説明

水素不含イソシアネートを使用して重縮合法またはゾルゲル法によりカルボニトリドを製造する方法

本発明は、水素不含の炭素窒化物、殊に化学量論式C34の炭素窒化物を製造する方法に関する。合成は、水素不含の反応体、即ち熱処理の際に専らCO2を分離する無機イソシアネートを使用して行なわれる。殊に、安価で効率的なカルボニトリドを、有利に粉末または被覆の形で準備する経路が提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素不含の炭素窒化物、殊に化学量論式C34の炭素窒化物の製造法に関する。合成は、水素不含反応体、即ち熱処理の際に専らCO2を分離する無機イソシアネートを使用して行なわれる。殊に、安価で効率的な炭素窒化物を、有利に粉末または被覆の形で提供する方法が提案される。
【0002】
公知技術水準
炭素窒化物、カルボニトリドとも呼ばれる、の研究は、無機材料研究の現在のテーマである。このテーマは、学術的に1906年以来研究されている。1922年からのFranklinの広範囲の論文以来、三元系C−N−Hまたは四元系C−N−O−Hにおいて、最終的に不均質なC−N−H−ポリマーを得ることができることが証明されており、この場合このポリマーは、慣用名"メロン(Melon)"を有するポリアミンとして公知である。Franklin、Takimoto、FinkelsteinおよびKomatsuの研究により、殆んど全ての水素含有反応体が基体のメラミン、メレムおよびメラムの誘導体により最終的にメロンを生じることは、よく知られている。数多くの化学的な歩みは、十分に刊行物に記載されている。
【0003】
数多くの理論的な論文によって、化学量論式C34のカルボニトリドをメロンのさらなる熱分解によって準備する試みが不足していることが説明されている。このカルボニトリドは、卓越した機械的性質を有する。全ての関連する方法は、今日まで多少とも不均一な生成物混合物を生じ、この場合この生成物混合物は、CおよびNと共にヘテロ要素、例えばハロゲン化物、珪素、酸素、硫黄、アルカリ金属および殊に水素を含む。ポリマーのメロン(C−N−H−ポリマー)と共に、水素化された炭素(C−H−ポリマー)、アズルミン酸(C−N−H−ポリマー)およびシアメリド(C−N−O−H−ポリマー)が生成する。実際に全ての種類の不純物は、周知の不安定なC−N−ポリマーにおいて不利な作用を有する。即ち、Li+およびCl-は、インターカレーションされ、Siは、黒鉛化を促進し、Sは、網状組織中に組み込まれる等々である。殊に、水素の存在は、清浄化された、再生可能で定義されたカルボニトリドを準備するための主要な妨害理由と判定することができる。
【0004】
二元系のC−Nにおいて、望ましい化学量論式に反するガス状のN2および(CN)2だけが生成しうる一方で、三元系のC−N−Hにおいては、付加的に易揮発性の化合物HCN、NH3、CH4およびH2NCNが既に存在する。従って、定義された化学量論式を有する均質なCーN−網状組織の破壊は、十分な余地が与えられている。実際に、炭素を基礎とする網状組織/ポリマー中で窒素と水素とが同時に存在することで、極めて簡単に効率的に純粋な炭素を生じること(精製効果)は、久しく公知である。この事情は、多価の黒鉛の合成の際に利用される。
【0005】
四元系のC−N−O−Hにおける割合は、なお展望がきかない。系、例えばC−N−SおよびC−N−S−H(例えば、NH4SCN)についての試験は、相応する利点を全くもたらさなかった。それどころか、硫黄は、堅固であることが確認され、よりいっそう大量にポリマーの生成物中で検出することができる(Franklin et al.,Purdy et al.)。これは、殊に元素状SまたはCS2を形成するための顕著な駆動力を与えることが全くないように思える状況にある。前記の実施形式から、水素および全ての別の不純物は、できるだけ排除されなければならないことが明らかである。実際に、知識水準によれば、水素の不在が純粋なC34を成功を収めるように合成するための強制的な前提条件とみなすことから出発することができる。
【0006】
二元系C−Nにおける化合物は、極めて費用の掛かる物理的方法により製造された。この物理的方法は、マイクロ波−および電波合成、気相析出、プラズマプロセスならびに反応性スパッタリングを含む。全ての前記方法は、高い費用と少ない処理量に関連した極めて複雑化されたプロセス制御であることが共通している。公知技術水準によれば、前記の基礎に基づいて市場性の高い方法を準備することに成功することは、極めてあり得ないことのように思われる。その上、記載されたプロセスは、全く化学的制御に掛けられず、ひいてはしばしば再現不可能であるかまたはむしろ矛盾した結果をまねく。前記方法の複雑な性質により、しばしば、成功を収める合成の障害となる、多岐に亘る汚染物質が構成される。実際に、全ての前記の問題解決の取り組み方において、相純粋なC34の合成(元素分析によって証明された)は、成功しなかった。
【0007】
水素不含のC34に向いた化学的合成法は、提案されている。この場合には、適当な(分子状)前駆体/反応体を選択することによって、適当な化学量論式を予め設定し、この化学量論式を望ましい生成物になるまで保存するという基本思想が存在する。しかしながら、全てトリアジンを基礎に機能する前記の問題解決の取り組み方は、証明可能な成果がないままである。
【0008】
即ち、米国特許第5606056号明細書(1997)には、置換トリアジンから出発して適当な分子間および分子内での分解反応によってC34を準備する1つの方法が提案されている。しかし、実際には、全面的に特徴付けることができない極めて薄手の被膜が得られるにすぎない(400nmまで)。更に、提案されたCVDプロセスは、所望通りには進行せず、理論に従って発生したものではないか、または発生してはならない揮発性の生成物混合物が明らかに得られる。その上、IRにおいては、3200cm-1で1つのバンドが観察され、このバンドがOH基に対応することは、極めて明らかである。従って、水素含有試料が存在することは、明確なことである。粉末の製造は、前記方法で達成することができない。僅かな層厚のために、機械的保護を期待することはできない。
【0009】
ドイツ連邦共和国特許第19706028号明細書(1998)においては、ハロゲントリアジンは、置換カルボジイミドと反応される。この場合も水素含有試料が得られ、このことは、元素分析またはIR分光法につき証明することができる(3130cm-1および3077cm-1でのバンド)。更に、ハロゲンまたは珪素が完全に不在であることは、証明されていない。その上、生成物は、感湿性であり、このことは、純粋なC34と合致させることができない。最終的には、この経路で粉末だけが得られ、被覆は利用することができない。
【0010】
米国特許第6428762号明細書(2002)には、ハロゲントリアジンおよびアルカリ金属ニトリドから出発してC34を合成することが提案されている。水素含有(元素分析およびIR)の粉末状試料が得られる。更に、ラマン分光法により黒鉛系炭素の存在が明らかに証明され、したがって、この場合には、清浄化されていない、部分的に分解された生成物から出発されなければならない。前記試料の密度は、意外なことに低く(1.34〜1.38g/cm3)、前記調製物の使用は、硬質物質の製出には問題である。この場合も、最終的に被覆は、不可能である。
【0011】
ドイツ連邦共和国特許第102005014590号明細書(2006)には、同様に置換トリアジンの分解を基礎とする1つの方法が提案されている。この場合も、清浄化されていない生成物が存在する。望ましくないハロゲン化物汚染物質が見出され、このIR分光法は、明瞭で明らかに広幅のバンドを3000cm-1〜3700cm-1の間に示す。従って、この場合も水素含有調製物が問題となっていると言わなければならない。
【0012】
WO 2006/087411(2006)には、アルカリ金属ロダン化物を分解し、カルボニトリドを製造することが提案されている。提案された方法は、既に1998年にPurdy et al.によって刊行物に記載されたものであるが、このWO 2006/087411に示された推測は、Purdy et al.の結果とは明らかに異なる。このWO 2006/087411には、Purdy et al.の証言を覆すような固有の測定法は、明らかに証明されていない。全ての場合に、公知でないアルカリ金属塩は、水またはプロトン性溶剤で洗浄除去されなければならない。これは、公知技術水準により、調製物中の検出可能なOHまたはNH官能基を生じる。また、被覆の製造は、前記方法では殆ど達成することができない。
【0013】
従って、本発明の課題は、水素不含の炭素窒化物を準備することにある。
【0014】
課された課題は、工程(i)水素不含の無機イソシアネートを準備し、および(ii)水素不含の無機イソシアネートを熱処理することを含む、炭素窒化物を製造する方法によって解決された。この場合、この水素不含の無機イソシアネートは、CO2抽出によって炭素窒化物に変換される。
【0015】
本発明によれば、水素不含の炭素窒化物を製造する方法が準備される。本発明による方法によれば、殊に炭素窒化物の全質量に対して水素の割合を1質量%未満、有利に0.1質量%未満、さらに有利に0.01質量%未満有する炭素窒化物を得ることができる。殊に、完全に水素不含である炭素窒化物が製造される。
【0016】
このような水素不含の炭素窒化物は、本発明によれば、出発物質として水素不含の無機イソシアネートが使用されることにより得られる。更に、本発明によれば、このような水素不含の無機イソシアネートは、熱処理によってCO2抽出下に炭素窒化物に変換されることが確認された。従って、生成物中で水素が不在であることは、本発明によれば、水素不含の反応体を使用することによって保証される。
【0017】
好ましくは、熱処理は、保護ガスの下、例えばアルゴンまたは窒素の下で行なわれる。この場合には、専らCO2が分解される。熱処理は、特に500℃まで、有利に470℃まで、さらに有利に450℃までの温度で行なわれる。反応のために、出発物質は、特に少なくとも200℃、有利に少なくとも300℃、なお有利に少なくとも400℃の温度で処理される。
【0018】
本発明による方法によれば、炭素窒化物、殊に式CNの炭素窒化物が製造され、この場合xは、0.1〜1.33である。このような炭素窒化物は、緻密に三次元で高度に架橋された無機マクロ分子であり、この無機マクロ分子は、特に粉末または被覆の形で存在する。特に、炭素窒化物は、専ら原子CおよびNから構成されている。得られた炭素窒化物は、特にxが0.5〜1.33の範囲内であり、有利にxが1〜1.33の範囲内である化学量論式を有する。最も好ましくは、化学量論式CN1.33(C34に相当する)が存在する。
【0019】
本発明による方法によれば、炭素窒化物を大量に、例えば0.1〜1gの量で簡単な反応順序によって製造することが可能である。しかし、炭素窒化物を被覆または被膜の形で、殊に適当な支持体上に形成することも可能である。
【0020】
特に好ましくは、純粋な無機イソシアネートは、よりいっそう高い温度で保護ガス(例えば、アルゴンまたは窒素)の下で重縮合される。この場合には、専らCO2が分解される。
【0021】
反応経過中に、バッチ量は、特に一定の間隔、例えば全部で6時間〜10時間、殊に全部で8時間で冷却され、微粉砕され、例えば乳鉢で破砕され、できるだけ完全な反応が保証される。重縮合の全時間は、8〜24時間である。常圧下(p=1気圧)で、縮合は、500℃の温度で実施されてよい。好ましくは、最大475℃、特に有利に最大450℃である。高圧条件(1気圧を上廻るp)の使用は、よりいっそう高い温度を必要とする。
【0022】
重縮合は、適当な溶剤または分散剤中、例えば高沸点の液状溶剤(特に、130℃を上廻る沸点を有する)、イオン性液体、塩溶融液等中で選択的に実施されてもよいし、同時に実施されてもよい。しかし、これは、好ましくない。更に、重縮合は、減圧下で実施されてよい。しかし、これも好ましくない。
【0023】
熱処理は、本発明によれば、有利に触媒量の水銀の存在下で行なわれる。特に好ましくは、熱処理は、水銀触媒で保護ガスの雰囲気下で行なわれる。
【0024】
反応の1つの好ましい実施態様は、純粋な固体のイソシアネートを水銀(Hg)触媒で乾燥窒素の雰囲気下で閉鎖された容器(オートクレーブ、ガラスアンプル)中で反応させることにある。
【0025】
もう1つの好ましい実施態様は、イソシアネートを有機溶剤中、殊に極性の非プロトン性溶剤中に分散させることにある。特に好ましくは、溶剤としてジエチルエーテルまたはアセトニトリルが使用される。数分間の攪拌後、被覆に適している粘稠なゾルが得られる。被覆後、溶剤は、蒸発され、分離された無機マクロ分子は、殊に保護ガス、例えばN2の下で圧縮される。
【0026】
イソシアネートを基礎とする反応体として、殊に全ての明らかに水素不含の代表例がこれに該当し、この代表例からCO2抽出によって実験式"C34"の固体が生じる。これは、例えば分子状のモノマーのイソシアネート、例えばシアノゲン−イソシアネート、トリスイソシアネート−s−トリアジンまたはこれから生じるオリゴマー(同伴物)ならびにマクロ分子状ポリイソシアネート(C22O)xまたは[(C33)(NCO)3xを含み、この場合xは、1〜500、殊に3〜100、有利に5〜50、殊に有利に10〜40の整数である。好ましいのは、ポリイソシアネートの使用、特に有利にポリマー(C22O)の使用である。反応体は、周知のように感湿性であり、それに応じて保護ガス条件下で取り扱われる。適当な保護ガスを用いて準備し、保証し、ならびに作業する方法は、当業者に公知である。
【0027】
(C22O)xは、数多くの方法により製出可能である。これは、例えばXCN(X=F、Cl、Br、I)と元素状イソシアネートE(NCO)xとの反応を含む。このために適した元素は、例えばLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、B、Al。Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、P、Cu、Ag、Au、Znである。元素のイソシアネートは、公知の複分解反応によって利用可能である。好ましいのは、CICNと元素状イソシアネートとの反応であり、特に好ましいのは、CICNとAgNCOとの反応である。別の方法は、CuNCO(銅イソシアネート)またはAgNCO(銀イソシアネート)を真空条件下で熱分解することにある。AgNCOを使用することは、好ましい。もう1つの方法は、シアナミドをカルボニルビスイミダゾール(スターブス試薬Staabs Reagenz)
[(C33)(NCO)3xは、C33Cl3(塩化シアヌル)とAgNCOとの反応、またはC33(NH23(メラミン)と塩化オキサリルまたはホスゲンとの反応によって製造することができる。好ましいのは、熱的に誘発されるロッセン転位による相応するアシルアジドの熱分解である。
【0028】
イソシアネートを製出するための別の公知方法は、当業者に公知であり、同様に使用されてよい。
【0029】
こうして製出された(ポリマーの)イソシアネートは、感湿性化合物である。この感湿性化合物は、IR、UV、MS、NMRおよび元素分析により明らかになるように特徴付けられてよい。元素分析およびIR分光法は、特に有意義である。IRにおいて、C22Oの場合に特性を示すバンドは、2288cm-1、2342cm-1、1793cm-1および1382cm-1に見出すことができる。要求される、水素の不在は、N−H、O−HまたはC−Hバンドの完全な欠如によって保証される。C22Oのための元素分析は、次の値を生じる[計算値]:C:35.47質量%[35.31]、N:41.51質量%[41.18]、O:19.30質量%[23.52]。式C220.9が得られる。汚染物質は、検出することができない。これは、比較のラザフォード後方散乱分光実験によっても実証される。
【0030】
無色または黄色の化合物は、CO2を除いて100℃を上廻るTから分解を開始する。この発熱反応は、TG、DSCまたはDTA−MSにより追跡することができる。別の分解生成物は、発生しない。この重縮合は、有機化学において十分に公知であり、
2 R−NCO → R−NCN−R + CO2
で示される類似体のカルボジイミドの製出に使用される。
【0031】
よりいっそう高い温度で、多くの場合に公知のポリカルボジイミドは、HCN、(CN)2、N2の分離下に、またはNH3の分離下にも分解する。最終的に、遊離(黒鉛系)炭素が生じる。本発明の好ましい熱的プロセスは、理想的に完璧に進行するCO2抽出を、相応するカルボニトリドの熱的断片化を同時に中断しながら保証することにある。
【0032】
そのために、出発物質のイソシアネート、例えば黄色の粉末(C22O)は、有利に反応空間内、例えば加熱されたガラスアンプル中に充填され、このガラスアンプルは、保護ガス、例えば窒素の下で融解される。それによって、気密の反応空間が存在する。同様に、好ましくは、鋼製オートクレーブが使用されてよい。閉鎖された条件は、ポリイソシアネートの低級オリゴマーの昇華、ひいては全化学量論式の変化を阻止する。更に、形成されたCO2は、効率的に導出することができないので、熱分解を少なくとも1回中断し、反応空間を開き、およびCO2を逃出させることが必要である。更に、この固体は、機械的に均質化され、保護ガス、例えばN2の下で閉鎖された系中で再び熱分解に掛けられる。好ましくは、重縮合は、2回中断される。特に好ましくは、3回中断される。反応は、最大500℃で実施され、遅くとも24時間後に終結される。生じるC34の密度は、2.0g/cm3〜2.3g/cm3、殊に2.0g/cm3である。
【0033】
本方法の好ましい変法において、イソシアネート、殊にポリイソシアネート(C22O)には、なお元素状水銀の触媒量、例えば元素状水銀の液滴が添加され、熱分解は、前記記載と同様に実施される。反応後に、液滴は、機械的に除去され、粉末は、150℃〜250℃、殊に200℃で真空中で加熱される。更に、XRDおよびEDXにより、Hg汚染物質は、もはや確認することができない。密度は、2.0g/cm3〜2.3g/cm3、殊に2.3g/cm3である。
【0034】
従って、本発明により得られる炭素窒化物は、特に少なくとも2.0g/cm3、有利に少なくとも2.1g/cm3、なおいっそう有利に少なくとも2.2g/cm3、殊に有利に少なくとも2.3g/cm3の密度を有する。
【0035】
この触媒法は、Hgなしの重縮合よりも高い密度を有する網状組織を生じることが判明する。これまで元素状燐の場合にのみ観察された前記圧縮は、意外なことにC34の場合に類似の好ましい効果を生じる。これは、これまでの知識水準からは導き出すことができなかった。それというのも、元素状の結晶性燐と非晶質の二元性化合物C34との間には、明らかな化学的類似性が存在していないからである。何らかの理論に関連付けることなしに、Hgの金属表面は、無機マクロ分子の化学的結合系の電子との共鳴を生じる状態にあることを推測することができる。これは、電子形成または結合形成ならびに効率的な三次元結合に貢献する転位反応を可能にする。高い密度の網状組織(効率的な結合)は、高圧技術によりC34の結晶性の変形を製出するための強制的な前提条件である。しかし、実際に公知の非晶質C−N−網状組織は、2.0g/cm3未満の密度を有する。従って、本発明による方法は、非晶質のC−N−網状組織の合成の重要な改善である。
【0036】
他の選択可能な方法の実施態様において、無機イソシアネートは、適当な極性の溶剤中に分散される。これは、適当な溶剤中でオリゴマー化され、および場合により親液性コロイドを形成する分子状イソシアネートを重合することによって有利に行なわれる。好ましくは、非プロトン性の極性溶剤、例えばジエチルエーテルまたはアセトニトリルが適当な蒸気圧で使用される。溶剤混合物が使用されてもよい。溶剤混合物が被覆の品質に対して良好な影響を及ぼすことは、当業者に公知であり、さらに説明する必要はない。場合により溶液中でのコロイド状の構造、即ちゾルは、室温でさらに老化し、したがって、溶液の粘度は、一定に上昇し、このことは、レオロジー的に追跡することができる。この場合、色は、黄色からオレンジ色へ変化する。適当な粘度(ゲル点に近い)の場合、ゾルは、糸を引くようになり、支持体の被覆に使用されうる。更に、老化の経過中に、溶液は、凝固し、オレンジ色のゲルに変わる。数日後に、シネレーゼ(Syneraese=Trennung von festen und fluessigen Bestandteilen固体成分と液体成分との分離)が明らかになる。溶剤貧有の暗オレンジ色のゲルは、無色の溶剤と分離する。溶剤をゲルでむしろ閉じ込めうる、即ち溶剤がゲルを浸透しえないように、ゲルは、効率的に架橋されているかまたは毛管系は、小さい。このような方法は、ゾルゲル法とも呼ばれる。
【0037】
被覆は、公知方法によって、例えば選択的に噴霧、浸漬または遠心分離によって支持体上に施与されうる。また、刷毛塗りまたはブラシ掛けが可能である。適当な支持体は、例えばガラスおよびセラミックならびに金属である。
【0038】
例えば、室温で乾燥された層は、ポリマーキセロゲルの閉鎖された緻密な被覆を形成する。キセロゲルについてのIR分光法は、室温で常になお溶剤が存在していることを教示する。溶剤の除去ならびに重縮合の開始は、同時に進行する反応であり、析出された被膜の均質性を保証するか、または"白亜化効果"の発生を阻止する。
【0039】
生じる褐色の粉末は、目立って加水分解敏感性ではない。この化合物は、電気絶縁体である。EPR分光法は、炭素原子に対して常磁性中心の存在を指摘する(g=2.0039)。走査電子顕微鏡写真は、マクロ多孔質組織を有する非晶質網状組織の存在を示す。元素分析は、次の値を生じる:[C34に対する計算値]:C:39.06質量%、[39.14質量%];N:59.21質量%、[60.86質量%];O:1.73質量%[0.0質量%]。
【0040】
IRにおいては、3000cm-1を上廻る波数の場合にバンドを見ることができず、即ちカルボニトリドは、水素不含である。1650〜1250cm-1のバンドならびに811cm-1でのシャープなバンドを見出すことができる。全く意外なことに、分光法から、無機ポリカルボジイミドが形成されないことが明らかに明確に判明する。無機イソシアネートは、有機代表例と同じ反応経過を示さない。無機ポリイソシアネートのこの特殊な挙動は、知識水準から導き出すことができず、本発明による反応経路は、検出可能なカルボジイミドまたはシアナミドを全く供給しない。むしろ、この経路でトリアジン構造またはヘパジン構造が形成され、そのために殊にバンドは811cm-1であるという驚異的な事実が判明する。この驚異的な反応経路は、比較的に熱安定性のC−N−網状組織を可能にする。有機化学から、ポリカルボジイミドが既に250℃から分解しうることは、公知である。
【0041】
本発明により得られた炭素窒化物は、特に専らCとNとからなり、殊にH、Hal(例えば、F、Cl、Br、I)、Si、O、Sおよびアルカリ金属を含まない。炭素窒化物は、殊にそれぞれ全質量に対して全ての前記元素を2質量%未満、殊に1質量%未満、有利に0.1質量%未満有する。
【0042】
更に、1つの確定された水素不含の、殊に均質なC−N−網状組織が水素含有のC−N−網状組織よりも著しく僅かな熱安定性を有することは、全く驚異的なことであることが確認された。
【0043】
メレム、メラムおよびメロンの公知の段階に亘って進行する、系C−N−H中での熱分解は、600℃の温度になるまで実施されるが、これは、系C−N中では明らかに不可能である。水素不含のC34は、450℃から徐々に分解を開始する。本発明によるC34についての標準DTA(加熱速度10K/分)が600℃までの安定性をシミュレートした場合も、正確な研究によって、C34は、500℃で11時間で質量の4.8%を失なうことが判明した。質量損失は、よりいっそう高い温度で劇的に上昇する。即ち、550℃で11時間後に既に25%が崩壊し、600℃で最終的にはさらに85%が崩壊する。
【0044】
専門文献において討論されかつ当業界内で充分に受け入れられた、純粋なC34を実現するための経路が水素含有ポリアミドのメロンに到るまで進行するので(脱アンモニア反応Deammonoisierung)、本発明の基礎となる驚異的な認識は、簡単には導き出すことができなかった。実際に、メロン製出の温度条件(T=600℃)下でC34は、既に熱的に不安定である。従って、本発明による経路は、水素不含の反応体を使用することによって、純粋な水素不含C−N−網状組織を提供する。水素含有反応体を使用して水素不含のカルボニトリドが製出されたという報告により、IRにおける全てのO−HバンドまたはN−Hバンドが示されている。更に、前記バンドは、本明細書中に存在するバンドと比較不可能でありかつメロンの温度安定性に近い温度安定性を有する。
【0045】
本発明のもう1つの視点において、殊に被覆プロセスの場合には、C34は、熱制御されて低級カルボニトリドCNx(x1.33未満)に分解されうるかまたは完全に炭素に分解されうる。これは、有利に適当な加熱によってN2の下で450℃を上廻る温度で達成される。この制御された分解は、種々のCNx層の実現を可能にする(0<x<1.33)。熱分解は、有利に500℃〜600℃の間で行なわれる。
【0046】
本発明による炭素窒化物、殊にC34は、475℃を上廻る温度で制御されてCNx、この場合xは1.33未満であるものとし、のカルボニトリドに変換され、および殊に475℃を上廻る温度で制御されて純粋な炭素に変換されうる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】400℃で硬化した、本発明により製造されたC34ポリマーのIRスペクトルを示す線図。
【実施例】
【0048】
次の実施例は、本発明による経路を説明するために使用され、限定されるものでもないし、優遇されるものでもない。プロセスの変更は、当業者に公知であり、同様に本発明によって網羅される。
【0049】
イソシアネートの製出:
1)AgNCOを動的真空(10-3ミリバール)下で750℃で1時間熱分解する。遊離された熱分解ガスを冷却トラップ(液体窒素、T=−196℃)中で凝縮濃縮する。熱分解ガスを室温へ徐々に加熱し、純粋な黄色のポリマーC22Oを供給する。
2)固体のAgNCOを冷却し(ドライアイス/アセトン、T=−76℃)、過剰のClCNを添加する(比1:2)。バッチ量をこの温度で12時間放置し、次に徐々に昇温する。過剰のガス状ClCNが逃出する。AgClとC22Oとの混合物が得られる。
3)メラミンをトルエン中に懸濁させる。それに加えて、過剰の塩化オキサリルを添加する(比1:10)。バッチ量を還流下に4日間煮沸する。黄色の固体を単離し、数回トルエンで洗浄する。純粋なC33(NCO)3が得られる。
4)シアナミドをスターブス試薬(カルボニルビスイミダゾール)(1:1)とアセトニトリル中で反応させる。アセトニトリルおよびイミダゾール中に懸濁されたC22Oが得られる。溶剤を動的真空中で除去する。
【0050】
ポリイソシアネート分散液の製出および使用
無色のC22Oをアセトニトリル中に分散させる(溶剤10gに対して1g)。明黄色の澄明な溶液が生じる。この溶液を、オレンジ色の粘稠な分散液が生じるまで徐々に濃縮する。この溶液は、適当な粘度で被覆プロセスに使用可能になる。ガラス円板(清浄化しかつ脱脂した)を溶液中に浸漬し、30秒間湿潤させ、制御された速度で引き出す。
被膜を室温で保護ガス下で乾燥させる。場合によっては、被覆プロセスを繰り返す。
【0051】
こうして被覆された支持体を流れるN2の下で徐々に450℃になるまで加熱する。褐色の堅牢な手触りの被覆が生じる。
【0052】
高い密度のC34粉末の製出
22O(0.5g)をHg液滴と混合し、ガラスアンプル中に充填する。このガラスアンプルをN2の下で密封し、徐々に450℃になるまで加熱する。8時間後、バッチ量を冷却し、再び均質化し、再び熱処理する。最終的に、褐色の粉末を生じ、この粉末から機械的に混合されたHgを除去する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程
(i)水素不含の無機イソシアネートを準備し、および
(ii)水素不含の無機イソシアネートを熱処理し、その際、この無機イソシアネートをCO2抽出によって炭素窒化物に変換することを含む、炭素窒化物の製造法。
【請求項2】
水素不含の炭素窒化物を製造する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
無機イソシアネートを500℃までの温度で熱処理する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
式CNx〔式中、xは、0.1〜1.33である〕で示される炭素窒化物を製造する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
炭素窒化物を粉末または被覆の形で製造する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
使用された無機イソシアネートは、元素C、NおよびOだけから構成されている、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
無機イソシアネートは、実験式[C22O]xまたは[C33(NCO)3xに対応し、この場合xは、1以上である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
熱処理を閉鎖された気密の容器中で実施する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
熱処理を試料の均質化の目的のために少なくとも1回中断する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
熱処理を触媒量の水銀の存在下で行なう、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
合成工程または清浄化工程において、水素含有成分を生じない、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
イソシアネートを熱処理前に溶剤中に分散させる、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
イソシアネートを極性の非プロトン性溶剤中に分散させる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
イソシアネートをアセトニトリル中に分散させる、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項の記載による得られた、炭素窒化物を含む溶液または分散液ならびに溶剤または分散剤。
【請求項16】
請求項1から14までのいずれか1項の記載により得られた炭素窒化物。
【請求項17】
炭素窒化物において、この炭素窒化物が水素不含であることを特徴とする、炭素窒化物。
【請求項18】
単離された炭素窒化物が少なくとも2.0g/cm3の密度を有する、請求項16または17記載の炭素窒化物。
【請求項19】
単離された炭素窒化物がIRスペクトルにおいてC−H、N−HまたはO−Hバンドを示さない、請求項16から18までのいずれか1項に記載の炭素窒化物。
【請求項20】
単離された炭素窒化物が最大500℃まで熱安定性である、請求項16から19までのいずれか1項に記載の炭素窒化物。
【請求項21】
単離された炭素窒化物がラマンスペクトルにおいて遊離炭素のバンドを示さない、請求項16から20までのいずれか1項に記載の炭素窒化物。
【請求項22】
硬質物質を合成するための出発物質としての請求項16から21までのいずれか1項に記載の炭素窒化物の使用。
【請求項23】
触媒および/または触媒担持材料としての請求項16から21までのいずれか1項に記載の炭素窒化物の使用。
【請求項24】
減摩層としての請求項16から21までのいずれか1項に記載の炭素窒化物の使用。
【請求項25】
磁性機能要素のための腐蝕に抗する、および/または接触により引き起こされた損傷に抗する保護被膜としての請求項16から21までのいずれか1項に記載の炭素窒化物の使用。
【請求項26】
被覆のための請求項15記載の炭素窒化物を含有する溶液または分散液の使用。
【請求項27】
ガラス、セラミックまたは金属からなる支持体を被覆する、請求項26記載の使用。
【請求項28】
被覆を浸漬プロセス、噴霧プロセスまたは遠心分離プロセスにより施与する、請求項26または27記載の使用。
【請求項29】
被覆をブラシ掛けプロセスまたは刷毛塗りプロセスにより施与する、請求項26から28までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項30】
被覆を予め乾燥し、溶剤を除去する、請求項26から29までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項31】
被覆工程を繰り返す、請求項26から30までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項32】
被覆を保護ガスの下で最大500℃の温度になるまで熱的に圧縮する、請求項26から31までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項33】
34を基礎とする被覆を得る、請求項26から32までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項34】
請求項1から14までのいずれか1項の記載または請求項26から33までのいずれか1項の記載による手段によって得られた炭素窒化物被覆。

【図1】
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【公表番号】特表2012−515135(P2012−515135A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545763(P2011−545763)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050574
【国際公開番号】WO2010/081910
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(390040420)マックス−プランク−ゲゼルシャフト・ツア・フェルデルング・デア・ヴィッセンシャフテン・エー・ファオ (54)
【氏名又は名称原語表記】Max−Planck−Gesellschaft zur Foerderung der Wissenschaften e.V.