説明

水系における微生物の増殖を制御する組成物及び方法

水系又は他の系における微生物の増殖を死滅、阻止、又は阻害する組成物及び方法を提供する。本組成物は、少なくとも1つの第1の架橋性ポリマー、少なくとも1つの第2の架橋性ポリマー、及び少なくとも1つの架橋剤を含むことができ、各架橋ポリマーの水への溶解度は、例えば10%〜100%異なっている。本組成物は、少なくとも1つの殺生物性構成成分をさらに含むことができる。本組成物は、殺生物性構成成分及び/又は架橋性ポリマーを緩徐に放出するか、又は殺生物性構成成分を迅速に放出し、且つ架橋性ポリマーを緩徐に放出するように配合することができる。本組成物は、藻類の制御に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系における微生物の増殖を制御する組成物及び方法に関する。より詳細には、本発明は、水への溶解度が異なる架橋性ポリマーを用いた水系の処理に関する。
【0002】
本願は、2007年3月27日に出願された、先の米国仮特許出願第60/920,271号(その全体が参照により本明細書中に援用される)の米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
生物学的汚損は、あらゆる種類の水系において永続している厄介な事象(nuisance)又は問題である。生物学的汚損が、工業プロセス水、例えば、冷却水、金属加工液、又は他の再循環水系、例えば、製紙若しくは織物製造で使用される水系で生じると、直接的に経済的な悪影響をもたらす場合がある。工業プロセス水の生物学的汚損は、制御されない場合、プロセス操作に干渉し、プロセス効率を低下させ、エネルギーを浪費し、水を取り扱う系を閉塞させ、さらには品質を劣化させる場合がある。
【0004】
また、レクリエーション水系、例えば、プール、温泉、又は装飾(若しくは観賞)水系(例えば、池若しくは泉)の生物学的汚損は、それらに対する人々の楽しみを大きく損なう場合がある。生物学的汚損は不快臭を生じる場合が多い。より重要なことには、特にレクリエーション水において、生物学的汚損は、使用に適さなくなるまで水質を劣化させる場合があり、さらには健康被害をもたらすおそれがある。
【0005】
工業プロセス水及びレクリエーション水と同様、公衆衛生水も生物学的汚損及びその関連する問題に敏感である。公衆衛生水としては、例えば、便所水、貯水池水及び下水処理水が挙げられる。公衆衛生水に含まれる廃棄物の性質により、これらの水系は特に生物学的汚損を受け易い。
【0006】
種々の物質が、異なる環境における藻類の制御に使用されており、その例としては、限定するものではないが、塩素/臭素系化合物、ビグアナイド、銅塩、銀系化合物、トリアジン、四級アンモニウム化合物及び高分子化合物が挙げられる。これらの物質にはそれぞれ、pH及び/又は温度感受性、化学的な安定性及び/又は適合性、有効性の制限、並びに環境及び/又はヒトへの毒性に関連した欠陥がある。
【0007】
例えば、塩素は、プール所有者が最も汎用する殺菌剤/消毒剤/酸化剤である。塩素は、細菌、藻類及び他の生物を死滅させるのに非常に有効である場合がある。塩素は典型的には、錠剤形態又は液体形態でスイミングプールに添加されるか、又はプール水に添加される塩の塊から塩素を発生させる電気セルを備える装置である、塩素発生器によって供給される。
【0008】
しかしながら、塩素には、例えば、スイミングプール及び他のレクリエーション水系における排他的な消毒剤としての使用を望ましくないものにする多くの欠点がある。例えば、塩素をアンモニアと組み合わせることにより、殺菌、消毒又は酸化には効果のないクロラミンを形成する場合がある。アンモニアは、環境因子、風によって運ばれプールに落ちる肥料の集積、スイマーの排泄物(汗、尿、唾液及び体脂)又はさらには幾らかの日焼け止めローションのいずれかに由来してプール水中に一般的に存在する。結果として、プール管理者は、塩素からクロラミンへの変換分を補うために、プールを過剰に塩素化する(3ppm超)場合が多い。過塩素化は、皮膚を介した塩素及びクロラミンの過剰な吸収、又は塩素及びクロラミンを含有する空気若しくは水蒸気の吸入につながる場合がある。スイミングプール、特に室内環境で長時間トレーニングする運動選手は特に、塩素及びクロラミンに過度に曝され易く、過敏症及び喘息様の呼吸状態の症状を呈するおそれがある。
【0009】
さらに、塩素又はその副生成物が害を与えるおそれがある所望の植物及び動物を包含し得る水産養殖環境には、塩素は不適である。かかる環境の例としては、水族館、魚卵孵化場、小エビ生け簀及びイセエビ養殖場等が挙げられる。
【0010】
アイオネンポリマー又は高分子四級アンモニウム化合物(ポリコート(polyquats))が、水系における或る特定の生物学的汚損、例えば、バイオフィルム形成及びスライム形成の制御又は防止に使用されている。有利なことに、アイオネンポリマーは概して、水系(water or aqueous systems)において過度に発泡せず、皮膚を刺激せず、温血動物に対する毒性が極めて低い。しかしながら、アイオネンポリマーの欠点の1つは、プール中に見出される汚れ及び残骸(debris)と結合することにより、強度が低減することである。これは、プールをブラッシングし、汚れ及び残骸並びに藻類を掻き出し、それらをプールから除去するフィルタに送ることによって対処することができる。依然として存在する場合があるいかなる汚れ又は残骸をも相殺するために、推奨量を僅かに上回る高分子殺藻剤を添加することによって対処することもできる。さらに、これらのポリマーはまた、遅延死滅剤であり、処理の完結に塩素(又はその代替物)を必要とする黄(mustard)藻類又は黒藻類の死滅にはほとんど無効である。
【0011】
アイオネンポリマーは一般的に販売されており、液体組成物、例えば、水性溶液又は水性製剤として使用されている。アイオネンポリマーの固体形態、例えば、錠剤は、特許文献1及び特許文献2に記載されている。他の水処理化学薬品は、固体形態、例えば、錠剤又はパックで使用されることが多い。以下の特許には、多くの異なる水系で使用するための各種固体形態の水処理化学薬品が記載されている:特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11及び特許文献12並びに特許文献13、特許文献14、特許文献15及び特許文献16。
【0012】
銀又は銅等の金属は、殺菌剤及び殺藻剤として使用されている。しかしながら、金属には2つの欠点がある。排泄物を酸化せず、適切に使用しない場合にはプール表面を着色する。経時的に、銅及び銀の塩がプール又は温泉の表面に蓄積し、青色又は緑色のしみを形成する。塩素と日光との組み合わせにより、灰色又は黒色のしみが形成される場合もある。
【0013】
金属イオンを保持するゼオライト又は高分子物質(特許文献17)等、金属イオンを水中に含入する異なる方法が使用されているが、支持体からかなり簡単に金属イオンが分離される。これが、織物産業が繊維に結合又は付着したナノ粒子を使用する理由である。特許文献18には、直径約1nm〜100nmのナノ銀粒子が糸の繊維に付着した抗菌糸が記載されている。各ナノ銀粒子は、酸化銀に取り囲まれた金属銀コアを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,142,002号
【特許文献2】米国特許第5,419,897号
【特許文献3】米国特許第4,310,434号
【特許文献4】米国特許第4,396,522号
【特許文献5】米国特許第4,477,363号
【特許文献6】米国特許第4,654,341号
【特許文献7】米国特許第4,683,072号
【特許文献8】米国特許第4,820,449号
【特許文献9】米国特許第4,876,003号
【特許文献10】米国特許第4,911,858号
【特許文献11】米国特許第4,961,872号
【特許文献12】米国特許第5,205,955号
【特許文献13】英国特許第1,601,123号
【特許文献14】国際公開第91/18510号
【特許文献15】国際公開第92/13528号
【特許文献16】欧州特許出願公開第0525437A1号
【特許文献17】米国特許第6,217,780号
【特許文献18】米国特許第6,979,491号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、上記課題のすべてを克服する、微生物の増殖を阻止、死滅及び/又阻害する方法を有することが望ましい。
【0016】
また、別の組成物と組み合わせた場合に有効性を失うことなく、長期間にわたって一貫して有効であり、環境又は水系にダメージを与えることなく、及び/又は藻類、例えば、黄藻類又は黒藻類の死滅に有効である組成物を用いて、微生物の増殖を阻止、死滅及び/又阻害する方法を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
水系における微生物(例えば藻類)の増殖の制御に有効な抗菌組成物が、水への溶解度が異なる2つ以上の架橋性ポリマーを含む組成物を提供することによって得られることが見出された。本発明は、種々の液体系(例えば、水系)及びプロセス、例えば、限定するものではないが、農業地域(例えば、耕地、水耕栽培、栄養液、田圃、水田若しくは湿潤生育地域(wet growing areas))、冷却水系(冷却塔、吸込冷却水及び排出冷却水)、廃水系、再循環水系、温水浴槽、スイミングプール、レクリエーション水系、食品加工系、飲料水系及び/又は他の工業水系で利用することができる。
【0018】
本発明の各種実施の形態において、組成物は、殺藻剤に使用される四級アンモニウム化合物を補充し、及び/又は、ナノ銀粒子のような殺生物性の構成成分の組入れにより塩素使用の必要を無くす、遅延放出物質を含み得る。組成物は任意で、組成物の異なる構成成分に基づき、又は、他の異なる組成物と共に、相乗的に作用して、微生物(例えば、黒藻類及び黄藻類)の増殖を制御することができる。
【0019】
本発明のさらなる特徴及び利点は、一部は以下に続く記載で示され、一部は記載から明らかであるか、又は本発明を実施することで理解され得る。本発明の目的及び他の利点は、特に、明細書及び添付の特許請求の範囲で指摘する構成要素及び組合せを用いて、実現及び達成される。
【0020】
当然のことながら、以上の一般的な記載及び以下の詳細な記載はいずれも、例示に過ぎず、特許請求の範囲に記載の本発明を制限するものではない。上記すべての特許、特許出願及び刊行物は、本出願全体を通じて、それらの全体が参照により本明細書中に援用される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、水への溶解度が異なる2つ以上の架橋性ポリマーを用いて、水系における微生物の増殖を制御する、組成物及び方法を提供する。
【0022】
各種実施形態によれば、組成物は、ポリマーマトリクスにおいて水への溶解度が異なる2つ以上の架橋性ポリマーと、少なくとも1つの架橋剤とを組み合わせることによって調製することができ、ここで、水溶性の低いポリマー(複数可)は藻類制御剤であり得る。得られるポリマーマトリクス又は製剤は、数時間〜数日〜1年以上の期間にわたって、藻類制御剤を放出することができる。さらなる抗菌効果は、他の任意の殺生物性構成成分、例えば、マトリクス中に捕捉されたナノ銀粒子に由来し得る。水溶性の低いポリマーは最終的には、はるかに遅い速度で溶解し、水の浄化に役立ち得る。
【0023】
本発明の1つ又は複数の実施形態において、本発明の組成物は、任意の大きさの固体物質であり得る。例えば、本発明の1つ又は複数の実施形態において、本発明において形成される生成物は、固化して任意の大きさの強固な塊になる可能性がある。固体生成物の形成は、ペーストの形態であり得る原料の混合によって達成することができ、これをその後、任意の形状又は大きさの型に流し込むか、又は他の方法で入れた後、乾燥させることにより、固体生成物を形成することができる。例えば形状及び大きさの範囲は、例えば、重量が1グラムの粉末又は錠剤から、重量が450グラム以上、例えば、750グラム、1000グラム以上の固体にまで及び得る。固体生成物の重量範囲は、1/2グラム〜例えば500グラム、5グラム〜300グラム、50グラム〜200グラム、及びこれらの量の間の、又はこれらを上回るか、若しくは下回る任意の範囲であり得る。固体生成物の形状は、ペレット状、円筒状、四角状又は任意の幾何学的形状であり得る。例えば、形状は、ホッケーパックの大きさ及び寸法であり得る。概して、形状が大きくなるほど(又は固体物質の重量が大きくなるほど)、より長期間にわたって、固体は、藻類制御剤又は他の制御剤を放出することができる。したがって、固体塊の時間放出性の一部は、固体塊の形状によって決定され得る。したがって、長期放出を所望する場合には、処理領域全体にわたって分散させ、それにより藻類又は他の微生物の即時制御及び長期制御を達成することができる、例えば、ホッケーパックの形態の、本発明の大きな固体物質を使用することが有利である。
【0024】
一選択肢として、本発明の1つ又は複数の実施形態において、架橋性ポリマーの意味は、第1の架橋性ポリマー、及び/又は第2の架橋性ポリマーとも、架橋が起こる必要があるということではなく、ポリマーが架橋可能であり得るということである。本発明の1つ又は複数の実施形態において、第1の架橋性ポリマーは、得られるポリマーマトリクス又は製剤中で全く架橋せず、その代わりに、第1の架橋性ポリマーは、得られる本発明のポリマーマトリクス又は製剤中に捕捉されるか、又はそうでなければ存在する。本発明の1つ又は複数の実施形態において、第2の架橋性ポリマーは、架橋剤(複数可)と協力して、単独で又は存在してもよい他の構成成分と架橋する。したがって、第1の架橋性ポリマー又は他の物質は、いかなる物質とも架橋することなく、得られるポリマー又はマトリクス又は製剤中に捕捉、包埋、又はそうでなければ包含され得る。
【0025】
少なくとも1つの微生物の増殖を制御又は阻害する本発明の組成物を用いる方法は、かかる増殖の低減及び/又は阻止を含む。
【0026】
また、当然のことながら、少なくとも1つの微生物の増殖を「制御する」(例えば、阻止する)ことによって、微生物の増殖が少なくとも部分的に阻害される。すなわち、微生物が全く増殖しないか、又は本質的に全く増殖しない。少なくとも1つの微生物の増殖を「制御する」ことによって、微生物集団を所望のレベルに維持し、集団を所望のレベルに(検出不可能限界にまでも)低減させ、及び/又は微生物の増殖を少なくとも部分的に阻害する。したがって、本発明の一実施形態において、少なくとも1つの微生物による攻撃を受け易い製品、物質又は培地は、この攻撃並びに結果的な損傷及び微生物によって引き起こされる他の有害効果から少なくとも部分的に保護される。また、これも当然のことながら、少なくとも1つの微生物の増殖を「制御する」ことはまた、微生物による攻撃及び任意の結果的な損傷又は他の有害効果を軽減する、すなわち、微生物増殖速度又は微生物攻撃速度を遅延及び/又は削減するように、少なくとも1つの微生物を低レベルに生物静力学的に低減及び/又は維持することを含む。しかし、本発明の組成物は好ましくは、ヒト及び高等生物に対する毒性が低い。
【0027】
本明細書において、「水系」という用語は、レクリエーション水系、特に、再循環水系、例えば、温水浴槽、温泉及びスイミングプール及び工業液系、例えば、限定するものではないが、製紙水系、パルプスラリー、製紙プロセスの白水、湖、池、水景設備(water features)(観賞、装飾水景設備、泉、滝)、冷却水系(冷却塔、吸込冷却水及び排出冷却水)、廃水系、食品加工系、飲料水系、皮革加工水系、金属加工液系、並びに他の工業水系を含む。他の系は、農業用途、例えば、水耕栽培用途、田圃、栄養液、湿潤生育地域、又は水田を含む。
【0028】
本明細書において、「殺生物性構成成分」という用語は、殺微生物剤、殺細菌剤及び殺藻剤等、又は望ましくない微生物、細菌、藻類、昆虫若しくは害虫等、若しくは以下に記載するような制御する必要がある1つ若しくは複数の生物の対処/制御(例えば、死滅、阻止若しくは阻害)に使用される任意の組成物を含む。
【0029】
各種実施形態により、少なくとも1つの(第2の架橋性ポリマーよりも)水溶性が高い第1の架橋性ポリマー、少なくとも1つの(第1の架橋性ポリマーよりも)水溶性が低い第2の架橋性ポリマー、及び少なくとも1つの架橋剤を含む架橋性(又は架橋された)マトリクスを含む、水処理用の組成物が提供される。組成物は、第1の架橋性ポリマーとは異なる少なくとも1つの殺生物性構成成分を含み得る。任意選択で、殺生物性構成成分及び/又は第1の架橋性ポリマーは、少なくとも1つの殺微生物剤、少なくとも1つの殺細菌剤、及び/又は少なくとも1つの殺藻剤である。好ましくは、殺生物性構成成分及び/又は第1の架橋性ポリマーは殺藻剤である。
【0030】
本発明による組成物のマトリクスを形成するのに好適な第1の架橋性ポリマーは、(第2の架橋性ポリマーと比較して)水に比較的迅速に溶解するポリマーを概して含み、水に溶解した場合にはアミン部分を含有し、及び/又は殺生物性構成成分、例えば、銀、銅、又は亜鉛イオン源と組み合わせる場合には固体を形成することができる。望ましくは、これらのポリマーは、上記イオン源若しくは他の構成成分と組み合わせた場合及び/又は乾燥して固体化した場合に実質的に膨張も収縮もしない。第1の架橋性ポリマーは、組成物の架橋性ポリマーマトリクスに使用する場合、経時的な水の浄化及び/又は殺生物性構成成分の放出機能を有し得る。例えば、第1の架橋性ポリマーは、架橋性マトリクスが、数時間〜数日〜さらには1年以上の範囲の期間にわたって、第1の架橋性ポリマー及び/又は殺生物性構成成分を迅速に放出するように配合することができる。例えば、放出速度は、約1時間〜7日、7日から4週間〜6週間、4週間〜6週間から4ヶ月〜6ヶ月、4ヶ月〜6ヶ月から1年以上、又は2日〜3日から1年又は1年超であり得る。第1の架橋性ポリマーの放出速度は、第2の架橋性ポリマーの放出速度よりも少なくとも速い速度であり得る。
【0031】
好ましくは、第1の架橋性ポリマーの水への溶解度は、約80%〜約100%である(ここでのパーセントは、ポリマーの重量に基づく)。第1の架橋性ポリマー及び第2の架橋性ポリマーの間の水への溶解度は、少なくとも10%異なる、例えば、約10%〜100%、又は25%〜75%であり得る。
【0032】
好ましくは、第1の架橋性ポリマーの架橋量又は架橋度は、約50%〜約100%、又は75%〜100%、又は85%〜100%等であり得る。架橋パーセントは、架橋することができる利用可能部位を指す。
【0033】
第1の架橋ポリマーは、全体の組成物又は製剤中、任意の量、例えば、組成物の合計重量に対して、約2重量%〜約80重量%又は約4重量%〜約24重量%で存在し得る。しかしながら、組成物中の異なる構成成分の異なる放出速度の望ましさに応じて、量に関して変更形態を行うことができる。例えば、モノマー又は架橋性ポリマーは、組成物の合計重量に対して、約7重量%〜約13重量%、より詳細には約8重量%〜約11重量%の範囲の量で添加することができる。
【0034】
好ましくは、第1の架橋性ポリマーの平均分子量は、約1,000ダルトン〜約500,000ダルトン、例えば、約1,000ダルトン〜400,000ダルトン;1,000ダルトン〜250,000ダルトン;1,000ダルトン〜150,000ダルトン;1,000ダルトン〜75,000ダルトン;1,000ダルトン〜40,000ダルトン;及び1,000ダルトン〜20,000ダルトン等である。
【0035】
各種実施形態によれば、第1の架橋ポリマーは、アイオネンポリマー又は高分子四級アンモニウム化合物を含む。本明細書中で記載するように、少なくとも1つのより水溶性が高いポリマー又はより速く放出する物質、例えば、四級アンモニウム化合物(高分子形態である場合、アイオネンポリマーとしても知られている;これらの用語は本明細書中で区別なく使用される)の存在により、別個の殺生物性構成成分と共に使用する場合の抗菌活性(例えば、抗藻活性)をさらに高めることができる。四級アンモニウム化合物は、有効な殺生物組成物であり得るため、本発明による組成物に単独で殺生物剤として使用することができる。
【0036】
例えば、四級アンモニウム化合物、例えば、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドは、殺藻剤として市販されている。四級アンモニウム化合物の使用は、より広いスペクトルの抗藻活性をもたらすことができるか、又は厄介な藻類に対する効力の増大をもたらすことができる。例えば、別個の殺生物性構成成分(複数可)及びより水溶性のポリマー又はより速い放出物質、例えば、四級アンモニウム化合物は相乗的に作用して、特に有用且つ経済的な抗菌系を提供することができる。
【0037】
高分子四級アンモニウム化合物を使用することができ、ポリコート又はアイオネンポリマーとしても知られている。これらの用語は同義語であり、本明細書中で区別なく使用される。これらは、ポリマー主鎖に四級窒素を含有するカチオン性ポリマーである。任意のアイオネンポリマー又はアイオネンポリマーの混合物を、本発明により使用することができる。アイオネンポリマーは、ポリマー中に見出される繰り返し単位によって分類することができる。繰り返し単位は、アイオネンポリマーの作製に用いられる反応剤から生じる。この類のポリマーの生物学的活性も既知である。例えば、A. Rembaum, Biological Activity of Ionene Polymers, Applied Polymer SymposiumNo. 22, 299-317 (1973)及びO. May, "PolymericAntimicrobial Agents" inDisinfection, Sterilization,and Preservation、S. Block、Ed., 322-333 (Lea& Febiger, Philadelphia, 1991)を参照されたい。
【0038】
本発明によるさらなる相乗的な抗菌効果及び放出効果の提供に使用され得るアイオネンポリマー又は四級アンモニウム化合物は、任意のアンモニウム源から得ることができる。例えば、四級アンモニウム化合物は、四級アンモニウム基を1つ有する化合物であってもよく、又はポリ四級アンモニウム化合物であってもよい。好適な四級アンモニウム化合物の例としては、例えば、N,N−ジエチル−N−ドデシル−N−ベンジルアンモニウムクロリド、N,N−ジメチル−N−オクタデシル−N−(ジメチルベンジル)アンモニウムクロリド、N,N−ジメチル−N,N−ジデシルアンモニウムクロリド、N,N−ジメチル−N,N−ジドデシルアンモニウムクロリド、N,N,N−トリメチル−N−テトラデシルアンモニウムクロリド、N−ベンジル−N,N−ジメチル−N−(C12〜C18アルキル)アンモニウムクロリド、N−(ジクロロベンジル)−N,−N−ジメチル−N−ドデシルアンモニウムクロリド、N−ヘキサデシルピリジニウムクロリド、N−ヘキサデシルピリジニウムブロミド、N−ヘキサデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N−ドデシルピリジニウムクロリド、N−ドデシルピリジニウムビスルフェート、N−ベンジル−N−ドデシル−N,N−ビス(β−ヒドロキシ−エチル)アンモニウムクロリド、N−ドデシル−N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド、N−ベンジル−N,N−ジメチル−N−(C12〜C18アルキル)アンモニウムクロリド、N−ドデシル−N,N−ジメチル−N−エチルアンモニウムエチルスルフェート、N−ドデシル−N,N−ジメチル−N−(1−ナフチルメチル)アンモニウムクロリド、N−ヘキサデシル−N,N−ジメチル−N−ベンジルアンモニウムクロリド又はN−ドデシル−N,N−ジメチル−N−ベンジルアンモニウムクロリドが挙げられる。四級アンモニウム化合物はまた、ポリ四級アンモニウム化合物であってもよい。使用され得る抗菌ポリ四級アンモニウム化合物としては、米国特許第3,874,870号、同第3,931,319号、同第4,027,020号、同第4,089,977号、同第4,111,679号、同第4,506,081号、同第4,581,058号、同第4,778,813号、同第4,970,211号、同第5,051,124号、同第5,093,078号、同第5,142,002号及び同第5,128,100号(参照により本明細書中に援用される)に記載されているものが挙げられる。ポリ四級アンモニウム化合物の例は、Buckman Laboratories International, Inc.から商標WSCPで市販されている、ポリ(オキシエチレン−(ジメチルイミニオ)エチレン(ジメチルイミニオ)エチレンジクロリド)である。
【0039】
アイオネンポリマーには、例えば、殺微生物剤、殺細菌剤及び殺藻剤、並びにバイオフィルム形成及びスライム形成の制御、さらには防止等、水系における様々な用途がある。米国特許第4,970,211号;同第4,176,107号;同第5,382,323号;同第5,681,862号;同第4,960,590号;同第5,637,308号;同第5,087,457号;同第5,093,078号;及び同第5,401,881号には、本発明の恩恵を受ける可能性がある各種水溶性ポリマーの例が提示されており、これらの特許(及び全体で記述したすべての特許及び刊行物)は、それらの全体が参照により本明細書中に援用される。これらの特許には、例えば、Buckman Laboratories International, Inc.による、市販の水溶性ポリマー源がさらに記載されている。
【0040】
アイオネンポリマーは、ポリマー中に見出される繰り返し単位に応じて分類することができる。この繰り返し単位は、アイオネンポリマーの作製に使用される反応剤に由来する。第1のタイプのアイオネンポリマーは、式Iの繰り返し単位を含む。式I:
【0041】
【化1】

【0042】
この式中、R、R、R及びRは同一であるか、又は異なり、H、少なくとも1つのヒドロキシル基で任意で置換されていてもよいC〜C20アルキル、及び少なくとも1つのC〜C20アルキル基で任意でベンゼン部分が置換されていてもよいベンジルから選択される。好ましくは、R、R、R及びRはすべて、メチル又はエチルである。
【0043】
基「A」は、C〜C10アルキル又はアルキレン、C〜C10アルケニル又はアルケニレン、C〜C10アルキニル又はアルキニレン、C〜C10ヒドロキシアルキル又はヒドロキシアルキレン、対称又は非対称のジ−C〜C10−アルキルエーテル、アリール(又はアリーレン)、アリール(又はアリーレン)−C〜C10−アルキル(又はアルキレン)、又はC〜C10−アルキルアリール−C〜C10アルキル(又はC〜C10アルキレンアリール−C〜C10アルキレン)から選択される二価のラジカルである。「A」は、C〜Cアルキル(又はアルキレン)、C〜Cアルケニル(又はアルキレン)、C〜Cヒドロキシ−アルキル(又はアルキレン)、又は対称のジ−C〜C−アルキルエーテルである可能性があり、最も好ましくは「A」は、プロピレン、2−ヒドロキシプロピレン又はジエチレンエーテルである。「A」は、二価のC〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、C〜Cヒドロキシアルキレン、又は対称のジ−C〜C−アルキレンエーテルであり得、最も好ましくは「A」は、−CHCHCH−、−CHCH(OH)CH−又は−CHCHOCHCH−である。
【0044】
基「B」は、C〜C10アルキレン、C〜C10アルケニレン、C〜C10アルキニレン、C〜C10ヒドロキシアルキレン、アリーレン、アリーレン−C〜C10−アルキレン、又はC〜C10−アルキレンアリール−C〜C10−アルキレンから選択される二価のラジカルである。好ましくは、「B」は、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、C〜Cヒドロキシアルキレン、アリーレン、アリーレン−C〜C−アルキレン、又はC〜Cアルキレンアリール−C〜C−アルキレンである。最も好ましくは「B」は、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−、−CH(CHCH−又は−CH(CHCH−である。
【0045】
対イオン「X2−」は、アイオネンポリマー主鎖を形成する繰り返し単位中のカチオン電荷と釣り合うのに十分な、二価対イオン、2つの一価対イオン、又は多価対イオンの一部である。好ましくは、X2−は、ハロゲン化物アニオン及びトリハロゲン化物アニオン、より好ましくは、塩化物アニオン又は臭化物アニオンから選択される、2つの一価アニオンである。トリハロゲン化物対イオンを有するアイオネンポリマーは、米国特許第3,778,476号に記載されている。この特許の開示は参照により本明細書中に援用される。
【0046】
第2のタイプのアイオネンポリマーは、式IIの繰り返し単位を含む。式II:
【0047】
【化2】

【0048】
この式II中、R、R及びAの定義は、式Iに関して上記で定義したものと同一である。Xは、アイオネンポリマーを形成する繰り返し単位のカチオン電荷と釣り合うのに十分な、一価対イオン、二価対イオンの半分又は多価対イオンの一部である。Xは、例えば、ハロゲン化物アニオン又はトリハロゲン化物アニオンであり得、好ましくは塩化物アニオン又は臭化物アニオンである。
【0049】
上述したアイオネンポリマーの中でも、特に好ましい式Iの繰り返し単位を有するアイオネンポリマーは、ポリ[オキシエチレン(ジメチルイミニオ)エチレン(ジメチルイミニオ)エチレン]ジクロリドである。このアイオネンポリマー中、R、R、R及びRはそれぞれメチルであり、Aは−CHCHOCHCH−であり、Bは−CHCH−であり、且つX2−は2Clであり、平均分子量は1,000〜5,000である。このアイオネンポリマーは、ポリマーの60%水性分散液である、Busan(登録商標)77製品として、又はポリマーの60%水性分散液である、WSCP(登録商標)製品として、テネシー州メンフィスのBuckman Laboratories, Inc.より入手可能である。Busan(登録商標)77及びWSCP(登録商標)は、微生物制御を目的として主に水系、例えば、金属加工液で使用される殺生物剤である。
【0050】
別の特に好ましい式Iの繰り返し単位を有するアイオネンポリマー(これも、Busan(登録商標)79製品又はWSCPII製品としてBuckman Laboratories, Inc.より入手可能)は、R、R、R及びRがそれぞれメチルであり、Aが−CHCH(OH)CH−であり、Bが−CHCH−であり、且つX2−が2Clであるアイオネンポリマーである。このアイオネンポリマーは、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−エタンジアミン(TMEDA)と(クロロメチル)−オキシランとの反応生成物であり、平均分子量が1000〜5000である。ポリマー製品Busan(登録商標)79又はWSCPII製品はポリマーの60%水性溶液である。
【0051】
式IIの繰り返し単位を有する好ましいアイオネンポリマーは、R及びRがそれぞれメチルであり、Aが−CHCH(OH)CH−であり、且つXがClであるものである。Busan(登録商標)1055製品は、ジメチルアミンと、平均分子量が2,000〜10,000の(クロロメチル)オキシランとの反応生成物として得られるアイオネンポリマーの50%水性分散液である。
【0052】
Busan(登録商標)1157製品は、ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの反応生成物として得られ、エチレンジアミンで架橋され、R及びRがそれぞれメチルであり、Aが−CHCH(OH)CH−であり、且つXがClである、式IIの繰り返し単位を有するアイオネンポリマーの50%水性分散液である。このアイオネンポリマーの平均分子量は100,000〜500,000である。R及びRがそれぞれメチルであり、Aが−CHCH(OH)CH−であり、且つXがClである、式IIの繰り返し単位を有する別のアイオネンポリマーは、ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの反応生成物として得ることができる。このアイオネンポリマーは、平均分子量が5,000〜10,000であり、BUSAN(登録商標)1055製品として50%水溶液でBuckman Laboratories, Inc.より入手可能である。
【0053】
Busan(登録商標)1155製品は、式II(式中、R及びRはそれぞれメチルであり、Aは−CHCH(OH)CH−であり、XはClである)の繰り返し単位を有するアイオネンポリマーの50%水性分散液であり、アイオネンポリマーはアンモニアで架橋されている。このアイオネンポリマーの分子量は、およそ100,000〜500,000である。Busan(登録商標)1155は、ポリ(2−ヒドロキシエチレンジメチルイミニオ−2−ヒドロキシプロピレン−ジメチルイミニオメチレン)ジクロリドを含み、APCA(登録商標)としても市販されている。
【0054】
Busan(登録商標)1099製品又はBubond(登録商標)65製品は、式II(式中、R及びRはそれぞれメチルであり、Aは−CHCH(OH)CH−であり、XはClである)の繰り返し単位を有する架橋アイオネンポリマーの25%水性分散液であり、架橋剤はモノメチルアミンである。このアイオネンポリマーの分子量は、およそ10,000〜100,000である。
【0055】
商品名によって特定される上記のアイオネンポリマー及び製品はそれぞれ、テネシー州メンフィスのBuckman Laboratories, Inc.より入手可能である。
【0056】
第1の架橋性ポリマーは、既知の方法によって調製することができる。例えば、式Iの繰り返し単位を有するアイオネンポリマーは、多くの既知の方法によって調製することができる。一方法は、式RN−B−NRのジアミンを式X−A−Xの二ハロゲン化物と反応させることである。この繰り返し単位を有するアイオネンポリマー及びその調製方法は、例えば、米国特許第3,874,870号、同第3,931,319号、同第4,025,627号、同第4,027,020号、同第4,506,870号及び同第5,093,078号(これらの開示は参照により本明細書中に援用される)に記載されている。
【0057】
式IIの繰り返し単位を有するアイオネンポリマーは、既知の方法によって調製することができる。一方法は、式RNHのアミンを、ハロエポキシド、例えば、エピクロロヒドリンと反応させることである。式IIの繰り返し単位を有するアイオネンポリマーは、例えば、米国特許第4,111,679号及び同第5,051,124号(これらの開示は参照により本明細書中に援用される)に記載されている。
【0058】
式I又は式IIの繰り返し単位を含むアイオネンポリマーは、当該技術分野において既知の手段を用いて、一級アミン、二級アミン又は他の多官能性アミンにより架橋することもできる。アイオネンポリマーは、ポリマー主鎖又は側鎖に結合した四級窒素原子又は別の官能基のいずれかを介して架橋することができる。
【0059】
架橋共反応剤を用いて調製される架橋アイオネンポリマーは、米国特許第3,738,945号及び米国再発行特許第28,808号(これらの開示は参照により本明細書中に援用される)中に開示されている。この再発行特許には、ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの反応によって調製されたアイオネンポリマーの架橋が記載されている。列記された架橋共反応剤は、アンモニア、一級アミン、アルキレンジアミン、ポリグリコールアミン、ピペラジン、複素芳香族ジアミン及び芳香族ジアミンである。
【0060】
米国特許第5,051,124号(その開示は参照により本明細書中に援用される)には、ジメチルアミン、多官能性アミン及びエピクロロヒドリンの反応から得られる架橋アイオネンポリマーが記載されている。各種架橋アイオネンポリマー、それらの特性及びそれらの作製方法の他の例は、米国特許第3,894,946号、同第3,894,947号、同第3,930,877号、同第4,104,161号、同第4,164,521号、同第4,147,627号、同第4,166,041号、同第4,606,773号及び同第4,769,155号において提示されている。これらの特許それぞれの開示内容は、参照により本明細書中に援用される。
【0061】
式I又は式IIの繰り返し単位を含むアイオネンポリマーはまた、キャッピングすることができ、すなわち、特定の末端基を有することができる。キャッピングは、当該技術分野において既知の手段によって達成することができる。例えば、過剰の、アイオネンポリマーを作製するのに使用されるいずれかの反応剤を用いて、キャッピング基を設けることができる。代替的には、計算された量の単官能性の三級アミン又は単官能性の置換若しくは非置換ハロゲン化アルキルをアイオネンポリマーと反応させることにより、キャッピングしたアイオネンポリマーを得ることができる。アイオネンポリマーは、一端又は両端でキャッピングすることができる。キャッピングしたアイオネンポリマー及びその殺微生物特性は、米国特許第3,931,319号及び同第5,093,078号(これらの特許それぞれの開示内容は、参照により本明細書中に援用される)に記載されている。
【0062】
四級アンモニウム化合物は、任意の有効量、例えば、約0.01ppm〜約1,000ppmの範囲、好ましくは約0.1ppm〜約100ppmの範囲で水系中に存在し得る。
【0063】
好ましくは、第2の架橋性ポリマーの水への溶解度は、約1%〜約100%、例えば、1%〜70%、又は5%〜50%、又は10%〜40%、又は15%〜40%である。好ましくは、第2の架橋性ポリマーの架橋量は、約20%〜約99%である。好ましくは、第2の架橋ポリマーのパーセント重量は、約70%〜約90%である。第2の架橋性ポリマーの平均分子量は、約50,000ダルトン〜約5,000,000ダルトン、例えば、100,000ダルトン〜1,000,000ダルトン、又は250,000ダルトン〜750,000ダルトン及び500,000ダルトン〜2,000,000ダルトン等であり得る。第2の架橋性ポリマーの脱アセチル化度は、約70%〜約95%である場合がある。好ましくは、脱アセチル化度は、約75%〜約78%である。他の脱アセチル化度を使用することもできる。
【0064】
好適な第2の架橋性ポリマーの例として、多糖、及びそれらの塩又は誘導体が挙げられる。例えば、キトサン酢酸塩、キトサン乳酸塩、キトサングルタミン酸塩、メチル−キトサン及びN−カルボキシメチルキトサン等のキトサンの塩又は誘導体が挙げられる。好ましくは、第2の架橋性ポリマーはキトサンを含む。
【0065】
第2の架橋性ポリマーは、キトサン化合物、例えば、キトサン自体(典型的には約50%超の脱アセチル化された脱アセチル化キチン(天然バイオポリマー)、キトサンの塩、キトサン−ゲル、又はこれらの混合物であり得る。キトサン塩粉末とキトサン塩ゲルとの混合物は、得られる組成物に良好な成型特性及び鋳造特性を与えることが見出されている。
【0066】
キトサンは、概して、上記高分子源と組み合わせた場合、及び乾燥して固体化した場合に、実質的に膨張も収縮もしないポリマーである。キトサン塩のキトサンゲルへの封入により、製造時に湿潤し過ぎないようにしながら、さらなるキトサンが架橋性マトリクスに供給され得る。
【0067】
キトサン及びキトサン塩を含むキトサン材料は、Aldrich、Waco、NutriScience及びCarboMer等の企業から市販されている。本発明での使用に好適なキトサンの分子量は、約50,000ダルトン〜約5,000,000ダルトン(例えば、100,000〜5,000,000;500,000〜5,000,000;750,000〜5,000,000;及び1,000,000〜5,000,000等)であり得、及び/又は脱アセチル化度は、約50%〜約98%、好ましくは約75%〜約78%であり得る。他の脱アセチル化度を使用することもできる。
【0068】
任意で、第2の架橋性ポリマーは、キトサン塩及びキトサンゲルの混合物である。キトサン塩は望ましくは、キトサンの簡単に調製される塩、例えば、キトサンと1〜18炭素のモノ−又はポリ−カルボン酸との塩、好ましくはキトサン酢酸塩又はキトサン乳酸塩である。市販されている任意の脱アセチル化度のキトサンを概して使用することができる。しかし、脱アセチル化度が50%を上回るキトサンは、その溶解特性のために好適である。キトサンと乳酸との塩は、架橋性ポリマーとして有効であることが見出されている。キトサン塩は典型的には、合計組成物に対して、約1重量%〜約5重量%、より詳細には約2重量%〜約4重量%、さらにより詳細には約2重量%〜約3重量%の範囲の量で粉末として組成物に添加され、組成物の製造中に金属イオン源と混合することができる。
【0069】
キトサン及び同様な架橋性ポリマー及びそれらの作製方法は、米国特許第6,217,780号(その全体が本明細書中に援用される)に記載されており、本発明に適用可能である。
【0070】
キトサン粉末と金属イオン源とを混合した後に、キトサン−ゲルを組成物に添加することができる。キトサン−ゲルは、キトサン粉末を弱酸に溶解させることによって調製することができる。1重量%〜10重量%(例えば、4重量%〜8重量%)のキトサン粉末を、10重量%のクエン酸、酢酸、乳酸、ホウ酸又はサリチル酸、とりわけクエン酸であり得る弱酸に溶解させることによって、良好な結果が得られている。
【0071】
本発明による組成物のマトリクスを形成するのに好適な第2の架橋性ポリマーは、概して、(第1の架橋性ポリマーと比較して)比較的緩徐に水に溶解するポリマーを含むことができる。望ましくは、これらのポリマーは、イオン源又は他の構成成分と組み合わせる場合及び/又は乾燥して固体を形成する場合に、実質的に膨張も収縮もしない。第2の架橋性ポリマーは、組成物の架橋性ポリマーマトリクスに使用する場合、経時的な水の浄化及び/又はそれ自体の放出機能を有し得る。例えば、第2の架橋性ポリマーは、1時間〜7日、7日から4週間〜6週間、4週間〜6週間から4ヶ月〜6ヶ月、4ヶ月〜6ヶ月から1年以上、又は2日〜3日から1年又は1年超の範囲の期間にわたって、架橋性マトリクスが緩徐に放出するように配合され得る。例えば、放出速度は、約数時間〜数日、数日〜数週間、数週間〜数ヶ月、数ヶ月〜1年超、又は数日〜1年超であり得る。好ましくは、放出速度は、数日よりも長い。より好ましくは、放出速度は、数日〜数週間である。第2の架橋性ポリマーの放出速度は好ましくは、少なくとも第1の架橋性ポリマーの放出速度よりも速い。
【0072】
少なくとも1つの水溶性の低いポリマー又は遅延放出物質、例えば、第2の架橋性ポリマーの存在により、別の殺生物性構成成分と共に使用する場合の抗菌活性をさらに高めることができる。例えば、第2の架橋性ポリマーは、本発明による組成物又は他の異なる組成物の抗藻活性を高めることができる。1つ又は複数の実施形態において、第2の架橋性ポリマーは殺生物剤であり得る。殺生物剤は、少なくとも1つの殺微生物剤、少なくとも1つの殺細菌剤及び/又は少なくとも1つの殺藻剤であり得る。好ましくは、殺生物剤は、少なくとも1つの殺藻剤である。第2の架橋性ポリマーが殺生物剤である場合、本発明による組成物に対して殺生物性構成成分単独として使用することができる。好ましくは、第2の架橋性ポリマーは、他のポリマー及び/又は殺生物剤/構成成分と組み合わせて使用される。
【0073】
当業者は、第2の架橋性ポリマーの有効量を、それが特定用途に有用な殺生物剤である場合、影響を及ぼす系全体の処理前に各種濃度を簡易に試験することによって容易に求めることができる。例えば、処理する水系において、殺生物剤である第2の架橋性ポリマーの濃度は、任意の有効量、例えば、約0.01ppm〜約5,000ppmである場合があり、藻類を処理する場合には、好ましい範囲は、約0.01ppm〜約2,000ppmであり、好ましくは約0.1ppm〜約500ppmの範囲である。
【0074】
架橋剤は、第1の架橋性ポリマー及び/又は第2の架橋性ポリマーを架橋することができる任意の化合物であり得る。好ましくは、架橋剤は、第1の架橋性ポリマー及び/又は第2の架橋性ポリマーが、先に示したような望ましい速度で崩壊するか、又は放出される、望ましい量の架橋を与えるものである。
【0075】
好ましくは、架橋剤の平均分子量は約20ダルトン〜約800ダルトンである。架橋剤は、任意の量、例えば、組成物の全重量に対して、約0.1重量%〜約50重量%であり得る。
【0076】
架橋剤は、少なくとも1つの塩基、少なくとも1つの硫酸イオン又は硫酸、少なくとも1つの有機溶媒、少なくとも1つの多官能性化合物であり得る。例としては、限定するものではないが、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート又はビス−アクリルアミド又はそれらの組合せが挙げられる。好ましくは、塩基は、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルキルアミンである。任意選択で、アルカリ金属水酸化物は水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムである。好ましくは、アルキルアミンはトリエチルアミンである。
【0077】
一実施形態によれば、架橋剤は少なくとも1つの有機溶媒である。任意選択で、有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ジメチルスルホキシド、グルタルアルデヒド、グリオキサール、エピクロロヒドリン、スクシンアルデヒド、1,10−デカンジアール、トリクロロトリアジン、ベンゾキノン、ビスエポキシラン(bisephoxirane)、又はそれらの組合せである。
【0078】
別の実施形態において、架橋剤は少なくとも1つの多官能性化合物を含む。好ましくは、多官能性化合物はポリアルデヒドを含む。
【0079】
本発明により使用することができる架橋剤は、組成物の架橋性ポリマー(例えばキトサン)用の典型的な架橋剤であり得る。例えば、キトサンマトリクスの形成後、架橋剤による処理を続行して、キトサンマトリクスの物性、特に、水性溶媒への溶解度及び使用時の放出特性を調節する。
【0080】
処理は、マトリクスを架橋剤中へ浸漬させることを含み得る。架橋剤が塩基である場合、広範な塩基を使用することができ、例としては、限定するものではないが、アルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、及びアルキルアミン、例えば、トリエチルアミンが挙げられる。一般的な有機溶媒は、架橋剤として使用することができ、限定するものではないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ジメチルスルホキシド、グルタルアルデヒド、グリオキサール、エピクロロヒドリン、スクシンアルデヒド、1,10−デカンジアール、トリクロロトリアジン、ベンゾキノン及びビスエポキシランであり得る。多官能性化合物、例えば、ポリアルデヒド、及び架橋剤の混合物も使用することができる。薬剤の濃度が高く、且つ処理が長いほど、使用される架橋性ポリマー、殺生物性構成成分等の架橋性マトリクス中に捕捉された構成成分、及び/又は高分子殺藻剤の放出がより遅くなる(水溶性をより低くすることによって、放出速度がより遅くなる)。
【0081】
使用する架橋剤は、使用する架橋性ポリマーの性質によって決めることができる。例えば、上記のようにキトサンポリマーを使用する場合、架橋剤として組成物中に硫酸を用いることができ、典型的には、組成物総量に対して、約0.02重量%〜約0.05重量%の範囲の量で添加される。第1の架橋性ポリマーの架橋量は、約1:n−1〜約n−1:1(ここで、nは架橋剤中の活性基の数を示す)であり得、第2の架橋性ポリマーの架橋の量は約1:n−1〜約n−1:1である。
【0082】
硫酸は、キトサンの架橋を補助し、組成物の固化に役立つ。いずれの理論に縛られるものでもないが、硫酸及び硫酸塩源に由来する架橋硫酸アニオンが、キトサン高分子鎖のアミノ基間を架橋すると考えられる。カルボキシルメチル−キトサンは、グルタミン酸若しくはアスパラギン酸又はそれらの塩で架橋することができる。これらの架橋剤及び他の既知の架橋剤、例えば、米国特許第6,217,780号(その全体が本明細書中に援用される)に記載されているものを使用することができる。
【0083】
一選択肢として、(第1の架橋性ポリマー及び第2の架橋性ポリマーとは異なる)1つ又は複数の殺生物性構成成分を、本発明による組成物において使用することができる。好ましくは、殺生物性構成成分は、第1の架橋性ポリマー及び/又は第2の架橋性ポリマーに簡単に捕捉され、及び/又は担持され得る。望ましくは、殺生物性構成成分は、望ましい速度で、例えば、先に示したような第1の架橋性ポリマー及び/又は第2の架橋性ポリマーの放出速度で放出される特性を有し得る。例えば、放出速度は、約1時間〜7日、7日から4週間〜6週間、4週間〜6週間から4ヶ月〜6ヶ月、4ヶ月〜6ヶ月から1年以上、又は2日〜3日から1年又は1年超であり得る。好ましくは、放出速度は数日以下である。より好ましくは、放出速度は、数日〜数週間である。殺生物性構成成分の放出速度は好ましくは、少なくとも第1の架橋性ポリマーの放出速度よりも遅い。
【0084】
殺生物性構成成分は、任意の組成物又は構成要素、例えば、殺微生物剤、殺細菌剤及び/又は殺藻剤であり得る。殺生物性構成成分は、リゾチーム及び/又は他の酵素、例えば、プロテナーゼ又はクチナーゼであり得る。殺生物性構成成分は、存在する場合、前述のように第1の架橋性ポリマー又は第2の架橋性ポリマーとは異なる。殺生物性構成成分は、金属イオン、例えば、亜鉛、銀、銅、又はそれらの組合せであり得る。これらの構成成分は、任意の形態、例えば、ナノ銀粒子等のナノサイズ粒子であり得る。任意選択で、殺生物性構成成分は、殺藻剤及び/又は銀を含む。好ましくは、殺生物性構成成分はナノ銀粒子である。殺生物性構成成分は、液体形態、ゲル形態又は固体形態であり得る。
【0085】
好ましくは、殺生物性構成成分の重量パーセントは、組成物の重量に対して、約0.01重量%〜約10重量%である。しかしながら、任意の量の殺生物性構成成分を水又は他の系の処理に使用することができる。例えば、殺生物性構成成分は、任意の有効量、例えば、約0.01ppm〜約1,000ppmの範囲、好ましくは約0.1ppm〜約100ppmの範囲で系中に存在し得る。
【0086】
1つ又は複数の実施形態によれば、組成物(複数可)は、第1の架橋性ポリマーと比較して、殺生物性構成成分及び/又は第2の架橋性ポリマーを緩徐に放出するように配合される。放出速度は、第1の架橋性ポリマー、第2の架橋性ポリマー及び/又は殺生物性構成成分に関して前述した通りであり得る。
【0087】
別の実施形態では、殺生物性構成成分を迅速に放出し、且つ第1の架橋性ポリマーと比較して第2の架橋性ポリマーを緩徐に放出するように、組成物を配合する。放出速度は、第1の架橋性ポリマー、第2の架橋性ポリマー、及び/又は殺生物性構成成分に関して前述したようなものであり得る。
【0088】
一実施形態において、組成物は、第1の架橋性ポリマーを、殺生物性構成成分、第2の架橋性ポリマー及び/又は架橋剤と組み合わせる場合、又は乾燥固体形態である場合、実質的に膨張も収縮もしない。
【0089】
別の実施形態において、架橋剤は、水性溶媒への架橋性マトリクスの溶解度を調節すると共に、組成物の放出特性を調節する。
【0090】
本願の上記又は別の場所で記載する、殺生物性構成成分及び四級アンモニウム化合物(又は他の活性成分)の濃度は、構成成分を組み合わせた時又は水系に添加した時の構成成分の初期濃度である場合があり、及び/又は構成成分を水系と相互作用させた後の任意の時間での構成成分の濃度である場合がある。
【0091】
本発明による組成物は、当業者に既知の任意の方法で調製することができる。構成成分の量は、先に記載したように所望の特性に基づいて使用することができる。組成物を作製する方法は、所望の特性、例えば、架橋量及び放出速度を与えるように調節することができる。個々の構成成分は、前述及び後述の任意の方法によって調製することができる。
【0092】
例えば、第2の架橋性ポリマー、例えば、キトサンゲルの調製に使用することができる方法は、キトサンを、大量の弱酸、例えば、有機酸、例えば、限定するものではないが、ギ酸、酢酸、クエン酸、ピルビン酸、乳酸、グリコール酸又はリンゴ酸のいずれか1つに溶解させることである。キトサン粉末をクエン酸に1:1(w/w)で溶解させることによって良好な結果が得られている。キトサンゲルは、組成物を固化させる結合剤として容易に作用することができ、簡単に押出し、及び/又は種々の形状にすることができる。
【0093】
これらのポリマー及び殺生物性構成成分は、例えば、米国特許第6,217,780号(その全体が本明細書中に援用される)に記載されている既知の方法によって、架橋性マトリクスと組み合わせることができる。
【0094】
本発明の別の態様では、組成物を使用して藻類を制御する(増殖を死滅、阻止又は阻害する)、本発明による組成物を使用する方法を提供する。組成物は、水又は他の系、例えば、スイミングプール、温泉、水景設備、湖、池、冷却塔、耕地、水耕栽培、農業用途、例えば、田若しくは他の水田、又はそれらの組合せの処理に使用することができる。
【0095】
本発明は、高等生物と接触する水系(aqueous water systems)又は他の系に特に好適であり、本発明の組成物は毒性が低いため、高等生物を害することがない。したがって、例えば、本発明は、例えば、スイミングプール、温泉及び温水浴槽における、微生物(例えば藻類)の制御、並びに水産養殖(例えば、魚卵孵化場、養魚場、小エビ生け簀、イセエビ養殖場及び軟体動物等)又は農業用途若しくは水耕栽培で使用される水系における藻類の制御に使用することができる。
【0096】
制御される微生物の例としては、真菌、細菌、藻類、及びそれらの混合物、例えば、限定するものではないが、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillusniger:クロカビ)及びクロレラ種等が挙げられる。さらなる例は、バシラス種のようなグラム陽性微生物である。本発明の組成物は、黄藻類又は黒藻類の制御に有効である。
【0097】
一例として、本発明による組成物を、塩水塩素化系を用いる水系のような塩水系に添加することができる。例えば、水系は、約2,000ppm〜約8,000ppm、例えば、2,800ppm〜6,000ppmの塩化ナトリウムを含有する場合がある。本発明による組成物は任意で、塩化ナトリウムと相乗的に作用して、微生物、特に藻類の増殖を制御する組成物を提供することができる。藻類及び/又は他の微生物を制御する本発明の組成物の活性のために、かかる水系において塩素発生器を稼働する必要性が低減することにより、電気コストが低減し、過塩素化による望ましくない効果の可能性が低減し得る。
【0098】
本発明の組成物を添加して、塩素の低減又は除去を目的として処理されている水系において藻類及び他の微生物を制御することができる。例えば、一般的な都市用水源中に存在する量であっても塩素の影響を受け易い植物種及び動物種を、水槽が有している可能性があるため、その中で使用される水は、塩素の除去を目的として濾過又は処理する必要がある。そして、組成物は、塩素の低減又は除去によって失われる微生物制御活性の少なくとも幾らかを補給することができる。
【0099】
本発明による組成物を使用する方法は、任意のpH、例えば、約5〜約9の好ましいpH範囲を含む、約2〜約11のpH範囲で実施することができる。ヒト又は魚等の高等生物と接触する水系に関しては、pHを中性にする必要がある(約pH7)。水系のpHは、当該技術分野において既知の通り、酸(複数可)又は塩基(複数可)を添加して調整してもよい。添加する酸又は塩基は、系中で任意の構成成分と反応しないものを選択する必要がある。しかし、pH調整することなく、殺生物性構成成分及び任意の四級アンモニウム化合物を水に添加することが好ましい。
【0100】
本発明による組成物は、微生物制御を必要とする任意の工業水系、農業水系、レクリエーション水系又は他の系で使用することができる。かかる水系としては、限定するものではないが、水耕栽培、水田、沼地、田圃、金属加工液、冷却水系(冷却塔、吸込冷却水及び排出冷却水)、廃水系(例えば、廃水又は水中の廃棄物処理(例えば汚水処理)を行う公衆衛生水)、再循環水系、スイミングプール、温水浴槽、食品加工系、飲料水系、皮革加工水系、白水系、パルプスラリー並びに他の製紙水系又は紙加工水系が挙げられる。概して、任意の工業水系、農業水系又はレクリエーション水系が、本発明から利益を享受し得る。組成物は、かかる各種工業プロセス又はレクリエーション施設用の摂取水の処理にも使用することができる。摂取水は、まず、摂取水が工業プロセス又はレクリエーション施設に入る前に微生物の増殖を阻害するように、本発明の方法で処理することができる。
【0101】
本発明を、以下の実施例を用いてさらに明らかにするが、これらは本発明の例示を意図するものである。
【実施例1】
【0102】
キトサンゲルを、キトサン粉末(Aldrich、高分子量)2.0gを10%クエン酸溶液50mlに完全に混合して調製し、溶解するまで若干加熱した。このゲル6.0gを、キトサン乳酸塩2.0gと混合してペーストを形成した後、Busan(登録商標)77製品(前述の通り、テネシー州メンフィスのBuckman Laboratories, Inc.より入手可能な、アイオネンポリマー又は高分子四級アンモニウム化合物の60%水性分散液)3.2g及び25%硫酸水溶液1.0gを添加した。ペーストを完全に混合し、40℃で一晩放置して乾燥させた。生成物は固化時に収縮も膨張もしない強固な塊に固化した。
【実施例2】
【0103】
キトサンゲルを、キトサン粉末(Aldrich、高分子量)2.0gを10%クエン酸溶液50mlに完全に混合して調製し、溶解するまで若干加熱した。このゲル6.0gを、Busan(登録商標)77製品(前述の通り、テネシー州メンフィスのBuckman Laboratories, Inc.より入手可能なアイオネンポリマー又は高分子四級アンモニウム化合物の60%水性分散液)3.2g及び25%グルタルアルデヒド水溶液1.0gと混合した。ペーストを完全に混合し、40℃で一晩放置して乾燥させた。生成物は固化時に収縮も膨張もしない強固な塊に固化した。
【実施例3】
【0104】
遅延放出殺藻組成物の有効性を評価した。キトサンゲルを、キトサン粉末(Aldrich、高分子量)2.0gを10%クエン酸溶液50mlに完全に混合して調製し、溶解するまで若干加熱した。このゲル6.0gを、キトサン乳酸塩2.0gと混合してペーストを形成した後、WSCP(登録商標)製品(前述の通り、テネシー州メンフィスのBuckman Laboratories, Inc.より入手可能な、アイオネンポリマー又は高分子四級アンモニウム化合物の60%水性分散液)3.2g及び25%硫酸水溶液1.0gを添加した。ペーストを完全に混合し、40℃で一晩放置して乾燥させた。生成物は固化時に収縮も膨張もしない強固な塊に固化した。
【0105】
活性成分(a.i.)WSCP(登録商標)を15.8%含有するこの遅延放出製剤のクロレラ種に対する効果を5週間試験した。試験は、合成冷却水#1を50ml含有する250mlフラスコで開始した。3つの処理があった:5,000ppm a.i. WSCP(登録商標)、毎週サンプリング及び試験するための遅延放出製剤の5,000ppm生成物、並びに毎週放出評価するための遅延放出製剤の5,000ppm生成物。最終処理の合成冷却水は毎週変更した。
【0106】
5,000ppm生成物を得るのに必要な遅延放出物質0.25gを、チーズクロスで作った袋に入れ、合成冷却水でフラスコ内に析出させた。空のチーズクロスで作った袋も、合成冷却水中に5,000ppmのa.i. WSCP(登録商標)殺生物剤を含有するフラスコに入れた。処理するビーカーは、60rpmのSlow Speed Roto Mix(登録商標)(Barnstead/Thermolyne)に入れた。
【0107】
各処理由来の試料1mlを毎週採取して、藻類に対する効果を試験した。殺藻活性の評価は、試験管を用いて行った。試験条件は以下の通りであった:
培地:改変アレン培地
試験管当たりの培地の量:5ml
接種物:590nmの透過率が82%のクロレラ種懸濁液100μl/試験管
各試料から試験用量:0.1ppm、0.5ppm、1.0ppm、5.0ppm、10.0ppm、50.0ppm及び100.0ppm
インキュベーション期間:2週間
インキュベーション温度:24℃
インキュベーション時の照明:明期16時間及び暗期8時間
【0108】
本評価による結果を下記表に示す。MIC値は、所定の生物の増殖を完全に阻害する(抑制する)のに必要な化合物の最低濃度として定義される、最小阻止濃度を表す。
【0109】
【表1】

【0110】
結果から、クロレラ種の制御に関して、活性成分(a.i.)WSCP(登録商標)を15.8%含有する遅延放出製剤が、WSCP(登録商標)のみを含有する製剤である対照と比較しても同等に機能したことが示される。クロレラ種の増殖を完全に阻害する(抑制する)のに必要な化合物の最低レベルである、MIC値(最小阻止濃度値)は、両方の製剤に関して同一であった。結果から、両方の製剤のMICの値が良好であるため、製剤は、クロレラ種の制御に有効であることが示される。
【実施例4】
【0111】
2つの遅延放出殺藻組成物の有効性を評価した。2つの遅延放出製剤は、活性成分であるWSCP(登録商標)製品及びAPCA(登録商標)製品をそれぞれ2.54%含有する。WSCP(登録商標)製品は、前述の通り、テネシー州メンフィスのBuckman Laboratories, Inc.より入手可能なBusan(登録商標)77製品と同様、アイオネンポリマーの60%水性分散液である。APCA(登録商標)製品は、ポリ(2−ヒドロキシエチレンジメチルイミニオ−2−ヒドロキシプロピレン−ジメチルイミニオメチレン)ジクロリド、アイオネンポリマーを含み、これも市販されており、上記のBusan(登録商標)1055と同様である。
【0112】
キトサンゲルを、キトサン粉末(Aldrich、高分子量)2.0gを10%クエン酸溶液50ml中に完全に混合して調製し、溶解するまで若干加熱した。このゲル6.0gを、キトサン乳酸塩2.0gと混合して、ペーストを形成した後、活性成分WSCP(登録商標)製品又はAPCA(登録商標)製品0.8g及び25%硫酸水溶液1.0gを添加した。ペーストを完全に混合し、40℃で一晩放置して乾燥させた。生成物は固化時に収縮も膨張もしない強固な塊に固化した。
【0113】
a.i. WSCP(登録商標)製品又はAPCA(登録商標)製品を2.54%含有する2つの遅延放出製剤のクロレラ種に対する効果を、殺藻物質をスクリーニングする標準的な方法を用いて、上記実施例3と同様の条件下で試験した。製剤を2週間のインキュベーション期間で試験した。
【0114】
この評価による結果を下記表に示す。MIC値は、所定の生物の増殖を完全に阻害する(抑制する)のに必要な化合物の最低濃度と定義される、最小阻止濃度を表す。
【0115】
【表2】

【0116】
結果から、クロレラ種の制御に関して、活性成分(a.i.)WSCP(登録商標)製品を2.54%含有する遅延放出製剤が、活性成分(a.i.)APCA(登録商標)製品を2.54%含有する遅延放出製剤と比較しても同等に機能したことが示される。クロレラ種の増殖を完全に阻止する(抑制する)のに必要な化合物の最低濃度である、MIC値(最小阻止濃度値)は、両方の製剤に関して同一であった。結果から、両方の製剤のMICの値が良好であるため、製剤は、クロレラ種の制御に有効であることが示される。
【0117】
出願人は、すべての引用文献の内容全体を本開示に具体的に援用する。また、量、濃度又は他の値若しくはパラメータを、範囲、好ましい範囲、又は上方の好ましい値及び下方の好ましい値の一覧として与える場合、これは、範囲が別個に開示されているか否かに関わらず、任意の対の任意の上方の範囲限界又は好ましい値及び任意の下方の範囲限界又は好ましい値から成るすべての範囲を具体的に開示するものと理解されるべきものである。本明細書中で様々な数値を列挙する場合、他で別段指示しない限り、その範囲は、その端点、並びに範囲内のすべての整数及び分数を含むものとする。本発明の範囲は、範囲を規定する際に列挙する特定の値に限定されないものとする。
【0118】
本発明の他の実施形態は、本明細書を考慮し、本明細書中に開示した本発明を実施することにより、当業者に明らかである。本明細書及び実施例は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物で示される本発明の真の範囲及び精神を例示するに過ぎないものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1の架橋性ポリマー、少なくとも1つの第2の架橋性ポリマー、及び少なくとも1つの架橋剤を含み、前記第1の架橋性ポリマーの水への溶解度が、前記第2の架橋性ポリマーよりも高い、架橋性マトリクスを含む、組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの殺生物性構成成分をさらに含み、該殺生物性構成成分が、該第1の架橋性ポリマー及び該第2の架橋性ポリマーとは異なる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該殺生物性構成成分が殺藻剤である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
該第1の架橋性ポリマーが殺藻剤である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
該第1の架橋性ポリマーが殺生物剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
該組成物が、該殺生物性構成成分及び/又は該第2の架橋性ポリマーを少なくとも2週間の期間にわたって緩徐に放出するように配合される、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
該組成物が、該殺生物性構成成分を迅速に放出し、且つ該第2の架橋性ポリマーを緩徐に放出するように配合される、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
該殺生物性構成成分が金属イオン、酵素又はそれらの任意の組合せである、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
該殺生物性構成成分が銀、銅又は亜鉛である、請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
該殺生物性構成成分が銀又はそのイオンを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
該第2の架橋性ポリマーが、キトサン、キトサン誘導体、キトサン塩、キトサンゲル、多糖又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
該第2の架橋性ポリマーがキトサンを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
該キトサンの平均分子量が約50,000ダルトン〜約5,000,000ダルトンである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
該キトサンの脱アセチル化度が約30%〜約95%である、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
該キトサンの脱アセチル化度が約75%〜約78%である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
該組成物が、該第1の架橋性ポリマーを該殺生物性構成成分、該第2の架橋性ポリマー及び/又は該架橋剤と組み合わせた場合、又は乾燥固体形態である場合に、実質的に膨張も収縮もしない、請求項2に記載の組成物。
【請求項17】
該架橋剤が、少なくとも1つの塩基、少なくとも1つの硫酸イオン若しくは硫酸、少なくとも1つの有機溶媒、少なくとも1つの多官能性化合物、又はそれらの任意の組合せである、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
該塩基がアルカリ金属水酸化物及び/又はアルキルアミンである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
該アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
該アルキルアミンがトリエチルアミンである、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
該架橋剤が、少なくとも1つの有機溶媒である、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
該有機溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ジメチルスルホキシド、グルタルアルデヒド、グリオキサール、エピクロロヒドリン、スクシンアルデヒド、1,10−デカンジアール、トリクロロトリアジン、ベンゾキノン、ビスエポキシラン又はそれらの組合せである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
該架橋剤が、少なくとも1つの多官能性化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
該多官能性化合物がポリアルデヒドを含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
該第1の架橋性ポリマーが、アイオネンポリマー又は高分子四級アンモニウム化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
該第1の架橋性ポリマーの水への溶解度が約60%〜約100%であり、且つ該第2の架橋性ポリマーの水への溶解度が約1%〜約40%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
該第1の架橋性ポリマーの架橋量が約1:n−1〜約n−1:1(ここで、nは、該架橋剤中の活性基の数である)であり、且つ該第2の架橋性ポリマーの架橋量が約1:n−1〜約n−1:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
該組成物の重量に対して、該第1の架橋性ポリマーの存在量が約1%〜約80%であり、該第2の架橋性ポリマーの存在量が約15%〜約98%であり、且つ該架橋剤の存在量が約0.1%〜約5%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項29】
該組成物の重量に対して、該第1の架橋性ポリマーの存在量が約1%〜約80%であり、該第2の架橋性ポリマーの存在量が約15%〜約98%であり、該架橋剤の存在量が約1%〜約5%であり、且つ該殺生物性構成成分の存在量が約0.01%〜約10%である、請求項2に記載の組成物。
【請求項30】
請求項1に記載の有効量の組成物を用いて前記藻類を制御することを含む、水源中の藻類を制御する方法。
【請求項31】
前記水源が、スイミングプール、温泉、水景設備、湖、池、冷却塔又はそれらの組合せである、請求項30に記載の方法。

【公表番号】特表2010−522814(P2010−522814A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501182(P2010−501182)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/058229
【国際公開番号】WO2008/118940
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(590003238)バックマン・ラボラトリーズ・インターナショナル・インコーポレーテッド (18)
【氏名又は名称原語表記】BUCKMAN LABORATORIES INTERNATIONAL INCORPORATED
【Fターム(参考)】