説明

水溶性金属加工液

【課題】耐腐敗性に優れ、且つアミン臭の低減された水溶性金属加工液を提供すること。
【解決手段】2−アミノ−1−プロパノール及び3−アミノ−1−プロパノールの少なくとも一方を含有するアミン化合物を配合してなる水溶性金属加工液である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水溶性金属加工液、さらに詳しくは、腐敗抑制性能に優れ、かつ作業環境を改善し得るものであり、特に、切削加工や研削加工に有効な水溶性金属加工液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、切削・研削加工用途に用いられる水溶性金属加工液は、一定期間の使用や貯蔵後に、加工液中に含まれる成分が細菌等の微生物によって分解され、加工液が腐敗するという問題が知られていた。この問題を解決するため、金属加工液に抗菌・殺菌剤などを配合する手法が知られており、中でもアルカノールアミン類が広く使用されており、特に一級アミンは優れた抗菌・殺菌性能を示すことが知られている。例えば、特許文献1では、モノエタノールアミンやモノイソプロパノールアミンを配合した水溶性切削油剤組成物が提案されている。しかしながら、特許文献1に提案されている水溶性切削油剤組成物は、アミン臭が強く、作業環境を悪化させるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−199199
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、耐腐敗性に優れ、且つアミン臭の低減された水溶性金属加工液を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、2−アミノ−1−プロパノール及び3−アミノ−1−プロパノールの少なくとも一方を含有するアミン化合物を配合してなる水溶性金属加工液により、上記課題が解決されることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、
1.2−アミノ−1−プロパノール及び3−アミノ−1−プロパノールの少なくとも一方を含有するアミン化合物を配合してなる水溶性金属加工液、
2.さらに、脂肪酸類及び脂肪酸類誘導体の少なくとも一方を配合してなる上記1記載の水溶性金属加工液、
3.前記脂肪酸のカルボキシル基に対する、前記アミン化合物のアミノ基の当量比が1.1〜1.9である上記2記載の水溶性金属加工液、
4.前記アミン化合物基準で、2−アミノ−1−プロパノール及び3−アミノ−1−プロパノールを40モル%以上含有する上記1〜3のいずれかに記載の水溶性金属加工液、
5.前記アミン化合物の配合量が、1〜50質量%である上記1〜4のいずれかに記載の水溶性金属加工液、
6.上記1〜5のいずれかに記載の水溶性金属加工液を水で希釈してなる希釈水溶性金属加工液、及び
7.前記アミン化合物の濃度が、窒素分換算で0.01〜0.5質量%である上記6記載の希釈水溶性金属加工液、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐腐敗性に優れ、且つアミン臭の低減された水溶性金属加工液が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の水溶性金属加工液は、2−アミノ−1−プロパノール及び3−アミノ−1−プロパノールの少なくとも一方を含有するアミン化合物を配合して得られるものである。2−アミノ−1−プロパノール及び/又は3−アミノ−1−プロパノールを配合することで、十分な加工性能を維持しつつ、アミン臭の低減された水溶性金属加工液が得られ、作業環境の悪化を抑制することができる。
【0008】
上記アミン化合物は、2−アミノ−1−プロパノール及び3−アミノ−1−プロパノール以外のものを含有していてもよい。2−アミノ−1−プロパノール及び3−アミノ−1−プロパノール以外のアミン化合物の具体例としては、モノ置換アミンの例として、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ベンジルアミンなどを挙げることができ、ジ置換アミンの例として、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ジステアリルアミン、ジオレイルアミン、ジベンジルアミン、ステアリル・モノエタノールアミン、デシル・モノエタノールアミン、ヘキシル・モノプロパノールアミン、ベンジル・モノエタノールアミン、フェニル・モノエタノールアミン、トリル・モノプロパノールアミンなどを挙げることができ、トリ置換アミンの例として、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、トリステアリルアミン、トリオレイルアミン、トリベンジルアミン、ジオレイル・モノエタノールアミン、ジラウリル・モノプロパノールアミン、ジオクチル・モノエタノールアミン、ジヘキシル・モノプロパノールアミン、ジブチル・モノプロパノールアミン、オレイル・ジエタノールアミン、ステアリル・ジプロパノールアミン、ラウリル・ジエタノールアミン、オクチル・ジプロパノールアミン、ブチル・ジエタノールアミン、ベンジル・ジエタノールアミン、フェニル・ジエタノールアミン、トリル・ジプロパノールアミン、キシリル・ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミンなどを挙げることができる。
アミン化合物は、その全量基準で、2−アミノ−1−プロパノール及び3−アミノ−1−プロパノールを40モル%以上含有することが好ましく、60モル%以上含有することがより好ましく、80モル%以上含有することがさらに好ましい。
【0009】
本発明においては、2−アミノ−1−プロパノール及び/又は3−アミノ−1−プロパノールを含むアミン化合物の配合量(濃度)は、水で希釈する前の原液の水溶性金属加工液基準で1〜50質量%であることが好ましく、3〜30質量%であることがより好ましく、5〜25質量%であることがさらに好ましい。アミン化合物の配合量(濃度)が、1質量%以上であれば、耐腐敗性能が良好に発現し、50質量%以下であれば、アミン臭が十分に低減され、また、配合量に見合った性能が得られる。
【0010】
本発明においては、上記アミン化合物とともに、脂肪酸類及び/又は脂肪酸類誘導体を配合することが好ましい。
脂肪酸類及び/又は脂肪酸類誘導体を配合することによって、アミン化合物と脂肪酸アミン塩を形成し、加工性能を高め、または乳化剤として作用して乳化安定性を高め、さらに防錆性を高める効果がある。
ここで用いる脂肪酸類や脂肪酸類誘導体としては、好ましくは炭素数4以上150以下、より好ましくは炭素数8以上120以下のものが挙げられ、より具体的には、脂肪族モノカルボン酸、ヒドロキシ脂肪酸、脂肪族ジカルボン酸、天然油脂由来脂肪酸、前記脂肪酸のダイマー酸及び前記ヒドロキシ脂肪酸の重縮合物が挙げられ、それらの脂肪酸類及び脂肪酸類誘導体から選ばれる1種又は2種以上を配合することが好ましい。
前記脂肪族モノカルボン酸、ヒドロキシ脂肪酸、脂肪族ジカルボン酸は、いずれも直鎖状若しくは分岐状のいずれであってもよく、また飽和又は不飽和のいずれでもよい。
【0011】
上記脂肪族モノカルボン酸としては、好ましくは炭素数8〜30のもの、より好ましくは炭素数8〜20のものが用いられ、具体例としては、各種オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノルマルデカン酸、ネオデカン酸等の各種デカン酸、各種ウンデカン酸、各種ドデカン酸、各種トリデカン酸、各種ペンタデカン酸、各種ヘプタデカン酸、各種ノナデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、エライジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸等が挙げられる。
上記ヒドロキシ脂肪酸としては、好ましくは炭素数8〜30のもの、より好ましくは炭素数8〜20のものが用いられ、具体例としては、ヒドロキシラウリル酸、ヒドロキシミリスチン酸、ヒドロキシパルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシアラキン酸、ヒドロキシベヘン酸、リシノレイン酸、ヒドロキシオクタデセン酸等が挙げられる。
上記脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、セバシン酸、ドデカン二酸、ドデシルコハク酸、ラウリルコハク酸、ステアリルコハク酸、イソステアリルコハク酸等が挙げられる。
上記天然由来油脂脂肪酸の具体例としては、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸、ナタネ脂肪酸、とうもろこし脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、ごま油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ひまわり油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、あまに油脂肪酸、魚油脂肪酸、硬化魚油脂肪酸、トール油脂肪酸等が挙げられる。
また、脂肪酸類誘導体としては上記各種脂肪酸のダイマー酸やヒドロキシ脂肪酸の重縮合物(リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、天然由来油脂肪酸などの重縮合物、例えば2〜6量体)などが挙げられる。
【0012】
本発明においては、脂肪酸類若しくは脂肪酸類誘導体の配合量は、水溶性金属加工液(原液)全量基準で、5〜60質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましく、10〜25質量%であることがさらに好ましい。5質量%以上であれば、加工性能や乳化安定性が向上し、一方、60質量%以下であれば、配合量に見合った性能が得られる。
また、脂肪酸類や脂肪酸類誘導体の配合量は、アミン化合物との当量比を考慮して決定されることが好ましく、具体的には、脂肪酸類及び脂肪酸類誘導体のカルボキシル基の合計に対して、アミン化合物のアミノ基の当量比が、1.1〜1.9であると好ましく、1.3〜1.7であるとより好ましい。上記範囲内であると、アミン化合物が過剰となるため、耐腐敗性の観点で好ましい。
【0013】
上記脂肪酸類や脂肪酸類誘導体は、それ自身を単独で水溶性金属加工液に配合してもよいが、該脂肪酸類や脂肪酸類誘導体をアミン化合物と前もって反応させた反応生成物である脂肪酸類及び/又は脂肪酸類誘導体のアミン塩(脂肪酸類及び/又は脂肪酸類誘導体の2−アミノ−1−プロパノール及び/又は3−アミノ−1−プロパノール塩を含む。)を配合しても良い。
この方法であれば、水溶性金属加工液中に脂肪酸類及び/又は脂肪酸類誘導体のアミン塩がより高濃度に存在し、加工性能や乳化安定性をより高めることができる場合がある。
なお、この反応は、例えば、二成分を溶剤の存在下又は不存在下で、およそ室温〜80℃の温度で攪拌混合して行うことができる。
脂肪酸類及び/又は脂肪酸類誘導体のアミン塩の配合量は、通常水溶性金属加工液(原液)全量基準で10〜70質量%であることが好ましい。
【0014】
本発明においては、さらに必要に応じて、アルカリ金属の水酸化物などの塩基性化合物、界面活性剤、鉱油もしくは合成油などの潤滑油基油、防腐剤、金属不活性化剤及び消泡剤などを配合することができる。
アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどが挙げられる。
これらの塩基性化合物は、水溶性金属加工液のアルカリ度を調整し、また、水溶性金属加工液中脂肪酸などとアミン塩やアルカリ金属塩を形成して加工性能の向上をもたらす効果がある。
この塩基性化合物の配合量は、通常他の配合成分による酸性成分を中和する中和当量近傍になるように選択すればよい。
【0015】
前記界面活性剤としては、特に制限はなくノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系面活性剤、両性界面活性剤が使用でき、また、これら界面活性剤を混合して使用することができる。好適な例としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、又はそれらの界面活性剤の混合物が挙げられる。
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコール又はそのモノ、ジエーテル化合物、グリセリン若しくはそのアルキレンオキサイド付加物又はエーテル化合物等のポリオキシアルキレン系界面活性剤、カルボン酸とアルコールとのエステル、アルキルアミンのアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
前記アニオン系界面活性剤としては、カルボン酸(例えば、炭素数7〜22飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシ脂肪酸など)又はスルホン酸とアミン又は金属との塩、リシノール酸などヒドロキシ脂肪酸の重縮合物と脂肪酸とのエステル又はそのアミン又は金属との塩、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどの硫酸エステル塩類などのリン酸エステル塩類、スチレン等のオレフィンと無水マレイン酸共重合物等を部分ケン化した重合系高分子界面活性剤、ナフタレンスルホン酸−ホルマリン縮合型高分子界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤の配合量は、通常水溶性金属加工液(原液)全量基準で3〜50質量%であることが好ましい。
【0016】
前記潤滑油基油である鉱油もしくは合成油としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系など各種鉱油や、デセンオリゴマーやポリイソブチレンなどのポリα−オレフィン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンなどの直鎖オレフィン、アルキルベンゼン、油脂、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコールやそのエーテル誘導体などのポリグリコールなどが挙げられる。
これらの鉱油もしくは合成油は、40℃における動粘度が5〜50mm2/sであるものが好ましい。
前記潤滑油基油配合量は、通常水溶性金属加工液(原液)全量基準で10〜80質量%であることが好ましい。
【0017】
前記防腐剤(殺菌剤)としては、例えば、トリアジン系防腐剤、アルキルベンゾイミダゾール系防腐剤などが挙げられる。
また、前記金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾチアゾール系などが挙げられる。
消泡剤としては、シリコン系、フッ素化シリコン系などが挙げられる。
【0018】
本発明の水溶性金属加工液は、通常、油剤の原液であり、その原液を、加工条件に応じて適宜水で希釈し、希釈水溶性金属加工液として使用する。水による希釈倍率は、通常、およそ3〜200体積倍、好ましくは5〜100体積倍である。
また、本発明の水溶性金属加工液を希釈する場合には、上記アミン化合物の濃度が、窒素分換算で好ましくは0.01〜0.5質量%、より好ましくは0.025〜0.1質量%以上となるように希釈液を調製する。希釈水溶性金属加工液のアミン化合物の濃度が窒素分換算で0.01質量%以上であると、十分な耐腐敗性能が得られ、また、0.5質量%以下であるとアミン臭気が十分に抑制され、且つコストに見合った耐腐敗性能が得られる。
【実施例】
【0019】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、水溶性金属加工液の性能評価は、以下に示す方法に従って行った。
【0020】
1.臭気強度評価
希釈水溶性金属加工液を入れたガラス製容器1本と、水を入れたガラス製容器2本とをサンプルとして用意した。パネラーが3本のサンプル容器の蓋を開けて、それぞれについて臭気の有無を確認した。パネラーが希釈水溶性金属加工液を入れたサンプルを言い当てることができた場合には、希釈水溶性金属加工液をさらに希釈し、再度同様の判定を行った。上記臭気判定と希釈作業を、パネラーが臭気を確認できなくなるまで繰り返し、パネラーが臭気を確認できなかった希釈倍率(X)を特定した。この希釈倍率(X)に基づき、下記式より臭気指数を算出した。
臭気指数=10×logX
【0021】
2.臭気不快度評価
窒素分0.1質量%の希釈水溶性金属加工液をガラス製容器に入れてサンプルとした。パネラーが各サンプルの蓋を開けて、それぞれの臭気を以下の基準で判定した。
好:不快な臭いを感じない
嫌:不快な臭いを感じる
【0022】
3.耐腐敗性能
窒素分0.1質量%と、窒素分0.025質量%の希釈水溶性金属加工液各100mlに、下記に示す腐敗液をそれぞれ10mlずつ添加し、30℃、150rpmで10日間振とう培養を行い、生菌数を測定した。腐敗試験の条件、生菌数の測定方法は、下記のようにして行った。
<腐敗試験条件>
培養条件:30℃、150rpmで振とうした。
腐敗液:腐敗劣化したエマルション型切削液に日本製薬製SCD培地「ダイゴ」を加え72時間エアレーションして活性化させたものに蒸留水を加えて希釈し、生菌数を調整した。後述の方法で生菌数を測定したところ、1,245,601個/mlであった。
<生菌数の測定方法>
1ml中の菌数または菌による汚染度合いをpromega社製、GloMaxTM 96 Microplate Luminometerにより測定した。
【0023】
4.加工性能
水溶性金属加工液を水で5容量%に希釈し、下記の条件で下穴ドリル加工を行った後、転造タップ加工を行い、転造タップ加工時のタップトルクを測定した。その結果を下記の評価基準で示した。さらに、加工精度についても、下記の評価基準で示した。
<下穴ドリル加工及び転造タップ加工の加工条件>
・使用機械:株式会社メクトロン社製「タッピングセンターMTV−T350」
・被削材:アルミ合金A6061
・下穴加工条件
使用工具:住友電工ハードメタル株式会社製 イゲタロイ スーパーマルチドリルMDS093MG、T4120、φ9.3
速度=80m/min
送り=0.15mm/rev
深さ=30mm(止まり穴)
・タップ加工条件
工具:オーエスジー株式会社製ニューロール
タップ:B−NRT、M10×P1.5
速度=20m/min
深さ=25mm
・加工n数:9
【0024】
<評価基準>
1)タップトルク
良好:9N・m未満
不良:9N・m以上
2)加工精度
ネジゲージ(オーエスジー株式会社製THREAD PLUG GAUGE)を使用し、引っ掛かり及びガタツキの有無についてそれぞれ下記の評価基準で評価した。
(ネジゲージの引っ掛かり)
良好 : ネジゲージの引っ掛かりなし
不良 : ネジゲージの引っ掛かりあり
(ネジゲージのガタツキ)
良好 : ネジゲージのガタツキなし
不良 : ネジゲージのガタツキあり
【0025】
実施例1
ドデカン二酸109.48g(0.0476モル)に対し、2−アミノ−1−プロパノールを107.10g(1.428モル)(カルボニル基に対して1.5倍)モル添加し、さらに蒸留水を適量加えて、ドデカン二酸の濃度を10.9質量%、2−アミノ−1−プロパノールの濃度を10.7質量%とした後、50〜60℃に加熱し、脂肪酸アミン塩を含有する窒素分2.0質量%の水溶性金属加工液を調製した。
上記水溶性金属加工液に適宜蒸留水を添加して、窒素分が0.1質量%の希釈液と、窒素分が0.025質量%の希釈液をそれぞれ調製し、希釈水溶性金属加工液として評価した。
【0026】
実施例2及び比較例1〜11
2−アミノ−1−プロパノールに代えて、第1表に示すアミン化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、水溶性金属加工液及び希釈水溶性金属加工液を調製して評価した。結果を第1表に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
第1表から、2−アミノ−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノールを配合している実施例1及び2の水溶性金属加工液は、臭気強度及び臭気不快度が低く、且つ耐腐敗性能に優れることが分る。これに対し、他のアミン化合物を配合した比較例1〜11の水溶性金属加工液は、臭気性能及び耐腐敗性能の少なくともいずれかが劣っている。
【0029】
実施例3及び4
第2表に示す組成の水溶性金属加工液を調製し、加工性能を評価した。結果を第2表に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
[注]
*:40℃動粘度9.5mm2/sのナフテン系鉱油
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の水溶性加工油剤は、耐腐敗性能に優れ、且つ臭気の低減された水溶性金属加工液である。したがって、作業環境の悪化を抑制できる水溶性加工油剤として、切削金属加工、研削金属加工、塑性金属加工等の金属加工などに、有効に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−アミノ−1−プロパノール及び3−アミノ−1−プロパノールの少なくとも一方を含有するアミン化合物を配合してなる水溶性金属加工液。
【請求項2】
さらに、脂肪酸類及び脂肪酸類誘導体の少なくとも一方を配合してなる請求項1記載の水溶性金属加工液。
【請求項3】
前記脂肪酸類及び脂肪酸類誘導体のカルボキシル基の合計に対する、前記アミン化合物のアミノ基の当量比が1.1〜1.9である請求項2記載の水溶性金属加工液。
【請求項4】
前記アミン化合物基準で、2−アミノ−1−プロパノール及び3−アミノ−1−プロパノールを40モル%以上含有する請求項1〜3のいずれかに記載の水溶性金属加工液。
【請求項5】
前記アミン化合物の配合量が、1〜50質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の水溶性金属加工液。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の水溶性金属加工液を水で希釈してなる希釈水溶性金属加工液。
【請求項7】
前記アミン化合物の濃度が、窒素分換算で0.01〜0.5質量%である請求項6記載の希釈水溶性金属加工液。

【公開番号】特開2011−178854(P2011−178854A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43148(P2010−43148)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】