説明

水系顔料分散剤及びこれを含有する水性顔料分散体

【課題】顔料の初期分散性、顔料分散体の長期保存安定性、低起泡性に優れた水系顔料分散剤を提供する
【解決手段】式(1)で表され、分子量が1000〜2000である化合物からなる、水系顔料分散剤、及び、当該分散剤を含有する水性顔料分散体。
−O−(EO)−(BO)−R (1)
(式中、Rは炭素数1〜4の炭化水素基、Rは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基、EOはオキシエチレン基、BOはオキシブチレン基、mはオキシエチレン基の平均付加モル数、nはオキシブチレン基の平均付加モル数を示し、mは8〜26、nは8〜14、m+nは16〜32であって、分子量中に占めるオキシブチレン基部分の割合は45〜75質量%である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系顔料分散剤に関する。より詳細には、顔料の初期分散性、顔料分散体の長期保存安定性、低起泡性に優れた水系顔料分散剤に関する。さらには、該顔料分散剤を用いた水性顔料分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷業界や塗料業界では、環境に対する安全性の観点からインクや塗料の水性化が進められている。しかしながら、無機系顔料及び有機系顔料はいずれも水に対する親和性が低く、分散剤を使用した場合にも水へ分散させることは容易ではない。特に有機系顔料分子の多くは高度に共役したπ電子系により安定な結晶構造を有するため、水分子が十分に顔料表面に吸着せず、水への分散はより一層困難となっている。このような背景から、インクや塗料などの顔料分散体組成物においては、顔料の分散性を向上させることのできる分散剤の開発が要求されている。
顔料の分散は、溶媒の顔料への湿潤、機械的解砕及び分散安定化によりなされる。このうち溶媒の顔料への湿潤は顔料の初期分散性に影響を与え、分散安定化は長期保存安定性に影響を与える。
高分子系顔料分散剤としては、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリアクリル酸塩、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物等が知られている。これらの高分子系顔料分散剤は、立体斥力により顔料分散体の長期保存安定性に効果を有するが、分子量が大きいために溶媒の顔料への湿潤効果はほとんど得られない。また、これらの高分子系分散剤は、分子中の複数の吸着基により一つの分子が複数の粒子に吸着するいわゆる橋架け凝集が起こり、顔料粒子の凝集、沈降を引き起こすことがあった。
一方、界面活性剤系顔料分散剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレントリブロック共重合体、アルコキシポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤等が知られている。これらの分散剤のうち非イオン性界面活性剤からなる顔料分散剤は、顔料粒子に対する湿潤性を示すため顔料の初期分散性には効果を有するものの、顔料粒子間にはたらく斥力が不十分であり、長期保存下においては顔料粒子の凝集や沈降を引き起こすことがあった。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩は、顔料の初期分散性及び長期保存安定性に効果を有するものの、起泡性が高いという問題があった。
【0003】
このような問題を改善するために種々の分散剤が開発されており、極性有機液体中における顔料の分散剤としてアルコールのエチレンオキシド・アルキレンオキシド付加物を用いる方法(例えば特許文献1)が報告されている。当該特許文献1には、具体例として、アルコールがアリールアルコール又は炭素数が12以上のアルカノールであり、アルキレンオキシドがプロピレンオキシドである化合物が示されているが、このような化合物では顔料粒子に対する湿潤性により初期分散性を有するものの、立体斥力が十分に働かないために、顔料分散体の長期保存下において顔料粒子の凝集や沈降が起こることがあった。
また、ポリグリセリンのアルキレンオキシド付加物と脂肪酸エステルとの部分エステルの硫酸エステル塩を用いる方法(例えば特許文献2)等が知られているが、顔料の初期分散性及び長期保存安定性に効果を有するものの、起泡性が高いという問題があった。
このように、初期分散性、顔料分散体の長期保存安定性、低起泡性に優れた顔料分散剤は未だ得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2004−506794号公報
【特許文献2】特開2006−008881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、顔料の初期分散性、顔料分散体の長期保存安定性、低起泡性に優れた水系顔料分散剤を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、オキシブチレン基を特定の割合で含有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルを用いることにより上記課題が解決し、顔料の初期分散性、顔料分散体の長期保存安定性、低起泡性に優れた水系顔料分散剤が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、式(1)で表され、分子量が1000〜2000である化合物からなる水系顔料分散剤に関する。
−O−(EO)−(BO)−R (1)
(式中、Rは炭素数1〜4の炭化水素基、Rは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基、EOはオキシエチレン基、BOはオキシブチレン基、mはオキシエチレン基の平均付加モル数、nはオキシブチレン基の平均付加モル数を示し、mは8〜26、nは8〜14、m+nは16〜32であって、分子量中に占めるオキシブチレン基部分の割合は45〜75質量%である。)
さらに本発明は、該水系顔料分散剤を含有する水性顔料分散体に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る式(1)で表わされる化合物は、無機及び有機顔料の水系媒体への分散性を顕著に向上させることができる。これを用いて調製した顔料分散体は、初期分散性に優れるのみならず、長期の保存安定性も極めて良好であり、しかも、起泡性が低いことから、安定で実用効果の高い顔料分散体であり、例えば、水性フェルトペン、水性ボールペン、水性塗料、印刷用インク、特に水性インクジェット用インクとして極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
式(1)において、Rは炭素数1〜4の炭化水素基であり、直鎖であっても分岐であってもよく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基である。炭素数が4より大きくなると起泡性が高くなり、また分子量中に占めるオキシブチレン基の割合が低下して顔料分散体の長期保存安定性が低下する。
は水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基であり、炭化水素基である場合は直鎖であっても分岐であってもよく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられ、好ましくはn−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基であり、より好ましくはイソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基である。式(1)におけるRが炭素数3〜4の分岐の炭化水素基である場合は、顔料への浸透性が高いために初期分散性に優れた効果を有する。
炭素数が4より大きくなると起泡性が高くなり、また分子量中に占めるオキシブチレン基の割合が低下して顔料分散体の長期保存安定性が低下する。
【0009】
EOはオキシエチレン基、mはオキシエチレン基の付加モル数であり、mは8〜26、好ましくは10〜18である。mが8より小さくなると親水性が低下して水又は水溶性有機溶媒への溶解性が低下し、mが26より大きくなると疎水性が低下して顔料の初期分散性及び長期保存安定性が低下する傾向となる。

BOはオキシブチレン基、nはオキシブチレン基の付加モル数であり、nは8〜14、好ましくは9〜12である。nが8より小さくなると分子量中に占めるオキシブチレン基の割合が低下して顔料分散体の長期保存安定性が低下し、nが14より大きくなると親水性が低下する。
m+nは16〜32であり、好ましくは20〜28である。m+nが16より小さくなると立体斥力が低下して顔料分散体の長期保存安定性が低下し、m+nが32より大きくなると分子量が増加して顔料分散体の凝集、沈降が起こり長期保存安定性が低下しやすくなる。
式(1)で表される化合物の分子量中に占めるオキシブチレン基部分の割合は、45〜75質量%であり、好ましくは50〜60質量%である。分子量中に占めるオキシブチレン基部分の割合が45質量%より小さくなると立体斥力が低下して顔料分散体の長期保存安定性が不十分となり、75質量%より大きくなると水への溶解性が低下する傾向となる。
式(1)で表される化合物の分子量は1000〜2000である。分子量が1000より小さいと、顔料粒子間にはたらく斥力が不十分であり、顔料分散体の長期保存安定性が低下し、分子量が2000を超えると溶媒の顔料への湿潤性が不十分であり、顔料の初期分散性が低下する。
【0010】
式(1)における無機性値と有機性値から算出されるHLBは好ましくは7〜11であり、より好ましくは8〜10である。HLBが7より小さいと親水性が低下し、11より大きいと顔料への吸着性が低下し、顔料の初期分散性及び顔料分散体の長期保存安定性が低下する。ここで、無機性値及び有機性値とは化合物の親水性、親油性の指標であり、HLBが小さいほど親油性が高く、HLBが大きいほど親水性が高い。無機性値及び有機性値からHLBは以下の式で算出される(甲田善生著、「有機概念図−基礎と応用−」、三共出版、1984年)。
HLB=無機性値/有機性値×10
【0011】
式(1)で示される化合物は、従来公知の方法で製造することができる。例えば、炭素数1〜4のアルコールにエチレンオキシド及びブチレンオキシドを順に付加重合させ、さらにその後ハロゲン化アルキルをアルカリ触媒の存在下に反応させることにより得られる。
式(1)で示される化合物は、分子の両端に疎水基を有することにより、起泡性が低い上に被分散物に対する吸着性が高く、顔料の初期分散性が高い。さらにオキシブチレン基を特定の割合で含有することでその分岐のエチル基により立体斥力を付与することができ、顔料分散体の長期保存下での安定性を付与することができる。
本発明の顔料分散剤を用いた顔料分散体は、該顔料分散剤を水及び/又は水溶性有機溶媒からなる液媒体に事前に添加した後、顔料を添加する、あるいは該顔料分散剤と顔料を混合した後、液媒体を添加してボールミル、サンドミルのような分散機により顔料を分散させることにより得られる。
本発明の顔料分散剤の添加量は、顔料に対して、0.01〜80質量%であり、10〜60質量%が好ましい。添加量が0.01%より少ないと初期分散性及び長期保存安定性の効果が小さく、80質量%より大きいと使用量に見合った効果が得られない。
【0012】
本発明の顔料分散体に適応する顔料は、種類が特に限定されず、有機系顔料であっても無機系顔料であってもよい。有機系顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料、アゾ系顔料等が挙げられる。また、無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、二酸化チタン、炭酸カルシウム等が挙げられる。本発明で使用する顔料の種類は有機系顔料が好ましく、このうち特に縮合多環系顔料及び金属錯体顔料が好ましい。
【0013】
本発明の顔料分散剤を用いた顔料分散体は、必要に応じて界面活性剤、有機アミン等のpH調整剤、水溶性高分子等の粘度調整剤、消泡剤、防腐剤等を配合することができる。
本発明の顔料分散体において使用する水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等の多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
本発明の顔料分散体の使用形態は特に限定されず、例えばインクジェット記録用インク、印刷用インク、水性塗料等に用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0014】
[実施例1]
<合成例1>
メタノール32g(1モル)と触媒として水酸化カリウム6gを5L容量オートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ内の空気を窒素で置換した後、撹拌しながら120℃にて触媒を完全に溶解させた。次に滴下装置にてエチレンオキシド616g(14モル)を滴下し、2時間撹拌し反応させた。さらに滴下装置にてブチレンオキシド720g(10モル)を滴下し、2時間撹拌し反応させた。次に、水酸化カリウム107gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化イソブチル102gを温度80〜130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を除去するため減圧−0.095MPa(ゲージ圧)、100℃で1時間処理した。さらに処理後生成した塩を除去するために濾過を行い、化合物a−1を得た。
塩化イソブチルを反応させる前にサンプリングし精製したものの水酸基価が42であり、化合物a−1の水酸基価が1であったため、水素原子がほぼメチル基に変換されていることがわかる。
【0015】
<起泡性の評価>
100mL容量スクリュー管に、化合物a−1の0.1質量%希釈液30gを入れ、25℃の恒温槽で1時間静置した。これを、手で10秒間振とうし、振とう直後及び10分後における液面からの泡の高さを測定して、以下の基準で評価した。結果は、表2に示す。
○:泡高さ30mm未満
×:泡高さ30mm以上
<顔料分散体の吸光度の評価>
100mL容量ビーカーに、フタロシアニンブルー(東京化成工業(株)製ピグメントブルー15)2g、化合物a−1の10質量%水希釈液10g、イオン交換水28gを順に仕込み、ディスパー型撹拌機で1時間撹拌し、5質量%顔料分散体を得た。100mL容量ビーカーに、イオン交換水49gと5質量%顔料分散体1gを入れ、マグネティックスターラーで完全に均一になるまで撹拌して0.1質量%顔料分散体を得た。さらに、100mLビーカーにイオン交換水90gと0.1質量%顔料分散体10gを入れ、マグネティックスターラーで完全に均一になるまで撹拌して0.01質量%顔料分散体を得た。
0.01質量%顔料分散体を50℃にて3時間及び10日間静置後、上澄み液を採取し、波長585nmにおける吸光度を測定して、以下の基準で評価した。結果は、表2に示す。
○:吸光度0.8以上
×:吸光度0.8未満
【0016】
[実施例2〜10]
実施例1と同様の方法で、表1に示す化合物a−2〜a−10を合成し(合成例2〜10)、0.1%水溶液の起泡性の評価と顔料分散体の調製、評価を行った。
[実施例11]
<合成例11>
メタノール32g(1モル)と触媒として水酸化カリウム5gを5L容量オートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ内の空気を窒素で置換した後、撹拌しながら120℃にて触媒を完全に溶解させた。次に滴下装置にてエチレンオキシド484g(11モル)を滴下し、2時間撹拌し反応させた。さらに滴下装置にてブチレンオキシド720g(10モル)を滴下し、2時間撹拌し反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を除去するため減圧−0.095MPa(ゲージ圧)、100℃で1時間処理した。さらに処理後生成した塩を除去するために濾過を行い、化合物a−11を得た。この化合物a−11の水酸基価は46.9であった。
この化合物a−11を用い、実施例1と同様の方法で、0.1%水溶液の起泡性の評価と顔料分散体の調製、評価を行った。
【0017】
[比較例1]
式(1)で示される化合物を添加しない以外は実施例1と同様の方法で、顔料分散体の調製、評価を行った。
[比較例2〜7]
実施例1と同様の方法で、表1に示す化合物b−1〜b−6を合成した。この化合物b−1〜b−6を用い、実施例1と同様の方法で、0.1%水溶液の起泡性の評価と顔料分散体の調製、評価を行った。
【0018】
[比較例8]
式(1)で示される化合物のかわりにポリオキシエチレン(20モル)ラウリルエーテル(日油(株)製ノニオンK−220)(化合物A)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、0.1%水溶液の起泡性の評価と顔料分散体の調製、評価を行った。
[比較例9]
式(1)で示される化合物のかわりにポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールトリブロック共重合体(平均分子量1670、ポリエチレングリコール含有率40質量%)(化合物B)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、0.1%水溶液の起泡性の評価と顔料分散体の調製、評価を行った。
[比較例10]
式(1)で示される化合物のかわりにメトキシポリオキシエチレン(20モル)オレイン酸エステル(化合物C)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、0.1%水溶液の起泡性の評価と顔料分散体の調製、評価を行った。
[比較例11]
式(1)で示される化合物のかわりにポリオキシエチレン(30モル)ラウリルエーテルの硫酸エステルナトリウム塩(化合物D)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、0.1%水溶液の起泡性の評価と顔料分散体の調製、評価を行った。
[比較例12]
式(1)で示される化合物のかわりにポリオキシエチレン(13モル)ポリオキシプロピレン(14モル)2−ナフチルエーテル(化合物E)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、0.1%水溶液の起泡性の評価と顔料分散体の調製、評価を行った。
【0019】
【表1】



【0020】
【表2】

【0021】
表2の結果から、実施例1〜11の化合物は、起泡性が低く、初期分散性及び長期保存安定性に優れた顔料分散体が得られることがわかる。
これに対して、比較例1は、本発明の化合物を用いていないために顔料の初期分散性及び顔料分散体の長期保存安定性が不十分である。
比較例2は、式(1)で示される化合物の炭化水素基の炭素数が本発明の範囲より大きいために起泡性が高く、また分子中に占めるオキシブチレン基の割合が本発明の範囲より小さいために、顔料分散体の長期保存安定性が不十分である。
比較例3は、式(1)で示される化合物の炭化水素基の炭素数が本発明の範囲より大きいために起泡性が高く、また分子中に占めるオキシブチレン基の割合が本発明の範囲より小さいために、顔料分散体の長期保存安定性が不十分である。
比較例4は、式(1)で示される化合物のオキシエチレン基の付加モル数が本発明の範囲より大きく、分子量中に占めるオキシブチレン基の割合が本発明の範囲より小さいために、顔料の初期分散性及び顔料分散体の長期保存安定性が不十分である。
比較例5は、式(1)で示される化合物のオキシブチレン基の付加モル数が本発明の範囲より大きいために水溶性を示さず、顔料の初期分散性及び顔料分散体の長期保存安定性が不十分である。
比較例6は、式(1)で示される化合物のオキシブチレン基の付加モル数が本発明の範囲より小さく、分子量中に占めるオキシブチレン基の割合が本発明の範囲より小さいために、顔料の初期分散性及び顔料分散体の長期保存安定性が不十分である。
比較例7は、式(1)で示される化合物のオキシエチレン基の付加モル数が本発明の範囲より小さく、分子量中に占めるオキシブチレン基の割合が本発明の範囲より大きいために、水溶性を示さず、顔料の初期分散性及び顔料分散体の長期保存安定性が不十分である。
比較例8は、本発明の化合物を用いていないために起泡性が高く、顔料分散体の長期保存安定性が不十分である。
比較例9は、本発明の化合物を用いていないために、顔料の初期分散性及び顔料分散体の長期保存安定性が不十分である。
比較例10は、本発明の化合物を用いていないために起泡性が高く、顔料分散体の長期保存安定性が不十分である。
比較例11は、本発明の化合物を用いていないために起泡性が高い。
比較例12は、本発明の化合物を用いていないために、顔料の初期分散性及び顔料分散体の長期保存安定性が不十分である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によれば、起包性が低く、顔料の初期分散性及び顔料分散体の長期保存安定性に優れた顔料分散剤、及び顔料分散体が提供される。このような顔料分散体は、水性フェルトペン、水性ボールペン、水性塗料、特に水性インクジェット用インクとして好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表され、分子量が1000〜2000である化合物からなる、水系顔料分散剤。
−O−(EO)−(BO)−R (1)
(式中、Rは炭素数1〜4の炭化水素基、Rは水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基、EOはオキシエチレン基、BOはオキシブチレン基、mはオキシエチレン基の平均付加モル数、nはオキシブチレン基の平均付加モル数を示し、mは8〜26、nは8〜14、m+nは16〜32であって、分子量中に占めるオキシブチレン基部分の割合は45〜75質量%である。)
【請求項2】
請求項1記載の水系顔料分散剤を含有する、水性顔料分散体。

【公開番号】特開2011−202063(P2011−202063A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71730(P2010−71730)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】