説明

水生生物用光触媒水浄化システム。

【課題】 従来、水生生物を飼育する際に起こり得る「有害菌による病気と感染」には薬物による対処療法が一般的であった。しかし治療には、適正な薬品の選択や薬品の副作用など、多くの問題があった。
【解決手段】 光触媒による強い殺菌作用は有害菌を排除する方法として極めて有効である。そして水生生物を飼育する際に使われる蛍光灯と濾過装置による水の循環を光触媒反応と組み合わせて利用する本発明は、様々な飼育スタイルに応じており「有害菌による病気と感染」を未然に防ぐ事が出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球型セラミックボールに酸化チタンをコーティングし、光触媒によって有機物を分解する反応を利用する、水生生物用の水浄化システムである。
【背景技術】
【0002】
従来は、水生動物を飼育する際に起こる各種の病気に際し、それぞれの病気に適した薬剤による治療を行っていた。また、水生動物用の濾過システムは、粗めのゴミを濾し取る物理的濾過、細かい汚れを活性炭等で吸着する吸着濾過、飼育水に自然に湧く微生物を利用する生物的濾過、等を利用したものである。(例えば、非特許文献1参照)
【0003】
光触媒を利用した濾過システムには、水槽内から揚水ポンプで水を汲み上げ、スポンジマット等でゴミを濾し、その後、光触媒による濾過をするシステムもある。(例えば、特許文献1参照)
【非特許文献1】 「ニッソー アクアリウム総合カタログ2005」
【特許文献1】 特開平11−197420号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上に述べた従来の濾過システムでは、飼育水槽内に混入した病原菌を排除するには、薬剤による殺菌が有効であるが、殺菌後の飼育水中の薬剤を除去するのは極めて困難であった。
【0005】
また、飼育水槽内で順調に発生していた「濾過を司る微生物」や「水生植物」が、水中を循環する薬剤によって死滅・枯死してしまうため、薬剤の使用をためらうこともあった。
【0006】
薬剤の選択とその使用量においても、一般の飼育者の持つ少ない知識と経験の不足から、過剰な投与による生体の死亡や、複数種の病菌への対処等、生体の飼育者にとっての薬剤治療は困難であったと言える。
【0007】
上部フィルターの形状に近い従来の光触媒の濾過システムでは、装置が大掛かりであるゆえ、価格が高価になりがちで、また、水深の浅い所に生育する生物には適さない。
また、水槽の上部に載せる濾過システムは、同サイズの水槽にしか使用する事が出来ない。
【0008】
本発明は、このような従来の構成が有していた問題を解決するものであり、飼育水槽内に光を当てるだけで、飼育水中の有害菌を殺菌することで水を浄化し、様々なサイズの飼育水槽に適応出来る濾過システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、酸化チタンをコーティングした球型セラミックボールと、セラミックボールを収容する多数の穴のあいたカゴからなる。カゴはステンレスまたはアルミを原材料としたもので、これは水中に設置するために錆びにくい材質が求められるためである。カゴには水槽に掛けるフックが付けられている。水深の浅い水槽にはカゴを水槽底面にそのまま置いてもよい。
【0010】
水生生物を飼育している水槽に、上記のセラミックボールを入れたカゴを設置し、蛍光灯の光を照射する事で、水中の有害な菌類を分解・殺菌して無害化する事が出来る。
【発明の効果】
【0011】
酸化チタンをコーティングしたセラミックボールは、蛍光灯の光エネルギーにより光触媒反応を起こす。そして活性化した酸素原子O−(オー・マイナス)の強力な酸化作用で水中の菌類を分解・殺菌する。
【0012】
光触媒の強い酸化分解力は、水中のあらゆる微生物を死滅させるが、その範囲は触媒表面にのみ起こる反応である。よって従来の、飼育水槽内外に設置された濾過槽に繁殖した微生物による水質浄化システムと共存出来るものである。
【0013】
上述のように薬剤の使用方法は面倒であるが、本発明によれば、水槽内の水を常に殺菌し続けているのであるから、病気の予防と感染の予防に効果があると考えられる。
また、病気に感染した生体が死亡した時、それまで生体が飼われていた飼育水を下水や屋外地面に廃棄する事が多くの生態系破壊につながっていた。しかし本発明によれば、常時飼育水を殺菌し続ける事により廃棄される飼育水も無菌状態になることで、それは生態系を守る事にもつながる。
【0014】
セラミックボールはカゴに入っているので、コンパクトに収まり、移動や取出しを自由に行なえる。蛍光灯の光や太陽光を当てる事が出来れば、小さな水槽、水深の浅い水槽、変形の水槽にも設置する事が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図8に基づいて説明する。
【0016】
図においては、1は酸化チタンを付着させたセラミックボールである。2はセラミックボールを入れる非鉄金属性のカゴである。カゴ2の背面には水槽に掛けるためのフック3が取り付けられている。また、カゴ2にはセラミックボール1が通り抜けない程度の穴を底面、側面、前面にあける。
【0017】
以下、上記構成の動作と使用方法について説明する。セラミックボール1をカゴ2に入れ、重なり合わないようにカゴ2の底面に並べる。重ならないように並べるのは、光がまんべんなく当たるようにするためである。ボールを入れたカゴ2を水槽4に入れ、水槽4のへりにフック3を掛ける。水を張った水槽の水位は、カゴ2の中のセラミックボール1が完全に浸る深さである。
【0018】
エアポンプと濾過装置が設置された水槽においての使用例は以下の通りである。セラミックボール1を入れたカゴ2の下部に濾過装置を置き、エアポンプから送られる空気は濾過装置を通って水中で泡となり真上へ上がり、カゴ2の底面にある穴からカゴ内に入り込む。この時、泡と共に水流が発生し、カゴ内の水が常に流動する。水槽上部に載せた蛍光灯4をカゴ2の真上で点灯させる事で、光が当たったセラミックボール1に光触媒反応が起こる。セラミックボール1の表面で光触媒によって殺菌された水は前面と側面の穴からカゴ外に流出し、新たに底面から入り込んだ水は順次殺菌されていく。
【0019】
水中ポンプが設置された水槽においての使用例は以下の通りである。セラミックボール1を入れたカゴ2と平行した横部に水中ポンプを設置する。水中ポンプの水吐出口をカゴ2方向へ向け、カゴ側面の穴からカゴ内部に水が入るようにする。水槽上部に載せた蛍光灯4をカゴ2の真上で点灯させる事で、光が当たったセラミックボール1に光触媒反応が起こる。セラミックボール1の表面で光触媒によって殺菌された水は前面・底面・逆側面の穴からカゴ外に流出し、新たに側面から入り込んだ水が順次殺菌されていく。
【0020】
外置き式濾過フィルターが設置された水槽においての使用例は以下の通りである。セラミックボール1を入れたカゴ2と平行した横部に外置き式濾過フィルターを設置する。排水パイプの水吐出口をカゴ2方向へ向け、カゴ側面からカゴ内部に水が入るようにする。水槽上部に載せた蛍光灯4をカゴ2の真上で点灯させる事で、光が当たったセラミックボール1に光触媒反応が起こる。セラミックボール1の表面で光触媒によって殺菌された水は前面・底面・逆側面の穴からカゴ外に流出し、新たに側面から入り込んだ水が順次殺菌菌されていく。
【0021】
水深の浅い水槽での使用例は以下の通りである。セラミックボール1を入れたカゴ2をそのまま水槽内に置き、水が循環するように水中ポンプ等を設置する。水槽上部に載せた蛍光灯4をカゴの真上で点灯させる事で、光が当たったセラミックボール1に光触媒反応が起こる。セラミックボール1の表面で光触媒によって水は順次殺菌されていく。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】 本発明の実施形態を示すセラミックボールの正面図
【図2】 同セラミックボールが入ったカゴの斜視図
【図3】 同セラミックボールが入ったカゴの斜視透過図
【図4】 同カゴの側面図
【図5】 同エアポンプと濾過装置を使用した際の設置例
【図6】 同水中フィルターを使用した際の設置例
【図7】 同外置き式濾過装置を使用した際の設置例
【図8】 同水深の浅い水槽における設置例
【符号の説明】
【0023】
1 セラミックボール
2 カゴ
3 フック
4 蛍光灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタンをコーティングしたボール型セラミックに、紫外線もしくは近紫外線を含む蛍光ランプを当てた時に起こる光触媒反応を利用して水生生物の飼育水を殺菌し、水生生物を飼育する際に起こりえる各種の病気を防ぐ事を目的とした水質浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−17865(P2009−17865A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205926(P2007−205926)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(507237451)
【Fターム(参考)】