説明

水産練り製品及びその製造方法

【課題】 深層水を食品の加工に使用することにより、自然食指向に対応した、しかも深層水採取地の特産品とでき経済的効果も期待できる製品の開発。
【解決手段】 塩ずりの工程で深層水を用いて塩摺した魚肉すり身を用いることを特徴とする水産練り製品。魚肉すり身を用いて製造する水産練り製品を製造する方法において、深層水を用いて塩摺することを特徴とする水産練り製品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水産練り製品、特にちくわ及びその製造方法に係り、詳しくは、それらの練り製品を製造する際に行う塩摺に深層水を用いた水産練り製品及びその製造方法に係るものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、魚肉すり身を主原料としたちくわが我が国の伝統的製品として生産されている。このちくわは地方色豊かな種々の形状や特徴を持つものが生産され、地方の名産品としてはかまぼこより上質のものすら生産されている。
【0003】この中で最も一般的なものが、魚肉すり身を原料として円筒状に成形された焼きちくわであって、これは中心軸に沿って軸穴が形成され、表面には焼かれた焼きはだが形成されている。この焼きちくわは、通常擂潰された魚肉すり身を主成分とし、これに澱粉などのつなぎ粉、塩、砂糖、みりんなどの調味料を添加したものを原料とし、この原料を焼き串のまわりに円筒状に付着させ、所定のすわりを経て焼き上げられ、その後は、串抜きして冷却し、適宜包装されて市場に供せられている。
【0004】海水には表層水と区別して海洋深層水と呼ばれているものがあり、この海洋深層水とは海面下200メートル以上の海水を指す。海洋汚染が進んでいる現在において表層水は飲料用としては適さないが、海洋深層水は表層水に比べて生菌数が一桁あるいはそれ以上少なく、しかも、病原生物はほとんど含まれていないため、飲料に採用した場合、安全性が極めて高いとされており(特公平7−34728号)、各種食品の加工に使用することが考えられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、深層水を食品の加工に使用することにより、自然食指向に対応した、しかも深層水採取地の特産品とでき経済的効果も期待できる製品の開発を課題としている。そこで、本発明は、深層水が塩分を含んでいることに注目し、魚肉練り製品の製造過程の塩摺りに深層水を使用した水産練り製品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】そこで、上記課題を解決するために、本発明は塩ずりの工程で深層水を用いて塩摺した魚肉すり身を用いることを特徴とする水産練り製品を要旨としている。また、また、本発明は、魚肉すり身を用いて製造する水産練り製品を製造する方法において、深層水を用いて塩摺することを特徴とする水産練り製品の製造方法を要旨としている。
【0007】
【発明の実施の形態】魚肉すり身としては水産練り製品、特に通常ちくわに用いられているもの、例えば、スケソウタラ、サメ、グチ、タチウオその他の魚肉すり身が所望に応じて用いられるが、このほかにイカ、タコ、オキアミその他の甲殻類のすり身も用いることができ、また、つなぎとしては澱粉、小麦粉その他澱粉を含むものが主として用いられるが、それ以外に大豆その他の植物性蛋白質や、鶏卵、乳製品なども用いることもでき、これ以外でも、従来例でつなぎとして用いられているものは全て用いられる。
【0008】調味料も従来例と同様に塩、砂糖、しょう油その他を用いることができ、これらは粉体状態でも液体状態でも用いることができ、また、これら魚介類すり身、つなぎ、調味料その他の添加割合は通常のちくわと同様な範囲で添加することができる。
【0009】本発明で使用される海洋深層水は、海面下200メートルまたはそれより深い所から採取される海水であれば、採取地を限定されないが、例えば、日本近海では、富山湾、高知県の室戸岬沖、静岡県の駿河湾、沖縄県の久米島など、世界では、ノルウェー沖、ハワイ沖などから採取されるものが挙げられる。
【0010】本発明の実施例では海洋深層水として、富山湾で採取したものを使用したが、この深層水の3検体測定したところ、検体1では、塩分濃度2.86%、水温9.6℃、検体2では、塩分濃度2.90%、水温9.8℃、検体3では、塩分濃度2.92%、水温10.0℃の値であった。
【0011】そこで、表1のように塩摺りの際の添加水を深層水に全量置き換え、深層水の塩分濃度は2.9%として計算して通常品の塩分濃度となるように添加塩量を調節した以外は、表2の原料配合比にし、この原料を用いて、常法で、串付け成型、すわり、焼き上げを行なってから、串抜きした。
【0012】
【実施例】実施例にもとづいて本発明の詳細を説明するが、細部の構成は実施例に限定されるものではない。
【0013】実施例1海洋深層水として、富山湾で採取したものを使用した。この深層水の3検体測定したところ、検体1では、塩分濃度2.86%、水温9.6℃、検体2では、塩分濃度2.90%、水温9.8℃、検体3では、塩分濃度2.92%、水温10.0℃の値であった。そこで、表1のように塩摺りの際の添加水を深層水に全量置き換え、深層水の塩分濃度は2.9%として計算して通常品の塩分濃度となるように添加塩量を調節した以外は、表2の原料配合比にし、この原料を用いて、常法で、串付け成型、すわり、焼き上げを行なってから、串抜きした。
【0014】
【表1】
現 行 品 テスト品 ────────────────────────────────── 塩摺 通常水31L+並塩2.75Kg 深層水32L+並塩1.82Kg 本摺 通常水31L 通常水31L ──────────────────────────────────
【0015】
【表2】
原材料 仕込量(Kg) ──────────────────主原料(すり身) 110.0──────────────────副原料 94.1水 70.0 澱粉 10.0 植物油 2.7 並塩 2.8 砂糖・調味料 8.6 ──────────────────総計 204.1──────────────────
【0016】上記実施例1に従って作成した現行品及びテスト品を使って、表3に示すパネラーを対象にしてパネルテストを行った。表4に示す結果を得た。
【0017】
【表3】
性 別 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 計 ─────────────────────────────── 男 性 4 19 5 0 28 女 性 11 18 0 2 31 ─────────────────────────────── 計 15 37 5 2 59 ───────────────────────────────
【0018】
【表4】
質 問 内 容 比 現行品 テスト品 有意差 ───────────────────────────────── 焼き色の濃さ 比 -0.02±0.35 0.02±0.35 表面のつやの強さ 比 -0.07±0.23 0.07±0.23 肉の白さ 比 0.02±0.17 -0.02±0.17 におい全体の強さ 比 0.15±0.32 -0.15±0.32 △ 硬さ 比 -0.09±0.28 0.09±0.28 △ しなやかさ 比 0.07±0.33 -0.07±0.33 弾力 比 -0.02±0.31 0.02±0.31 汁気 比 0.09±0.25 -0.09±0.25 △ 粘り 絶 0.64±0.78 0.49±0.60 肉の部分のぼそぼそ感 絶 0.32±0.60 0.51±0.86 △ 皮の硬さ 比 0.03±0.28 -0.03±0.28 皮の噛みきりやすさ 比 0.05±0.24 -0.05±0.24 皮の部分のぼそぼそ感 絶 0.54±0.68 0.42±0.79 香ばしい風味 絶 0.98±0.92 0.92±0.82 生臭い風味 絶 0.32±0.71 0.25±0.51 魚の味・風味の強さ 比 0.02±0.21 -0.02±0.21 甘みの強さ 比 0.10±0.25 -0.10±0.25 △ 塩味の強さ 比 -0.06±0.24 0.06±0.24 旨味の強さ 比 0.03±0.22 -0.03±0.22 味・風味全体の強さ 比 0.02±0.29 -0.02±0.29 ─────────────────────────────────(比−比較評価、絶−絶対評価)
(比各評価:平均値±95%信頼区間、絶対評価:平均値±標準偏差)
△ 危険率20%以下であり有意差は認められないが、傾向があるといえる範囲
【0019】表4において、比較評価の項目は一体比較法の集計方法に従い、評価尺度「非常に強い〜非常に弱い」に対して+3〜−3点を与え、相対的な平均値及び95%信頼区間を算出した。絶対評価については、評価尺度「感じない−非常に感じる」に対して0〜4点を与えて平均値、標準偏差を算出した。なお、分散分析・t検定による有意差検定の結果、全ての項目に有意差は認められななかったものの、「におい全体の強さ」「硬さ」「汁気」「肉のぼそぼそ感」「甘みの強さ」で傾向が見られた。
【0020】実施例2表1のように塩摺りの際の添加水を深層水に全量置き換え、深層水の塩分濃度は2.9%として計算して通常品の塩分濃度となるように添加塩量を調節し、表5の原料配合比にし、この原料を用いて、常法で、串付け成型、すわり、焼き上げを行なってから、串抜きした。
【0021】
【表5】
現 行 品 テ ス ト 品 ─────────────────────── すり身 110 110 馬鈴薯澱粉 12 12 食塩 2.75 2.1 みりん 4.2 4.2 大豆油 0.3 0.3 グルソー 1.6 1.6 砂糖 1.8 1.8 **** 0.3 0.3 キシロール 0.6 0.6 リボタイド 0.04 0.04 グリシン 0.3 0.3 深層水 − 19.7 水 67 47.3 ───────────────────────
【0022】このようにして製造した現行品とテスト品とを用いてパネルテストを行ったところ、実施例1の場合と同様の結果を得た。
【0023】上記実施例はちくわを対象として説明したが、かまぼこ等塩摺工程を経る水産練り製品及びその製造に適応でき、その際には目的練り製品に対応した塩分調整を行えばよい。
【0024】
【発明の効果】本発明によれば、焼き上げ後の照りが良くなり、味もまろやかになった水産練り製品、とくにちくわを提供することができる。。しかも、深層水を用いるので、自然食指向に対応することができ、使用可能な深層水の採取場所も限定されるので、深層水採取地の特産品とでき経済的効果も期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 塩ずりの工程で深層水を用いて塩摺した魚肉すり身を用いることを特徴とする水産練り製品。
【請求項2】 魚肉すり身を用いて製造する水産練り製品を製造する方法において、深層水を用いて塩摺することを特徴とする水産練り製品の製造方法。

【公開番号】特開2002−112740(P2002−112740A)
【公開日】平成14年4月16日(2002.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−308239(P2000−308239)
【出願日】平成12年10月6日(2000.10.6)
【出願人】(500319594)株式会社北陸フレッシュフーズ (1)
【Fターム(参考)】