説明

水系における水性ポリマー濃度の決定方法

ポリマーマトリクスと陽イオン性色素を有する薄い固体薄膜を用いて、水溶液中の負荷電ポリマーの濃度を決定する。試験しようとする少なくとも1種の負荷電ポリマーを含有する水溶液の試料を薄膜センサーに適用する。試料を適用した後の薄膜センサーの吸光度を測定する。その後、薄膜センサーの吸光度を、既知濃度の負荷電ポリマーを含有する試料の吸光度の校正曲線と比較して、試料中の負荷電ポリマーの濃度を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に冷却及びボイラー水系のような工業用水系における水溶性ポリマーの検出に関し、より具体的には固体薄膜センサーを用いて工業用水系において陰イオン性の水溶性ポリマーの濃度又は有用性を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却及びボイラー水系のような多くの工業用水系で水が使用されている。市の上水又は未処理の水は、熱伝達、流量に影響し得るか又は系の設備の腐食を引き起こし得る不純物を含有している。例えば、未処理の水中にはカルシウム、マグネシウム、バリウム及びナトリウムのような金属陽イオンが存在することが多い。水がこれらの不純物を過剰に含有していると、設備の表面上にスケール又は堆積物の形態の沈殿が生成し得る。これらのスケール又は堆積物が存在すると熱伝達の速度、従って系の効率に悪影響を及ぼす。その上、かかるスケール又は堆積物のクリーニング又は除去は、通例系の一時停止を必要とするので費用がかかり厄介である。従って、冷却又は蒸気の目的で水を利用する前に、スケールの生成を抑制するために適当な化学物質で処理するのが望ましい。
【0003】
工業用水系におけるスケール及び堆積物の生成を低減又は抑制するために幾つかの化学物質が提供されている。例えば、陰イオン性の水溶性ポリマーを水に添加することが知られている。1つの特に有用な水溶性ポリマーはHPS−Iであるが、AEC及びAPESのような他の水溶性ポリマーも使用される。しかし、工業用水系に水溶性ポリマーを使用することは、水中のポリマーの濃度を慎重に監視しなければならないので、固有の問題を呈する。例えば、あまりに少ないポリマーを使用すると、スケール生成及び堆積が起こる。対照的に、あまりに高い濃度のポリマーを使用すると、系のコストパフォーマンス効率に悪影響を及ぼす。水性系を化学的に処理する他の方法と同様に、処理用の化学物質には維持するべき最適な濃度がある。
【0004】
水性系で水溶性ポリマーの濃度を決定するための幾つかの方法が利用可能である。例えば、色素を用いて高分子電解質を測定するための幾つかの比色分析法がある。1つの例はCiotaらの米国特許第6214627号である。加えて、チオシアン酸鉄のキレート化を使用してポリアクリル酸に基づいてキャリブレーションを検出するHachポリアクリル酸法がある。一般に、これらの方法は複雑な多段階の操作手順を必要とし、当分野で実施するのが困難である。Johnsonらの米国特許第5958778号に開示されているもののような他の方法では、蛍光又は化学発光法による検出技術と組み合わせてルミノール−タグ付きポリマーを使用して工業用水を監視する。また、水溶性ポリマーの濃度を決定するために不溶性化合物の生成を利用する濁度法もある。この方法は時間がかかり、間違いを生じることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6214627号明細書
【特許文献2】米国特許第5958778号明細書
【特許文献3】米国特許第5032526号明細書
【特許文献4】国際公開第2007/050463号
【特許文献5】国際公開第01/38857号
【特許文献6】米国特許第6051437号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第0135298号明細書
【特許文献8】特開昭56−104248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、水性系において水溶性ポリマーの濃度を、高い再現性、干渉に対する低下した応答、及び高まった安定性で決定するのに容易に使用することができる簡易化されたセンサー及び試験方法に対する強いニーズが存在している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、本発明は、水溶液中の負荷電ポリマーの濃度を測定する方法に関する。この方法は、ポリマーマトリクス及び陽イオン性色素を含む薄い固体薄膜センサーを用意する段階を含んでいる。試験しようとする少なくとも1種の負荷電ポリマーを含有する水溶液の試料を薄膜センサーに適用(アプライ)する。試料を適用した後、薄膜センサーの吸光度を測定する。その後、薄膜センサーの吸光度を、既知濃度の負荷電ポリマーを含有する試料の吸光度の校正曲線と比較して試料中の負荷電ポリマーの濃度を決定する。
【0008】
本発明の別の態様は、ポリマーマトリクス及び陽イオン性色素を含む、水溶液中の負荷電ポリマーの濃度を測定するための固体薄膜センサーに関する。陽イオン性色素は、Dimethyl Methylene Blue、Basic Blue 17、及びNew Methylene Blue Nからなる群から選択される。
【0009】
本発明及び従来技術に対するその利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲を読むことで明らかとなろう。
【0010】
添付の図面と併せて本発明の実施形態に関する以下の記載を参照することにより、本発明の上述及びその他の特徴がより明らかになり、また本発明自体がより良く理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、いろいろな量の陰イオン性ポリマーを有する水試料の、固体薄膜センサー上で反応した後のスペクトルを示す。
【図2】図2は、650nmにおける吸光度をHPS−I濃度に対してプロットした吸光度対陰イオン性ポリマーの濃度のプロットを示す。
【図3】図3は、575nm−525nmの吸光度差(Δ吸光度)をHPS−I濃度に対してプロットしたHPS−Iの校正曲線を示す。
【図4】図4は、赤(R)−緑(G)の吸光度差をHPS−I濃度に対してプロットしたHPS−Iの校正曲線を示す。
【図5】図5は、575nmで吸光度をHPS−I濃度に対してプロットしたHPS−Iの校正曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
全図面を通して対応する参照符号は対応する部分を示す。
【0013】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明するが、ここでは本発明の実施が可能になるように好ましい実施形態に関して詳細に述べる。特定の好ましい実施形態を参照して本発明を記載するが、本発明はこれらの好ましい実施形態に限定されないものと了解されたい。反対に、本発明は、以下の詳細な説明を考慮して明らかになるように数多くの代替・選択肢、修正・変更及び等価物を包含する。
【0014】
工業用水系において陰イオン性の水溶性ポリマーを検出するための改良された固体薄膜センサー組成物及び方法が開示されている。本明細書に開示されている方法は、限定されることはないがボイラー、冷却塔、蒸発器、ガス洗浄器、キルン及び脱塩装置を始めとする水性系において陰イオン性ポリマー腐食又はスケール抑制剤の濃度を迅速かつ正確に決定するのに特に適している。本発明の方法により検出することができるポリマーとしては、限定されることはないが、ポリアクリル酸部分(moiety)ポリマー、ポリスルホン化ポリマー及び無水マレイン酸ポリマーがある。幾つかの考えられる陰イオン性ポリマーの特定の例はHPS−I(GE Betz、Trevose、PA)、AEC、及びAPESである。
【0015】
本出願人は、ある種の異染性色素を含有する固体薄膜センサーが、水性系において陰イオン性ポリマーの濃度を比色分析で決定する際に使用するのに適していることを発見した。ある種の色素は、溶液中で多イオン性化合物と相互作用する際に独特な色変化を起こす。陰イオン性ポリマーが薄膜センサー内で異染性色素と接触すると、色素分子はポリマー上の陰イオン性電荷と共に整列し、その結果色素分子の最大吸光度の波長がシフトする。このシフトは薄膜センサーの色の変化として観察可能である。水溶液中の陰イオン性ポリマーの濃度は、水溶液の試料を薄膜センサーに適用し、薄膜センサーの吸光度を特定の波長で測定することにより、比色分析で決定することができる。その後、測定された吸光度を既知濃度の測定しようとする化学種を有する標準の吸光度と比較する。
【0016】
薄膜センサーを作成するのに必要とされるインク組成物は、一般に異染性色素、ポリマーマトリクス又は複数のポリマーマトリクスの組合せ、及び副次的な補助添加剤を含むポリマーをベースとする組成物からなり、ここで薄膜は共通の溶媒又は溶媒混合物中の上記成分の溶液から製造される。添加剤の例は界面活性剤及び消泡剤である。
【0017】
異染性色素はフェノチアジン構造を有する陽イオン性色素である。Dimethyl Methylene Blue、Basic Blue 17、及びNew Methylene Blue Nが殊に適切異染性色素であることが判明している。表1に、これらの色素の構造を示す。
【0018】
【表1】

インク組成物のマトリクスは、水試料に対する薄膜センサーの溶解度に従って2つのタイプに分けることができる。第1のマトリクスは水に不溶性であり、もう1つは完全に可溶性のマトリクスである。色素をこれら2つのタイプのマトリクスのいずれか一方に加えてインク組成物を形成する。
【0019】
水溶性マトリクスとして、各種の水溶性ポリマーを使用できる。水溶性樹脂としては、例えば、ヒドロキシル基が親水性の構造単位であるポリビニルアルコール樹脂[例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、陽イオン変性ポリビニルアルコール、陰イオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール]、セルロース樹脂[メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース]、キチン、キトサン、デンプン、エーテル結合を有する樹脂[ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)]、及びカルバモイル基を有する樹脂[ポリアクリルアミド(PAA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド]がある。水溶性ポリマーを水に溶解し、薄膜を調製するのに適当な粘度を有するストック溶液を調製する。
【0020】
マトリクスは約0.01〜約10%の界面活性剤を含み得る。好ましい実施形態において、界面活性剤はTWEEN−20又はTRITON X−100である。例えば、0.05%のTWEEN−20を本発明で望ましく使用することができる。もう1つ別の実施形態において、解除(releasing)成分は実質的に界面活性剤を含まない。
【0021】
水溶性マトリクスはさらに、0.1〜10重量%の範囲の濃度で消泡剤を含んでいることができ、典型的な量は5重量パーセント未満、望ましくは0.5重量パーセント未満である。消泡剤は有機シリコーン消泡剤であるのが望ましい。好ましい実施形態において、消泡剤はMomentive Performance Materials、Wilton、CTのSag 638 SFG又はY−17236である。
【0022】
1つの適切なインクマトリクスにおいては、約7〜10gのポリマーストック溶液を使用する。0.2〜0.8gのTween−20及び0〜1gのSag 638 SFGを混合し、室温で少なくとも2時間撹拌する。色素を添加して、インクの色素対マトリクスの比を0.01:10〜0.06:10とする。
【0023】
不溶性マトリクスは、例えば酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース及びプロピオン酸セルロースを始めとするセルロースエステル樹脂(plastics)から選択されるのが望ましいポリマーを使用する。1つの好ましい実施形態においては、酢酸セルロース(Mw10000超)を使用する。ポリマーを溶媒又は有機溶媒の組合せ中に溶解する。幾つかの適切な溶媒の代表例としては、シクロヘキサノン、アセトン、キシレン、トルエン、i−プロパノール、ジ(エチレングリコール)メチルエーテル 、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルブチルケトン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、及びその他のセロソルブがある。ある種の溶媒混合物も使用することができる。
【0024】
1つの適切なインクマトリクスの場合、溶媒中の酢酸セルロース(7〜15%酢酸セルロース)を混合し、室温で24時間超撹拌する。インクの色素対マトリクスの比が0.01:10〜0.06:10となるように色素を添加する。
【0025】
センサー薄膜は上記インクから公知の堆積方法を用いて形成される。これらの堆積方法の非限定例として、インクジェット印刷、噴霧塗装、スクリーン印刷、アレイマイクロスポット法、浸漬塗装、ソルベントキャスティング、ドローコーティング及び当技術分野で公知のその他の方法がある。1つの実施形態において、ポリマー薄膜は、最終薄膜厚さを望ましくは約0.1〜約200ミクロン、より好ましくは0.5〜100ミクロン、さらに好ましくは1〜50ミクロンとして作成される。
【0026】
工業用水系における利用可能な陰イオン性ポリマーの濃度又は量を決定するためには、先ず、対象とする各ポリマーに対する校正曲線を作成する必要がある。校正曲線を作成するには、既知量のポリマーを含有する水の様々な試料を調製し、これらの試料を薄膜センサーに適用し、試料の吸光度を測定する。この研究の目的では、吸光度を吸光度差として報告する。吸光度差は、薄膜センサー自身の吸光度と、試験する水の試料を薄膜センサーに適用した後の薄膜センサーの吸光度との差である。この場合、校正曲線は、この吸光度差を、試料中のポリマーの既知濃度に対してプロットしたものである。一旦作成したら、その校正曲線を使用し、試料の測定された吸光度差を校正曲線と比較し、存在するポリマーの量を曲線から読み取ることにより、いかに多くのポリマーが試料中に存在するかを決定することができる。この校正曲線を使用するには、吸光度を測定するのに使用する装置が、校正曲線を作成するのに使用した装置と同じであるか、又は同様な条件で作動しなければならない。
【0027】
吸光度は、当技術分野で吸光度を測定するのに知られているいかなる適切な装置を使用して測定してもよい。かかる適切な装置としては、限定されることはないが、比色計、分光光度計、カラーホイール、及び他のタイプの公知の色−比較(comparitor)測定器具がある。1つの実施形態において、光学応答の測定は、白色光源(例えば、Ocean Optics、Inc.、Dunedin、FLから入手可能なタングステンランプ)、及び携帯式分光計(Ocean Optics、Inc.、Dunedin、FLから入手可能なModel ST2000)を含む光学系を用いて実施することができる。その他適切な分光光度計としては、Hach Company of Loveland、Co.から入手可能なDR/2010分光光度計、及び同様にHach Companyから入手可能なDR/890比色計がある。応答を測定する他の公知の方法も使用できる。
【0028】
図1は、いろいろな量の陰イオン性ポリマー(例えば、HはGE Betz、Trevose、PAのHPS−Iポリマーを意味する)を有する水試料の固体薄膜センサー上での反応後のスペクトルを示す。図2は、650nmでの吸光度に対する校正曲線を例示する。一旦作成したら校正曲線は、試験しようとする水の試料中の所望の陰イオン性ポリマーの濃度を決定するのに繰返し使用することができる。校正曲線は上記のように容易に作成され、試験しようとする水の試料中の所望の陰イオン性ポリマーの濃度を決定するために現場で提供するか又はコンピューターに記憶させることができる。
【0029】
1つの実施形態においては、この方法を用いて水の試料中の陰イオン性ポリマーの濃度を決定するために、約30〜約50μLの試料、望ましくは約35の水試料を薄膜センサー上に加える。しかし、本発明の範囲から逸脱することなく他の量も考えられる。その後、試料中の陰イオン性ポリマーを、望ましくは約0.5〜7分、好ましくは約1〜約5分の間薄膜センサーと反応させる。この反応は通常約3分で完了することが判明しており、約3分以降に測定した吸光度は正確である。この正確な吸光度の測定値は最初の7分間は本質的に安定なままであり、最初の7分の後に小さな変動が起こることが分かっている。
【0030】
薄膜センサーの吸光度を(通常は上記吸光度差として)測定したら、既知量の特定の陰イオン性ポリマーを含有する溶液の標準吸光度を示す校正曲線と比較する。このようにして、試料中に存在する陰イオン性ポリマーの量を決定することができる。さらに別の実施形態においては、測定を水暴露前、水暴露中、及び水暴露後連続的に行う。
【実施例】
【0031】
ここで、以下の実施例を参照して本開示をより具体的に説明する。以下の実施例は例示と説明の目的で挙げるものであり、完全に網羅するものでも本発明を開示されたその態様に限定するものでもないことに留意されたい。
【実施例1】
【0032】
水中の10gのPEO(Mw=200000)(14.3%)、水中の2.4gのPEG(Mw=2000)(60%)、0.25gのTween 20、0.125gの消泡剤Sag 638 SFG及び50mgのDMMBからなるポリマーマトリクスを、全固体が溶解するまで室温で混合し撹拌した。スクリーン印刷により薄膜を調製し、70℃で10分乾燥した。この薄膜を、HPS−I標準溶液を用いて試験した。マイクロプレートリーダーを用いて575nm及び525nmでスペクトルを読み取り、575nm−525nmの吸光度差をHPS−I濃度の関数としてプロットした。図3に、得られた校正曲線を示す。
【実施例2】
【0033】
2Oとエチレングリコール(1:1)の混合物中の10gの33.3%PAA(Mw=5000)、0.086gのTween 20及び20mgのDMMBを、全固体が溶解するまで室温で混合し撹拌した。スクリーン印刷により薄膜を調製し、70℃で10分乾燥した。この薄膜を、HPS−I標準溶液を用いて試験した。三色(赤、緑、青)のLEDでスペクトルを読み取り、赤−緑の吸光度差をHPS−I濃度の関数としてプロットした。図4に、得られた校正曲線を示す。
【実施例3】
【0034】
ジ(エチレングリコール)メチルエーテル中の2.4g(13.4%)の酢酸セルロース、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル中の7.6gの酢酸セルロース、15mgのCTAB、及び120mgのDMMBを、全固体が溶解するまで室温で混合し撹拌した。スクリーン印刷により薄膜を調製し、70℃で10分乾燥した。この薄膜を、HPS−I標準溶液を用いて試験した。マイクロプレートリーダーを用いて575nmでスペクトルを読み取り、HPS−I濃度の関数としてプロットした。図5に、得られた校正曲線を示す。
【0035】
典型的な実施形態で本発明を例示し説明して来たが、いかなる意味でも本発明の思想から逸脱することなく様々な修正・変更及び置換を行うことができるので、本発明は開示した詳細に限定されることはない。さらに、本明細書に開示した本発明の別の修正・変更及び等価物が日常の実験により当業者には明らかであり、かかる修正・変更及び等価物は特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲内に入ると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液中の負荷電ポリマーの濃度を測定する方法であって、
ポリマーマトリクス及び陽イオン性色素を含む薄い固体薄膜センサーを用意し、
試験しようとする少なくとも1種の負荷電ポリマーを含有する水溶液の試料を薄膜センサーに適用し、
試料を適用した後の薄膜センサーの吸光度を測定し、
薄膜センサーの吸光度を、既知濃度の負荷電ポリマーを含有する試料の吸光度の校正曲線と比較して、試料中の負荷電ポリマーの濃度を決定する
段階を含んでなる、前記方法。
【請求項2】
陽イオン性色素が、Dimethyl Methylene Blue、Basic Blue 17、及びNew Methylene Blue Nからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
薄膜センサーが50ミクロン未満の厚さを有する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
薄膜センサーが、界面活性剤を含有するポリマーストック溶液から作成される、請求項2記載の方法。
【請求項5】
界面活性剤が陽イオン性界面活性剤である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、請求項4記載の方法。
【請求項7】
非イオン性界面活性剤が、全ポリマーストック溶液の0.01〜10重量%の範囲の濃度を有するTween 20である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
薄膜センサーが、消泡剤を含有するポリマーストック溶液から作成される、請求項2記載の方法。
【請求項9】
消泡剤が0.1〜10重量%の範囲の濃度を有する有機シリコーン消泡剤である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
薄膜センサーのポリマーマトリクスが、0.2〜0.8gのTween−20及び0〜1gのSag 638 SFGを含む約7〜10gのポリマーストック溶液から作成され、色素を添加して0.01:10〜0.06:10の色素対マトリクスの比とする、請求項2記載の方法。
【請求項11】
測定される負荷電ポリマーが、HPS−I、AEC、及びAPESからなる群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項12】
ポリマーマトリクス及び陽イオン性色素を含んでなる、水溶液中の負荷電ポリマーの濃度を測定するための固体薄膜センサーであって、陽イオン性色素が、Dimethyl Methylene Blue、Basic Blue 17、及びNew Methylene Blue Nからなる群から選択される、前記薄膜センサー。
【請求項13】
薄膜センサーが50ミクロン未満の厚さを有する、請求項12記載の薄膜センサー。
【請求項14】
薄膜センサーが界面活性剤及び消泡剤を含む、請求項12記載の薄膜センサー。
【請求項15】
界面活性剤が陽イオン性界面活性剤である、請求項14記載の薄膜センサー。
【請求項16】
界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、請求項15記載の薄膜センサー。
【請求項17】
非イオン性界面活性剤が全ポリマーストック溶液の0.01〜10重量%の範囲の濃度のTween 20である、請求項16記載の薄膜センサー。
【請求項18】
消泡剤が有機シリコーン消泡剤である、請求項14記載の薄膜センサー。
【請求項19】
薄膜センサーのポリマーマトリクスが、0.2〜0.8gのTween−20及び0〜1gのSag.638を含む約7〜10gのポリマーストック溶液から作成され、色素を添加して0.01:10〜0.06:10の色素対マトリクスの比とする、請求項18記載の薄膜センサー。
【請求項20】
測定される負荷電ポリマーが、HPS−I、AEC、及びAPESからなる群から選択される、請求項12記載の薄膜センサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−529429(P2010−529429A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510392(P2010−510392)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/061709
【国際公開番号】WO2008/150594
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】