説明

水溶性の分岐ポリエチレンイミン組成物

基材上にコーティング又は印刷するための組成物であって、液体ビヒクルと、アルキル化又はヒドロキシアルキル化されたアミノ基を含む水溶性の分岐ポリエチレンイミンとを含んで成り、分岐ポリエチレンイミンは、アルキル化又はヒドロキシアルキル化の前は、第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基の組み合わせを含み、分岐ポリエチレンイミンポリマーの第1級アミノ基の少なくとも1%は、炭素原子数4〜6の少なくとも1つのアルキル又はヒドロキシアルキル基によりアルキル化又はヒドロキシアルキル化されている組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷の分野に関し、より詳細には、基材上にコーティング又は印刷するための組成物であって、液体ビヒクルと、アルキル化又はヒドロキシアルキル化されたアミノ基を含む水溶性の分岐ポリエチレンイミンとを含んで成る組成物に関する。具体的な一実施態様において、本発明は、インクジェット印刷(コンティニュアスインクジェット)に好適な、光学濃度が改善された耐水堅牢性の染料系インクに関する。
【背景技術】
【0002】
コンティニュアスインクジェット(CIJ)印刷では、インクは、典型的には線状配列(1又は複数)で配置された複数のオリフィスにインクを分配するマニホールド領域に加圧供給される。インクはオリフィスからフィラメント状に放出され、放出されたインクは分断されて滴の流れとなる。これらの滴の流れにより印刷する方法は、特定の滴を選択的に帯電させ、そしてそれらの通常の軌道から偏向させるものである。グラフィックな再現は、滴の流れを選択的に帯電させ、そしてプリント受容媒体上にそれらの滴の少なくとも一部を付着させるとともに、他の滴を滴捕集装置に当てることにより達成される。コンティニュアス流インクジェット印刷方法は、例えば、米国特許第4,255,754号、第4,698,123号及び第4,751,517号明細書に記載されている。
【0003】
一般的に、CIJシステム用のインクは、高い耐水堅牢性(水分にさらされた場合に基材上への滲出又はブリードする傾向が少ない)を有するとともに優れた光学濃度及び色調を有し、さらにノズルを通じて噴射可能であるように十分な流体でなくてはならない。インクジェット印刷分野において、典型的に使用される水溶性染料を含有するインクは、運転性にとって望ましい粘度を有するが、高い程度の耐水堅牢性を有するとは見なされていない。典型的には、染料の溶解性及びインクの耐水堅牢性には逆の相関がある。基材に対する付着性を高め、耐水堅牢性を向上させるために、インク溶液にポリマー及び樹脂を添加することができる。しかしながら、これらのポリマー及び樹脂は、プリントヘッド及び帯電板上に堆積物を生じるという欠点も有し、粘度を増加させることにより運転性に悪影響を及ぼすこと、及び十分に高いレベルは溶解度により制約されるといった欠点も有する。
【0004】
光学濃度を改善するためにインクにおける染料濃度を増加させることは、染料の溶解度により制約される。染料の溶解度の限界を上回ると、染料はオリフィスプレート上に晶出して、不正常な噴出及び不十分な運転性をもたらす傾向がある。さらに、色の光学濃度は、一般的に、特定の濃度で横ばいになる傾向があり、さらに染料を添加しても光学濃度の向上に効果がない。
【0005】
ポリエチレンイミン(PEI)は、耐水堅牢性を高めるためにインク組成物において往々に使用されるが、PEIは、染料の溶解性を低下させることがあり、あるいは、さらに不都合なことには、染料を減成(PEIの第1級アミノ基官能基によるインクの色の原因である化学基であるアゾ結合の還元)させることがある。アゾ結合を還元するPEIの能力を低下させて染料を保持するために、分岐ポリエチレンイミンの第1級アミノ基のアルキル化又はヒドロキシアルキル化が提案された。残念ながら、アルキル化/ヒドロキシアルキル化された第1級及び第2級アミノ基の百分率が増加するにつれて、ポリマーは水に溶解しにくくなり、析出する。
【0006】
米国特許第5,017,644号明細書には、線状N−ヒドロキシエチル置換ポリエチレンイミンポリマーを含むインクジェットインク組成物が開示されており、分岐ポリマーの使用が、線状ポリマーを使用したものでは耐水堅牢性及び耐光堅牢性の点で劣るという結果をもたらすことが教示されている。残念ながら、エチレンイミンの通常の重合生成物はランダムな側鎖を有し、エトキシル化により分岐N−置換ヒドロキシエチルポリエチレンイミンをもたらすために、線状ポリマーは市販されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,255,754号明細書
【特許文献2】米国特許第4,698,123号明細書
【特許文献3】米国特許第4,751,517号明細書
【特許文献4】米国特許第5,017,644号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのため、基材上にコーティング又は印刷するための改善された組成物であって、インクジェット記録装置により印刷された染料画像の耐水堅牢性の向上を可能にする組成物を求める要求が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施態様において、本発明は、基材上にコーティング又は印刷するための組成物であって、液体ビヒクルと、アルキル化又はヒドロキシアルキル化されたアミノ基を含む水溶性分岐ポリエチレンイミンとを含んで成る組成物に関する。ここで、分岐ポリエチレンイミンは、アルキル化又はヒドロキシアルキル化の前は、第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基の組み合わせを含み、分岐ポリエチレンイミンポリマーの第1級アミノ基の少なくとも1%は、炭素原子数4〜6の少なくとも1つのアルキル又はヒドロキシアルキル基によりアルキル化又はヒドロキシアルキル化されている。
【0010】
具体的な実施態様において、本発明は、液体ビヒクルに可溶なアニオン染料をさらに含むかかる組成物に関する。当該組成物は、インクジェット印刷、特にコンティニュアスインクジェット印刷に好適である耐水堅牢性の染料系インクを提供する。かかる実施態様のさらなる側面において、ジメチルアミノエタノール(「DMAE」)塩基が、10を超えるpHをもたらし、ポリエチレンイミンと染料との間の静電的相互作用を抑制するのに十分な量で含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の組成物は、液体ビヒクルと、水溶性のアルキル化又はヒドロキシアルキル化された分岐ポリエチレンイミンとを含んで成る。アルキル化又はヒドロキシアルキル化前に、分岐ポリエチレンイミンは、第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基の組み合わせを、典型的には約1:2:1のモル比で含む。本発明によると、分岐ポリエチレンイミンポリマーの第1級アミノ基の少なくとも1%は、炭素原子数4〜6の少なくとも1つのアルキル又はヒドロキシアルキル基によりアルキル化又はヒドロキシアルキル化されている。好ましい一実施態様において、分岐ポリエチレンイミンの第1級及び第2級アミノの置換可能な水素の少なくとも3モル%は炭素原子数4〜6のアルキル又はヒドロキシアルキル基によりアルキル化又はヒドロキシアルキル化されている。かかる化合物の具体例としてはヒドロキシブチル化PEI及びヘキシル化PEIが挙げられる。
【0012】
炭素原子数4〜6のアルキル基を使用する場合に、適切な溶解性を維持するには、分岐ポリエチレンイミンのアミノ基の置換可能な水素の1〜10モル%だけがかかるアルキル基によりアルキル化されていることが好ましい。かかる場合に、さらに好ましい一実施態様において、分岐ポリエチレンイミンのアミノ基の残りの置換可能な水素の少なくとも5%が炭素原子数1〜3のヒドロキシアルキル基によりヒドロキシアルキル化されていてもよい。具体的な好ましい一実施態様において、分岐ポリエチレンイミンのアミノ基の置換可能な水素の1〜10モル%がヘキシル基によりアルキル化されていてもよく、残りの置換可能な水素を有する分岐ポリエチレンイミンの任意のアミノ基が完全にヒドロキシエチル化されていてもよい。
【0013】
炭素原子数4〜6のヒドロキシアルキル基を使用する場合に、それらは、炭素原子数4〜6のヒドロキシアルキル基についていかなるモル百分率でも使用することができ、その場合に、水溶性は維持される。具体的な一実施態様において、置換可能な水素を有する分岐ポリエチレンイミンのアミノ基は、完全にヒドロキシブチル化されていてもよい。別の一実施態様において、置換可能な水素を有する分岐ポリエチレンイミンのアミノ基の第1の群をヒドロキシアルキル化するために炭素原子数4〜6のヒドロキシアルキル基を使用でき、分岐ポリエチレンイミンのアミノ基の第2の群を完全にアルコキシル化された程度までヒドロキシアルキル化するために炭素原子数1〜3のヒドロキシアルキル基を使用することができる。
【0014】
本発明において使用されるアルキル化された分岐ポリエチレンイミンポリマー、ヒドロキシアルキル化された分岐ポリエチレンイミンポリマー、及びアルキル化/ヒドロキシアルキル化された分岐ポリエチレンイミンポリマーは、従来のアルキル化剤及びヒドロキシアルキル化剤を使用して市販の分岐PEIポリマーをアルキル化及び/又はヒドロキシアルキル化することにより調製できる。
【0015】
陰イオン性の水溶性染料を使用する場合に、かかる炭素原子数4〜6のアルキル及びヒドロキシアルキル置換基を含むかかる特定の分岐ポリエチレンイミンポリマーは、驚くべきことに、光学濃度の増加に加えて、耐水堅牢性の向上というさらに望ましい特性をもたらすことが見出された。アルキル基の長さ及び/又はかかる特定の置換基による置換の量を限定することによって、PEI誘導体の溶解性を、未置換誘導体と比べて実質上悪影響を及ぼすほどには変わらないように制御することができる。
【0016】
本発明に従って使用される分岐ポリエチレンイミンポリマーは、典型的には、約10,000〜60,000の分子量範囲を有するが、より低い又は高い分子量のポリマーも有用である。
【0017】
液体ビヒクルに可溶なアニオン染料を添加することによって、本発明に係る組成物は、インクジェット印刷に好適である耐水堅牢性の染料系インクを提供することができる。染料系インクの使用は、本発明の組成物において好ましい。なぜなら、その溶液の粘度がCIJ印刷システムの運転性を可能にするからである。本発明のかかる実施態様のインクジェットインク組成物中の染料は水溶性であり、好ましくは直接染料、酸性染料及び食用染料からなる群から選択される。インクジェットインク組成物の場合に、水溶性の分岐ポリエチレンイミンポリマーは、好ましくは、乾燥質量基準で0.5〜5.0質量%の量で存在することが好ましく、アニオン染料は、好ましくは、乾燥質量基準で1.0〜5.0質量%、より好ましくは2質量%〜4質量%の量で存在する。
【0018】
本発明の組成物はインク組成物を形成するために染料を含んでもよいが、染料を添加していない本発明に係る組成物も有用であり使用できる(例えば、印刷された染料の特性を向上させるために染料組成物の印刷前又は後のいずれかで基材上にコーティング又は印刷される)。従って、さらなる一実施態様において、本発明は、インクジェット画像を上に印刷するための媒体であって、基材と、本発明に係る組成物からコーティングされたアルキル化又はヒドロキシアルキル化された分岐ポリエチレンイミンを含む表面層とを含んで成る媒体に関する。
【0019】
当該技術分野では、耐水堅牢性は基材に依存するということが理解され知られている。本発明の組成物は、インクを基材上に滴として放出させることにより画像を形成するためのインクジェット印刷装置に組み込むのに合わせて特別に適合させることができるため、様々な基材上に画像を生成させることができる。
【0020】
PEIポリマーを含めることにより耐水堅牢性が向上する一方、滴生成器内でアニオン染料と陽イオン性PEIとの間で時期尚早の相互作用が生じることもあることが分かるであろう。そのため、望まれるまでこの相互作用を妨げることが好ましい。かかる実施態様のさらなる一側面において、ジメチルアミノエタノール(「DMAE」)塩基を、ポリマー上の陽イオン電荷を最低限に減少させてポリエチレンイミンと染料との間の相互作用を抑制するために、10を超えるpHをもたらすのに十分な量で含めることができる。噴射後、DMAEが蒸発してpHが低下するので、PEIと染料とが相互作用することが可能となり、耐水堅牢性のインクが生成する。
【0021】
システムによっては、本発明のインク配合物の適切な適用のために他の薬剤が必要とされる場合があることが予測されるであろう。中でも、例えば、消泡剤、微生物の生長を抑えるための殺生物剤、ハードウェアを保護するための腐食防止剤、所望の基材に依存する界面活性剤、アルコール類、緩衝剤などは、個々の用途に合わせてインク配合物を特殊化させるのに役立つ。特定の実施態様において、例えば、本発明の組成物中に必要に応じて含めることのできる他の添加剤としては、0〜0.2質量%の量で腐食防止剤、例えばアルカノールアミノ類;0〜1質量%の湿潤剤、例えばエトキシル化グリコールエーテル;0〜10質量%の量で、直鎖又は分岐鎖中に1個のヒドロキシ基及び5個以下の炭素原子を有する低級脂肪族アルコール;及び0〜0.5質量%の殺生物剤、例えばデヒドロ酢酸が挙げられる。当該組成物は、必要に応じて、消泡剤、例えばリン酸エステル、シリコーン系もしくは非シリコーン系消泡剤、又はアセチレンジオールなどを含んでもよい。
【0022】
本発明において使用できるアルキル化された分岐ポリエチレンイミンポリマー、ヒドロキシアルキル化された分岐ポリエチレンイミンポリマー、及びアルキル化/ヒドロキシアルキル化された分岐ポリエチレンイミンポリマーの調製法の代表例として以下の合成例を示す。上記のように、かかるポリマーは、従来のアルキル化剤及びヒドロキシアルキル化剤を使用して市販のPEIポリマーをアルキル化及び/又はヒドロキシアルキル化することにより調製できる。
【実施例】
【0023】
7%ヘキシル化されたポリエチレンイミンの合成:
18gの分岐ポリエチレンイミン(PEI)を180mlのTHF中に溶解させた。この溶液に4.11mlのヘキシルブロマイドを加え、反応を75〜85℃で48時間還流させて行った。48時間後、1.16gのNaOHをMeOH中に溶解させ、その溶液を反応に加え、反応を24時間還流させ続けて行った。いったん完了したら、反応を24時間かけて静め、ろ過し、そしてロータリーエバポレーターにより溶剤を除去した。得られた黄色の試料を真空下で乾燥させると、7%ヘキシル化された分岐ポリエチレンイミン(7%HPEI)が得られた。
【0024】
7%ヘキシル化/23%ヒドロキシプロピル化されたポリエチレンイミンの合成:
15gの7%ヘキシル化された分岐ポリエチレンイミン(7%HPEI)を125mlのエタノール中に溶解させた。この溶液及びボンベ容器とともに25mlのすすぎ液にN2 を12〜15分間スパージした。それぞれを4.09mlのプロピレンオキサイドとともにボンベに加えた。反応を60℃(5〜7時間)加熱し、次に一晩放冷した。いったんボンベから取り出したら、反応を24時間エバポレーターにかけ、H2Oに溶解させ、そして8k MWCO透析管に48時間移した。次に、試料を、送出にとって望ましい固形分まで乾燥させた。GPC MW:3,260.PDI:1.944.
【0025】
7%ヘキシル化/43%ヒドロキシプロピル化されたポリエチレンイミンの合成:
15gの7%ヘキシル化された分岐ポリエチレンイミン(7%HPEI)を125mlのエタノール中に溶解させた。この溶液及びボンベ容器とともに25mlのすすぎ液にN2 を12〜15分間スパージした。それぞれを7.66mlのプロピレンオキサイドとともにボンベに加えた。反応を60℃(5〜7時間)加熱し、次に一晩放冷した。いったんボンベから取り出したら、反応を24時間エバポレーターにかけ、H2Oに溶解させ、そして8k MWCO透析管に48時間移した。次に、試料を、送出にとって望ましい固形分まで乾燥させた。GPC MW:3,278.PDI:1.885.
本発明の一実施態様に従って調製されるインクは以下のように調製できる。
【0026】
インクの調製
以下の調製物により、本発明にかかるアルキル化及びヒドロキシアルキル化された分岐ポリエチレンイミンの使用を現在使用されているインク配合物、例えばKodak FD1096ブラックインクとを比較する。本発明に従うアルキル化又はヒドロキシアルキル化は、十分な溶解性を失わずに置換第1級及び第2級アミノ基の利点をもたらし、それに加えてより高い光学濃度ももたらす。各実施例において、「他」のカテゴリーは、慣用されている殺生物剤、アルコール、グリコールその他の添加剤を意味する。実施例1〜3において、各場合に使用された分岐PEIは完全にヒドロキシアルキル化されたものである。
【0027】
【化1】

【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
上記各実施例における各溶液の有効性を求めるために、#6ドローダウンバーを使用してLaser MOCR Bond、 Sterling Ultra Gloss、Smart Paper Kromekote、IP Carolina Cover C1S及びUPM Digibright/Brite 72などの様々な基材上に溶液を適用した。インクを適用した基材を、次に耐水堅牢性及び印刷強さについて評価した。0時間、24時間及び48時間の時点で測定を行ったが、当業者は耐水堅牢性及び光学濃度は乾燥時間とともに向上すると理解するので、最初の評価結果だけを以下に示す。結果を以下にまとめる。ここで、各基材の場合の光学濃度/耐水堅牢性を示す。
【0032】
【表4】

【0033】
上記結果から判るように、光学濃度及び耐水堅牢性は、選択された基材に高度に依存したままである。しかしながら、炭素原子数4のヒドロキシアルキル誘導体は、かなりの差で、特にコートされた基材に対して総合的に最良の光学濃度及び耐水堅牢性を示した。
【0034】
アミノ基の置換度を変えてアルキル化PEI誘導体も調製した。以下の実施例の場合に、3%、5%及び7%ヘキシル化されたポリエチレンイミンを使用した。
【0035】
【表5】

【0036】
【表6】

【0037】
【表7】

【0038】
実施例の溶液を上記と同様に処理した。結果は以下を含む。
【0039】
【表8】

【0040】
インクに従来使用されている標準的なヒドロキシエチル化PEI誘導体と比べて、ヘキシル化PEIの光学濃度及び耐水堅牢性は劇的に増加した。アミノ基のアルキル化の百分率は、いくつかの基材について観測された値にわずかな差をもたらしたが、一般的に、アルキル化度を増加させるにつれて、コートされた基材について観測された値は著しく増加した。
【0041】
アミノ基の置換度を変えて部分アルキル化及び部分ヒドロキシアルキル化PEI誘導体も調製した。以下の実施例の場合に、7%ヘキシル化され、かつ、23%又は43%ヒドロキシプロピル化されたポリエチレンイミンを使用した。
【0042】
【表9】

【0043】
【表10】

【0044】
実施例の溶液を上記と同様に処理した。コートされた基材及びコートされていない基材の場合の平均光学濃度/耐水堅牢性の結果を以下に報告する。
【0045】
【表11】

【0046】
インクに従来使用されている標準的なヒドロキシエチル化PEI誘導体について前に報告した結果と比べて、ヘキシル化/ヒドロキシプロピル化PEIの光学濃度及び耐水堅牢性は劇的に増加し、また、前に報告した個別にヘキシル化又はヒドロキシプロピル化されたPEIの場合の結果と比べてもさらに向上した。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、インクジェット印刷の分野において有用であり、インクジェット印刷に使用するためのコーティング又は印刷用の改良された組成物であって、組成物溶解性が増加し、印刷インク耐水堅牢性が増加した組成物を調製することについての利点を有する。
【0048】
本発明を特定の好ましい実施態様を特に参照して説明したが、当然のことながら本発明の精神及び範囲内で様々な変更を加えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にコーティング又は印刷するための組成物であって、液体ビヒクルと、アルキル化又はヒドロキシアルキル化されたアミノ基を含む水溶性の分岐ポリエチレンイミンとを含んで成り、前記分岐ポリエチレンイミンが、アルキル化又はヒドロキシアルキル化の前は、第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基の組み合わせを含み、分岐ポリエチレンイミンポリマーの第1級アミノ基の少なくとも1%は、炭素原子数4〜6の少なくとも1つのアルキル又はヒドロキシアルキル基によりアルキル化又はヒドロキシアルキル化されている組成物。
【請求項2】
前記分岐ポリエチレンイミンの第1級アミノ基及び第2級アミノ基の置換可能な水素の少なくとも3モル%が炭素原子数4〜6のアルキル又はヒドロキシアルキル基によりアルキル化又はヒドロキシアルキル化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記分岐ポリエチレンイミンのアミノ基の置換可能な水素の1〜10モル%が炭素原子数4〜6のアルキル基によりアルキル化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記分岐ポリエチレンイミンのアミノ基の置換可能な水素の少なくとも5%が炭素原子数1〜3のヒドロキシアルキル基によりヒドロキシアルキル化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記分岐ポリエチレンイミンのアミノ基の置換可能な水素の1〜10モル%がヘキシル基によりアルキル化されており、前記分岐ポリエチレンイミンのアミノ基の置換可能な水素の少なくとも5%が炭素原子数1〜3のヒドロキシアルキル基によりヒドロキシアルキル化されている、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記分岐ポリエチレンイミンのアミノ基の置換可能な水素の1〜10モル%がヘキシル基によりアルキル化されており、残りの置換可能な水素を有する分岐ポリエチレンイミンの任意のアミノ基が完全にヒドロキシエチル化されている、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
置換可能な水素を有する分岐ポリエチレンイミンのアミノ基が完全にヒドロキシブチル化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記液体ビヒクルに可溶なアニオン染料をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
10を超えるpHをもたらし、前記ポリエチレンイミンと染料との間の静電的相互作用を抑制するのに十分な量のジメチルアミノエタノール塩基をさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
水溶性の分岐ポリエチレンイミンポリマーが乾燥質量基準で0.5〜5.0質量%の量で存在し、アニオン染料が乾燥質量基準で1.0〜5.0質量%の量で存在する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
分岐ポリエチレンイミンの第1級アミノ基及び第3級アミノ基の置換可能な水素の少なくとも3モル%が炭素原子数4〜6のアルキル又はヒドロキシアルキル基によりアルキル化又はヒドロキシアルキル化されている、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記分岐ポリエチレンイミンのアミノ基の置換可能な水素の1〜10モル%が炭素原子数4〜6のアルキル基によりアルキル化されている、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記分岐ポリエチレンイミンのアミノ基の置換可能な水素の少なくとも5%が炭素原子数1〜3のヒドロキシアルキル基によりヒドロキシアルキル化されている、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記分岐ポリエチレンイミンのアミノ基の置換可能な水素の1〜10モル%がヘキシル基によりアルキル化されており、前記分岐ポリエチレンイミンのアミノ基の置換可能な水素の少なくとも5%が炭素原子数1〜3のヒドロキシアルキル基によりヒドロキシアルキル化されている、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記分岐ポリエチレンイミンのアミノ基の置換可能な水素の1〜10モル%がヘキシル基によりアルキル化されており、残りの置換可能な水素を有する分岐ポリエチレンイミンの任意のアミノ基が完全にヒドロキシエチル化されている、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
置換可能な水素を有する分岐ポリエチレンイミンのアミノ基が完全にヒドロキシブチル化されている、請求項10に記載の組成物。
【請求項17】
インクジェット画像をその上に印刷するための媒体であって、基材と、請求項1に記載の組成物からコートされたアルキル化又はヒドロキシアルキル化された分岐ポリエチレンイミンを含む表面層とを含んでなる媒体。
【請求項18】
分岐ポリエチレンイミンの第1級アミノ基及び第3級アミノ基の置換可能な水素の少なくとも3モル%が炭素原子数4〜6のアルキル又はヒドロキシアルキル基によりアルキル化又はヒドロキシアルキル化されている、請求項17に記載の媒体。
【請求項19】
前記分岐ポリエチレンイミンのアミノ基の置換可能な水素の1〜10モル%が炭素原子数4〜6のアルキル基によりアルキル化されている、請求項17に記載の媒体。
【請求項20】
前記分岐ポリエチレンイミンのアミノ基の置換可能な水素の少なくとも5%が炭素原子数1〜3のヒドロキシアルキル基によりヒドロキシアルキル化されている、請求項19に記載の媒体。

【公表番号】特表2010−505031(P2010−505031A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530425(P2009−530425)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/020919
【国際公開番号】WO2008/042253
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】