説明

水溶性切削油剤および水溶性切削油剤の腐敗防止方法

【課題】腐敗し難い水溶性切削油剤および水溶性切削油剤の腐敗防止方法の提供。
【解決手段】原水3を常温・常圧でザ・バイオウォーター1に通して、制菌水4を得る。原水3は、水道水や蒸留水である。水溶性切削油剤原液5と制菌水4とを規定の比率で混合して、水溶性切削油剤6を得る。水溶性切削油剤原液5と制菌水4とを混合するときの重量比は、例えば1対9である。ザ・バイオウォーター1は、セラミックでなる複数の近似遠赤外線放射セラミック盤を筒の中に配設し、そのセラミック盤に原水を接触させ、セラミックの作用により原水を活性化することにより、長期にわたって腐敗し難い水、即ち制菌水を生成する装置である。この制菌水を基剤用の水として用い、制菌水で水溶性切削油剤原液を希釈することにより、長期にわたって腐敗し難い水溶性切削油剤を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水溶性切削油剤および水溶性切削油剤の腐敗防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切削油剤は、金属の切削加工の際、潤滑作用により工具と被削材の表面を潤滑するとともに、冷却作用により加工面の精度の向上と工具寿命の延長を図るための油剤である。切削油剤には、非水溶性切削油剤と水溶性切削油剤とがある。水溶性切削油剤は、難燃性、安価、使用容易などの利点により、広く使用されている。JISK2241に規定されており、鉱油、界面活性剤、添加剤および基剤用の水から成っている。切削油剤の使用環境は、温度・水分・栄養源の3要素において、微生物が生育,繁殖するための好条件にあるので、多量の水を含有する水溶性切削油剤は、微生物の繁殖によって腐敗し易い。
【0003】
腐敗した水溶性切削油剤は、悪臭を発生して、工場内の作業環境を悪化させ、また工場周辺地域の公害問題にまで発展することもある。さらに、腐敗により水溶性切削油剤が濁ると、ヘドロ状物質が生成するので、ヘドロ状物質がコックやフィルタの目詰りを起こすことがある。腐敗した水溶性切削油剤の潤滑作用は、低下するので、その切削油剤で切削加工を行うと、切粉(きりこ)が切削工具(バイト)に付着し、切削精度が低下する。また、腐敗した水溶性切削油剤でワークと切削工具との接触面を潤滑しながら切削を行うと、切粉が仕上がったワーク(仕上がり品)にも付着し、取れ難く、厄介で作業能率の低下を招いていた。さらに、潤滑作用の低い切削油剤で切削加工を行うと、切削工具の温度が上昇し、切削工具の切削性能が低下し、ひいては切削精度の低下をもたらす。そこで、水溶性切削油剤の腐敗を防止することは、産業・工業上重要な課題である。従来、水溶性切削油剤の腐敗を防止するために、各種の提案がなされている。
【0004】
特開平7−179880(特許文献1)の「水溶性切削油剤剤の腐敗防止方法」では、使用した切削油剤中の懸濁物を分離,除去し、清澄化した切削油剤中の微生物の活性が低減するよう温度および水素イオン濃度Phを調整し、加圧処理される。特開平5−050355(特許文献2)の「切削油の供給装置」では、切削油原液供給装置,水供給装置,水素イオン濃度向上剤供給装置,防腐剤供給装置を設置し、最適混合,最適添加を図って,腐敗防止を図っている。
【特許文献1】特開平7−179880
【特許文献2】特開平5−050355
【特許文献3】特開2000−107752
【特許文献4】特開2000−301168
【特許文献5】特開平10−005751
【特許文献6】特開平11−033541
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に開示された前述の水溶性切削油剤の腐敗防止方法についてはいくつかの課題がある。
(1) 設備費用が高い。
(2) メンテナンスが難しい。
(3) トラブル発生時、補修に手間がかかる。
(4) 油剤の腐敗が十分に防止されたと言い難い。
(5) 化学薬品を使うので、環境を汚染するおそれがある。
そこで、本発明の目的は、腐敗し難い水溶性切削油剤および水溶性切削油剤の腐敗防止方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の各課題を解決するために、本発明は次の手段を提供する。
【0007】
(1)基剤用の水で水溶性切削油剤原液を希釈してなる水溶性切削油剤において、
前記基剤用の水が制菌水であることを特徴とする水溶性切削油剤。
【0008】
(2)前記制菌水は、水道水をセラミックに触れさせ、物性を改変させることにより制菌能力を付与された水であることを特徴とする前記(1)に記載の水溶性切削油剤。
【0009】
(3)基剤用の水で水溶性切削油剤原液を希釈してなる水溶性切削油剤の腐敗防止方法において、
前記基剤用の水を制菌水とすることを特徴とする水溶性切削油剤の腐敗防止方法。
【0010】
(4)前記制菌水は、水道水をセラミックに触れさせ、物性を改変させることにより制菌能力を付与された水であることを特徴とする前記(3)に記載の水溶性切削油剤の腐敗防止方法。

【発明の効果】
【0011】
上記本発明の水溶性切削油剤又はその腐敗防止方法を採用することにより、次のような効果が得られる。
(1)従来行なわれてきた各種の分離・精製設備が不要であり、水溶性切削油剤を製造するための波長変換機能付きセラミックは、安価であるから、本発明の水溶性切削油剤又はその腐敗防止方法の採用は、設備に関する経済性において優れている。
(2)本発明の水溶性切削油剤の製造およびその腐敗防止方法の適用は、水素イオン濃度向上剤や防腐剤の添加を要しないので、安全,安心で,環境保全上優れている。
(3)本発明の水溶性切削油剤を製造するためには、波長変換機能を有するセラミックが用いられるが、そのような波長変換機能付きセラミックは、例えば本願の出願人から販売されている水改質装置「ザ・バイオウォーター」の機能部材であり、一度設置すると、10年間メンテナンスフリーであり、機能維持のための人件費も補修費なども掛からず、経済性に優れている。
(4)水溶性切削油剤の腐敗が起こり難いので、切削油剤の潤滑性能および冷却性能が維持され、切削精度が向上し、また、水溶性切削油剤の腐敗によるヘドロ状物質が生成し難いので、ヘドロ状物質がコックやフィルタの目詰りを起こすことも少なく、水溶性切削油剤の腐敗による潤滑作用の低下が起こり難いので、切削工具(バイト)及び仕上がり品に付着する切粉(きりこ)が低減し、作業能率が向上する。
(5)休日、祭日などの工場休止日の前には、従来は水溶性切削油剤の腐敗を避けるために切削装置や工具の洗浄をしていたが、本発明の採用によりその洗浄の必要がなくなり、切削装置や工具の手入れが簡単で済む。
(6)水溶性切削油剤の腐敗臭の発生がなくなり、工場の環境が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の第1の実施の形態である水溶性切削油剤を製造する方法の工程を示す工程図である。図1の工程では、原水3を常温・常圧でザ・バイオウォーター1に通して、制菌水4を得る。原水3は、水道水や蒸留水である。次に、水溶性切削油剤原液5と制菌水4とを規定の比率で混合して、水溶性切削油剤6を得る。水溶性切削油剤原液5と制菌水4とを混合するときの重量比は、例えば1対9である。水溶性切削油剤6における水成分の含有率は、百分率で50%〜95%の範囲にある。切削油剤原液6は、油性剤、界面活性剤、極圧剤、さび止め剤でなる。油性剤としては、脂肪酸塩、多価アルコールの部分エステル等がある。界面活性剤としては、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレンモノアルキルフェニルエーテル、脂肪酸塩、スルホネート類等がある。極圧剤としては、ポリオキシエチレンリン酸エステル等がる。また、さび止め剤としては、アミン類、リン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、ほう酸塩、亜硝酸塩等がある。ザ・バイオウォーターは、水道水を飲用に適した活性水に変換するための活性水製造装置として本願出願人が製造・販売している装置の名称であり、本願出願人がその活性水製造装置に使用している商標である。
【0013】
図6は、特開2000−107752(特許文献3)に[図1]として図示された「水の活性化装置」の分解斜視図である。図7は、その特許文献3に[図2]としてに示された衝当羽の平面図である。上記図1のザ・バイオウォーター1の基本的な構造は、この図6の水の活性化装置と同じである。その水の活性化装置の構成、作用および効果については、特許文献3の段落0005から0009に記載がある。
【0014】
その構成については、その段落0005から0007に次のように記載されている。
[特許文献3の段落0005−0007]
水道管などの給水管(図示せず。)に接続する入力側接続口(1)と出力側接続口(2)をフランジ(3)、(4)を介して筒本体(5)の鍔部(6)にボルト(7)、ナット(8)により締着した水流自在な筒体(9)と、該筒体(9)の内部に装填する人工電気石よりなる近似遠赤外線放射セラミック盤群(10)とよりなり、近似遠赤外線放射セラミック盤群(10)は、両接続口(1)、(2)の基端部の中央部に架設した軸受板(11)、(12)に設けた中心軸(13)にスペ−サ−(14)を介して多数の近似遠赤外線放射セラミック盤(15)、(15)…を回転自在に設置しており、これら近似遠赤外線放射セラミック盤(15)、(15)…は多数の流通小孔(16)、(16)…を設けると共に、その入力側の側面に複数枚の衝当羽(17)、(17)…を設けて水流の衝当によって近似遠赤外線放射セラミック盤(15)、(15)…を回転するようにしたものである。人工電気石は、カオリンと酸性白土を主材料とし、金属釉薬を調合し、表面に塗布して高温焼成して作ったものを使用すると良い。図中(18)はOリング、(19)はワッシャ−。
【0015】
その作用については、その段落0008に次のように記載されている。
[特許文献3の段落0008]
これを使用するには先ず入力側接続口(1)と出力側接続口(2)を給水管に接続し、入力側接続口(1)より水が侵入することにより、水はセラミック盤(15)、(15)…に接触しながら流通小孔(16)、(16)…を通過すると共に、衝当羽(17)、(17)…に激しく衝当させてセラミック盤(15)、(15)…を回転させ、水を散流、渦流或は迷流させてセラミック盤(15)、(15)…との接触を可及的に増大させ、セラミック盤(15)、(15)…から放射する近似遠赤外線は常時5ミクロンから13ミクロンの波長を放出し、水中の陽、陰イオンに反応する。
【0016】
その効果については、その段落0009から0010に次のように記載されている。
[特許文献3の段落0009−0010]
給水管に接続する入力側接続口と出力側接続口をフランジを介して設けた水流自在な筒体と、該筒体の内部に装填する人工電気石よりなる近似遠赤外線放射セラミック盤群とよりなり、近似遠赤外線放射セラミック盤群は、筒体の中心軸にスペ−サ−を介して多数の近似遠赤外線放射セラミック盤を回転自在に設置しており、これら近似遠赤外線放射セラミック盤は多数の流通小孔を設けると共に、その入力側の側面に衝当羽を設けて水流の衝当によって近似遠赤外線放射セラミック盤を回転自在としたので、水を散流、渦流或は迷流させてセラミック盤(15)、(15)…との接触を可及的に増大させ、セラミック盤(15)、(15)…から放射する近似遠赤外線は水中の陽、陰イオンに反応し、・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 塩素化合物、次亜塩素酸、臭い物質等のコロイドを分解し、ミネラル成分又はイオンに置換され、水和化又は分子化されことにより活性化され、生活用水は勿論のこと農業用水、養殖用水、工業用水等に使用すればその目的にあった有効な効果を発揮し、ことに飲料水としては臭いや、有害物質の分解、除去等によりのみやすくなり、植物の成長を促し、養殖においては動物の成長を促進する効果がある。更にセラミック盤の水流による回転によって水に含まれているミネラル等はセラミック盤群に付着しにくく、ミネラル成分等は水和化されて放出される。又赤錆対策としても有効で、発生しにくいばかりか徐々に減少していく傾向が認められた。
【0017】
上述の特許文献3に記載の水の活性化装置では、セラミック盤(15)、(15)…が5ミクロンから13ミクロンの波長の近似遠赤外線は放射することが記載されている。ある種のセラミックが、熱伝導、輻射又は対流により伝達された外部エネルギーを遠赤外線に変換する波長変換作用を有することは、よく知られており、例えば、特開2000−301168(特許文献4)の段落0011−0015や、特開平10−005751(特許文献5)の段落0024−0030には、水中にて遠赤外線を放射するセラミックが例示されている。また、特開平11−033541(特許文献6)には、特許文献3と同様な原理の「生活用水の活性化装置」が開示され、その段落0005−0006には、特許文献3と同様なセラミックに水道水を触れさせ、セラミックから輻射される近似遠赤外線を水道水に作用させ、水道水を活性化する技術が記載されている。
【0018】
ザ・バイオウォーター1において、セラミック盤(15)の数は図6と同じく8枚、セラミック盤(15)の径は114mm、筒本体(5)の内径は118mm、入力側接続口(1)より流入する水の流量は1分間約2リットルである。このザ・バイオウォーター1内でセラミック盤(15)に触れ、出力側接続口(2)から取り出される水は制菌能力のある水、即ち図1の制菌水である。本発明になる水溶性切削油剤は、水溶性切削油剤原液をその制菌水で希釈してなる。制菌水の制菌能力については、実施例1および実施例2を挙げて後に説明するが、その説明に先立って、ザ・バイオウォーター1により処理して得た制菌水は、その物性において図1の原水(水道水)とは明確に相違することを次に説明する。以下説明で、処理水とはザ・バイオウォーター1により処理して得た水、即ち図1の制菌水のことであり、無処理水とはザ・バイオウォーター1により処理する前の水(図1の原水)のことである。
【0019】
図2は、処理水および無処理水の紫外・透過スペクトルを示すグラフである。このグラフは、神奈川県産業技術センターで行った試験に基づき、同センターで作成されたものである。本図に示されるように、処理水および無処理水のいずれにおいても250nm以下に吸収が観測された。250nm以下の紫外部の吸収を示すイオン種として水道水中に含まれる物は、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオンが主であり、その他として微量なケイ酸イオンがある。各イオン溶液の透過スペクトルを測定した結果、図2のように硝酸イオンが水道水(無処理水)の紫外吸収スペクトルの状態に最も近いことが分かった。硫酸イオンは観測波長域に吸収がなく、炭酸イオンは吸収ピークが190nm以下のところにあることが分かる。このことから、紫外スペクトルの吸収は主に硝酸イオンによるものと考えられる。水道水(無処理水)と処理水との紫外・透過スペクトルの相違は、図2では240nm近傍において僅かに表れている。
【0020】
図3は、図2に僅かに表れている無処理水と処理水との紫外・透過スペクトルの相違を明瞭にするために、処理水の透過率から無処理水の透過率を差し引いた値を示すグラフである。本図から、処理水においては、240nm〜250nmを中心とする波長範囲において、無処理水には見られない吸収、即ち処理による新たな吸収が起きていることが分かる。この吸収は、新たな化合物によるものであり、カルボニル基による吸収と考えられる。カルボニル基を有する新たな化合物は、無処理水がザ・バイオウォーター1においてセラミックと接触したこと、又はセラミックから輻射される遠赤外線により、無処理水中の溶存有機化合物の一部が酸化されたことにより、生成されたものと推測される。図3から明らかなように、処理水の物性は無処理水の物性とは相違している。
【0021】
図4(A)は、処理水の採水後0.5時間後(0.5h)および5時間後(5h)における17酸素−NMR(核磁気共鳴)スペクトルの測定値を示すグラフであり、図4(B)は無処理水の採水後0.5時間後および5時間後における17酸素−NMRスペクトルの測定値を示すグラフである。図4(A),(B)のグラフは、神奈川県産業技術センターで行った試験に基づき、同センターで作成されたものである。処理水および無処理水いずれについても、スペクトルの半値幅は採水後0.5時間後よりも5時間後の方が狭くなっている。半値幅は、スペクトルのピーク高さの1/2の高さでの幅であり、横緩和時間に比例する。横緩和時間は、分子の動き易さに対応する。また、スペクトルのピークも、採取後0.5時間後よりも5時間後に測定したスペクトルの方が高くなっている。図4も、図3と同じく、処理水の物性は無処理水の物性とは相違することを示している。
【0022】
図5は、処理水および無処理水の17酸素−NMRスペクトル線幅の経時変化を示す図である。本図は、処理水は無処理水に比べ、線幅の狭まりが速く、線幅の減少曲線も一定の減衰を示している。無処理水は、線幅の狭まりが遅く、ばらつきも見られる。半値幅HWは近似的に次式で表される。
HW=a + b×exp(−ct) ・・・・・(1)
ここで、a,bは周波数の単位を有し、cは時間の逆数の単位を有している。aは定常状態(十分時間が経過した状態)の線幅、bは緩和の初期状態の線幅を規定する係数である。17酸素−NMRスペクトル線幅の減衰を特徴づけている係数はcである。図5の下部に示す表は、処理水および無処理水に関する式(1)の各係数を示す。この表に現れているように、処理水のスペクトル線幅は無処理水のスペクトル線幅に比べ、おおよそ4倍の速さで減少している。水分子における17酸素−NMRスペクトル線幅を決定する主な因子は、分子の運動状態、即ち動き易さと、水素イオン濃度との2つである。図5も、図3および図4と同じく、処理水の物性は無処理水の物性とは相違することを示している。
【0023】
次にこの制菌水の制菌能力の例を実施例1および実施例2として上げ、更にその制菌水を基剤用の水とし、水溶性切削油剤原液5を該制菌水で希釈してなる水溶性切削油剤6の防腐能力の例を実施例3として上げる。
【実施例1】
【0024】
神奈川工科大学において行った3種類の水の制菌の実験結果について述べる。
試験水は制菌水A1(図1の制菌水4に対応)、水道水B1及び蒸留水C1である。制菌水A1は、水道管の蛇口から水道水を10分間流した後、その蛇口にザ・バイオウォーター1を取付け、1分間約2リットルの流量で10分間水道水を流した後、ザ・バイオウォーター1の水流出口から採取した水である。水道水B1は、その水道管の蛇口から採取した水である。蒸留水C1は、市販されていた蒸留水である。
試験方法は、次の通りである。まず、試験水A1,B1及びC1を減菌した広口ビーカーにそれぞれ500ml(ミリリットル)ずつ採取し、互いに3メートル離して室内でオープンに静置した。その後、毎日、試験水を少量ずつサンプリングして、一般生菌数を測定した。寒天培地には、標準寒天培地(栄研化学製)を用いて、コロニーカウント法によって数を数え、表1のデータを得た。表1のデータが示すとおり、制菌水A1には菌の発生は全くなかった。
[表1]

【実施例2】
【0025】
財団法人北里環境科学センターにて行ったレジオネラ菌およびO−157菌に対する制菌実験結果について述べる。試験水は制菌水A2(図1の制菌水4に対応)及び水道水B2である。これら試験水の採取方法は、前記実験1の場合と同じである。
試験方法は次のとおりである。レジオネラ菌(ATCC#33153)及びO−157(ATCC#33150)を、A2及びB2が各1リットル入ったガラス瓶中に規定量添加し、3メートル離して置いた。その後、開始日,1日目,2日目の3回、試験水中の各菌の定型的集落数(CFU/ml)を測定した。表2はその測定データである。表2のデータは、本発明の高エネルギー水は、水道水に比べて、非常に優れた制菌力を示した。
[表2]

【実施例3】
【0026】
H製作所においては、従来、水道水によって切削油剤原液を希釈して、水溶性切削油剤をつくり、工作機械に使用していたが、水溶性切削油剤を工作機械に残したまま2日程度放置すると、水溶性切削油剤が腐敗し、工場に腐敗臭が漂い、工場の作業環境を悪化させていた。そこでザ・バイオウォーターを設置して、制菌水4を作り、制菌水4によって切削油剤原液を希釈して、水溶性切削油剤をつくり、この水溶性切削油剤を工作機械に使用したところ、顕著な差が見出された。即ち、水溶性切削油剤を工作機械に残したまま2日程度放置しても、水溶性切削油剤が腐敗せず、工場に腐敗臭が漂うことも無くなり、工場の作業環境が改善した。また、工場が2日間の休日の時も、いちいち装置や工具の洗浄の必要(従来)が全くなくなり、人件費と手間が大幅に低減した。さらに、切削工具(バイト等)に切粉(きりこ)がほとんど付着せず、微細加工が可能となった。冷却性能も良くなり、発熱が抑えられた。全体として、本実施の形態の水溶性切削油剤を採用したことにより、工場の生産性が著しく向上した。
【0027】
なお、以上には、理解を容易にするために、本発明の具体的な例を挙げて詳しく説明したが、本発明がこれらの具体例に限定されるものではないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
日本国内だけで、水溶性切削油剤原液は年間30万キロリットル使用されている。水溶性切削油剤は火災防止,安価,便利性,潤滑性,冷却性の面より益々重要で、日本および世界で広く、金属加工油として伸びてゆくと思われる。本発明による水溶性切削油剤は、容易に製造でき、従来のものに比し、腐敗し難いので、工場の環境改善に寄与し、潤滑性、切削性および冷却性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施の形態である水溶性切削油剤を製造する方法の工程を示す工程図である。
【図2】処理水および無処理水の紫外・透過スペクトルを示すグラフである。
【図3】処理水の透過率から無処理水の透過率を差し引いた値を示すグラフである。
【図4】処理水および無処理水に関し、水の採水後0.5時間後(0.5h)および5時間後(5h)における17酸素−NMR(核磁気共鳴)スペクトルの測定値を示すグラフである。
【図5】処理水および無処理水の17酸素−NMRスペクトル線幅の経時変化を示す図である。
【図6】特開2000−107752(特許文献3)に[図1]として図示された水の活性化装置の分解斜視図である。
【図7】その特許文献3に[図2]として示された衝当羽の平面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ザ・バイオウォーター
3 原水
4 制菌水
5 水溶性切削油剤原液
6 水溶性切削油剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基剤用の水で水溶性切削油剤原液を希釈してなる水溶性切削油剤において、
前記基剤用の水が制菌水であることを特徴とする水溶性切削油剤。
【請求項2】
前記制菌水は、水道水をセラミックに触れさせ、物性を改変させることにより制菌能力を付与された水であることを特徴とする請求項1に記載の水溶性切削油剤。
【請求項3】
基剤用の水で水溶性切削油剤原液を希釈してなる水溶性切削油剤の腐敗防止方法において、
前記基剤用の水を制菌水とすることを特徴とする水溶性切削油剤の腐敗防止方法。
【請求項4】
前記制菌水は、水道水をセラミックに触れさせ、物性を改変させることにより制菌能力を付与された水であることを特徴とする請求項3に記載の水溶性切削油剤の腐敗防止方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−45026(P2008−45026A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221770(P2006−221770)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【出願人】(502370281)都市拡業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】