説明

水系接着剤組成物

【課題】 通常条件下での接着力や凝集力に優れるのは勿論のこと、特に初期接着性や作業性に優れ、シックハウス症候群等の環境問題につき懸念の少ない水系接着剤組成物を提供すること。
【解決手段】 (a)(メタ)アクリルアミド40〜98重量部、(b)特定のイオン性ビニルモノマー1〜50重量部、(c)特定のN−置換アミド基を側鎖に有するビニルモノマー0.01〜20重量部を含有してなるビニルモノマーの混合物を、水中で共重合させて得られる特定の分岐構造を有するポリアクリルアミド系水溶性樹脂(A)、ならびに合成樹脂系エマルジョンおよびゴム系ラテックスから選ばれる少なくとも一種の水性ベースポリマー(B)を含有する水系接着剤組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系接着剤組成物、詳しくは、分岐構造を有するポリアクリルアミド系水溶性樹脂を水性ベースポリマーに配合してなる水系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、接着剤として、溶剤型のものが汎用されていたが、火災、爆発、大気汚染、作業環境、人体への安全性等で問題があるため、近年では酢酸ビニルエマルジョンやアクリルエマルジョン等の合成樹脂エマルジョンや、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、天然ゴムラテックス、クロロプレンラテックス等のゴム系ラテックスというような水性ベースポリマーを主成分とする水系接着剤が多く使用されている。
【0003】
水系接着剤としては、前記の水性ベースポリマーに、接着力などの粘・接着特性を付与するため、ロジン類、ロジン誘導体、石油系樹脂、テルペン系樹脂などの粘着付与樹脂エマルジョンや、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂を配合してなる水系接着剤組成物が知られている。
【0004】
但し、これら粘着付与樹脂エマルジョンは、比較的高価である上に、調製の際に可塑剤や有機溶剤を用いる場合があり、この場合には可塑剤や有機溶剤が製品中に残存するという問題があった。また、調製時に乳化剤を使用するため、耐水性などの接着特性が不充分な場合もあった。更にアミノ樹脂は、原料にホルムアルデヒドを使用しているため、ホルムアルデヒドを放散するといった問題があった。最近では、環境ホルモンやシックハウス症候群などの環境問題から、可塑剤や揮発性有機溶剤、特にホルムアルデヒドの使用や放散が制限されるようになってきており、これら粘着付与樹脂エマルジョンやアミノ樹脂に代わる安価で環境問題に懸念のない添加剤が望まれている。
【0005】
そこで、合板などの基材と紙とを張り合わせて出来る化粧合板用の接着剤組成物に、ホルムアルデヒドを放散しない材料として、ポリアクリルアミド樹脂のようなアミド基を有する水溶性樹脂を配合する方法が提案されている(特許文献1参照)が、一般のポリアクリルアミド樹脂水溶液では、比較的低分子量にも関わらず、固形分が低く高粘度のため、作業性や乾燥性に問題があり、かつ接着力や凝集力も満足できるものではなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2000−212537号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、通常条件下での接着力や凝集力に優れるのは勿論のこと、特に初期接着性や作業性に優れ、シックハウス症候群等の環境問題につき懸念の少ない水系接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく、ポリアクリルアミド系水溶性樹脂の構造に着目して鋭意検討を重ねた結果、従来のホルムアルデヒドを放散するアミノ樹脂や粘着付与樹脂エマルジョンなどの代わりに、特定の分岐構造を有するポリアクリルアミド系水溶性樹脂を、水性ベースポリマーに配合することにより、通常条件下での接着力や凝集力に優れるのは勿論のこと、初期接着性や作業性に優れ、しかも環境問題の懸念が少ない優れた水系接着剤組成物が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、(a)(メタ)アクリルアミド40〜98重量部、(b)イオン性ビニルモノマーであって、アリル基、ポリアルキレングリコール基または一般式(1):−CONR(式中、R
は水素原子またはメチル基を表し、Rはメチル基、イソプロピル基または一般式(2):−C(CH−CH−R(Rはカルボキシル基、スルホニル基もしくはこれらの炭素数1〜4のアルキルエステル、またはアセチル基を表す)で表される基を表す)で表されるN−置換アミド基を側鎖に有しないものの少なくとも1種1〜50重量部、(c)アリル基、ポリアルキレングリコール基または一般式(1):−CONR(式中、R
は水素原子またはメチル基を表し、Rはメチル基、イソプロピル基または一般式(2):−C(CH−CH−R(Rはカルボキシル基、スルホニル基もしくはこれらの炭素数1〜4のアルキルエステル、またはアセチル基を表す)で表される基を表す)で表されるN−置換アミド基を側鎖に有するビニルモノマーの少なくとも1種0.01〜20重量部を含有してなるビニルモノマーの混合物を、水中で共重合させて得られる分岐構造を有するポリアクリルアミド系水溶性樹脂(A)、ならびに合成樹脂エマルジョンおよびゴム系ラテックスから選ばれる少なくとも一種の水性ベースポリマー(B)を含有する水系接着剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の特定の分岐構造を有するポリアクリルアミド系水溶性樹脂を水性ベースポリマーに配合して得られる水系接着剤組成物は、通常条件下での接着力や凝集力に優れるのは勿論のこと、初期接着性や作業性に優れ、しかもホルムアルデヒドを放散するなどの懸念が少なく、特に化粧合板などの建材、木工、紙加工などの用途に最適である。なお、本発明の水系接着剤がこのように各種性能に優れるのは定かでないが、ポリアクリルアミド系水溶性樹脂が、連鎖移動性置換基の作用により分岐構造が導入された構造となっていることから、特に木や紙などの基材との接点が多く親和性、密着性が向上し、優れた接着性能を発現するものと考えられる。また比較的高分子量にもかかわらず、分岐構造であるがゆえに、製品は高固形分かつ低粘度で作業性や乾燥性に優れ、凝集力を落とすことなく種々の特徴ある性能を示すものと考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において、(a)(メタ)アクリルアミド(以下、(a)成分という)とは、アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミドをいう(以下、(メタ)とは同意である)。これらのなかでも経済性の面からはアクリルアミドを単独使用するのがよい。
【0012】
(b)イオン性ビニルモノマー(以下、(b)成分という。)としては、アニオン性ビニルモノマー(b−1)(以下、(b−1)成分という。)およびカチオン性ビニルモノマー(b−2)(以下、(b−2)成分という。)であってアリル基、ポリアルキレングリコール基または一般式(1):−CONR(式中、R
は水素原子またはメチル基を表し、Rはメチル基、イソプロピル基または一般式(2):−C(CH−CH−R(Rはカルボキシル基、スルホニル基もしくはこれらの炭素数1〜4のアルキルエステル、またはアセチル基を表す)で表される基を表す。)で表されるN−置換アミド基を側鎖(以下、アリル基、ポリアルキレングリコール基または一般式(1):−CONR(式中、R
は水素原子またはメチル基を表し、Rはメチル基、イソプロピル基または一般式(2):−C(CH−CH−R(Rはカルボキシル基、スルホニル基もしくはこれらの炭素数1〜4のアルキルエステル、またはアセチル基を表す)で表される基を表す。)で表されるN−置換アミド基を連鎖移動性置換基ということもある。)に有しないものから選ばれるいずれか少なくとも一種を用いる。(b−1)成分の具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ムコン酸、シトラコン酸等のジカルボン酸;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などの有機スルホン酸;またはこれら各種有機酸のナトリウム塩、カリウム塩等があげられる。これらのなかでも重合性や価格面から、アクリル酸が好ましい。また、(b−2)成分の具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジンなどの第三級アミノ基を有するビニルモノマーまたはそれらの塩酸、硫酸、酢酸などの無機酸もしくは有機酸の塩類、または該第三級アミノ基含有ビニルモノマ−とメチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸、エピクロルヒドリンなどの四級化剤との反応によって得られる第四級アンモニウム塩を含有するビニルモノマー等があげられる。これらのなかでも重合性や価格面から、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。これら(b)成分は、(b−1)成分または(b−2)成分を単独で使用してもよく、(b−1)成分およびカチオン性ビニルモノマー(b−2)成分を併用して使用してもよい。
【0013】
(c)アリル基、ポリアルキレングリコール基または一般式(1):−CONR(式中、R
は水素原子またはメチル基を表し、Rはメチル基、イソプロピル基または一般式(2):−C(CH−CH−R(Rはカルボキシル基、スルホニル基もしくはこれらの炭素数1〜4のアルキルエステル、またはアセチル基を表す)で表される基を表す)で表されるN−置換アミド基を側鎖に有するビニルモノマー(以下、(c)成分という。)とは、重合に際し連鎖移動点として作用するアリル基、ポリアルキレングリコール基または一般式(1):−CONR(式中、R
は水素原子またはメチル基を表し、Rはメチル基、イソプロピル基または一般式(2):−C(CH−CH−R(Rはカルボキシル基、スルホニル基もしくはこれらの炭素数1〜4のアルキルエステル、またはアセチル基を表す)で表される基を表す)で表されるN−置換アミド基を側鎖に有し、得られる共重合体に多くの分岐構造を導入できるビニルモノマーをいう。本発明はかかる連鎖移動性の置換基の作用により、高分子量化した場合にも比較的低粘度で、かつ各種基材への密着性に優れた分岐構造を有するポリアクリルアミド系水溶性樹脂を得ようとするものである。
【0014】
(c)成分の具体例としては、アリル(メタ)アクリレート、N−
アリル(メタ)アクリルアミド、N−ジアリル(メタ)アクリルアミドなどがあげられる。また、連鎖移動性置換基としてポリアルキレングリコール基を有するビニルモノマーとしては、少なくとも2個のオキシアルキレン基の繰り返し単位を有するものがあげられる。通常はオキシアルキレン基の繰り返し単位10個程度までのものを使用するのが好ましい。具体例としては、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、前記同様のポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリトリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等があげられる。また、連鎖移動性置換基として前記一般式(1)で表されるN−置換アミド基を有するビニルモノマーの具体例としては、ジメチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸およびこれらの炭素数1〜4のアルキルエステルがあげられる。これら(c)成分のなかでも、重合性がよく共重合体に多くの分岐構造を導入できることから、ポリエチレンメタクリレートや、ジメチルアクリルアミドが好ましい。
【0015】
本発明では、任意のビニルモノマー成分として(d)前記(a)成分および(c)成分を除く非架橋性ノニオン性ビニルモノマー(以下、(d)成分という)を使用できる。かかる(d)成分としては、前記(b−1)成分のアルキルエステルや、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、メチルビニルエーテルなどがあげられる。
【0016】

さらに本発明では、任意のビニルモノマー成分として(e)(a)〜(d)成分を除く架橋性ビニルモノマー(以下、(e)成分という)を使用することもできる。(e)成分としては、前記(a)〜(d)成分に含まれず、ビニル基を少なくとも2つ以上有するものを用いることができる。具合的には、たとえば、2官能性ビニルモノマーとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル等のジビニルエステル類、アリルメタクリレート、エポキシアクリレート類、ウレタンアクリレート類、N−メチロールアクリルアミド、ジアリルアミン、ジアリルジメチルアンモニウム、ジアリルフタレート、ジアリルクロレンデート、ジビニルベンゼン等があられる。また、3官能性モノマーとして、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルアミン、トリアリルトリメリテート、N,N−ジアリルアクリルアミド等があげられる。4官能性ビニルモノマーとして、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラアリルピロメリテート、N,N,N’,N’−テトラアリル−1,4−ジアミノブタン、テトラアリルアミン塩、テトラアリルオキシエタン等があげられる。なお、これらのなかでは、製造時の反応性御が容易なことから、官能基がすべてビニル系二重結合のものが好ましい。
【0017】
本発明の前記(a)〜(e)成分の各使用量は、得られる水溶性樹脂の水系接着剤組成物としての性能を十分考慮して決定しなければならない。すなわち、(a)〜(e)成分の各使用量は、以下の通りである。
【0018】
すなわち、(a)成分は、40〜98重量部、好ましくは70〜96重量部である。(a)成分が40重量部に満たない場合には、水系接着剤組成物の接着力が不十分であり、98重量部を越える場合には水溶性樹脂のイオン量が不足し、水性ベースポリマーとの相溶性や基材への密着性が不十分であり、いずれの場合にも好ましくない。
【0019】
(b)成分は、1〜50重量部程度、好ましくは1〜8重量部である。(b)成分が1重量部に満たない場合にはイオン量が不足し基材への密着性が不十分であり、50重量部を越える場合にはイオン量過多になり過凝集するため、いずれの場合にも好ましくない。なお、(b)成分として、(b−1)成分および(b−2)成分の両者を使用する場合の割合は、接着剤配合物の安定性や接着力を向上させる目的で、配合する水性ベースポリマーのイオン性や、接着剤を塗布する基材表面のイオン性などを考慮して適宜に調整すればよい。
【0020】
(c)成分も同様に通常0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。(c)成分が0.01重量部に満たない場合には、水溶性樹脂に多くの分岐構造を導入できないため基材への密着性が不十分であり、20重量部を越える場合には分岐が進みすぎてゲル化するため、いずれの場合にも好ましくない。なお、(c)成分であって、アニオン性基、カチオン性基を有するものを用いる場合には、(c)成分中に含まれる連鎖移動性置換基とアニオン性基、カチオン性基の含有量を考慮に入れて、使用量を決定すればよいが、基本的には、(c)成分の使用量が当該範囲となるように調整すればよい。
【0021】
(d)成分を使用する場合には、1〜20重量部、好ましくは1〜15重量部である。(d)成分を、1重量部以上使用することにより、接着剤組成物の接着力を向上させることができる。(d)成分が20重量部を越える場合には、水への溶解性が悪くなる傾向があり好ましくない。
【0022】
(e)成分を使用する場合には、0.01〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部である。(e)成分を、0.01重量部以上使用することにより、接着剤組成物の凝集力を向上させることができる。(e)成分が1重量部を越える場合には、架橋が進みすぎてゲル化する傾向があるため好ましくない。
【0023】
本発明に用いる(A)成分は、前記(a)〜(c)成分(必要に応じて(d)、(e)成分を含む)からなるビニルモノマーの混合物を、水中で共重合させて得られるが、その製造は同時重合、連続滴下重合等の従来公知の各種方法により行うことができる。例えば、所定の反応容器に前記ビニルモノマーの混合物および水を仕込み、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、またはこれらと亜硫酸水素ナトリウムのごとき還元剤とを組み合わせた形のレドックス系重合開始剤等の通常のラジカル重合開始剤を加え、攪拌下、加温することにより目的物を製造できる。そのほか、前記(a)〜(c)成分を共重合して主鎖を製造後、前記(a)および(b)成分を主成分とする側鎖をグラフト重合させることにより高分子量でグラフト構造の主鎖と側鎖のイオン成分に偏りを持たせたアクリルアミド系共重合体を製造する方法や、前記(a)〜(e)成分からなるビニルモノマーの混合物を、澱粉類やセルロース類、およびそれらの誘導体に代表される水分散性多糖類水溶液の存在下に共重合してグラフト構造の多糖類−アクリルアミド系共重合体を製造する方法などが挙げられる。なお、反応温度は通常50〜100℃程度であり、反応時間は通常0.1〜5時間である。
【0024】
かくして得られた本発明の分岐構造を有するポリアクリルアミド系水溶性樹脂のpHは通常3〜9程度、粘度は10重量%の水溶液において100〜10000mPa・s(25℃)程度である。
【0025】
本発明の水系接着剤組成物は、前記(A)成分を、合成樹脂系エマルジョンおよびゴム系ラテックスからなる群より選ばれる少なくとも一種の水性ベースポリマー(B)(以下、(B)成分という。)に、配合してなるものである。
【0026】
(B)成分として用いられる合成樹脂系エマルジョンとしては、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル樹脂エマルジョン、エチレン−塩化ビニル樹脂エマルジョン、酢酸ビニル−アクリル樹脂エマルジョン、アクリル樹脂エマルジョン、エチレン−アクリル樹脂エマルジョン、スチレン−アクリル樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、ウレタン−アクリル樹脂エマルジョン、塩化ビニリデン樹脂エマルジョンなどが例示できる。
【0027】
また、ゴム系ラテックスとしては、例えば天然ゴムラテックス、ブタジエンラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、クロロプレンラテックス等の、各種公知のものを使用できる。
【0028】
これら合成樹脂系エマルジョンやゴム系ラテックスは、カルボキシル基、N−メチロール基、グリシジル基、アミノ基、アミド基、水酸基などの官能基を導入したものを使用しても良く、上記合成樹脂系エマルジョンおよびゴム系ラテックスから選ばれる水性ベースポリマーのうち、1種を単独で、または2種以上を混合して使用できる。
【0029】
(A)成分と(B)成分との配合割合は、(B)成分100重量部(固形分換算)に対し、(A)成分を、1〜60重量部程度(固形分換算)、好ましくは3〜40重量部程度(固形分換算)の範囲とする。(A)成分の合計量が1重量部に満たない場合は、水溶性樹脂を添加することによる改質効果がほとんど認められない場合があり、また60重量部を越える場合には接着剤組成物の凝集力や耐水性が低下する傾向にある。
【0030】
本発明の水系接着剤組成物は、(A)成分、(B)成分を必須成分として構成されるが、これらのほかに必要に応じて、充填剤、消泡剤、増粘剤、酸化防止剤、防腐剤などを添加することができ、更に環境問題に懸念の無い範囲で、高沸点の溶剤や可塑剤、保水剤、成膜助剤などを添加することもできる。例えば、本発明で使用される充填剤としては、特に制限されないが、好ましいものとして、重質炭酸カルシウムや珪砂などが挙げられ、これらを単独でも併用してもよい。充填剤の配合割合は、(B)成分100重量部(固形分換算)に対して、通常は200〜500重量部程度である。
【0031】
本発明の水系接着剤組成物は、(A)成分と(B)成分とがあらかじめ混合された一液型接着剤組成物として使用してもよく、また、(A)成分と(B)成分とを使用時に混合する二液型接着剤組成物として使用しても良い。通常は作業性の観点から一液型とすることが好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお、部および%はいずれも重量基準による。
【0033】
製造例1
撹拌機、温度計、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、アクリルアミド76部、アクリル酸2部、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト4部、ポリエチレングリコールメタクリレート(日本油脂(株)製、PE350)18部およびイオン交換水400部を仕込み、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した。次に、系内を40℃にし撹拌下に重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部および亜硫酸水素ナトリウム0.3部を投入した。85℃まで昇温し、2時間保温した後、冷却して、pH=4.6、固形分20%、粘度(25℃、B型粘度計)9600mPa・sの分岐構造を有するポリアクリルアミド系水溶性樹脂(A−1)を得た。
【0034】
製造例2
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートを2つおよび窒素ガス導入管を備えた六つ口フラスコに、アクリルアミド18部、アクリル酸3部、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト2部、PE-
350(日本油脂(株)製、ポリエチレングリコールメタクリレート)23部およびイオン交換水300部を仕込み、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した。次に、系内を40℃にし攪拌下に重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.25部および亜硫酸水素ナトリウム0.15部を投入した。85℃まで昇温した後、2時間保温し、主鎖となる共重合体を得た。保温終了後、該共重合体にアクリルアミド48部、アクリル酸1部、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト5部およびイオン交換水250部と、過硫酸カリウム0.5部およびイオン交換水15部を同時にそれぞれ別の滴下ロートより1時間かけて滴下し、1時間保温後、冷却し、pH4.5、固形分15%、粘度(25℃)が8400mPa・sの分岐構造を有するポリアクリルアミド系水溶性樹脂(A−2)を得た。
【0035】
製造例3
攪拌機、温度計、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、アクリルアミド74部、アクリル酸2部、ジメチルアミノエチルメタクリレート4部、PE-
350(日本油脂(株)製、ポリエチレングリコールメタクリレート)20部からなるビニルモノマーの混合物100部および陽イオン性タピオカ澱粉(日澱化学(株)製)81部を含有する糊液(5%水溶液)1620部を仕込み、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した。次に、系内を40℃にし攪拌下に重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部および亜硫酸水素ナトリウム0.3部を投入した。85℃まで昇温し、2時間保温後、冷却し、pH4.5、固形分10%、粘度(25℃)が8500mPa・sの分岐構造を有する多糖類−ポリアクリルアミド系水溶性樹脂(A−3)を得た。
【0036】
製造例4〜5、比較製造例1〜3
実施例1において、(a)〜(e)成分の種類またはその使用量のうちいずれか少なくとも1種を表1のように変えたほかは、実施例1と同様の操作を行いポリアクリルアミド系水溶性樹脂(A)を得た。得られたポリアクリルアミド系水溶性樹脂(A)の性状値を表2に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1中、ビニルモノマーの混合物の各成分は、AM:アクリルアミド、AA:アクリル酸、IA:イタコン酸、DM:ジメチルアミノエチルメタクリレート、DMAA:ジメチルアクリルアミド、PE90:ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製)、PE350:ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製)、AN:アクリロニトリル、MBAM:メチレンビスアクリルアミドを示す。また、その他成分の使用量は、ビニルモノマーの混合物100重量部に対する使用量(重量部)である。
【0039】
【表2】

【0040】
実施例1
エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン(住化ケムテックス(株)製、商品名「スミカフレックス400HQ」、不揮発分55%)182重量部(固形分換算で100重量部)に対し、製造例1の分岐構造を有するポリアクリルアミド系樹脂水溶液(A−1)を50重量部(固形分換算で10重量部)を混合し、水系接着剤組成物を得た。
【0041】
実施例2〜7、比較例1〜3
実施例1において、ポリアクリルアミド系樹脂水溶液(A)の種類またはその使用量を表3のように変えた他は、実施例1と同様に水系接着剤組成物を得た。
【0042】
比較例4
実施例1において、エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン(住化ケムテックス(株)製、商品名「スミカフレックス400HQ」、不揮発分55%)100重量部(固形分換算で55重量部)に対し、ポリアクリルアミド系樹脂水溶液(A)の代わりに、軟化点100℃のロジンエステル樹脂エマルジョン(荒川化学工業(株)製、商品名「スーパーエステルE−720」、固形分50%)10部(固形分換算で5重量部)を配合して水系接着剤組成物を得た。
【0043】
【表3】

【0044】
表3中の各成分は、S−400HQ:エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン(住化ケムテックス(株)製、商品名「スミカフレックス400HQ」、不揮発分55%)、E−720:軟化点100℃のロジンエステル樹脂エマルジョン(荒川化学工業(株)製、商品名「スーパーエステルE−720」、固形分50%)を示す。また、表中の各成分量は、全て固形換算重量部である。
【0045】
(水系接着剤組成物の性能評価)
実施例1〜7および比較例1〜4で得られた水系接着剤組成物を、以下の性能評価方法にて各種試験を行った。
【0046】
(接着性能試験)
以下の試験方法により接着特性を評価した。
(1)初期接着性
ダンボール原紙(坪量280g/m)に、上記水系接着剤組成物を、アプリケーターを用いてWETで3ml塗布する。直ちに幅25mmの短冊状にカットした上質紙(坪量70g/m)を張り合わせ、その後一定時間毎に剥離して、紙が全面材破した時間で表示した。結果を表4に示す。
(2)接着強度
綿帆布(#9)に、上記水系接着剤組成物をDRYで100g/m塗布し、各種基材と張り合わせる。23℃×65%RHにて4日間以上乾燥後、引張り速度300mm/minで180°剥離を行った。結果を表4に示す。表中、SUSはステンレス板、PEはポリエチレン板、板紙は坪量280g/mで、「材破」は板紙が全面破壊したことを示す。
(3)保持力
綿帆布(#9)に、上記水系接着剤組成物をDRYで100g/m塗布し、ステンレス板と張り合わせる(接着面積25×25mm)。23℃×65%RHにて4日間以上乾燥後、クリープテスターにセットして荷重を1kg掛け、2℃/minで150℃まで昇温し、その後150℃で保持してずれ落ちるまでの時間を測定した。評価結果を表4に示す。
(4)残存溶剤量
上記水系接着剤配合物において、環境問題を勘案し、配合物中のトルエンの残存量をガスクロマトグラフにより測定した。測定結果を表4に示す。尚、表中のNDは検出限界(10ppm)以下であることを示す。
【0047】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(メタ)アクリルアミド40〜98重量部、(b)イオン性ビニルモノマーであって、アリル基、ポリアルキレングリコール基または一般式(1):−CONR(式中、R
は水素原子またはメチル基を表し、Rはメチル基、イソプロピル基または一般式(2):−C(CH−CH−R(Rはカルボキシル基、スルホニル基もしくはこれらの炭素数1〜4のアルキルエステル、またはアセチル基を表す)で表される基を表す)で表されるN−置換アミド基を側鎖に有しないものの少なくとも1種1〜50重量部、(c)アリル基、ポリアルキレングリコール基または一般式(1):−CONR(式中、R
は水素原子またはメチル基を表し、Rはメチル基、イソプロピル基または一般式(2):−C(CH−CH−R(Rはカルボキシル基、スルホニル基もしくはこれらの炭素数1〜4のアルキルエステル、またはアセチル基を表す)で表される基を表す)で表されるN−置換アミド基を側鎖に有するビニルモノマーの少なくとも1種0.01〜20重量部を含有してなるビニルモノマーの混合物を、水中で共重合させて得られる分岐構造を有するポリアクリルアミド系水溶性樹脂(A)、ならびに合成樹脂系エマルジョンおよびゴム系ラテックスから選ばれる少なくとも一種の水性ベースポリマー(B)を含有する水系接着剤組成物。
【請求項2】
分岐構造を有するポリアクリルアミド系水溶性樹脂(A)が、前記(a)〜(c)成分に加え、(d)前記(a)成分および(c)成分を除く非架橋性ノニオン性ビニルモノマーを1〜20重量部含有してなるビニルモノマーの混合物を、水中で共重合させて得られる水溶性樹脂である請求項1記載の水系接着剤組成物。
【請求項3】
分岐構造を有するポリアクリルアミド系水溶性樹脂(A)が、さらに(e)前記(a)〜(d)成分を除く架橋性ビニルモノマーを0.01〜1重量部含有してなるビニルモノマーの混合物を、水中で共重合させて得られる水溶性樹脂である請求項1または2記載の水系接着剤組成物。
【請求項4】
水性ベースポリマー(B)100重量部(固形分換算)に対し、分岐構造を有するポリアクリルアミド系水溶性樹脂(A)を1〜60重量部(固形分換算)配合してなる請求項1〜3のいずれかに記載の水系接着剤組成物。

【公開番号】特開2006−176562(P2006−176562A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368877(P2004−368877)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】