説明

水素炎イオン化式ガス検知器

【課題】 外部からの空気流による水素炎の燃焼状態に対する悪影響が防止されて安定した動作が得られる水素炎イオン化式ガス検知器を提供すること。
【解決手段】 水素炎イオン化式ガス検知器は、排気部形成用開口が上面に形成された外匣内において、上方にガス排出用開口を有する筒状の燃焼室を備えた水素炎イオン化式センサー部が、ガス排出用開口が外匣の排気部形成用開口を介して外部に露出されるよう配置されており、外匣の上面には、側方に排気用開口部を形成する防風用カバー部材が、外匣における排気部形成用開口の直上領域を覆うよう、設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素炎イオン化式ガス検知器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば炭化水素ガスの濃度を検知する方法の一として、例えば炭化水素ガスの気体分子を水素炎中でイオン化してイオン電流を検出し、その検出結果に基づいて炭化水素ガスの濃度を検知する方式が利用されており、このような検知方式を利用した水素炎イオン化式ガス検知器としては、種々の構成のものが提案されている(例えば特許文献1参照。)。
このような水素炎イオン化式ガス検知器においては、水素炎を安定した燃焼状態で形成することが必要とされる。
【特許文献1】特開2000−227416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
而して、例えば水素炎イオン化式センサーのガス排出用開口が外匣の外部に直接的に開口している構成のものにおいては、外部からガス排出用開口を介して外気が流入するおそれがあり、外気が燃焼室内に流入した場合には、この空気流(風)によって、水素炎が消炎し、ガス測定が不可能になることがある、という問題がある。
【0004】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、外部からの空気流による水素炎の燃焼状態に対する悪影響が防止されて、安定した動作状態が得られる水素炎イオン化式ガス検知器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の水素炎イオン化式ガス検知器は、排気部形成用開口が上面に形成された外匣内において、上方にガス排出用開口を有する筒状の燃焼室を備えた水素炎イオン化式センサー部が、ガス排出用開口が外匣の排気部形成用開口を介して外部に露出されるよう、配置されており、
外匣の上面には、側方に排気用開口部を形成する防風用カバー部材が、外匣における排気部形成用開口の直上領域を覆うよう、設けられていることを特徴とする。
【0006】
本発明の水素炎イオン化式ガス検知器においては、水素炎イオン化式センサー部の燃焼室の上端部が排気部形成用開口内を挿通して外匣の上面より突出する状態で配置された構成とされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水素炎イオン化式ガス検知器によれば、水素炎イオン化式センサー部のガス排出用開口の直上領域を覆うよう設けられた防風用カバー部材によって空気流の影響を受けにくい側方に排気用開口部を形成し、この排気用開口部から排気を行う構造とされていることにより、水素炎イオン化式センサー部のガス排出用開口を介して外部から流入する空気流を防風用カバー部材によって遮断することができるので、ガス測定時において水素炎が消炎することを確実に防止することができる結果、安定した動作状態を得ることができ、従って、所要のガス測定を高い信頼性で行うことができる。
【0008】
また、水素炎イオン化式センサー部における燃焼室の上端部が外匣の上面より突出した状態で配置されていることにより、外気がガス排出用開口を介して流入することを一層確実に防止することができるので、水素炎を安定した燃焼状態で確実に形成することができ、高い信頼性で所要のガス測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、本発明の水素炎イオン化式ガス検知器の一構成例における、ガス検知器本体の外観を示す正面図、図2は、図1に示すガス検知器本体の上面図、図3は、図1に示すガス検知器本体の内部の構成の概略を示す説明図である。
10はガス検知器本体であって、人が背負って携行することのできる、薄型の箱状の外匣11を備えており、外匣11の正面における上方部に表示部18および操作部19が設けられている。本明細書において定義する方向は、立っている人が当該ガス検知器本体10を背負ったときの状態に基づくものである。
【0011】
外匣11の内部における上方部には、2本の棒状の可充電型電池20が各々上下方向に延びるよう並んで配置されてなる電池室12が形成されていると共に、電池室12の一側(図3において右側)に、信号処理回路および電源供給回路を備えた制御部55、並びに水素炎イオン化式センサー部(以下、単に、「センサー部」という。)50が配置され、電池室12の他側(図3において左側)に、燃焼ガスである水素ガスをセンサー部50に供給するための水素ガスボンベが装填されるガスボンベ装填室17が形成されている。
【0012】
また、外匣11の内部における下方部には、水素ガスの供給量を調整する流量調整バルブ30およびサンプルガス吸引ポンプ32が配置されている。
流量調整バルブ30は、水素ガスボンベのガスボンベ本体42と並行に上下方向に延びる水素ガス供給管31Aを介してガスボンベ本体42に接続されると共に、外匣11の側壁に向かって横方向外方に延び、センサー部50の下方位置より上方に向かって延びる水素ガス供給管31Bを介してセンサー部50に接続されている。
サンプルガス吸引ポンプ32は、ガス検知器本体10の一側に設けられたサンプルガス導入用コネクター部34に接続されると共にサンプルガス供給管33を介してセンサー部50に接続されている。
このガス検知器本体10においては、燃焼ガスである水素ガスとサンプルガス(測定ガス)とが分離された状態でセンサー部50に供給される構造とされている。
【0013】
各々の可充電型電池20としては、例えば、電池電圧がDC3.6Vである、型式「VP110」(BLACK&DECKER社製)が用いられており、下端面の中央位置に内方にくぼんだ形態の給電端子21を有する。
【0014】
各可充電型電池20は、外匣11の上面から屈曲して裏面側に連続する電池室カバー蓋12Aを回動することによって電池室12の上部を開放した状態において、上方から挿入されることにより装着される。
具体的には、各可充電型電池20は電池挿入用ガイド板22の電池挿入ガイド孔22A内に挿通されて下端が弾性案内部材としての機能を有するマイナス側接片端子23に案内され、このマイナス側接片端子23によって側方に押圧された状態において、電池室12の下端面に突出して設けられたプラス側突出端子24が可充電型電池20の下端面の給電端子21に嵌合されて装着される。
【0015】
水素ガスボンベは、ガスボンベ本体42と、このガスボンベ本体42における水素ガス噴出部を保護するキャップ45とにより構成されている。
ガスボンベ本体42は、頚部41Aを形成する筒状部分と、この頚部41Aに連続する当該頚部41Aより大径の胴部41Bを形成する有底筒状部分とにより構成された耐圧容器41を備え、耐圧容器41の頚部41Aに、水素ガス供給用ガス流路を開閉して水素ガスの供給をON−OFFする水素ガス供給用バルブ機構を備えた水素ガス噴出部が、頚部41Aの内周面に形成された例えばネジ溝に螺合されることにより一体的に装着されて、構成されている。
耐圧容器41内には、水素ガス供給源である例えば粉末状(粒状)の水素吸蔵合金(図示せず)が充填されており、ガスボンベ本体42内の水素ガス圧は、通常の条件すなわち常温常圧環境下において、例えば1MPa程度とされている。
この水素ガスボンベは、水素ガス供給用ガス流路を開閉する機能部が耐圧容器41の頚部41A内に収容された状態とされており、これにより、水素ガス供給用バルブ機構が十分に保護されて高い防爆性が得られるので、引火や爆発等が生ずる危険性が低く、高い安全性が得られる。
【0016】
このガスボンベ本体42における耐圧容器41の頚部41Aには、非装着時において水素ガス噴出部を保護するキャップ45が、変形自在な連結材44によって連結されており、キャップ45は、外匣11の内部に設けられた、図示しないキャップ保持部によって保持、固定されている。
【0017】
このガス検知器本体10においては、ガスボンベ本体42から噴出された1MPa程度の高圧状態の水素ガスを適正な大きさのガス圧、例えば0.05〜0.3MPaに減圧した状態で供給するための圧力調整器35が配置されている。
圧力調整器35の出口部分には、二次圧力計36が接続されており、水素ガスのセンサー部50に対するガス供給圧力の監視が行われ、その監視結果に基づいて流量調整バルブ30の開閉状態の制御が行われる。
【0018】
図1において、48は、ガスボンベ本体42に一体的に装着された水素ガス供給用バルブ機構を開閉する水素ガス供給用バルブ機構開閉用ノブであって、この水素ガス供給用バルブ機構開閉用ノブ48が検出者によって押しまわされることにより水素ガス供給用バルブ機構が開状態とされて水素ガスがガスボンベ本体42より噴出される。
【0019】
センサー部50は、上端が開口する空間部を有する有底筒状のセンサーケース本体51を備え、このセンサーケース本体51の上端開口部には、上面側ケーシング部材52がセンサーケース本体51の上端開口を覆うよう、例えばセンサーケース本体51の外周面にねじ込み式に着脱自在に装着されている。
そして、図4に示すように、上面側ケーシング部材52における中央位置には、ガス排出用開口52Aが形成されており、センサーケース本体51の上端面と上面側ケーシング部材52の内面との間には、円板状の不燃性のガス透過性カバー板53がセンサーケース本体51の上端開口部を塞ぐよう設けられており、これにより、燃焼室において生成される燃焼生成物を排気する排気部が構成されている。
センサー部50は、その上端部が外匣11の上面に形成された排気部形成用開口11A内を挿通して上方に突出する状態で、配置されている。
【0020】
このガス検知器本体10においては、防風用カバー部材60が外匣11における排気部形成用開口11Aの直上領域を覆うよう設けられている。
防風用カバー部材60は、図5に示すように、一端部(図5において、紙面の奥側の端部)が下方に屈曲された平板状の遮蔽部材61と、外匣11の上面に固定された、遮蔽部材61をその下面より支持する2つの板状の支持部材62、63とにより構成されており、これにより、センサー部50のガス排出用開口52Aに対して側方に排気用開口部64が形成されている。
遮蔽部材61とセンサー部50の上端面との離間距離の大きさは、燃焼室において生成される燃焼生成物の排気を阻害することがなく、ガス排出用開口52Aに直交する空気流が生じにくい状態とされていればよく、例えば3〜4mm程度とされている。
【0021】
上記構成の水素炎イオン化式ガス検知器は、例えば測定個所におけるサンプルガス(測定ガス)を導入するためのサンプルガス採取用ノズル(図示せず)をガス検知器本体10のサンプルガス導入用コネクター部34に接続した後、検出者がガス検知器本体10を背負い、サンプルガス採取用ノズルを持った状態で、測定個所において検出者に携行されて使用される。
【0022】
ガス測定を開始するに際しては、先ず、検出者によって、水素ガス供給用バルブ機構開閉用ノブ48が押し回されることにより、水素ガス供給用バルブ機構が開状態とされて水素ガスが水素ガス供給管31A、31Bを介して所定の供給量でセンサー部50に供給されると共に、ガス検知器本体10の電源スイッチがONとされ、サンプルガスがサンプルガス吸引ポンプ32によって吸引されてセンサー部50に所定の供給量で供給される。
【0023】
センサー部50においては、ガスボンベ本体42から供給された水素ガスが点火されて水素炎が発生された状態において、水素ガスと分離された状態で供給されたサンプルガスが水素炎に接触されることによって当該サンプルガス中に含まれる炭化水素が熱分解され、これにより発生する陽イオンの量が電流値として検出され、その検出結果に基づいてサンプルガス中に含まれる炭化水素ガス濃度が検知され、その結果が表示部18に表示される。
【0024】
而して、上記構成の水素炎イオン化式ガス検知器によれば、センサー部50のガス排出用開口52Aの直上領域を覆うよう設けられた防風用カバー部材60によって空気流の影響を受けにくい側方に排気用開口部64を形成し、この排気用開口部64から排気を行う構造とされていることにより、センサー部50のガス排出用開口52Aを介して外部から流入する空気流が遮断されるので、ガス測定時において水素炎が消炎することを確実に防止することができる結果、安定した動作状態を得ることができ、従って、高い信頼性で所要のガス測定を行うことができる。
【0025】
また、センサー部50における燃焼室の上端部が外匣11の上面より突出した状態で配置されていることにより、外気がガス排出用開口52Aを介して流入することを一層確実に防止することができるので、水素炎を安定した燃焼状態で確実に形成することができ、高い信頼性で所要のガス測定を行うことができる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、防風用カバー部材は、水素炎イオン化式センサー部のガス排出用開口の直上領域を覆い、ガス排出用開口に直交する方向以外の方向に排気用開口部を形成するよう設けられていれば、形状およびその他の構成は、特に制限されるものではない。
また、本発明の水素炎イオン化式ガス検知器においては、測定中において水素炎が消炎したこと、あるいは、測定個所における雰囲気が危険な状態にあることなどを報知するための警報報知機構が設けられた構成とすることができる。
さらに、本発明の水素炎イオン化式ガス検知器は、水素ガスとサンプルガスとが分離された状態でガス供給部に供給される構成のものであっても、水素ガスとサンプルガスとが混合された状態でガス供給部に供給される構成のものであっても、いずれの構成であってもよい。
また、上記実施形態においては、ガス検知器本体が検出者によって背負われて使用される場合について説明したが、可搬型のものとして構成する場合には、適宜の装着具によってガス検知器本体を肩に吊り下げた状態で使用しても、あるいは、例えばガス検知器本体載置用の手押し車を用い、地上を走行させて使用してもよい。また、定置型のものに適用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の水素炎イオン化式ガス検知器の一構成例における、ガス検知器本体の外観を示す正面図である。
【図2】図1に示すガス検知器本体の上面図である。
【図3】図1に示すガス検知器本体の内部の構成の概略を示す説明図である。
【図4】図1に示すガス検知器本体における水素炎イオン化式センサー部の上面図である。
【図5】防風用カバー部材の構成を示す説明用断面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 ガス検知器本体
11 外匣
11A 排気部形成用開口
12 電池室
12A 電池室カバー蓋
17 ガスボンベ装填室
18 表示部
19 操作部
20 可充電型電池
21 給電端子
22 電池挿入用ガイド板
22A 電池挿入ガイド孔
23 マイナス側接片端子
24 プラス側突出端子
30 流量調整バルブ
31A、31B 水素ガス供給管
32 サンプルガス吸引ポンプ
33 サンプルガス供給管
34 サンプルガス導入用コネクター部
35 圧力調整器
36 二次圧力計
41 耐圧容器
41A 頚部
41B 胴部
42 ガスボンベ本体
44 連結材
45 キャップ
48 水素ガス供給用バルブ機構開閉用ノブ
50 水素炎イオン化式センサー部(センサー部)
51 センサーケース本体
52 上面側ケーシング部材
52A ガス排出用開口
53 ガス透過性カバー板
55 制御部
60 防風用カバー部材
61 遮蔽部材
62、63 支持部材
64 排気用開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気部形成用開口が上面に形成された外匣内において、上方にガス排出用開口を有する筒状の燃焼室を備えた水素炎イオン化式センサー部が、ガス排出用開口が外匣の排気部形成用開口を介して外部に露出されるよう、配置されており、
外匣の上面には、側方に排気用開口部を形成する防風用カバー部材が、外匣における排気部形成用開口の直上領域を覆うよう、設けられていることを特徴とする水素炎イオン化式ガス検知器。
【請求項2】
水素炎イオン化式センサー部の燃焼室の上端部が排気部形成用開口内を挿通して外匣の上面より上方に突出する状態で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の水素炎イオン化式ガス検知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−234624(P2006−234624A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−50572(P2005−50572)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】