説明

水系接着剤組成物

【課題】初期接着力および硬化後接着力に優れ、長期貯蔵においても安定な水系接着剤組成物を提供する。
【解決手段】スチレン−ブタジエン成分とアクリル成分との質量比率がスチレン−ブタジエン成分対アクリル成分で90/10〜70/30の範囲であるスチレン−ブタジエン−アクリル共重合体ラテックスを含有する水系接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水系接着剤組成物に関する。詳細には、本発明は、初期接着力、硬化後接着力および貯蔵安定性に優れた水系接着剤組成物に関する。より詳細には、本発明は、サイディングボードと鋼板との接着において優れた初期接着力および硬化後接着力を示し、かつ、貯蔵安定性も良好な水系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の外壁材は、かつては防火上の問題からモルタルが主流となったことがあったが、住宅様式の変化や建設工期の短縮化の流れから、現在では耐火性、コスト性および作業性に優れたサイディングボードが標準となっている。
サイディングボードは鋼板と貼り合わせられて住宅外壁に使用されるが、その貼り合わせには、有機溶剤を含有する溶剤系クロロプレン接着剤が使用されてきた。しかし、近年では、このような溶剤の使用には、人体に対する毒性、揮発の危険性、環境への汚染性等の問題が存在することが指摘されていることから、無溶剤化の方向にあり、溶剤を含有する溶剤系接着剤から溶剤を含有しない水系接着剤へと代替が進んでいる。
【0003】
水系のクロロプレン系接着剤が溶剤系のクロロプレン系接着剤に代わり使用されているが、水系のクロロプレン系接着剤は、貼り合わせ直後には十分な接着力を得ることができない。そのため、製造現場において被着体を貼り合わせた後に被着体のズレを生じる場合がある。しかし、一旦貼り合わせたものを剥がして貼り直しても、再接着後の接着力は十分な強度を得ることができない。
水系のクロロプレン系接着剤の初期接着力が十分でない点を解決しようとして、これまで様々な改良が試みられてきた。例えば、特許文献1には、ポリクロロプレンラテックスと無機充填剤とチタネート系カップリング剤とを含有する、高い初期接着力および常態接着力を有する水系接着剤組成物が、特許文献2にはクロロプレンラテックスと粘着付与樹脂と水分散型イソシアネート化合物とを含有する初期接着力および常態接着力を有するドライコンタクト型の水系接着剤組成物が、特許文献3にはクロロプレンラテックスとジブチルセバゲートとホウ酸とを含有する水系接着剤組成物が記載されている。しかし、いずれも、貼り合わせ直後は十分な接着力を得ることができない。
これを解決しようとして、アクリルエマルジョン等のタック性のある水系樹脂を配合する技術があるが、初期接着力と硬化後接着力のバランスをとることが難しく、また、配合することによってエマルジョン粒子のバランスが崩れ、長期保管性能が低下するおそれがあった。
また、貼り合わせた後に接着物にズレが生じた場合等に、一旦剥がして、再度貼り合わせようとしても、もはや十分な接着力を得ることができない。
【0004】
【特許文献1】特開2001−26756号公報
【特許文献2】特開2001−64616号公報
【特許文献3】特開2006−282892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、貼り合わせ直後に十分な初期接着力を得ることができ、また、貼り直しをすることもでき、かつ硬化後の接着力が強く、しかも長期保管性能に優れた、例えば、サイディングボードと鋼板との接着用途に好適に使用できる、水系接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、スチレン−ブタジエン−アクリル共重合体ラテックスを含む水系接着剤組成物が、被着体の貼り合わせ直後の接着力に優れるのみならず硬化後にも高い接着力を発揮し、しかも長期保管安定性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は次の〔1〕〜〔8〕に記載するものである。
〔1〕スチレン−ブタジエン成分とアクリル成分との質量比率がスチレン−ブタジエン成分対アクリル成分で90/10〜70/30の範囲であるスチレン−ブタジエン−アクリル共重合体ラテックスを含有する水系接着剤組成物。
〔2〕粘着付与樹脂をさらに含有する、〔1〕に記載の水系接着剤組成物。
〔3〕前記粘着付与樹脂を、前記スチレン−ブタジエン−アクリル共重合体ラテックスの固形分100質量部に対して、固形分換算で10〜30質量部含有する、〔2〕に記載の水系接着剤組成物。
〔4〕前記粘着付与樹脂が、該粘着付与樹脂の水系エマルジョンである、〔2〕または〔3〕に記載の水系接着剤組成物。
〔5〕前記粘着付与剤が、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂および石油樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む、〔2〕〜〔4〕のいずれかに記載の水系接着剤組成物。
〔6〕サイディングボードと鋼板とを、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の水系接着剤組成物で接着して得られる接着構造体。
〔7〕前記サイディングボードが窯業系サイディング、金属系サイディングおよび木質系サイディングからなる群から選択される1つである、〔6〕に記載の接着構造体。
〔8〕サイディングボードと鋼板の双方に請求項1〜5のいずれかに記載の水系接着剤組成物を塗布し、塗布された組成物を50〜120℃の温度で乾燥または熱処理してから貼り合わせる、〔6〕または〔7〕に記載の接着構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、人体に対する毒性及び環境負荷が低く、張り合わせ直後の接着力に優れ、貼り合わせ直後に貼り直しをすることができ、長期の接着力も十分に確保され、かつ長期保管性能にも優れた水系接着剤組成物が提供される。これは、住宅、オフィス等の建材用途では、外壁に限らず、内壁、壁紙等の接着にも利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の水系接着剤組成物(以下、単に「本発明の組成物」という場合がある。)およびその用途・使用方法について、以下に詳述する。
1.水系接着剤組成物
<スチレン−ブタジエン−アクリル共重合体>
(1)成分比
本発明の組成物に使用するスチレン−ブタジエン−アクリル共重合体(以下、「SBR−アクリル共重合体」という場合がある。)は、スチレン−ブタジエン成分とアクリル成分との質量比が、「スチレン−ブタジエン共重合体成分の質量」対「アクリル成分の質量」で、60/40〜92/8の範囲、より好ましくは70/30〜90/10の範囲に入るものであればよい。この範囲であれば、十分な初期接着力および硬化後接着力を得られる効果がある。
また、スチレン−ブタジエン成分のスチレン比率が、50質量%未満が好ましく、5〜45質量%の範囲がより好ましく、5〜30質量%の範囲がさらに好ましい。この範囲であると、凝集力が強く、硬化後接着力に優れる。
接着のメカニズムは不明であるが、スチレン−ブタジエン成分の強い凝集力によって硬化後接着力を担保し、かつアクリル部分が有する高い粘着力によって初期接着力を担保するものと推定され、スチレン−ブタジエン共重合体部分とアクリル部分とのバランスが発明の効果を示していると考えられる。
【0010】
(2)共重合体の構造と製造方法
SBR−アクリル共重合体は、スチレン−ブタジエンランダム共重合体部分とアクリル重合体部分とからなるランダムブロック共重合体、またはスチレンとブタジエンとアクリルとからなるランダム共重合体が例示できる。
スチレンは、スチレンの他、エチレニル基の水素の1〜3個が置換基(−Hを除く)によって置換され、および/またはフェニル基の水素の1〜5個が置換基(−Hを除く)によって置換された置換スチレン誘導体、例えば、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等であってもよい。
ブタジエンは、1,3−ブタジエンの他、エチレニル基の水素の1〜3個が置換基(−Hを除く)によって置換された置換ブタジエン誘導体、例えば、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン等であってもよい。
アクリルは、(メタ)アクリル酸の他、それらとアルコールとのエステル、すなわち(メタ)アクリレートエステルであってもよい。
【0011】
(メタ)アクリレートエステルとしては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、(メタ)ネオペンチルアクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレートヘプチル、(メタ)アクリレートオクチル、(メタ)アクリレートイソオクチル、(メタ)アクリレート2−エチルヘキシル、(メタ)アクリレートノニル、(メタ)アクリレートイソノニル、(メタ)アクリレートデシル、(メタ)アクリレートイソデシル、(メタ)アクリレートウンデシル、(メタ)アクリレートラウリル、(メタ)アクリレートトリデシル、(メタ)アクリレートミリスチル、(メタ)アクリレートペンタデシル、(メタ)アクリレートヘキサデシル、(メタ)アクリレートヘプタデシル、(メタ)アクリレートステアリル等の(メタ)アクリレートアルキルエステル;(メタ)アクリレートエチレニルおよび(メタ)アクリレート2−プロペニル等の(メタ)アクリレートアルケニルエステル;(メタ)アクリレートエチニルおよび(メタ)アクリレートプロパルギル等の(メタ)アクリレートアルキニルエステル;(メタ)アクリレートシクロペンチル、(メタ)アクリレートシクロヘキシル、(メタ)アクリレートシクロヘプチル、(メタ)アクリレートシクロオクチル、(メタ)アクリレートボルニルおよび(メタ)アクリレートイソボルニル等の(メタ)アクリレートシクロアルキルエステル;(メタ)アクリレートフェニルおよび(メタ)アクリレートナフチル等の(メタ)アクリレートアリールエステル;(メタ)アクリレートベンジル等の(メタ)アクリレートアラルキルエステル;(メタ)アクリレート2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリレート2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリレート4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリレートメトキシエチレングリコール、(メタ)アクリレート2−メトキシエチル、(メタ)アクリレート2−エトキシエチル、(メタ)アクリレートフェノキシエチル、(メタ)アクリレートエチルカルビトール、および(メタ)アクリレートテトラヒドロフルフリル等が例示される。
【0012】
スチレン、ブタジエンおよびアクリルの各モノマー、ならびにスチレン−ブタジエンランダム共重合体およびアクリル重合体の各セクションは、当業者が知る公知の方法によって製造することができる。
例えば、SBR−アクリル共重合体ラテックスは、上記した各モノマーまたは各重合体セクションを原料として、乳化ラジカル重合法によってランダム共重合体またはランダムブロック共重合体を得ることができる。より詳細には、各モノマーまたは各重合体セクションを、水と乳化剤および/または分散剤と混合し、撹拌して乳化系(分散系)とし、そこに重合開始剤(ラジカル発生剤)を加えて重合を行い、共重合体の粒子が水に分散したラテックスを得ることができる。
重合温度、重合触媒、連鎖移動剤、重合停止剤、最終重合率、脱モノマー、濃縮条件等を適切に選定、制御することで、固形分濃度、トルエン可溶部の分子量、ゲル含有量等を調整することができる。
ラテックス中の固形分は、特に限定されないが、30〜70質量%が好ましく、40〜60質量%がより好ましい。この範囲であると、樹脂成分が増え、乾燥性が向上する。
【0013】
本発明の組成物に使用するスチレン−ブタジエン−アクリル共重合体ラテックスは、前記したように合成することができるが、所望により、市販品を購入して使用してもよい。例えば、旭化成ケミカルズ社が販売するスチレン−ブタジエン−アクリル共重合体ラテックス水分散液(グレード:L7430)を利用することができる。
【0014】
<粘着付与樹脂>
本発明の組成物は、粘着付与樹脂を含有することができる。
粘着付与樹脂は、スチレン−ブタジエン−アクリル共重合体ラテックスと相溶性があるものであれば、特に制限されない。
粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂が挙げられる。
ロジン系樹脂は、具体的には、ロジン樹脂、水添ロジン樹脂、変性ロジン樹脂、不均化ロジン樹脂、ロジン樹脂エステル、重合ロジン樹脂等が例示される。
テルペン系樹脂は、具体的には、テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂等が例示される。
石油樹脂は、具体的には、C5留分系石油樹脂、C9留分系石油樹脂、C5/C9留分系石油樹脂、DCPD系石油樹脂等が例示される。
クマロン樹脂は、具体的には、クマロン(1−ベンゾフラン)の重合体、クマロンの誘導体の重合体、クマロン−インデン樹脂(クマロンとインデンの共重合体)、水素化クマロン−インデン樹脂等が例示される。
粘着付与樹脂は、本発明の組成物に、スチレン−ブタジエン−アクリル共重合体ラテックスの固形分100質量部に対して、5〜35質量部、好ましくは10〜30質量部含有することができる。この範囲であると、十分な濡れ性の付与がされ、かつ接着剤皮膜の形成も阻害されず接着力に優れる。粘着付与樹脂を本発明の組成物に含有する場合の配合方法は特に限定されないが、本発明の組成物中に樹脂を均一に分散させるためにエマルジョンとして配合することが好ましく、水系エマルジョンとして配合することがより好ましい。また、均一に分散させるためには、より微粒子であることが好ましい。粘着付与樹脂をエマルジョンとして配合する場合は、上記の配合量は固形分の量を表す。
市販の粘着付与剤(エマルジョン)では、例えば、ロジン系エステルエマルジョンでは、ベース樹脂軟化点が175℃以下、固形分が45〜55質量%、pH5.5〜9.5のものが好ましく、具体的には、ハリマ化成(株)製のロジン系エステルエマルジョン「ハリエスターシリーズ」の、DS−70E、SK−70D、SK−90D−55、SK−508H、SK−816E、SK−822E、SK−218NS、SK−323NS、SK−370N、SK−501NS、SK−385NS等を挙げることができる。
また、本発明の組成物に粘着付与樹脂を含有しない場合には、被着体に濡れ性を付与するために、被着体接着面に処理を行うことが好ましい。例えば、被着体接着面をプライマーで処理してから、本発明の水系接着剤組成物を塗布することができる。プライマーは、粘着付与樹脂を水系エマルジョンとして被着体表面に塗布するのが好ましい。
【0015】
<充填剤>
本発明の組成物は、充填剤を含有することができる。
充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、シリカ微粉末(例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ等の微粉末);ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム(例えば、重質炭酸カルシウム等)、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;タルク;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの表面処理物(例えば、脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物等)が挙げられる。
本発明の充填剤はそれぞれ単独で、または2種類以上を混合して使用することができる。
【0016】
充填剤は、粉末のまま、または乳化剤もしくは分散剤でエマルジョンとして配合することができるが、粉末のまま配合することが好ましい。組成物中のゴムラテックスの濃度低下が抑えられ、
無機充填剤の配合量としては、スチレン−ブタジエン−アクリル共重合体ラテックスの固形分100質量部に対して、20〜80質量部が好ましく、30〜70質量部がより好ましく、40〜60質量部がさらに好ましい。この範囲であると、塗工性、初期接着力および硬化後接着力に優れる。
無機充填剤をエマルジョンとして配合する場合は、上記の配合量は固形分の量を表す。
【0017】
<その他配合してもよいもの>
本発明の組成物は、上記成分の他、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の添加材、例えば、増粘剤、老化防止剤、酸化防止剤、防錆剤、消泡剤、難燃剤、防腐剤、防黴剤、香料、着色剤、湿潤剤等を配合してもよい。
【0018】
2.水系接着剤組成物の用途・使用方法等
本発明の水系接着剤組成物は、好ましくは建材の接着、より好ましくは外壁材の接着、さらに好ましくは住宅用外壁材の接着、いっそう好ましくはサイディングボードと鋼板との接着の用途に使用される。
サイディングボードは特に限定されないが、セメント(窯業)系サイディングボード、セラミック系サイディングボードまたは金属系サイディングボードのいずれかが好ましく、セメント系サイディングボードがより好ましく、セメント系サイディングボードの中でもモルタル製サイディングボードが特に好ましい。
本発明の水系接着剤組成物の使用方法は、貼り合わせようとする両方の被着体の接着面に塗布し、好ましくは塗布された組成物を50〜120℃の温度で乾燥または熱処理し、両方の被着体を貼り合わせるものである。
本発明の水系接着剤組成物の使用方法に従って、被着体を貼り合わせることによって接着構造体を製造することができる。
本発明の水系接着剤組成物で貼り合わせられたサイディングボードと鋼板からなる接着構造体は、住宅用外壁材として好適に使用することができる。
【実施例】
【0019】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
1.組成物の調製
(実施例1)
ゴムラテックス水分散液として、SBR−アクリル共重合体ラテックス1(第1表を参照)を使用し、この水分散液中にSBR−アクリル共重合体を固形分換算で100質量部に対し、粘着付与樹脂としてのハリマ化成(株)製ロジン系エステルエマルジョン「ハリエスター SK−508H」(固形分54〜56%)を固形分換算で10重量部、および充填剤としての丸尾カルシウム(株)製重質炭酸カルシウム(無処理)「スーパーSS」を50重量部配合し、ミキサーにて混合して水系接着剤組成物を調製した。
(実施例2)
SBR−アクリル共重合体ラテックス2(第1表を参照)をSBR−アクリル共重合体ラテックス1のかわりに使用したこと以外は実施例1と同様にして水系接着剤組成物を調製した。
(実施例3)
SBR−アクリル共重合体ラテックス3(第1表を参照)をSBR−アクリル共重合体ラテックス1のかわりに使用したこと以外は実施例1と同様にして水系接着剤組成物を調製した。
(実施例4)
粘着付与樹脂であるハリマ化成(株)製「ハリエスター SK−508H」の配合量を固形分換算で20重量部としたこと以外は実施例1と同様にして水系接着剤組成物を調製した。
(実施例5)
粘着付与樹脂であるハリマ化成(株)製「ハリエスター SK−508H」の配合量を固形分換算で30重量部としたこと以外は実施例1と同様にして水系接着剤組成物を調製した。
【0020】
(比較例1)
SBR−アクリル共重合体ラテックス4(第1表を参照)をSBR−アクリル共重合体ラテックス1のかわりに使用したこと以外は実施例1と同様にして水系接着剤組成物を調製した。
(比較例2)
SBR−アクリル共重合体ラテックス5(第1表を参照)をSBR−アクリル共重合体ラテックス1のかわりに使用したこと以外は実施例1と同様にして水系接着剤組成物を調製した。
(比較例3)
SBRラテックス(第1表を参照)をSBR−アクリル共重合体ラテックス1のかわりに使用したこと以外は実施例1と同様にして水系接着剤組成物を調製した。
(比較例4)
アクリル樹脂エマルジョン(第1表を参照)をSBR−アクリル共重合体ラテックス1のかわりに使用したこと以外は実施例1と同様にして水系接着剤組成物を調製した。
(比較例5)
ゴムラテックス水分散液としてSBRラテックス(第1表を参照)を使用し、この水分散液中のSBR−アクリル共重合体の固形分換算で80質量部に対し、アクリル樹脂エマルジョン(第1表を参照)を固形分換算で20質量部、粘着付与樹脂としてのハリマ化成(株)製ロジン系エステルエマルジョン「ハリエスター SK−508H」(固形分54〜56%)を固形分換算で10重量部、および充填剤としての丸尾カルシウム(株)製重質炭酸カルシウム(無処理)「スーパーSS」を50重量部配合し、ミキサーにて混合して水系接着剤組成物を調製した。
(比較例6)
クロロプレンエマルジョン(第1表参照)をSBR−アクリル共重合体ラテックス1のかわりに使用したこと以外は実施例1と同様にして水系接着剤組成物を調製した。
【0021】
【表1】

【0022】
第2表は実施例1〜5に係る水性接着剤組成物の組成を示す(単位は質量部)。
【表2】

【0023】
第3表は比較例1〜6に係る水性接着剤組成物の組成を示す(単位は質量部)。
【表3】

【0024】
2.せん断試験
(実施例1〜5、比較例1〜6について)
被着体として、25mm×30mmのサイズの鋼板および50mm×50mmのサイズの基材(サイディングボード)を用いた。
上記のようにして得られた水系接着剤組成物を、塗布量を塗布面あたり100g/mとして、鋼板の片面の25mm×25mmの領域および基材の片面の25mm×25mmの領域に、それぞれ、くし目状に塗布した。
次いで、水系接着剤組成物を塗布した鋼板および基材を循環式オーブンに入れて乾燥した。乾燥条件は、鋼板については100℃で60秒間、基材については190℃で60秒間とした。
乾燥後に取り出し、両者を貼り合わせた。
せん断試験は、接着剤−剛性被着剤の引張せん断接着強さ試験方法 JIS K 6850:1999に準拠して行った。
貼り合わせ1分後、または20℃で7日間の硬化後にせん断試験を行った。
貼り合わせ1分後では、50N/mm以上を○、それ未満を×と判定した。
硬化後では、500N/mm以上を○、それ未満を×と判定した。
【0025】
3.長期貯蔵試験
上記のようにして調製された水系接着剤組成物を、80℃で30日間放置して、外観の変化を評価した。外観変化無しを○、ゲル化を×と判定した。
【0026】
4.試験結果
せん断試験および長期貯蔵試験の結果を第4表(実施例)および第5表(比較例)に示す。
【0027】
【表4】

【0028】
【表5】

【0029】
第3表に示す結果から明らかなように、実施例1〜5の組成物は貼り合わせ直後と硬化後の接着性がともに良好であり、しかも長期貯蔵安定性に優れていた。
一方、比較例1〜6の組成物は、貼り合わせ直後の接着性が劣る(比較例2、3および6)、硬化後の接着性が劣る(比較例1および4)、または接着性は良好だが、長期貯蔵性が劣る(比較例5)結果となった。
【0030】
以上から、スチレン−ブタジエン/アクリルの質量比率が90/10〜70/30の範囲であるスチレン−ブタジエン−アクリル共重合体ラテックスを含有する水系接着剤組成物は、貼り合わせ直後および硬化後において良好な接着性を持ち、しかも長期貯蔵性に優れ、本発明の目的を達成できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る水系接着剤組成物は、特に限定されないが、たとえば、好ましくは、住宅、オフィス等に用いられる建築部材や車両部材等の接着の用途に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン−ブタジエン成分とアクリル成分との質量比率がスチレン−ブタジエン成分対アクリル成分で90/10〜70/30の範囲であるスチレン−ブタジエン−アクリル共重合体ラテックスを含有する水系接着剤組成物。
【請求項2】
粘着付与樹脂をさらに含有する、請求項1に記載の水系接着剤組成物。
【請求項3】
前記粘着付与樹脂を、前記スチレン−ブタジエン−アクリル共重合体ラテックスの固形分100質量部に対して、固形分換算で10〜30質量部含有する、請求項2に記載の水系接着剤組成物。
【請求項4】
前記粘着付与樹脂が、該粘着付与樹脂の水系エマルジョンである、請求項2または3に記載の水系接着剤組成物。
【請求項5】
前記粘着付与剤が、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂および石油樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項2〜4のいずれかに記載の水系接着剤組成物。
【請求項6】
サイディングボードと鋼板とを、請求項1〜5のいずれかに記載の水系接着剤組成物で接着して得られる接着構造体。
【請求項7】
前記サイディングボードが窯業系サイディング、金属系サイディングおよび木質系サイディングからなる群から選択される1つである、請求項6に記載の接着構造体。
【請求項8】
サイディングボードと鋼板の双方に請求項1〜5のいずれかに記載の水系接着剤組成物を塗布し、塗布された組成物を50〜120℃の温度で乾燥または熱処理してから貼り合わせる、請求項6または7に記載の接着構造体の製造方法。

【公開番号】特開2010−185033(P2010−185033A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31254(P2009−31254)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】