説明

水溶液状、水性ゲル状又はフィルム状消臭剤

【課題】マスキング剤を添加しなくても、アンモニアなどの塩基性臭気物質に対して高い消臭効果を有する消臭剤を提供する。
【解決手段】消臭剤は、カルボキシアルキルセルロース(カルボキシメチルセルロースなど)のアルカリ金属塩と必要により水溶性金属化合物(有機酸又は無機酸金属塩など)とで構成され、マスキング剤を含有しなくても消臭性を発現可能であり、水溶液状、水性ゲル状又はフィルム状の形態を有している。消臭剤は、水溶液又は水性ゲルの形態において、例えば、pHが3〜7程度であってもよい。消臭剤は、さらに、有機酸又はその塩を含有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアやアミンなどの塩基性臭気物質に対して優れた消臭効果を有する水溶液状、水性ゲル状又はフィルム状消臭剤に関する、
【背景技術】
【0002】
アンモニアやアミンなどの塩基性臭気物質に対する消臭剤として、カルボン酸又はその塩などの酸性物質を使用した繊維、フィルター、スプレー、シート、ゲルなどの種々の製品が開発されている。
【0003】
例えば、特許第2557645号公報(特許文献1)、特開2002−371462号公報(特許文献2)では、セルロース繊維を含む繊維又は不織布を形成し、その後、セルロース繊維をカルボキシメチル化し、塩型にした材料が開示されている。また、特開平9−291456号公報(特許文献3)では、合成繊維とセルロース繊維とを含む複合不織布を形成後、セルロース繊維をカルボキシメチル化した材料が開示されている。特開2004−321332号公報(特許文献4)では、カルボキシメチルセルロースを介して、消臭機能を有する銅や亜鉛化合物を紙粉に保持させた材料が開示されている。しかし、これらの材料は、布状であり、用途(使用方法)が限られるとともに、消臭性を付与する工程が煩雑である。また、セルロース繊維を溶解させることなくカルボキシメチル化させる必要があるため、カルボキシメチル基のエーテル化度を上げることができず、十分な消臭効果が得られない。さらに、繊維状、紙粉などの形態では、消臭成分を固定する支持体が必要となる。
【0004】
なお、トイレタリー製品では、消臭機能の持続性、取扱いやすさなどの点で、水性ゲル状の製品も多く利用されている。水性ゲル組成物として、例えば、特開2002−293987号公報(特許文献5)、特開2003−154599号公報(特許文献6)では、カルボキシメチルセルロースとアルミニウム塩とで構成された組成物が開示されている。しかし、これらの組成物では、別途、消臭剤を添加して、この消臭剤をゲルから徐々に放出することにより消臭性を付与している。
【0005】
また、特許第2559600号公報(特許文献7)には、カルボキシメチル化セルロースやアルギン酸などの高分子のカルボキシル基を銅及び/又は亜鉛と錯体結合させた高分子錯体を含有する脱臭性組成物が開示されている。しかし、特許文献7には、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩単独で構成された消臭剤、及びカルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩と金属化合物とを併用した消臭剤のいずれも具体的に記載されていない。
【特許文献1】特許第2557645号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2002−371462号公報(請求項1)
【特許文献3】特開平9−291456号公報(請求項1)
【特許文献4】特開2004−321332号公報(請求項2)
【特許文献5】特開2002−293987号公報(請求項1及び2)
【特許文献6】特開2003−154599号公報(請求項3及び4)
【特許文献7】特許第2559600号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、マスキング剤などを用いなくても、塩基性臭気物質に対して消臭効果を発現可能であり、消臭性に優れる水溶液状、水性ゲル状又はフィルム状消臭剤を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、簡便な方法により製造可能であり、種々の用途に適用可能な水溶液状、水性ゲル状又はフィルム状消臭剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩を用いるか、又はカルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩と水溶性金属化合物とを組み合わせると、マスキング剤を添加しなくても、塩基性臭気物質に対する高い消臭効果が得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の消臭剤は、マスキング剤を含有しなくても消臭性を発現可能な消臭剤であって、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩で構成されている。この消臭剤は、水溶液状、水性ゲル状又はフィルム状の形態を有していてもよい。この消臭剤は、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩及び水溶性金属化合物で構成してもよい。
【0010】
水溶液状又は水性ゲル状消臭剤は、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩と水溶性金属化合物と水とで構成できる。また、フィルム状消臭剤は、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩単独で構成してもよい。このようなフィルム状消臭剤は、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩と水との混合物の乾燥により得ることができる。また、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩と水溶性金属化合物とで構成されたフィルム状消臭剤は、例えば、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩と水溶性金属化合物と水との混合物の乾燥により得ることができる。水溶性金属化合物は、遷移金属及び周期表第13族金属から選択された少なくとも一種の金属(チタン、ジルコニウム、及び銀から選択された少なくとも一種など)を含有する水溶性金属化合物などであってもよい。なお、フィルム状消臭剤において、水溶性金属化合物として、銅及び亜鉛を除く水溶性金属化合物などを用いても、高い消臭効果が得られる。
【0011】
消臭剤は、水溶液又は水性ゲルの形態において、例えば、pHが3〜7程度であってもよい。前記カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩は、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩であってもよい。水溶性金属化合物の割合は、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩100重量部に対して、10〜100重量部程度であってもよい。消臭剤は、さらに、有機酸又はその塩を含有してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の消臭剤では、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩(カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩、又はカルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩と水溶性金属化合物との組み合わせなど)を用いるので、マスキング剤などを添加しなくても、アンモニア、アミンなどの塩基性臭気物質に対して、高い消臭効果を発現することができ、消臭性に優れている。また、本発明の消臭剤は、水溶液状、ゲル状又はフィルム状であり、簡便な方法により製造することができる。また、種々の形状に容易に成形できるため、種々の用途に適用することができる。また、ゲル状消臭剤では、水性ゲルの形状安定性も高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の消臭剤は、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩で構成されており、水溶液状、水性ゲル状、フィルム状などの形態を有している。そして、前記消臭剤は、一般的に使用される消臭剤、すなわち、マスキング剤(カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩以外の一般的な消臭剤も含む)などを含有しなくても消臭性を発現する。消臭剤は、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩単独で構成してもよく、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩と水溶性金属化合物とで構成してもよい。
【0014】
なお、水溶液状又は水性ゲル状消臭剤は、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩と水溶性金属化合物と水とで構成されており、これらの構成成分を混合することにより調製できる。また、フィルム状消臭剤は、少なくともカルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩で構成でき、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩及び水溶性金属化合物で構成してもよい。なお、フィルム状消臭剤は、通常、これらの構成成分と水との混合物(水溶液、ゲル(上記ゲル状消臭剤も含む)など)の乾燥により得ることができる。
【0015】
(カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩)
カルボキシアルキルセルロースアルカリ金属塩を形成するカルボキシアルキルセルロースとしては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロースなどのカルボキシC1−4アルキルセルロースなどが挙げられる。
【0016】
カルボキシアルキルセルロース(カルボキシメチルセルロースなど)の平均置換度(又は平均エーテル化度(カルボキシメチル基などの平均置換度))は、水に溶解できる範囲、例えば、0.35〜3の範囲から選択でき、好ましくは0.4〜2.5、さらに好ましくは0.5〜2(例えば、0.6〜1.5)程度である。なお、アンモニアやアミンなどの塩基性臭気物質に対する消臭効果の点では、エーテル化度は高い方が好ましいが、エーテル化度が3の完全なエーテル化物の製造は容易ではないため、入手可能な範囲で、エーテル化度を適宜選択すればよい。
【0017】
前記アルカリ金属塩としては、前記カルボキシアルキルセルロース(カルボキシメチルセルロースなど)のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などが挙げられ、ナトリウム塩を用いる場合が多い。
【0018】
なお、水溶液状又は水性ゲル状消臭剤において、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩の割合は、アルカリ金属塩が溶解可能な範囲で適宜選択できるが、粘性及び取扱性の点から、消臭剤全体に対して、0.1〜20重量%程度であるのが好ましい。また、ゲル形成及び消臭性の点から、前記割合は、0.1〜15重量%、さらに好ましくは0.3〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%程度であってもよい。
【0019】
また、フィルム状消臭剤において、乾燥前の組成物(水溶液、水性ゲルなど)が、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩を、例えば、0.1〜20重量%、好ましくは0.3〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%程度含有するのが好ましい。
【0020】
(水溶性金属化合物)
カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩と水溶性金属化合物とを組み合わせると、消臭性をさらに改善できる。なお、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩と水との混合物は、分散液又は水溶液状であるが、水溶性金属化合物をこのような混合物に添加すると、金属の種類によっては、水性ゲルが得られる場合がある。
【0021】
水溶性金属化合物としては、例えば、遷移金属(チタン、ジルコニウムなどの周期表第4族金属;バナジウムなどの第5族金属;モリブデンなどの第6族金属;マンガンなどの第7族金属;鉄などの第8族金属;コバルトなどの第9族金属;ニッケルなどの第10族金属;銀などの第11族金属;亜鉛などの第12族金属など)、第13族金属(アルミニウムなど)などを含有する水溶性化合物が挙げられる。水溶性金属化合物を構成する金属は一価金属であってもよく、多価金属(2〜4価金属など)であってもよい。
【0022】
水溶性金属化合物は、上記金属を単独で又は二種以上組み合わせて含有してもよく、また、これらの金属と、アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)、周期表第3族金属などとを組み合わせて含有していてもよく、例えば、上記金属と、アルカリ金属などとを含む複塩などであってもよい。上記金属のうち、チタン、ジルコニウム、銀、亜鉛、アルミニウムなどが好ましく、特に、チタン、ジルコニウム、及び銀から選択された少なくとも一種の金属を用いるのが好ましい。
【0023】
水溶性金属化合物は、水溶性である限り、上記金属を含有する酸化物、水酸化物又はハライド(フッ化物、塩化鉄などの塩化物;臭化鉄、臭化アルミニウムなどの臭化物;ヨウ化物など)などであってもよいが、通常、無機酸(硫酸、硝酸、炭酸、リン酸、ハロゲン酸(塩酸、過塩素酸など)など)又は有機酸[酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸(C1−4カルボン酸など)、乳酸などのオキシカルボン酸(C1−4オキシカルボン酸など)など]と前記金属との塩を用いる場合が多い。金属塩を構成する酸(無機酸及び有機酸)のうち、硫酸、硝酸、有機酸(特に、オキシカルボン酸)などが好ましい。水溶性金属化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0024】
水溶性金属化合物の具体例としては、例えば、硫酸塩[硫酸チタン、硫酸銀、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムアルカリ金属複塩(カリミョウバン、ナトリウムミョウバン、セシウムミョウバンなど)など]、硝酸塩(硝酸チタン、硝酸銀、硝酸亜鉛、硝酸アルミニウムなど)、カルボン酸塩(酢酸チタン、酢酸銀、酢酸亜鉛、酢酸アルミニウムなどのC1−3カルボン酸塩など)、オキシカルボン酸塩(乳酸チタン、乳酸銀、乳酸亜鉛、乳酸アルミニウムなどのC1−3オキシカルボン酸塩など)などが挙げられる。これらのうち、特に、硫酸銀、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウム、カリミョウバン、硝酸銀、硝酸チタン、乳酸チタン、乳酸銀などが好ましい。例えば、乳酸チタン(チタンラクテート)の具体例としては、松本製薬(株)製の「オルガチックスTC−310」などのオルガチックスのシリーズなどが好適に使用できる。なお、アルミニウム塩(カリミョウバンなどの硫酸アルミニウムアルカリ金属複塩など)と、他の金属塩(例えば、硫酸銀、硫酸亜鉛などの硫酸塩、乳酸チタンなどの乳酸塩、硝酸銀などの硝酸塩など)などとを併用してもよい。例えば、硫酸亜鉛のみを用いるとゲル化は起こりにくいが、硫酸亜鉛とカリミョウバンなどのアルミニウム亜鉛などとを用いると、効率よくゲル化させることができる。なお、フィルム状消臭剤では、銅及び亜鉛を除く水溶性金属化合物を用いるのが好ましい。
【0025】
水溶性金属化合物の割合は、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩100重量部に対して、0〜100重量部(例えば、10〜100重量部)程度の広い範囲から選択でき、例えば、1〜90重量部(例えば、5〜80重量部)、好ましくは10〜70重量部、さらに好ましくは15〜50重量部程度であってもよい。
【0026】
(有機酸又はその塩)
消臭剤は、ゲル化速度及びゲル強度の調整などの点から、さらに、有機酸又はその塩を含有してもよい。このような有機酸としては、酢酸、酪酸、シュウ酸、コハク酸、無水コハク酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マロン酸、アジピン酸などのカルボン酸(C1−10カルボン酸など);グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、グルクロン酸などのオキシカルボン酸(C1−10オキシカルボン酸など);アスパラギン酸などのアミノ酸(酸性アミノ酸など)などが挙げられる。
【0027】
また、有機酸塩としては、前記水溶性金属化合物の項で例示の遷移金属などの塩であってもよいが、通常、アルカリ金属塩(カリウム塩、ナトリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩など)などが挙げられる。これらの有機酸又はその塩は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい有機酸又はその塩としては、例えば、乳酸、酒石酸などのC1−6オキシカルボン酸(特にC1−4オキシカルボン酸など)などが挙げられる。
【0028】
有機酸又はその塩の割合は、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩100重量部に対して、例えば、0.01〜30重量部、好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部(例えば、5〜10重量部)程度である。また、有機酸又はその塩の割合は、水溶性金属化合物100重量部に対して、例えば、1〜90重量部、好ましくは10〜80重量部、さらに好ましくは20〜70重量部程度であってもよい。
【0029】
水溶液状又はゲル状消臭剤は、前記のような構成成分(カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩、水溶性金属化合物、及び必要により有機酸又はその塩など)を水と混合し、必要により混合物を静置することにより製造できる。また、フィルム状消臭剤は、前記の構成成分(カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩、又は、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩及び水溶性金属化合物、並びに必要により有機酸又はその塩など)と水とを混合し、乾燥することにより製造できる。構成成分及び水の混合においては、全ての成分を一度に混合してもよいが、例えば、水溶性金属化合物を用いる場合、(i)カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩の水分散液又は水溶液を調製し、この水分散液又は水溶液に他の成分(水溶性金属塩、有機酸類など)を添加したり、(ii)水溶性金属塩及び/又は有機酸類の水溶液を調製した後、この水溶液にカルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩を分散又は溶解させてもよい。
【0030】
なお、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩の水に対する分散性又は溶解性を高めるため、必要により、分散剤を用いてもよい。分散剤を用いる場合、(i)カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩を予め分散剤に分散させた後、この分散液を水と混合して水溶液を調製し、この水溶液に他の成分(水溶性金属塩、有機酸類など)を添加してもよく、(ii)前記分散液と、水溶性金属塩及び/又は有機酸類の水溶液とを混合してもよく、水溶性金属塩及び/又は有機酸類を水及び分散剤の混合物に溶解させ、この溶液にカルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩を混合、溶解させてもよい。
【0031】
上記分散剤としては、アルコール類[メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどの一価アルコール(C1−4アルカノールなど);エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオールなどの二価アルコール(C1−6アルカンジオールなど);グリセリンなどの三価アルコール(トリ乃至ペンタヒドロキシC1−4アルカンなど)など]、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが使用できる。分散剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、分散剤の割合は、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩100重量部に対して、例えば、5〜1000重量部、好ましくは50〜500重量部、さらに好ましくは100〜300重量部程度であってもよい。
【0032】
本発明の消臭剤は、水溶液又は水性ゲルの状態において、pHが3〜7、好ましくは3.5〜6.7、さらに好ましくは4〜6.5程度の範囲にあるのが好ましい。このような範囲では、カルボキシアルキルセルロースのカルボキシル基の一部が酸型となっており、アルカリ金属よりもむしろ水溶性金属化合物の金属と結合し易く、消臭効果が向上する。なお、pHが低すぎると、カルボキシアルキルセルロースが酸型に変化し、ゲルの形態を維持できなかったり、消臭性が低下したりする虞がある。また、pHが高すぎると、カルボキシアルキルセルロースと水溶性金属化合物とが相互作用し難くなり、消臭性が低下する虞がある。なお、本発明の水溶液状又はゲル状消臭剤では、通常、消臭剤自体が上記のような範囲のpHを有しており、フィルム状消臭剤では、通常、フィルムに成形する前(すなわち、乾燥前)の組成物(水溶液又は水性ゲル)が上記のような範囲のpHを有している。
【0033】
ゲル状消臭剤において、消臭剤の形状維持の点から、ゲル強度は、例えば、98Pa以上(例えば、98〜2000Pa)、好ましくは100〜1800Pa、さらに好ましくは120〜1600Pa(例えば、110〜1500Pa)程度であってもよい。
【0034】
フィルム状消臭剤は、各構成成分を含む上記のような水溶液又は水性ゲル状の組成物を、適当な容器(トレー、バットなど)に充填するか又は板状基材(剥離性基材など)に流延し、慣用の乾燥方法、例えば、常温乾燥、加熱乾燥、凍結乾燥などにより得ることができ、通常、常温又は加熱乾燥により製造する場合が多い。乾燥温度は、室温(20〜30℃程度)〜100℃、好ましくは40〜90℃、さらに好ましくは50〜85℃程度であってもよい。なお、乾燥は、通常、常圧又は減圧下で行うことができる。
【0035】
固体状消臭剤の形状は、フィルム状に限定されず、ペレット状又は粉粒状などの不定形状であってもよい。このような不定形状消臭剤は、慣用の成形方法で製造してもよいが、前記フィルム状消臭剤を粉砕又は裁断して製造してもよい。
【0036】
従来のゲル状(又はフィルム状)消臭剤では、一般的に使用されるマスキング剤などの消臭成分を添加し、このマスキング剤を徐放的に放出させることにより消臭効果を発現させていた。それに対して、本発明の消臭剤では、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩を用いることにより(特に、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩と水溶性金属化合物とを組み合わせることにより)、マスキング剤を含有しなくても消臭性を発現することができる。
【0037】
本発明の消臭剤は、上記のように、マスキング剤を添加しなくても、アンモニア、アミンなどの塩基性臭気物質に対して高い消臭効果が得られるが、必要により、マスキング剤(香料など)の他、他の添加剤、例えば、光触媒化合物(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化第二鉄など)、抗菌剤、防カビ剤、防腐剤、pH調整剤、界面活性剤、着色剤、繊維(微小繊維状セルロースなどの有機繊維、無機繊維など)、吸着型消臭剤(活性炭など)、高分子(アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースなどのセルロース又はその誘導体、アルギン酸などの水溶性高分子など)を併用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の消臭剤は、特にマスキング剤などを用いなくても、アンモニア、アミンなどの塩基性臭気物質に対して高い消臭効果が得られ、水溶液状、ゲル状又はフィルム状の形態であるため、繊維、布状の形態と異なり、種々の用途に適用できる。そのため、塩基性臭気物質の消臭が要求される用途、例えば、トイレ、室内、車内などの悪臭の消臭に有用である。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0040】
実施例1〜4
表1又は表2に示す処方で、以下の手順に従って、消臭剤を調製した。
【0041】
プロピレングリコールにカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)を分散させた分散液を予め調製し、この分散液を、撹拌下の水に投入し、CMC−Naを溶解させた。CMC−Naの完溶後、残りの成分を加えて撹拌し、得られた水溶液のpHを測定した。
【0042】
水溶液を容器に移し、室温下、1日静置して水性ゲル状消臭剤を得た(実施例1及び3)。また、水溶液をトレーに流し込み、80℃にて8時間乾燥させ、フィルム状消臭剤を得た(実施例2及び4)。
【0043】
得られた消臭剤について、アンモニアに対する消臭試験を行うとともに、ゲル状消臭剤については、ゲル強度を測定した。
【0044】
実施例5〜8
表1又は表2に示す処方で、以下の手順に従って、消臭剤を調製した。
【0045】
撹拌下、水に金属化合物を投入し、溶解させた。別途、プロピレングリコールにCMC−Naを分散させた分散液を調製し、この分散液を前記金属化合物の水溶液に、撹拌下、添加し、得られた水性ゲルのpHを測定した。
【0046】
水性ゲルを容器に移し、室温下、1日静置して水性ゲル状消臭剤を得た(実施例5及び7)。また、前記水性ゲルをトレーに流し込み、80℃にて8時間乾燥させ、フィルム状消臭剤を得た(実施例6及び8)。
【0047】
得られた消臭剤について、アンモニアに対する消臭試験を行うとともに、ゲル状消臭剤については、ゲル強度を測定した。
【0048】
実施例9
表2に示す処方で、プロピレングリコールにCMC−Naを分散させた分散液を予め調製し、この分散液を、撹拌下、水に投入し、水溶液を得た。得られたCMC−Na水溶液をトレーに流し込み、80℃にて8時間乾燥させ、CMC−Naフィルムを得た。このCMC−Naフィルムを用いて、アンモニアに対する消臭試験を行った。
【0049】
実施例10
表1に示す処方で、プロピレングリコールにCMC−Naを分散させた分散液を予め調製し、この分散液を、撹拌下、水に投入し、水溶液を得た。このCMC−Na水溶液を用いて、アンモニアに対する消臭試験を行った。
【0050】
比較例1
比較として、水のみを用いた例について、実施例と同様にアンモニアに対する消臭試験を行った。
【0051】
実施例及び比較例において得られた結果を表1及び表2に示す。なお、消臭試験及びゲル強度測定は下記の方法により行った。
【0052】
(消臭試験)
1Lのデドラーバッグに、消臭剤1gを入れ、アンモニアを初期濃度が100ppmとなるように封入し、密閉状態で3時間放置した。3時間経過後、ガス検知管で残留アンモニア濃度を測定し、下記式に基づいて消臭率を算出した。
【0053】
消臭率(%)=[{初期濃度(ppm)−3時間後の残留濃度(ppm)}/初期濃度(ppm)]×100
なお、水性ゲル状消臭剤については、表1又は表2の組成において、水を除いた成分が1gとなるように秤量して測定した。
【0054】
(ゲル強度)
直径50mm及び高さ30mmの円柱状ゲルを、24時間以上放置したものを用いて、フードレオメーター(サン科学(株)製,直径11mmの棒状アダプターを使用)により強度を測定した。なお、測定は、ゲルの中心から端の中間距離より内側に位置する10点について行い、得られた数値を、1cm当たりの強度として換算し、平均したものをゲル強度(Pa)とした。
【0055】
なお、実施例及び比較例で用いた成分は以下の通りである。
【0056】
(i)CMC−Na:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(ダイセル化学工業(株)製、CMCダイセル1240(エーテル化度0.90、1%水溶液粘度24mPa・s、pH7.0)
(ii)カリミョウバン(K・Al(SO・12HO)
(iii)チタンラクテート(松本製薬(株)製、オルガチックスTC−310)
(iv)硫酸亜鉛(ZnSO・7HO)
(v)硝酸銀(AgNO
結果を表1及び表2に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
表から明らかなように、比較例に比べ、実施例の消臭剤は、アンモニアに対して高い消臭効果を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスキング剤を含有しなくても消臭性を発現する消臭剤であって、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩で構成されている消臭剤。
【請求項2】
水溶液状、水性ゲル状又はフィルム状である請求項1記載の消臭剤。
【請求項3】
カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩及び水溶性金属化合物で構成されている請求項1記載の消臭剤。
【請求項4】
カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩と水溶性金属化合物と水とで構成されており、水溶液状又は水性ゲル状である請求項3記載の消臭剤。
【請求項5】
水溶性金属化合物が、銅及び亜鉛を除く水溶性金属化合物で構成されており、フィルム状である請求項3記載の消臭剤。
【請求項6】
カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩と水溶性金属化合物と水との混合物の乾燥により得られ、フィルム状である請求項3又は5記載の消臭剤。
【請求項7】
水溶液又は水性ゲルの形態において、pHが3〜7である請求項1記載の消臭剤。
【請求項8】
カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩が、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩である請求項1記載の消臭剤。
【請求項9】
水溶性金属化合物が、遷移金属及び周期表第13族金属から選択された少なくとも一種の金属を含有する水溶性金属化合物である請求項3又は4記載の消臭剤。
【請求項10】
水溶性金属化合物が、チタン、ジルコニウム、及び銀から選択された少なくとも一種の金属を含有する水溶性金属化合物である請求項3〜6のいずれかの項に記載の消臭剤。
【請求項11】
水溶性金属化合物の割合が、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩100重量部に対して、10〜100重量部である請求項4記載の消臭剤。
【請求項12】
さらに、有機酸又はその塩を含む請求項1〜6のいずれかの項に記載の消臭剤。

【公開番号】特開2007−268084(P2007−268084A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99395(P2006−99395)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】