説明

水溶性金属加工油剤組成物

【課題】皮膚刺激性が小さく作業性が良好であって、抗菌・防腐成分を減量したとしても十分な抗菌・防腐性能が発揮でき、これにより、他の油剤成分の設計自由度を高くすることができる、水溶性金属加工油剤組成物を提供する。
【解決手段】水溶性金属加工油剤組成物を、0.5質量%以上30質量%以下の抗菌性水溶性アミン、0.5質量%以上15質量%未満の2−フェノキシエタノールおよび/またはベンジルアルコールを備えるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性金属加工油剤組成物に関する。詳細には、切削、研削、塑性加工等の金属加工を行う際に使用される、水溶性金属加工油剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
切削、研削、塑性加工等の金属加工を行う際には、加工工具と被加工材との間を潤滑・冷却するために、加工油剤が使用される。該加工油剤には、油性加工油剤と水溶性加工油剤とがあるが、効率的に冷却できること、および、無人化された機械において加工時の火災を防止できることから、水溶性加工油剤が主流となっている。また、金属加工の際に、大量の加工油剤がポンプによって循環して使用されている。
【0003】
金属加工に用いられる水溶性加工油剤は、一般に鉱物油、油脂、脂肪酸、脂肪酸エステル、極圧添加剤、界面活性剤、消泡剤、金属防食剤、酸化防止剤、防腐・防黴剤等を目的に応じて適宜混合して製造され、通常、水で10〜100倍に希釈して使用される。この希釈したものは、一般に「クーラント」と呼ばれる。このクーラントには、切削性、研削性に関する性能、例えば仕上げ面精度の向上、工具寿命の延長等(以下、「一次性能」という)と、作業性、その他の性能(以下、「二次性能」という)が要求される。二次性能には、防錆性が良いこと、劣化しにくく管理しやすいこと、人体に無害であること、泡立ちが少ないこと、悪臭が少ないこと等も含まれる。
【0004】
上記のように水溶性加工油剤(原液)を希釈して得られるクーラントには、細菌、酵母、黴などの微生物の好適な栄養源となる物質が多く含有されており、クーラントが腐敗しやすいという問題点があり、その微生物による劣化を防ぐことは非常に重要なことである。クーラントの腐敗が進行すると、1次性能および2次性能が低下するうえ、腐敗による悪臭によって作業環境も悪くなってしまう。また、腐敗による油剤交換の頻度が高くなれば、コスト面においても不利になる。さらに、クーラントに黴が発生すると、1次性能および2次性能が共に低下するだけでなく、循環系統のパイプ詰まりの原因にもなる。
【0005】
従って、水溶性加工油剤には、腐敗防止のために、各種の殺菌剤や防腐剤が使用されている。しかし、一般には、防腐剤は短期間に分解若しくは不活性化してしまい、短期間で効果が著しく低下するという問題点があった。さらに、上記防腐剤や殺菌剤としては、ホルムアルデヒト放出型化合物、フェノール系化合物等が知られている。しかし、このような防腐剤、殺菌剤を、殺菌や黴を抑制しうるほど多量に添加した場合には、皮膚刺激性が激しくなり、人体に対して悪影響を及ぼすことがあり好ましいものではなかった。
【0006】
エマルションタイプ、および、ソリューブルタイプの加工油剤等は、界面活性剤(乳化剤)として脂肪酸と各種アミンとを反応させたアミンセッケンが潤滑油の乳化に使用され、アルカリ物質としてアミンを遊離の状態で含有している(例えば、特許文献1)。通常、この遊離の状態のアミン量を大量に含有していることで、抗菌性が付与される。
【0007】
また、特許文献2には、潤滑成分としての性能を有すると共に、微生物の繁殖を抑制することができるフェノキシ化合物を含有する水溶性潤滑剤組成物が記載されている。
【特許文献1】特公昭61−40720号公報
【特許文献2】特開平8−259978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、遊離アミンを大量に含有させる方法では、加工油剤の皮膚刺激性が高く、作業者が肌荒れ、皮膚炎を起こす可能性があり、遊離アミンは、可能な限り少量とすることが求められていた。また、特許文献2の水溶性潤滑剤組成物は、非アミン系の抗菌作用を有するフェノキシ化合物を、5重量%以上、より好ましくは10から40重量%、と多量に添加しなければ効果が期待できないものであった。このため、水溶性潤滑剤組成物から鉱油等の潤滑剤を減量せざるを得ない等、油剤設計の自由度が低いものであった。
【0009】
そこで、本発明は、皮膚刺激性が小さく作業性が良好であって、抗菌・防腐成分を減量したとしても十分な抗菌・防腐性能が発揮でき、これにより、他の油剤成分の設計自由度を高くすることができる、水溶性金属加工油剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の本発明は、0.5質量%以上30質量%以下の抗菌性水溶性アミン、0.5質量%以上15質量%未満の2−フェノキシエタノールおよび/またはベンジルアルコール、を備えて構成される、水溶性金属加工油剤組成物である。
【0011】
第1の本発明の水溶性金属加工油剤組成物は、アミンの含有量が少なくても、抗菌・防腐性能を発揮することができるので、皮膚刺激が小さく作業性が良好な金属加工油剤組成物である。また、抗菌・防腐成分(抗菌性水溶性アミン、2−フェノキシエタノール、ベンジルアルコール)を減量したとしても十分な抗菌・防腐性能を発揮できるので、他の油剤成分の設計自由度が高くなる。また、抗菌性水溶性アミンならびに2−フェノキシエタノールおよび/またはベンジルアルコールを組み合わせることにより、従来の油剤組成物に比べ大幅に抗菌・防腐性能を向上させることができる。抗菌・防腐性能とは、例えば、バクテリア、酵母菌等の繁殖を抑えることができることをいう。
【0012】
第1の本発明において、抗菌性水溶性アミンは、アルカノールアミン、および/または、N、N、N´、N´−テトラアルキルジアミンであることが好ましい。このような抗菌性水溶性アミンを使用することにより、抗菌・防腐性能をより発揮することができる。
【0013】
アルカノールアミンは、炭素数3以上6以下のアルカノールアミンであることが好ましい。また、N、N、N´、N´−テトラアルキルジアミンは、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0014】
【化1】

(上記一般式(1) において、R、R、RおよびRは、炭素数1〜12のアルキル基を表す。R、R、RおよびRは、同じ基でもよく、異なる基でもよい。上記一般式(1)において、Rは2価の有機基である。)
【0015】
また、さらに、N、N、N´、N´−テトラアルキルジアミンは、下記一般式(2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0016】
【化2】

(上記一般式(2)において、R、R、RおよびRは、炭素数1〜12のアルキル基を表す。R、R、RおよびRは、同じ基でもよく、異なる基でもよい。上記一般式(2)において、nは5〜12の整数である。)このような、アルカノールアミンおよびテトラアルキルジアミンを使用することにより、抗菌・防腐性能をより発揮することができる。
【0017】
第2の本発明は、第1の本発明の水溶性金属加工油剤組成物、および、希釈剤を備え、抗菌性水溶性アミンの濃度が0.005質量%以上20質量%以下、2−フェノキシエタノールおよび/またはベンジルアルコールの濃度が0.005質量%以上10質量%以下である、クーラントである。第2の本発明のクーラントは、第1の本発明の水溶性金属加工油剤組成物と同様の効果を奏することができる。
【0018】
第3の本発明は、第1の本発明の水溶性金属加工油剤組成物を希釈剤により希釈し、抗菌性水溶性アミンの濃度を0.005質量%以上20質量%以下、2−フェノキシエタノールおよび/またはベンジルアルコールの濃度を0.005質量%以上10質量%以下とする工程を備えた、クーラントの製造方法である。該方法により、上記効果を備えたクーラントを得ることができる。
【0019】
第4の本発明は、水溶性金属加工油剤組成物に、抗菌性水溶性アミン、ならびに、2−フェノキシエタノールおよび/またはベンジルアルコールを加える工程を備えた、水溶性金属加工油剤組成物の微生物劣化防止方法である。ここで、「微生物劣化」とは、細菌、酵母、黴等の微生物により、油剤組成物が腐敗することをいう。
【0020】
第5の本発明は、第1の本発明の水溶性金属加工油剤組成物、あるいは、第2の本発明のクーラントを使用し、被加工材を加工する工程を備えた、金属加工方法である。該金属加工方法においては、油剤組成物あるいはクーラントの皮膚刺激が小さく、バクテリア等の発生が抑制されているので、作業環境が良好となる。
【発明の効果】
【0021】
第1の本発明の水溶性金属加工油剤組成物は、アミンの含有量が少なくても、抗菌・防腐性能を発揮することができるので、皮膚刺激が小さく作業性が良好な金属加工油剤組成物とすることができる。また、抗菌・防腐成分(抗菌性水溶性アミン、2−フェノキシエタノール、ベンジルアルコール)を減量したとしても十分な抗菌・防腐性能を発揮できるので、他の油剤成分の設計自由度が高くなる。また、抗菌性水溶性アミンならびに2−フェノキシエタノールおよび/またはベンジルアルコールを組み合わせることにより、従来の油剤組成物に比べ大幅に抗菌・防腐性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
<水溶性金属加工油剤組成物>
本発明の水溶性金属加工油剤組成物は、所定量の抗菌性水溶性アミン、ならびに、2−フェノキシエタノールおよび/またはベンジルアルコールを備えて構成される。
【0023】
(抗菌性水溶性アミン)
抗菌性水溶性アミンとしては、アルカノールアミン、N,N,N´,N´−テトラアルキルジアミン(以下、「テトラアルキルジアミン」と省略する場合がある。)を挙げることができる。
【0024】
アルカノールアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノインプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリインプロパノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、n−ブチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−1−ブタノール、およびN−アミノエチルエタノールアミンが挙げられる。この中でも、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、およびモノインプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、ジイソプロパノールアミン等の炭素数3以上6以下のアルカノールアミンが好ましく用いられる。
【0025】
テトラアルキルジアミンは、ジアミンに含まれる2つのアミノ基の水素原子が全てアルキル基(N置換アルキル基)により置換された化合物である。上記テトラアルキルジアミンは、この構造を備える限り、その具体的な構造に特に限定はなく、テトラアルキルジアミンとして、N,N,N´,N´−テトラアルキル1,8−ナフチレンジアミン以外のテトラアルキルジアミンを用いることができる。
【0026】
上記アルキル基の種類には特に限定はない。上記アルキル基の炭素数は、通常1〜12、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜4である。上記アルキル基の炭素数が上記範囲であると、より優れた耐微生物劣化性を示すことから好ましい。また、上記アルキル基は、直鎖状のアルキル基でもよく、側鎖を有するアルキル基でもよく、環状構造を有するアルキル基でもよい。さらに、上記アルキル基は、炭素鎖中に他の原子(例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、および塩素原子等のハロゲン原子等)を含んでいてもよい。また、上記アルキル基は、炭素鎖中に他の官能基(例えば、水酸基、チオール基、エーテル基、カルボニル基、およびカルボキシル基等)を含んでいてもよい。上記アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニルデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、および2−メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。なお、上記テトラアルキルジアミン化合物に含まれる4つのN置換アルキル基は、全て同じアルキル基でもよく、一部または全部異なる種類のアルキル基でもよい。
【0027】
上記テトラアルキルジアミン化合物として具体的には、例えば、一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0028】
【化3】

【0029】
上記一般式(1)において、上記R、R、RおよびRは、炭素数が1〜12のアルキル基である。上記R、R、RおよびRの炭素数は、好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜4である。上記炭素数が上記範囲であると、より優れた耐微生物劣化性を示すことから好ましい。さらに、上記アルキル基は、直鎖状のアルキル基でもよく、側鎖を有するアルキル基でもよく、環状構造を有するアルキル基でもよい。さらに、上記アルキル基は、炭鎖中に他の原子(例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、および塩素原子等のハロゲン原子等)を含んでいてもよい。また、上記アルキル基は、炭素鎖中に他の官能基(例えば、水酸基、チオール基、エーテル基、カルボニル基、およびカルボキシル基等)を含んでいてもよい。上記R、R、RおよびRとして具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニルデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基および2−メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。なお、上記R、R、RおよびRは、全て同じアルキル基でもよく、一部または全部異なる種類のアルキル基でもよい。中でも、R、R、RおよびRとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0030】
上記一般式(1)において、上記Rは、2価の有機基であればよく、特に構造および炭素数等に限定はない。上記Rは、通常は、下記一般式(2)のように、鎖状のアルキレン基である。その他、上記Rは、脂環構造でもよく、芳香環でもよい。さらに、上記鎖状のアルキレン基および上記脂環構造は、構造中に不飽和結合を有していてもよい。また、上記鎖状のアルキレン基は、直鎖のアルキレン基でもよく、側鎖を有するアルキレン基でもよい。
【0031】
【化4】

【0032】
上記一般式(1)で表される化合物として具体的には、上記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)および(4)で表される化合物が挙げられる。
【0033】
【化5】

【0034】
上記一般式(2)、(3)および(4)のR、R、RおよびRは、上記一般式(1)におけるR、R、RおよびRと同様である。また、上記一般式(2)において、上記nは3〜15、好ましくは4〜13、より好ましくは5〜12、さらに好ましくは5〜7の整数である。nが上記範囲であると、耐微生物劣化性に優れ、腐敗を十分に抑制できるので好ましい。
【0035】
抗菌性水溶性アミンの含有量は、水溶性金属加工油剤組成物全体を100質量%とした場合、下限が0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは7質量%以上であり、上限が、30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。なお、エマルション油剤よりも、ソリューブル油剤の方が、抗菌性水溶性アミンの含有量が大きい傾向がある。ソリューブル油剤の場合は、抗菌性水溶性アミンの含有量の上限は、30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。抗菌性水溶性アミンの含有量が多すぎると、皮膚刺激性が大きく作業性が低下する場合がある。また、抗菌性水溶性アミンの含有量が少なすぎると、油剤組成物の抗菌・防腐性能が劣る場合がある。
【0036】
(2−フェノキシエタノール、ベンジルアルコール)
本発明の水溶性金属加工油剤組成物は、上記抗菌性水溶性アミンと共に、2−フェノキシエタノールおよび/またはベンジルアルコールを含有することで、少量の抗菌・防腐成分(抗菌性水溶性アミン、2−フェノキシエタノール、ベンジルアルコール)でも、十分な抗菌・防腐性能を発揮できる。2−フェノキシエタノールおよびベンジルアルコールは、それぞれ単独で使用してもよいし、混合して使用してもよい。
【0037】
2−フェノキシエタノールおよび/またはベンジルアルコールの含有量は、水溶性金属加工油剤組成物全体を100質量%とした場合、下限が0.5質量%以上、好ましくは0.8質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、特に好ましくは4質量%以上であり、上限が15質量%未満、好ましくは10質量%未満、より好ましくは8質量%未満、さらに好ましくは7質量%未満、特に好ましくは6質量%未満、最も好ましくは5質量%未満である。2−フェノキシエタノールおよび/またはベンジルアルコールの含有量が少なすぎると、本発明の油剤組成物の抗菌・防腐性能が不十分となる場合があり、また、2−フェノキシエタノールおよび/またはベンジルアルコールの含有量が多すぎると、他の油剤成分の設計自由度が小さくなってしまう。
【0038】
本発明の水溶性金属加工油剤組成物は、上記した抗菌性水溶性アミン、2−フェノキシエタノールおよび/またはベンジルアルコールを必須成分として含有する。また、本発明の水溶性金属加工油剤組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の任意成分を必要に応じて適宜含有していてもよい。該任意成分としては、従来の水溶性金属加工油剤組成物に用いられている成分が挙げられ、具体的には、界面活性剤、基油、極圧添加剤、アルコール(ただし、上記2−フェノキシエタノール、ベンジルアルコールは除く。)、アミン化合物(ただし、上記抗菌性水溶性アミンは除く。)、消泡剤、金属防食剤、および防腐剤等が挙げられる。任意成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
上記界面活性剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、および非イオン系界面活性剤が挙げられる。本発明において、上記界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明の水溶性金属加工油剤組成物では、アニオン系界面活性剤および非イオン系界面活性剤の1種または2種以上を用いることが好ましい。
【0040】
上記アニオン系界面活性剤としては、例えば、脂肪酸とアミン化合物との塩または金属塩、および石油スルホネート等が用いられる。上記脂肪酸としては、通常の水系の金属加工剤に使用されている炭素数6〜36の脂肪酸が使用される。上記脂肪酸は、モノカルボン酸でもよく、ジカルボン酸でもよい。上記脂肪酸として、例えば、カプロン酸、カプリル酸、ノナン酸、ラウリン酸、ヤシ油脂肪酸、オレイン酸、エルカ酸、リシノレン酸、菜種油脂肪酸、リシノレン酸縮合物、C21脂肪族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン酸、およびドデカン二酸が挙げられる。これらの中でも、ヤシ油脂肪酸、菜種脂肪酸、オレイン酸、リシノレン酸、エルカ酸、リシノレン酸縮合物、C21脂肪族ジカルボン酸、アジピン酸、ドデカン酸、およびドデカン二酸が好ましく用いられる。なお、アニオン系界面活性剤は、脂肪酸とアミンとを添加することで、水溶性金属加工油剤組成物中で界面活性剤となるものであってもよい。
【0041】
上記金属塩としては、例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩等のアルカリ金属塩等が挙げられる。よって、上記脂肪酸の金属塩として具体的には、例えば、上記で例示した各脂肪酸のナトリウム塩およびカリウム塩等のアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0042】
上記非イオン系界面活性剤として具体的には、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックポリマー、並びにヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等が挙げられる。
【0043】
本発明の水溶性金属加工油剤組成物において、上記界面活性剤の含有量は、必要に応じて種々の範囲とすることができる。本発明の水溶性金属加工油剤組成物全量を100質量%とした場合、界面活性剤の含有量は、通常1〜40質量%、好ましくは3〜35質量%、より好ましくは5〜35質量%、さらに好ましくは8〜30質量%、特に好ましくは10〜30質量%である。上記界面活性剤の含有量が上記範囲であると、本発明の水溶性金属加工油剤組成物は、優れた耐微生物劣化性を奏するので好ましい。本発明の水溶性金属加工油剤組成物において、アニオン系界面活性剤および非イオン系界面活性剤を併用する場合、両者の割合は、必要に応じて種々の範囲とすることができる。上記アニオン系界面活性剤および上記非イオン系界面活性剤の含有量の合計を100質量%とした場合、上記アニオン系界面活性剤の含有量は、通常30〜95質量%、好ましくは40〜95質量%、さらに好ましくは50〜90質量%、より好ましくは60〜90質量%、特に好ましくは70〜90質量%である。アニオン系界面活性剤の含有量が上記範囲内であると、本発明の水溶性金属加工油剤組成物は、優れた耐微生物劣化性を奏するので好ましい。
【0044】
本発明の水溶性金属加工油剤組成物において、上記界面活性剤と上記抗菌性水溶性アミンとの割合は、必要に応じて種々の範囲とすることができる。上記界面活性剤および上記抗菌性水溶性アミンの含有量の合計を100質量%とした場合、上記抗菌性水溶性アミンの含有量は、通常1〜40質量%、好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは1〜25質量%、より好ましくは2〜20質量%、特に好ましくは3〜20質量%である。上記テトラアルキルジアミン化合物の含有量が上記範囲内であると、本発明の水溶性金属加工油剤組成物は、優れた耐微生物劣化性を奏するので好ましい。
【0045】
アミン化合物(ただし、上記抗菌性水溶性アミンは除く。)は、脂肪族アミン、脂環式アミン、及び芳香族アミンのいずれでもよい。また、上記アミン化合物は、他の官能基を有するアミン化合物でもよい。さらに、上記アミン化合物に含まれるアミノ基は、第一級アミノ基、第二級アミノ基、および第三級アミノ基のいずれでもよい。また、上記アミン化合物に含まれるアミノ基の数についても特に限定はなく、モノアミン化合物、ジアミン化合物、トリアミン化合物、テトラアミン化合物のいずれでもよい。本発明では、上記アミン化合物として、炭素数2〜36、好ましくは2〜20、さらに好ましくは2〜15のアミン化合物を好ましく用いることができる。なお、上記アミン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
【0046】
脂肪族アミンとしては、例えば、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、オレイルアミン、およびヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。脂環式アミンとしては、例えば、シクロヘキシルアミンおよびジシクロヘキシルアミン等が挙げられる。また、芳香族アミンとしては、例えば、ベンジルアミンおよびジベンジルアミン等が挙げられる。
【0047】
本発明の水溶性金属加工油剤組成物において、上記アミン化合物の含有量は、本発明の水溶性金属加工油剤組成物全量を100質量%とした場合に、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは0.01〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜7質量%、特に好ましくは1〜4質量%である。上記アミン化合物の含有量が上記範囲であると、優れた耐微生物劣化性を奏すると共に、優れたさび止め性を奏することからから好ましい。
【0048】
本発明の水溶性金属加工油剤組成物において、上記アミン化合物と上記抗菌性水溶性アミンの割合は、必要に応じて種々の範囲とすることができる。上記アミン化合物および上記抗菌性水溶性アミンの含有量の合計を100質量%とした場合、上記アミン化合物の含有量は、60質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。アミン化合物が上記範囲を超えて多いと本発明の油剤組成物の抗菌・防腐性能が劣る場合がある。
【0049】
アルコール(ただし、上記2−フェノキシエタノール、ベンジルアルコールは除く。)としては、炭素数が12〜18のアルコールが好ましく用いられる。上記アルコールの具体的構造については特に限定はない。上記アルコールは、第1級、第2級および第3級アルコールのいずれでもよい。また、直鎖アルコールでもよく、側鎖を有するアルコールでもよい。さらに、上記アルコールの水酸基の数についても特に限定はない。上記アルコールは、モノアルコール、ジアルコール、およびトリアルコールのいずれでもよい。上記アルコールとしては、例えば、n−トリデカノール、iso−トリデカノール、n−ペンタデカノール、およびiso−ペンタデカノール等が挙げられる。上記アルコールは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
基油としては、具体的には、鉱物油、合成エステル、および動植物油脂等が挙げられる。本発明の水溶性金属加工油剤組成物は、上記基油を含有することにより、さらに潤滑性を向上させることができる。本発明の水溶性金属加工油剤組成物において、上記基油は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
鉱物油は、石油を蒸留精製して得られる成分を示す。上記鉱物油は、水素添加や改質等の工程を経た鉱物油を使用できる。上記鉱物油として具体的には、例えば、スピンドル油およびマシン油等が挙げられる。上記鉱物油の物性については特に限定はない。例えば、上記鉱物油の動粘度(40℃)は、通常0.1mm/s以上、好ましくは0.5〜150mm/s、更に好ましくは1〜60mm/s、より好ましくは5〜60mm/sとすることができる。また、上記鉱物油のアニリン点は、通常35〜120℃、好ましくは40℃〜100℃、さらに好ましくは45〜100℃、より好ましくは50〜90℃とすることができる。なお、上記鉱物油は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
合成エステルは、通常、炭素数10〜30、好ましくは12〜28、さらに好ましくは15〜25のカルボン酸と、炭素数1〜30、好ましくは1〜25、さらに好ましくは1〜20のアルコールのエステルが用いられる。上記アルコールは、第1級、第2級および第3級アルコールのいずれでもよい。また、上記アルコールは、モノアルコール、ジアルコール、トリアルコール、テトラアルコールのいずれでもよい。上記合成エステルとして具体的には、例えば、オレイン酸メチル、オレイン酸−2−エチルヘキシル、ネオペンチルグリコールジオレイト、トリメチロールプロパントリオレイト、およびペンタエリスリトールテトラオレイト等が挙げられる。これらの中でも、オレイン酸−2−エチルヘキシル、ネオペンチルグリコールジオレイト、およびトリメチロールプロパントリオレイトが好ましく用いられる。なお、上記合成エステルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
動植物油脂としては、例えば、豚脂、牛脂、および魚油等の動物性油脂、ならびに菜種油、大豆油、およびパーム油等の植物性油脂が挙げられる。また、上記動植物油脂としては、上記動植物油脂の水素添加物を用いることもできる。なお、上記動植物油脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
本発明の水溶性金属加工油剤組成物全量を100質量%とした場合、上記基油の含有量は、通常80質量%以下、好ましくは0.1〜80質量%、より好ましくは1〜75質量%、さらに好ましくは、5〜70質量%、より好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは20〜60質量%である。上記基油の含有量が上記範囲であると、本発明の水溶性金属加工油剤組成物は、優れた耐微生物劣化性と共に、優れた潤滑性を奏するので好ましい。
【0055】
また、本発明の水溶性金属加工油剤組成物において、上記基油と上記抗菌性水溶性アミンの割合は、必要に応じて種々の範囲とすることができる。上記基油および上記抗菌性水溶性アミンの含有量の合計を100質量%とした場合、上記基油の含有量は、通常50〜99質量%、好ましくは60〜98質量%、さらに好ましくは70〜95質量%、より好ましくは80〜95質量%である。上記基油と上記抗菌性水溶性アミンの割合が上記範囲であると、本発明の水溶性金属加工油剤組成物は、優れた耐微生物劣化性と共に、優れた潤滑性を奏するので好ましい。
【0056】
本発明の水溶性金属加工油剤組成物には、通常、水が配合される。この水の配合量については特に限定はない。上記水の配合量は、通常、本発明の水溶性金属加工油剤組成物100質量%中、1〜99質量%、好ましくは5〜90質量%、さらに好ましくは5〜80質量%、より好ましくは7〜70質量%、特に好ましくは7〜50質量%である。
【0057】
本発明の水溶性金属加工油剤組成物は、そのまま使用することができる。また、本発明の水溶性金属加工油剤組成物は、必要に応じて、使用の際にさらに水等の希釈剤で稀釈して使用することもできる。
【0058】
<クーラント、クーラントの製造方法>
本発明のクーラントは、上記した水溶性金属加工油剤組成物、および、希釈剤を備え、抗菌性水溶性アミンの濃度が0.005質量%以上20質量%以下、2−フェノキシエタノールおよび/またはベンジルアルコールの濃度が0.005質量%以上10質量%以下に調製されたものである。このような含有量で、抗菌・防腐成分を備えることにより、十分な抗菌・防腐性能を発揮できると共に、経済的な油剤組成物とすることができる。
【0059】
本発明のクーラントは、上記した水溶性金属加工油剤組成物を希釈剤により希釈し、抗菌性水溶性アミンの濃度、および、2−フェノキシエタノールおよび/またはベンジルアルコールの濃度を上記範囲とすることにより、製造することができる。
【0060】
希釈剤の種類については特に限定はない。上記希釈剤として、通常は水が用いられる。また、本発明のクーラントは、本発明の水溶性金属加工剤を希釈することにより本発明のクーラントを得る場合、その希釈倍率についても特に限定はない。上記希釈倍率は通常1.5〜100倍、好ましくは2〜70倍、さらに好ましくは5〜50倍、より好ましくは10〜50倍である。
【0061】
<水溶性金属加工油剤組成物の微生物劣化防止方法>
本発明の水溶性金属加工油剤組成物の微生物劣化防止方法は、水溶性金属加工油剤組成物に、抗菌性水溶性アミン、ならびに、2−フェノキシエタノールおよび/またはベンジルアルコールを加える工程を備えた方法である。なお、抗菌性水溶性アミン、2−フェノキシエタノールおよびベンジルアルコールは、本発明の水溶性金属加工油剤組成物において記載したものと同様である。
【0062】
上記微生物劣化防止方法における水溶性金属加工油剤組成物の種類および組成には特に限定はないが、本発明の抗菌性水溶性アミン、ならびに、2−フェノキシエタノールおよび/またはベンジルアルコールを完備したものとは異なる、一般的な水溶性金属加工油剤組成物である。該一般的な水溶性金属加工油剤組成物は通常、水を含有し、例えば、上記任意成分として挙げた界面活性剤、基油、極圧添加剤、アルコール、消泡剤、金属防食剤、および防腐剤等を含むものである。任意成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、上記任意成分は、本発明の水溶性金属加工油剤組成物におけるものと同様である。
【0063】
また、本発明の水溶性金属加工油剤組成物の微生物劣化防止方法においては、上記「水溶性金属加工油剤組成物」は、水溶性金属加工油剤組成物を水等の希釈剤で希釈した後の「クーラント」をも含む概念である。
【0064】
各成分の添加量については、特に限定されないが、好ましくは、上記した本発明の水溶性金属加工油剤組成物における各成分の含有量となるように添加するのが好ましい。クーラントにおける添加量についても同様である。
【0065】
<金属加工方法>
本発明の金属加工方法は、本発明の水溶性金属加工油剤組成物、あるいは、本発明のクーラントを使用し、被加工材を加工する工程を備えた方法である。
【0066】
上記金属加工は、金属を加工する方法である限り、その具体的内容に特に限定はない。上記金属加工としては、例えば、切削加工、研削加工、および塑性加工等が挙げられる。また、上記金属加工において、上記水溶性金属加工油剤組成物および上記クーラントを供給する方法には特に限定はない。例えば、循環ポンプを使用してノズルから給油する方法、手づけ給油(ブラシ塗りおよび油差し等)、および噴霧給油等が挙げられる。
【0067】
上記被加工材については特に限定はない。被加工材の材質は、通常、鉄、炭素鋼およびステンレス鋼等の鋼および鉄合金であるが、その他、インコネル、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、および銅合金等の非鉄金属およびその合金でもよい。また、被加工材の形状についても特に限定はなく、例えば、棒状およびブロック形状等が挙げられる。
【実施例】
【0068】
(1)水溶性加工油剤組成物の調整
表1に示す各成分を、表1に示す割合で配合することにより、実施例1〜17、および、参考例1、2の水溶性加工油剤組成物を調整した。表1中の各組成を示す単位は質量%である。なお、表1に記載した各成分の詳細は以下の通りである。なお、表1中のpHは、水溶性加工油剤組成物を3.3質量%含むクーラントとした際のpHである。
石油スルホネート:Naスルホネート、石油系炭化水素の混合物
非イオン活性剤:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル
高級アルコール:(C13およびC15)アルコールの混合物
鉱物油:スピンドル油(動粘度;8mm/s(40℃))
【0069】
【表1】

【0070】
(2)耐腐敗試験方法
表1に示した実施例および参考例の各水溶性金属加工油剤組成物を水道水で希釈し、各2Lのクーラントを調製した。このクーラントを耐腐敗試験の試料として使用した。このクーラント中の水溶性金属加工油剤組成物の濃度は3.3質量%である。
【0071】
調整した2Lのクーラントに、乾切削した鋳鉄切屑200g、および潤滑油(商品名「バクトラNo2SLC」モービル石油社製)100gを上記各クーラントに加え、3L/分でポンプにより循環させた。種菌として、腐敗菌液(バクテリア10−7個以上/mL、真菌(酵母)10−5個以上/mL、真菌(糸状菌)10−2個以上/mL確認可能なもの)を、試験開始直後に60g添加し、その後7日毎に20gずつさらに添加した。試験中、蒸発した水分は、毎日水道水を添加することにより補給した。
【0072】
試験開始から1週間毎に、BIOSAN LABORATORIES,INC.製のSANCHECKを用い菌の発生具合を確認した。結果を表2〜4に示した。
【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
【表4】

【0076】
(3)評価結果
表2には、抗菌性水溶性アミンとして、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールおよびN,N−ジシクロヘキシルアミンを用いた結果をまとめた。また、表3には、抗菌性水溶性アミンとして、ジイソプロパノールアミンおよびテトラメチルへキシレンジアミンを用いた結果をまとめた。表4には、抗菌性アミンとして、ジイソプロパノールアミンおよびテトラメチルへキシレンジアミンを用いると共に、ベンジルアルコールと2−フェノキシエタノールを併用した例をまとめた。
【0077】
表2、3より、本発明の水溶性金属加工油剤組成物は、ベンジルアルコールおよび2−フェノキシエタノールを含まない参考例に比べて、耐腐敗性能が優れていることが分かる。本発明の水溶性金属加工油剤組成物の中で比較すると、抗菌性水溶性アミンとして、ジイソプロパノールアミンおよびテトラメチルへキシレンジアミンを用いた例において、より優れた結果が示された。また、表4より、ベンジルアルコールと2−フェノキシエタノールを併用した場合においても、表3の結果と同様に、優れた耐腐敗性能が示された。
【0078】
以上、現時点において、最も、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う水溶性金属加工油剤組成物、クーラント、クーラントの製造方法、水溶性金属加工油剤組成物の微生物劣化防止方法、および、金属加工方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5質量%以上30質量%以下の抗菌性水溶性アミン、0.5質量%以上15質量%未満の2−フェノキシエタノールおよび/またはベンジルアルコール、を備えて構成される、水溶性金属加工油剤組成物。
【請求項2】
前記抗菌性水溶性アミンが、アルカノールアミン、および/または、N、N、N´、N´−テトラアルキルジアミンである、請求項1に記載の水溶性金属加工油剤組成物。
【請求項3】
前記アルカノールアミンが、炭素数3以上6以下のアルカノールアミンである、請求項2に記載の水溶性金属加工油剤組成物。
【請求項4】
N、N、N´、N´−テトラアルキルジアミンが、下記一般式(1)で表される化合物である請求項2または3に記載の水溶性金属加工油剤組成物。
【化1】

(上記一般式(1) において、R、R、RおよびRは、炭素数1〜12のアルキル基を表す。R、R、RおよびRは、同じ基でもよく、異なる基でもよい。上記一般式(1)において、Rは2価の有機基である。)
【請求項5】
N、N、N´、N´−テトラアルキルジアミンが、下記一般式(2)で表される化合物である請求項2または3に記載の水溶性金属加工油剤組成物。
【化2】

(上記一般式(2)において、R、R、RおよびRは、炭素数1〜12のアルキル基を表す。R、R、RおよびRは、同じ基でもよく、異なる基でもよい。上記一般式(2)において、nは5〜12の整数である。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の水溶性金属加工油剤組成物、および、希釈剤を備え、前記抗菌性水溶性アミンの濃度が0.005質量%以上20質量%以下、前記2−フェノキシエタノールおよび/またはベンジルアルコールの濃度が0.005質量%以上10質量%以下である、クーラント。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の水溶性金属加工油剤組成物を希釈剤により希釈し、前記抗菌性水溶性アミンの濃度を0.005質量%以上20質量%以下、前記2−フェノキシエタノールおよび/またはベンジルアルコールの濃度を0.005質量%以上10質量%以下とする工程を備えた、クーラントの製造方法。
【請求項8】
水溶性金属加工油剤組成物に、抗菌性水溶性アミン、ならびに、2−フェノキシエタノールおよび/またはベンジルアルコールを加える工程を備えた、水溶性金属加工油剤組成物の微生物劣化防止方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の水溶性金属加工油剤組成物、あるいは、請求項6に記載のクーラントを使用し、被加工材を加工する工程を備えた、金属加工方法。

【公開番号】特開2009−161585(P2009−161585A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339632(P2007−339632)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000115083)ユシロ化学工業株式会社 (69)
【Fターム(参考)】