説明

水膨潤性吸水性樹脂用包材、土嚢袋および土嚢

【課題】袋に水膨潤性吸水性樹脂を入れて給水により膨潤させた後、衝撃や加圧によっても中のゲルがはみ出し難い包材およびそれを用いた土嚢袋、土嚢を提供する。
【解決手段】布帛もしくはフィルムに不織布を重ねてニードルパンチおよび/または縫製により一体化されてなる水膨潤性吸水性樹脂用包材であって、布帛もしくはフィルムがポリオレフィン系樹脂で形成され、不織布がフェルトであることを特徴とする包材;この包材で作成されてなる土嚢袋;この土嚢袋、および水膨潤性吸水性樹脂からなる土嚢である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水膨潤性吸水性樹脂用包材およびそれを用いる土嚢袋、土嚢に関する。
【背景技術】
【0002】
洪水や水災害などの時に水や土砂の侵入を防ぐため応急処置的に土嚢が用いられているが、近年土砂を詰めた袋からなる土嚢に替わり、取扱易さや保管し易さから、水膨潤性吸水性樹脂を通水性のある袋に詰め、使用時に給水により、ゲル化、膨潤させて用いる土嚢が特に都市部で使用されている。このようなものとして、たとえば、2枚以上のフェルトの間に水膨潤性吸水性樹脂を挟んだ状態にしてニードルパンチで留めたシートを通水性の袋に入れた土嚢がある(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−134865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、洪水の現場では土嚢を吸水膨潤させた後、土嚢を何層にも重ねたり、土嚢を放り投げたりする場合がある。このような場合、衝撃や加圧によりフェルトおよび通水性の袋が破れて吸水性樹脂のゲルがはみ出したりすることがある。土嚢としては使えなくなったり、はみだした吸水性樹脂のゲルの取り扱いがやっかいであるという問題がある。また、土嚢袋の中に吸水性樹脂を入れた大きなシートを用いる必要があり、作業が面倒であったりコストも高くつくという問題もある。
土嚢袋の中に直接吸水性樹脂を入れるという簡易な方法で土嚢が形成でき、衝撃を加えても破れにくく取り扱い易い土嚢が望まれている。
本発明の目的は、袋に水膨潤性吸水性樹脂を入れて給水により膨潤させた後、衝撃や加圧によっても中のゲルがはみ出し難い包材およびそれを用いた土嚢袋、土嚢を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意研究の結果、水膨潤性吸水性樹脂を入れる包材として、布帛もしくはフィルムに不織布を重ねてニードルパンチおよび/または縫製により固定され一体化されたものを用いれば上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち請求項1の発明は、布帛もしくはフィルムに不織布を重ねてニードルパンチおよび/または縫製により固定され一体化されてなる水膨潤性吸水性樹脂用包材である。
【0006】
請求項1の発明によれば、布帛もしくはフィルムに不織布を重ねてニードルパンチおよび/または縫製により固定され一体化されてなる水膨潤性吸水性樹脂(以下、単に吸水性樹脂という場合がある)用包材は、その包材で作成された袋の中の吸水性樹脂のゲルを通さず引張強度が大きいので、衝撃下や加圧下においても袋が破れず吸水性樹脂のゲルがはみ出すことがない。
【0007】
不織布は目付量が大きいと不織布のウェブと吸水性樹脂のゲル(以下単にゲルという場合がある)が絡んで加圧下においても吸水性樹脂のゲルを通しにくいが、不織布は引張強度が小さいので、引っ張ったり衝撃を加えたりするとウェブがずれて隙間ができゲルが出る場合がある。一方、布帛は引張強度が比較的大きいが、これも衝撃や張力がかかると繊維間が広がり中のゲルがはみ出すことがある。吸水性樹脂を入れた不織布の袋を布帛で作成した土嚢袋に入れたものは、二層の袋であるが衝撃や張力がかかるとそれぞれの袋が個別に破れたりして、ウェブや繊維の隙間からゲルがはみ出すことがある。しかし、この二つを重ねてニードルパンチおよび/または縫製をかけると、不織布のウェブが布帛の繊維と交絡したり、ウェブまたは縫製糸が布帛を貫通したりする。そうすると不織布と布帛が固定され一体化されるので繊維がずれず、それに応じて不織布のウェブもずれにくくなり隙間が広がらない。
すなわち、本発明の包材の引張強度が実質的に大きくなる。したがって、衝撃下や加圧下でも破れず袋の中のゲルがはみ出すことがない。
【0008】
一方、布帛の代わりにフィルムを用いて不織布を重ねてニードルパンチおよび/または縫製をかけると、不織布のウェブまたは縫製糸がフィルムを貫通して固定されるので、衝撃がかかってもウェブ間がずれて広がることがなく袋の中のゲルがはみ出さない。フィルムは孔をあけない限りは通水しないが、ニードルパンチまたはミシンの針が貫通するとその隙間から通水するようになる。単位面積当たりの針数が多い程吸水性が上がる傾向にある。すなわち、フィルム自体に通水性がなくても通水性を有することになる。
したがって、布帛の替わりにフィルムを用いて作成した本発明の袋は、吸水性樹脂を入れた後、その袋を水に接触させると通水して吸水性樹脂が膨潤しゲルが入った袋となる。このゲルの入った袋は衝撃下や加圧下でもゲルがはみ出さない。
【0009】
ニードルパンチと縫製の内、好ましいのはニードルパンチである。ニードルパンチは新たな材料を必要とせず経済的であり、縫製のように糸が切れる心配がない。また、ニードルパンチをかけると不織布のウェブが布帛やフィルムを貫通して反対側に出てケバのようになり、これが滑り止めの効果を奏する。たとえば、土嚢のように積み重ねた場合に、布帛の面を外側にして土嚢袋を作成して積み重ねてもケバにより滑りにくいという効果を奏する。ニードルパンチと縫製を組み合わせればさらに強固に固定され一体化された包材となるので特に好ましい。
本発明の包材は吸水性樹脂を包む材料という意味であるが、吸水性樹脂のゲルに接して衝撃下や加圧下においてもゲルを通さない膜や層として使用する材料も含むものとする。
【0010】
請求項2の発明は、不織布がフェルトであることを特徴とする請求項1記載の包材である。
【0011】
請求項2の発明によれば、フェルトはウェブが豊富にあるので、ゲルを通しにくいと共に、ニードルパンチおよび/または縫製によってウェブまたは縫製糸が容易に布帛もしくはフィルムを貫通して、布帛もしくはフィルムと不織布が強固に一体化した包材となる。
【0012】
請求項3の発明は、布帛もしくはフィルムがポリオレフィン系樹脂で形成されてなることを特徴とする請求項1または2記載の包材である。
【0013】
請求項3の発明によれば、ポリオレフィン樹脂は熱融着性を有するのでニードルパンチや高速工業用ミシンの糸により不織布のウェブや縫製糸がポリオレフィン樹脂と結合するので、不織布により一層強固に固定され一体化された包材となる。また、ポリオレフィン樹脂は安価であるので経済的な包材が設計可能となる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載の包材で作成されてなることを特徴とする土嚢袋である。
【0015】
請求項4の発明によれば、布帛もしくはフィルムに不織布がニードルパンチや縫製により強固に結合された包材は吸水して中の吸水性樹脂を膨潤させることができると共に、加圧下、衝撃下でも吸水性樹脂のゲルがはみださないので土嚢袋に供することができる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項4記載の土嚢袋、および水膨潤性吸水性樹脂からなることを特徴とする土嚢である。
【0017】
請求項5の発明によれば、布帛もしくはフィルムに不織布が強固に結合した包材を用いて製造した土嚢袋は、水に接触させると吸水して中の吸水性樹脂を膨潤させゲルとすることができると共に、加圧下、衝撃下でも吸水性樹脂のゲルがはみださない。
【発明の効果】
【0018】
本発明の水膨潤性吸水性樹脂用包材は次の効果を奏する。
(1)袋の中にゲルを入れた後、加圧や衝撃をかけても破れにくいので、中の吸水性樹脂のゲルがはみ出すことがない。
(2)水に接触させると吸水して中の吸水性樹脂を膨潤させることができる。
(3)土嚢に用いた場合は、使用前は軽量コンパクトで輸送・管理が簡単である。また、布帛もしくはフィルムの面を外側にして土嚢袋を作成した土嚢は積み重ねても滑りにくい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ニードルパンチをかけた場合の本発明の一実施形態の水膨潤性吸水性樹脂用包材の斜視図を示す。
【図2】図1における水膨潤性吸水性樹脂用包材のX−Y軸切断面における断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明において用いられる布帛もしくはフィルムとしては、吸水性樹脂の膨潤に応じて膨らむ柔軟性をもち、そのゲルを保持できれば限定はない。好ましくは通水性のある布帛である。
布帛としては、合成繊維(ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアリレート繊維など)、半合成繊維(アセテート、レーヨンなど)、天然繊維(綿、絹、羊毛など)、これらの混合品(混紡品など)などすべての繊維素材が適用できる。これらのフィラメント糸条、及び短繊維紡績糸条、並びに各々からなるテープ糸条によって編織された織布、編布、又はその複合布が使用できる。
【0021】
布帛が吸水性樹脂に水が接触できるように、若干なりとも通水性を有すれば袋にした場合吸水性を有するので好ましいが、通水性を有さなくても、不織布を重ねてニードルパンチおよび/または縫製をかけることにより不織布のウェブや縫製糸が布帛を貫通して隙間ができたり、針によって微小な孔が発生する。その隙間や孔により通水性が出るようになる。しかし、布帛に通水性があると布帛の吸水速度が速くなるので、吸水性、親水性のある繊維による布帛が好ましい。そして、吸水性樹脂が吸水膨潤した時においても破れが生じない程度の、湿潤強度及び湿潤状態での柔軟性を有する素材であることがより好ましい。
【0022】
本発明において用いられるフィルムとしては、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリオレフィン系フィルム(ポリエチレンフィルム、エチレン・αオレフィンコポリマーフィルム、エチレン・酢酸ビニルコポリマーフィルム、エチレン・アクリル酸コポリマーフィルム、エチレン・アクリル酸エステルコポリマーフィルム、ポリプロピレンフィルムなど)などの合成樹脂製フィルム;これらの積層ラミネートフィルム;アルミホイルなどの金属製フィルム、および合成樹脂製フィルムと金属フィルムとの多層ラミネートフィルムが挙げられる。柔軟性の点から合成樹脂製フィルム、およびその積層ラミネートフィルムが好ましい。厚みは特に限定はない。フィルムは通常通水性を有さないが、ニードルパンチをかけると通水性が出てくるので使用できる。しかし、フィルムとしてはメッシュフィルム(またはシート)などの微細な穴が空いたフィルムが、最初から通水性があるので好ましい。穴の大きさは、0.1〜2mm、より好ましくは0.1〜1mmである。好ましくはフィルムの厚さは30μm以上であれば引張強度が大きく、膨潤する吸水性樹脂のゲルを保持できるので好ましい。より好ましくは50μm以上である。
【0023】
特に布帛もしくはフィルムの材質としてポリオレフィン系樹脂を用いると、ポリオレフィン系樹脂は熱融着性があることから、ニードルパンチおよび/または高速工業用ミシンの縫製によって不織布とより強固に結合し、より強く一体化した包材ができる。また、また、ポリオレフィン樹脂は安価であるのでこれを用いることにより経済的な包材が設計可能となる。
【0024】
本発明に用いられる不織布としては、工業的に使用されている不織布が使用できる。不織布の繊維素材としては、合成繊維(ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリオレフィン繊維など)、半合成繊維(アセテート、レーヨンなど)、天然繊維(綿、絹、羊毛など)、炭素繊維、およびこれらの混合品(混紡品など)などの繊維素材が適用できる。不織布も吸水性、親水性のある繊維で形成されたものが、包材の通水性がよく、内部にある吸水性樹脂の膨潤を促進するので好ましい。
【0025】
不織布は乾式法、湿式法のいずれの方法でも、またスパンレース法、サーマルボンド法、スパンボンド法、ニードルパンチ法などいずれの方法で製造されたものでも使用できる。不織布の目付量は、特に制限はないが30g〜800g/m2が好ましい。30g/m2以上であると吸水性樹脂またはそのゲルが不織布と絡み合い通過しにくいので好ましい。800g/m2以下であると不織布が硬くなりすぎず吸水性樹脂の膨潤に合わせて膨らむことができる。
【0026】
また、不織布の中で上記素材の短繊維または長繊維を集めて圧縮したフェルトはウェブが豊富であり、布帛もしくはフィルムと強固に結合するので好ましい。フェルトは織フェルト、プレスフェルト、ニードルパンチフェルトなど、一般にフェルトと称されるものであり、たとえば、「産業用繊維資材ハンドブック」(日本繊維機械学会、362頁〜381頁)に記載されているものが使用できる。
フェルトの目付量は、特に制限はないが30g〜500g/m2が好ましく、特に80〜300g/m2が好ましい。30g/m2以上であると吸水性樹脂またはそのゲルが不織布と絡み合い通過しにくいので好ましい。500g/m2以下であると不織布が硬くなりすぎず吸水性樹脂の膨潤に合わせて膨らむことができる。
【0027】
本発明の包材は、上記の布帛もしくはフィルムに不織布を重ねてニードルパンチおよび/または縫製をかけて固定したものである。
ニードルパンチの強さは、針の本数が好ましくは10本/cm2以上、200本/cm2以下であり、より好ましくは30本/cm2以上、100本/cm2以下である。10本/cm2以上であると、衝撃や加圧を加えても包材の布帛もしくはフィルムと不織布の結合が剥がれたり破れたりして袋の中のゲルがはみ出ることがない。200本/cm2以下であると、包材の柔軟性が十分であり、ゲルの膨潤に対応して膨らむことができる。ゲルの膨潤力がニードルパンチの押えの力に負け、吸水があまりおこらなくなることもない。
縫製は通常の家庭用または工業用ミシンによるミシン掛けが好ましく、特に高速工業用ミシンによる縫製が好ましい。縫製糸は、綿、絹や合成繊維(ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリプロピレンなど)が使用できる。縫製糸の太さなどは用途によって変えて用いられるが、糸本数はニードルパンチの場合の糸の本数と同じでよい。
【0028】
図1は、ニードルパンチをかけた場合の本発明の一実施形態の水膨潤性吸水性樹脂用包材の斜視図を示す。図2は、図1における水膨潤性吸水性樹脂用包材のX−Y軸切断面における断面図を示す。ニードルパンチがかけてあるので、ウェブ3が布帛2を貫通して反対側に抜け出てケバ4となっており、不織布1が布帛2に固定されている様子がわかる。
【0029】
布帛もしくはフィルムと不織布の重ね合わせは交互に何層も重ねてニードルパンチおよび/または縫製により固定してもよく、好ましくは1:1〜1:2である。特に好ましくは1:1である。1:1であると厚みの薄い包材となる。
不織布に用いるウェブそのものを布帛もしくはフィルムにニードルパンチをかけたものは不織布そのものでもあり、衝撃下加圧下で吸水性樹脂のゲルがはみ出すことがあり、本発明の包材ではない。本発明はウェブそのものを重ねてニードルパンチをかけるのではなく、一旦不織布としたものを布帛もしくはフィルムに重ねてニードルパンチおよび/または縫製をかけるものである。また、不織布を何層にも重ねてニードルパンチおよび/または縫製で固定してもよい。不織布層は好ましくは1〜3層であり、経済面から1層がより好ましい。
【0030】
このようにして製造される水膨潤性吸水性樹脂用包材は、布帛もしくはフィルムと不織布がニードルパンチおよび/または縫製により強固に固定され一体化されて、それぞれの単独の包材よりも実質的に引張強度が向上して破れにくく、加圧下衝撃下でも袋の中の吸水性樹脂のゲルがはみ出すことがない。
【0031】
本発明の包材は吸水性樹脂を入れた後、膨潤させる袋の包材の用途や、予め膨潤したゲルを入れる袋の包材の用途に適用できる。特に耐衝撃性が必要とされる用途や加圧状態で用いる用途に好適である。用途としてはたとえば、土嚢袋、止水材用袋、首巻タオルの蒸発型保冷剤用袋などが挙げられる。また、袋でなくても吸水性樹脂のゲルを通さない膜や層としても使用可能であり、このような用途に用いるものも本発明の包材の範囲に含める。
【0032】
本発明の包材に入れて使用する水膨潤性吸水性樹脂としては、水に不溶で、吸水して膨潤するものであれば、特に限定されるものではないが、安価で、安全性、耐久性、吸水倍率や吸水速度など等の吸水特性に優れ、かつ、腐敗の心配の無いものが好ましい。上記吸水性樹脂としては公知のものが使用でき、たとえば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、デンプン−アクリル酸グラフト重合体の中和物、デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合架橋体、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、アクリル酸塩−アクリルアミド共重合架橋体、ポリビニルアルコール架橋体、変性ポリエチレンオキサイド架橋体、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩共重合架橋体、(メタ)アクリロイルアルカンスルホン酸塩共重合架橋体、架橋カルボキシメチルセルロース塩、カチオン性モノマーの架橋重合体等が挙げられる。これらのうち、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、および、デンプン−アクリル酸グラフト重合体の中和物が、吸水膨潤特性、安全性や経済性などが良好であるため、特に好ましい。
【0033】
該吸水性樹脂の純水に対する吸水能は、好ましくは50〜1,000ml/g、より好ましくは100〜1,000ml/gである。形状は特に限定しないが、粉末状または粒状が好ましい。その粒径は50〜1500μmが吸水膨潤性、経済性、取り扱い性などの点で好ましく、特に100〜850μmが好ましい。吸水能測定法は吸水性樹脂に通常用いられる測定法(重量法)で測定できる。
【0034】
包材中の吸水性樹脂の量は特に限定はなく、ある程度量があれば包材の上記効果が発揮できる。その量としてはゲルとして好ましくは内容物の1重量%以上、より好ましくは10重量%以上、特に好ましくは30重量%以上、最も好ましくは50重量%以上である。量が多いほど包材の効果が確認しやすいが、1重量%以上であれば包材の上記効果が確認できる。
【0035】
また、これらの吸水性樹脂を袋に入れるときは、粉末状及び/又は粒状の吸水性樹脂を直接入れてもよいが、水崩壊性や水溶性を有する小袋(以下、ゲル化用袋といい、吸水性樹脂の入った袋をゲル化材という)に入れた後入れてもよい。吸水によって中に入った水がゲル化用袋の包材を崩壊したり溶解したりしてゲル化用袋の中の吸水性樹脂を膨潤させて、ゲル化用袋を破り外の袋をゲルで充満させることができる。この場合ゲル化用袋を両面テープなどで外袋の中に均等に固定すれば外袋を動かしても吸水性樹脂の偏りが生じない。
ゲル化用袋の中の吸水性樹脂の量は用途によってことなるが、たとえば、土嚢用の場合は、好ましくは30〜70g/袋である。
【0036】
本発明の包材が好適に用いられる例として土嚢について説明する。
本発明の包材を用いて土嚢袋を作成するが、土嚢袋の製法、使用法などは従来と同様にできる。
本発明における土嚢は、上記の様に吸水性樹脂若しくはゲル化材が土嚢袋の中に封入されてなるものである。土嚢袋の大きさは特に限定はないが、ゲル化材をいれる場合はゲル化材以上の大きさの袋の大きさであれば特に限定はないが、好ましくは20〜50cm×40〜80cm、より好ましくは25〜30cm×40〜70cmである。袋の形も限定はないが矩形状が経済面から好ましい。
【0037】
袋は本発明の上記包材を縫製、ヒートシール、接着剤などの方法によって周囲を固定することができる。土嚢袋はその一端を開けた袋を形成し、その中に吸水性樹脂を入れた後袋を閉じる方法で製造できる。袋は水で膨潤した後も破れないことが必要であるため、その一端も縫製、接着などで閉じられるが、閉じる前に、袋の中に吸水性樹脂の粉末またはゲル化材(好ましくは1〜10個)を入れておく。ゲル化材を用いる場合は両面テープで土嚢袋の中に均等に入れて固定すればゲルが偏らずに土嚢袋を充満するので好ましい。
【0038】
土嚢袋の中に含まれる吸水性樹脂の量は、吸水能力如何にもよるが、土嚢袋の容積に対して0.1〜5.0容積%が好ましく、特に0.2〜2.0容積%にするのが吸水ゲル化後の保有水量および形状保持力との関係からより好ましい。
【0039】
また、吸水性樹脂の吸水能を妨げない範囲で他の物質を併用しても良い。この物質は吸水速度を促進させる目的でパルプなどの有機性繊維、石綿、パーライトなどの無機性繊維、土嚢の比重を上げる目的で珪砂、石などの無機物などがあげられる。さらに、必要に応じて防かび剤、紫外線吸収剤などを加えても良い。
【0040】
布帛もしくはフィルムの面を外側にして土嚢袋を作成した土嚢は積み重ねても滑りにくいという特徴を有する。ニードルパンチによって布帛もしくはフィルム側に不織布のウェブが貫通してケバ状となっており、滑り止めの効果を奏しているからである。また、不織布側を外側にして作成した土嚢はニードルパンチ、縫製にかかわらず不織布のウェブより積み重ねた場合に滑り止め効果を有する。
以下、実施例により更に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
製造例1(ゲル化材の作成)
「ハビックス JS45HD−W」(ハビックス社製、乾式パルプ不織布)に厚さ30μmのポバール(PVA)フィルム(クラレ社製、CP−1220T10、鹸化度87〜89%)をラミネートしたシート(a)を10×15cmの大きさの長方形に切り、これをPVAフィルム側に重ねて3方の端(辺)をヒートシールして袋を製造した。この中に「サンフレッシュST−500D」(アクリル酸系吸水性樹脂、三洋化成工業社製)50gを入れ、次いで開口部をヒートシール(密封)してゲル化材を作製した。
【0042】
実施例1(包材の作成)
まず、ナイロン/アクリル(7/3)混毛を目付量:120g/m、針数200本/m2となるようにしてニードルパンチでフェルトを板状に作成した。次にポリプロピレン平織物基布(テープ条繊維:縦14本/インチ、横11本/インチ、目付量:93g/m)に上記のフェルトを重ねて針数45本/m2となるようにしてニードルパンチで固定して、本発明の水膨潤性吸水性樹脂用包材Aを作成した。
【0043】
実施例2(包材の作成)
実施例1で用いたナイロン/アクリル(7/3)混毛に替えてポリエステル/アクリル(7/3)混毛にし、ポリプロピレン平織物基布の目付量を80g/mとし、ニードルパンチの針数45本/m2に替えて針数90本/m2にする以外は実施例1と同様にして、本発明の水膨潤性吸水性樹脂用包材Bを作成した。
【0044】
実施例3(包材の作成)
実施例1において、ポリプロピレン織物基布に替えてナイロンメッシュシート(オープニング:200μm、厚さ:380μm)を用いる以外は実施例1と同様にして本発明の水膨潤性吸水性樹脂用包材Cを作成した。
【0045】
実施例4(包材の作成)
実施例1において、ニードルパンチに変えて縫製にした他は針数を含めて実施例1と同様にして、本発明の水膨潤性吸水性樹脂用包材Dを作成した。縫製糸は綿糸を用いた。
【0046】
実施例5〜8、比較例1(土嚢の作成)
上記本発明の水膨潤性吸水性樹脂用包材A〜Dを用いて、40cm×60cmの大きさの矩形状の土嚢袋を作成した。最初一端を除いて周囲をミシン掛けしてしっかりと閉じ、その一端から上記製造例1で得られたゲル化材を2個入れて、縫製によって閉じて本発明の土嚢A〜Dを作成した。
また、実施例1で用いたナイロン/アクリル(7/3)混毛不織布で40cm×60cmの大きさの矩形状の袋を作成し、上記製造例1で得られたゲル化材を2個入れて、縫製によって閉じた不織布製土嚢を作成し、それを実施例1で用いたポリプロピレン平織物基布を用いて40cm×60cmの大きさの矩形状の外側の袋を作成し、上記不織布製土嚢を入れて二重袋の比較の土嚢Eを作成した。
上記の土嚢A〜Dについて、落下試験、ゲル化試験を行った。その結果を表1に示した。
【0047】
(1)膨潤試験
温度20℃において、30Lの水道水を満たしたたらいに、上記土嚢を入れ、吸水膨潤させて土嚢の重量が20kgになるまでの時間を測定した。
(2)落下試験
上記20kgの水を吸収した土嚢を直ちに1.5mの高さからコンクリートの床に自然落下させ袋の破裂の状況をみた。
【0048】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の包材は、吸水性樹脂のゲルに接して、加圧下や衝撃下においてもゲルを通さない袋、膜や層に好適である。
【符号の説明】
【0050】
1 不織布
2 布帛
3 不織布のウェブ
4 ケバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛もしくはフィルムに不織布を重ねてニードルパンチおよび/または縫製により固定され一体化されてなる水膨潤性吸水性樹脂用包材。
【請求項2】
不織布がフェルトであることを特徴とする請求項1記載の包材。
【請求項3】
布帛もしくはフィルムがポリオレフィン系樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の包材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の包材で作成されてなることを特徴とする土嚢袋。
【請求項5】
請求項4記載の土嚢袋、および水膨潤性吸水性樹脂からなることを特徴とする土嚢。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−255346(P2010−255346A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108707(P2009−108707)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(507277103)株式会社アイ・イー・ジェー (32)
【Fターム(参考)】