説明

水耕栽培装置

【課題】栽培容器を多段状に設置した水耕栽培装置において、各栽培容器に供給する必要水量を確保しつつポンプによる時間当たりの供給水量を少なくし得るようにする。
【解決手段】栽培容器3を上下多段状に配置した水耕栽培装置において、各栽培容器3は、長さ方向中央部から各端部に向けて若干角度だけ下降傾斜させた山折り状容器31と、長さ方向各端部から中央部に向けて若干角度だけ下降傾斜させた谷折り状容器32の2種類を使用して、山折り状容器31と谷折り状容器32とを順次交互に多段状に配置し、養液循環装置2により養液タンク20内の養液を、最上段容器の最高高さ位置に供給した後、上下に隣接する各段の容器において上段側容器の最低高さ位置から下段側容器の最高高さ位置に自然流入させるとともに、最下段の容器の最低高さ位置から養液タンク内に自然流入させることで、養液を養液タンクと各栽培容器間で循環させるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、栽培室内において植物を水耕栽培により育成するための水耕栽培装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
栽培室内で効率よく水耕栽培するには、植物を植栽する栽培容器を上下に所定間隔をもって多段状に配置して行うことが有効である。
【0003】
ところで、本件出願人は、この種の多段式の水耕栽培装置として、特開2009−34064号公報(特許文献1)に示されるものを既に特許出願している。この既出願の水耕栽培装置は、養液が貯留される栽培容器を上下に所定間隔をもって多段状に配置する一方、養液タンク内の養液を養液循環装置により養液タンクと各栽培容器の間で循環させるようにしている。
【0004】
図7は、上記既出願(特許文献1)の水耕栽培装置の各栽培容器3,3・・部分及び養液循環装置2部分を模式的に表したものである。そして、この図7の水耕栽培装置では、4段の栽培容器3,3・・が上下に所定間隔をもって配置されている一方、各栽培容器3,3・・に養液タンク20内の養液を供給するが、この養液は、養液循環装置2により各栽培容器3,3・・と養液タンク20との間で循環される。即ち、養液タンク20内に貯留されている養液は、ポンプ21により供給管22を通して送り出し、該供給管22から各栽培容器3,3・・内の一端部3aに各分岐管22a,22a・・を介して養液を供給(分流)する一方、各栽培容器3,3・・の他端部3bからそれぞれ合流管23aを介して養液を還流管23に戻し、該還流管23を通して養液タンク20に戻すようになっている。尚、各分岐管22a,22a・・には、それぞれバルブ29が設けられていて、該各バルブ29を調整することにより、各栽培容器3,3・・内に養液をそれぞれ均等に供給するようにしている。
【0005】
ところで、各栽培容器3,3・・内の養液は、それぞれ所定水位(例えば5〜10mm深さ)に維持させておく必要があるとともに、栄養分の補給(及び腐敗防止)のために循環させる必要がある。そして、図7の水耕栽培装置では、各栽培容器3,3・・に対してそれぞれ各分岐管22aから個別に養液を供給するとともに、各栽培容器3,3・・内の養液をそれぞれ合流管23aを介して還流管23に還流させるようにしている。
【0006】
因に、図7の水耕栽培装置のもので、各栽培容器3,3・・にそれぞれ時間当たり所定水量(例えば6リットル/分)の養液を供給する場合には、ポンプ21の能力として、1つの栽培容器3に対する時間当たりの供給水量(例えば6リットル/分)×4段の合計水量(24リットル/分)の供給能力が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−34064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図7に示す公知の水耕栽培装置のように、多段状に配置した各栽培容器3,3・・に対してそれぞれ分岐管22aから個別に養液を供給するようにしたものでは、上記のように各栽培容器3,3・・の各必要水量(例えば6リットル/分)の4倍の水量(合計24リットル/分)を同時に供給する必要があるので、供給能力の高いポンプ21を使用する必要がある。
【0009】
ところが、このように高能力のポンプ21を使用すると、ポンプ自体のコストが高くなるなるとともに、常時高出力(例えば24リットル/分)で運転する必要があるので、運転コスト(電気代)が高くなるという問題がある。
【0010】
又、図7の水耕栽培装置のように、栽培容器3の一端部(右端部)3aから養液を供給する一方、栽培容器3の他端部(左端部)3bから養液を排出(還流)させるようにしたものでは、配管長さ(図示例では還流管23の長さ)が長くなって管材料コストが高くつくとともに、各分岐管22a,22a・・にそれぞれバルブ29,29・・が必要であることからバルブコストも高くつくという問題もあった。
【0011】
そこで、本願発明は、栽培容器を多段式に設置した水耕栽培装置において、各栽培容器に供給する必要水量(必要養液量)を確保しつつポンプによる時間当たりの供給水量を少なくし得るようにするとともに、各コスト面でも安価にできるようにすることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。
【0013】
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明は、添付の図1〜図5(請求項1と請求項2に対応する)及び図6(請求項1のみに対応する)に例示するように、養液が貯留される細長形状の栽培容器3を上下に所定間隔をもって多段状に配置する一方、養液タンク20内の養液を養液循環装置2により養液タンク20と各栽培容器3,3・・の間で循環させるようにした水耕栽培装置を対象としている。
【0014】
上記各栽培容器3,3・・は、長さ方向の中央部31aから各端部31b,31bに向けてそれぞれ若干角度だけ下降傾斜させて養液が上記中央部31aから上記各端部31b,31bに向けて流動するようにした山折り状容器31と、長さ方向の各端部32b,32bから中央部32aに向けてそれぞれ若干角度だけ下降傾斜させて養液が上記各端部32b,32bから上記中央部32aに向けて流動するようにした谷折り状容器32の2種類を使用している。
【0015】
山折り状容器31における中央部31aから各端部31b,31bへの下降傾斜角度、及び谷折り状容器32における各端部32b,32bから中央部32aへの下降傾斜角度は、それぞれ養液が容器内をゆっくり流動する程度の微小角度(例えば角度1°〜2°程度)でよい。
【0016】
そして、上記山折り状容器31と上記谷折り状容器32とは、順次交互に多段状に配置している。尚、図1の例では、山折り状容器31が上で谷折り状容器32が下に位置する状態で交互に配置されており、図6の例では、谷折り状容器32が上で山折り状容器31が下に位置する状態で交互に配置されている。
【0017】
他方、上記養液循環装置2は、上記養液タンク20内の養液をポンプ21により最上段の容器(山折り状容器31又は谷折り状容器32)の最高高さ位置Hに供給した後、上下に隣接する各段の容器31,32において上段側容器(山折り状容器31又は谷折り状容器32)の最低高さ位置Lから下段側容器(32又は31)の最高高さ位置Hに順次自然流入させるとともに、最下段の容器(32又は31)の最低高さ位置Lから上記養液タンク20内に自然流入させるように構成している。
【0018】
ところで、上段側容器の最低高さ位置L(中央部の場合と各端部の場合とがある)は次順の下段側容器の最高高さ位置H(各端部の場合と中央部の場合とがある)の直上にあって、該上段側容器の最低高さ位置Lと下段側容器の最高高さ位置Hとは接続管で接続されているとともに、最下段容器の最低高さ位置Lは養液タンク20に対して接続管で接続されている。又、容器の最高高さ位置Hが長さ方向中央部にある場合には、該最高高さ位置Hに供給した養液が各端部側にほぼ均等量ずつ振り分けられるようにしている。
【0019】
そして、この養液循環装置2は次のように機能する。即ち、養液タンク20内の養液は、ポンプ21で供給管22を通して最上段の容器(31又は32)より上方位置まで汲み上げられて、該最上段容器の最高高さ位置Hに供給(放出)されるが、その最上段容器の最高高さ位置Hに供給した養液は、該最上段容器の下降傾斜側に自然流動していく。そして、最上段容器の最低高さ位置Lに達した養液は、該最低高さ位置Lから次順の容器(第2段容器)の最高高さ位置Hに自然流入し、同様に該第2段容器の下降傾斜側に自然流動して、第2段容器の最低高さ位置Lから第3段容器の最低高さ位置Hに自然流入し、順次同様に養液が最下段容器の最低高さ位置Lに達すると、該最低高さ位置Lから養液タンク20内に自然流入するようになっている。
【0020】
従って、本願請求項1の水耕栽培装置では、養液タンク20内の養液を最上段容器の上方まで汲み上げた後は、該養液が自重で順次各段の容器内を流動した後、養液タンク20内に自然還流することになる。つまり、最上段容器に供給した養液が順次各段の栽培容器を巡っていくので、各段の栽培容器に養液を個別供給することなしに全段の栽培容器に対してそれぞれ必要水量を流動させ得ることになる。
【0021】
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、図1に例示するように、上記請求項1の水耕栽培装置において、山折り状容器31と谷折り状容器32とは、山折り状容器31が最上段に位置し且つ谷折り状容器32が最下段に位置するように配置していることを特徴としている。
【0022】
この請求項2の水耕栽培装置では、最上段容器が山折り状容器31であってその中央部31aが最高高さ位置Hとなる一方、最下段容器が谷折り状容器32であってその中央部32aが最低高さ位置Lとなる。そして、この場合は、養液タンク20内の養液を循環させるメインのパイプ(実施例の供給管22)は、例えば図1に示すように栽培容器3の長さ方向の中央部付近に集約させて設置することができる。
【発明の効果】
【0023】
[本願請求項1の発明の効果]
本願請求項1の発明の水耕栽培装置は、上記したように山折り状容器31と谷折り状容器32とを順次交互に多段状に配置しているとともに、養液タンク20内の養液をポンプ21により最上段容器(31又は32)の最高高さ位置Hに供給(放出)することで、該養液が各段の容器内を順次流動した後、最下段容器(32又は31)の最低高さ位置Lから養液タンク20内に戻るように構成されている。
【0024】
このように、最上段容器(31又は32)に供給した養液を下段側の各容器に順次供給できるようにすると、複数個の栽培容器3,3・・を多段式に配置したものであっても、供給する養液量は1つの容器に必要な量だけでよい。
【0025】
従って、本願請求項1の水耕栽培装置では、養液循環装置2のポンプ21として能力が比較的小さいものでも十分に使用可能であるので、安価なポンプ21を採用できる(ポンプのコストを安価にできる)とともに、低出力の運転でよいので運転コスト(電気代)を安価にできるという効果がある。
【0026】
[本願請求項2の発明の効果]
本願請求項2の発明は、上記請求項1の水耕栽培装置において、山折り状容器31と谷折り状容器32とは、山折り状容器31が最上段に位置し且つ谷折り状容器32が最下段に位置するように配置している。
【0027】
このように山折り状容器31と谷折り状容器32とを請求項2のように配置すると、養液タンク20内の養液を循環させるメインのパイプ(供給管22)は、栽培容器3の長さ方向の中央部付近に集約させて設置することができる。
【0028】
従って、この請求項2の水耕栽培装置では、上記請求項1の効果に加えて、養液を循環させるメインのパイプ(供給管22)の長さを短くできるので、管材料コストを安価にできるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本願第1実施例の水耕栽培装置の側面図である。
【図2】図1のII部拡大図である。
【図3】図1のIII部拡大図である。
【図4】図1のIV部拡大図である。
【図5】図1のV部拡大図である。
【図6】本願第2実施例の水耕栽培装置の側面図である。
【図7】従来の水耕栽培装置における養液循環装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図1〜図6を参照して本願の実施例を説明すると、図1〜図5には本願第1実施例の水耕栽培装置を示し、図6には本願第2実施例の水耕栽培装置を示している。
【0031】
図1〜図5の第1実施例の水耕栽培装置と図6の第2実施例の水耕栽培装置とは、後述するように栽培容器3として山折り状容器31と谷折り状容器32との2種類を使用し、該山折り状容器31と谷折り状容器32とを順次交互に多段状に配置したものである。そして、後述するように、図1の第1実施例では、山折り状容器31が最上段に位置し谷折り状容器32が最下段に位置するように配置しているのに対して、図6の第2実施例では、谷折り状容器32が最上段に位置し山折り状容器31が最下段に位置するように配置したものである。尚、図1〜図5の第1実施例は、本願の請求項1と請求項2の両方に対応するものであるが、図6の第2実施例は、本願の請求項1のみに対応するものである。
【0032】
[図1〜図5の第1実施例]
図1に示す第1実施例の水耕栽培装置は、栽培室1内において養液が貯留される細長形状の栽培容器3を上下に所定間隔をもって多段(例えば4〜6段程度)に配置する一方、養液タンク20内の養液を養液循環装置2により養液タンク20と各栽培容器3,3・・の間で循環させるようにしたものである。
【0033】
栽培室1(図1)内は、空気調和機によって植栽植物Pの育成に適した室温に調整されている。
【0034】
図1の各栽培容器3,3・・は、浅皿状で幅が40〜80cm、長さが4〜10m程度の大きさのものが使用できる。尚、この大きさは特に限定するものではない。そして、この各栽培容器3は、図2〜図5に拡大図示するように箱体33の上部開口部分に水耕ベッド34を載置したものである。水耕ベッド34には、幅方向及び長さ方向にそれぞれ所定間隔をもって植栽部35が設けられていて、該各植栽部35,35・・にそれぞれ植物Pが植栽される。尚、この各栽培容器3,3・・は、栽培室1内において図示しない栽培棚の各棚部分に載置されている。
【0035】
各栽培容器3,3・・には、長さ方向の中央部31aから各端部31b,31bに向けてそれぞれ若干角度だけ下降傾斜させた山折り状容器31と、長さ方向の各端部32b,32bから中央部32aに向けてそれぞれ若干角度だけ下降傾斜させ谷折り状容器32の2種類を使用している。尚、山折り状容器31においては、その中央部31aが最高高さ位置Hとなる一方、その各端部31b,31bが最低高さ位置Lとなり、他方、谷折り状容器32においては、その中央部32aが最低高さ位置Lとなる一方、その各端部31b,31bが最高高さ位置Hとなる。
【0036】
山折り状容器31における中央部31aから各端部31b,31bへの下降傾斜角度a1(図2参照)、及び谷折り状容器32における各端部32b,32bから中央部32aへの下降傾斜角度a2(図3参照)は、それぞれ容器(箱体33)内の養液Wが下降傾斜側にゆっくり流動する程度の微小角度(例えば角度1°〜2°程度)に設定されている。
【0037】
そして、各段の容器31,32内には、図2〜図5に示すように常時所定深さ(例えば5〜10mm程度の深さ)の養液Wが存在するように、ポンプ21からの養液供給量を設定している。尚、各容器31,32内を流動する養液Wの流速は、該各容器31,32の傾斜角度a1,a2が大きく影響するが、例えば、ポンプ21による養液供給量を6リットル/分程度に設定した状態で、各段の容器31,32中の養液深さがそれぞれ所定深さ(例えば5〜10mm程度の深さ)に維持されるように、該各容器31,32の傾斜角度を設定するとよい。
【0038】
そして、図1の第1実施例の水耕栽培装置では、各2列ずつ(合計4列)の山折り状容器31,31と谷折り状容器32,32とを、山折り状容器31が上で谷折り状容器32が下に位置する状態で順次交互に配置して構成されている。尚、図1の例では、最上段が山折り状容器31で最下段が谷折り状容器32となる。
各段の栽培容器3,3・・の上部には、所定高さ間隔をもってそれぞれ照明器(図示例では蛍光灯)4,4・・が設置されているが、この各照明器4,4・・はその下部に位置している各栽培容器3,3・・の上面(傾斜面)と平行に配置されている。尚、この照明器4は、室内で水耕栽培する場合に必要なものである。
【0039】
他方、上記養液循環装置2は、図1に示すように、養液タンク20と、ポンプ21と、供給管22と、上下に隣接する各段の容器を接続する接続管24,25,26と、最下段容器32と養液タンク20を接続する接続管27とを有して構成している。
【0040】
供給管22は、図1に示すように栽培容器3の長さ方向の中央部付近に集約させて設置している。
【0041】
供給管22には、バルブ29が介設されていて、該バルブ29を調整することによってポンプ21により供給管22を通して供給される養液量(時間当たりの量)を調整し得るようになっている。
【0042】
供給管22の先端部22bは、最上段の山折り状容器31の中央部31a(最高高さ位置Hとなる)に開口させている(詳細は図2参照)。
【0043】
最上段の山折り状容器31の各端部31b,31b(最低高さ位置Lとなる)の直下には、2段目の谷折り状容器32の各端部32b,32b(最高高さ位置Hとなる)が位置しており、該最上段容器(山折り状容器)31の各端部31b,31bと2段目容器(谷折り状容器)32の各端部32b,32bとがそれぞれ接続管24,24で接続されている(詳細は図3参照)。
【0044】
2段目の谷折り状容器32の中央部32a(最低高さ位置Lとなる)の直下には、次段(3段目)の山折り状容器31の中央部31a(最高高さ位置Hとなる)が位置しており、該2段目の谷折り状容器32の中央部32aと該3段目の山折り状容器31の中央部31aとが接続管25で接続されている(詳細は図4参照)。
【0045】
3段目の山折り状容器31の各端部31b,31b(最低高さ位置Lとなる)の直下には、4段目(最下段)の谷折り状容器32の各端部32b,32b(最高高さ位置Hとなる)が位置しており、該3段目容器(山折り状容器)31の各端部31b,31bと4段目容器(谷折り状容器)32の各端部32b,32bとがそれぞれ接続管26,26で接続されている(詳細は図3と同様である)。
【0046】
4段目(最下段)の谷折り状容器32の中央部32a(最低高さ位置Lとなる)の直下には、養液タンク20が配置されており、該4段目の谷折り状容器32の中央部32aと養液タンク20とが接続管27で接続されている(詳細は図5参照)。
【0047】
この第1実施例の水耕栽培装置では、栽培容器3の各植栽部35,35・・に植栽されている各植物Pは、図2〜図5に示すように、各根Paが箱体33の底部に達しており、該箱体33の底部付近を流動する養液Wに植物Pの根Paが常時浸かった状態にある(各根Paから養液W中の有効成分を吸収し得るようになっている)。
【0048】
この第1実施例(図1〜図5)の水耕栽培装置は、次のように機能する。
【0049】
即ち、養液循環装置2のポンプ21を作動させると、養液タンク20内の養液が供給管22を通って最上段の山折り状容器31の設置高さより高位置まで汲み上げられた後、供給管22の先端部22b(図2)から最上段の山折り状容器31の中央部31aに吐出される。このとき、山折り状容器31の中央部31aは該山折り状容器31における最高高さ位置Hであって、該供給管先端部22bから吐出された養液Wは山折り状容器31の中央部31a(最高高さ位置H)から両側に分流されてそれぞれ容器の下降傾斜側(各端部31b,31b側)に流動するようになる。尚、供給管先端部22bには、該先端部22bから吐出される養液Wを両側に均等量ずつ振り分けるための適宜の分流手段を設けておくとよい。
【0050】
次に、最上段容器(山折り状容器)31の両側に振り分けられた各養液W,Wは、それぞれ下降傾斜側(各端部側)にゆっくりと流下していき(そのとき植栽植物Pの根Paから養液W中の養分を吸収する)、該最上段容器(山折り状容器)31の各端部31b,31bに達する。
【0051】
次に、最上段容器(山折り状容器)31の各端部31b,31bに達した養液Wは、それぞれ接続管24,24を通って2段目容器(谷折り状容器)32の各端部32b,32bに自然流入した後、該2段目容器(谷折り状容器)32の下降傾斜側(中央部32a側)に向けて流動し(図3参照)、該2段目容器(谷折り状容器)32の中央部32a(最低高さ位置Lとなる)において合流する。
【0052】
次に、2段目容器(谷折り状容器)32の中央部32aに合流した養液Wは、図4に示すように接続管25を通って3段目容器(山折り状容器)31の中央部31a(最高高さ位置Hとなる)に自然流下し、該3段目容器(山折り状容器)31の中央部31aから両側(各端部31b,31b側)に分流される。
【0053】
同様に、3段目容器(山折り状容器)31の各端部31b,31bから各接続管26,26を通って最下段容器(谷折り状容器)32の各端部32b,32bに自然流入し、続いて該養液Wが最下段容器(谷折り状容器)32の各端部32b,32bからその中央部32a(最低高さ位置Lとなる)に流動(合流)する。
【0054】
そして、最下段容器(谷折り状容器)32の中央部32aに集まる養液Wは、図5に示すように接続管27を通って順次養液タンク20内に自然流入する。以降、同様にポンプ21により養液Wが養液タンク20内と各段の栽培容器3,3・・との間で循環されるようになっている。
【0055】
このように、図1〜図5に示す第1実施例の水耕栽培装置では、養液タンク20内の養液を最上段容器(山折り状容器)31の上方まで汲み上げた後には、該養液が自重で順次各段の容器内を流動した後、養液タンク20内に自然還流することになる。つまり、最上段容器3(山折り状容器31)に供給した養液Wが順次各段の栽培容器3を巡っていくので、各段の栽培容器3,3・・に養液Wを個別供給することなしに全段の栽培容器に対してそれぞれ必要水量を流動させ得ることになる。
【0056】
従って、養液循環装置2のポンプ21として能力が比較的小さいものでも十分に使用可能であるので、安価なポンプ21を採用できる(ポンプのコストを安価にできる)とともに、低出力の運転でよいので運転コスト(電気代)を安価にできる。
【0057】
又、この第1実施例の水耕栽培装置では、各栽培容器3,3・・は、山折り状容器31が最上段に位置し且つ谷折り状容器32が最下段に位置するように配置しているが、各容器31,32をこのように配置すると、養液タンク20内の養液Wを循環させるメインのパイプ(供給管22)は、図1に示すように栽培容器3の長さ方向の中央部付近に集約させて設置することができる。そして、供給管22を栽培容器3の長さ方向の中央部付近に集約させて設置すると、供給管22の長さを短くできるので、管材料コストを安価にできる。
【0058】
[図6の第2実施例]
図6に示す第2実施例の水耕栽培装置は、上記第1実施例の変形例で、本願請求項1のみに対応するものである。
【0059】
そして、この第2実施例(図6)の水耕栽培装置では、交互に多段状に配置される山折り状容器31と谷折り状容器32とを、上記第1実施例とは逆に、谷折り状容器32が最上段に位置している一方、山折り状容器31を最下段に位置させたものである。尚、第2実施例の水耕栽培装置のその他の構成は、上記第1実施例とほぼ同じであるので、該第1実施例の説明を援用する。
【0060】
この第2実施例(図6)の水耕栽培装置では、最上段の栽培容器3が谷折り状容器32(最高高さ位置Hが両端部32b,32bの2箇所にある)であるので、供給管22の先端側を2つに分岐(各分岐管22a,22a)させる一方、各分岐管22a,22aにそれぞれバルブ29,29を介設する必要があるとともに、一方(図6の左側)の分岐管22aを長くする必要がある。
【0061】
従って、この第2実施例のものでは、材料コスト面で上記第1実施例のものより不利であるが、この第2実施例の水耕栽培装置は、本願請求項1にこの第2実施例のものも含むこと確認するために開示したものである。
【符号の説明】
【0062】
1は栽培室、2は養液循環装置、3は栽培容器、4は照明器、20は養液タンク、21はポンプ、22は供給管、24〜27は接続管、31は山折り状容器、32は谷折り状容器、31a,32aは容器の中央部、31b,32bは容器の端部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
養液が貯留される細長形状の栽培容器(3)を上下に所定間隔をもって多段状に配置する一方、養液タンク(20)内の養液を養液循環装置(2)により養液タンク(20)と上記各栽培容器(3,3・・)の間で循環させるようにした水耕栽培装置であって、
上記各栽培容器(3,3・・)は、長さ方向の中央部(31a)から各端部(31b,31b)に向けてそれぞれ若干角度だけ下降傾斜させて養液が上記中央部(31a)から上記各端部(31b,31b)に向けて流動するようにした山折り状容器(31)と、長さ方向の各端部(32b,32b)から中央部(32a)に向けてそれぞれ若干角度だけ下降傾斜させて養液が上記各端部(32b,32b)から中央部(32a)に向けて流動するようにした谷折り状容器(32)の2種類を使用して、上記山折り状容器(31)と上記谷折り状容器(32)とを順次交互に多段状に配置しているとともに、
上記養液循環装置(2)は、上記養液タンク(20)内の養液をポンプ(21)により最上段の容器(31又は32)の最高高さ位置(H)に供給した後、上下に隣接する各段の容器(31,32)において上段側容器(31又は32)の最低高さ位置(L)から下段側容器(32又は31)の最高高さ位置(H)に順次自然流入させるとともに、最下段の容器(32又は31)の最低高さ位置(L)から上記養液タンク(20)内に自然流入させるように構成している、
ことを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記山折り状容器(31)と上記谷折り状容器(32)とは、山折り状容器(31)が最上段に位置し且つ谷折り状容器(32)が最下段に位置するように配置している、
ことを特徴とする水耕栽培装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate