説明

水砕スラグ製造装置

【課題】水砕スラグ製造装置において、溶融スラグ樋の内張りにおける樋先部分の耐用性を改善すること。
【解決手段】不定形耐火物を内張りした溶融スラグ樋1の樋先下部に圧力水を噴出させる吹製口2を備えた水砕スラグ製造装置であって、溶融スラグ樋1の樋先の内張りを、炭化珪素を含む耐火性原料組成100質量部に対してダライ粉状の銅骨材を1〜15質量部添加した炭化珪素含有不定形耐火物12とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉から排出される溶融スラグから水砕スラグを製造する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高炉から排出される溶融スラグから水砕スラグを製造する装置が知られている。この装置の一般的な構造は、溶融スラグ樋の樋先下部に吹製口を備えてなり、樋先から流落する溶融スラグを吹製口から噴出の圧力水で急冷し、水砕スラグを製造するようになっている(特許文献1、2)。得られた水砕スラグは、セメント原料、コンクリート用骨材等に使用される。
【0003】
この水砕スラグ製造装置において、溶融スラグ樋は、定形耐火物あるいは不定形耐火物が内張りされている。近年は施工の簡便さから、不定形耐火物による内張りが主体である。
【0004】
高炉樋に内張りする不定形耐火物としては、アルミナ−炭化珪素質(特許文献3)、アルミナ−スピネル質(特許文献4)、アルミナ−炭化珪素−炭素質、スピネル−炭化珪素−炭素質(特許文献5)が知られている。溶融スラグ樋の内張りにおける不定形耐火物も、これらの材質が使用されている。
【0005】
上記従来の不定形耐火物はいずれも炭化珪素含有材質である。炭化珪素は耐熱性に加え、スラグに溶解し難い性質から耐スラグ性付与の効果をもつ。
【特許文献1】実開昭61−180136号公報
【特許文献2】実開昭63−89939号公報
【特許文献3】特開平9−157043号公報
【特許文献4】特開2000−351674号公報
【特許文献5】特開2000−256071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図は水砕スラグ製造装置を模式的に示したものである。図1は水砕スラグ製造装置の側面断面図、図2は図1のA−A線断面図である。溶融スラグ樋1の樋先下部に吹製口2が備えられている。吹製口2には圧力水を噴出させる多数のノズル孔3が設けられている。溶融スラグ樋1は不定形耐火物6が内張りされている。溶融スラグ樋1から流落する溶融スラグ4が吹製口2から噴出する圧力水9あるいはこの圧力水が水砕スラグ移送樋7の底部に溜まった滞留水8によって急冷され、微細粒子の水砕スラグ5が製造される。
【0007】
水砕スラグ移送樋7は例えばステンレス鋼よりなり、耐火物の内張りは必ずしも必要でない。また、水砕スラグ移送樋7の側壁10はその材質がステンレス鋼の場合、一般に水噴霧管11にて水冷されている。
【0008】
ここで溶融スラグ樋の内張りに使用される不定形耐火物の従来材質は、溶銑・溶融スラグに対して耐食性に優れる炭化珪素質である。しかし、溶融スラグ樋の内張りのうち、樋先部分の損耗が著しいという問題がある。
【0009】
そこで、溶融スラグ樋の樋先を主体に補修することで、内張り全体の延命を図っている。このため、その補修のための工数および材料費が必要となる。また、補修の所要時間によって水砕スラグの製造能率が低下する。
【0010】
本発明の目的とするところは、溶融スラグ樋の内張りにおける樋先部分の耐用性を改善し、水砕スラグ製造装置の前記課題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の水砕スラグ製造装置の特徴とするところは、不定形耐火物を内張りした溶融スラグ樋の樋先下部に圧力水を噴出させる吹製口を備えた水砕スラグ製造装置であって、前記溶融スラグ樋の樋先の内張りを、炭化珪素を含む耐火性原料組成100質量部に対してダライ粉状の銅骨材を1〜15質量部添加した炭化珪素含有不定形耐火物としたことにある。
【0012】
水砕スラグ製造装置において、溶融スラグ樋の樋先付近は、溶融スラグに当たって跳ね返った圧力水、さらには水砕スラグ移送樋の側壁に噴霧される冷却水等によって冷却される。また、高炉出銑孔の使用切替えに伴う水砕スラグ製造装置の稼動と休止によって、溶融スラグ樋の樋先は加熱と冷却を繰り返す。そして、これらが熱衝撃となって樋先の不定形耐火物は耐用性低下の一因である亀裂を生じる。
【0013】
吹製口からの圧力水は、溶融スラグとの接触で高温の水蒸気を発生し、不定形耐火物組成の炭化珪素がこの高温水蒸気によって酸化され、不定形耐火物組織の強度劣化を招く。
【0014】
溶融スラグ樋の樋先の激しい損耗は、前記した亀裂と酸化劣化が複合的に作用しているものと考えられる。
【0015】
本発明は溶融スラグ樋の樋先の内張りを、特定量のダライ粉状の銅骨材を添加した炭化珪素含有不定形耐火物としたことによって、溶融スラグ樋の樋先特有の激しい損耗を大幅に抑制することができたものである。この効果が得られることについて、その詳細な機構は必ずしも明確ではないが、以下の理由によるものと推定される。
【0016】
不定形耐火物に鉄、鋼、ステンレス鋼よりなるファイバーを添加することが知られている。しかし、耐火原料との比重分離等が原因で分散性が悪く、金属ファイバーがもつ不定形耐火物に対する耐亀裂性の効果において十分な効果を得ることができない。
【0017】
ダライ粉は金属の切削加工時に発生する荒削り屑である。フレーク状、螺旋フレーク状または螺旋状の1種以上であって、金属粉あるいは金属ファイバーとは形状が異なる。ダライ粉は前記形状のために、金属粉あるいは金属ファイバーに比べて体積あるいは長さあたりの表面積が大きいことが比重分離の抑止に作用し、不定形耐火物組成中により均一に分散される。
【0018】
本発明において溶融スラグ樋の樋先に内張りした不定形耐火物は、それに内在する銅骨材がその熱伝導性によって前記圧力水等の冷却作用を伝播し、耐火物組織の温度が低下する。
【0019】
一般的に耐火物には引っ張り強さはほとんどないが、本発明においては、温度低下の耐火物組織下においてダライ粉状の銅骨材が作用し、耐火物組織は変形能を伴った引っ張り強さが生じ、特に熱間での弾性が低下して構造的柔軟性を具備することができる。その結果、不定形耐火物は亀裂発生の防止あるいは亀裂発生した場合の亀裂拡大防止の効果を得ることができる。
【0020】
本発明で使用する不定形耐火物は、それに添加した銅骨材がその融点とダライ粉状であることによって不定形耐火物使用中に適度に溶出し、不定形耐火物施工体の稼動面に隣接する溶融スラグの粘性を引き上げる。そしてこれが、スラグ浸透抑制として作用し、不定形耐火物の耐食性向上に寄与する。
【0021】
また、銅骨材による冷却作用は不定形耐火物に含有される炭化珪素の酸化防止に効果がある。樋先の高温水蒸気雰囲気に対するこの耐酸化性により、炭化珪素含有耐火物が持つ耐用性の効果がいかんなく発揮される。
【0022】
銅骨材が不定形耐火物中において偏析した場合、例えば銅骨材が多い部位は銅骨材が低融点物質のために耐食性に劣り、銅骨材が少ない部位は耐亀裂性、耐酸化性に劣る。また、不均一組織のために耐火物全体の組織強度にも劣る。本発明の前記した耐亀裂性、耐食性および耐酸化性の効果は、銅骨材がダライ粉状であることではじめて発揮される。
【0023】
本発明において、銅骨材添加の不定形耐火物の使用は溶融スラグ樋のうち、樋先の内張りである。それより後方は、例えば従来と同様のアルミナ−炭化珪素質不定形耐火物をもって内張りする。
【0024】
溶融スラグ樋の後方は、例え銅骨材を添加しても樋先の圧力水等からの水冷作用が伝播しない。冷却作用を受けない後方の不定形耐火物組織は高温下にさらされるため、低融点物質でもある銅骨材の配合は耐食性低下の原因ともなる。したがって、この後方の不定形耐火物は、銅骨材を添加しないものが好ましいが、添加した場合でもその量を樋先の内張りより少なくする。
【0025】
本発明で使用するダライ粉状の銅骨材は、その一部または全部を銅骨材に代えて銅合金骨材としてもよい。本発明において必要な銅がもつ熱伝導性の効果を得るために、銅合金骨材の具体例としては、黄銅、洋白、青銅とし、Cu純度は50質量%以上が好ましい。
【発明の効果】
【0026】
溶融スラグ樋の樋先の内張りを、炭化珪素を含む耐火性原料組成100質量部に対してダライ粉状の銅骨材を1〜15質量部添加した炭化珪素含有不定形耐火物としたことで、水砕スラグ製造装置特有の熱衝撃と高温水蒸気酸化が原因した樋先の損耗を大幅に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明において、溶融スラグ樋の樋先の内張りに使用する炭化珪素含有不定形耐火物は、ダライ粉状の銅骨材を添加したものである。
【0028】
ダライ粉は金属の切削加工時に発生する荒削り屑である。銅のダライ粉はフレーク状、螺旋フレーク状または螺旋状が主体である(図3参照)。図4の写真は螺旋フレーク状である。本発明で使用する銅骨材は、ダライ粉状であれば出所が荒削り屑に限られない。例えば本発明に使用するためにフレーク状、螺旋フレーク状または螺旋状に加工した銅片であってもよい。
【0029】
ダライ粉状の銅骨材の好ましい長さは、25mm以下、さらに好ましくは5〜20mmである。短過ぎると粉状に近くなって水冷作用伝播の効果に乏しくなり、長過ぎると不定形耐火物混練時に不定形耐火物中への分散が容易でない。
【0030】
ダライ粉状の銅骨材の添加量は、耐火性原料100部に対して1〜15質量%とする。さらに好ましくは2〜10質量部である。添加量が少ないと水冷作用伝播の効果に乏しいためか、耐亀裂性、耐食性および耐酸化性に劣る。多過ぎると銅骨材の低融点が原因して耐食性が低下する。
【0031】
本発明は、前記したダライ粉状の銅骨材の一部または全部をダライ粉状の銅合金ダライ粉としてもよい。銅合金ダライ粉の具体例は黄銅、洋白、青銅等である。銅骨材の高熱伝導性の効果を得るために、Cu純度は50質量%以上が好ましい。
【0032】
本発明において使用する前記の炭化珪素含有不定形耐火物において、ダライ粉状の銅骨材の添加以外は、従来の材質と同様の材質で足りる。その耐火性原料は、炭化珪素5〜60質量%、残部をアルミナ、Al−MgO系スピネル等を主材とする。炭化珪素の割合は5質量%未満では耐食性の効果に劣る傾向にあり、60質量%を超えると耐酸化性の面で好ましくない。
【0033】
アルミナの具体例は、焼結アルミナ、電融アルミナ、ばん土けつ石、ボーキサイト等である。この内でも、品質が安定している焼結アルミナ、電融アルミナ等の合成品が好ましい。また、微粉部には仮焼アルミナを使用してもよい。Al−MgO系スピネルの具体例は、焼結アルミナまたは電融スピネルとし、化学成分値においてAlとMgOとの比は特に限定されないが、スピネル理論値に近いものが好ましい。また、炭化珪素は、SiC純度は90質量%以上のものが好ましい。
【0034】
耐火性原料は必要によっては、さらに他の耐火性原料を組み合わせてもよい。例えば炭素、ジルコン、ジルコニア、クロム鉱、窒化珪素、シリカ、シリカ−アルミナ、揮発シリカ、ムライト等である。また、耐火物使用後品あるいは耐火物廃材等である。
【0035】
炭素の具体例は、ピッチ、カーボンブラック、人造黒鉛、りん状黒鉛、土状黒鉛、コークス、無煙炭等である。その配合は耐スポーリング性の効果に優れる。炭素は酸化しやすい耐火性原料であることから、耐火性原料に占める配合量は10質量%以下が好ましい。また、揮発シリカは不定形耐火物施工時の流動性付与の効果を持ち、その配合量は耐火性原料に占める割合で5質量%以下が好ましい。
【0036】
不定形耐火物に必要な結合剤および分散剤と、必要により添加する酸化防止剤、乾燥促進剤、増粘剤、有機質ファイバー、耐火粗大粒子等についても従来材質と同様である。
【0037】
結合剤はアルミナセメント、マグネシアセメント等であり、その添加割合は、耐火性原料100質量部に対して1〜12質量部が好ましい。
【0038】
分散剤は耐火物の施工時の流動性を付与する。具体例としては、トリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダ、ウルトラポリリン酸ソーダ、酸性ヘキサメタリン酸ソーダ、ホウ酸ソーダ、炭酸ソーダ、ポリメタリン酸塩などの無機塩、クエン酸ソーダ、酒石酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダ、スルホン酸ソーダ、ポリカルボン酸塩、β−ナフタレンスルホン酸塩類、ナフタリンスルフォン酸等である。耐火性原料100質量部に対し、0.01〜1質量部程度添加する。
【0039】
酸化防止剤は、シリコン、フェロシリコン、炭化ホウ素(BC)、ホウ化ジルコニウム、ホウ化カルシウム等である。中でも炭化ホウ素が好ましい。その添加量は、耐火性原料100質量部に対し0.1〜3質量部が好ましい。
【0040】
増粘剤は、粘土、ベントナイト、CMC等であり、好ましい添加量は耐火性原料100重量部に対し2質量部以下である。
【0041】
耐火粗大粒子は耐火物組織に発生した亀裂の進展を防止する役割をもつ。前記した耐火性原料の最大粒度は一般に5〜8mmであるが、耐火粗大粒子の粒度はこの耐火性原料よりさらに大きい10〜50mm程度である。その材質は、アルミナ、スピネル、炭化珪素あるいはこれらを主材とした耐火物使用後品あるいは耐火物廃材を使用することができる。添加量は耐火性原料100質量部に対して30質量部以下が好ましい。
【0042】
また、ステンレス鋼ファイバーを添加してもよい。しかし、ステンレス鋼ファイバーは冷却効果、分散性とも劣るので、添加する場合でもその添加量は1質量%以下が好ましい。
【0043】
以上のアルミナ−炭化珪素質不定形耐火物の施工は、流し込みでは不定形耐火物組成100質量部に対して施工水を4〜8質量部程度添加し、混練後、樋外殻と中子との間に流し込み施工される。溶融スラグ樋の樋先に直接施工する他、予め施工したプレキャスト品をもって施工してもよい。施工時には、充填性を高めるためにバイブレータによって加振するのが好ましい。
【0044】
内張りは、新規な内張りあるいはその補修のいずれでもよい。補修では、不定形耐火物組成100質量部に対して施工水を5〜15質量部添加し、混練し、練り土状としたパッチング材として使用してもよい。
【0045】
本発明の水砕スラグ製造装置は、溶融スラグ樋の樋先の内張りに特徴があり、他は基本的に従来構造と変わりが無いので、一般的な構造を示した図1を利用して説明する。溶融スラグ樋1に内張りした不定形耐火物のうち、その樋先の個所を前記した銅骨材添加の炭化珪素含有不定形耐火物12とする。
【0046】
銅骨材添加のアルミナ−炭化珪素質不定形耐火物12は、具体的には樋先から少なくとも100mmまでの間とし、かつ最長が樋先から1000mmまでの間が好ましい。
【0047】
樋先の内張りからその後方の内張りにかけて、アルミナ−炭化珪素質不定形耐火物に対する銅骨材の配合量を段階的に低減させてもよい。また、樋先であっても溶融スラグ樋の背面に例えば銅骨材を添加しないアルミナ−炭化珪素質不定形耐火物を設けてもよい。しかし、材質の組み合わせが増える分、使用する不定形耐火物の種類およびその施工の回数が増えるので、施工能率の面からは好ましくない。
【実施例】
【0048】
以下に本発明実施例とその比較例を示す。水砕スラグ製造装置は、稼動時に吹製口から0.2〜0.3MPaの圧力水を噴出させ、溶融スラグを急冷して水砕スラグを製造する。その際、圧力水は溶融スラグに当たって高温水蒸気を発生させるとともに、一部は溶融スラグ流から跳ね返って樋先の不定形耐火物を直接冷却する。
【0049】
各例は前記水砕スラグ製造装置において実施した。ここで溶融スラグ樋に内張りした不定形耐火物は、炭化珪素30質量%、残部アルミナとした耐火性原料100質量部に、結合剤としてアルミナセメント3質量部および分散剤としてポリアクリル酸ソーダ0.1質量部を添加したアルミナ−炭化珪素質不定形耐火物である。また、その耐火性原料の粒度は、5〜1mm:40質量%、1mm以下:32質量%、0.075mm以下:25質量%とした。
【0050】
前記のアルミナ−炭化珪素質不定形耐火物組成をベースに、各例は表1に示した銅骨材・銅合金骨材あるいはステンレス鋼ファイバーを表2のとおり添加した材質を施工水5質量部をもって混錬し、溶融スラグ樋に中子をもって直接流し込み施工した。
【表1】

【0051】
表2は溶融スラグ樋のうち樋先の内張り材質とその試験結果を示す。溶融スラグ樋の後方の内張りは前記したアルミナ−炭化珪素質不定形耐火物について、銅骨材・銅合金骨材、ステンレス鋼ファイバー共に添加しない従来材質とした。
【0052】
樋先施工時には棒状バイブレータをもって充填化を図った。なお、ここでの銅骨材・銅合金骨材は、それぞれ銅ダライ粉、銅合金ダライ粉を使用した。
【0053】
銅骨材あるいはステンレス鋼ファイバーの分散性は、不定形耐火物の混練時において評価した。耐亀裂性、耐酸化性、耐損耗性は、溶融スラグ樋が溶融スラグを15,000t流通させた後状況から評価した。耐亀裂性および耐酸化性は、樋先不定形耐火物断面から目視によって評価した。耐亀裂性は三段階に区分けし、「○…亀裂が殆ど無い、△…亀裂が少ない、×…亀裂が多い」で示した。
【0054】
耐損耗性は樋先における最大損耗部位の溶損損耗寸法を測定した。この損耗は亀裂、酸化および溶損が複合的に作用した結果である。
【0055】
実施例1〜5および比較例2〜4は、全長約28mの溶融スラグ樋に対し、樋先から200mmまでを樋先材質とした。樋先材質から後方の内張りは、銅ダライ粉、ステンレス鋼ファイバーともに添加しないアルミナ−炭化珪素質不定形耐火物とした。比較例1は溶融スラグ樋の内張り全部を銅骨材、ステンレス鋼ファイバーともに添加しないアルミナ−炭化珪素質不定形耐火物とした。
【表2】

【0056】
実施例1〜5で樋先材質として使用した不定形耐火物は、混錬時において銅骨材が偏析もなく均一に分散した。また、樋先の不定形耐火物は、耐亀裂性、耐酸化性ともに優れ、耐損耗性についても従来例に相当する比較例1に比べて格段に優れている。その結果、溶融スラグ樋の内張りの高寿命化から、水砕スラグ製造装置の稼働率が大きく向上した。
【0057】
比較例1は銅骨材を全く配合しない不定形耐火物をもって溶融スラグ樋の全体を内張りしたものである。樋先の不定形耐火物が耐亀裂性、耐酸化性、耐損耗性において劣る。
【0058】
比較例2はステンレス鋼ファイバーを添加した不定形耐火物を溶融スラグ樋の樋先に内張りしたものである。樋先の不定形耐火物は耐亀裂性、耐酸化性および耐損耗性に劣る。また、ステンレス鋼ファイバーは分散性に劣り、不定形耐火物施工体中の下方に偏析していた。
【0059】
不定形耐火物は炭化珪素含有によって本来は黒色であるが、酸化が生じると白色の脱炭層となる。比較例1、2ではこの脱炭層の厚さが大きい。
【0060】
比較例3は銅骨材の配合量が本発明で規定した範囲より少ない不定形耐火物を溶融スラグ樋の樋先に内張りしたものである。樋先の不定形耐火物は耐損耗性、耐酸化性ともに不十分である。比較例4は銅骨材の配合量が逆に本発明で規定した範囲より多い不定形耐火物を溶融スラグ樋の樋先に内張りしたものである。耐損耗性に劣る。また、その銅骨材は添加量が多いためにその分散性が悪い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】水砕スラグ製造装置の側面断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】銅ダライ粉の典型的な形状例であるフレーク状、螺旋フレーク状、螺旋状を示す。
【図4】螺旋フレーク状の銅ダライ粉を示す写真である。
【符号の説明】
【0062】
1 溶融スラグ樋
2 吹製口
3 ノズル孔
4 溶融スラグ
5 水砕スラグ
6 不定形耐火物
7 水砕スラグ移送樋
8 滞留水
9 圧力水
10 水砕スラグ移送用樋の側壁
11 水噴霧管
12 銅骨材添加のアルミナ−炭化珪素質不定形耐火物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不定形耐火物を内張りした溶融スラグ樋の樋先下部に圧力水を噴出させる吹製口を備えた水砕スラグ製造装置であって、前記溶融スラグ樋の樋先の内張りを、炭化珪素を含む耐火性原料組成100質量部に対してダライ粉状の銅骨材を1〜15質量部添加した炭化珪素含有不定形耐火物とした水砕スラグ製造装置。
【請求項2】
前記炭化珪素含有不定形耐火物の内張り位置を、樋先から少なくとも100mmまでの間とし、かつ最長が樋先から1000mmまでの間とした請求項1記載の水砕スラグ製造装置。
【請求項3】
前記ダライ粉状が、フレーク状、螺旋フレーク状または螺旋状の1種以上である請求項1または2記載の水砕スラグ製造装置。
【請求項4】
前記銅骨材の一部または全部が銅合金骨材である請求項1、2または3記載の水砕スラグ製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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