ましい。
【0014】
(3)また、本発明は、極液及び電極を内部に収容する極液箱と、前記極液箱に収容された極液を、前記極液箱の外部に送液し、所定の処理を行った後に前記極液箱に返送する循環装置と、を備える電着塗装装置であって、前記循環装置が前記極液の流路にラインミキサーを備え、前記ラインミキサーが内部に管状の液体流路を備え、前記液体流路が、前記液体流路の一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、前記区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一端側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備え、前記ラインミキサーに前記極液が供給される際の送液圧力が、0.05〜0.5MPaである電着塗装装置である。
【0015】
(4)また、本発明は、脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装工程の後に設けられ、使用した洗浄水を同じ工程又は他の工程で再使用する水洗工程において、内部に管状の液体流路を備え、前記液体流路が、前記液体流路の一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、前記区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一端側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備えるラインミキサーに再使用される洗浄水を通過させ、前記ラインミキサーに前記洗浄水が供給される際の送液圧力を0.05〜0.5MPaとすることにより、再使用される洗浄水に含まれる固形物を粉砕処理する方法である。
【0016】
(5)上記方法において、前記水洗工程が、前記洗浄水の一部を前記水洗工程の系外に排出し、排出された洗浄水に相当する分の給水を前記水洗工程の系内に受ける非閉鎖系水洗工程であることが好ましい。
【0017】
(6)また、本発明は、極液及び電極を内部に収容する極液箱と、前記極液を前記極液箱の内部と外部との間で循環させる循環装置と、を備えた電着塗装装置において、内部に管状の液体流路を備え、前記液体流路が、前記液体流路の一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、前記区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一端側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備えるラインミキサーに循環する極液を通過させ、前記ラインミキサーに前記極液が供給される際の送液圧力を0.05〜0.5MPaとすることにより、循環する極液に含まれる固形物を粉砕処理する方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第一には、脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装工程の後に設けられる水洗工程で使用され、簡便であり、かつ洗浄水に含まれる固形物を、形成される塗膜の外観に悪影響を与えない程度まで粉砕させる手段が提供される。また、本発明によれば、第二には、電着塗装工程における極液に生じる固形物を、簡便に粉砕させる手段が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の各実施形態が適用される塗装工程の一実施態様を示すフロー図である。
【図2】図1における水洗工程(S20、S50又はS70)の一実施態様を示すフロー図である。
【図3】本発明の各実施形態で使用されるラインミキサー4を示す縦断面図である。
【図4】図3とは異なる形態のラインミキサー4aを示す縦断面図である。
【図5】本発明の水洗装置の第1実施形態を模式的に示した図である。
【図6】本発明の水洗装置の第2実施形態を模式的に示した図である。
【図7】本発明の水洗装置の第3実施形態を模式的に示した図である。
【図8】本発明の水洗装置の第4実施形態を模式的に示した図である。
【図9】本発明の水洗装置の第5実施形態を模式的に示した図である。
【図10】本発明の水洗装置の第6実施形態を模式的に示した図である。
【図11】本発明の電着塗装装置の実施形態を模式的に示した図である。
【図12】実施例1〜5並びに比較例3及び4で使用した試験装置の概略図である。
【図13】比較例1、5及び6で使用した試験装置の概略図である。
【図14】比較例2で使用した試験装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の各実施形態について説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではない。各実施形態について説明するにあたり、まず、これら本発明の各実施形態が適用される塗装工程の一実施態様について図面を参照しながら簡単に説明する。図1は、本発明の各実施形態が適用される塗装工程の一実施態様を示すフロー図である。図2は、図1における水洗工程(S20、S50又はS70)の一実施態様を示すフロー図である。
【0021】
本実施態様の塗装工程は、金属基材に電着塗装を施すものであり、脱脂工程S10、表面調整工程S30、化成処理工程S40、電着塗装工程S60及び焼付工程S80を備える。また、脱脂工程S10、化成処理工程S40及び電着塗装工程S60の後には、それぞれ水洗工程(S20、S50、S70)が設けられる。これらの水洗工程は、脱脂工程S10及び化成処理工程S40で金属基材に付着した薬品や、電着塗装工程S60で形成された塗膜の表面に過剰に付着した電着塗料を洗い流すために設けられる。
【0022】
脱脂工程S10は、金属基材の表面に付着した油脂を除去するための工程であり、例えば、アルカリ性の洗浄液を金属基材の表面にスプレーしたり、アルカリ性の洗浄液を貯留した槽に金属基材を浸漬させたりすることにより行われる。洗浄液としては、公知のものを特に制限なく使用することができる。脱脂工程S10を経た金属基材は、水洗工程S20に付され、表面に付着した洗浄液が洗い流される。水洗工程S20を経た金属基材は、表面調整工程S30に付される。
【0023】
表面調整工程S30は、その後の工程である化成処理工程S40において金属基材の表面に例えばリン酸亜鉛系等の化成処理が施される場合に設けられ、化成皮膜を形成させるための結晶核を金属基材の表面に形成させるための工程である。金属基材の表面に結晶核を形成させる表面調整剤としては、公知のものを特に制限なく使用することができる。表面調整工程S30を経た金属基材は、化成処理工程S40に付される。なお、化成処理工程S40における化成処理の種類によっては、表面調整工程S30を必要としない場合があり、その場合は表面調整工程S30を省略して化成処理工程S40を実施することができる。
【0024】
化成処理工程S40は、金属基材に耐食性を付与するために、金属基材の表面に化成皮膜を形成させるための工程である。金属基材の表面に化成皮膜を形成させる化成処理剤としては、公知のものを特に制限なく使用することができる。化成処理工程S40を経た金属基材は、水洗工程S50に付され、表面に付着した余分な化成処理剤や化成皮膜を形成する際に生じたスラッジが洗い流される。水洗工程S50を経た金属基材は、電着塗装工程S60に付される。
【0025】
電着塗装工程S60は、化成皮膜が形成された金属基材の表面に電着塗膜を形成させるための工程である。この工程では、アニオン又はカチオンの電荷を有する電着塗料が使用され、電着塗料が貯留された電着塗装槽に金属基材を浸漬しながら金属基材に電圧を印加付与することにより、金属基材の表面に塗膜を形成させる。例えば、カチオン電着塗料が使用される場合には、金属基材を負電極、電着塗装槽の内部に設けられた電極を正電極として電圧が印加されることにより、金属基材の表面にカチオン性である電着塗料が析出して塗膜となる。
【0026】
電着塗装槽の内部において金属基材と反対の電圧を印加させる部材は、隔膜(イオン交換膜)からなる壁面を有する極液箱であり、この極液箱の内部には、電極と極液とが収容される。例えば、カチオン電着塗料の場合、塗膜を形成させるための樹脂にアミノ基等のカチオン性官能基が含まれ、このカチオン性官能基が酢酸等の酸によって中和されてカチオンとなり、その対イオンである酢酸イオンが塗料中に含まれる。上記のように、金属基材に負電圧を印加すると、カチオンである樹脂は、金属基材の表面で中和されて析出し、塗膜となる。このとき、対イオンである酢酸イオンは、正の電極が収容された極液箱へ引き寄せられ、極液箱の内部に存在する極液に取り込まれる。そのため、極液箱の内部に含まれる極液は、徐々に酸濃度が高くなるので、極液循環装置により、極液箱の外部に取り出され必要な処理を受ける。処理を受けた極液は、極液循環装置によって極液箱に返送され、再使用される。
【0027】
電着塗料としては、公知のものを特に制限なく使用することができる。電着塗装工程S60を経た金属基材は、水洗工程S70に付され、形成された塗膜の表面に付着している過剰な電着塗料が洗い流される。水洗工程S70を経た金属基材は、焼付工程S80に付され、焼付処理を受ける。
【0028】
次に、水洗工程S20、S50及びS70について説明する。各水洗工程S20、S50、S70は、それぞれ、少なくとも1つ以上の水洗工程から構成されている。通常の水洗工程数は2〜5である。図2では3つの水洗工程から構成されている一実施態様を示し、第1水洗工程S21、S51、S71、第2水洗工程S22、S52、S72、及び第3水洗工程S23、S53、S73を含む。そして、これら第1水洗工程S21、S51、S71、第2水洗工程S22、S52、S72、及び第3水洗工程S23、S53、S73のそれぞれにおいて、この順序で洗浄水による金属基材の洗浄を行う。また、第1水洗工程から第2水洗工程、第3水洗工程に進むに従って、金属基材の清浄度は向上する。洗浄水による金属基材の洗浄としては、洗浄水に金属基材を浸漬したり、洗浄水を金属基材にスプレーしたりする方法が挙げられるが、特に限定されない。浸漬による洗浄が行われる場合には、各工程に設けられた貯留槽に蓄えられた洗浄水に金属基材が次々に浸漬されて洗浄されるので、洗浄水が繰り返し使用される。また、スプレーによる洗浄が行われる場合には、各工程に設けられた貯留槽に蓄えられた洗浄水を汲み上げて金属基材へのスプレーを行い、使用された後の洗浄水は再び貯留槽に戻されるので、洗浄水が繰り返し使用される。なお、水洗工程S20、S50及びS70における洗浄対象としては、金属基材そのもの、化成処理工程S40により形成された化成皮膜の表面、及び電着塗装工程S60により形成された塗膜の表面が考えられるが、本明細書において洗浄対象として「金属基材」と表示する場合、この「金属基材」という表示はこれらの洗浄対象のいずれかを意味する。
【0029】
既に述べたように、洗浄水は、繰り返し使用されることに伴って、化成処理によって生成したスラッジやゲル化した塗料といった工程由来の固形物の他、バクテリア、カビ、藻、スライム等といった生物由来の固形物を含むようになる。こうした固形物は、比較的大きな粒径を有しており、形成される塗膜中に取り込まれると、塗膜の外観を低下させる。そのため、特に、最後の水洗工程となる第3水洗工程S23、S53、S73で使用される洗浄水には、大きな粒径の固形物を含まないことが求められる。
【0030】
そのため、図2に示すように、第3水洗工程S23、S53、S73では、貯留槽に蓄えられた洗浄水の一部は、循環され、ラインミキサー4によって固形物が粉砕される。これにより、固形物は、塗膜の外観に悪影響を与えない程度に小粒径化される。なお、循環と同時に、循環される洗浄水の一部が排水され、排水された洗浄水に相当する量の純水又は工業用水が洗浄水として補充されてもよい。このように、洗浄水の一部を入れ替えながら洗浄を行う系を非閉鎖系水洗工程と呼ぶ。排出された洗浄水は、前段の水洗工程で再使用され、又は適切な排水処理を受けて廃棄される。
【0031】
一方、第1水洗工程S21、S51、S71や第2水洗工程S22、S52、S72のように、洗浄水が長期間にわたって入れ替えられずに使用される系を閉鎖系水洗工程と呼ぶ。図示しないが、閉鎖系水洗工程であっても、洗浄水に含まれる例えば電着塗料等の成分を、限外濾過により分離して、透過液を洗浄水として使用し、洗浄性を一定水準に維持することができる。また、図示しないが、第1水洗工程S21、S51、S71や、第2水洗工程S22、S52、S72にラインミキサー4を備えた循環ラインを設けて、洗浄水をラインミキサー4で処理してもよい。
【0032】
なお、図2では、第3水洗工程S23、S53、S73を非閉鎖系水洗工程として示し、第1水洗工程S21、S51、S71及び第2水洗工程S22、S52、S72を非閉鎖系水洗工程として示したが、これに限定されず、第2水洗工程S22、S52、S72が非閉鎖系水洗工程であってもよいし、第1水洗工程S21、S51、S71及び第2水洗工程S22、S52、S72が非閉鎖系水洗工程であってもよい。また、第1水洗工程、第2水洗工程及び第3水洗工程において、いずれもが閉鎖系水洗工程であってもよい。なお、図2及び上記説明では、第3水洗工程S23、S53、S73においてラインミキサー4で処理された洗浄水が、再び第3水洗工程S23、S53、S73で再使用されるが、他の工程で使用されてもよい。これについては、後述する本発明の各実施形態の説明において説明する。以上、図2に従って、水洗工程S20、S50又はS70がそれぞれ3つの水洗工程から構成される場合について述べたが、構成される水洗工程数が1または2の場合、及び4以上の場合でも、非閉鎖系水洗工程の数、位置、及びラインミキサー4で処理する水洗工程の数、位置も図2で述べたのと同様に設定することができる。
【0033】
次に、本発明の各実施形態で使用されるラインミキサー4について、図面を参照しながら説明する。図3は、本発明の各実施形態で使用されるラインミキサー4を示す縦断面図である。
【0034】
ラインミキサー4は、長さ方向の両端に洗浄水の流通する配管と接続される接続口45、46を備え、内部に管状の液体流路41を備える。ラインミキサー4によって処理される洗浄水は、液体流路41を通過する。この液体流路41は、その中途に、流路が狭くなる狭窄部42を備える。そして、液体流路41は、液体流路41の一端側45から狭窄部42に向けて縮径する縮径部43と、狭窄部42から液体流路41の他端側46に向けて拡径する拡径部44と、を備える。つまり、図3の実施形態において、液体流路41は、液体流路41の「全部の」区間において、当該区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部42と、液体流路41の一端側45から狭窄部42に向けて縮径する縮径部43と、狭窄部42から液体流路41の他端側46に向けて拡径する拡径部44と、を備える。
【0035】
このような液体流路41の構造は、ベンチュリ管とも呼ばれるものである。この液体流路41の一端側45から流入した洗浄水は、縮径部43を通過する間に加速を受け、狭窄部42に達したときに最大の流速となった後、拡径部44を通過する間に減速される。このため、液体流路41を流れる洗浄水は、ベルヌーイの定理より、狭窄部42において最も圧力が低くなる。このとき、洗浄水は、狭窄部42の付近において、周囲の圧力が自己の蒸気圧よりも低くなるために瞬間的に沸騰状態となって気泡を生じたり、周囲の圧力が低下することに伴って溶存している空気を遊離して気泡を生じたりする。このときに生じた微細な気泡は、キャビテーションとなり、やがて周囲の圧力が回復するにつれて押しつぶされて、衝撃波を発生させる。この衝撃波が洗浄水に含まれている固形物を粉砕するので、液体流路41を通過して他端側46から流出する洗浄水に含まれる固形物の粒径は、一端側45から流入したときの洗浄水に含まれる固形物の粒径よりも小さくなる。
【0036】
本発明は、ベンチュリ管を備えたラインミキサー4に洗浄水を通過させることにより、洗浄水から、塗膜の外観に悪影響を与えるような大粒径の固形物を減少させることができるとの新たな知見に基づいて完成されたものである。具体的には、特に50μm以上の粒径を有する固形物が塗膜に取り込まれると、電着塗装工程の焼付工程後、塗膜の研磨等の補修を必要とする場合が多いが、ラインミキサー4を使用することにより、このような粒径の固形物を著しく減少させることができる。
【0037】
ラインミキサー4への洗浄水の供給圧力は、0.05〜0.5MPaに設定される。この範囲であれば、洗浄水に含まれる固形物の大きさを、塗膜外観への影響の小さい50μm未満まで小さくすることができる一方で、圧力が過剰になることに伴う泡の発生を抑制することができる。ラインミキサー4への洗浄水の供給圧力は、0.06〜0.45MPaであることがより好ましく、0.08〜0.3MPaであることがさらに好ましい。
【0038】
ラインミキサー4において、縮径部43及び拡径部44の狭窄部42と対向する端部の内径D1と、狭窄部42の内径D2と、の比D1/D2は、1.5〜10が好ましく、2〜5がより好ましい。D1/D2がこの範囲であれば、大粒径の固形物を良好に粉砕することができる。なお、縮径部43の狭窄部42と対向する端部と、拡径部44の狭窄部42と対向する端部とが異なる内径を有していてもよい。この場合、縮径部43の狭窄部42と対向する端部の内径D1aと、拡径部44の狭窄部42と対向する端部の内径D1bとのいずれもが、上記D1/D2の比を満たしていることが好ましい。
【0039】
また、ラインミキサー4は、以下の3つの観点からも、上述の水洗工程で使用するのに適する。第1には、上述のロータ/ステータ型のラインミキサーと違って、大きなせん断力が加えられることに起因する固形物の二次凝集を生じさせず、かつ泡の発生を抑制できる点が挙げられる。第2には、構造が簡素でメンテナンスが容易であるので、特に自動車の塗装ラインのような大型の設備に適用した場合に、メンテナンスのコストを著しく低減させることのできる点が挙げられる。第3には、上述のフィルター装置によって洗浄水に含まれる固形物を除くのと違って、フィルター交換等の工数を大きく減少できる点が挙げられる。
【0040】
なお、ラインミキサー4による処理は、フィルター装置で固形物を除去するのとは異なり、固形物を粉砕して、塗膜に悪影響を与える粒径の固形物を減少させるものであり、洗浄水から固形物自体を除くものではない。そのため、ラインミキサー4のみによる固形物処理を閉鎖系処理工程で行うと、洗浄工程を繰り返すことに伴って、洗浄水中の固形物の絶対量が増加することになる。このような観点からは、ラインミキサー4による固形物処理は、非閉鎖系水洗工程で行われることが好ましい。
【0041】
ラインミキサー4の別の形態として、図4に示すラインミキサー4aが挙げられる。図4は、図3とは異なる形態のラインミキサー4aを示す縦断面図である。ラインミキサー4aは、内部にベンチュリ管構造を2つ有するものである。本発明において、このように、複数のベンチュリ管構造を有するラインミキサー使用してもよい。ラインミキサー4aは、上述のラインミキサー4と同様に、内部に液体流路41aを備える。液体流路41aは、一端側45から、順に、第1縮径部43a、第1狭窄部42a、第1拡径部44a、第2縮径部43b、第2狭窄部42b及び第2拡径部44bを経て、他端側46に至る。
【0042】
ここで、第1縮径部43a、第1狭窄部42a及び第1拡径部44aに注目すれば、液体流路41aは、液体流路41aの「一部の」区間において、当該区間の中途部で最も流路幅が狭くなる第1狭窄部42aと、液体流路41aの一端側45から第1狭窄部42aに向けて縮径する第1縮径部43aと、第1狭窄部42aから液体流路41aの他端側46に向けて拡径する第1拡径部44aと、を備えることになる。以下の各実施形態の説明では特に明記しないが、ラインミキサー4に代えて、このように複数のベンチュリ管構造を有するラインミキサーを使用してもよい。
【0043】
次に、本発明の実施形態として、上記水洗工程で好ましく使用することのできる水洗装置、及び上記電着塗装工程で好ましく使用することのできる電着塗装装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。図5は、本発明の水洗装置の第1実施形態を模式的に示した図である。図6は、本発明の水洗装置の第2実施形態を模式的に示した図である。図7は、本発明の水洗装置の第3実施形態を模式的に示した図である。図8は、本発明の水洗装置の第4実施形態を模式的に示した図である。図9は、本発明の水洗装置の第5実施形態を模式的に示した図である。図10は、本発明の水洗装置の第6実施形態を模式的に示した図である。図11は、本発明の電着塗装装置の実施形態を模式的に示した図である。
【0044】
[水洗装置の第1実施形態]
まず、本発明の水洗装置の第1実施形態について説明する。本実施形態の水洗装置1は、上述した水洗工程において好ましく使用されるものである。水洗装置1は、脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装工程を経た金属基材を洗浄するための装置である。なお、上述した水洗工程の説明では、第3水洗工程において、洗浄水の一部を排水し、かつ排水された洗浄水に相当する量の純水又は工業用水を洗浄水として供給することについて説明したが、以下の水洗装置1も、図示しないが、同様の機構を備えてよい。このことは、後に説明する各実施形態においても同様である。
【0045】
水洗装置1は、洗浄水(図示せず、以下同様である。)を貯留する貯留槽2を備える。脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装工程を経た金属基材は、貯留槽2に貯留された洗浄水中に浸漬され、余分な薬品又は塗料が表面から除去される。洗浄に使用された洗浄水は、そのまま貯留槽2に残るので、貯留槽2には洗浄に使用した後の洗浄水が貯留されていることになる。
【0046】
貯留槽2は、貯留槽2に貯留される洗浄水を抜き出すための回生ライン3を備える。回生ライン3は、上述の循環ラインに相当する。回生ライン3は、貯留槽2から洗浄水を抜き出すための一端が貯留槽2に接続され、その途中にポンプ5及びラインミキサー4が接続され、ラインミキサー4によって処理された洗浄水を貯留槽2に返送するために、他端が貯留槽2に接続される。ポンプ5は、回生ライン3を通して、貯留槽2に貯留された洗浄水を循環させる。
【0047】
ラインミキサー4については、既に説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。ラインミキサー4は、回生ライン3を流れる洗浄水に含まれる大粒径の固形物を粉砕する。そして、ラインミキサー4による固形物の粉砕処理を受けた洗浄水は、貯留槽2へ返送される。
【0048】
回生ライン3における洗浄水の循環圧力、すなわちラインミキサー4への洗浄水の供給圧力(運転圧力)は、上述のように、0.05〜0.5MPaに設定される。この範囲であれば、洗浄水に含まれる固形物の大きさを、塗膜外観への影響の小さい50μm未満まで小さくすることができる一方で、圧力が過剰になることに伴う泡の発生を抑制することができる。ラインミキサー4への洗浄水の供給圧力は、0.06〜0.45MPaであることがより好ましく、0.08〜0.3MPaであることがさらに好ましい。
【0049】
ここで、ラインミキサー4の運転時間及び洗浄水の循環流量、すなわち、ポンプ5の運転時間及び循環流量について説明する。図5は貯留槽2と回生ライン3とを備え、ラインミキサー4に洗浄水を循環供給して使用する一実施態様を示すものであるが、ラインミキサー4における固形物の粉砕処理は、貯留槽2に貯留されている洗浄水が均等にラインミキサー4で処理されることにより完結する。具体的には、貯留槽2に貯留された洗浄水は、運転開始後、ラインミキサー4で処理された洗浄水と処理が完結していない洗浄水との混合状態になっている。このような循環処理方式では次式で示される総循環回数が3以上であることが好ましい。
総循環回数=洗浄水の循環流量(t/時間)×運転時間(時間)/貯留槽2内液量(t)
総循環回数とは、上記式からも理解されるように、計算上、貯留槽2に貯留された洗浄水が回生ライン3およびラインミキサー4を通過する回数を意味する。総循環回数が3以上であれば、貯留槽2内の洗浄水のほぼ全量の処理が見込まれる。処理速度としては、一日当りの総循環回数が3以上となることが好ましい。一日当りの総循環回数が3未満の場合には、ラインミキサー4による処理速度が十分ではないおそれがあるため、安定した品質が得られにくい。一日当りの総循環回数が3以上の場合、循環回数が増すにしたがって、より安定した品質が得られるようになる。貯留槽2の内容量が5tを超える場合には、安定した品質を得るために一日当りの総循環回数が5以上となることが好ましい。なお、上記の循環回数を示す式における洗浄水の循環流量は、前述のラインミキサー4への供給圧力(運転圧力)が得られる流量であることが必要である。ラインミキサー4の運転は、長時間にわたる連続運転であってもよいし、運転及び停止を繰り返す間欠運転であってもよい。総循環回数が上記の数値以上となる処理を行うことにより、洗浄水に含まれる大粒径固形物の量が、塗膜の外観に影響を与えない程度まで減少する。化成処理で生じたスラッジやゲル化した塗料及び生物由来の固形物は常に発生している場合が多く、停止を伴わない長時間の連続運転の方が安定した品質が得られるので好ましい。一方、連続した運転で所定の総循環回数が得られれば停止し、一定時間後、再び運転を開始し、これらを繰り返す間欠運転でも十分な効果が得られる。処理の頻度は、これら固形物の発生頻度や量によって異なる。
【0050】
また、既に説明したように、ラインミキサー4は、洗浄水に含まれる固形物の大きさを塗膜の外観に影響を与えない程度まで小さくするものであり、フィルター装置のように洗浄水から固形物を除去するものではない。そのため、水洗装置1は、洗浄水の一部を水洗装置1の外部に排出し、排出された洗浄水に相当する分の水を洗浄水として給水する非閉鎖系水洗工程で使用されることが好ましい。
【0051】
[水洗装置の第2実施形態]
次に、本発明の水洗装置の第2実施形態について説明する。本実施形態の水洗装置1aもまた、上述した水洗工程において好ましく使用されるものである。なお、本実施形態の水洗装置1aの説明において、既に説明した実施形態の説明と重複する箇所については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0052】
水洗装置1aは、ラインミキサー4が2系統の回生ライン3のそれぞれの途中に直列配置4c及び並列配置4bで設けられる。このように、本発明において、ラインミキサー4は、直列配置4cで設けられてもよいし、並列配置4bで設けられてもよい。また、本発明において、ラインミキサー4は、複数の回生ライン3中に複数系統として設けられてもよい。
【0053】
ラインミキサー4が直列配置4c又は並列配置4bで設けられることにより、固形物の粉砕能力の向上又は単位時間当たりの処理能力の増大を図ることができる。なお、図6では、直列配置4c及び並列配置4bのそれぞれについて、2本のラインミキサー4が使用された場合を示したが、直列配置4c及び並列配置4bに含まれるラインミキサー4の本数は、これに限定されず、必要とされる粉砕能力及び処理能力を考慮して適宜決定すればよい。
【0054】
なお、水洗装置1aにおけるラインミキサー4の運転時間及び運転圧力は、第1実施形態の水洗装置1におけるものと同様である。ここに、前述した総循環回数の式において、洗浄水の循環流量とは2基のポンプ5の総流量である。また、水洗装置1aは、第1実施形態の水洗装置1と同様に、非閉鎖系水洗工程で使用されることが好ましい。
【0055】
[水洗装置の第3実施形態]
次に、本発明の水洗装置の第3実施形態について説明する。本実施形態の水洗装置1bもまた、上述した水洗工程において好ましく使用されるものである。なお、本実施形態の水洗装置1bの説明において、既に説明した実施形態の説明と重複する箇所については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
水洗装置1bは、シャワー装置6から洗浄対象である金属基材に洗浄水を噴射することにより、洗浄を行うものである。洗浄に使用された洗浄水は、貯留槽2に戻され、貯留される。貯留槽2で貯留された洗浄水は、回生ライン3により抜き出され、ポンプ5及びラインミキサー4を通過して再びシャワー装置6へと送られる。このように、洗浄水は、循環使用され、洗浄に使用される直前にラインミキサー4による処理を受ける。
【0057】
なお、水洗装置1bにおけるラインミキサー4の運転時間及び運転圧力は、第1実施形態の水洗装置1におけるものと同様である。また、水洗装置1bは、第1実施形態の水洗装置1と同様に、非閉鎖系水洗工程で使用されることが好ましい。
【0058】
[水洗装置の第4実施形態]
次に、本発明の水洗装置の第4実施形態について説明する。本実施形態の水洗装置1cもまた、上述した水洗工程において好ましく使用されるものである。なお、本実施形態の水洗装置1cの説明において、既に説明した実施形態の説明と重複する箇所については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
水洗装置1cは、貯留槽2の外部に設けられるポンプ5の代わりに槽内ポンプ7を貯留槽2の内部に設け、槽内ポンプ7が吸引した洗浄水を回生ライン3に導入する。回生ライン3に導入された洗浄水は、ラインミキサー4による処理を受け、再び貯留槽2へ返送される。
【0060】
なお、水洗装置1cにおけるラインミキサー4の運転時間及び運転圧力は、第1実施形態の水洗装置1におけるものと同様である。また、水洗装置1cは、第1実施形態の水洗装置1と同様に、非閉鎖系水洗工程で使用されることが好ましい。
【0061】
[水洗装置の第5実施形態]
次に、本発明の水洗装置の第5実施形態について説明する。本実施形態の水洗装置1dもまた、上述した水洗工程において好ましく使用されるものである。なお、本実施形態の水洗装置1dの説明において、既に説明した実施形態の説明と重複する箇所については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
水洗装置1dでは、貯留槽2から回生ライン3により抜き出された洗浄水が、ラインミキサー4による処理を受けた後に、貯留槽2に返送されるのではなく、他の槽8へ移送される。他の槽8は、別の工程で洗浄水を使用するための槽でもよいし、単に、貯留槽2に貯留されていた洗浄水を一時的に退避させるための槽でもよい。後者の場合、例えば、貯留槽2の内部を洗浄する場合等への利用が考えられる。
【0063】
なお、水洗装置1dにおいては貯留槽2に貯留された洗浄水を循環して処理することなく、ラインミキサー4を通過した洗浄液は処理が完結されて他の槽8に移送される。ラインミキサー4の運転圧力は、第1実施形態の水洗装置1におけるものと同様である。
【0064】
[水洗装置の第6実施形態]
次に、本発明の洗浄装置の第6実施形態について説明する。本実施形態の水洗装置1eもまた、上述した水洗工程において好ましく使用されるものである。なお、本実施形態の水洗装置1eの説明において、既に説明した実施形態の説明と重複する箇所については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
水洗装置1eでは、貯留槽2から回生ライン3により抜き出された洗浄水が、ラインミキサー4による処理を受けた後に、一部が貯留槽2に返送されるとともに、残りが前段の水洗工程の貯留槽9へ移送される。既に説明したように、例えば、第3水洗工程S23、S53、S73や第2水洗工程S22、S52、S72で使用された洗浄水を、それぞれ前段の水洗工程である第2水洗工程S22、S52、S72や第1水洗工程S21、S51、S71へ移送して再使用する場合があり、そのような場合に水洗装置1eが好ましく使用される。
【0066】
なお、水洗装置1eにおけるラインミキサー4の運転時間及び運転圧力は、第1実施形態の水洗装置1におけるものと同様である。また、水洗装置1eは、第1実施形態の水洗装置1と同様に、非閉鎖系水洗工程で使用されることが好ましい。
【0067】
以上、本発明の水洗装置について、第1から第6実施形態を示して具体的に説明したが、これらの実施形態は、それぞれを単独で用いてもよいし、複数の実施形態を組み合わせて用いてもよい。また、これらの実施形態について、本発明の範囲において、適宜変更を加えて実施してもよい。
【0068】
[電着塗装装置の一実施形態]
次に、本発明の電着塗装装置の一実施形態について、図11を参照しながら説明する。なお、本実施形態の電着塗装装置10は、既に説明した極液循環装置15を備える。そして、本実施形態の電着塗装装置10は、この極液循環装置15に特徴を有するものであり、その他の部分については従来公知の電着塗装装置と同様のものである。そのため、以下の記述では、極液循環装置15を中心に説明を行う。また、本実施形態の電着塗装装置10の説明において、既に説明した水洗装置の実施形態の説明と重複する箇所については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0069】
電着塗装装置10は、金属基材を浸漬して電着塗装を施すための電着槽11を備える。電着槽11の内部には、電着塗料(図示せず、以下同様である。)が貯留されるとともに、電極(図示せず、以下同様である。)及び極液(図示せず、以下同様である。)を収納し、隔膜(イオン交換膜)からなる壁面を有する複数の極液箱12が存在する。既に説明したように、極液箱12は、金属基材とは正負反対の電圧を印加するための部材である。
【0070】
電着塗装装置10における極液循環装置15は、極液箱12と、循環ライン13と、極液槽14と、ポンプ5と、ラインミキサー4とから構成される。極液箱12の内部に収容された極液は、循環ライン13によって極液箱12の外部に取り出されて、極液槽14へ運ばれ、純水による酸濃度調整等必要な処理を受ける。その後、極液は、ポンプ5、ラインミキサー4を通過して、再び極液箱12へ返送される。
【0071】
このように、極液は、必要な処理を受けつつ循環使用される。そのため、長期間にわたる循環使用に伴い、極液中に、藻が繁殖したり、微生物やカビ等からなるスライムが発生したりする場合がある。このような藻やスライムは、固形物となり、極液箱12や循環ライン13等といった極液循環装置15の目詰まりの原因となる。そのため、電着塗装装置10における極液循環装置15では、循環ライン13中にラインミキサー4を備えることにより、こうした固形物を粉砕させる。ラインミキサー4の構造及びその固形物の粉砕効果については、既に述べた通りであるので、その説明を省略する。
【0072】
電着塗装装置10では、上記のような極液循環装置15を備えるので、フィルター交換等の手間を要するフィルター装置を極液循環装置15に設けなくとも、また、生物由来の固形物発生防止のための抗菌剤処理やこれら固形物発生時の殺菌剤処理を行なわなくとも、極液に発生した固形物による極液箱12や循環ライン13等といった極液循環装置15の目詰まりが防止される。
【0073】
ラインミキサー4への極液の供給圧力(運転圧力)は、0.05〜0.5MPaに設定される。この範囲であれば、極液に含まれる固形物の大きさを、極液箱12や循環ライン13の目詰まりを防止できる程度まで小さくすることができる一方で、圧力が過剰になることに伴う極液中の泡の発生を抑制することができる。ラインミキサー4への極液の供給圧力は、0.06〜0.45MPaであることがより好ましく、0.08〜0.3MPaであることがさらに好ましい。
また、電着塗装装置10におけるラインミキサー4の運転時間は、第1実施形態の水洗装置1におけるものと同様に表すことができる。すなわち、総循環回数=極液の循環流量(t/時間)/極液槽14の内液量(t)×運転時間(時間)で計算される総循環回数が一日当たり3以上となることが好ましい。極液槽14の内液量が5tを超える場合には、一日あたりの総循環回数が5以上となることが好ましい。
【0074】
なお、上記水洗装置の説明でも述べたように、ラインミキサー4は、固形物を粉砕するために使用されるものであり、フィルター装置のように固形物自体を除去するものではない。通常の極液循環装置では、極液の酸濃度調整のために、純水や工業用水を補給し、補給量と同量の極液を一部排出する非閉鎖系が一般的であるので、極液中に固形物が蓄積するのを防止する観点では本願発明の好ましい適用が可能である。一方、本願発明を閉鎖系で適用する場合であっても極液循環装置や隔膜の目詰まりを抑制できるので効果は発現できる。
【0075】
以上、本発明の電着塗装装置について実施形態を示して具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態何ら限定されものではないので、上記実施形態について、本発明の範囲において、適宜変更を加えて実施してもよい。
【0076】
本発明は、脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装装置の後に設けられ、使用した洗浄水を同じ工程又は他の工程で再使用する水洗工程において、内部に管状の液体流路を備え、前記液体流路が、前記液体流路の一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、前記区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一端側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備えるラインミキサーに再使用される洗浄水を通過させ、前記ラインミキサーに前記洗浄水が供給される際の送液圧力を0.05〜0.5MPaとすることにより、再使用される洗浄水に含まれる固形物を粉砕処理する方法でもある。
【0077】
この方法は、既に説明した水洗装置にて好ましく実施されるものである。その詳細については、水洗装置についての上記説明で述べた通りであるので、ここでの説明を省略する。
【0078】
また、本発明は、極液及び電極を内部に収容する極液箱と、前記極液を前記極液箱の内部と外部との間で循環させる循環装置と、を備えた電着塗装装置において、内部に管状の液体流路を備え、前記液体流路が、前記液体流路の一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、前記区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一端側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備えるラインミキサーに循環する極液を通過させ、前記ラインミキサーに前記極液が供給される際の送液圧力を0.05〜0.5MPaとすることにより、循環する極液に含まれる固形物を粉砕処理する方法でもある。
【0079】
この方法は、既に説明した電着塗装装置にて好ましく実施されるものである。その詳細については、電着塗装装置についての上記説明で述べた通りであるので、ここでの説明を省略する。
【実施例】
【0080】
以下、実施例を示すことによりさらに具体的に本発明を説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0081】
図12〜14に、実施例1〜5及び比較例1〜6で使用した試験装置の概略図を示す。図12は、実施例1〜5並びに比較例3及び4で使用した試験装置の概略図である。図13は、比較例1、5及び6で使用した試験装置の概略図である。図14は、比較例2で使用した試験装置の概略図である。なお、図12〜14において、同一の機器には同一の符号を記した。
【0082】
まず、実施例1の試験について、図12を使用して説明する。試験液Aの7kgを容量10Lの貯留槽E2に貯留し、撹拌機E1(ヤマト科学株式会社製、製品名:スリーワンモーター)を200rpmで運転した。次に圧力計E6が0.06MPaになるように、ポンプE5(株式会社ナカキン製、ロータリーポンプ)の流量を設定し、試験液Aの循環を開始した。このとき、貯留槽E2内の試験液Aは、循環ラインE3を通り、ラインミキサーE4(ニチラク機械株式会社製、製品名:NRKマルチミキサー10A)を通過し、その後、貯留槽E2へ返送される。使用したラインミキサーE4は、内部に液体流路を有し、当該液体流路に3連のベンチュリ管構造が形成されている。試験液Aの循環時間である運転時間を5.5分間とし、処理液を得た。
なお、試験液Aは、電着塗料(日本ペイント株式会社製、商品名:パワーニックス330グレー)を固形分濃度が0.1質量%になるように純水で希釈して希釈液を作製し、この希釈液10kgに、35℃恒温水槽に発生したスライムを固形分として0.2g、及び酢酸ナトリウムを1g添加し、その後、撹拌機(ヤマト科学株式会社製、商品名:スリーワンモーター)を使用して、回転数350rpmにて24時間撹拌して作製した。試験液Aは、電着塗装工程における洗浄液のモデル液であり、スライム、及び酢酸ナトリウムでゲル化した電着塗料を固形物として含む。
【0083】
圧力計E6の圧力設定を変更したこと以外は、実施例1と同様の条件にて、実施例2及び3、並びに比較例3及び4の試験を行った。このときの圧力、流量及び運転時間は、表1及び2に示す通りとした。なお、運転時間は、総循環回数が10になるよう、次式により決定した。
運転時間(分)=10×貯留槽E2内液量(7kg)/循環流量(kg/分)
【0084】
実施例4及び5の試験は、試験液を試験液B又はCとしたこと以外は実施例2と同様の条件にて行った。
なお、試験液Bは、脱脂剤(日本ペイント株式会社製、商品名:サーフクリーナー53NF)を純水で希釈し、電導度を600μS/cmに調整した液と、リン酸亜鉛化成処理剤(日本ペイント株式会社製、商品名:サーフダインSD−5350R−1)を純水で希釈し、電導度を600μS/cmに調整した液(化成処理液)と、を質量比1:1で混合して混合液を作製し、この混合液10kgに、別途上記化成処理剤で冷延鋼板に化成処理を施した際に生じたスラッジを固形分として0.2g、及び35℃恒温水槽に発生したスライムを固形分として0.2g添加し、その後、撹拌機(ヤマト科学株式会社製、商品名:スリーワンモーター)を使用して、回転数350rpmにて24時間撹拌して作製した。試験液Bは、化成処理工程における洗浄液のモデル液であり、スライム及びスラッジを固形物として含む。
【0085】
また、試験液Cは、酢酸を純水で電導度が600μS/cmになるように希釈した希釈液10kgに、35℃恒温水槽に発生した藻を固形分として0.2g添加し、その後、撹拌機(ヤマト科学株式会社製、商品名:スリーワンモーター)を使用して、回転数350rpmにて24時間撹拌して作製した。試験液Cは、電着塗装装置における極液のモデル液であり、藻を固形物として含む。
【0086】
次に、比較例1の試験について、図13を使用して説明する。比較例1で使用した試験装置は、実施例1等で使用した図12で示す試験装置からラインミキサーE4を除いたものであり、その他の構成については、実施例1等で使用した試験装置と同じである。比較例1の試験は、図13で示す試験装置を使用したこと以外は、実施例1の試験と同様に行った。また、比較例5及び6の試験については、試験液Aを試験液B又はCに変更したこと以外は、比較例1の試験と同様に行った。比較例1、5及び6における総循環回数は、上記と同様に10回とした。このときの試験液の流量は毎分13kgであり、運転時間は5.5分間であった。
【0087】
次に、比較例2の試験について、図14を使用して説明する。比較例2の試験では、比較例1で得られた処理液1.8kgを試験液として、容量3Lの貯留槽E2aに貯留し、撹拌機E1を100rpmで運転した。ここで、比較例2の試験で使用した試験液は試験液Aを由来とするものであるが、比較例2の試験で、試験液Aを使用せずに比較例1で得られた処理液を使用した理由は、比較例2で使用した後述のポンプE5aが他の実施例及び比較例で使用したポンプE5と異なるので、ポンプの違いによる影響を除外するためである。次に、ポンプE5a(池本理科工業株式会社製、チュービングポンプ)の流量を毎分60gとなるように設定し、試験液の循環を開始した。このとき、貯留槽E2a内の試験液は、循環ラインE3aを通り、超音波振動子E7(株式会社日本精機製作所製、製品名:US−150T、超音波発信器E8の出力150KW、発振周波数20KHz)を装着した容量0.5Lの超音波処理層E9を通過し、その後、貯留槽E2aへ返送される。このような循環運転を行い、処理液を得た。なお、比較例2の総循環回数は、他の実施例及び比較例と同様に10回とした。このときの運転時間は、5時間であった。
【0088】
実施例1〜5及び比較例1〜6のそれぞれについて、処理液の濾過時間、処理液の濾過残渣、及び試験中における試験液の発泡状態を評価した。その結果を表1及び2に示す。なお、濾過時間は、各実施例及び比較例で得られた処理液の1kgを300メッシュのナイロン製の濾布を用いて自然落下により濾過し、濾過が終了するまでに要した時間を調べることにより求めた。また、濾過残渣は、各実施例及び比較例で得られた処理液の1kgを300メッシュのナイロン製の濾布を用いて濾過し、濾過前後の濾布の質量差を調べることにより求めた。
【0089】
また、発泡状態は、循環運転中の試験液の発泡状態を目視で観察して評価した。評価基準は、下記の通りである
◎ 発泡はほとんど観察されない
○ 少し発泡が観察されたが、実用上の影響はない
△ 発泡が観察され、わずかに実用上の影響がある
× 著しく発泡が観察され、実用上の影響が大きい
【0090】
また、運転圧力は、圧力計E6における圧力であり、ラインミキサーE4の運転圧力を意味する。表1及び2において、ラインミキサーE4を有しない図13及び14に示す装置を使用した比較例については、運転圧力の欄を「−」で表示した。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
表1及び2から理解されるように、本発明所定のベンチュリ管構造を有するラインミキサーE4を備えた試験装置を使用した実施例1〜4の試験では、濾過時間及び濾過残渣ともに小さな数値となり、大きな粒径の固形物が少ないことがわかる。ここで、濾過に使用した濾布は300メッシュであるので、濾過残渣として残った固形物は、粒径が約50μm以上であり、塗膜の外観に影響を与えるものである。このため、本発明所定のベンチュリ管構造を有するラインミキサーE4を使用することにより、試験液(洗浄水)に含まれる、塗膜の外観に影響を与える固形物を、塗膜の外観に影響を与えない程度まで粉砕できることがわかる。また、電着塗装装置の極液の循環装置を模した試験である実施例5でも、本発明所定のベンチュリ管構造を有するラインミキサーE4の有効性が確認できた。
【0094】
これに対して、本発明所定のベンチュリ管構造を有するラインミキサーを備えない試験装置を使用した比較例1、2、5及び6では、塗膜の外観に影響を与えるような大粒径の固形物が処理液中に多く存在することがわかる。また、比較例3及び4から、本発明所定のベンチュリ管構造を有するラインミキサーを備えた試験装置を使用した場合であっても、運転圧力が0.05〜0.5MPaの範囲でなければ、大粒径の固形物が十分に粉砕できない、又は著しく発泡して実用上の問題があることがわかる。
【符号の説明】
【0095】
1 水洗装置
2 貯留槽
3 回生ライン
4 ラインミキサー
41 液体流路
42 狭窄部
43 縮径部
44 拡径部
45 液体流路の一端側
46 液体流路の他端側
5 ポンプ
6 シャワー装置
7 槽内ポンプ
8 他の槽
9 前段の水洗工程の貯留槽
10 電着塗装装置
11 電着槽
12 極液箱
13 循環ライン
14 極液槽
15 極液循環装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装工程の後に設けられる水洗工程で使用される水洗装置であって、
前記水洗装置は、洗浄に使用した後の洗浄水を貯留する貯留槽を備え、
前記貯留槽が、前記洗浄水をラインミキサーで処理した後に前記貯留槽及び/又は他の貯留槽に送液する回生ラインを備え、
前記ラインミキサーが内部に管状の液体流路を備え、
前記液体流路が、前記液体流路の一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、前記区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一端側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備え、
前記ラインミキサーに前記洗浄水が供給される際の送液圧力が、0.05〜0.5MPaである水洗装置。
【請求項2】
前記水洗工程が、前記洗浄水の一部を前記水洗装置の外部に排出し、排出された洗浄水に相当する分の給水を受ける非閉鎖系水洗工程である請求項1記載の水洗装置。
【請求項3】
極液及び電極を内部に収容する極液箱と、
前記極液箱に収容された極液を、前記極液箱の外部に送液し、所定の処理を行った後に前記極液箱に返送する循環装置と、を備える電着塗装装置であって、
前記循環装置が前記極液の流路にラインミキサーを備え、
前記ラインミキサーが内部に管状の液体流路を備え、
前記液体流路が、前記液体流路の一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、前記区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一端側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備え、
前記ラインミキサーに前記極液が供給される際の送液圧力が、0.05〜0.5MPaである電着塗装装置。
【請求項4】
脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装工程の後に設けられ、使用した洗浄水を同じ工程又は他の工程で再使用する水洗工程において、
内部に管状の液体流路を備え、前記液体流路が、前記液体流路の一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、前記区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一端側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備えるラインミキサーに再使用される洗浄水を通過させ、
前記ラインミキサーに前記洗浄水が供給される際の送液圧力を0.05〜0.5MPaとすることにより、再使用される洗浄水に含まれる固形物を粉砕処理する方法。
【請求項5】
前記水洗工程が、前記洗浄水の一部を前記水洗工程の系外に排出し、排出された洗浄水に相当する分の給水を前記水洗工程の系内に受ける非閉鎖系水洗工程である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
極液及び電極を内部に収容する極液箱と、前記極液を前記極液箱の内部と外部との間で循環させる循環装置と、を備えた電着塗装装置において、
内部に管状の液体流路を備え、前記液体流路が、前記液体流路の一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、前記区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一端側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備えるラインミキサーに循環する極液を通過させ、
前記ラインミキサーに前記極液が供給される際の送液圧力を0.05〜0.5MPaとすることにより、循環する極液に含まれる固形物を粉砕処理する方法。
【請求項1】
脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装工程の後に設けられる水洗工程で使用される水洗装置であって、
前記水洗装置は、洗浄に使用した後の洗浄水を貯留する貯留槽を備え、
前記貯留槽が、前記洗浄水をラインミキサーで処理した後に前記貯留槽及び/又は他の貯留槽に送液する回生ラインを備え、
前記ラインミキサーが内部に管状の液体流路を備え、
前記液体流路が、前記液体流路の一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、前記区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一端側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備え、
前記ラインミキサーに前記洗浄水が供給される際の送液圧力が、0.05〜0.5MPaである水洗装置。
【請求項2】
前記水洗工程が、前記洗浄水の一部を前記水洗装置の外部に排出し、排出された洗浄水に相当する分の給水を受ける非閉鎖系水洗工程である請求項1記載の水洗装置。
【請求項3】
極液及び電極を内部に収容する極液箱と、
前記極液箱に収容された極液を、前記極液箱の外部に送液し、所定の処理を行った後に前記極液箱に返送する循環装置と、を備える電着塗装装置であって、
前記循環装置が前記極液の流路にラインミキサーを備え、
前記ラインミキサーが内部に管状の液体流路を備え、
前記液体流路が、前記液体流路の一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、前記区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一端側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備え、
前記ラインミキサーに前記極液が供給される際の送液圧力が、0.05〜0.5MPaである電着塗装装置。
【請求項4】
脱脂工程、化成処理工程又は電着塗装工程の後に設けられ、使用した洗浄水を同じ工程又は他の工程で再使用する水洗工程において、
内部に管状の液体流路を備え、前記液体流路が、前記液体流路の一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、前記区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一端側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備えるラインミキサーに再使用される洗浄水を通過させ、
前記ラインミキサーに前記洗浄水が供給される際の送液圧力を0.05〜0.5MPaとすることにより、再使用される洗浄水に含まれる固形物を粉砕処理する方法。
【請求項5】
前記水洗工程が、前記洗浄水の一部を前記水洗工程の系外に排出し、排出された洗浄水に相当する分の給水を前記水洗工程の系内に受ける非閉鎖系水洗工程である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
極液及び電極を内部に収容する極液箱と、前記極液を前記極液箱の内部と外部との間で循環させる循環装置と、を備えた電着塗装装置において、
内部に管状の液体流路を備え、前記液体流路が、前記液体流路の一部又は全部の区間において、少なくとも一組の、前記区間の中途部で最も流路幅が狭くなる狭窄部と、前記液体流路の一端側から前記狭窄部に向けて縮径する縮径部と、前記狭窄部から前記液体流路の他端側に向けて拡径する拡径部と、を備えるラインミキサーに循環する極液を通過させ、
前記ラインミキサーに前記極液が供給される際の送液圧力を0.05〜0.5MPaとすることにより、循環する極液に含まれる固形物を粉砕処理する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−52159(P2012−52159A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193707(P2010−193707)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
[ Back to top ]