説明

水溶性金属加工油剤組成物

【課題】 被加工材料の固定にワックスの溶解を抑制しつつ優れた防錆力を発揮する水溶性金属加工油剤組成物の提供
【解決手段】 式(I)(R1〜3のうち少くとも1はC2〜6ヒドロキシ炭化水素基,他は水素又はC1〜24炭化水素基)もしくは式(II) (R4は水素又はC1〜24炭化水素基,又は,C2〜6ヒドロキシ炭化水素基)の化合物を含有し,且つ式(III)(R27〜29は水素又はC1〜24の炭化水素基。C総数1〜36)の化合物を含有し,
【化1】




溶液のpHが7〜12である水溶性金属加工油剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,水溶性金属加工油剤組成物に関し,更に詳しくは,サマリウム−コバルト合金,ネオジム−鉄合金等の磁性材料,単結晶及び多結晶シリコン等の半導体材料,水晶,石英等の材料を治具等に固定するためのワックスを使用して行う外周刃切断加工,内周刃切断加工,固定砥粒型ワイヤソー切断加工及び研削加工に使用する水溶性金属加工油剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
サマリウム−コバルト合金,ネオジム−鉄合金等の磁性材料,単結晶及び多結晶シリコン等の半導体材料,水晶,石英等の材料を切断する方法としては,これらの材料を治具等にワックスで固定して,外周刃,内周刃,ワイヤソーによる切断を行う方法が知られている。これらの切断方法時には,加工液と研磨材とからなる遊離砥粒を用いた研磨液組成物が用いられている(特許文献1ないし4参照)。固定ワックスとしては,酸化ポリエチレン,ポリカルボン酸等の酸性ワックスが用いられている。具体的には,日化精工社製のアドフィックスH,アドフィックス,アドフィックスA,アドフィックスK等が挙げられる。
【0003】
また,上記の材料は,砥石を用いた研削加工によって,形状を整えたり,面粗度を低減させるための加工が行われるが,その際にも被削材を治具等に固定するためのワックスが使用されることが非常に多い。
【0004】
磁性材料,結晶材料等を固定するためのワックスを使用する上述の外周刃切断加工,内周刃切断加工,研削加工においては,ワイヤーの表面や砥石基材中には砥粒が固定されており,これらを用いた加工中,冷却性や潤滑性を付与するために加工箇所に水溶性金属加工油剤組成液を継続して供給する方式がとられている。このワイヤーや砥石に使用される砥粒としては,SiC(シリコンカーバイド),ダイヤモンド,アルミナ等が用いられている。
【0005】
従来から,水溶性の金属加工油剤,特に切削加工,研削加工及び切断加工において使用される水溶性加工油剤には,被削材はもとより,加工装置等に使用されている鉄鋼等の腐食を防止するためのアミン系防錆剤が配合されている。
【0006】
しかし,サマリウム−コバルト合金,ネオジム−鉄合金等の磁性材料,単結晶及び多結晶シリコン等の半導体材料,水晶,石英等の被加工材料を治具に固定,あるいは束ねて加工するために,固定ワックスを使用する場合においては,加工液に含まれる防錆剤としてのアミン系化合物がこのワックスを溶解させ,そのため,被加工材料が脱離したり,あるいは溶解したワックスが発泡するという問題が起こっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−87059号公報
【特許文献2】特開2000−327838号公報
【特許文献3】特開2001−115148号公報
【特許文献4】特開2002−80883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記背景のもとで,本発明は,被加工材料の固定にワックスを用いた機械加工例えば,サマリウム−コバルト合金,ネオジム−鉄合金等の磁性材料,単結晶及び多結晶シリコン等の半導体材料,水晶,石英等の材料を固定するためのワックスを使用する外周刃切断加工,内周刃切断加工,固定砥粒型ワイヤソー切断加工及び研削加工において,特に被削材を固定するワックスの溶解を抑制しつつ優れた防錆力を発揮する水溶性金属加工油剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は,上記目的を達成すべく研究を重ねた結果,特定の化合物群又はその塩を含有させた水溶性金属加工油剤組成物とすることで上記性能が得られることを見出し,本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち,本発明は,下記の1〜9の水溶性金属加工油剤組成物を提供する。

(1)下記の一般式(I)
【化1】



(式中,R1,R2及びR3は,同一又は異なって,水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基,又は,炭素数2〜6のヒドロキシ炭化水素基を表し,ただし,R1,R2及びR3のうち少なくとも1つは,炭素数2〜6のヒドロキシ炭化水素基である。)もしくは下記の一般式(II)
【化2】


(式中,R4は,水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基,又は,炭素数2〜6のヒドロキシ炭化水素基を表す。)で示されるアミン系化合物又はその塩の1種又は2種以上を含有し,且つ,下記の一般式(III)
【化3】


(式中,R27,R28及びR29は,同一又は異なって,水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表し,ただし,R27,R28及びR29に含まれる炭素原子の総数は1〜36である。)で示される化合物又はその塩の1種又は2種以上を含有し,溶液のpHが7.0〜12.0であることを特徴とする水溶性金属加工油剤組成物,
(2)上記(1)において,一般式(III)の化合物を,一般式(IV)
【化4】


(式中,R5,R6,R7及びR8は,同一又は異なって,炭素数1〜24の炭化水素基を表し,ただし,R5,R6,R7及びR8に含まれる炭素原子の総数は最大で48である。)で示される化合物又はその塩の1種又は2種以上に代えて成る水溶性金属加工油剤組成物,
(3)上記(1)において,一般式(III)の化合物を,一般式(V)
【化5】


(式中,R9,R10,R11及びR12は,同一又は異なって,水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表し,ただし,R9,R10,R11及びR12に含まれる炭素原子の総数は最大で48であり,A1は,炭素数1〜24の直鎖状又は分枝鎖状炭化水素基を表す。)で示される化合物又はその塩の1種又は2種以上に代えて成る水溶性金属加工油剤組成物,
(4)上記(1)において,一般式(III)の化合物を,一般式(VI)
【化6】


(式中,R9,R10,R11及びR12は,同一又は異なって,水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表し,ただし,R9,R10,R11及びR12に含まれる炭素原子の総数は最大で48であり,A1’は,炭素原子4〜8個によって構成される環状炭化水素基を含んでなる炭素数4〜24の炭化水素基を表す。)で示される化合物又はその塩の1種又は2種以上に代えて成る水溶性金属加工油剤組成物,
(5)上記(1)において,一般式(III)の化合物を,一般式(VII)
【化7】


(式中,R13及びR14は,同一又は異なって,水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表すか,又は一緒になってこれらの結合している窒素原子と共に構成する環状構造を含んだ炭素数1〜24の含窒素炭化水素基を表し,A2は,窒素原子1〜3個と炭素原子2〜7個によって構成される原子数4〜8の環状構造を含んでなる炭素数4〜24の含窒素炭化水素基を表し,nは1〜3の整数を表す。)で示される化合物又はその塩の1種又は2種以上に代えて成る水溶性金属加工油剤組成物,
(6)上記(1)において,一般式(III)の化合物を,一般式(VIII)
【化8】


(式中,R22,R23,R24及びR25は,同一又は異なって,水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表し,ただし,R22,R23,R24及びR25に含まれる炭素原子の総数は最大で48であり,R26は炭素数2〜6の炭化水素基を表し,A4は,炭素数2〜6のアルキレン基を表し,反復単位相互間で同一又は異なっており,反復数mは1〜10の整数を表す。)で示される化合物又はその塩の種又は2種以上に代えて成る水溶性金属加工油剤組成物,
(7)上記(1)において,一般式(III)の化合物を,一般式(IX)
【化9】


[式中,R9,R10,R11及びR12は,同一又は異なって,水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表し,ただし,R9,R10,R11及びR12に含まれる炭素原子の総数は最大で48であり,A1”は,一般式(X)
【化10】


(式中,R15は,水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し,式中R16は,炭素数1〜4の炭化水素基を表し,反復単位相互間で同一又は異なっており,R17は,炭素数1〜4の炭化水素基を表し,nは,1〜10の整数を表す。)を示す。]で示される化合物又はその塩の1種又は2種以上に代えて成る水溶性金属加工油剤組成物,
(8)上記(1)において,一般式(III)の化合物を,一般式(XI)
【化11】


(式中,R18,R19,R20及びR21は,同一又は異なって,水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し,反復単位相互間において同一又は異なっており,A3は,ヒドロキシル基,炭素数1〜12のアルコキシ基,アミノ基,炭素数1〜12のアルキルアミノ基,総炭素数2〜24のジアルキルアミノ基,もしくは,総炭素数3〜36のトリアルキルアンモニウム基を表し,nは,1〜10の整数を表す。)で示される化合物の塩の1種又は2種以上に代えて成る水溶性金属加工油剤組成物。
(9)上記(1)において,一般式(III)の化合物を,平均分子量が300〜10000であるポリエチレンイミンの1種又は2種以上に代えて成る水溶性金属加工油剤組成物,
(10)被加工材料の固定にワックスを用いた機械加工において使用するための上記(1)ないし(9)に記載の水溶性金属加工油剤組成物,
(11)被加工材料が,磁性材料,単結晶又は多結晶シリコン,水晶又は石英である,上記(1)ないし(10)に記載の水溶性金属加工油剤組成物,
(12)機械加工が,外周刃切断加工,内周刃切断加工,固定砥粒型ワイヤソー切断加工又は研削加工である,上記(10)又は(11)に記載の水溶性金属加工油剤組成物。
【発明の効果】
【0011】
上記の各構成になる水溶性金属加工油剤組成物は,機械加工時において鉄系金属に対する防食性,防錆性に優れ,しかも固定ワックスの溶解を防止し,ワックスの溶解に伴う被削材の脱離,発泡,液汚れといった問題を抑制できるという利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一般式(I)で示されるアミン系化合物又はその塩において,R1,R2及びR3につき「炭素数1〜24の炭化水素基」というときは,該「炭化水素基」は,飽和又は不飽和の,直鎖状,分枝鎖状及び脂環式の炭化水素基,並びに芳香族基を含む。そのような基の例としては,メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,tert−ブチル基,sec−ブチル基,n−ヘキシル基,n−オクチル基,n−デシル基,n−ドデシル基,2−エチルヘキシル基,3,5,5−トリメチルヘキシル基,ラウリル基,ミリスチル基,パルミチル基,ステアリル基,シクロヘキシル基及びシクロペンチル基等のような飽和炭化水素基,これらに対応する炭素骨格よりなる不飽和炭化水素基(オレイル基等),並びにフェニル基,ベンジル基,トリル基等が挙げられるが,これらに限定されない。また,R1,R2及びR3につき「炭素数2〜6のヒドロキシ炭化水素基」というときは,ヒドロキシル基が結合している該「炭化水素基」は,飽和又は不飽和の,直鎖状,分枝鎖状の炭化水素基を含む。そのような炭化水素基の例としては,メチル基,エチル基,n−プロピル基,n−ブチル基,イソプロピル基,tert−ブチル基,sec−ブチル基等のような飽和炭化水素基が挙げられるが,これらに限定されない。
【0013】
上記一般式(I)で示されるアミン系化合物又はその塩の例としては,モノエタノールアミン,ジエタノールアミン,トリエタノールアミン,モノイソプロパノールアミン,ジイソプロパノールアミン,トリイソプロパノールアミン,2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール,N−メチルモノエタノールアミン,N−メチルジエタノールアミン,N,N−ジメチルモノエタノールアミン,N−エチルモノエタノールアミン,N−エチルジエタノールアミン,N,N−ジエチルモノエタノールアミン,N−n−ブチルモノエタノールアミン,N−tert−ブチルモノエタノールアミン,N−シクロヘキシルモノエタノールアミン,N−シクロヘキシルジエタノールアミン,N−フェニルモノエタノールアミン,Nフェニルジエタノールアミン等又はそれらの塩が挙げられる。これらの中でも,特に好ましい例としては,モノエタノールアミン,ジエタノールアミン,トリエタノールアミン,モノイソプロパノールアミン,ジイソプロパノールアミン,トリイソプロパノールアミン,2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール,N−メチルモノエタノールアミン,N−メチルジエタノールアミン,N,N−ジメチルモノエタノールアミン,N−エチルモノエタノールアミン,N−エチルジエタノールアミン,N,N−ジエチルモノエタノールアミン,N−n−ブチルモノエタノールアミン,N−tert−ブチルモノエタノールアミン,N−シクロヘキシルモノエタノールアミン,N−シクロヘキシルジエタノールアミン又はそれらの塩が挙げられる。
【0014】
一般式(II)で示されるアミン系化合物又はその塩において,R4につき「炭素数1〜24の炭化水素基」というときは,該「炭化水素基」は,飽和又は不飽和の,直鎖状,分枝鎖状及び脂環式の炭化水素基,並びに芳香族基を含む。そのような基の例としては,メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,tert−ブチル基,sec−ブチル基,n−ヘキシル基,n−オクチル基,n−デシル基,n−ドデシル基,2−エチルヘキシル基,3,5,5−トリメチルヘキシル基,ラウリル基,ミリスチル基,パルミチル基,ステアリル基,シクロヘキシル基及びシクロペンチル基等のような飽和炭化水素基,これらに対応する炭素骨格よりなる不飽和炭化水素基(オレイル基等),並びにフェニル基,ベンジル基,トリル基等が挙げられるが,これらに限定されない。また,R4につき「炭素数2〜6のヒドロキシ炭化水素基」というときは,ヒドロキシル基が結合している該「炭化水素基」は,飽和又は不飽和の,直鎖状,分枝鎖状の炭化水素基を含む。そのような基の例としては,メチル基,エチル基,n−プロピル基,n−ブチル基,イソプロピル基,tert−ブチル基,sec−ブチル基等のような飽和炭化水素基が挙げられるが,これらに限定されない。
【0015】
上記一般式(II)で示されるアミン系化合物又はその塩の例としては,モルホリン,N−メチルモルホリン,N−エチルモルホリン,N−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン,N−シクロヘキシルモルホリン,N−フェニルモルホリン等又はそれらの塩が挙げられる。これらの中でも,特に好ましい例としては,モルホリン,N−メチルモルホリン,N−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン又はそれらの塩が挙げられる。
【0016】
一般式(III)で示される化合物又はその塩において,R27,R28及びR29につき「炭素数1〜24の炭化水素基」というときは,該「炭化水素基」は,飽和又は不飽和の,直鎖状,分枝鎖状及び脂環式の炭化水素基,並びに芳香族基を含む。そのような基の例としては,メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,tert−ブチル基,sec−ブチル基,n−ヘキシル基,n−オクチル基,n−デシル基,n−ドデシル基,2−エチルヘキシル基,3,5,5−トリメチルヘキシル基,ラウリル基,ミリスチル基,パルミチル基,ステアリル基,シクロヘキシル基及びシクロペンチル基等のような飽和炭化水素基,これらに対応する炭素骨格よりなる不飽和炭化水素基(オレイル基等),並びにフェニル基,ベンジル基,トリル基等が挙げられるが,これらに限定されない。ただし,R27,R28及びR29に含まれる炭素原子の総数は1〜36である。
【0017】
上記一般式(III)で示される化合物又はその塩の例としては,トリエチルアミン,トリ−n−プロピルアミン,トリイソプロピルアミン,n−ブチルアミン,ジ−n−ブチルアミン,トリ−n−ブチルアミン,ヘキシルアミン,オクチルアミン,ドデシルアミン,ラウリルアミン等又はそれらの塩が挙げられる。これらの中でも,特に好ましい例としては,トリ−n−プロピルアミン,トリイソプロピルアミン,n−ブチルアミン,ジ−n−ブチルアミン,トリ−n−ブチルアミン,ヘキシルアミン,オクチルアミン又はそれらの塩が挙げられる。
【0018】
上記一般式(IV)で示される化合物又はその塩において,R5,R6,R7及びR8につき「炭素数1〜24の炭化水素基」というときは,該「炭化水素基」は,飽和又は不飽和の,直鎖状,分枝鎖状及び脂環式の炭化水素基,並びに芳香族基を含む。そのような基の例としては,メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,tert−ブチル基,sec−ブチル基,n−ヘキシル基,n−オクチル基,n−デシル基,n−ドデシル基,2−エチルヘキシル基,3,5,5−トリメチルヘキシル基,ラウリル基,ミリスチル基,パルミチル基,ステアリル基,シクロヘキシル基及びシクロペンチル基等のような飽和炭化水素基,これらに対応する炭素骨格よりなる不飽和炭化水素基(オレイル基等),並びにフェニル基,ベンジル基,トリル基等が挙げられるが,これらに限定されない。ただし,R5,R6,R7及びR8に含まれる炭素原子の総数は最大で48である。
【0019】
上記一般式(IV)で示される化合物又はその塩の例としては,テトラメチルアンモニウムクロライド,テトラエチルアンモニウムクロライド,テトラブチルアンモニウムクロライド,テトラメチルアンモニウムブロマイド,テトラエチルアンモニウムブロマイド,テトラブチルアンモニウムブロマイド,テトラメチルアンモニウムヒドロキシド,トリメチルラウリルアンモニウムクロライド,トリエチルオクチルアンモニウムブロマイド等又はそれらの塩が挙げられる。これらの中でも,特に好ましい例としては,テトラメチルアンモニウムクロライド,テトラエチルアンモニウムクロライド,テトラブチルアンモニウムクロライド,テトラメチルアンモニウムブロマイド,テトラエチルアンモニウムブロマイド,テトラブチルアンモニウムブロマイド,テトラメチルアンモニウムヒドロキシド又はそれらの塩が挙げられる。
【0020】
上記一般式(V)で示される化合物又はその塩において,R9,R10,R11及びR12につき「炭素数1〜24の炭化水素基」というときは,該「炭化水素基」は,飽和又は不飽和の,直鎖状,分枝鎖状及び脂環式の炭化水素基,並びに芳香族基を含む。そのような基の例としては,メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,tert−ブチル基,sec−ブチル基,n−ヘキシル基,n−オクチル基,n−デシル基,n−ドデシル基,2−エチルヘキシル基,3,5,5−トリメチルヘキシル基,ラウリル基,ミリスチル基,パルミチル基,ステアリル基,シクロヘキシル基及びシクロペンチル基等のような飽和炭化水素基,これらに対応する炭素骨格よりなる不飽和炭化水素基(オレイル基等),並びにフェニル基,ベンジル基,トリル基等が挙げられるが,これらに限定されない。ただし,R9,R10,R11及びR12に含まれる炭素原子の総数は最大で48である。また,式中A1につき「炭素数1〜24の直鎖状又は分枝鎖状炭化水素基」というときは,該「鎖状炭化水素基」はメチレン基,エチレン基,n−プロピレン基,メチルエチレン基,n−ブチレン基,メチルプロピレン基,n−ヘキシレン基,n−オクチレン基,n−デシレン基,n−ドデシレン基,2−エチルヘキシレン基等が挙げられるが,これらに限定されない。
【0021】
上記一般式(V)で示される化合物又はその塩の例としては,1,4−ブタンジアミン,1,6−ヘキサンジアミン,1,8−オクタンジアミン,1,10−デカンジアミン,N−オクチルエチレンジアミン,N−デシルエチレンジアミン,N−ドデシルエチレンジアミン,N,N−ジエチルエチレンジアミン,N,N−ジプロピルエチレンジアミン,N,N−ジブチルエチレンジアミン,N,N−ジメチル−1,4−ブタンジアミン,N,N−ジエチル−1,4−ブタンジアミン,N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン,N,N−ジメチル−1,6−ブタンジアミン,N,N−ジメチル−1,8−ブタンジアミン,N,N’−ジメチル−1,4−ブタンジアミン,N,N’−ジエチル−1,4−ブタンジアミン,N,N’−ジブチル−1,4−ブタンジアミン,N,N’−ジメチル−1,6−ブタンジアミン,N,N’−ジメチル−1,8−ブタンジアミン,N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン,N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ブタンジアミン,N,N,N’,N’−テトラメチル−1,8−ブタンジアミン,N−シクロヘキシルプロピレンジアミン,1−ジエチルアミノ−4−アミノペンタン等又はそれらの塩が挙げられる。これらの中でも,特に好ましい例としては,1,4−ブタンジアミン,1,6−ヘキサンジアミン,1,8−オクタンジアミン,1,10−デカンジアミン,N,N−ジエチルエチレンジアミン,N,N−ジプロピルエチレンジアミン,N,N−ジブチルエチレンジアミン,N,N−ジメチル−1,4−ブタンジアミン,N,N−ジエチル−1,4−ブタンジアミン,N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン,N,N−ジメチル−1,6−ブタンジアミン,N,N−ジメチル−1,8−ブタンジアミン,N,N’−ジメチル−1,4−ブタンジアミン,N,N’−ジエチル−1,4−ブタンジアミン,N,N’−ジブチル−1,4−ブタンジアミン,N,N’−ジメチル−1,6−ブタンジアミン,N,N’−ジメチル−1,8−ブタンジアミン,N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ブタンジアミン,N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ブタンジアミン,N,N,N’,N’−テトラメチル−1,8−ブタンジアミン,1−ジエチルアミノ−4−アミノペンタン又はそれらの塩が挙げられる。
【0022】
上記一般式(VI)で示される化合物又はその塩において,R9,R10,R11及びR12につき「炭素数1〜24の炭化水素基」というときは,該「炭化水素基」は,飽和又は不飽和の,直鎖状,分枝鎖状及び脂環式の炭化水素基,並びに芳香族基を含む。そのような基の例としては,メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,tert−ブチル基,sec−ブチル基,n−ヘキシル基,n−オクチル基,n−デシル基,n−ドデシル基,2−エチルヘキシル基,3,5,5−トリメチルヘキシル基,ラウリル基,ミリスチル基,パルミトイル基,ステアロイル基,オレオイル基,シクロヘキシル基及びシクロペンチル基等のような飽和炭化水素基,これらに対応する炭素骨格よりなる不飽和炭化水素基,並びにフェニル基,ベンジル基,トリル基等が挙げられるが,これらに限定されない。ただし,R9,R10,R11及びR12に含まれる炭素原子の総数は最大で48である。また,式中A1’につき「炭素原子4〜8個によって構成される環状炭化水素基を含んでなる炭素数4〜24の炭化水素基」というときは,該「環状炭化水素基」は,シクロブチル基,シクロペンチル基,シクロヘキシル基,シクロヘプチル基,シクロオクチル基,シクロペンタジエニル基,フェニル基等が挙げられ,該「炭素数4〜24の炭化水素基」は,シクロブチレン基,シクロペンチレン基,シクロヘキシレン基,シクロヘプチレン基,シクロオクチレン基,メチルシクロブチレン基,メチルシクロペンチレン基,メチルシクロヘキシレン基,メチルシクロヘプチレン基,メチルシクロオクチレン基,エチルシクロブチレン基,エチルシクロペンチレン基,エチルシクロヘキシレン基,エチルシクロヘプチレン基,エチルシクロオクチレン基,ジメチルシクロブチレン基,ジメチルシクロペンチレン基,ジメチルシクロヘキシレン基,ジメチルシクロヘプチレン基,ジメチルシクロオクチレン基,トリメチルシクロブチレン基,トリメチルシクロペンチレン基,トリメチルシクロヘキシレン基,トリメチルシクロヘプチレン基,トリメチルシクロオクチレンル基,プロピルシクロブチレン基,プロピルシクロペンチレン基,プロピルシクロヘキシレン基,プロピルシクロヘプチレン基,プロピルシクロオクチレン基,ブチルシクロブチレン基,ブチルシクロペンチレン基,ブチルシクロヘキシレン基,ブチルシクロヘプチレン基,ブチルシクロオクチレン基,ヘキシルシクロブチレン基,ヘキシルシクロペンチレン基,ヘキシルシクロヘキシレン基,ヘキシルシクロヘプチレン基,ヘキシルシクロオクチレン基,オクチルシクロブチレン基,オクチルシクロペンチレン基,オクチルシクロヘキシレン基,オクチルシクロヘプチレン基,オクチルシクロオクチレン基,デシルシクロブチレン基,デシルシクロペンチレン基,デシルシクロヘキシレン基,デシルシクロヘプチレン基,デシルシクロオクチレン基,ドデシルシクロブチレン基,ドデシルシクロペンチレン基,ドデシルシクロヘキシレン基,ドデシルシクロヘプチレン基,ドデシルシクロオクチレン基,シクロペンタジエニレン基,メチルシクロペンタジエニレン基,エチルシクロペンタジエニレン基,プロピルシクロペンタジエニレン基,ブチルシクロペンタジエニレン基,ヘキシルシクロペンタジエニレン基,オクチルシクロペンタジエニレン基,デシルシクロペンタジエニレン基,ドデシルシクロペンタジエニレン基,フェニレン基,トリレン基,ジメチルフェニレン基,エチルフェニレン基,ブチルフェニレン基,ヘキシルフェニレン基,オクチルフェニレン基,デシルフェニレン基,ドデシルフェニレン基,ベンジレン基,グリシジレン基等が挙げられるが,これらに限定されない。
【0023】
上記一般式(VI)で示される化合物又はその塩の例としては,1,2−ジアミノシクロヘキサン,1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン,1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン,イソホロンジアミン,o−キシリレンジアミン,m−キシリレンジアミン,p−キシリレンジアミン,N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン,2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン,N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン,3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン,4,4’−ジアミノジフェニルメタン等又はそれらの塩が挙げられる。これらの中でも,特に好ましい例としては,1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン,1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン,イソホロンジアミン,m−キシリレンジアミン,N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン,3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン又はそれらの塩が挙げられる。
【0024】
上記一般式(VII)で示される化合物又はその塩において,R13及びR14につき「炭素数1〜24の炭化水素基」というときは,該「炭化水素基」は,飽和又は不飽和の,直鎖状,分枝鎖状及び脂環式の炭化水素基,並びに芳香族基を含む。そのような基の例としては,メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,tert−ブチル基,sec−ブチル基,n−ヘキシル基,n−オクチル基,n−デシル基,n−ドデシル基,2−エチルヘキシル基,3,5,5−トリメチルヘキシル基,ラウリル基,ミリスチル基,パルミトイル基,ステアロイル基,オレオイル基,シクロヘキシル基及びシクロペンチル基等のような飽和炭化水素基,これらに対応する炭素骨格よりなる不飽和炭化水素基,並びにフェニル基,ベンジル基,トリル基等が挙げられるが,これらに限定されない。また,R13及びR14とが一緒になってこれらと結合している窒素原子と共に構成する環状構造の例としては,ピペリジン環,ピペコリン環等が挙げられるが,これらに限定されない。また,式中A2における該環状構造の例としては,ピペラジン環,イミダゾール環,トリアジン環,ピコリン環,ピリジン環,ピペリジン環が挙げられるが,これらに限定されない。該環状構造と,R13及びR14の結合した窒素とは,直接に又は炭素数1〜6の炭化水素基を介して結合していてよい。
上記一般式(VII)で示される化合物又はその塩の例としては,N−(2−アミノエチル)ピペラジン,1,4−ビス(アミノプロピル)ピペラジン,N−(3−アミノプロピル)イミダゾール,1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン,ピコリルアミン,4−(N−メチルアミノエチル)ピリジン,4−(N,N−ジメチルアミノエチル)ピリジン,4−ピペリジノエチルピリジン,4−(4−ピペコリノエチル)ピリジン等又はそれらの塩が挙げられる。これらの中でも,特に好ましい例としては,N−(2−アミノエチル)ピペラジン,1,4−ビス(アミノプロピル)ピペラジン,N−(3−アミノプロピル)イミダゾール,1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン又はそれらの塩が挙げられる。
【0025】
上記一般式(VIII)で示される化合物又はその塩において,R22,R23,R24及びR25につき「炭素数1〜24の炭化水素基」というときは,該「炭化水素基」は,飽和又は不飽和の,直鎖状,分枝鎖状及び脂環式の炭化水素基,並びに芳香族基を含む。そのような基の例としては,メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,tert−ブチル基,sec−ブチル基,n−ヘキシル基,n−オクチル基,n−デシル基,n−ドデシル基,2−エチルヘキシル基,3,5,5−トリメチルヘキシル基,ラウリル基,ミリスチル基,パルミチル基,ステアリル基,シクロヘキシル基及びシクロペンチル基等のような飽和炭化水素基,これらに対応する炭素骨格よりなる不飽和炭化水素基(オレイル基等),並びにフェニル基,ベンジル基,トリル基等が挙げられるが,これらに限定されない。ただし,R22,R23,R24及びR25に含まれる炭素原子の総数は最大で48である。R26の例としては,分枝を含んでいてよい炭素数2〜6のアルキレン基,例えば,エチレン基,プロピレン基,ブチレン基,2,2−ジメチルプロピレン基等が挙げられる。
【0026】
上記一般式(VIII)で示される化合物又はその塩の例としては,ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル,ジエチレングリコールビス(2−アミノエチル)エーテル,ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル,1,4−ブタンジオールビス(3−アミノプロピル)エーテル,ペンタプロピレングリコール(2−アミノプロピル)(2−アミノイソプロピル)エーテル,1,3−ビス−(3−アミノプロポキシ)−2,2−ジメチルプロパン等又はそれらの塩が挙げられる。これらの中でも,特に好ましい例としては,ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル,ジエチレングリコールビス(2−アミノエチル)エーテル,ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル,1,4−ブタンジオールビス(3−アミノプロピル)エーテル,1,3−ビス−(3−アミノプロポキシ)−2,2−ジメチルプロパン又はそれらの塩が挙げられる。
【0027】
上記一般式(IX)で示される化合物又はその塩において,R9,R10,R11及びR12につき「炭素数1〜24の炭化水素基」というときは,該「炭化水素基」は,飽和又は不飽和の,直鎖状,分枝鎖状及び脂環式の炭化水素基,並びに芳香族基を含む。そのような基の例としては,メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,tert−ブチル基,sec−ブチル基,n−ヘキシル基,n−オクチル基,n−デシル基,n−ドデシル基,2−エチルヘキシル基,3,5,5−トリメチルヘキシル基,ラウリル基,ミリスチル基,パルミチル基,ステアリル基,シクロヘキシル基及びシクロペンチル基等のような飽和炭化水素基(オレイル基等),これらに対応する炭素骨格よりなる不飽和炭化水素基,並びにフェニル基,ベンジル基,トリル基等が挙げられるが,これらに限定されない。ただし,R9,R10,R11及びR12に含まれる炭素原子の総数は最大で48である。また,式中A1は,一般式(X)で表され,式中R15につき「炭素数1〜12の炭化水素基」というときは,該「炭化水素基」は,飽和又は不飽和の,直鎖状,分枝鎖状及び脂環式の炭化水素基,並びに芳香族基を含む。そのような基の例としては,メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,tert−ブチル基,sec−ブチル基,n−ヘキシル基,n−オクチル基,n−デシル基,n−ドデシル基,2−エチルヘキシル基,3,5,5−トリメチルヘキシル基,ラウリル基,パルミチル基,シクロヘキシル基及びシクロペンチル基等のような飽和炭化水素基,これらに対応する炭素骨格よりなる不飽和炭化水素基,並びにフェニル基,ベンジル基,トリル基等が挙げられるが,これらに限定されない。式中nは,1〜10の整数である。
【0028】
上記一般式(IX)で示される化合物又はその塩の例としては,ジエチレントリアミン,トリエチレンテトラミン,ペンタエチレンヘキサミン,ビス(3−ジメチルアミノプロピル)アミン,ビス(2−ジメチルアミノエチル)アミン,N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジプロピレントリアミン,N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン等又はそれらの塩が挙げられるが,それらに限定されない。
【0029】
上記一般式(XI)で示される化合物又はその塩において,R18,R19,R20及びR21につき「炭素数1〜12の炭化水素基」というときは,該「炭化水素基」は,飽和又は不飽和の,直鎖状,分枝鎖状及び脂環式の炭化水素基,並びに芳香族基を含む。そのような基の例としては,メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,tert−ブチル基,sec−ブチル基,n−ヘキシル基,n−オクチル基,n−デシル基,n−ドデシル基,2−エチルヘキシル基,3,5,5−トリメチルヘキシル基,ラウリル基,パルミチル基,シクロヘキシル基及びシクロペンチル基等のような飽和炭化水素基,これらに対応する炭素骨格よりなる不飽和炭化水素基,並びにフェニル基,ベンジル基,トリル基等が挙げられるが,これらに限定されない。また,式中A3は,ヒドロキシル基,炭素数1〜12のアルコキシ基,アミノ基,炭素数1〜12のアルキルアミノ基,総炭素数2〜24のジアルキルアミノ基,もしくは,総炭素数3〜36のトリアルキルアンモニウム基を表す。式中nは,1〜10の整数である。
【0030】
上記一般式(XI)で示される化合物又はその塩の例としては,ポリ[オキシエチレン(ジメチルイミノ)エチレン(ジメチルイミノ)エチレンジクロライド](重合数10〜17)等又はそれらの塩が挙げられるが,それらに限定されない。
【0031】
使用時における本発明の水溶性金属加工油剤組成物のpHは,好ましくは7.0〜12.0,より好ましくは7.0〜11.0である。十分な防錆性を得るにはpHが7.0以上であることが好ましく,手荒れの原因となる皮膚刺激性等を考慮すると,pHが12.0以下であることが望ましいためである。
【0032】
上記一般式(I)もしくは上記一般式(II)で示されるアミン系化合物又はその塩と,上記一般式(III),(IV),(V),(VI),(VII),(VIII),(IX)もしくは(XI)で示される化合物又はその塩との重量比は,好ましくは,1:100〜100:1(より好ましくは1:50〜100:1,更に好ましくは1:20〜100:1)である。これは,重量比が1:100〜100:1の範囲において,十分な防錆性を維持しつつワックスの溶解を十分に抑制できるからである。
【0033】
上記一般式(I)もしくは上記一般式(II)で示されるアミン系化合物又はその塩と平均分子量が300〜10000であるポリエチレンイミンとの重量比は,好ましくは,1:100〜100:1(より好ましくは1:50〜100:1,更に好ましくは1:20〜100:1)である。これは,重量比が1:100〜100:1の範囲において,十分な防錆性を維持しつつワックスの溶解を十分に抑制できるからである。
【0034】
本発明の水溶性金属加工油剤組成物は水溶液状であり,その元々の濃度で,及びサマリウム−コバルト合金,ネオジム−鉄合金等の磁性材料,単結晶及び多結晶シリコン等の半導体材料,水晶,石英等の材料等の加工時に求められる性能に応じて,適宜の希釈倍率(通常は,2〜100倍)で水で希釈して使用に供することができる。
【0035】
また,本発明の組成物には,有機酸,潤滑性向上剤,極圧添加剤,無機塩類,消泡剤,防腐剤,防食剤等を,固定ワックスの溶解抑制,防錆性を阻害しない範囲において適宜配合して調製し,使用することができる。上記有機酸としては,カプリル酸,ペラルゴン酸,イソノナン酸,カプリン酸,ラウリン酸,ステアリン酸,オレイン酸,安息香酸,p−tert−ブチル安息香酸,アジピン酸,スベリン酸,セバシン酸,アゼライン酸,ドデカン二酸等が挙げられる。
【0036】
上記潤滑性向上剤としては,鉱物油,合成炭化水素油,エステル油,植物油,界面活性剤等が挙げられる。鉱物油は,天然の原油から分離されるものであり,これを適当に蒸留,精製等することにより製造される。鉱物油の主成分は炭化水素(多くはナフテン類である)であり,その他パラフィン分,芳香族分等を含有しているものである。
【0037】
合成炭化水素油としては,化学的に合成された炭化水素であって,具体的には,ポリ−α−オレフィン,ポリイソブチレン(ポリブテン)等が挙げられ,ポリ−α−オレフィンは,具体的には,1−ヘキセン,1−オクテン,1−ノネン,1−デセン,1−ドデセン,1−テトラデセン等をポリマー化又はオリゴマー化したもの或いはこれらを水素化したもの等が挙げられる。
【0038】
エステル油としては,化学的に合成された潤滑油であって,ジエステル,ポリオールエステル,リン酸エステル,ケイ酸エステル等が挙げられる。具体的には,ジエステルとしては,グルタル酸,アジピン酸,アゼライン酸,セバシン酸,ドデカン二酸等の二塩基酸と,2−エチルヘキサノール,オクタノール,デカノール,ドデカノール,トリデカノール等のアルコールのジエステル等が挙げられる。ポリオールエステルとしては,ネオペンチルグリコール,トリメチロールエタン,トリメチロールプロパン,グリセリン,ジグリセリン,ポリグリセリン,ペンタエリスリトール,ソルビトール,ジペンタエリスリトール,トリペンタエリスリトール,或いはこれらのアルキレンオキサイド付加物等のポリオールと,酪酸,イソ酪酸,吉草酸,イソ吉草酸,ピバル酸,カプロン酸,カプリル酸,カプリン酸,ラウリン酸,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸,リノール酸等の脂肪酸とのエステル等が挙げられる。
【0039】
植物油としては,具体的には,綿実油,オリーブ油,ナタネ油,ゴマ油,ひまわり油,やし油,パーム油,トール油,大豆油,ヒマシ油,亜麻仁油等が挙げられる。
【0040】
界面活性剤としては,具体的には,脂肪酸アミン石鹸,石油スルホネート,硫酸化油,アルキルスルホンアミドカルボン酸塩,カルボキシ化油脂等のアニオン系界面活性剤,ソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,プロピレングリコール脂肪酸エステル,ポリエチレングリコール脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル,脂肪酸アルキロールアミド等のノニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0041】
極圧添加剤としては,塩素系,硫黄系,リン系等が代表的であるが,具体的には,塩素系としては,塩素化パラフィン,塩素化脂肪酸,塩素化脂肪油等が挙げられる。硫黄系としては,硫化オレフィン,硫化ラード,アルキルポリサルファイド,硫化脂肪酸等が挙げられる。リン系としては,リン酸エステル(塩)系,亜リン酸エステル(塩)系,チオリン酸エステル(塩)系,ホスフィン系,リン酸トリクレジル等が挙げられる。
【0042】
無機塩類としては,リン酸塩,炭酸塩等が挙げられ,具体的には,リン酸ソーダ,リン酸カリウム,炭酸ソーダ,炭酸カリウム等が挙げられる。
【0043】
消泡剤としては,シリコン系消泡剤,ポリオキシアルキレン系消泡剤,鉱油系消泡剤等が挙げられる。具体的には,シリコン系消泡剤としては,ジメチルポリシロキサン,変性ポリシロキサン等が挙げられる。ポリオキシアルキレン系消泡剤としては,ポリオキシプロピレン,ポリオキシブチレン等が挙げられる。また,鉱油系消泡剤としては,ナフテン系,パラフィン系等が挙げられる。
【0044】
防腐剤としては,トリアジン系,イソチアゾリン系又はフェノール系等が代表的であるが,具体的には,トリアジン系としては,ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。イソチアゾリン系としては,1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン,5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン,2−メチル−イソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。フェノール系としては,オルトフェニルフェノール,2,3,4,6−テトラクロロフェノール等が挙げられる。
【0045】
防食剤としては,トリアゾール類等が挙げられ,具体的には,ベンゾトリアゾール,トリルトリアゾール,3−アミノトリアゾール等が挙げられる。
【実施例】
【0046】
以下,本発明を実施例および比較例に基づいて更に具体的に説明する。
〔実施例1〜18および比較例1〜5〕
表1(実施例1〜9),表2(実施例10〜18)及び表3(比較例)に示す成分組成(数値は重量%)に従って,水に各成分を溶解させることにより水溶性金属加工油剤組成物を調製し,それらの性能試験として下記に示す防錆試験,ワックス溶解試験を行った。
【0047】
防錆試験:
φ50mmのシャーレに,表1,表2及び表3の水溶性金属加工油剤組成物と鋳物切粉5gを入れ,10分放置後液を切り,温度30℃,湿度80%の環境下で放置し,発錆状態を目視で観察した。評価は最大防錆期間に応じて2段階で行った。その結果を表1,表2及び表3中に示す。○は「24時間以上発錆なし」の評価を示し,×は「24時間以内に発錆」の評価を示す。
【0048】
ワックス溶解試験:
表1,表2及び表3の水溶性金属加工油剤組成物100mlに固定用ワックス1gを入れ,常温,1週間静置した後のワックスの溶解状況を目視にて判定した。上記固定用ワックスとしては,アドフィックスA,アドフィックス(共に日化精工社製)を用いた。その結果を表1,表2及び表3中に示す。○は「ワックス溶解なし」の評価を示し,×は「ワックス溶解」の評価を示す。なお,表1,表2及び表3の水溶性金属加工油剤組成物(水で希釈した状態)の25℃におけるpHを,(株)堀場製作所製のガラス電極式水素イオン濃度計を用いて測定した。その結果も表1,表2及び表3中に示す。
【0049】
【表1】


【0050】
【表2】


【0051】
【表3】


【産業上の利用可能性】
【0052】
本願発明によって,サマリウム−コバルト合金,ネオジム−鉄合金等の磁性材料,単結晶及び多結晶シリコン等の半導体材料,水晶,石英等の材料を固定するためのワックスを使用する外周刃切断加工,内周刃切断加工,固定砥粒型ワイヤソー切断加工及び研削加工において,特に被削材を固定するワックスの溶解の抑制能力に優れ,防錆性,防食性を有する水溶性金属加工油剤が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)
【化1】


(式中,R1,R2及びR3は,同一又は異なって,水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基,又は,炭素数2〜6のヒドロキシ炭化水素基を表し,ただし,R1,R2及びR3のうち少なくとも1つは,炭素数2〜6のヒドロキシ炭化水素基である。)もしくは下記の一般式(II)
【化2】


(式中,R4は,水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基,又は,炭素数2〜6のヒドロキシ炭化水素基を表す。)で示されるアミン系化合物又はその塩の1種又は2種以上を含有し,且つ,下記の一般式(III)
【化3】



(式中,R9,R10,R11及びR12は,同一又は異なって,水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基を表し,ただし,R9,R10,R11及びR12に含まれる炭素原子の総数は最大で48であり,A1’は,炭素原子4〜8個によって構成される環状炭化水素基を含んでなる炭素数4〜24の炭化水素基を表す。)で示される化合物又はその塩の1種又は2種以上を含有し,溶液のpHが7.0〜12.0であることを特徴とする水溶性金属加工油剤組成物。
【請求項2】
被加工材料の固定にワックスを用いた機械加工において使用するための請求項1に記載の水溶性金属加工油剤組成物。
【請求項3】
機械加工が,外周刃切断加工,内周刃切断加工,固定砥粒型ワイヤソー切断加工又は研削加工である,請求項2に記載の水溶性金属加工油剤組成物。
【請求項4】
被加工材料が,磁性材料,単結晶又は多結晶シリコン,水晶又は石英である,請求項1ないし3の何れかに記載の水溶性金属加工油剤組成物。

【公開番号】特開2010−1489(P2010−1489A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196141(P2009−196141)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【分割の表示】特願2003−181962(P2003−181962)の分割
【原出願日】平成15年6月26日(2003.6.26)
【出願人】(000135265)株式会社ネオス (95)
【Fターム(参考)】