説明

水溶性イオン性高分子混合物からなるダイラタンシー性組成物

【課題】ダイラタンシー性を示す安定性に優れた水溶液組成物を提供することにある。また、流動によりゲル化する水溶液組成物を提供する。
【解決手段】下記成分(A)及び(B)、(A)イオン性基密度が2meq/g以上である水溶性イオン性高分子(B)イオン性基密度が1meq/g以下であり、(A)とは反対のイオン性である水溶性イオン性高分子を含有する水溶液が、ダイラタンシー性を示すことを見出した。また、該水溶性イオン性高分子を含有する水溶液が流動によりゲル化することを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水溶液系でダイラタンシー性を示す組成物に関する。また、流動によりゲル化する組成物に関する。本発明のダイラタンシー性組成物は、衝撃吸収材、その他水溶液系の粘性調節剤、流動によるゲル化組成物として有用である。本発明においてダイラタンシー性とは、せん断力を掛けることにより粘度が上昇し、流動性が低下することをさす。
【背景技術】
【0002】
水溶性高分子水溶液は、一般に高せん断下で粘度が低下する。一方微細粒子を含む液体は、高せん断下で粘度が上昇するダイラタンシー性を示す場合がある。特許文献1には微粒子と分散剤と液体の系についてダイラタンシー性の報告がされている。特許文献2、非特許文献1には油滴と水溶性高分子の系について、ダイラタンシー性を示す報告があるが、いずれも油滴等を含む不均一な系であり、この場合には界面活性剤等を加えることにより油滴等を乳化、安定化する必要があることなどの問題があった。
【特許文献1】特許第3922370号
【特許文献2】特許第4098967号
【非特許文献1】THE JOURNAL OF CHEMICAL PHYSICS 127号 144507
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、ダイラタンシー性を示す安定性に優れた水溶液組成物を提供することにある。また流動によりゲル化する水溶液組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
下記成分(A)及び(B)、
(A)イオン性基密度が 2meq/g以上である水溶性イオン性高分子、
(B)イオン性基密度が 1meq/g以下である(A)とは反対のイオン性である水溶性イオン性高分子を含有する水溶液が、ダイラタンシー性を示すことを見出した。また、該水溶性イオン性高分子を含有する水溶液が流動によりゲル化することを見出した。
【発明の効果】
【0005】
本発明のダイラタンシー性組成物は、均一系であり、分散安定剤、界面活性剤等を必要とせず、保存安定性にも優れ、1%以下の低濃度でもダイラタンシー性を示すという特徴がある。また、流動刺激を与えない場合には、低粘性の均一な水溶液であるが、流動刺激を加えることにより、急激に高粘性となり、流動性が低下し、ゲル化するという特徴を持つ。本発明の組成物は、高速塗工用接着剤、印刷用塗工液、水性エマルジョン組成物、硬化性樹脂組成物、化粧料等の粘性調節剤として有用である。またダンパ、クラッチ等の動力伝達装置、衝撃吸収剤、制振装置、防振装置等の構成要素として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のダイラタンシー性組成物は、水溶性カチオン性高分子と,水溶性アニオン性高分子を含有するものである。下記成分(A)及び(B)、
(A)イオン性基密度が 2meq/g以上である水溶性イオン性高分子
(B)イオン性基密度が 1meq/g以下であり、(A)とは反対のイオン性である水溶性イオン性高分子を含有する水溶液が、強いダイラタンシー性を示し、流動によりゲル化する。
【0007】
ここでイオン性基密度とは、水溶性イオン性高分子1gあたりのイオン当量値meq/gを表す。水溶性イオン性高分子のイオン性基密度は、pH滴定、コロイド滴定等で求めることができる。(A)成分、(B)成分の水溶性イオン性高分子は合成高分子であっても良いし、イオン性の天然高分子又は天然高分子にイオン性基を導入したものであっても良い。
【0008】
通常、水溶性カチオン性高分子と水溶性アニオン性高分子を混合すると、イオンコンプレックスを形成し、イオンバランスが等しい中和点付近で、不溶化、沈殿する。特にイオン性基密度が高く、分子量の大きい高分子同士の場合にはイオンバランスに関わらず、混合により瞬時に不溶物を形成する。しかしながら、水溶性イオン性高分子と、これと逆の電荷を持つ水溶性イオン性高分子が、それぞれ一定のイオン性基密度を有する場合には、不溶性イオンコンプレックス形成しにくく、混合水溶液がダイラタンシー性を示し、流動によりゲル化することを見出した。
【0009】
(A)成分の水溶性イオン性高分子は、合成高分子の場合には、イオン性単量体と非イオン性親水性単量体を、得られた重合体1gあたり2meq/g以上のイオン性基を有するように重合することにより得られる。イオン性単量体のみから得られたものであってもよい。イオン性単量体のうちアニオン性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸、及びそれらの塩などがあげられる。
イオン性単量体のうちカチオン性単量体の例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレ−ト、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレ−ト、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及びそれらの塩、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、アリルアミン、ジアリルメチルアミンなどがあげられる。非イオン性親水性単量体の例としては(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニルピロリドン、ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、グリセロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0010】
また、(A)成分の水溶性イオン性高分子は、イオン性基密度が2meq/g以上であれば、イオン性の天然高分子、または天然高分子等にイオン性基を導入したものであっても良い。例としてはカルボキシメチルセルロース、カチオン化澱粉等があげられる。
【0011】
(B)成分の水溶性イオン性高分子は、合成高分子の場合には、イオン性単量体と非イオン性親水性単量体を、得られた共重合体1gあたり1meq/g以下のイオン性基を有するように共重合することにより得られる。イオン性単量体のうちアニオン性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸、及びそれらの塩などがあげられる。イオン性単量体のうちカチオン性単量体の例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレ−ト、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレ−ト、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノロピル(メタ)アクリルアミド、及びそれらの塩、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、アリルアミン、ジアリルメチルアミンなどがあげられる。非イオン性親水性単量体の例としては(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニルピロリドン、ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、グリセロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0012】
また、(B)成分の水溶性イオン性高分子は、イオン性基密度が1meq/g以下であれば、イオン性の天然高分子、または天然高分子等にイオン性基を導入したものであっても良い。例としてはカルボキシメチルセルロース、カチオン化澱粉等があげられる。
【0013】
(A)成分および(B)成分の水溶性イオン性高分子は合成高分子の場合には通常のラジカル重合法により得ることができる。以下に溶液重合の場合の方法について説明する。
【0014】
重合条件は通常、使用する単量体や重合開始剤等により適宜決めていく。重合の温度は0〜100℃の範囲で行う。単量体の濃度が1〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%になるように単量体水溶液を調整し、窒素置換する。その後重合を開始させる。
【0015】
重合開始はラジカル重合開始剤を使用する。これら開始剤は水溶性であることが好ましく、アゾ系,レドックス系、過酸化物系いずれでも重合することが可能である。水溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩化水素化物、2、2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物、4、4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などが挙げられる。またレドックス系の例としては、過硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどとの組み合わせが挙げられる。さらに過酸化物の例としては、過硫酸アンモニウムあるいはカリウム、過酸化水素などを挙げることができる。これらのうち、水溶性アゾ系開始剤が好ましい。
【0016】
(A)の水溶性イオン性高分子の光散乱法による重量平均分子量は1万から1500万、より好ましくは10万から1000万である。(B)の水溶性イオン性高分子の光散乱法による重量平均分子量は50万から1500万、より好ましくは100万から1000万である。(B)成分の水溶性イオン性高分子の分子量は(A)成分の水溶性イオン性高分子の分子量よりも大きいほうがより強いダイラタンシー性を示す。
【0017】
水溶性イオン性高分子(A)、水溶性イオン性高分子(B)を一定の比率で混合することにより、本発明のダイラタンシー性組成物が得られる。混合の比率は、水溶性イオン性高分子(A)に由来するイオン性基のイオン当量a meqと、水溶性イオン性高分子(B)に由来するイオン性基のイオン当量b meqの比が、0.01≦b/a≦1.3であることが好ましい。0.01より小さくなるとダイラタンシー性を示さず、1.3よりも大きくなると不溶性沈殿物を生成しダイラタンシー性を示さなくなる。更に好ましくは0.03≦b/a≦1.1である。水溶性イオン性高分子(A)と水溶性イオン性高分子(B)の混合物は水で希釈しトータルの高分子濃度を0.01〜5質量%とすることでダイラタンシー性を示す。また、本組成物に他の水溶性高分子、微粒子、メタノール等の有機物等の成分を添加することも可能である。
【0018】
(実施例)
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。実施例中、粘度はブルックフィールド粘度計を用い回転数100rpm、No3ローターで測定した。重量平均分子量は、Wyatt Technology社製DAWN HELEOSを用いて分析した。アニオン性高分子のイオン性基密度はpH滴定により、カチオン性高分子のイオン性基密度はコロイド滴定により求めた。
【0019】
(製造例1)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに脱イオン水225.0g、80%メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液75.0g、を加え、均一な混合溶液とした。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素を除去した。この間恒温水槽により45℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、2、2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物0.06g添加し重合を開始させた。20時間重合を継続し反応を終了した。これをカチオン性高分子A1とする。光散乱法による重量平均分子量は約90万であった。イオン性基密度は4.69meq/gであった。
【0020】
(製造例2)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに脱イオン水138.5g、65%ジアリルジメチルアンモニウムクロリド水溶液161.5gを加え、均一な混合溶液とした。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素を除去した。この間恒温水槽により50℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、2、2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物1.05g添加し重合を開始させた。8時間重合を継続し反応を終了した。これをカチオン性高分子A2とする。光散乱法による重量平均分子量は約30万であった。イオン性基密度は5.85meq/gであった。
【0021】
(製造例3)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに脱イオン水228.0g、80%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液30.3g、50%アクリルアミド41.6gを加え、均一な混合溶液とした。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素を除去した。この間恒温水槽により33〜35℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、2、2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物0.02g添加し重合を開始させた。20時間重合を継続し反応を終了した.これをカチオン性高分子A3とする。光散乱法による重量平均分子量は約490万であった。イオン性基密度は2.65meq/gであった。
【0022】
(製造例4)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに脱イオン水224.2g、80%メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液23.6g、50%アクリルアミド52.2gを加え、均一な混合溶液とした。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素を除去した。この間恒温水槽により35℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、2、2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物0.02g添加し重合を開始させた。20時間重合を継続し反応を終了した。これをカチオン性高分子A4とする。光散乱法による重量平均分子量は約630万であった。イオン性基密度は2.08meq/gであった。
【0023】
(製造例5)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに脱イオン水255.0g、アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム45.0gを加え、均一な混合溶液とした。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素を除去した。この間恒温水槽により35℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、2、2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物0.05g添加し重合を開始させた。20時間重合を継続し反応を終了した。これをアニオン性高分子A5とする。光散乱法による重量平均分子量200万であった。イオン性基密度は4.2meq/gであった。
【0024】
(製造例6)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口200mlセパラブルフラスコに脱イオン水79.2g、60%アクリル酸水溶液0.83g、50%アクリルアミド19.0gを加え、均一な混合溶液とした。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素を除去した。この間恒温水槽により45℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、2、2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物0.01gを添加し重合を開始させた。22時間重合を継続し反応を終了した。光散乱法による重量平均分子量は約550万であった。イオン基密度は0.54meq/gであった。これをアニオン性高分子B1とする。
【0025】
(製造例7)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口300mlセパラブルフラスコに脱イオン水120.3g、60%アクリル酸水溶液0.25g、50%アクリルアミド29.5gを加え、均一な混合溶液とした。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素を除去した。この間恒温水槽により40℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、2、2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物0.02gを添加し重合を開始させた。22時間重合を継続し反応を終了した。光散乱法による重量平均分子量は約650万であった。イオン性基密度は0.12meq/gであった。これをアニオン性高分子B2とする。
【0026】
(製造例8)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口300mlセパラブルフラスコに脱イオン水119.1g、アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム0.48g、50%アクリルアミド29.52gを加え、均一な混合溶液とした。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素を除去した。この間恒温水槽により40℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、2、2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物0.02g添加し重合を開始させた。20時間重合を継続し反応を終了した。光散乱法による重量平均分子量は520万であった。イオン性基密度は0.06meq/gであった。これをアニオン性高分子B3とする。
【0027】
(製造例9)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口300mlセパラブルフラスコに脱イオン水119.8g、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト0.96g、50%アクリルアミド28.1g、96%硫酸0.31gを加え、均一な混合溶液とした。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素を除去した。この間恒温水槽により40℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、2、2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物0.02g添加し重合を開始させた。20時間重合を継続し反応を終了した。光散乱法による重量平均分子量は約520万であった。イオン性基密度は0.37meq/gであった。これをカチオン性高分子B4とする。
【0028】
(比較製造例1)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに脱イオン水214.5g、80%メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液7.5g、50%アクリルアミド水溶液78.0gを加え、均一な混合溶液とした。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素を除去した。この間恒温水槽により35℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、2、2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物0.05g添加し重合を開始させた。20時間重合を継続し反応を終了した。重量平均分子量は約620万であった。イオン性基密度は0.53meq/gであった。これを比較カチオン性高分子A6とする。
【0029】
(比較製造例2)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに脱イオン水218.2g、80%メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液13.8g、50%アクリルアミド68.0gを加え、均一な混合溶液とした。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素を除去した。この間恒温水槽により35℃に内部温度を調整した。窒素導入30分後、2、2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物0.02g添加し重合を開始させた。20時間重合を継続し反応を終了した。これを比較カチオン性高分子A7とする。重量平均分子量は約680万であった。イオン性基密度は1.05meq/gであった。
【0030】
(比較製造例3)攪拌機、還流冷却管、および窒素導入管を備えた4つ口300mlセパラブルフラスコに60%アクリル酸水溶液3.4g、1N−NaOH12.0g、50%アクリルアミド水溶液16.0g、脱イオン水67.7g、ホスフィン酸ナトリウム一水和物0.01gを添加し均一な混合溶液とした。温度を20℃に保ち、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し、系内を窒素置換した。次に2、2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物0.01gを添加し、温度を50℃になるようにフラスコを加熱し、重合を開始させた。10時間後に重合を終了した。重量平均分子量は70万であった。イオン性基密度は2.6meq/gであった。これを比較アニオン性高分子B5とする。
【0031】
(比較製造例4)攪拌機、還流冷却管、および窒素導入管を備えた4つ口300mlセパラブルフラスコに60%アクリル酸水溶液1.7g、1N−NaOH6.0g、50%アクリルアミド水溶液18.0g、脱イオン水74.3g、ホスフィン酸ナトリウム一水和物0.01gを添加し均一な混合溶液とした。温度を20℃に保ち、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し、系内を窒素置換した。次に2、2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物0.01gを添加し、温度を50℃になるようにフラスコを加熱し、重合を開始させた。10時間後に重合を終了した。重量平均分子量は80万であった。イオン性基密度は1.32meq/gであった。これを比較アニオン性高分子B6とする。以上の結果を表1に示す。
【0032】
(表1)

【実施例1】
【0033】
製造例1から9までのイオン性高分子を、表1の条件で混合した。1日静置後の粘度と、50mLのサンプル瓶に入れ、振幅約10cm、振動数4回/Sで5秒間手動によりシェイクした後の粘度を測定し、その比からダイラタンシー性を評価した。また、シェイク後サンプル瓶内壁へのゲル状物の付着の有無を観察した。その結果を表2に示す。製造例のイオン性高分子からなる混合物はダイラタンシー性を示し、シェイク後サンプル瓶内壁へのゲル状物の付着が観察された。
【0034】
(比較例1)比較例製造例1から4のイオン性高分子を表2の条件で混合した。1日静置後の粘度と、50mLのサンプル瓶に入れ、振幅約10cm、振動数4回/Sで5秒間シェイク後の粘度を測定し、その比からダイラタンシー性を評価した。また、シェイク後サンプル瓶内壁へのゲル状物の付着の有無を観察した。
その結果を表2に示す。
【0035】
比較例1−1では、アニオン性高分子B1/比較カチオン性高分子A6(質量比)を0.05〜1.0の範囲で混合したが、ダイラタンシー性は起こらなかった。またシェイク後サンプル瓶内壁へのゲル状物の付着も観察されなかった。結果を表2に示す。
【0036】
比較例1−2では、アニオン性高分子B1/比較カチオン性高分子A7(質量比)を0.1〜1.0の範囲で混合したが、ダイラタンシー性は起こらなかった。またシェイク後サンプル瓶内壁へのゲル状物の付着も観察されなかった。結果を表2に示す。
【0037】
比較例1−3では、比較アニオン性高分子B5/カチオン性高分子A1(質量比)を0.1〜5.0の範囲で混合したが、ダイラタンシー性は起こらなかった。またシェイク後サンプル瓶内壁へのゲル状物の付着も観察されなかった。結果を表2に示す。
【0038】
比較例1−4では、比較アニオン性高分子B6/カチオン性高分子A1(質量比)を0.2〜5.0の範囲で混合したが、ダイラタンシー性は起こらなかった。またシェイク後サンプル瓶内壁へのゲル状物の付着も観察されなかった。結果を表2に示す。
【0039】
(表2)

イオン性基モル比=混合液中の(B成分イオン当量/A成分イオン当量)、ダイラタンシー強度=シェイク後粘度/シェイク前粘度、総高分子濃度;g/mL











【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)及び(B)、
(A)イオン性基密度が 2meq/g以上である水溶性イオン性高分子
(B)イオン性基密度が 1meq/g以下であり、(A)とは反対のイオン性である水溶性イオン性高分子を含有することを特徴とするダイラタンシー性組成物。
【請求項2】
(B)成分に由来するイオン性基のイオン当量をb meq、(A)成分に由来するイオン性基のイオン当量をa meqとしたとき、
0.01≦ b/a ≦1.3
であることを特徴とする請求項1記載のダイラタンシー性組成物。
【請求項3】
(B)の水溶性イオン性高分子の重量平均分子量が50万以上であることを特徴とする請求項1あるいは2記載のダイラタンシー性組成物。

【公開番号】特開2010−95636(P2010−95636A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268032(P2008−268032)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【Fターム(参考)】