水素および一酸化炭素の製造方法
【課題】炭化水素を含む原料ガスと二酸化炭素とを供給し、水素と一酸化炭素を製造する方法であって、プラズマを利用して、触媒を使用せず、二酸化炭素の処理量を大きくできる方法を提供すること。
【解決手段】アルゴンのようなプラズマ発生ガスを高周波誘導加熱して、熱プラズマ領域を発生させる。発生した熱プラズマ領域に、炭化水素を含む原料ガスと二酸化炭素とを供給して、水素と一酸化炭素を製造する。
【解決手段】アルゴンのようなプラズマ発生ガスを高周波誘導加熱して、熱プラズマ領域を発生させる。発生した熱プラズマ領域に、炭化水素を含む原料ガスと二酸化炭素とを供給して、水素と一酸化炭素を製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素を改質して水素および一酸化炭素を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスは、石炭・石油等の化石燃料に比べて、燃焼時の二酸化炭素の発生が少なく、またその供給面でも生産地の偏在が少なく当面は枯渇の心配もないとされている。天然ガスはメタンを主成分とする炭化水素ガスであり、従来は石油・石炭・都市ガス・プロパンガス等の代替燃料としての利用が主流であったが、最近では天然ガスの新たな利用分野・使用量の拡大が見込まれている。特に、メタンは有機物として水素含有量が最も高いことから、天然ガスは水素源として有効である。水素は、燃料電池自動車、定置型燃料電池(業務用、民生用)、大規模水素燃焼タービン発電、等への利用の大幅な拡大が今後見込まれている。そこで、天然ガスを原料として、水素及び一酸化炭素を含み、工業原料として有用なガス(合成ガス)を製造すること、すなわち改質を行うための様々な手法が開発されてきた。
【0003】
改質法のうち、二酸化炭素を反応させる手法は、炭酸ガス改質法と呼ばれ、地球温暖化の原因となっている二酸化炭素を有効に活用できる方法である。通常その反応には触媒の使用を必要とする。そこで、プラズマを応用して反応を行う方法、例えば、直流アーク放電によるグライディングプラズマを用いた部分酸化法による改質法(特許文献1を参照)が開示されている。
【特許文献1】特表2001−514150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、グライディングプラズマを用いる部分酸化法では、触媒的な働きをする金属(Ni)やセラミック体を用いる必要がある。また、直流アーク放電によるグライディングプラズマを用いた部分酸化法は、酸素ガスを必ず含む条件で行うため、原料ガス中の二酸化炭素の割合を高くすることが出来ない。
【0005】
そこで、本発明は、炭化水素を含む原料ガスと二酸化炭素とを供給し、水素と一酸化炭素を製造する方法であって、プラズマを利用して、触媒を使用せず、二酸化炭素の処理量を大きくできる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる製造方法は、炭化水素を改質し水素と一酸化炭素を製造する方法であって、高周波誘導熱プラズマ領域に前記炭化水素を含む原料ガスと二酸化炭素とを供給することを特徴とする。前記高周波誘導熱プラズマをアルゴンまたはヘリウムで発生させてもよい。また、前記高周波誘導熱プラズマがアルゴンで発生させたものであり、前記アルゴンと前記炭化水素との供給量が、式:0.3≦Ar(前記アルゴンの原子数)/(Ar(前記アルゴンの原子数)+C(前記炭化水素中の炭素原子数))≦0.9の範囲内であることが好ましい。
【0007】
上記いずれの製造方法においても、前記炭化水素の供給量に対する前記二酸化炭素の供給量の比が、0.5〜1.0の範囲内にあることが好ましい。また、高周波誘導熱プラズマ領域に水蒸気をさらに供給してもよい。
【0008】
また、上記いずれの製造方法においても、前記炭化水素がメタンであってもよく、前記二酸化炭素と前記メタンと前記水蒸気との供給量が、式:30≦C(前記メタン中の炭素原子数)/(C(前記二酸化炭素中の炭素原子数)/H(前記水蒸気中の酸素原子数))≦70の範囲内であることが好ましい。
【0009】
また、上記いずれの製造方法においても、前記炭化水素を含む原料ガスが天然ガスであってもよく、前記二酸化炭素と前記天然ガスと前記水蒸気との供給量が、式:25≦C(前記天然ガス中の炭素原子数)/(C(前記二酸化炭素中の炭素原子数)/H(前記水蒸気中の酸素原子数))≦70の範囲内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、炭化水素を含む原料ガスと二酸化炭素とを供給し、水素と一酸化炭素を製造する方法であって、プラズマを利用して、触媒を使用せず、二酸化炭素の処理量を大きくできる方法を提供できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態を、実施例を挙げながらさらに詳細に説明する。
本発明は、高周波誘導熱プラズマ領域に前記炭化水素を含む原料ガスと二酸化炭素とを供給する方法、すなわち炭酸ガス改質法の新規な方法を提供する。すなわち、本発明の方法においては、高周波誘導加熱によって生じる熱プラズマ(高周波熱プラズマ)を用いることを特徴とする。
【0012】
具体的には、高周波誘導の原理に基づき、誘導コイルに高周波を印加して、プラズマトーチ内の二酸化炭素及びプラズマ発生ガスを含有する混合ガスを加熱することによって、プラズマフレームを発生させる。この際、プラズマの発生を安定させて効率的な反応が行えるように、高周波の周波数並びに電流値や電圧値を適宜調節する。次に、原料ガスをプラズマに供給することによって、原料ガスの改質を行う。プラズマに暴露させる原料ガスは、プラズマフレームの流れに沿うように加えるのが好ましく、これにより、改質反応の効率をプラズマトーチの長さに応じて調節することができるようになる。
【0013】
プラズマを発生するガスとしては、例えば、アルゴン、ヘリウム、又はこれらの混合ガス等を用いることができるが、これらのガスに限定されず、既存のガス、あるいは、既存の混合ガスを用いてもよい。なお、プラズマ発生ガスは、プラズマの発生源として用いる他、原料ガスや水蒸気を供給するためのキャリアガスとして用いてもよい。
【0014】
二酸化炭素とプラズマ発生ガスとの容積比は、効率的な改質反応に適した値の範囲であればよいが、例えばプラズマ発生ガスとしてアルゴンを用いた場合、0.3≦Ar(アルゴンの原子数)/(Ar(アルゴンの原子数)+C(炭化水素中の炭素原子数))≦0.9であることが好ましい。また、炭化水素の供給量に対する二酸化炭素の供給量の比が、0.5〜1.0の範囲内にあることが好ましい。これらの範囲に調節することにより、水素をより効率よく製造できるようになる。
【0015】
前記炭化水素としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の炭化水素ガス、または、これらの炭化水素ガスのうち2種以上の混合ガスを用いることができるが、これらに限定されるものではなく、水素の製造効率の面でメタンを用いることが好ましい。前記炭化水素を含む原料ガスとしては、前記炭化水素を含むものであれば特に制限されるものではないが、メタンを主成分として含む天然ガス、あるいは、メタンを80%以上含有する混合ガスを用いることが好ましい。
ここで、高周波誘導熱プラズマ領域に水蒸気をさらに供給してもよく、それにより、水素をより効率よく製造できるようになる。
【0016】
炭化水素がメタンの場合、二酸化炭素とメタンと水蒸気との供給量が、式:30≦C(メタン中の炭素原子数)/(C(二酸化炭素中の炭素原子数)/H(水蒸気中の酸素原子数))≦70の範囲内であることが好ましく、炭化水素を天然ガスとして供給する場合、二酸化炭素と天然ガスと水蒸気との供給量が、式:25≦C(天然ガス中の炭素原子数)/(C(二酸化炭素中の炭素原子数)/H(水蒸気中の酸素原子数))≦70の範囲内であることが好ましい。
【0017】
なお、高周波誘導加熱による熱プラズマは、他の加熱原理に基づく熱プラズマ、特に直流アークによるプラズマと比較して、電極を使用しないため、電極物質の摩耗による熱プラズマの汚染が起こらず、あらゆる原料ガスを処理することができるという利点を有する。
【実施例】
【0018】
===実施例1===
高周波誘導熱プラズマ領域に炭化水素を含む原料ガスと二酸化炭素とを供給することにより、炭酸ガス改質反応が無触媒下で進行するかを検討した。天然ガスの13Aは、メタンが88.0%、エタンが5.8% 、プロパンが4.5%、ブタンが1.7%の組成比から構成されている。そこで、天然ガス13Aの主成分であるメタンを原料として用い、生成したガスの成分を分析して、改質条件及び改質反応の検討を行った。
【0019】
[ガス改質用熱プラズマ装置]
改質の実験に用いた日本電子株式会社製の熱プラズマ反応炉試験装置(JEOL 35KW)は、高周波発振機用電源、高周波発振機、プラズマトーチ、集中制御盤(ガス制御盤、発振機操作盤、チャンバー内圧力制御盤)、真空ポンプと真空チャンバーで構成されている。プラズマトーチは、内径42mmの窒化珪素管の外側に石英管を配置した水冷二重構造物の外側に、3ターンのRFコイルを設けた仕様となっている。高周波発振機の出力は、0.5〜35kW(最大プレート電圧 {Ep}=12kV、最大プレート電流 {IP}=5.8A、最大グリッド電流{Ig}=1.1A)であり、発振周波数は3.5±0.5Mzとなっている。
【0020】
図1の概略図に示すように、プラズマトーチは、真空チャンバーの上に設置する。この構成により、プラズマトーチ内で発生したプラズマフレームの下部は、真空チャンバー内に到達する。真空チャンバーは、循環型冷却水により水冷する。原料ガスは、プラズマトーチ上部の原料供給プローブから熱プラズマ内に供給する。改質反応により生成したガスは、真空チャンバーの側面より配管を通じてドライポンプ(ULVAC社製 DA-15D)で吸引し、ドライポンプの排気管にガス捕集用バッグを接続することにより捕集する。捕集されないガスは、真空チャンバーの右側面に取り付けられているガス冷却器で冷却し、金属製のフィルターを通過させた後、真空ポンプで室外に排気する。
【0021】
[熱プラズマによるメタンの改質]
アルゴン-二酸化炭素熱プラズマによるメタン改質実験を、水冷二重管の長さが150mmのプラズマトーチを利用して、以下のように行った。まず、真空チャンバー内を真空ポンプで0.13kPa以下の減圧状態にして、アルゴンガスを50kPaまで導入し、再度減圧状態にするパージ操作を3回繰り返した。チャンバー内にアルゴンガスを10L/minの流量で供給し、真空チャンバー内の圧力が約10kPaの条件下でプラズマを点火した。次に、発振機の出力を上昇させた後、圧力を26.6kPaにした。さらに、プラズマを収縮させるためにアルゴンに二酸化炭素を混合し、電流、電圧を所定の出力値まで上げプラズマを安定させた。図2に、プラズマを点火・安定化させるために調節した、ガス供給量、チャンバー内の圧力、印加した電流・電圧等の条件を示した。
【0022】
次に、原料ガス供給のためのキャリアガスとして、アルゴンガスを、3.0L/minの流量で原料供給プローブに流した後、所定の量のメタンを供給し始めてから約3 分間ほどドライポンプで吸引し、配管とドライポンプ内部をパージした後に、容量が1Lのアルミニウムバッグ(ジーエルサイエンス社製)をドライポンプの排気管に接続して、生成したガスを採取した。ガスの採取後、発振機の出力を低下させて熱プラズマを消火した。改質実験の終了後、真空チャンバー内に大気を導入し、チャンバー内が大気圧に到達した後、チャンバーの内壁に付着している粉体をキムワイプを用いて回収した。またガス冷却器の後方に接続されている金属製のフィルターの表面に付着している粉体も併せて回収した。
【0023】
[生成ガスの分析]
採取されたガスの成分を調べるため、ガスクロマトグラフ法により、目的とするガスの種類に応じて、以下のガスクロマトグラフ分析装置(いずれも島津製作所製)とカラムとの組み合わせを用いて分析を行った:(1)メタン、エタン、エチレン、アセチレンの分析:GC-14AとActive Carbon60/80(ジーエルサイエンス社製);(2)アルゴン、水素の分析:GC-2010とMOLESIV(J&W SCIENTIFIC社製);(3)二酸化炭素、一酸化炭素の分析:GC-8AとUnipak S 100/150(ジーエルサイエンス社製)。これらガス種のそれぞれについて、プッシュ缶標準ガス(ジーエルサイエンス社製)を用いた既知濃度のガスについても同様に分析して検量線を求めた。各ガス種毎の検量線に基づき、採取された試料に含まれる当該ガス成分の濃度を求めた。
【0024】
[改質反応の検討]
図3に、原料ガスの供給量及び投入電力の異なる組み合わせで行った4通りの実験条件(a〜d)について、回収した試料に含まれるガス成分毎の容積パーセントの実測値を、表にして示した。その結果、マイクロ波プラズマを用いた従来法よりも多くの二酸化炭素を処理できることが明らかになった。
【0025】
ここで、メタンと二酸化炭素を原料とした場合の改質反応としては、次の化学反応式に示す反応が起きると考えられる:
〔反応式1〕 CH4 + CO2 → 2CO + 2H2
そこで、図3には、反応式1の反応が進行したと仮定した場合に生成するガスの濃度を算出した理論値も記載した。また図4には、図3の表に示した水素(A)、一酸化炭素(B)、二酸化炭素(C)について、メタンの供給量に対する、濃度の理論値及び実測値の関係をそれぞれグラフとして示した。
【0026】
図3及び4から明らかなように、水素と二酸化炭素の濃度は理論値よりも実測値が低く、他方、一酸化炭素の濃度は理論値よりも実測値が高くなった。この結果は、熱プラズマによる反応として、式1だけではなく、水素と二酸化炭素が減少し一酸化炭素が増加するような反応も同時に生じている可能性を示している。そのような反応としては、次の反応式が挙げられる:
〔反応式2〕 CO2 + H2 → CO + H2O
さらに、反応後の真空チャンバー内に微粉体の生成が認められたことから、炭素を生成する次のような反応も進行した可能性が考えられる:
〔反応式3〕 CH4 → C + 2H2
そこで、図3の実験条件cの場合について、反応式2及び3も考慮した場合の生成量の理論値を、以下のようにして算出した。
【0027】
まず、アルゴン濃度の実測値と投入アルゴン量から、得られた生成ガスの総量を求め、その値と各生成ガス濃度の実測値とから、それぞれの生成量を求めた。次に、水素濃度の理論値と実測値が同じ値になるように、反応式1と3が進行する比率を最適化し、さらに反応式2の寄与を考慮して、一酸化炭素量と二酸化炭素量を求めた。図5に、反応式1と3の比率を70:30と仮定したときの、各種ガスの生成量の理論値を、濃度の実測値から求めた計算値と共に示す。
【0028】
このように、一酸化炭素と二酸化炭素のそれぞれの理論値が、実測値に基づく計算値と近い値となったことから、アルゴン-二酸化炭素プラズマによる改質反応では、反応式1だけではなく反応式3が進行することが明らかになった。また、反応式2の進行を考慮すると、発生した水素の約83%が、二酸化炭素と反応して水蒸気と一酸化炭素になったと考えられる。さらに、図3から、メタンの供給量を25L/minに増やした場合(実験条件d)、生成ガス中に微量のメタンが残留するほか、少量のアセチレンも生成することが明らかになった。
【0029】
===実施例2===
[トーチの長さの検討]
プラズマトーチの長さによって原料ガスがプラズマ中を滞留する時間が異なり、改質効率が変化する可能性が考えられる。そこで、水冷二重管の長さが実施例1よりも長い300mmのプラズマトーチを使用して、実施例1と同様の実験を行った。プラズマの発生、メタンの供給、生成ガスの回収については、実施例1と同一の方法で行い、投入電力を23.8kVAにして、チャンバー内圧力とメタン供給量の異なる組み合わせによる実験条件で実験を行った。図6に、3通りの実験条件(a〜c)における、生成ガス濃度の実測値、及び反応式1のみを考慮して算出したガス濃度の理論値を表として示す。また図7には、図6の表に示した水素(A)、アセチレン及びメタン(B)、一酸化炭素(C)、二酸化炭素(D)について、メタンの供給量に対する濃度の理論値及び実測値の関係を、それぞれグラフとして示す。
【0030】
改質実験の結果、少量のアセチレンの生成とメタンの残留が生じたものの、実施例1に比べて、より多くのメタンを処理できることが明らかになった(図6の実験条件cの場合)。また、反応式1を考慮しただけでは、理論値は実測値と一致しなかった。さらに、メタンの供給量に応じて、理論値と実測値の大小関係が逆転した。これらのことは、熱プラズマ内で進行する複数の改質反応の割合が変化したためと推測される。そこで、メタンの供給量を24.5L/min、チャンバー内圧力を33.2kPaにした場合(実験条件b)の改質反応の詳細を、以下のようにして検討した。
【0031】
まず、アルゴンの投入量及び各ガス濃度の実測値を用いて、生成ガス中に含まれるそれぞれのガス量を求めた。次に、アセチレンの生成が認められたことから、上記反応式1〜3に加えて、次式の反応が進行したと考えられる:
〔反応式4〕 2CH4 → 3H2 + C2H2
そこで、アセチレン濃度の実測値から、反応式4によりアセチレンの生成に使われたメタンの量を算出した。残りのメタンが反応式1と3により完全に一酸化炭素と水素に改質されたと仮定し、両式の比率を一酸化炭素量から求めた。さらに、両式の反応から得られた水素が、二酸化炭素濃度の実測値に基づく計算値に到達するまで反応式2で消費されたと仮定したときの、生成する二酸化炭素量の理論値を求めた。その結果、反応式4・1・3の比率を28.7:69.0:2.3とした場合、図8に示すように、二酸化炭素量の理論値は、濃度実測値に基づく計算値と比較的良く一致した。
【0032】
同様にして、メタンの供給量を34.3L/minに増やした場合(図6の実験条件c)について、改質反応式の比率を求めた。その結果、反応式4・1・3の比率を52.4:31.5:16.1としたときに、図9に示すように、改質後の二酸化炭素量の理論値が、濃度実測値に基づく計算値とほぼ等しくなった。
【0033】
以上の結果から、メタンの供給量が24.5L/minの場合は反応式1が主に進行するが、メタン供給量を34.3L/minへ増加させると、反応式4が主となり、また反応式3の進行も高くなることが分った。このように、図7に認められる生成ガスの組成の変化は、メタンの供給量に従い、熱プラズマ中で進行する改質反応の割合が変化することに起因することが明らかになった。
【0034】
また、反応式2により消費される水素は、メタンの供給量が24.5L/min、34.3L/minの場合において、反応式1及び3によって発生した水素量のそれぞれ28、26%となった。この結果を実施例1と比較すると、長いプラズマトーチを使用することによって、一旦生成した水素が消費されてしまう割合を低減できることが明らかとなった。そして、改質できるメタンの量も、長いプラズマトーチの使用により増加することが明らかになった。
【0035】
===実施例3===
[二酸化炭素の供給量の検討]
プラズマを発生させるためのアルゴンと二酸化炭素の混合ガス中に含まれるアルゴンの割合によって改質効率が変化する可能性が考えられる。そこで、メタンと二酸化炭素の供給量の比率を一定にしてアルゴンの供給量を変化させて、改質後の生成ガスの種類と生成量を調べた。実験には実施例2で使用したプラズマトーチを使用し、プラズマの発生、メタンの供給、生成ガスの回収については実施例1とほぼ同様の方法で行い、発振器への投入電力を約50kVAの条件で実験を行った。図10にメタンと二酸化炭素の供給量の比率(体積比)とアルゴンの供給量を表として示す。図10の条件で実験を行った結果について、図11、12、13にアルゴンとメタンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))と供給したメタンに対して得られた水素の比率(H2/CH4)の関係をグラフとして示す。このメタンに対する水素の比率は、反応式1(CH4 + CO2 → 2CO + 2H2)の進行度合いを示し、通常2を超えることはない。
【0036】
これらの図から二酸化炭素とメタンの比率(CO2/CH4)に依存することなく、アルゴンとメタンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))が0.6近傍で、供給したメタンから得られる水素の量が最大になることが示された。即ち供給したメタンから最大量の水素が得られる条件となっている。さらに二酸化炭素とメタンの比率が低い方が、得られる水素がより多くなることが分った。
【0037】
図14にCH4=40L/minの場合の、アルゴンとメタンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))と水蒸気量を示した。水蒸気量は、供給した二酸化炭素とメタンの量および改質反応後に得られたガス種とその濃度から計算により求めた。この図から水蒸気の生成量は、アルゴンとメタンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))が0.6で極小値を示していることが分る。この結果から
〔反応式2〕H2 + CO2 → H2O + CO
で表される水素の燃焼反応が進行していると推測され、H2/CH4の比が2とならない原因と考えられる。
【0038】
図15、16、17にメタンの供給量をそれぞれ30,40,60L/minとした時の、アルゴンとメタンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))と二酸化炭素の転換率の関係を示す。
【0039】
これらの図から、アルゴンとメタンの総供給量に対するアルゴンの供給量の比率(Ar/(Ar+CH4))が大きくなるのに従ってCO2の転換率が低下し、また同一のメタンと二酸化炭素の供給量の比率(CO2/CH4)では、メタンと二酸化炭素の供給量の比率が増加するほどCO2の転換率が低下することが分った。
【0040】
図18にメタンの供給量を30,40,60L/minとし、メタンに対する二酸化炭素の比率(CO2/CH4)が1.0の場合の、アルゴンとメタンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))と二酸化炭素の転換量の関係を示す。この図から、アルゴンとメタンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))が、供給したメタンから得られる水素量が最大となるCH40.6近傍では、30から40L/min程度の二酸化炭素が他のガス(一酸化炭素)へ転換されていることが分った。
【0041】
===実施例4===
[得られる一酸化炭素と水素の比率の検討]
天然ガスから水素と一酸化炭素の合成ガスを製造して、水素と一酸化炭素を「フィッシャートロプシュ合成(略してFT合成)」と呼ばれる化学反応で合成することにより、CH2が何個もつながったパラフィンという液体が得られる。このパラフィンの分子量の調整により種々の液体燃料を製造することが可能である。FT合成をするためには合成ガス中の水素と一酸化炭素の比率(H2/CO)を2にする必要がある。熱プラズマを用いた改質において、アルゴンと二酸化炭素の混合ガスからなる熱プラズマにメタンを供給して一酸化炭素と水素の比率(H2/CO)が2になるようにするためには、
〔反応式1〕 CH4 + CO2 → 2CO + 2H2
だけの反応では不可能で、供給したメタンに対して過剰の水素が得られる反応が同時に進行する必要がある。そのような反応の1つとして、
〔反応式5〕 CH4 + H2O → CO + 3H2
があり、理論的には反応式1と反応式5が1:2の割合で同時に進行するとH2/COが2となる改質ガスが得られる。そこでこれらの反応が同時に進行し、H2/COが2となる改質ガスが得られるかを水蒸気改質用熱プラズマ装置で検討を行った。
【0042】
[水蒸気用熱プラズマ装置]
改質の実験に用いた日本電子株式会社製の熱プラズマ反応炉試験装置(JEOL 35KW)は、高周波発振機用電源、高周波発振機、プラズマトーチ、集中制御盤(ガス制御盤、発振機操作盤、チャンバー内圧力制御盤)、真空ポンプと真空チャンバーで構成されている。プラズマトーチは、内径42mmの窒化珪素管の外側に石英管を配置した水冷二重構造物の外側に、3ターンのRFコイルを設けた仕様となっている。高周波発振機の出力は、0.5〜35kW(最大プレート電圧 {Ep}=12kV、最大プレート電流 {IP}=5.8A、最大グリッド電流{Ig}=1.1A)であり、発振周波数は3.5±0.5Mzとなっている。
【0043】
図19の概略図に示すように、水蒸気用プラズマトーチは、真空チャンバーの上に設置する。この構成により、プラズマトーチ内で発生したプラズマフレームの下部は、真空チャンバー内に到達する。真空チャンバーは、循環型冷却水により水冷する。原料ガスは、アルゴン、二酸化炭素、水蒸気の混合ガスに混ぜ込んでプラズマトーチ上部より供給される。改質反応により生成したガスは、真空チャンバーの側面より配管を通じてドライポンプ(ULVAC社製 DA-15D)で吸引し、ドライポンプの排気管にガス捕集用バッグを接続することにより捕集する。捕集されないガスは、真空チャンバーの右側面に取り付けられているガス冷却器で冷却し、真空ポンプで室外に排気する。
【0044】
[熱プラズマによるメタンの改質]
アルゴン-(二酸化炭素、水蒸気)熱プラズマによるメタン改質実験を、水冷二重管の長さが300mmのプラズマトーチを利用して、以下のように行った。まず、真空チャンバー内を真空ポンプで0.13kPa以下の減圧状態にして、アルゴンガスを50kPaまで導入し、再度減圧状態にするパージ操作を3回繰り返した。チャンバー内にアルゴンガスを約1L/minの流量で供給し、真空チャンバー内の圧力が約1.3kPa以下の条件下でプラズマを点火した。次に、発振機の出力を上昇させた後、圧力を13.2kPaにした。さらに、プラズマを収縮させるためにアルゴンに二酸化炭素を混合し、プレート電流、プレート電圧を所定の出力値まで上げプラズマを安定させた。プラズマが安定した後に徐々に水蒸気を導入し、所定の改質条件に達した後メタンを供給した。図20に、プラズマを点火・安定化させるために調節した、ガス供給量、チャンバー内の圧力、印加した電流・電圧等の条件の一例を示した。メタンを供給し始めてから約3 分間ドライポンプで吸引し、配管とドライポンプ内部を改質ガスでパージした後に、容量が1Lのアルミニウムバッグ(ジーエルサイエンス社製)をドライポンプの排気管に接続して、生成したガスを採取した。ガスの採取後、発振機の出力を低下させて熱プラズマを消火した。生成ガスの分析は、実施例1と同様の手法で行った。
【0045】
[改質反応およびH2/CO比率の検討]
図21にアルゴン、二酸化炭素、水蒸気とメタンの供給量を表にして示した。なお、水蒸気は20℃、1.01x105Paの条件下での供給量に換算して表している。
【0046】
図22に図21の二酸化炭素が30L/minの供給量で改質実験を行った結果を示している。横軸は水蒸気の供給量、左縦軸はアセチレン、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素の生成量を、右縦軸は水素の生成量を示している。
【0047】
その結果、いずれの試料にも一酸化炭素、二酸化炭素およびアセチレンが含まれていることから、メタンと二酸化炭素および水蒸気を原料とした場合の改質反応としては、次の化学反応式に示す反応が起きると考えられる:
〔反応式1〕 CH4 + CO2 → 2CO + 2H2
〔反応式5〕 CH4 + H2O → CO + 3H2
〔反応式6〕 CO + H2O → CO2 + H2
〔反応式4〕 2CH4 → C2H2 + 3H2
また、実験終了後に装置を分解したところ、図19のプラズマトーチの窒化珪素管の内壁に煤が付着していた事から、次の化学反応式に示す反応も進行していると考えられる:
〔反応式3〕 CH4 → C + 2H2
そこで水蒸気の供給量の増加に伴うそれぞれのガスの容積の変化を調べると、図22より水蒸気の供給量の増加に伴い、水蒸気の供給量が22.0L/minまでは水素と一酸化炭素が増加するが、水蒸気の供給量が22.0L/minを超えるとメタンが残留し始め、ほぼ同時に一酸化炭素、水素の生成量が減少し始めている事が分る。また、全体を通じてアセチレンがやや減少し、二酸化炭素が増加していることが分る。このことから、水蒸気の供給量が22.0L/minより少ない領域では、反応式1および5が主反応として進行し、アセチレンが存在している事から、反応式4も副反応として進行していると考えられる。水蒸気の供給量が22.0L/minを超えると、反応式1の進行が抑制され始め、反応式1で反応に寄与しなくなった二酸化炭素が残存し始めたと考えられる。
【0048】
図23に横軸に供給した二酸化炭素と水蒸気の割合(CO2/H2O)を、縦軸に生成した水素と一酸化炭素の割合(H2/CO)を示したグラフを示した。また図中に供給した二酸化炭素とメタンの割合(CO2/CH4)を示している。この図からCO2/CH4が0.43,0.5においてH2/CO=2となる領域があり、おおよそCO2/H2Oが1から1.3の間である事が分る。理論的には反応式1と反応式5が1:2の割合で同時に進行するとH2/COが2となる改質ガスが得られるが、反応式1、5以外の反応が同時に進行するために理論値からシフトした反応式1と反応式5が1:1〜1.3でH2/COが2となる改質ガスが得られることが分った。
【0049】
図24に横軸に供給した二酸化炭素と水蒸気の割合を、縦軸に供給した二酸化炭素が消失した割合を示すグラフを示した。また図中に供給した二酸化炭素とメタンの割合(CO2/CH4)を示している。この図から二酸化炭素の供給量がメタンの供給量よりも少ないCO2/CH4=0.43,0.5において、供給した二酸化炭素が完全に消費(一酸化炭素へ転換)される領域があり、また図23の結果から供給された二酸化炭素が消失し、かつH2/CO=2となるメタン、二酸化炭素、水蒸気の供給条件が存在することが分る。
【0050】
図25に図24の縦軸を二酸化炭素の転換量に置き換えた図を示す。図中に供給した二酸化炭素とメタンの割合(CO2/CH4)を示している。図25はメタンを60L/minの条件で供給した場合の結果であり、25から30L/min弱の二酸化炭素を完全に一酸化炭素へ転換出来ている事から、供給するメタンの50%程度の二酸化炭素を液体原料に変えることができることが明らかになった。
【0051】
上記では水蒸気の供給量を変化すると改質ガス中にメタンの残留が生じていた。そこで次にメタンが残存しない条件下での改質反応とH2/COの比率を確認することとした。
【0052】
図26にメタンの供給量を40L/minとして改質実験を行った条件を表にして示した。尚、水蒸気は20℃、1.01x105Paの条件下での供給量に換算して表している。
【0053】
図27に二酸化炭素が30L/minの供給量で改質実験を行った結果を示している。横軸は水蒸気の供給量、左縦軸はアセチレン、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素の生成量を、右縦軸は水素の生成量を示している。この表から水蒸気の供給量を変化させても改質ガス中にメタンがほぼ残存していない(0.1%以下)事が分る。また改質ガス中にメタンの残存が生じる図22の場合とは異なり、水蒸気の供給量が20から40L/minの間で水素の生成量が増加し、また二酸化炭素の量が多い事が分る。このことから反応式1よりも反応式5の進行の方が優先的に進み、同時に反応式6も進行していると考えられる。
【0054】
図28には、横軸に供給した二酸化炭素と水蒸気の割合(CO2/H2O)を、縦軸に生成した水素と一酸化炭素の割合(H2/CO)を示したグラフを示した。また図中には、供給した二酸化炭素とメタンの割合(CO2/CH4)を示している。この図からCO2/CH4が0.64,0.75においてH2/CO=2となる領域があり、おおよそCO2/H2Oが0.75から1.0の間である事が分る。理論的には反応式1と反応式5が1:2の割合で同時に進行するとH2/COが2となる改質ガスが得られるが、改質ガス中にメタンが残存しない領域では、反応式1、5以外の反応が同時に進行するために理論値からシフトした反応式1と反応式5が1:0.7〜1.0でH2/COが2となる改質ガスが得られることが分った。
【0055】
図29には、横軸に供給した二酸化炭素と水蒸気の割合(CO2/H2O)を、縦軸に供給した二酸化炭素が消失した割合を示すグラフを示した。また図中には、供給した二酸化炭素とメタンの割合(CO2/CH4)を示している。この図から二酸化炭素の割合が少ないCO2/CH4=0.25において供給した二酸化炭素が完全に消費(一酸化炭素へ転換)される領域があるものの、CO2/CH4=0.64,0,75では二酸化炭素が完全に転換される領域はなく、H2/CO=2となるCO2/H2Oが1近傍において転換率は60%と低い。
【0056】
図30に、図29の縦軸を二酸化炭素の転換量に置き換えた図を示す。図中には、供給した二酸化炭素とメタンの割合(CO2/CH4)を示している。図29はメタンを40L/minの条件で供給した場合の結果であり、CO2/H2Oが1付近では15から20L/min弱の二酸化炭素を完全に一酸化炭素へ転換出来ている事から、供給するメタンの50%程度の二酸化炭素をFT合成の原料ガスに変えることができることが明らかになった。
【0057】
図31に図21と図26の条件で実施した改質実験の結果を示す。なお、横軸に水蒸気の酸素原子数で二酸化炭素のカーボン原子数を割った値でメタンのカーボン原子数を更に割った値{メタンのカーボン原子数/(二酸化炭素のカーボン原子数/水蒸気の酸素原子数)}、縦軸にH2/COとしたグラフを示す。この図においてメタンの供給量が40L/min、60L/minのデータが共に接近していることから、H2/COの比と{メタンのカーボン原子数/(二酸化炭素のカーボン原子数/水蒸気の酸素原子数)}の値に相関関係があり、メタン、二酸化炭素、水蒸気の供給量を変化させることにより、H2/COの比が異なる改質ガスを得ることができることが明らかになった。またFT合成用の合成ガス(水素と一酸化炭素の混合ガス)中のH2/COの比が2となる領域を{メタンのカーボン原子数/(二酸化炭素のカーボン原子数/水蒸気の酸素原子数)}の値で示すことが出来、30≦メタンのカーボン原子数/(二酸化炭素のカーボン原子数/水蒸気の酸素原子数)≦70程度が適切な領域と考えられる。
【0058】
===実施例5===
[アルゴンの供給量の検討]
熱プラズマを安定に発生するために供給しているアルゴンの供給量を検討するために、二酸化炭素、水蒸気、メタンの供給量を一定にしてアルゴンの供給量を変化させ、生成したガス量、高周波を発生させるための真空管に投入するプレートの電力量の変化を調べた。図32に二酸化炭素、水蒸気、メタンの供給量を一定にして供給したアルゴンの供給量を変化させ改質実験を行った条件を表にして示す。図33に改質実験によって得られた各種生成ガスの生成量の変化を示している。横軸は水蒸気とアルゴンの混合ガス中に含まれるアルゴンの供給量、左縦軸はアセチレン、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素の生成量を、右縦軸は水素の生成量を示している。この図から二酸化炭素、水蒸気、メタンの供給量を一定にし、アルゴンの供給量を変化させても改質ガス中に含まれる各種ガスの生成量は大きく変化していない事が分る。
【0059】
図34に、図32の改質実験から得られた、水蒸気とアルゴンの混合ガス中に含まれるアルゴンの割合に対応した、水素の生成量と改質実験時に真空管に投入したプレート電力量の変化を示す。横軸は水蒸気とアルゴンの混合ガス中に含まれるアルゴンの割合、左縦軸は水素の生成量、右縦軸は真空管へのプレート電力量を示している。この図から水素の生成量は、アルゴンの割合が増加するのに従って3L/min程度増加し、極大値を示した後減少している。他方、プレート入力電力量はアルゴンの増加に伴い低下し、0.82以上で一定値を示した。この結果から、アルゴンの割合が少ないと真空管への投入電力量が増し、かつ生成する水素量が少なく、1m3当たりの水素を製造するコストが高くなることが明らかになった。
【0060】
===実施例6===
[熱プラズマによる天然ガスの改質]
アルゴン-(二酸化炭素、水蒸気)熱プラズマによる天然ガス改質実験を、実施例4に示した水蒸気用熱プラズマ装置を用いて、以下のように行った。まず、真空チャンバー内を真空ポンプで0.13kPa以下の減圧状態にして、アルゴンガスを50kPaまで導入し、再度減圧状態にするパージ操作を3回繰り返した。チャンバー内にアルゴンガスを約1L/minの流量で供給し、真空チャンバー内の圧力が約1.3kPa以下の条件下でプラズマを点火した。次に、発振機の出力を上昇させた後、圧力を13.2kPaにした。さらに、プラズマを収縮させるためにアルゴンに二酸化炭素を混合し、プレート電流、プレート電圧を所定の出力値まで上げプラズマを安定させた。プラズマが安定した後に徐々に水蒸気を導入し、所定の改質条件に達した後天然ガスを供給した。プラズマを点火・安定化させるために調節した、ガス供給量、チャンバー内の圧力、印加した電流・電圧等の条件は図20とほぼ等しい。天然ガスを供給し始めてから約3 分間ドライポンプで吸引し、配管とドライポンプ内部を改質ガスでパージした後に、容量が1Lのアルミニウムバッグ(ジーエルサイエンス社製)をドライポンプの排気管に接続して、生成したガスを採取した。ガスの採取後、発振機の出力を低下させて熱プラズマを消火した。生成ガスの分析は、実施例1と同様の手法で行った。
【0061】
[天然ガスの改質反応およびH2/CO比率の検討]
図35にアルゴン、二酸化炭素、水蒸気と天然ガスの供給量を表にして示した。なお、水蒸気は20℃、1.01x105Paの条件下での供給量に換算して表している。
【0062】
図36に図35の二酸化炭素が30L/minの供給量で改質実験を行った結果を示している。横軸は水蒸気の供給量、左縦軸はアセチレン、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素の生成量を、右縦軸は水素の生成量を示している。ここで非常に微量のエタンが改質ガス中に検出されたが、微量のため省略している。この結果、いずれの試料にも一酸化炭素、二酸化炭素およびアセチレンが含まれていることから、メタンを主成分とする天然ガスと二酸化炭素および水蒸気を原料とした場合の改質反応としては、前述の反応式:
〔反応式1〕 CH4 + CO2 → 2CO + 2H2
〔反応式5〕 CH4 + H2O → CO + 3H2
〔反応式6〕 CO + H2O → CO2 + H2
〔反応式4〕 2CH4 → C2H2 + 3H2
〔反応式3〕 CH4 → C + 2H2
の他に天然ガス中に含まれる10%程度含まれるエタン、プロパン、ブタンとの反応が挙げられる。各種ガスの増減は、図22に示した同条件にてメタンを改質した場合と同様の挙動を示しており、10%程度含まれるメタン以外のガスによって得られるガス種およびそれらの生成割合が大きく変化しないことが分った。
【0063】
図37に、図35の場合と同じ条件で実施した改質実験の結果を、横軸に水蒸気の酸素原子数で二酸化炭素のカーボン原子数を割った値で天然ガスのカーボン原子数を更に割った値{天然ガスのカーボン原子数/(二酸化炭素のカーボン原子数/水蒸気の酸素原子数)}、縦軸にH2/COとしたグラフを示す。この図から天然ガスの改質においても図31と同様に、H2/COの比と{天然ガスのカーボン原子数/(二酸化炭素のカーボン原子数/水蒸気の酸素原子数)}の値に相関関係があり、天然ガス、二酸化炭素、水蒸気の供給量を変化させることにより、H2/COの比が異なる改質ガスを得ることができることが明らかになった。またFT合成用の合成ガス(水素と一酸化炭素の混合ガス)中のH2/COの比が2となる領域を{天然ガスのカーボン原子数/(二酸化炭素のカーボン原子数/水蒸気の酸素原子数)}の値で示すことが出来、25≦天然ガスのカーボン原子数/(二酸化炭素のカーボン原子数/水蒸気の酸素原子数)≦70程度が適切な領域と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施例において、プラズマトーチおよび真空チャンバー並びにガス供給方法の概略を示す図である。
【図2】本発明の一実施例において、図1に示す機器を備えた熱プラズマ反応炉試験装置の運転条件を示す図である。
【図3】本発明の一実施例において、ガス濃度の実測値と、反応式1に基づき算出した理論値とを比較した結果を示す図である。
【図4】本発明の一実施例において、メタンガスの供給量と生成ガス濃度の理論値及び実測値の関係を示す図である。
【図5】本発明の一実施例において、反応式1〜3を考慮したガス生成量の理論値と、実測値に基づく計算値とを比較した結果を示す図である。
【図6】本発明の一実施例において、ガス濃度の実測値と、反応式1に基づき算出した理論値とを比較した結果を示す図である。
【図7】本発明の一実施例において、メタンガスの供給量と生成ガス濃度の理論値及び実測値の関係を示す図である。
【図8】本発明の一実施例において、図6に示す実験条件(b)における、反応式1〜4を考慮したガス生成量の理論値と、実測値に基づく計算値とを比較した結果を示す図である。
【図9】本発明の一実施例において、図6に示す実験条件(c)における、反応式1〜4を考慮したガス生成量の理論値と、実測値に基づく計算値とを比較した結果を示す図である。
【図10】本発明の一実施例において、メタンと二酸化炭素の供給量の比率とアルゴンの供給量をそれぞれ示した図である。
【図11】本発明の一実施例において、メタンの供給量を30L/minとし、二酸化炭素とメタンとの供給量の比率(CO2/CH4)を1.0、1.50として、アルゴンの供給量を変化させた実験における、メタンとアルゴンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))と、メタンに対して得られた水素の比率(H2/CH4)の関係を示す図である。
【図12】本発明の一実施例において、メタンの供給量を40L/minとし、二酸化炭素とメタンとの供給量の比率(CO2/CH4)を0.5、0.75、1.0、1.25、1.50として、アルゴンの供給量を変化させた実験における、メタンとアルゴンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))とメタンに対して得られた水素の比率(H2/CH4)の関係を示す図である。
【図13】本発明の一実施例において、メタンの供給量を60L/minとし、二酸化炭素とメタンとの供給量の比率(CO2/CH4)を0.75、1.0、1.25として、アルゴンの供給量を変化させた実験における、メタンとアルゴンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))とメタンに対して得られた水素の比率(H2/CH4)の関係を示す図である。
【図14】本発明の一実施例において、メタンの供給量を40L/minとした場合、メタンとアルゴンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))と水蒸気量の関係を示す図である。
【図15】本発明の一実施例において、メタンの供給量を30L/minとした時の、メタンとアルゴンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))と二酸化炭素の転換率の関係を示す図である。
【図16】本発明の一実施例において、メタンの供給量を40L/minとした時の、メタンとアルゴンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))と二酸化炭素の転換率の関係を示す図である。
【図17】本発明の一実施例において、メタンの供給量を60L/minとした時の、メタンとアルゴンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))と二酸化炭素の転換率の関係を示す図である。
【図18】本発明の一実施例において、メタンの供給量を30,40,60L/minとした時の、メタンとアルゴンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))と二酸化炭素の転換量の関係を示す図である。
【図19】本発明の一実施例において、プラズマトーチと供給用ガスの配管の概略を示す図である。
【図20】本発明の一実施例において、図19に示す機器を備えた熱プラズマ反応炉試験装置の運転条件を示す図である。
【図21】本発明の一実施例において、図19に示す機器を備えた熱プラズマ反応炉試験装置に供給した、アルゴン、二酸化炭素、水蒸気、およびメタンの量をそれぞれ示す図である。
【図22】本発明の一実施例において、二酸化炭素が30L/minの供給量で改質実験を行った結果を示し、各種ガスの生成量と水蒸気の供給量の関係を示す図である。
【図23】本発明の一実施例において、供給した二酸化炭素と水蒸気の割合と生成した水素と一酸化炭素の割合の関係を示す図である。なお、図中においては、供給した二酸化炭素とメタンの割合(CO2/CH4)を示す。
【図24】本発明の一実施例において、供給した二酸化炭素と水蒸気の割合と供給した二酸化炭素が転換した割合の関係を示す図である。なお、図中においては、供給した二酸化炭素とメタンの割合(CO2/CH4)を示す。
【図25】本発明の一実施例において、図24の縦軸を二酸化炭素の転換量に置き換えたグラフを示した図である。
【図26】本発明の一実施例において、図19に示す機器を備えた熱プラズマ反応炉試験装置に供給した、アルゴン、二酸化炭素、水蒸気とメタンの量を示す図である。なお、水蒸気は20℃、1.01x105Paの条件下での供給量に換算して表す。
【図27】本発明の一実施例において、二酸化炭素が30L/minの供給量で改質実験を行った結果を示し、水蒸気の供給量と各種生成ガス量の関係を示す図である。
【図28】本発明の一実施例において、供給した二酸化炭素と水蒸気の割合と生成した水素と一酸化炭素の割合(H2/CO)の関係を示す図である。
【図29】本発明の一実施例において、供給した二酸化炭素と水蒸気の割合と供給した二酸化炭素が転換した割合の関係を示す図である。
【図30】本発明の一実施例において、図29の縦軸を二酸化炭素の転換量に置き換え、供給した二酸化炭素と水蒸気の割合と供給した二酸化炭素が転換した量の関係を示す図である。
【図31】本発明の一実施例において、水蒸気の酸素原子数で二酸化炭素のカーボン原子数を割った値でメタンのカーボン原子数を更に割った値とH2/COの関係を示す図である。
【図32】本発明の一実施例において、二酸化炭素、水蒸気、メタンの供給量を一定にし、アルゴンの供給量を変化させた条件を示す図である。
【図33】本発明の一実施例において、アルゴンの供給量と各種生成ガスの生成量の関係を示す図である。
【図34】本発明の一実施例において、水蒸気とアルゴンの混合ガス中に含まれるアルゴンの割合と水素の生成量、および真空管への投入電力量の関係を示す図である。
【図35】本発明の一実施例において、アルゴン、二酸化炭素、水蒸気と天然ガス(13A)の供給量を示す図である。
【図36】本発明の一実施例において、水蒸気の供給量と生成した各種ガスの生成量の関係を示す図である。
【図37】本発明の一実施例において、水蒸気の酸素原子数で二酸化炭素のカーボン原子数を割った値で天然ガスのカーボン原子数を更に割った値とH2/COの関係を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素を改質して水素および一酸化炭素を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスは、石炭・石油等の化石燃料に比べて、燃焼時の二酸化炭素の発生が少なく、またその供給面でも生産地の偏在が少なく当面は枯渇の心配もないとされている。天然ガスはメタンを主成分とする炭化水素ガスであり、従来は石油・石炭・都市ガス・プロパンガス等の代替燃料としての利用が主流であったが、最近では天然ガスの新たな利用分野・使用量の拡大が見込まれている。特に、メタンは有機物として水素含有量が最も高いことから、天然ガスは水素源として有効である。水素は、燃料電池自動車、定置型燃料電池(業務用、民生用)、大規模水素燃焼タービン発電、等への利用の大幅な拡大が今後見込まれている。そこで、天然ガスを原料として、水素及び一酸化炭素を含み、工業原料として有用なガス(合成ガス)を製造すること、すなわち改質を行うための様々な手法が開発されてきた。
【0003】
改質法のうち、二酸化炭素を反応させる手法は、炭酸ガス改質法と呼ばれ、地球温暖化の原因となっている二酸化炭素を有効に活用できる方法である。通常その反応には触媒の使用を必要とする。そこで、プラズマを応用して反応を行う方法、例えば、直流アーク放電によるグライディングプラズマを用いた部分酸化法による改質法(特許文献1を参照)が開示されている。
【特許文献1】特表2001−514150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、グライディングプラズマを用いる部分酸化法では、触媒的な働きをする金属(Ni)やセラミック体を用いる必要がある。また、直流アーク放電によるグライディングプラズマを用いた部分酸化法は、酸素ガスを必ず含む条件で行うため、原料ガス中の二酸化炭素の割合を高くすることが出来ない。
【0005】
そこで、本発明は、炭化水素を含む原料ガスと二酸化炭素とを供給し、水素と一酸化炭素を製造する方法であって、プラズマを利用して、触媒を使用せず、二酸化炭素の処理量を大きくできる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる製造方法は、炭化水素を改質し水素と一酸化炭素を製造する方法であって、高周波誘導熱プラズマ領域に前記炭化水素を含む原料ガスと二酸化炭素とを供給することを特徴とする。前記高周波誘導熱プラズマをアルゴンまたはヘリウムで発生させてもよい。また、前記高周波誘導熱プラズマがアルゴンで発生させたものであり、前記アルゴンと前記炭化水素との供給量が、式:0.3≦Ar(前記アルゴンの原子数)/(Ar(前記アルゴンの原子数)+C(前記炭化水素中の炭素原子数))≦0.9の範囲内であることが好ましい。
【0007】
上記いずれの製造方法においても、前記炭化水素の供給量に対する前記二酸化炭素の供給量の比が、0.5〜1.0の範囲内にあることが好ましい。また、高周波誘導熱プラズマ領域に水蒸気をさらに供給してもよい。
【0008】
また、上記いずれの製造方法においても、前記炭化水素がメタンであってもよく、前記二酸化炭素と前記メタンと前記水蒸気との供給量が、式:30≦C(前記メタン中の炭素原子数)/(C(前記二酸化炭素中の炭素原子数)/H(前記水蒸気中の酸素原子数))≦70の範囲内であることが好ましい。
【0009】
また、上記いずれの製造方法においても、前記炭化水素を含む原料ガスが天然ガスであってもよく、前記二酸化炭素と前記天然ガスと前記水蒸気との供給量が、式:25≦C(前記天然ガス中の炭素原子数)/(C(前記二酸化炭素中の炭素原子数)/H(前記水蒸気中の酸素原子数))≦70の範囲内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、炭化水素を含む原料ガスと二酸化炭素とを供給し、水素と一酸化炭素を製造する方法であって、プラズマを利用して、触媒を使用せず、二酸化炭素の処理量を大きくできる方法を提供できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態を、実施例を挙げながらさらに詳細に説明する。
本発明は、高周波誘導熱プラズマ領域に前記炭化水素を含む原料ガスと二酸化炭素とを供給する方法、すなわち炭酸ガス改質法の新規な方法を提供する。すなわち、本発明の方法においては、高周波誘導加熱によって生じる熱プラズマ(高周波熱プラズマ)を用いることを特徴とする。
【0012】
具体的には、高周波誘導の原理に基づき、誘導コイルに高周波を印加して、プラズマトーチ内の二酸化炭素及びプラズマ発生ガスを含有する混合ガスを加熱することによって、プラズマフレームを発生させる。この際、プラズマの発生を安定させて効率的な反応が行えるように、高周波の周波数並びに電流値や電圧値を適宜調節する。次に、原料ガスをプラズマに供給することによって、原料ガスの改質を行う。プラズマに暴露させる原料ガスは、プラズマフレームの流れに沿うように加えるのが好ましく、これにより、改質反応の効率をプラズマトーチの長さに応じて調節することができるようになる。
【0013】
プラズマを発生するガスとしては、例えば、アルゴン、ヘリウム、又はこれらの混合ガス等を用いることができるが、これらのガスに限定されず、既存のガス、あるいは、既存の混合ガスを用いてもよい。なお、プラズマ発生ガスは、プラズマの発生源として用いる他、原料ガスや水蒸気を供給するためのキャリアガスとして用いてもよい。
【0014】
二酸化炭素とプラズマ発生ガスとの容積比は、効率的な改質反応に適した値の範囲であればよいが、例えばプラズマ発生ガスとしてアルゴンを用いた場合、0.3≦Ar(アルゴンの原子数)/(Ar(アルゴンの原子数)+C(炭化水素中の炭素原子数))≦0.9であることが好ましい。また、炭化水素の供給量に対する二酸化炭素の供給量の比が、0.5〜1.0の範囲内にあることが好ましい。これらの範囲に調節することにより、水素をより効率よく製造できるようになる。
【0015】
前記炭化水素としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の炭化水素ガス、または、これらの炭化水素ガスのうち2種以上の混合ガスを用いることができるが、これらに限定されるものではなく、水素の製造効率の面でメタンを用いることが好ましい。前記炭化水素を含む原料ガスとしては、前記炭化水素を含むものであれば特に制限されるものではないが、メタンを主成分として含む天然ガス、あるいは、メタンを80%以上含有する混合ガスを用いることが好ましい。
ここで、高周波誘導熱プラズマ領域に水蒸気をさらに供給してもよく、それにより、水素をより効率よく製造できるようになる。
【0016】
炭化水素がメタンの場合、二酸化炭素とメタンと水蒸気との供給量が、式:30≦C(メタン中の炭素原子数)/(C(二酸化炭素中の炭素原子数)/H(水蒸気中の酸素原子数))≦70の範囲内であることが好ましく、炭化水素を天然ガスとして供給する場合、二酸化炭素と天然ガスと水蒸気との供給量が、式:25≦C(天然ガス中の炭素原子数)/(C(二酸化炭素中の炭素原子数)/H(水蒸気中の酸素原子数))≦70の範囲内であることが好ましい。
【0017】
なお、高周波誘導加熱による熱プラズマは、他の加熱原理に基づく熱プラズマ、特に直流アークによるプラズマと比較して、電極を使用しないため、電極物質の摩耗による熱プラズマの汚染が起こらず、あらゆる原料ガスを処理することができるという利点を有する。
【実施例】
【0018】
===実施例1===
高周波誘導熱プラズマ領域に炭化水素を含む原料ガスと二酸化炭素とを供給することにより、炭酸ガス改質反応が無触媒下で進行するかを検討した。天然ガスの13Aは、メタンが88.0%、エタンが5.8% 、プロパンが4.5%、ブタンが1.7%の組成比から構成されている。そこで、天然ガス13Aの主成分であるメタンを原料として用い、生成したガスの成分を分析して、改質条件及び改質反応の検討を行った。
【0019】
[ガス改質用熱プラズマ装置]
改質の実験に用いた日本電子株式会社製の熱プラズマ反応炉試験装置(JEOL 35KW)は、高周波発振機用電源、高周波発振機、プラズマトーチ、集中制御盤(ガス制御盤、発振機操作盤、チャンバー内圧力制御盤)、真空ポンプと真空チャンバーで構成されている。プラズマトーチは、内径42mmの窒化珪素管の外側に石英管を配置した水冷二重構造物の外側に、3ターンのRFコイルを設けた仕様となっている。高周波発振機の出力は、0.5〜35kW(最大プレート電圧 {Ep}=12kV、最大プレート電流 {IP}=5.8A、最大グリッド電流{Ig}=1.1A)であり、発振周波数は3.5±0.5Mzとなっている。
【0020】
図1の概略図に示すように、プラズマトーチは、真空チャンバーの上に設置する。この構成により、プラズマトーチ内で発生したプラズマフレームの下部は、真空チャンバー内に到達する。真空チャンバーは、循環型冷却水により水冷する。原料ガスは、プラズマトーチ上部の原料供給プローブから熱プラズマ内に供給する。改質反応により生成したガスは、真空チャンバーの側面より配管を通じてドライポンプ(ULVAC社製 DA-15D)で吸引し、ドライポンプの排気管にガス捕集用バッグを接続することにより捕集する。捕集されないガスは、真空チャンバーの右側面に取り付けられているガス冷却器で冷却し、金属製のフィルターを通過させた後、真空ポンプで室外に排気する。
【0021】
[熱プラズマによるメタンの改質]
アルゴン-二酸化炭素熱プラズマによるメタン改質実験を、水冷二重管の長さが150mmのプラズマトーチを利用して、以下のように行った。まず、真空チャンバー内を真空ポンプで0.13kPa以下の減圧状態にして、アルゴンガスを50kPaまで導入し、再度減圧状態にするパージ操作を3回繰り返した。チャンバー内にアルゴンガスを10L/minの流量で供給し、真空チャンバー内の圧力が約10kPaの条件下でプラズマを点火した。次に、発振機の出力を上昇させた後、圧力を26.6kPaにした。さらに、プラズマを収縮させるためにアルゴンに二酸化炭素を混合し、電流、電圧を所定の出力値まで上げプラズマを安定させた。図2に、プラズマを点火・安定化させるために調節した、ガス供給量、チャンバー内の圧力、印加した電流・電圧等の条件を示した。
【0022】
次に、原料ガス供給のためのキャリアガスとして、アルゴンガスを、3.0L/minの流量で原料供給プローブに流した後、所定の量のメタンを供給し始めてから約3 分間ほどドライポンプで吸引し、配管とドライポンプ内部をパージした後に、容量が1Lのアルミニウムバッグ(ジーエルサイエンス社製)をドライポンプの排気管に接続して、生成したガスを採取した。ガスの採取後、発振機の出力を低下させて熱プラズマを消火した。改質実験の終了後、真空チャンバー内に大気を導入し、チャンバー内が大気圧に到達した後、チャンバーの内壁に付着している粉体をキムワイプを用いて回収した。またガス冷却器の後方に接続されている金属製のフィルターの表面に付着している粉体も併せて回収した。
【0023】
[生成ガスの分析]
採取されたガスの成分を調べるため、ガスクロマトグラフ法により、目的とするガスの種類に応じて、以下のガスクロマトグラフ分析装置(いずれも島津製作所製)とカラムとの組み合わせを用いて分析を行った:(1)メタン、エタン、エチレン、アセチレンの分析:GC-14AとActive Carbon60/80(ジーエルサイエンス社製);(2)アルゴン、水素の分析:GC-2010とMOLESIV(J&W SCIENTIFIC社製);(3)二酸化炭素、一酸化炭素の分析:GC-8AとUnipak S 100/150(ジーエルサイエンス社製)。これらガス種のそれぞれについて、プッシュ缶標準ガス(ジーエルサイエンス社製)を用いた既知濃度のガスについても同様に分析して検量線を求めた。各ガス種毎の検量線に基づき、採取された試料に含まれる当該ガス成分の濃度を求めた。
【0024】
[改質反応の検討]
図3に、原料ガスの供給量及び投入電力の異なる組み合わせで行った4通りの実験条件(a〜d)について、回収した試料に含まれるガス成分毎の容積パーセントの実測値を、表にして示した。その結果、マイクロ波プラズマを用いた従来法よりも多くの二酸化炭素を処理できることが明らかになった。
【0025】
ここで、メタンと二酸化炭素を原料とした場合の改質反応としては、次の化学反応式に示す反応が起きると考えられる:
〔反応式1〕 CH4 + CO2 → 2CO + 2H2
そこで、図3には、反応式1の反応が進行したと仮定した場合に生成するガスの濃度を算出した理論値も記載した。また図4には、図3の表に示した水素(A)、一酸化炭素(B)、二酸化炭素(C)について、メタンの供給量に対する、濃度の理論値及び実測値の関係をそれぞれグラフとして示した。
【0026】
図3及び4から明らかなように、水素と二酸化炭素の濃度は理論値よりも実測値が低く、他方、一酸化炭素の濃度は理論値よりも実測値が高くなった。この結果は、熱プラズマによる反応として、式1だけではなく、水素と二酸化炭素が減少し一酸化炭素が増加するような反応も同時に生じている可能性を示している。そのような反応としては、次の反応式が挙げられる:
〔反応式2〕 CO2 + H2 → CO + H2O
さらに、反応後の真空チャンバー内に微粉体の生成が認められたことから、炭素を生成する次のような反応も進行した可能性が考えられる:
〔反応式3〕 CH4 → C + 2H2
そこで、図3の実験条件cの場合について、反応式2及び3も考慮した場合の生成量の理論値を、以下のようにして算出した。
【0027】
まず、アルゴン濃度の実測値と投入アルゴン量から、得られた生成ガスの総量を求め、その値と各生成ガス濃度の実測値とから、それぞれの生成量を求めた。次に、水素濃度の理論値と実測値が同じ値になるように、反応式1と3が進行する比率を最適化し、さらに反応式2の寄与を考慮して、一酸化炭素量と二酸化炭素量を求めた。図5に、反応式1と3の比率を70:30と仮定したときの、各種ガスの生成量の理論値を、濃度の実測値から求めた計算値と共に示す。
【0028】
このように、一酸化炭素と二酸化炭素のそれぞれの理論値が、実測値に基づく計算値と近い値となったことから、アルゴン-二酸化炭素プラズマによる改質反応では、反応式1だけではなく反応式3が進行することが明らかになった。また、反応式2の進行を考慮すると、発生した水素の約83%が、二酸化炭素と反応して水蒸気と一酸化炭素になったと考えられる。さらに、図3から、メタンの供給量を25L/minに増やした場合(実験条件d)、生成ガス中に微量のメタンが残留するほか、少量のアセチレンも生成することが明らかになった。
【0029】
===実施例2===
[トーチの長さの検討]
プラズマトーチの長さによって原料ガスがプラズマ中を滞留する時間が異なり、改質効率が変化する可能性が考えられる。そこで、水冷二重管の長さが実施例1よりも長い300mmのプラズマトーチを使用して、実施例1と同様の実験を行った。プラズマの発生、メタンの供給、生成ガスの回収については、実施例1と同一の方法で行い、投入電力を23.8kVAにして、チャンバー内圧力とメタン供給量の異なる組み合わせによる実験条件で実験を行った。図6に、3通りの実験条件(a〜c)における、生成ガス濃度の実測値、及び反応式1のみを考慮して算出したガス濃度の理論値を表として示す。また図7には、図6の表に示した水素(A)、アセチレン及びメタン(B)、一酸化炭素(C)、二酸化炭素(D)について、メタンの供給量に対する濃度の理論値及び実測値の関係を、それぞれグラフとして示す。
【0030】
改質実験の結果、少量のアセチレンの生成とメタンの残留が生じたものの、実施例1に比べて、より多くのメタンを処理できることが明らかになった(図6の実験条件cの場合)。また、反応式1を考慮しただけでは、理論値は実測値と一致しなかった。さらに、メタンの供給量に応じて、理論値と実測値の大小関係が逆転した。これらのことは、熱プラズマ内で進行する複数の改質反応の割合が変化したためと推測される。そこで、メタンの供給量を24.5L/min、チャンバー内圧力を33.2kPaにした場合(実験条件b)の改質反応の詳細を、以下のようにして検討した。
【0031】
まず、アルゴンの投入量及び各ガス濃度の実測値を用いて、生成ガス中に含まれるそれぞれのガス量を求めた。次に、アセチレンの生成が認められたことから、上記反応式1〜3に加えて、次式の反応が進行したと考えられる:
〔反応式4〕 2CH4 → 3H2 + C2H2
そこで、アセチレン濃度の実測値から、反応式4によりアセチレンの生成に使われたメタンの量を算出した。残りのメタンが反応式1と3により完全に一酸化炭素と水素に改質されたと仮定し、両式の比率を一酸化炭素量から求めた。さらに、両式の反応から得られた水素が、二酸化炭素濃度の実測値に基づく計算値に到達するまで反応式2で消費されたと仮定したときの、生成する二酸化炭素量の理論値を求めた。その結果、反応式4・1・3の比率を28.7:69.0:2.3とした場合、図8に示すように、二酸化炭素量の理論値は、濃度実測値に基づく計算値と比較的良く一致した。
【0032】
同様にして、メタンの供給量を34.3L/minに増やした場合(図6の実験条件c)について、改質反応式の比率を求めた。その結果、反応式4・1・3の比率を52.4:31.5:16.1としたときに、図9に示すように、改質後の二酸化炭素量の理論値が、濃度実測値に基づく計算値とほぼ等しくなった。
【0033】
以上の結果から、メタンの供給量が24.5L/minの場合は反応式1が主に進行するが、メタン供給量を34.3L/minへ増加させると、反応式4が主となり、また反応式3の進行も高くなることが分った。このように、図7に認められる生成ガスの組成の変化は、メタンの供給量に従い、熱プラズマ中で進行する改質反応の割合が変化することに起因することが明らかになった。
【0034】
また、反応式2により消費される水素は、メタンの供給量が24.5L/min、34.3L/minの場合において、反応式1及び3によって発生した水素量のそれぞれ28、26%となった。この結果を実施例1と比較すると、長いプラズマトーチを使用することによって、一旦生成した水素が消費されてしまう割合を低減できることが明らかとなった。そして、改質できるメタンの量も、長いプラズマトーチの使用により増加することが明らかになった。
【0035】
===実施例3===
[二酸化炭素の供給量の検討]
プラズマを発生させるためのアルゴンと二酸化炭素の混合ガス中に含まれるアルゴンの割合によって改質効率が変化する可能性が考えられる。そこで、メタンと二酸化炭素の供給量の比率を一定にしてアルゴンの供給量を変化させて、改質後の生成ガスの種類と生成量を調べた。実験には実施例2で使用したプラズマトーチを使用し、プラズマの発生、メタンの供給、生成ガスの回収については実施例1とほぼ同様の方法で行い、発振器への投入電力を約50kVAの条件で実験を行った。図10にメタンと二酸化炭素の供給量の比率(体積比)とアルゴンの供給量を表として示す。図10の条件で実験を行った結果について、図11、12、13にアルゴンとメタンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))と供給したメタンに対して得られた水素の比率(H2/CH4)の関係をグラフとして示す。このメタンに対する水素の比率は、反応式1(CH4 + CO2 → 2CO + 2H2)の進行度合いを示し、通常2を超えることはない。
【0036】
これらの図から二酸化炭素とメタンの比率(CO2/CH4)に依存することなく、アルゴンとメタンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))が0.6近傍で、供給したメタンから得られる水素の量が最大になることが示された。即ち供給したメタンから最大量の水素が得られる条件となっている。さらに二酸化炭素とメタンの比率が低い方が、得られる水素がより多くなることが分った。
【0037】
図14にCH4=40L/minの場合の、アルゴンとメタンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))と水蒸気量を示した。水蒸気量は、供給した二酸化炭素とメタンの量および改質反応後に得られたガス種とその濃度から計算により求めた。この図から水蒸気の生成量は、アルゴンとメタンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))が0.6で極小値を示していることが分る。この結果から
〔反応式2〕H2 + CO2 → H2O + CO
で表される水素の燃焼反応が進行していると推測され、H2/CH4の比が2とならない原因と考えられる。
【0038】
図15、16、17にメタンの供給量をそれぞれ30,40,60L/minとした時の、アルゴンとメタンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))と二酸化炭素の転換率の関係を示す。
【0039】
これらの図から、アルゴンとメタンの総供給量に対するアルゴンの供給量の比率(Ar/(Ar+CH4))が大きくなるのに従ってCO2の転換率が低下し、また同一のメタンと二酸化炭素の供給量の比率(CO2/CH4)では、メタンと二酸化炭素の供給量の比率が増加するほどCO2の転換率が低下することが分った。
【0040】
図18にメタンの供給量を30,40,60L/minとし、メタンに対する二酸化炭素の比率(CO2/CH4)が1.0の場合の、アルゴンとメタンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))と二酸化炭素の転換量の関係を示す。この図から、アルゴンとメタンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))が、供給したメタンから得られる水素量が最大となるCH40.6近傍では、30から40L/min程度の二酸化炭素が他のガス(一酸化炭素)へ転換されていることが分った。
【0041】
===実施例4===
[得られる一酸化炭素と水素の比率の検討]
天然ガスから水素と一酸化炭素の合成ガスを製造して、水素と一酸化炭素を「フィッシャートロプシュ合成(略してFT合成)」と呼ばれる化学反応で合成することにより、CH2が何個もつながったパラフィンという液体が得られる。このパラフィンの分子量の調整により種々の液体燃料を製造することが可能である。FT合成をするためには合成ガス中の水素と一酸化炭素の比率(H2/CO)を2にする必要がある。熱プラズマを用いた改質において、アルゴンと二酸化炭素の混合ガスからなる熱プラズマにメタンを供給して一酸化炭素と水素の比率(H2/CO)が2になるようにするためには、
〔反応式1〕 CH4 + CO2 → 2CO + 2H2
だけの反応では不可能で、供給したメタンに対して過剰の水素が得られる反応が同時に進行する必要がある。そのような反応の1つとして、
〔反応式5〕 CH4 + H2O → CO + 3H2
があり、理論的には反応式1と反応式5が1:2の割合で同時に進行するとH2/COが2となる改質ガスが得られる。そこでこれらの反応が同時に進行し、H2/COが2となる改質ガスが得られるかを水蒸気改質用熱プラズマ装置で検討を行った。
【0042】
[水蒸気用熱プラズマ装置]
改質の実験に用いた日本電子株式会社製の熱プラズマ反応炉試験装置(JEOL 35KW)は、高周波発振機用電源、高周波発振機、プラズマトーチ、集中制御盤(ガス制御盤、発振機操作盤、チャンバー内圧力制御盤)、真空ポンプと真空チャンバーで構成されている。プラズマトーチは、内径42mmの窒化珪素管の外側に石英管を配置した水冷二重構造物の外側に、3ターンのRFコイルを設けた仕様となっている。高周波発振機の出力は、0.5〜35kW(最大プレート電圧 {Ep}=12kV、最大プレート電流 {IP}=5.8A、最大グリッド電流{Ig}=1.1A)であり、発振周波数は3.5±0.5Mzとなっている。
【0043】
図19の概略図に示すように、水蒸気用プラズマトーチは、真空チャンバーの上に設置する。この構成により、プラズマトーチ内で発生したプラズマフレームの下部は、真空チャンバー内に到達する。真空チャンバーは、循環型冷却水により水冷する。原料ガスは、アルゴン、二酸化炭素、水蒸気の混合ガスに混ぜ込んでプラズマトーチ上部より供給される。改質反応により生成したガスは、真空チャンバーの側面より配管を通じてドライポンプ(ULVAC社製 DA-15D)で吸引し、ドライポンプの排気管にガス捕集用バッグを接続することにより捕集する。捕集されないガスは、真空チャンバーの右側面に取り付けられているガス冷却器で冷却し、真空ポンプで室外に排気する。
【0044】
[熱プラズマによるメタンの改質]
アルゴン-(二酸化炭素、水蒸気)熱プラズマによるメタン改質実験を、水冷二重管の長さが300mmのプラズマトーチを利用して、以下のように行った。まず、真空チャンバー内を真空ポンプで0.13kPa以下の減圧状態にして、アルゴンガスを50kPaまで導入し、再度減圧状態にするパージ操作を3回繰り返した。チャンバー内にアルゴンガスを約1L/minの流量で供給し、真空チャンバー内の圧力が約1.3kPa以下の条件下でプラズマを点火した。次に、発振機の出力を上昇させた後、圧力を13.2kPaにした。さらに、プラズマを収縮させるためにアルゴンに二酸化炭素を混合し、プレート電流、プレート電圧を所定の出力値まで上げプラズマを安定させた。プラズマが安定した後に徐々に水蒸気を導入し、所定の改質条件に達した後メタンを供給した。図20に、プラズマを点火・安定化させるために調節した、ガス供給量、チャンバー内の圧力、印加した電流・電圧等の条件の一例を示した。メタンを供給し始めてから約3 分間ドライポンプで吸引し、配管とドライポンプ内部を改質ガスでパージした後に、容量が1Lのアルミニウムバッグ(ジーエルサイエンス社製)をドライポンプの排気管に接続して、生成したガスを採取した。ガスの採取後、発振機の出力を低下させて熱プラズマを消火した。生成ガスの分析は、実施例1と同様の手法で行った。
【0045】
[改質反応およびH2/CO比率の検討]
図21にアルゴン、二酸化炭素、水蒸気とメタンの供給量を表にして示した。なお、水蒸気は20℃、1.01x105Paの条件下での供給量に換算して表している。
【0046】
図22に図21の二酸化炭素が30L/minの供給量で改質実験を行った結果を示している。横軸は水蒸気の供給量、左縦軸はアセチレン、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素の生成量を、右縦軸は水素の生成量を示している。
【0047】
その結果、いずれの試料にも一酸化炭素、二酸化炭素およびアセチレンが含まれていることから、メタンと二酸化炭素および水蒸気を原料とした場合の改質反応としては、次の化学反応式に示す反応が起きると考えられる:
〔反応式1〕 CH4 + CO2 → 2CO + 2H2
〔反応式5〕 CH4 + H2O → CO + 3H2
〔反応式6〕 CO + H2O → CO2 + H2
〔反応式4〕 2CH4 → C2H2 + 3H2
また、実験終了後に装置を分解したところ、図19のプラズマトーチの窒化珪素管の内壁に煤が付着していた事から、次の化学反応式に示す反応も進行していると考えられる:
〔反応式3〕 CH4 → C + 2H2
そこで水蒸気の供給量の増加に伴うそれぞれのガスの容積の変化を調べると、図22より水蒸気の供給量の増加に伴い、水蒸気の供給量が22.0L/minまでは水素と一酸化炭素が増加するが、水蒸気の供給量が22.0L/minを超えるとメタンが残留し始め、ほぼ同時に一酸化炭素、水素の生成量が減少し始めている事が分る。また、全体を通じてアセチレンがやや減少し、二酸化炭素が増加していることが分る。このことから、水蒸気の供給量が22.0L/minより少ない領域では、反応式1および5が主反応として進行し、アセチレンが存在している事から、反応式4も副反応として進行していると考えられる。水蒸気の供給量が22.0L/minを超えると、反応式1の進行が抑制され始め、反応式1で反応に寄与しなくなった二酸化炭素が残存し始めたと考えられる。
【0048】
図23に横軸に供給した二酸化炭素と水蒸気の割合(CO2/H2O)を、縦軸に生成した水素と一酸化炭素の割合(H2/CO)を示したグラフを示した。また図中に供給した二酸化炭素とメタンの割合(CO2/CH4)を示している。この図からCO2/CH4が0.43,0.5においてH2/CO=2となる領域があり、おおよそCO2/H2Oが1から1.3の間である事が分る。理論的には反応式1と反応式5が1:2の割合で同時に進行するとH2/COが2となる改質ガスが得られるが、反応式1、5以外の反応が同時に進行するために理論値からシフトした反応式1と反応式5が1:1〜1.3でH2/COが2となる改質ガスが得られることが分った。
【0049】
図24に横軸に供給した二酸化炭素と水蒸気の割合を、縦軸に供給した二酸化炭素が消失した割合を示すグラフを示した。また図中に供給した二酸化炭素とメタンの割合(CO2/CH4)を示している。この図から二酸化炭素の供給量がメタンの供給量よりも少ないCO2/CH4=0.43,0.5において、供給した二酸化炭素が完全に消費(一酸化炭素へ転換)される領域があり、また図23の結果から供給された二酸化炭素が消失し、かつH2/CO=2となるメタン、二酸化炭素、水蒸気の供給条件が存在することが分る。
【0050】
図25に図24の縦軸を二酸化炭素の転換量に置き換えた図を示す。図中に供給した二酸化炭素とメタンの割合(CO2/CH4)を示している。図25はメタンを60L/minの条件で供給した場合の結果であり、25から30L/min弱の二酸化炭素を完全に一酸化炭素へ転換出来ている事から、供給するメタンの50%程度の二酸化炭素を液体原料に変えることができることが明らかになった。
【0051】
上記では水蒸気の供給量を変化すると改質ガス中にメタンの残留が生じていた。そこで次にメタンが残存しない条件下での改質反応とH2/COの比率を確認することとした。
【0052】
図26にメタンの供給量を40L/minとして改質実験を行った条件を表にして示した。尚、水蒸気は20℃、1.01x105Paの条件下での供給量に換算して表している。
【0053】
図27に二酸化炭素が30L/minの供給量で改質実験を行った結果を示している。横軸は水蒸気の供給量、左縦軸はアセチレン、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素の生成量を、右縦軸は水素の生成量を示している。この表から水蒸気の供給量を変化させても改質ガス中にメタンがほぼ残存していない(0.1%以下)事が分る。また改質ガス中にメタンの残存が生じる図22の場合とは異なり、水蒸気の供給量が20から40L/minの間で水素の生成量が増加し、また二酸化炭素の量が多い事が分る。このことから反応式1よりも反応式5の進行の方が優先的に進み、同時に反応式6も進行していると考えられる。
【0054】
図28には、横軸に供給した二酸化炭素と水蒸気の割合(CO2/H2O)を、縦軸に生成した水素と一酸化炭素の割合(H2/CO)を示したグラフを示した。また図中には、供給した二酸化炭素とメタンの割合(CO2/CH4)を示している。この図からCO2/CH4が0.64,0.75においてH2/CO=2となる領域があり、おおよそCO2/H2Oが0.75から1.0の間である事が分る。理論的には反応式1と反応式5が1:2の割合で同時に進行するとH2/COが2となる改質ガスが得られるが、改質ガス中にメタンが残存しない領域では、反応式1、5以外の反応が同時に進行するために理論値からシフトした反応式1と反応式5が1:0.7〜1.0でH2/COが2となる改質ガスが得られることが分った。
【0055】
図29には、横軸に供給した二酸化炭素と水蒸気の割合(CO2/H2O)を、縦軸に供給した二酸化炭素が消失した割合を示すグラフを示した。また図中には、供給した二酸化炭素とメタンの割合(CO2/CH4)を示している。この図から二酸化炭素の割合が少ないCO2/CH4=0.25において供給した二酸化炭素が完全に消費(一酸化炭素へ転換)される領域があるものの、CO2/CH4=0.64,0,75では二酸化炭素が完全に転換される領域はなく、H2/CO=2となるCO2/H2Oが1近傍において転換率は60%と低い。
【0056】
図30に、図29の縦軸を二酸化炭素の転換量に置き換えた図を示す。図中には、供給した二酸化炭素とメタンの割合(CO2/CH4)を示している。図29はメタンを40L/minの条件で供給した場合の結果であり、CO2/H2Oが1付近では15から20L/min弱の二酸化炭素を完全に一酸化炭素へ転換出来ている事から、供給するメタンの50%程度の二酸化炭素をFT合成の原料ガスに変えることができることが明らかになった。
【0057】
図31に図21と図26の条件で実施した改質実験の結果を示す。なお、横軸に水蒸気の酸素原子数で二酸化炭素のカーボン原子数を割った値でメタンのカーボン原子数を更に割った値{メタンのカーボン原子数/(二酸化炭素のカーボン原子数/水蒸気の酸素原子数)}、縦軸にH2/COとしたグラフを示す。この図においてメタンの供給量が40L/min、60L/minのデータが共に接近していることから、H2/COの比と{メタンのカーボン原子数/(二酸化炭素のカーボン原子数/水蒸気の酸素原子数)}の値に相関関係があり、メタン、二酸化炭素、水蒸気の供給量を変化させることにより、H2/COの比が異なる改質ガスを得ることができることが明らかになった。またFT合成用の合成ガス(水素と一酸化炭素の混合ガス)中のH2/COの比が2となる領域を{メタンのカーボン原子数/(二酸化炭素のカーボン原子数/水蒸気の酸素原子数)}の値で示すことが出来、30≦メタンのカーボン原子数/(二酸化炭素のカーボン原子数/水蒸気の酸素原子数)≦70程度が適切な領域と考えられる。
【0058】
===実施例5===
[アルゴンの供給量の検討]
熱プラズマを安定に発生するために供給しているアルゴンの供給量を検討するために、二酸化炭素、水蒸気、メタンの供給量を一定にしてアルゴンの供給量を変化させ、生成したガス量、高周波を発生させるための真空管に投入するプレートの電力量の変化を調べた。図32に二酸化炭素、水蒸気、メタンの供給量を一定にして供給したアルゴンの供給量を変化させ改質実験を行った条件を表にして示す。図33に改質実験によって得られた各種生成ガスの生成量の変化を示している。横軸は水蒸気とアルゴンの混合ガス中に含まれるアルゴンの供給量、左縦軸はアセチレン、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素の生成量を、右縦軸は水素の生成量を示している。この図から二酸化炭素、水蒸気、メタンの供給量を一定にし、アルゴンの供給量を変化させても改質ガス中に含まれる各種ガスの生成量は大きく変化していない事が分る。
【0059】
図34に、図32の改質実験から得られた、水蒸気とアルゴンの混合ガス中に含まれるアルゴンの割合に対応した、水素の生成量と改質実験時に真空管に投入したプレート電力量の変化を示す。横軸は水蒸気とアルゴンの混合ガス中に含まれるアルゴンの割合、左縦軸は水素の生成量、右縦軸は真空管へのプレート電力量を示している。この図から水素の生成量は、アルゴンの割合が増加するのに従って3L/min程度増加し、極大値を示した後減少している。他方、プレート入力電力量はアルゴンの増加に伴い低下し、0.82以上で一定値を示した。この結果から、アルゴンの割合が少ないと真空管への投入電力量が増し、かつ生成する水素量が少なく、1m3当たりの水素を製造するコストが高くなることが明らかになった。
【0060】
===実施例6===
[熱プラズマによる天然ガスの改質]
アルゴン-(二酸化炭素、水蒸気)熱プラズマによる天然ガス改質実験を、実施例4に示した水蒸気用熱プラズマ装置を用いて、以下のように行った。まず、真空チャンバー内を真空ポンプで0.13kPa以下の減圧状態にして、アルゴンガスを50kPaまで導入し、再度減圧状態にするパージ操作を3回繰り返した。チャンバー内にアルゴンガスを約1L/minの流量で供給し、真空チャンバー内の圧力が約1.3kPa以下の条件下でプラズマを点火した。次に、発振機の出力を上昇させた後、圧力を13.2kPaにした。さらに、プラズマを収縮させるためにアルゴンに二酸化炭素を混合し、プレート電流、プレート電圧を所定の出力値まで上げプラズマを安定させた。プラズマが安定した後に徐々に水蒸気を導入し、所定の改質条件に達した後天然ガスを供給した。プラズマを点火・安定化させるために調節した、ガス供給量、チャンバー内の圧力、印加した電流・電圧等の条件は図20とほぼ等しい。天然ガスを供給し始めてから約3 分間ドライポンプで吸引し、配管とドライポンプ内部を改質ガスでパージした後に、容量が1Lのアルミニウムバッグ(ジーエルサイエンス社製)をドライポンプの排気管に接続して、生成したガスを採取した。ガスの採取後、発振機の出力を低下させて熱プラズマを消火した。生成ガスの分析は、実施例1と同様の手法で行った。
【0061】
[天然ガスの改質反応およびH2/CO比率の検討]
図35にアルゴン、二酸化炭素、水蒸気と天然ガスの供給量を表にして示した。なお、水蒸気は20℃、1.01x105Paの条件下での供給量に換算して表している。
【0062】
図36に図35の二酸化炭素が30L/minの供給量で改質実験を行った結果を示している。横軸は水蒸気の供給量、左縦軸はアセチレン、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素の生成量を、右縦軸は水素の生成量を示している。ここで非常に微量のエタンが改質ガス中に検出されたが、微量のため省略している。この結果、いずれの試料にも一酸化炭素、二酸化炭素およびアセチレンが含まれていることから、メタンを主成分とする天然ガスと二酸化炭素および水蒸気を原料とした場合の改質反応としては、前述の反応式:
〔反応式1〕 CH4 + CO2 → 2CO + 2H2
〔反応式5〕 CH4 + H2O → CO + 3H2
〔反応式6〕 CO + H2O → CO2 + H2
〔反応式4〕 2CH4 → C2H2 + 3H2
〔反応式3〕 CH4 → C + 2H2
の他に天然ガス中に含まれる10%程度含まれるエタン、プロパン、ブタンとの反応が挙げられる。各種ガスの増減は、図22に示した同条件にてメタンを改質した場合と同様の挙動を示しており、10%程度含まれるメタン以外のガスによって得られるガス種およびそれらの生成割合が大きく変化しないことが分った。
【0063】
図37に、図35の場合と同じ条件で実施した改質実験の結果を、横軸に水蒸気の酸素原子数で二酸化炭素のカーボン原子数を割った値で天然ガスのカーボン原子数を更に割った値{天然ガスのカーボン原子数/(二酸化炭素のカーボン原子数/水蒸気の酸素原子数)}、縦軸にH2/COとしたグラフを示す。この図から天然ガスの改質においても図31と同様に、H2/COの比と{天然ガスのカーボン原子数/(二酸化炭素のカーボン原子数/水蒸気の酸素原子数)}の値に相関関係があり、天然ガス、二酸化炭素、水蒸気の供給量を変化させることにより、H2/COの比が異なる改質ガスを得ることができることが明らかになった。またFT合成用の合成ガス(水素と一酸化炭素の混合ガス)中のH2/COの比が2となる領域を{天然ガスのカーボン原子数/(二酸化炭素のカーボン原子数/水蒸気の酸素原子数)}の値で示すことが出来、25≦天然ガスのカーボン原子数/(二酸化炭素のカーボン原子数/水蒸気の酸素原子数)≦70程度が適切な領域と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施例において、プラズマトーチおよび真空チャンバー並びにガス供給方法の概略を示す図である。
【図2】本発明の一実施例において、図1に示す機器を備えた熱プラズマ反応炉試験装置の運転条件を示す図である。
【図3】本発明の一実施例において、ガス濃度の実測値と、反応式1に基づき算出した理論値とを比較した結果を示す図である。
【図4】本発明の一実施例において、メタンガスの供給量と生成ガス濃度の理論値及び実測値の関係を示す図である。
【図5】本発明の一実施例において、反応式1〜3を考慮したガス生成量の理論値と、実測値に基づく計算値とを比較した結果を示す図である。
【図6】本発明の一実施例において、ガス濃度の実測値と、反応式1に基づき算出した理論値とを比較した結果を示す図である。
【図7】本発明の一実施例において、メタンガスの供給量と生成ガス濃度の理論値及び実測値の関係を示す図である。
【図8】本発明の一実施例において、図6に示す実験条件(b)における、反応式1〜4を考慮したガス生成量の理論値と、実測値に基づく計算値とを比較した結果を示す図である。
【図9】本発明の一実施例において、図6に示す実験条件(c)における、反応式1〜4を考慮したガス生成量の理論値と、実測値に基づく計算値とを比較した結果を示す図である。
【図10】本発明の一実施例において、メタンと二酸化炭素の供給量の比率とアルゴンの供給量をそれぞれ示した図である。
【図11】本発明の一実施例において、メタンの供給量を30L/minとし、二酸化炭素とメタンとの供給量の比率(CO2/CH4)を1.0、1.50として、アルゴンの供給量を変化させた実験における、メタンとアルゴンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))と、メタンに対して得られた水素の比率(H2/CH4)の関係を示す図である。
【図12】本発明の一実施例において、メタンの供給量を40L/minとし、二酸化炭素とメタンとの供給量の比率(CO2/CH4)を0.5、0.75、1.0、1.25、1.50として、アルゴンの供給量を変化させた実験における、メタンとアルゴンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))とメタンに対して得られた水素の比率(H2/CH4)の関係を示す図である。
【図13】本発明の一実施例において、メタンの供給量を60L/minとし、二酸化炭素とメタンとの供給量の比率(CO2/CH4)を0.75、1.0、1.25として、アルゴンの供給量を変化させた実験における、メタンとアルゴンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))とメタンに対して得られた水素の比率(H2/CH4)の関係を示す図である。
【図14】本発明の一実施例において、メタンの供給量を40L/minとした場合、メタンとアルゴンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))と水蒸気量の関係を示す図である。
【図15】本発明の一実施例において、メタンの供給量を30L/minとした時の、メタンとアルゴンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))と二酸化炭素の転換率の関係を示す図である。
【図16】本発明の一実施例において、メタンの供給量を40L/minとした時の、メタンとアルゴンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))と二酸化炭素の転換率の関係を示す図である。
【図17】本発明の一実施例において、メタンの供給量を60L/minとした時の、メタンとアルゴンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))と二酸化炭素の転換率の関係を示す図である。
【図18】本発明の一実施例において、メタンの供給量を30,40,60L/minとした時の、メタンとアルゴンの総供給量に対するアルゴンの供給量(Ar/(Ar+CH4))と二酸化炭素の転換量の関係を示す図である。
【図19】本発明の一実施例において、プラズマトーチと供給用ガスの配管の概略を示す図である。
【図20】本発明の一実施例において、図19に示す機器を備えた熱プラズマ反応炉試験装置の運転条件を示す図である。
【図21】本発明の一実施例において、図19に示す機器を備えた熱プラズマ反応炉試験装置に供給した、アルゴン、二酸化炭素、水蒸気、およびメタンの量をそれぞれ示す図である。
【図22】本発明の一実施例において、二酸化炭素が30L/minの供給量で改質実験を行った結果を示し、各種ガスの生成量と水蒸気の供給量の関係を示す図である。
【図23】本発明の一実施例において、供給した二酸化炭素と水蒸気の割合と生成した水素と一酸化炭素の割合の関係を示す図である。なお、図中においては、供給した二酸化炭素とメタンの割合(CO2/CH4)を示す。
【図24】本発明の一実施例において、供給した二酸化炭素と水蒸気の割合と供給した二酸化炭素が転換した割合の関係を示す図である。なお、図中においては、供給した二酸化炭素とメタンの割合(CO2/CH4)を示す。
【図25】本発明の一実施例において、図24の縦軸を二酸化炭素の転換量に置き換えたグラフを示した図である。
【図26】本発明の一実施例において、図19に示す機器を備えた熱プラズマ反応炉試験装置に供給した、アルゴン、二酸化炭素、水蒸気とメタンの量を示す図である。なお、水蒸気は20℃、1.01x105Paの条件下での供給量に換算して表す。
【図27】本発明の一実施例において、二酸化炭素が30L/minの供給量で改質実験を行った結果を示し、水蒸気の供給量と各種生成ガス量の関係を示す図である。
【図28】本発明の一実施例において、供給した二酸化炭素と水蒸気の割合と生成した水素と一酸化炭素の割合(H2/CO)の関係を示す図である。
【図29】本発明の一実施例において、供給した二酸化炭素と水蒸気の割合と供給した二酸化炭素が転換した割合の関係を示す図である。
【図30】本発明の一実施例において、図29の縦軸を二酸化炭素の転換量に置き換え、供給した二酸化炭素と水蒸気の割合と供給した二酸化炭素が転換した量の関係を示す図である。
【図31】本発明の一実施例において、水蒸気の酸素原子数で二酸化炭素のカーボン原子数を割った値でメタンのカーボン原子数を更に割った値とH2/COの関係を示す図である。
【図32】本発明の一実施例において、二酸化炭素、水蒸気、メタンの供給量を一定にし、アルゴンの供給量を変化させた条件を示す図である。
【図33】本発明の一実施例において、アルゴンの供給量と各種生成ガスの生成量の関係を示す図である。
【図34】本発明の一実施例において、水蒸気とアルゴンの混合ガス中に含まれるアルゴンの割合と水素の生成量、および真空管への投入電力量の関係を示す図である。
【図35】本発明の一実施例において、アルゴン、二酸化炭素、水蒸気と天然ガス(13A)の供給量を示す図である。
【図36】本発明の一実施例において、水蒸気の供給量と生成した各種ガスの生成量の関係を示す図である。
【図37】本発明の一実施例において、水蒸気の酸素原子数で二酸化炭素のカーボン原子数を割った値で天然ガスのカーボン原子数を更に割った値とH2/COの関係を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素を改質し水素と一酸化炭素を製造する方法であって、
高周波誘導熱プラズマ領域に前記炭化水素を含む原料ガスと二酸化炭素とを供給することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記高周波誘導熱プラズマをアルゴンまたはヘリウムで発生させることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記高周波誘導熱プラズマがアルゴンで発生させたものであり、
前記アルゴンと前記炭化水素との供給量が、式:0.3≦Ar(前記アルゴンの原子数)/(Ar(前記アルゴンの原子数)+C(前記炭化水素中の炭素原子数))≦0.9の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記炭化水素の供給量に対する前記二酸化炭素の供給量の比が、0.5〜1.0の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
高周波誘導熱プラズマ領域に水蒸気をさらに供給することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記炭化水素がメタンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記二酸化炭素と前記メタンと前記水蒸気との供給量が、式:30≦C(前記メタン中の炭素原子数)/(C(前記二酸化炭素中の炭素原子数)/H(前記水蒸気中の酸素原子数))≦70の範囲内であることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記炭化水素を含む原料ガスが天然ガスであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記二酸化炭素と前記天然ガスと前記水蒸気との供給量が、式:25≦C(前記天然ガス中の炭素原子数)/(C(前記二酸化炭素中の炭素原子数)/H(前記水蒸気中の酸素原子数))≦70の範囲内であることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項1】
炭化水素を改質し水素と一酸化炭素を製造する方法であって、
高周波誘導熱プラズマ領域に前記炭化水素を含む原料ガスと二酸化炭素とを供給することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記高周波誘導熱プラズマをアルゴンまたはヘリウムで発生させることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記高周波誘導熱プラズマがアルゴンで発生させたものであり、
前記アルゴンと前記炭化水素との供給量が、式:0.3≦Ar(前記アルゴンの原子数)/(Ar(前記アルゴンの原子数)+C(前記炭化水素中の炭素原子数))≦0.9の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記炭化水素の供給量に対する前記二酸化炭素の供給量の比が、0.5〜1.0の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
高周波誘導熱プラズマ領域に水蒸気をさらに供給することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記炭化水素がメタンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記二酸化炭素と前記メタンと前記水蒸気との供給量が、式:30≦C(前記メタン中の炭素原子数)/(C(前記二酸化炭素中の炭素原子数)/H(前記水蒸気中の酸素原子数))≦70の範囲内であることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記炭化水素を含む原料ガスが天然ガスであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記二酸化炭素と前記天然ガスと前記水蒸気との供給量が、式:25≦C(前記天然ガス中の炭素原子数)/(C(前記二酸化炭素中の炭素原子数)/H(前記水蒸気中の酸素原子数))≦70の範囲内であることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図1】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図28】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図1】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図28】
【公開番号】特開2008−247717(P2008−247717A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94734(P2007−94734)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(591282205)島根県 (122)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(591282205)島根県 (122)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
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