説明

水素供給ステーション

【課題】水素供給タンク内および車載用水素充填タンク内における水素の蒸発を低減させることができるとともに、水素の利用効率を向上させることができる水素供給ステーションを提供すること。
【解決手段】水素を燃料として走行する車両16に搭載される車載用水素充填タンク17に水素を供給するための水素供給ステーション10であって、その内部にスラッシュ水素Sが貯蔵されるスラッシュ水素貯蔵タンク11と、その一端部が前記スラッシュ水素貯蔵タンク11の内部に位置するように配置されているとともに、その他端部に、前記車載用水素充填タンク17から延びる車両側水素供給ライン18の一端部に取り付けられたカプラ19と着脱可能に構成されたカプラ15を備えた第1の水素供給ライン13とを具備してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池自動車、水素自動車等の水素を燃料として走行する車両に搭載される車載用水素充填タンクに水素を供給するための水素供給ステーションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような水素供給ステーションとしては、車載用水素充填タンクの仕様に応じて水素の充填条件(流量、圧力、状態等)を変更して、車載用水素充填タンクに水素を供給するものが知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−117863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献に開示されている水素供給ステーションでは、車載用水素充填タンクに供給すべき水素が、水素供給タンク内において液体の状態で貯蔵されている。液体水素の沸点は−253℃の為、水素供給タンク内に貯蔵された液体水素が蒸発(ボイルオフ)してしまうことを抑制することができず、水素の利用効率が低減してしまうといった問題点があった。
また、車載用水素充填タンクに充填された水素も液体の状態であるため、車載用水素充填タンク内に貯蔵された液体水素が蒸発(ボイルオフ)してしまうことを抑制することができず、水素の利用効率が低減してしまうといった問題点もあった。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、水素供給タンク内および車載用水素充填タンク内における水素の蒸発を低減させることができるとともに、水素の利用効率を向上させることができる水素供給ステーションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明による水素供給ステーションは、水素を燃料として走行する車両に搭載される車載用水素充填タンクに水素を供給するための水素供給ステーションであって、その内部にスラッシュ水素が貯蔵されるスラッシュ水素貯蔵タンクと、その一端部が前記スラッシュ水素貯蔵タンクの内部に位置するように配置されているとともに、その他端部に、前記車載用水素充填タンクから延びる車両側水素供給ラインの一端部に取り付けられたカプラと着脱可能に構成されたカプラを備えた第1の水素供給ラインとを具備している。
このような水素供給ステーションによれば、スラッシュ水素貯蔵タンクの内部および車載用水素充填タンクの内部には、潜熱および顕熱が大きく、蒸発(ボイルオフ)しにくいスラッシュ水素が貯蔵されていることとなるので、スラッシュ水素貯蔵タンク内および車載用水素充填タンク内に貯蔵された水素の蒸発(ボイルオフ)を低減させることができ、水素の利用効率を向上させることができる。
また、水素供給ステーションのスラッシュ水素貯蔵タンクの内部に、別の場所(例えば、スラッシュ水素を製造する製造工場等)で製造されたスラッシュ水素を充填(補充)する場合、別の場所から水素供給ステーションまで、スラッシュ水素の状態で移送(運搬)することができるので、移送中におけるスラッシュ水素の蒸発を低減させることができ、水素の利用効率を向上させることができる。
【0006】
上記水素供給ステーションにおいて、前記第1の水素供給ラインに、車載用水素充填タンクに供給される水素の固化率を調整する固化率調整手段が設けられているとさらに好適である。
このような水素供給ステーションによれば、固化率調整手段により車載用水素充填タンクに充填される水素の固化率(スラッシュ水素の内、固体水素が占める割合)を所望の固化率となるように調整することができる。したがって、車両をあまり利用しないユーザーの場合には、固化率の高いスラッシュ水素を車載用水素充填タンクに充填することができ、車載用水素充填タンク内に充填された水素が蒸発(ボイルオフ)してしまう割合を低減させることができる。一方、車両を頻繁に利用するユーザーの場合には、固化率の低いスラッシュ水素を車載用水素充填タンクに充填することができる。
【0007】
上記水素供給ステーションにおいて、その内部に液体水素が貯蔵される液体水素貯蔵タンクと、その一端部が前記液体水素貯蔵タンクの内部に位置するように配置されているとともに、その他端部が前記固化率調整手段に接続された第2の水素供給ラインとを具備しているとさらに好適である。
このような水素供給ステーションによれば、固化率調整手段において、スラッシュ水素貯蔵タンクから圧送されてきたスラッシュ水素と、液体水素貯蔵タンクから圧送されてきた液体水素とを混合することにより、所望の固化率に調整された水素を得るようにしているので、所望の固化率に調整された水素をより早く(短時間で)得ることができるとともに、エネルギーロスの低減化を図ることができる(すなわち、液状の水素をスラッシュ状の水素にするために要したエネルギーが極力無駄にならないようにすることができる)。
【0008】
上記水素供給ステーションにおいて、前記スラッシュ水素貯蔵タンクに密度計が設置されているとともに、前記スラッシュ水素貯蔵タンクと前記固化率調整手段とを結ぶ前記第1の水素供給ラインに第1の流量計が、前記液体水素貯蔵タンクと前記固化率調整手段とを結ぶ前記第2の水素供給ラインに第2の流量計が、前記固化率調整手段と前記第1の水素供給ラインの他端部に配置されたカプラとを結ぶ第1の水素供給ラインに第3の流量計が設けられているとさらに好適である。
このような水素供給ステーションによれば、密度計によりスラッシュ水素貯蔵タンクの内部に貯蔵されているスラッシュ水素の密度を正確に計測することができるとともに、第1の流量計、第2の流量計、および第3の流量計により、スラッシュ水素貯蔵タンクから固化率調整手段に流れるスラッシュ水素の流量、液体水素貯蔵タンクから固化率調整手段に流れる液体水素の流量、および水素供給ステーションから車両の車載用水素充填タンクに供給される固化率の調整された水素の流量を正確に計測することができる。
これにより、車両の車載用水素充填タンクに供給される水素の固化率をより正確に、かつ、容易に調整することができる。
【0009】
上記水素供給ステーションにおいて、前記スラッシュ水素貯蔵タンクに撹拌機が設置されているとさらに好適である。
このような水素供給ステーションによれば、撹拌機によりスラッシュ水素貯蔵タンクの内部に貯蔵されているスラッシュ水素が、常に適切な流動性を有するように管理(調整)されているので、所望の量のスラッシュ水素を、第1の水素供給ラインを介していつでも確実に固化率調整手段に圧送することができる。
【0010】
上記水素供給ステーションにおいて、前記第1の水素供給ラインの一端部に、循環ポンプ、取り出し用ポンプ、循環兼取り出し用ポンプのいずれかが配置されているとさらに好適である。
このような水素供給ステーションによれば、循環ポンプを用いる事によりスラッシュ水素貯蔵タンク内でスラッシュ水素が凝縮している場合には、その凝縮がほぐされるようになっている。また、取り出しポンプを用いる事で、取り出し用ラインの一端開口部からポンプの内部に取り入れられ、第1の水素供給ラインに吐出されるようになっている。一方、循環兼取り出し用ポンプにおいては、循環兼取り出し用ポンプが循環用ポンプとして使用される場合には、入口からポンプの内部に取り入れられ、出口から排出されるようになっている。このとき、入口からポンプの内部に取り入れられたスラッシュ水素が凝縮している場合には、ポンプ内においてその凝縮がほぐされるようになっている。一方、スラッシュ水素貯蔵タンクの内部に貯蔵されているスラッシュ水素は、循環兼取り出し用ポンプが取り出し用ポンプとして使用される場合には、取り出し用ラインの一端開口部からポンプの内部に取り入れられ、第1の水素供給ラインに吐出されるようになっている。
このように、循環兼取り出し用ポンプが循環用ポンプとして使用される場合に、入口からポンプの内部に取り入れられたスラッシュ水素が、ポンプ内においてその凝縮がほぐされて、常に適切な流動性を有するように管理(調整)されているので、所望の量のスラッシュ水素を、第1の水素供給ラインを介していつでも確実に固化率調整手段に圧送することができる。
【0011】
上記水素供給ステーションにおいて、前記スラッシュ水素貯蔵タンクと前記第1の流量計との間に位置する前記第1の水素供給ラインに、撹拌機が配置されているとさらに好適である。
このような水素供給ステーションによれば、撹拌機によりスラッシュ水素貯蔵タンクから固化率調整手段に送出されるスラッシュ水素が、適切な流動性を有するように管理(調整)されることとなるので、所望の量のスラッシュ水素を、第1の水素供給ラインを介して確実に固化率調整手段に圧送することができる。
【0012】
上記水素供給ステーションにおいて、前記スラッシュ水素貯蔵タンクの重量を計測するスラッシュ水素貯蔵タンク重量計測装置と、前記液体水素貯蔵タンクの重量を計測する液体水素貯蔵タンク重量計測装置とを備えているとさらに好適である。
このような水素供給ステーションによれば、スラッシュ水素貯蔵タンク重量計測装置および液体水素貯蔵タンクにより、水素供給ステーションから車両に供給された水素の総量を把握することができる。
【0013】
上記水素供給ステーションにおいて、前記車載用水素充填タンク内の水素の情報、または前記車載用水素充填タンク内に供給しようとする水素の情報に基づいて、前記車載用水素充填タンクに、所望の固化率に調整された水素が自動的に供給されるように構成されているとさらに好適である。
このような水素供給ステーションによれば、車載用水素充填タンク内の水素の情報や、車載用水素充填タンク内に供給しようとする水素の情報に基づいて、所望の固化率に調整された水素が自動的に車載用水素充填タンク内に供給することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スラッシュ水素貯蔵タンク内および車載用水素充填タンク内における水素の蒸発を低減させることができるとともに、水素の利用効率を向上させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明による水素供給ステーションの第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本実施形態による水素供給ステーション10の概略構成図である。図1に示すように、本実施形態による水素供給ステーション10は、スラッシュ水素貯蔵タンク(以下、「SLHタンク」という。)11と、加熱器(加熱手段:固化率調整手段)12と、水素供給ライン(第1の水素供給ライン)13とを主たる要素として構成されたものである。
【0016】
SLHタンク11は、圧送式のタンクであり、断熱真空層(図示せず)と、低温流体貯蔵槽(図示せず)とを備えている。
断熱真空槽は、その内部が真空とされ、かつその内面に、例えば、銅板等の輻射シールド板(図示せず)が貼られた容器であり、この断熱真空槽の内部には、低温流体貯蔵槽が収容されるようになっている。
低温流体貯蔵層は、その内部に低温(例えば、13.8K)のスラッシュ水素(スラッシュ状の水素:固体水素と液体水素とがシャーベット状に混合したものであり、液体水素に比べて密度が大きく、保有する寒冷量が大きいもの)Sを貯蔵するものである。
そして、低温流体貯蔵層の内部に貯蔵されたスラッシュ水素Sは、低温流体貯蔵層の内部圧力により水素供給ライン13内に押し出されるようになっている。
また、SLHタンク11には、液面計14が取り付けられており、作業者がスラッシュ水素Sの残量を一目で把握できるようになっている。
【0017】
熱交換器12は、水素供給ライン13を介して導かれたスラッシュ水素Sを昇温(あるいは加熱)して過冷却状態(例えば、18K)の過冷却水素にするものである。
水素供給ライン13は、その一端部がSLHタンク11の底部(すなわち、低温流体貯蔵槽の底部)に位置するように配置されているとともに、その他端部には、カプラ(継手)15が取り付けられている。
カプラ15は、車両(例えば、燃料電池自動車や水素エンジン自動車等)16に搭載された車載用水素充填タンク17から延びる車両側水素供給ライン18の一端部に取り付けられたカプラ19と接続可能(着脱可能)に構成されており、水素供給ステーション10から車載用水素充填タンク17に過冷却状態とされた過冷却水素を充填(補充)できるようになっている。
【0018】
本実施形態による水素供給ステーション10によれば、SLHタンク11の内部(すなわち、低温流体貯蔵槽の内部)には、スラッシュ水素Sが貯蔵されていることとなるので、SLHタンク11内に貯蔵されたスラッシュ水素Sの蒸発(ボイルオフ)を低減させることができ、水素の利用効率を向上させることができる。
また、水素供給ステーション10のSLHタンク11の内部に、別の場所(例えば、スラッシュ水素Sを製造する製造工場等)で製造されたスラッシュ水素Sを充填(補充)する場合、別の場所から水素供給ステーション10まで、スラッシュ水素Sの状態で移送(運搬)することができるので、移送中におけるスラッシュ水素Sの蒸発を低減させることができ、水素の利用効率を向上させることができる。
さらに、水素供給ライン13の途中に熱交換器12が配置されており、車載用水素充填タンク17に充填される水素の固化率(スラッシュ水素S(固体水素)が占める割合)を所望の固化率となるように調整することができる。したがって、車両16をあまり利用しないユーザーの場合には、固化率の高い水素を車載用水素充填タンク17に充填することができ、車載用水素充填タンク17内に充填された水素が蒸発(ボイルオフ)してしまう割合を低減させることができる。一方、車両16を頻繁に利用するユーザーの場合には、固化率の低い水素を車載用水素充填タンク17に充填することができる。
【0019】
本発明による水素供給ステーションの第2実施形態を、図2を用いて説明する。
図2は本実施形態による水素供給ステーション20の概略構成図である。図2に示すように、本実施形態による水素供給ステーション20は、SLHタンク11と、水素供給ライン13,13aと、液体水素貯蔵タンク(以下、「LHタンク」という。)21と、固化率調整器(固化率調整手段)22とを主たる要素として構成されたものである。
なお、前述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0020】
LHタンク21は、圧送式のタンクであり、断熱真空層(図示せず)と、低温流体貯蔵槽(図示せず)とを備えている。
断熱真空槽は、その内部が真空とされ、かつその内面に、例えば、銅板等の輻射シールド板(図示せず)が貼られた容器であり、この断熱真空槽の内部には、低温流体貯蔵槽が収容されるようになっている。
低温流体貯蔵層は、その内部に低温(例えば、20.3K)の液体水素(液状の水素)Lを貯蔵するものである。
そして、低温流体貯蔵層の内部に貯蔵された液体水素Lは、低温流体貯蔵層の内部圧力により水素供給ライン(第2の水素供給ライン)13a内に押し出されるようになっている。
また、LHタンク21には、図示しない液面計が取り付けられており、作業者が液体水素Lの残量を一目で把握できるようになっている。
【0021】
水素供給ライン13aは、その一端部がLHタンク21の底部(すなわち、低温流体貯蔵槽の底部)に位置するように配置されているとともに、その他端部が固化率調整器22に接続された配管である。
【0022】
固化率調整器22は、水素供給ライン13を介してSLHタンク11から圧送されてきたスラッシュ水素Sと、水素供給ライン13aおよびLHタンク21から圧送されてきた液体水素Lとを、所望の固化率(スラッシュ水素S(固体水素)が占める割合)となるように調整(混合)するものである。そして、この固化率調整器22により所望の固化率に調整された水素が、水素供給ライン13、カプラ15、カプラ19、および車両側水素供給ライン18を通って車載用水素充填タンク17に充填(補充)されるようになっている。
【0023】
本実施形態による水素供給ステーション20によれば、SLHタンク11から圧送されてきたスラッシュ水素Sと、LHタンク21から圧送されてきた液体水素Lとを混合することにより、所望の固化率に調整された水素を得るようにしているので、所望の固化率に調整された水素を、第1実施形態のものよりも早く(短時間で)得ることができるとともに、エネルギーロスの低減化を図ることができる(すなわち、気状の水素あるいは液状の水素をスラッシュ状の水素にするために要したエネルギーが極力無駄にならないようにすることができる)。
その他の作用効果は、前述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0024】
本発明による水素供給ステーションの第3実施形態を、図3を用いて説明する。
本実施形態における水素供給ステーション30は、SLHタンク11に密度計31が設置されているとともに、SLHタンク11と固化率調整器22とを結ぶ水素供給ライン13に第1の流量計32が、LHタンク21と固化率調整器22とを結ぶ水素供給ライン13aに第2の流量計33が、固化率調整器22とカプラ15とを結ぶ水素供給ライン13に第3の流量計34が設けられているという点で前述した第2実施形態のものと異なる。その他の構成要素については前述した第2実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、前述した実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0025】
密度計31は、例えば、静電容量型の密度計測装置(例えば、特許第3572200号公報に開示されたもの)や、マイクロ波を利用した密度計測装置(例えば、特許第3652890号公報や特許第3670847公報に開示されたもの)等である。
第1の流量計32、第2の流量計33、および第3の流量計34は、例えば、マイクロ波を利用した導波管型の流量計(例えば、(大平勝秀・中道憲治・木原勇一、「マイクロ波を利用したスラッシュ水素用導波管型流量計の開発研究」、日本機械学会論文集(B編)69巻648号(2003-8)、p.192-198)に開示されたもの)である。
【0026】
本実施形態による水素供給ステーション30によれば、密度計31によりSLHタンク11の内部(すなわち、低温流体貯蔵槽の内部)に貯蔵されているスラッシュ水素Sの密度を正確に計測することができるとともに、第1の流量計32、第2の流量計33、および第3の流量計34により、SLHタンク11から固化率調整器22に流れるスラッシュ水素Sの流量、LHタンク21から固化率調整器22に流れる液体水素Lの流量、および水素供給ステーション30から車両16の車載用水素充填タンク17に供給される固化率の調整された水素の流量を正確に計測することができる。
これにより、上述した第1実施形態および第2実施形態のものよりも車両16の車載用水素充填タンク17に供給される水素の固化率をより正確に、かつ、容易に調整することができる。
その他の作用効果は、前述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0027】
本発明による水素供給ステーションの第4実施形態を、図4を用いて説明する。
本実施形態における水素供給ステーション40は、SLHタンク11に撹拌機(「粉砕機」あるいは「分散機」ともいう。)41が設置されているという点で前述した第3実施形態のものと異なる。その他の構成要素については前述した第3実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、前述した実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0028】
撹拌機41は、入口配管(図示せず)から内部に取り入れられた、凝縮したスラッシュ水素Sを、機械的に刃等を回転させる方法、もしくは超音波振動子等(図示せず)を振動させる方法により粉砕(分散)した後、出口配管(図示せず)から凝縮がほぐされたスラッシュ水素Sを排出するように構成されたものである。
【0029】
本実施形態による水素供給ステーション40によれば、撹拌機41によりSLHタンク11の内部(すなわち、低温流体貯蔵槽の内部)に貯蔵されているスラッシュ水素Sが、常に適切な流動性を有するように管理(調整)されているので、所望の量のスラッシュ水素Sを、水素供給ライン13を介していつでも確実に固化率調整器22に圧送することができる。
その他の作用効果は、前述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0030】
本発明による水素供給ステーションの第5実施形態を、図5を用いて説明する。
本実施形態における水素供給ステーション50は、SLHタンク11に循環兼取り出し用ポンプ(もしくは循環ポンプ、取り出し用ポンプ)51が、LHタンク21に取り出し用ポンプ51aがそれぞれ設置されているという点で前述した第3実施形態のものと異なる。その他の構成要素については前述した第3実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、前述した実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0031】
循環兼取り出し用ポンプ51は、SLHタンク11の底部の底部に配置されているとともに、水素供給ライン13の一端部に接続されている。この循環兼取り出し用ポンプ51には、循環用ライン52と、取り出し用ライン53とが接続されている。そして、SLHタンク11の内部に貯蔵されているスラッシュ水素Sは、循環兼取り出し用ポンプ51が循環用ポンプとして使用される場合には、入口52aからポンプ51の内部に取り入れられ、出口52bから排出されるようになっている。このとき、入口52aからポンプ51の内部に取り入れられたスラッシュ水素Sが凝縮している場合には、ポンプ51内においてその凝縮がほぐされるようになっている。また、SLHタンク11の内部に貯蔵されているスラッシュ水素Sは、循環兼取り出し用ポンプ51が取り出し用ポンプとして使用される場合には、取り出し用ライン53の一端開口部からポンプ51の内部に取り入れられ、水素供給ライン13に吐出されるようになっている。
一方、取り出し用ポンプ51aは、LHタンク21の底部に配置されているとともに、水素供給ライン13aの一端部に接続されている。この取り出し用ポンプ51aには、取り出し用ライン53が接続されている。そして、LHタンク21の内部に貯蔵されている液体水素Lは、取り出し用ライン53の一端開口部からポンプ51aの内部に取り入れられ、水素供給ライン13aに吐出されるようになっている。
【0032】
本実施形態による水素供給ステーション50の作用効果は、前述した第4実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
なお、本実施形態では、SLHタンク11に取り出し用ポンプとして機能する循環兼取り出し用ポンプ51が、LHタンク21に取り出し用ポンプ51aがそれぞれ配置されているので、SLHタンク11およびLHタンク21はそれぞれ圧送式のタンクでなくてもよい。
【0033】
本発明による水素供給ステーションの第6実施形態を、図6を用いて説明する。
本実施形態における水素供給ステーション60は、SLHタンク11と第1の流量計32との間(第1の流量計32の上流側近傍)に位置する水素供給ライン13に、第4実施形態のところで説明した撹拌機41が配置されているという点で前述した第5実施形態のものと異なる。その他の構成要素については前述した第5実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、前述した実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0034】
本実施形態による水素供給ステーション60によれば、撹拌機41によりSLHタンク11から固化率調整器22に送出されるスラッシュ水素Sが、適切な流動性を有するように管理(調整)されることとなるので、所望の量のスラッシュ水素Sを、水素供給ライン13を介して確実に固化率調整器22に圧送することができる。
その他の作用効果は、前述した第5実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0035】
本発明による水素供給ステーションの第7実施形態を、図7を用いて説明する。
本実施形態における水素供給ステーション70は、第2のLHタンク71を備えているという点で前述した第6実施形態のものと異なる。その他の構成要素については前述した第6実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、前述した実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0036】
第2のLHタンク71は、圧送式のタンクであり、断熱真空層(図示せず)と、低温流体貯蔵槽(図示せず)とを備えている。
断熱真空槽は、その内部が真空とされ、かつその内面に、例えば、銅板等の輻射シールド板(図示せず)が貼られた容器であり、この断熱真空槽の内部には、低温流体貯蔵槽が収容されるようになっている。
低温流体貯蔵層は、その内部に低温(例えば、13.8K)の液体水素(液状の水素)Lを貯蔵するものである。
そして、低温流体貯蔵層の内部に貯蔵された液体水素Lは、低温流体貯蔵層の内部圧力により水素供給ライン(第2の水素供給ライン)13b内に押し出されるようになっている。
また、第2のLHタンク71には、図示しない液面計が取り付けられており、作業者が液体水素Lの残量を一目で把握できるようになっている。
【0037】
水素供給ライン13bは、その一端部が第2のLHタンク71の底部(すなわち、低温流体貯蔵槽の底部)に位置するように配置されているとともに、その他端部が固化率調整器22に接続された配管である。また、水素供給ライン13bには第4の流量計(第2の流量計)72が配置されている。
【0038】
本実施形態による水素供給ステーション70によれば、SLHタンク11から圧送されてきたスラッシュ水素Sと、LHタンク21から圧送されてきた液体水素Lと、第2のLHタンク71から圧送されてきた液体水素Lとを混合することにより、所望の固化率に調整された水素を得るようにしているので、水素の固化率をよりきめ細やかに調整することができて、ユーザーの希望に十分に応えることができる。
その他の作用効果は、前述した第6実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0039】
本発明による水素供給ステーションの第8実施形態を、図8を用いて説明する。
本実施形態における水素供給ステーション80は、SLHタンク11の重量を計測するSLHタンク重量計測装置81と、LHタンク21の重量を計測するLHタンク重量計測装置82と、車両16の重量を計測する車両重量計測装置83とを備えているという点で前述した第5実施形態のものと異なる。その他の構成要素については前述した第5実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、前述した実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0040】
本実施形態による水素供給ステーション80によれば、SLHタンク重量計測装置81およびLHタンク重量計測装置82により、水素供給ステーション80から車両16に供給された水素の総量を把握することができるとともに、車両重量計測装置83により、車両16に実際に充填された水素の総量を把握することができる。
その他の作用効果は、前述した第5実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0041】
本発明による水素供給ステーションの第9実施形態を、図9を用いて説明する。
本実施形態における水素供給ステーション90は、例えば、車両16の車載用水素充填タンク17内の水素の情報(例えば、液位や密度等の物性値)や、車両16の車載用水素充填タンク17内に供給しようとする水素の情報(例えば、固化率や供給量等)を、無線通信手段や有線通信手段を介して受信する制御器91を備えているという点で前述した第5実施形態のものと異なる。その他の構成要素については前述した第5実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、前述した実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0042】
制御器91は、固化率調整器22、第1の流量計32、第2の流量計33、第3の流量計34、および循環兼取り出し用ポンプ51のそれぞれと電気的に接続されており、これら固化率調整器22、第1の流量計32、第2の流量計33、第3の流量計34、循環兼取り出し用ポンプ51、および取り出し用ポンプ51aとの間で信号のやりとりが行えるようになっている。
【0043】
本実施形態による水素供給ステーション90によれば、例えば、車両16の車載用水素充填タンク17内の水素の情報や、車両16の車載用水素充填タンク17内に供給しようとする水素の情報に基づいて、所望の固化率に調整された水素が自動的に車両16の車載用水素充填タンク17内に供給することができる。
その他の作用効果は、前述した第5実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0044】
なお、本発明は上述した実施形態のものに限定されるものではなく、適宜必要に応じて変更実施および組合せ実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明による水素供給ステーションの第1実施形態の概略構成図である。
【図2】本発明による水素供給ステーションの第2実施形態の概略構成図である。
【図3】本発明による水素供給ステーションの第3実施形態の概略構成図である。
【図4】本発明による水素供給ステーションの第4実施形態の概略構成図である。
【図5】本発明による水素供給ステーションの第5実施形態の概略構成図である。
【図6】本発明による水素供給ステーションの第6実施形態の概略構成図である。
【図7】本発明による水素供給ステーションの第7実施形態の概略構成図である。
【図8】本発明による水素供給ステーションの第8実施形態の概略構成図である。
【図9】本発明による水素供給ステーションの第9実施形態の概略構成図である。
【符号の説明】
【0046】
10 水素供給ステーション
11 スラッシュ水素貯蔵タンク
12 熱交換器(固化率調整手段)
13 第1の水素供給ライン
13a 第2の水素供給ライン
13b 第2の水素供給ライン
15 カプラ
16 車両
17 車載用水素充填タンク
18 車両側水素供給ライン
19 カプラ
20 水素供給ステーション
21 液体水素貯蔵タンク
22 固化率調整器(固化率調整手段)
30 水素供給ステーション
31 密度計
32 第1の流量計
33 第2の流量計
34 第3の流量計
40 水素供給ステーション
41 撹拌機
50 水素供給ステーション
51 循環兼取り出し用ポンプ
60 水素供給ステーション
70 水素供給ステーション
71 液体水素貯蔵タンク
72 第4の流量計(第2の流量計)
80 水素供給ステーション
81 スラッシュ水素貯蔵タンク重量計測装置
82 液体水素貯蔵タンク重量計測装置
90 水素供給ステーション
L 液体水素
S スラッシュ水素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を燃料として走行する車両に搭載される車載用水素充填タンクに水素を供給するための水素供給ステーションであって、
その内部にスラッシュ水素が貯蔵されるスラッシュ水素貯蔵タンクと、
その一端部が前記スラッシュ水素貯蔵タンクの内部に位置するように配置されているとともに、その他端部に、前記車載用水素充填タンクから延びる車両側水素供給ラインの一端部に取り付けられたカプラと着脱可能に構成されたカプラを備えた第1の水素供給ラインとを具備してなることを特徴とする水素供給ステーション。
【請求項2】
前記第1の水素供給ラインに、車載用水素充填タンクに供給される水素の固化率を調整する固化率調整手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の水素供給ステーション。
【請求項3】
その内部に液体水素が貯蔵される液体水素貯蔵タンクと、
その一端部が前記液体水素貯蔵タンクの内部に位置するように配置されているとともに、その他端部が前記固化率調整手段に接続された第2の水素供給ラインとを具備してなることを特徴とする請求項2に記載の水素供給ステーション。
【請求項4】
前記スラッシュ水素貯蔵タンクに密度計が設置されているとともに、前記スラッシュ水素貯蔵タンクと前記固化率調整手段とを結ぶ前記第1の水素供給ラインに第1の流量計が、前記液体水素貯蔵タンクと前記固化率調整手段とを結ぶ前記第2の水素供給ラインに第2の流量計が、前記固化率調整手段と前記第1の水素供給ラインの他端部に配置されたカプラとを結ぶ第1の水素供給ラインに第3の流量計が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の水素供給ステーション。
【請求項5】
前記スラッシュ水素貯蔵タンクに撹拌機が設置されていることを特徴とする請求項4に記載の水素供給ステーション。
【請求項6】
前記第1の水素供給ラインの一端部に、循環ポンプ、取り出しポンプ、循環兼取り出し用ポンプのいずれかが配置されていることを特徴とする請求項4に記載の水素供給ステーション。
【請求項7】
前記スラッシュ水素貯蔵タンクと前記第1の流量計との間に位置する前記第1の水素供給ラインに、撹拌機が配置されていることを特徴とする請求項4に記載の水素供給ステーション。
【請求項8】
前記スラッシュ水素貯蔵タンクの重量を計測するスラッシュ水素貯蔵タンク重量計測装置と、前記液体水素貯蔵タンクの重量を計測する液体水素貯蔵タンク重量計測装置とを備えていることを特徴とする請求項3から7のいずれか一項に記載の水素供給ステーション。
【請求項9】
前記車載用水素充填タンク内の水素の情報、または前記車載用水素充填タンク内に供給しようとする水素の情報に基づいて、前記車載用水素充填タンクに、所望の固化率に調整された水素が自動的に供給されるように構成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の水素供給ステーション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−182918(P2007−182918A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−675(P2006−675)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年7月20日付け 平成17年度、平成18年度、平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「水素安全利用等基盤技術開発/水素に関する共通基盤技術開発/ボイルオフガス低減を目指したスラッシュ水素製造/供給装置の研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】