説明

水溶性成分除去装置

【課題】ホルムアルデヒドなどの空気中の水溶性成分を連続的に除去できる水溶性成分除去装置を提供すること。
【解決手段】吸込口1と吹出口2を連通する風路内に、回動可能な湿潤フィルタ4と、水を貯めるためのトレイ5と、前記湿潤フィルタ4に水を供給するための水タンク6と、前記湿潤フィルタ4に空気を送るファン7と、水に溶解したガス成分を電気分解する電極8とを備えた水溶性成分除去装置とした。湿潤フィルタ4で水溶性成分を捕集することにより、水の噴霧方式に比べて静かな装置とすることができる。また、隔壁9などによって、トレイ5の水に含まれる水溶性成分に濃度差を発生させ、水溶性成分の濃度が高い水域10に電極8を備えることにより、水溶性成分の除去効率を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アンモニア、アルコールなどの空気中の水溶性成分を連続的に除去する水溶性成分除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室内空気には、調理で発生するアセトアルデヒドなどの調理臭、野菜や発酵食品等から発生するエタノールや酢酸などの芳香臭、建材や家具等から発生するホルムアルデヒドやアセトンなどの化学物質が存在している。これらの成分は、人に不快感を与え、長期間吸引すると頭痛などの障害を起こす可能性があり、室内空気から除去することが望まれている。前記成分は水に溶解する性質をもっており、室内空気を水と接触させることによって除去が可能である。
【0003】
従来、この種のガス処理方法として、ホルムアルデヒドを含む排ガスを洗浄塔で吸収させた洗浄液の一部または全量を、オゾン酸化によって酸化分解して除去し、その液を洗浄塔へ送り返して循環使用するものが知られていた。すなわち、ホルムアルデヒドは水によく溶解するため、洗浄塔の上部に設置された液分配管から噴霧される水と排ガスが気液接触することにより、排ガス中に含まれるホルムアルデヒドが水に吸収除去される。次いで、ホルムアルデヒドを吸収した水が、ポンプによってオゾン酸化槽に送られ、オゾンと接触反応することによって除去されるものであった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、従来、燃焼排ガスより生じた結露水を利用して加湿を行う加湿装置として、加湿水に含まれるホルムアルデヒドやアセトアルデヒドやケトン類を電気分解によって分解する方法が知られていた。図3に示すように、石油温風機101は、オイルタンク102から送油された灯油を、バーナー103で燃焼し、熱交換器104と熱交換パイプ105を経由して屋外に排気するとともに、ファン106によって熱交換器104と熱交換パイプ105の外表面に空気を送り、温風による暖房を行うものである。タンク107に集められた結露水は、加湿パイプ108を介して加湿皿109へ送られ、ここで蒸発されて加湿口110から室内へ水蒸気が送られ、加湿される。ここで、燃焼ガスを結露させた結露水には、微量のホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ケトン類などが含まれており、これらの成分が水蒸気とともに室内に拡散すると、不快あるいは刺激のある臭気によって使用者に不快感を与えてしまうという課題があったが、タンク107に陽極と陰極からなる電気分解装置を備えることによって、臭気の分解除去を行うものであった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭53−15260号公報
【特許文献2】実公昭60−38097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のガス処理方法では、液分配管から噴霧される水と排ガスの気液接触によるホルムアルデヒドの吸収効率が十分ではなく、より効率的なホルムアルデヒド除去方法が求められていた。また、水を噴霧する際やポンプの送液時には騒音が発生しやすく、より作動音の静かなホルムアルデヒド除去方法が求められていた。また、オゾンによる酸化反応では、反応しきれなかったオゾンが気中に放出され、配管の腐食やオゾン臭による不快感などが発生しやすいという課題があった。
【0007】
また、従来の加湿装置では、石油温風機の燃焼ガスを結露させた加湿水に含まれるアルデヒド類を電気分解することを目的としており、空気中のアルデヒドなどの水溶性成分を積極的に除去する目的に転用しても十分な効果は得られなかった。
【0008】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、空気中のアルデヒド類などの水溶性成分を効率的に除去できる水溶性成分除去装置を提供することを目的とする。また、作動音の静かな水溶性成分除去装置を提供することを目的とする。また、配管の腐食やオゾン臭による不快感などが発生しない水溶性成分除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明は、空気の吸込口と吹出口を有する本体と、この吸込口と吹出口を連通する風路内に、前記吸込口より吸い込んだ空気中の水溶性成分を溶解させるための湿潤フィルタと、前記湿潤フィルタを配置し水を貯めるためのトレイと、前記湿潤フィルタに水を供給するための水供給手段と、前記湿潤フィルタに空気を送る送風手段と、前記トレイに前記湿潤フィルタに溶解させた水溶性成分が溶解したガス成分を電気分解する電極とを備えた水溶性成分除去装置であって、前記湿潤フィルタが回動可能であり、前記湿潤フィルタの少なくとも一部がトレイの水に浸漬され、前記トレイの水に含まれる水溶性成分に濃度差を発生させるとともに、水溶性成分の濃度が高い水域に、前記電極を備えたことを特徴としたものである。これにより所期の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、空気中のアルデヒド類などの水溶性成分を効率的に除去できる水溶性成分除去装置を提供することができる。また、作動音の静かな水溶性成分除去装置を提供することができる。また、配管の腐食やオゾン臭による不快感などが発生しない水溶性成分除去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1の水溶性成分除去装置を示す概略断面図
【図2】本発明の実施の形態2の水溶性成分除去装置を示す概略断面図
【図3】従来の加湿装置の一例を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の水溶性成分除去装置は、空気の吸込口と吹出口を有する本体と、この吸込口と吹出口を連通する風路内に、水溶性成分を溶解させるための湿潤フィルタと、前記湿潤フィルタを配置し水を貯めるためのトレイと、前記湿潤フィルタに水を供給するための水供給手段と、前記湿潤フィルタに空気を送る送風手段と、水に溶解したガス成分を電気分解する電極とを備えた水溶性成分除去装置であって、前記湿潤フィルタが回動可能であり、前記湿潤フィルタの少なくとも一部がトレイの水に浸漬され、前記トレイの水に含まれる水溶性成分に濃度差を発生させるとともに、水溶性成分の濃度が高い水域に、前記電極を備えたことを特徴としたものである。
【0013】
例えば、網状のフィルタを、微細な開口を有するウレタン発泡体に変更することによって、表面積を増加させて気液接触面積を向上させることができる。また、水をフィルタ上に安定的に保持できるので、気液接触時間を長くすることも可能である。一方、水を噴霧する方法では、水滴の大きさが数mm程度で表面積が小さいため、気体との接触効率が悪い。水を高圧ノズルで粉砕することで、大きさを0.05〜0.1mm程度まで小さくすることができるが、この場合、水を破砕することによる騒音が発生してしまうという課題があった。また、水を噴霧する方法では、噴霧された水は重力の作用で短時間に落下してしまうため、気液接触時間を調節するには装置を大型化して落下時間を長くする必要があり、小型の水溶性成分除去装置を得ることは困難であった。
【0014】
従って、湿潤したフィルタに水溶性成分を含む空気を通過させる方法により、水を噴霧する従来の気液接触方式に比べてホルムアルデヒドなどの水溶性成分との接触効率を向上させ、より効率的に水溶性成分を除去できるという効果を得ることができる。湿潤フィルタ上の水に捕集した水溶性成分は、湿潤フィルタがトレイの水に浸漬された瞬間にトレイの水に移行し、新たに湿潤フィルタに、水溶性成分をほとんど含まない水が補充されることによって、連続的に水溶性成分を捕集することができる。トレイの水に移行した水溶性成分は、電極によって電気分解される。電極は、水溶性成分の濃度が高い水域に配置されているため、電気分解の効率が良いという効果を得ることができる。また、湿潤フィルタに空気を通過させる方式なので、水の噴霧やポンプでの送液をする必要がなく、作動音が静かであるという効果を得ることができる。また、オゾン等の有臭の酸化性物質を使用しないため、配管の腐食やオゾン臭による不快感などが発生しないという効果を得ることができる。
【0015】
また、湿潤フィルタの下方に隔壁を備え、前記隔壁によって水に含まれる水溶性成分に濃度差を発生させることを特徴としたものである。隔壁によってトレイの水の移動を制限することができ、水に含まれる水溶性成分に濃度差を発生させることができる。
【0016】
また、水に含まれる水溶性成分の濃度が低い水域に、水供給手段から水を供給することを特徴としたものである。湿潤フィルタに空気を連続的に送風すると、水の蒸発によってトレイの水量が減少する。水供給手段から水溶性成分を含まない水を、水溶性成分の濃度が低い水域に補充することにより、希釈して水の水溶性成分濃度をさらに低下させることができる。水溶性成分の濃度の低い水域の水を湿潤フィルタに供給することによって、空気中のホルムアルデヒドなどの水溶性成分をより多く除去することができる。
【0017】
また、湿潤フィルタの回動方向が、吸込空気に対して下流側から上昇し、上流側で水没する向きであることを特徴としたものである。このような回動方向にすることにより、水溶性成分を含む空気は、わずかに水溶性成分が溶解した湿潤フィルタを通過した後、水溶性成分をほとんど含まない湿潤フィルタを通過することになるため、水から水溶性成分が再揮発する恐れが少なく、捕集効率がよいという効果を得ることができる。また、水溶性成分を含む空気が、水溶性成分の濃度が高い水域に、湿潤フィルタを介さず直接接触する経路が考えられるため、さらに捕集効率が向上するという効果を得ることができ、水溶性成分を高濃度に含む水を電極で電気分解することができる。
【0018】
また、湿潤フィルタを乾燥させないようにしたことを特徴としたものである。湿潤フィルタを乾燥させないための方法として、湿潤フィルタの表面を親水性にして水を保持しやすくする方法、湿潤フィルタの表面に凹凸を設けて凹凸部に水を保持することによって湿潤フィルタの水保持容量を増加させる方法、湿潤フィルタの回動速度を速めて湿潤フィルタが頻繁にトレイの水と接触するようにする方法などが挙げられる。フィルタが常に水で湿潤した状態になっていれば、水溶性成分を効率よく水に吸収させ、除去できるという効果を有する。
【0019】
また、空気が湿潤フィルタを2回以上通過することを特徴としたものである。水溶性成分を含む空気が、湿潤フィルタを2回通過するため、下流側に未捕集の水溶性成分が流出しにくいという効果を得ることができる。
【0020】
また、湿潤フィルタが円筒形であることを特徴としたものである。湿潤フィルタを円筒形として回動させることにより、簡易な構造で連続的に水溶性成分を捕集することができる。また、回動軸に対して対称な構造となるため、湿潤フィルタ全体に均一な負荷がかかり、湿潤フィルタが変形しにくいという効果を得ることができる。
【0021】
また、水に含まれる水溶性成分の濃度が高い水域のトレイの水深が、濃度の低い水域の水深よりも浅いことを特徴としたものである。湿潤フィルタ上の水に捕集された水溶性成分は、湿潤フィルタがトレイの水に浸漬された瞬間にトレイの水に移行するため、水面に近づくほど水溶性成分の溶解量が多いという傾向が生まれる。水溶性成分の溶解量が多い部分の水深を相対的に浅くし、そこに水溶性成分を電気分解する電極を備えることにより、さらに効率よく水溶性成分の除去を行うことができる。
【0022】
また、水に含まれる水溶性成分の濃度が高い水域の水量が、濃度の低い水域の水量よりも少ないことを特徴としたものである。水に含まれる水溶性成分の濃度が高い水域の水量を少なくすることにより、小さな電極面積でも効率よく水溶性成分の電気分解を行うことができる。
【0023】
また、電極の周囲に保護カバーを備えたことを特徴としたものである。湿潤フィルタに空気を送る送風手段によって、水溶性成分とともにホコリが装置の内部に吸い込まれる。ここで、電極の周囲に保護カバーを備えることにより、ホコリが電極に付着しないという効果を得ることができ、ホコリによる電極の故障を防止することができる。また、使用者が誤って電極に触れて破損する恐れがないという効果を得ることができる。
【0024】
また、電極の近傍に、水を加熱する加熱手段を備えたことを特徴としたものである。ホルムアルデヒドは水溶液中では重合してパラホルムアルデヒドの状態になっており、この重合体であるパラホルムアルデヒドは加熱するとホルムアルデヒド単体に戻るという特性を有している。加熱手段によりホルムアルデヒドが溶解した水を加熱することにより、ホルムアルデヒドの重合度を低下させ、酸化除去反応の迅速化ができる。
【0025】
また、電極と加熱手段を一体化したことを特徴としたものであり、電極を加熱する際の熱伝導ロスが少なく、素早く電極を加熱することができるという作用を有する。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0027】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1の水溶性成分除去装置は、図1に示すように、空気の吸込口1と吹出口2を有する本体3と、この吸込口1と吹出口2を連通する風路内に、水溶性成分を溶解させるための湿潤フィルタ4と、前記湿潤フィルタ4を配置し水を貯めるためのトレイ5と、前記湿潤フィルタ4に水を供給するための水供給手段としての水タンク6と、前記湿潤フィルタ4に空気を送る送風手段としてのファン7と、水に溶解したガス成分を電気分解する電極8とを備えた水溶性成分除去装置である。前記湿潤フィルタ4は回動可能であり、前記湿潤フィルタ4の少なくとも一部はトレイ5の水に浸漬され、前記トレイ5の水に含まれる水溶性成分に濃度差を発生させるとともに、水溶性成分の濃度が高い水域に、前記電極8を備えている。また、湿潤フィルタ4の下方には隔壁9を備え、前記隔壁9によってトレイの水の自由な移動は制限されている。
【0028】
このような構成とすることにより、水を噴霧する気液接触方式に比べてホルムアルデヒドなどの水溶性成分との接触効率を向上させ、より効率的に水溶性成分を除去できるという効果を得ることができる。
【0029】
例えば、水を噴霧する方法では、水滴の大きさが数mm程度で表面積が小さいため、気体との接触効率が悪い。水を高圧ノズルで粉砕することで、大きさを0.05〜0.1mm程度まで小さくすることができるが、この場合、水を破砕することによる騒音が発生してしまうという課題があった。また、水を噴霧する方法では、噴霧された水は重力の作用で短時間に落下してしまうため、気液接触時間を調節するには装置を大型化して落下時間を長くする必要があり、小型の水溶性成分除去装置を得ることは困難であった。
【0030】
本実施の形態の、湿潤したフィルタに水溶性成分を含む空気を通過させる方法では、例えば、網状のフィルタを、微細な開口を有するウレタン発泡体に変更することによって、表面積を増加させて気液接触面積を向上させることができる。また、水をフィルタ上に安定的に保持できるので、気液接触時間を長くすることも可能である。また、水の噴霧やポンプでの送液をする必要がないため、水の破砕音や装置壁面への衝突音が発生せず、静かな装置とすることができる。また、湿潤フィルタを表面積の大きい形状に変更する、あるいは厚みを厚くすることによって、気液接触面積を向上させ、水溶性成分除去効率を向上させるという効果を得ることができる。
【0031】
湿潤フィルタ4は回動可能であり、湿潤フィルタ4の回動方向は、吸込空気に対して下流側から上昇し、上流側で水没する向きとなっている。このような回動方向にすることにより、吸込口1から吸い込まれた水溶性成分を含む空気は、わずかに水溶性成分が溶解した湿潤フィルタ4aの部分(図1の一点破線の左側)を通過した後、水溶性成分をほとんど含まない湿潤フィルタ4bの部分(図1の一点破線の右側)を通過することになるため、水から水溶性成分が再揮発する恐れが少なく、捕集効率がよいという効果を得ることができる。
【0032】
例えば、水溶性成分として、ホルムアルデヒドは水に非常によく溶けることが知られており、水への溶解度は55%である。また、ヘンリー定数は0.0341 Pa・m3/mol (25℃) と小さく、一度溶け込んだホルムアルデヒドは水から大気へ揮散され難くなっている。わずかに揮発するホルムアルデヒドも、水溶性成分をほとんど含まない湿潤フィルタ4bの部分(図1の一点破線の右側)を通過することによって捕集され、装置の吹出口からは清浄な空気が放出される。湿潤フィルタが、自重と同程度の水を保持することができると過程すると、半径5cmで幅10cm、厚み1cmのフィルタでは約304mlの水を保持でき、ホルムアルデヒドを167ml分吸収できることになる。
【0033】
湿潤フィルタ4aの部分で水に捕集された水溶性成分は、湿潤フィルタ4がトレイの水に浸漬された瞬間にトレイの水に移行し、水溶性成分の濃度が高い水域10を生成する。湿潤フィルタ4がさらに回動すると、水溶性成分の濃度が低い水域11を通過するため、水溶性成分をほとんど含まない水が補充されて、連続的に水溶性成分を捕集することができる。ここで、トレイの水は隔壁9によって自由な水の移動ができないため、湿潤フィルタの回動をつづけると、徐々に濃度差は大きくなっていくことになる。
【0034】
トレイの水に移行した水溶性成分は、電極8によって電気分解される。ここで、電極8は、水溶性成分の濃度が高い水域10に配置されているため、電気分解の効率が良いという効果を得ることができる。また、オゾン等の有臭の酸化性物質を使用しないため、配管の腐食やオゾン臭による不快感などが発生しないという効果を得ることができる。また、水溶性成分を含む空気が、水溶性成分の濃度が高い水域に、湿潤フィルタを介さずに直接接触する経路や湿潤フィルタに当たる前に水面に直接接触する場合が考えられるため、さらに捕集効率が向上するという効果を得ることができ、水溶性成分を高濃度に含む水を電気分解することができる。
【0035】
湿潤フィルタとしては一般的なフィルタ基材を使用でき、金属、プラスチック、合成樹脂繊維、天然繊維、木材、紙、ガラス、セラミックなどが挙げられ、好ましくは合成樹脂繊維や天然樹脂繊維やセラミックや紙である。
【0036】
湿潤フィルタの形状は、風が通過できる開口を有していれば特に制限はなく、板状、網状、ハニカム状、繊維状、ビーズ状、スリット状、発泡体形状などが使用できる。板状の湿潤フィルタであれば、板に孔を空けたパンチング形状、繊維を編みこんだ編物形状、繊維を接着した不織布形状など、開口を備えたものが好適である。板状であれば、板をプリーツ状に折ってフィルタの表面積を広げることによって圧力損失を低減させてもよい。立体的な編物形状として、表地と裏地、およびこの表地と裏地とを繋ぐ連結糸で構成されているダブルラッセル編地を用いてもよく、長期間にわたって高い保水効果を維持し、安定的に水溶性成分除去性能を得ることができる。
【0037】
送風手段としては、シロッコファンやターボファン、プロペラファンやクロスフローファン、ポンプなどを用いることができる。ファンを使用することで、風量、風速などを簡便に設定することができる。さらに、風の向きをかえるルーバーを用いてもよい。
【0038】
吸込口と吹出口を有した本体内に、ほこりを捕集する集塵フィルタを備えてもよい。集塵フィルタとしては、空気中のほこりや菌・カビなどを捕集することができれば特に問題はなく、網、繊維の編物・織物、不織布、ガラス繊維など一般的なフィルタ素材を利用することができる。
【0039】
電極8は、正極と負極の2つの電極を一対としており、トレイ5内の水に接するように配置されている。前記2つの電極は電源と接続されており、5〜20V程度の電圧をかけることによって、水溶性成分を電気分解することができる。ここで用いる電源は、直流または交流電圧を発生させることが可能な公知の電源を用いることができる。電源と電極は図示しない接点により着脱自在に接続され、トレイ5を本体3から外して洗浄をする際には、電極に電流が流れないようになっている。また、電極8は白金メッキチタン、パラジウムメッキチタン、フェライトの焼結体など公知の電極を用いることができ、形状、材質などは特に限定されない。
【0040】
電極8に電圧を印加すると、水の電解によって以下のような反応が起こる。
(陽極)2H2O → O2 ↑ + 4H+ + 4e-
4OH- → O2 ↑ + 2H2 + 4e-
(陰極)2H+ + 2e- → H2
2H2O + 2e- → H2↑ + 2OH-
【0041】
ここで、水中に溶解した水溶性成分として、たとえばホルムアルデヒド水溶液の場合、陽極では以下のような反応が起こる。
HCHO + H2O → HCOOH + 2H+ +2e-
HCHO + 2OH- → HCOOH + H2O + 2e-
HCOOH → CO2↑ + 2H+ + 2e-
HCOOH + 2OH- → CO2 + 2H2O +2e-
【0042】
同時に陰極では、以下のような反応が起こる。
HCHO + 2H+ + 2e- → CH3OH
HCHO + 2H2O + 2e- → CH3OH + 2OH-
CH3OH + 2H+ +2e- → CH4↑ + H2
【0043】
同様の反応経路で、ホルムアルデヒド以外にも、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、メタノールやエタノールなどのアルコール類、ぎ酸や酢酸などのカルボン酸の分解が起こり、水溶性成分が減少していく。
【0044】
水に含まれる水溶性成分の濃度が低い水域11には、水供給手段としての水タンク6を備えてもよい。水タンク6から水溶性成分を含まない水を、水溶性成分の濃度が低い水域11に補充することができ、希釈して水の水溶性成分濃度をさらに低下させることができる。水溶性成分の濃度が低い水域11の水を湿潤フィルタ4に供給することによって、空気中のホルムアルデヒドなどの水溶性成分をより多く除去することができる。
【0045】
ヘンリーの法則に従って、気相中の水溶性成分は、水中に溶解した濃度との相関関係によって水に溶け込んでいく。十分希薄な水溶液があれば、気相中の水溶性成分は効率よく水に溶解して気相中から除去されると考えられるため、湿潤フィルタを乾燥させないように装置を運転することが好ましい。フィルタが常に水で湿潤した状態にするためには、送風手段としてのファン7の回転数を制御して、湿潤フィルタ4を通過する風の量を変動させ、気化して失われる水の量を補充される水の量よりも少なくすればよい。また、湿潤フィルタ4が回動する際の回転数を変化させてもよい。
【0046】
また、空気が湿潤フィルタを複数回通過すれば、水溶性成分の除去量は増加していくと考えられ、少なくとも2回以上、空気が湿潤フィルタを通過させることが好ましい。これによって、下流側に未捕集の水溶性成分が流出しにくいという効果を得ることができる。
【0047】
湿潤フィルタは円筒形であってもよい。湿潤フィルタを円筒形として回動させることにより、簡易な構造で連続的に水溶性成分を捕集することができる。また、回動軸に対して対称な構造となるため、湿潤フィルタ全体に均一な負荷がかかり、湿潤フィルタが変形しにくいという効果を得ることができる。また、湿潤フィルタが板状である場合に比べて、円筒状であったほうが同一風量を通過させたときの湿潤フィルタ面風速を小さくすることができる。その結果、水供給手段から湿潤フィルタに供給された水と、空気中の水溶性成分との接触効率が良化するという効果を得ることができる。
【0048】
湿潤フィルタには抗菌剤や防カビ剤を添加してもよい。これによって、湿潤フィルタに除菌、防カビの効果が付与できるため、長期間使用しても湿潤フィルタに菌やカビが発生して汚染されることが無く、湿潤フィルタを清潔に保つことができる。抗菌剤は、湿潤フィルタの表面に分散でき、抗菌効果を得ることができるものであれば特に限定されず、公知の抗菌剤を添加してよい。このような抗菌剤として、ワサビなどの有機系の抗菌剤、銀・亜鉛・銅などの無機系の抗菌剤を用いることができる。
【0049】
電極8には、保護カバー12を備えてもよい。湿潤フィルタ4に空気を送る送風手段としてのファン7によって、水溶性成分とともにホコリが装置の内部に吸い込まれる。ここで、電極8の周囲に保護カバー12を備えることにより、ホコリが電極8に付着しないという効果を得ることができ、ホコリによる電極8の故障を防止することができる。また、使用者が誤って電極8に触れて破損する恐れがないという効果を得ることができる。保護カバーは、少なくとも水と空気が通過できる大きさの開口をもった一般的なものを利用でき、樹脂、金属のメッシュ状のものが好適である。
【0050】
(実施の形態2)
実施の形態2において、実施の形態1と同様の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0051】
本発明の実施の形態2の水溶性成分除去装置は、図2に示すように、空気の吸込口1と吹出口2を有する本体3と、この吸込口1と吹出口2を連通する風路内に、水溶性成分を溶解させるための湿潤フィルタ4と、前記湿潤フィルタ4を配置し水を貯めるためのトレイ5と、前記湿潤フィルタ4に水を供給するための水供給手段としての水タンク6と、前記湿潤フィルタ4に空気を送る送風手段としてのファン7と、水に溶解したガス成分を電気分解する薄膜電極13と、加熱手段としてのヒーター14とを備えた水溶性成分除去装置である。前記トレイ5には段差および傾斜が設けられており、水に含まれる水溶性成分の濃度が高い水域10のトレイ5の水深が、水溶性成分の濃度が低い水域11の水深よりも浅くなっている。
【0052】
トレイ5の底面には、薄膜電極13とヒーター14がトレイ5と一体となるように備えられている。薄膜電極13は、正極と負極の2つの電極を一対としており、トレイ5内の水に接するように配置されている。前記2つの電極は電源と接続されており、5〜20V程度の電圧をかけることによって、水溶性成分を電気分解することができる。
【0053】
また、ヒーター14も電源と接続されており、薄膜電極13および前記薄膜電極13の周囲の水を温めることができる。電源と電極は図示しない接点により着脱自在に接続され、トレイ5を本体3から外して洗浄をする際には、電極に電流が流れないようになっている。
【0054】
湿潤フィルタ4の水に捕集された水溶性成分は、湿潤フィルタ4がトレイの水に浸漬された瞬間にトレイの水に移行するため、水面に近づくほど水溶性成分の溶解量が多いという傾向が生まれる。水溶性成分の溶解量が多い部分の水深を相対的に浅くし、水溶性成分を電気分解する電極を備えることにより、さらに効率よく水溶性成分の除去を行うことができる。
【0055】
また、水に含まれる水溶性成分の濃度が高い水域10の水量が、隔壁9をはさんで接する水溶性成分の濃度が低い水域11の水量よりも少なくなっているため、薄膜電極13の電極面積を小さくしても効率よく水溶性成分の電気分解を行うことができるという効果を得ることができる。
【0056】
また、ホルムアルデヒドは水溶液中では重合してパラホルムアルデヒドの状態になっており、この重合体であるパラホルムアルデヒドは加熱するとホルムアルデヒド単体に戻るという特性を有している。例えば、日本国公開特許公報2008−264717号には、電気分解によるホルムアルデヒドの分解速度は、温度が高い方が速いことが記載されている。加熱手段によりホルムアルデヒドが溶解した水を加熱することにより、ホルムアルデヒドの重合度を低下させ、薄膜電極13の周囲で起こる電気分解反応の迅速化ができる。
【0057】
加熱手段としてのヒーターは、水を加温することができればよく、シーズヒーター、セラミックヒーター、ラバーヒーターなど、一般的なものを用いることができる。薄膜電極は、白金メッキチタン、パラジウムメッキチタン、フェライトの焼結体など公知の電極を用いることができる。ヒーターは必ずしも薄膜電極と接している必要はなく、加温された水が薄膜電極で電気分解されるような構成になっていればよい。電極と加熱手段を一体化する場合には、シート状電極とヒーターの積層、ヒーター表面への薄膜電極の印刷、あるいはヒータと金属箔電極の接着を行うとよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明にかかる水溶性成分除去装置は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アンモニア、アルコールなどの空気中の水溶性成分を連続的に除去するものであり、空気清浄機、脱臭機、ホルムアルデヒド除去装置、加湿機、加湿空気清浄機などに有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 吸込口
2 吹出口
3 本体
4、4a、4b 湿潤フィルタ
5 トレイ
6 水タンク
7 ファン
8 電極
9 隔壁
10 水溶性成分の濃度が高い水域
11 水溶性成分の濃度が低い水域
12 保護カバー
13 薄膜電極
14 ヒーター
101 石油温風機
102 オイルタンク
103 バーナー
104 熱交換器
105 熱交換パイプ
106 ファン
107 タンク
108 加湿パイプ
109 加湿皿
110 加湿口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の吸込口と吹出口を有する本体と、この吸込口と吹出口を連通する風路内に、前記吸込口より吸い込んだ空気中の水溶性成分を溶解させるための湿潤フィルタと、前記湿潤フィルタを配置し水を貯めるためのトレイと、前記湿潤フィルタに水を供給するための水供給手段と、前記湿潤フィルタに空気を送る送風手段と、前記トレイに前記湿潤フィルタに溶解させた水溶性成分が溶解したガス成分を電気分解する電極とを備えた水溶性成分除去装置であって、前記湿潤フィルタが回動可能であり、前記湿潤フィルタの少なくとも一部がトレイの水に浸漬され、前記トレイの水に含まれる水溶性成分に濃度差を発生させるとともに、水溶性成分の濃度が高い水域に、前記電極を備えたことを特徴とする水溶性成分除去装置。
【請求項2】
湿潤フィルタの下方に隔壁を備え、前記隔壁によって水に含まれる水溶性成分に濃度差を発生させることを特徴とする請求項1記載の水溶性成分除去装置。
【請求項3】
水に含まれる水溶性成分の濃度の低い水域に、水供給手段から水を供給することを特徴とする請求項1または2記載の水溶性成分除去装置。
【請求項4】
湿潤フィルタの回動方向が、吸込空気に対して下流側から上昇し、上流側で水没する向きであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の水溶性成分除去装置。
【請求項5】
湿潤フィルタを乾燥させないようにしたことを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の水溶性成分除去装置。
【請求項6】
空気が湿潤フィルタを2回以上通過することを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の水溶性成分除去装置。
【請求項7】
湿潤フィルタが円筒形であることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の水溶性成分除去装置。
【請求項8】
水に含まれる水溶性成分の濃度が高い水域のトレイの水深が、濃度の低い水域の水深よりも浅いことを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の水溶性成分除去装置。
【請求項9】
水に含まれる水溶性成分の濃度が高い水域の水量が、濃度の低い水域の水量よりも少ないことを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の水溶性成分除去装置。
【請求項10】
電極の周囲に保護カバーを備えたことを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の水溶性成分除去装置。
【請求項11】
電極の近傍に、水を加熱する加熱手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の水溶性成分除去装置。
【請求項12】
電極と加熱手段を一体化したことを特徴とする請求項1乃至11いずれかに記載の水溶性成分除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−66209(P2012−66209A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214891(P2010−214891)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】