説明

水蒸気供給装置及びそれを備えたコンロ

【課題】 本発明の目的は、調理機器、掃除機器、加湿機器、又は、食器洗浄機器等の水蒸気利用機器に対して、合理的且つ高効率に利用価値の高い高温の水蒸気を供給することができる技術を提供する点にある。
【解決手段】 エネルギGを消費して発生した熱により伝熱管を流通する水を加熱して水蒸気Sを生成する水蒸気生成手段51を備え、伝熱管に水Wを供給して水蒸気生成手段51が生成した水蒸気Sを家庭に設けられた複数の水蒸気利用機器Xに分配供給するように構成された水蒸気供給装置50を家庭に設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギを消費して発生した熱により水を加熱して水蒸気を生成する水蒸気生成手段を備えた水蒸気供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、100℃〜300℃程度の水蒸気(過熱水蒸気)を利用することで多量の熱を効率良く伝えることができることから、家庭において水蒸気を利用する水蒸気利用機器が注目されている。かかる水蒸気利用機器としては、例えば、調理対象物が収容される庫内に水蒸気を供給して該調理対象物の加熱又は保温等の調理を行う調理機器、水蒸気を噴射して掃除を行う可搬式の掃除機器、浴室等の室内に水蒸気を供給して該室内の加湿を行う加湿機器、又は、食器が収容される食器収容部に水蒸気を噴射して該食器の洗浄を行う食器洗浄機器などがある(例えば、特許文献1〜6を参照。)。
【0003】
特に、水蒸気を利用して調理を行う調理機器では、調理対象物の表面が水蒸気により適度に保湿され、更には、水蒸気が調理対象物に衝突することにより生成される凝縮水により、調理対象物の油脂や塩分を良好に排出することができ、更には、水蒸気が供給された庫内が低酸素状態となることから調理対象物のビタミンCなどの酸化を抑制するなどの効果があるとされている。
【0004】
従来の水蒸気利用機器は、一般的に、燃料ガスや電気を消費して熱を発生する燃焼器や電気ヒータの発生熱により例えば伝熱管を流通する水を過熱して水蒸気を生成するガスボイラや電気ボイラなどの水蒸気生成手段が内蔵されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−50015号公報
【特許文献2】特開2001−355844号公報
【特許文献3】特開平7−39454号公報
【特許文献4】特開平9−141220号公報
【特許文献5】特開平11−178883号公報
【特許文献6】特開2004−166869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の水蒸気利用機器が内蔵する水蒸気生成手段は、自ら利用する分の水蒸気を生成する能力を有する比較的小型なものであり、それ以上の水蒸気を生成するようには構成されていない。特に、水蒸気を利用する調理機器では、200℃以上等の高温の過熱水蒸気を調理に利用することがあるが、比較的小型の水蒸気生成手段では、停止状態から高温の過熱水蒸気が生成可能となる状態までに、比較的長い予熱時間が必要となる。
また、このような予熱時間の短縮のために、比較的大型の水蒸気生成手段を設けると、機器の大型化や効率の低下等の問題が発生する。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、調理機器、掃除機器、加湿機器、又は、食器洗浄機器等の水蒸気利用機器に対して、合理的且つ高効率に利用価値の高い高温の水蒸気を供給することができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る水蒸気供給装置は、エネルギを消費して発生した熱により水を加熱して水蒸気を生成する水蒸気生成手段を備えた水蒸気供給装置であって、その第1特徴構成は、家庭に設置され、
前記水蒸気生成手段が生成した水蒸気を前記家庭に設けられた複数の水蒸気利用機器に分配供給するように構成された点にある。
【0009】
上記第1特徴構成を有する水蒸気供給装置によれば、上記水蒸気生成手段により生成した水蒸気を、家庭に設けられる複数の水蒸気利用機器に対して分配供給することができるので、水蒸気利用機器に個別に水蒸気生成手段を内蔵する場合と比較して、水蒸気生成手段の稼働率を向上して合理化及び効率化を図ることができる。また、ある水蒸気利用機器における水蒸気の利用が開始されたときに水蒸気生成手段が既に稼動している状態又は直ぐに高温の水蒸気が供給できる状態となっている可能性が高く、更には、水蒸気利用機器に内蔵する場合よりも比較的能力の高い水蒸気生成装置が設置可能であることから、200℃以上等の利用価値の高い高温の水蒸気を迅速に生成して水蒸気利用機器に供給することができる。
また、水蒸気利用機器においては、別途設置された水蒸気供給装置で生成された水蒸気が供給されることから、高温の水蒸気を生成するために内蔵される水蒸気生成手段を省略又は簡略化することができる。
【0010】
本発明に係る水蒸気供給装置の第2特徴構成は、前記水蒸気利用機器に接続される水蒸気供給管を着脱自在に接続する水蒸気供給コンセントを備えた点にある。
【0011】
上記第2特徴構成を有する水蒸気供給装置によれば、上記水蒸気供給コンセントを備えることにより、水蒸気利用機器の増設や撤廃等が容易となり、更には、必要なときだけ水蒸気利用機器の水蒸気供給管を上記水蒸気供給コンセントに接続して、水蒸気生成手段で生成された水蒸気を水蒸気利用機器に供給することができる。
【0012】
本発明に係る水蒸気供給装置の第3特徴構成は、前記水蒸気利用機器が、調理対象物が収容される庫内に水蒸気を供給して該調理対象物の調理を行う調理機器、水蒸気を噴射して掃除を行う可搬式の掃除機器、室内に水蒸気を供給して該室内の加湿を行う加湿機器、食器が収容される食器収容部に水蒸気を噴射して該食器の洗浄を行う食器洗浄機器、水に水蒸気を混合して温水を生成する温水生成器、及び、調理物に水蒸気を吹きかけて該調理物を温める調理物加熱器の少なくとも1つを含む機器である点にある。
【0013】
上記第3特徴構成を有する水蒸気供給装置によれば、上述した調理機器、掃除機器、加湿機器、食器洗浄機器、温水生成器、及び、調理物加熱器の少なくとも1つを含む複数の水蒸気利用機器に対して水蒸気を合理的且つ高効率に利用価値の高い高温の水蒸気を供給することができる。
【0014】
本発明に係る水蒸気供給装置の第4特徴構成は、前記家庭のキッチンに設置されるよう構成されている点にある。
【0015】
上記第4特徴構成を有する水蒸気供給装置によれば、家庭のキッチン内部又はその近傍に設置されることで、水蒸気利用機器の多くがキッチンに設置されていることから、生成した水蒸気を熱損失を抑制して効率良くその水蒸気利用機器へ供給することができる。また、前記キッチンに設けられた水道から水蒸気生成手段に水を供給するように構成することができ、水を貯留する水タンクを省略又は簡略化することができる。
【0016】
本発明に係る水蒸気供給装置の第5特徴構成は、前記水蒸気生成手段として、燃焼空間において燃料ガスを燃焼させる燃焼器を有し、その燃焼空間に前記水が流通する伝熱管を配置してなるガスボイラを備え、
前記伝熱管が、前記燃焼空間において蛇行状態で密集配置されていると共に、前記燃焼空間において前記燃焼器から遠い領域である遠領域に配置され前記水供給部から水が供給される予熱部、前記燃焼空間において前記遠領域よりも前記燃焼器に近い領域である近領域に配置され前記予熱部から水が供給される第1加熱部、及び、前記燃焼空間において前記遠領域と前記近領域との間の領域である中間領域に配置され前記第1加熱部から水が供給される第2加熱部を有するよう配置されている点にある。
【0017】
上記第5特徴構成を有する水蒸気供給装置によれば、水蒸気生成手段として上記のようなガスボイラを設けることで、燃焼器で燃料ガスを燃焼させて多量に熱を発生させて高温且つ多量の水蒸気を生成することができる。更に、そのガスボイラの伝熱管を、燃焼室において蛇行状態で密集配置し、燃焼火炎が密集配置された伝熱管に直接衝突することで、燃焼火炎の温度を低下させて低NOx化を図ると共に、燃料ガスと空気との混合を促進して燃焼状態を安定したものとすることができる。
【0018】
更に、低温の水が供給される上記伝熱管の予熱部を燃焼空間において燃焼排ガスが主に存在する上記遠領域に配置して、その予熱部において低温の水を100℃未満(例えば70℃〜90℃)の温水に予熱することができる。よって、多くの燃焼熱を回収して水を加熱することができる。
その予熱部から水が供給される温水を上記伝熱管の第1加熱部を、燃焼空間において非常に高温の燃焼火炎が主に存在する上記近領域に配置して、その第1加熱部において予熱された温水を比較的高温(例えば100℃程度)に加熱することができる。よって、非常に高温の燃焼火炎を利用することで伝熱効率の向上を実現でき、更に、温水が水蒸気となるときの潜熱により伝熱管の過昇温を抑制することで伝熱管の熱損傷を防止することができる。
その第1加熱部から水(水蒸気)が供給される上記伝熱管の第2加熱部を、燃焼空間において主に上記近領域よりは低温で且つ遠領域よりは高温の燃焼火炎が主に存在する中間領域に配置して、その第2加熱部において比較的高温の水(水蒸気)を更に高温(例えば200℃以上好ましくは300℃程度)に過熱するという形態で、効率良く高温の水蒸気を生成することができる。よって、この中間領域においても燃焼火炎又は燃焼排ガスの温度がある程度低下していることから伝熱管の熱損傷を防止することができる。
即ち、上記のように、伝熱管の予熱部、第1加熱部、及び、第2加熱部を配置することで、伝熱管の熱損傷を防止しながら高効率化を達成することができる。
【0019】
本発明に係る水蒸気供給装置の第6特徴構成は、前記水蒸気生成手段で生成された水蒸気を過熱する電気ヒータを備えると共に、
前記電気ヒータで過熱された水蒸気の温度を検出する水蒸気温度検出手段と、
前記水蒸気温度検出手段の検出手段に基づいて前記電気ヒータの出力を制御する制御手段とを備えた点にある。
【0020】
上記第6特徴構成を有する水蒸気供給装置によれば、水蒸気生成手段で生成された水蒸気を更に過熱する電気ヒータを備えると共に、上記制御手段により、上記水蒸気温度検出手段の検出結果に基づいて上記電気ヒータの出力を制御することにより、その電気ヒータで過熱され水蒸気利用機器に供給される水蒸気の温度を所望の温度に設定することができ、水蒸気利用機器に対して利用用途に合った温度の水蒸気を適切に供給することができる。即ち、ガスボイラ等の上記水蒸気生成手段において例えば100℃程度の飽和水蒸気を生成し、上記電気ヒータによりその飽和水蒸気を過熱して例えば200℃以上の過熱水蒸気とすることができるので、電気容量を比較的小さく抑えながら、有効利用できる非常に高温の過熱水蒸気を生成することができる。
【0021】
上記目的を達成するための本発明に係る水蒸気供給装置の第7特徴構成は、前記水蒸気生成手段として、燃焼空間において燃料ガスを燃焼させる燃焼器を有し、その燃焼空間に前記水が流通する伝熱管を配置してなるガスボイラを備え、
前記ガスボイラで生成された水蒸気を過熱する電気ヒータを備えると共に、
前記電気ヒータで過熱された水蒸気の温度を検出する水蒸気温度検出手段と、
前記水蒸気温度検出手段の検出手段に基づいて前記電気ヒータの出力を制御する制御手段とを備えた点にある。
【0022】
上記第7特徴構成を有する水蒸気供給装置によれば、水蒸気生成手段として上記のようなガスボイラを設けることで、燃焼器で燃料ガスを燃焼させて多量に熱を発生させて高温且つ多量の水蒸気を生成することができる。更に、そのガスボイラで生成された水蒸気を更に過熱する電気ヒータを備えると共に、上記制御手段により、上記水蒸気温度検出手段の検出結果に基づいて上記電気ヒータの出力を制御することにより、その電気ヒータで過熱され水蒸気利用機器に供給される水蒸気の温度を所望の温度に設定することができ、水蒸気利用機器に対して利用用途に合った温度の水蒸気を適切に供給することができる。即ち、上記ガスボイラにおいて、燃料ガスを燃焼させて、水を例えば100℃程度の飽和水蒸気とし、上記電気ヒータによりその飽和水蒸気を過熱して例えば200℃以上の過熱水蒸気とすることができるので、電気容量を比較的小さく抑えながら、有効利用できる非常に高温の過熱水蒸気を生成することができる。
【0023】
本発明に係るコンロは、エネルギを消費して熱を発生する加熱調理部を上面に設けたコンロであって、その特徴構成は、上述した第1乃至第7特徴構成の何れかを有する水蒸気供給装置を内蔵し、
前記加熱調理部が、前記水蒸気生成手段で消費されるエネルギと同じエネルギを消費して熱を発生する点にある。
【0024】
上記特徴構成を有するコンロによれば、上面に設けられた加熱調理部において燃料ガスや電気などのエネルギを利用して熱を発生し上面に載置される鍋などの加熱対象物を加熱するのであるが、上述した水蒸気供給装置を内蔵すると共に、加熱調理部が水蒸気生成手段で消費されるエネルギと同じエネルギを消費して熱を発生することで、新たに別のエネルギを供給することなく、上記加熱調理部で消費するのと同じエネルギを利用して、水蒸気を生成することができる。
特に、加熱調理部が燃料ガスを燃焼させて熱を発生するガスバーナである場合には、水蒸気生成手段として、燃焼器の燃焼火炎が形成される燃焼空間に水が流通する伝熱管を配置してなるガスボイラを備えることで、燃焼器により燃料ガスを燃焼させて多量に熱を発生させて高温且つ多量の水蒸気を生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は、家庭のキッチンの様子を示した図であり、このキッチンには、そのキッチンに設置されるエネルギとしての燃料ガスG(例えば都市ガス13A)を消費して熱を発生する加熱調理部12を上面に設けたコンロ10に内蔵される形態で、水蒸気供給装置50が設置されている。
【0027】
この水蒸気供給装置50は、詳細については後述するが水蒸気Sを生成し、その水蒸気Sを、家庭に設けられた複数の水蒸気利用機器Xに分配供給する所謂セントラル水蒸気供給装置として構成されている。先ず、このような複数の水蒸気利用機器Xについて以下に図1〜3に基づいて説明を加える。
【0028】
上記水蒸気利用機器Xとしては、調理機器、掃除機器、加湿機器、食器洗浄機器、温水生成器、又は、調理物加熱器等を挙げることができる。
【0029】
水蒸気利用機器Xとしての調理機器は、調理対象物が収容される庫内に水蒸気Sを供給して該調理対象物の加熱又は保温等の調理を行うように構成され、例えば、図1に示すように、コンロ10に設置されたグリル11、キッチンに設置されたオーブン15、炊飯器19などを挙げることができる。このような水蒸気利用機器Xとして構成された調理機器では、調理対象物の表面を水蒸気Sにより適度に保湿し、例えば、調理対象物に水蒸気Sを吹き当てる形態で調理対象物の保温を行うことができる。また、水蒸気利用機器Xとして構成された上記グリル11やオーブン15では、水蒸気Sが調理対象物に衝突することにより生成される凝縮水により、調理対象物の油脂や塩分を良好に排出し、更には、水蒸気Sが供給された庫内が低酸素状態となることから調理対象物のビタミンCなどの酸化を抑制することができる。
【0030】
水蒸気利用機器Xとしての掃除機器は、水蒸気Sを噴射して掃除を行う可搬式に構成され、例えば、図1に示すように、水蒸気Sをキッチンの壁などに向けて噴射して油脂汚れなどの清掃を行うガン形状の水蒸気ノズル21や、図2に示すように、床面などに水蒸気Sを噴霧して床の掃除を行うように逆T形状に構成された床掃除用ノズル25などを上げることができる。このような水蒸気利用機器Xとして構成された掃除機器では、高温の水蒸気Sによりその汚れを洗い流しながら殺菌をも行うことができる。
【0031】
水蒸気利用機器Xとしての加湿機器は、室内に水蒸気Sを供給して該室内の加湿を行うように構成され、例えば、図2に示すように、室内26に水蒸気Sを供給して加湿を行う加湿器27や、図3に示すように、浴室31に水蒸気Sを噴射して浴室31を水蒸気サウナとする水蒸気サウナノズル32などを挙げることができる。このような水蒸気利用機器Xとして構成された加湿機器では、高温の水蒸気Sを室内に供給することで、加湿更には暖房を迅速に行うことができる。
【0032】
その他、水蒸気利用機器Xとしては、図1に示すように、食器が収容される食器収容部に水蒸気Sを噴射して該食器の洗浄を行う食器洗浄機器17や、図2に示すように、水蒸気アイロン23等とすることができる。
【0033】
また、水蒸気利用機器Xとしての温水生成器41は、図4(イ)に示すように、混合部43において水道から供給された水Wに水蒸気供給装置50から供給された水蒸気Sを混合することで、温水HWを生成するように構成され、その温水HWは、例えばコンロ10の天板上に設置された逆U字型の吐出管52からカップ44などに供給される。
【0034】
一方、水蒸気利用機器Xとしての調理物加熱器45は、図4(ロ)に示すように、水蒸気供給装置50から供給された水蒸気Sをそのまま、例えばコンロ10の天板上に設置された逆U字型の吐出管46から、その下方に設置されたご飯やスープなどの調理物48に吹き付けて、該調理物48を温めるように構成されている。また、この吐出管46の吐出部47は、吐出された水蒸気Sの拡散を抑制して水蒸気を調理物に良好に吹き付けるために、下方に向けて拡径する拡径形状に形成されている。
【0035】
〔第1実施形態〕
次に、水蒸気供給装置50の第1実施形態について、図5に基づいて説明する。
第1実施形態の水蒸気供給装置50は、エネルギを消費して発生した熱により伝熱管52を流通する水Wを加熱して100℃以上好ましくは200℃以上の水蒸気Sを生成する水蒸気生成手段としてのボイラ51と、水道に接続され伝熱管52に水Wを供給する水供給管34と、その水供給管34による水Wの供給を断続可能な供給弁57とを備え、ボイラ51が生成した水蒸気Sを、ヘッダ部58を介して、上述した家庭に設けられた複数の水蒸気利用機器Xに分配供給するように構成されている。
【0036】
また、上記ボイラ51は、コンロ10の加熱調理部12で消費するエネルギと同じエネルギ即ち燃料ガスGを消費して熱を発生するように構成されており、詳しくは、燃焼空間53において燃料ガスGを燃焼させる燃焼器54を有し、その燃焼空間53に伝熱管52を配置してなるガスボイラとして構成されている。
【0037】
更に、かかる伝熱管52は、燃焼空間53において蛇行状態で密集配置されていると共に、燃焼空間53において燃焼器54から遠い領域である遠領域に配置され供給弁57から水Wが供給される予熱部PH、燃焼空間53においてその遠領域よりも燃焼器54に近い領域である近領域に配置され予熱部PHから水Wが供給される第1加熱部H1、及び、燃焼空間53において遠領域と近領域との間の領域である中間領域に配置され第1加熱部H1から水が供給される第2加熱部H2を有するよう配置されている。
【0038】
そして、上記予熱部PHでは、供給弁57から供給された低温の水Wが、第1加熱部H1及び第2加熱部H2により熱を奪われて比較的低温となった燃焼火炎F又は燃焼排ガスEとの熱交換により予熱されて、100℃未満(例えば70℃〜90℃)の温水となる。即ち、この予熱部PHにおいて、多くの燃焼熱が回収される。
また、上記第1加熱部H1では、上記予熱部PHから供給された温水が、非常に高温の燃焼火炎Fとの熱交換により加熱されて、比較的高温(例えば100℃程度)な高温水又は水蒸気Sとなる。即ち、この第1加熱部H1において、非常に高温の燃焼火炎が利用されることで伝熱効率の向上が実現され、更に、温水が水蒸気Sとなるときの潜熱により伝熱管52の過昇温による熱損傷が防止される。
また、上記第2加熱部H2では、第1加熱部H1から供給された高温水又は水蒸気Sが、予熱部PHが配置された近領域よりは低温で且つ第1加熱部H1が配置された遠領域よりは高温の燃焼火炎F又は燃焼排ガスEとの熱交換により過熱されて、高温(例えば200℃以上好ましくは300℃程度)の水蒸気Sとなる。即ち、この第2加熱部H2においても、燃焼火炎F又は燃焼排ガスEの温度がある程度低下していることから伝熱管52の熱損傷が防止される。
【0039】
また、予熱部PHを通過した燃焼排ガスEは、ダクト56を通じて排出され、この排出された燃焼排ガスEは、コンロ10の上空に配置された換気扇(図示省略)を通じて屋外へ排出される。
【0040】
このボイラ51の燃焼器54の上面側には、多数の孔が穿設されたパンチングメタル等のように多孔質の整流板55が燃焼空間53の横断方向に延出する形態で配置され、燃焼器54から上方に流出した燃料ガスGと空気Aとの混合気は、この整流板55を通過することにより整流された後に燃焼して、均一な燃焼火炎Fが形成され、例えば、伝熱管52に対する局所的な過剰加熱が防止される。
【0041】
また、この燃焼火炎Fは、燃焼空間53において、第1加熱部H1が配置された近領域、更には、第2加熱部H2が配置された中間領域にまで到達する形態で形成されるのであるが、その燃焼火炎Fが密集配置された第1加熱部H1及び第2加熱部H2の伝熱管52に直接衝突することにより、その燃焼火炎Fの温度が低下し低NOx化が図られ、更には、燃料ガスGと空気Aとの混合が促進されて燃焼状態が安定したものとなる。
【0042】
更に、燃焼空間53に配置された伝熱管52は、耐熱性に優れた耐熱材料製(例えば、SUS306)の金属管で構成されており、更には、極めて小径(例えば外径が4mm以上且つ8mm以下の範囲内)で、且つ、燃焼空間53において燃焼空間53の横断方向を軸に旋回する螺旋状の蛇行状態で密集配置されている。
したがって、燃焼空間53に対する伝熱管52の伝熱面積の割合である伝熱面収容率を、例えば100m/m程度と極めて大きいものとすることができ、燃焼空間53の容積を小さくして小型化を図りながら、効率良く多量の水蒸気S(例えば、100℃の飽和水蒸気換算で90g/分)を生成することができる。
また、上記伝熱管52を螺旋状の形態で蛇行状態としているので、伝熱管52を比較的小さい曲げ半径でジグザグ状に蛇行させる場合と比較して、曲げ部における応力集中及び内部に流通する水Wの圧力損失を低減することができる。
【0043】
また、上記伝熱管52は、予熱部PH、第1加熱部H1、及び、第2加熱部H2を、燃焼空間53の横断方向において直列又は並列状態で複数接続する形態で構成しても構わない。
【0044】
更に、上記伝熱管52において過剰昇温が懸念される部分(例えば第1加熱部H1や第2加熱部H2)の該表面に、例えばヘッダ部58で凝縮した水などの低温の水を噴霧して冷却するように構成しても構わない。
【0045】
水蒸気供給装置50から各水蒸気利用機器Xへの水蒸気Sの供給は、各水蒸気利用機器Xに接続される水蒸気供給管を直接ヘッダ部58に接続する形態で行っても構わないが、図2に示すように、水蒸気供給管23a,25aを公知の迅速継手等を利用して着脱自在に接続する水蒸気供給コンセント30をキッチン又はその他の室内26に設置し、水蒸気供給装置50からその水蒸気供給コンセント30を介して各水蒸気利用機器Xに水蒸気Sを供給することができる。
【0046】
また、ボイラ51の燃焼器54に燃料ガスGを供給する燃料ガス供給部に調整弁61を設け、この調整弁61により燃焼器54に供給される燃料ガスGの供給量を調整することで、燃焼空間53への入熱量を調整し、結果、水蒸気利用機器Xに供給される水蒸気Sの温度を調整することができる。
そして、ボイラ51で生成されて水蒸気利用機器Xに供給される水蒸気Sの温度を検出する温度センサ59が例えばヘッダ58の位置口部分に設けられ、その温度センサ59の検出結果に基づいて調整弁61を制御する制御装置60が設けられているので、水蒸気利用機器Xに供給される水蒸気Sの温度を所望の温度に設定することができる。
【0047】
〔第2実施形態〕
次に、水蒸気供給装置50の第2実施形態について、図6に基づいて説明する。尚、上記第1実施形態と同様の構成については説明を割愛する場合がある。
第2実施形態の水蒸気供給装置50は、水蒸気生成手段として、上記第1実施形態と同様にガスボイラとして構成されたボイラ51を備えると共に、そのボイラ51で生成された水蒸気S1を過熱する電気ヒータ65を備え、この電気ヒータ65により過熱された水蒸気S2が、ヘッダ部58を介して、上述した家庭に設けられた複数の水蒸気利用機器Xに分配供給される。
【0048】
また、この電気ヒータ65は出力調整自在に構成されており、その出力を調整することで、結果、電気ヒータ65で過熱されて水蒸気利用機器Xに供給される水蒸気S2の温度を調整することができる。
そして、電気ヒータ65で過熱されて水蒸気利用機器Xに供給される水蒸気S2の温度を検出する温度センサ66(水蒸気温度検出手段の一例)が例えばヘッダ58の位置口部分に設けられ、その温度センサ66の検出結果に基づいて電気ヒータ65の出力を制御する制御装置67(制御手段の一例)が設けられているので、水蒸気利用機器Xに供給される水蒸気S2の温度を所望の温度に設定することができる。
【0049】
また、家庭において、水Wを例えば250℃程度の過熱水蒸気S2に加熱するために必要な熱の全てを、電気ボイラで賄うことは、電気容量の制限等から困難である。また、この必要な熱の殆ど(例えば74%程度)は、水Wを100℃程度の飽和水蒸気S1に加熱するための顕熱(例えば12%程度)及び潜熱(例えば74%程度)である。
そこで、かかる第2実施形態では、ガスボイラとして構成されたボイラ51において、燃料ガスGを燃焼させて、水Wを100℃程度の飽和水蒸気S1とし、電気ヒータ65によりその飽和水蒸気S1を過熱して過熱水蒸気S2とすることができるので、電気容量を比較的小さく抑えながら、有効利用できる非常に高温の過熱水蒸気S2を生成することができる。
【0050】
〔別実施形態〕
(1)上記実施の形態では、水蒸気供給装置50を、家庭のキッチンに設置されるコンロ10に内蔵する形態で設置したが、別に、水蒸気供給装置50を、キッチンの別の箇所又はキッチン以外の家庭内の箇所に設置しても構わない。
例えば、水蒸気供給装置50を、ベランダ等に設置される給湯器やコージェネレーションシステムに内蔵する形態で設定しても構わない。また、水蒸気供給装置50を、燃料電池やエンジン駆動発電機などにより熱と電気とを発生するコージェネレーションシステムに内蔵する場合には、その燃料電池やエンジンの排ガスを、コージェネレーションシステムの排ガスを水蒸気生成手段としてのボイラ51の燃焼器54に燃焼用空気に混合するなどのように、水蒸気生成手段の熱源として供給することにより、コージェネレーションシステムの排熱の少なくとも一部を水蒸気生成手段に供給し、一層の高効率化を図ることができる。更に、このような場合には、水蒸気生成手段は、上記燃料電池やエンジンが消費するエネルギと同じエネルギを消費して熱を発生するボイラとして構成することが望ましい。
【0051】
(2)上記実施の形態では、水蒸気生成手段としてのボイラ51をガスボイラとして構成したが、別に、ボイラ51を電気ボイラとして構成しても構わない。
また、水蒸気供給装置50が内蔵されるコンロ10の加熱調理部12が電気を消費して熱を発生するように構成される電気コンロである場合には、そのボイラ51を、その加熱調理部12で消費するエネルギと同じエネルギ即ち電気を消費して熱を発生する電気ボイラとして構成することが望ましい。また、水蒸気生成手段としては、伝熱管52を流通する水Wを加熱するのではなく、例えば貯留部に貯留される水を電気ヒータやガスバーナなどで加熱して水蒸気Sを生成するなど、別の構成の水蒸気生成手段を採用しても構わない。
【0052】
(3)上記実施の形態では、上記水蒸気供給装置50は、水道から伝熱管52に直接水を供給するように構成したが、別に、水タンクを備え、その水タンクからポンプにより伝熱管52に水を供給するように構成しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る水蒸気供給装置及びそれを備えたコンロは、調理機器、掃除機器、加湿機器、又は、食器洗浄機器等の水蒸気利用機器に対して、合理的且つ高効率に利用価値の高い高温の水蒸気を供給するものとして、有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】家庭のキッチンの様子を示した図
【図2】水蒸気利用機器を説明する図
【図3】水蒸気利用機器を説明する図
【図4】水蒸気利用機器を説明する図
【図5】水蒸気供給装置の第1実施形態の概略構成図
【図6】水蒸気供給装置の第2実施形態の概略構成図
【符号の説明】
【0055】
5:ダクト
10:コンロ
12:加熱調理部
30:水蒸気供給コンセント
50:水蒸気供給装置
51:ボイラ(水蒸気生成手段)
52:伝熱管
53:燃焼空間
54:燃焼器
65:電気ヒータ
66:温度センサ(水蒸気温度検出手段)
67:制御装置(制御手段)
PH:予熱部
H1:第1加熱部
H2:第2加熱部
G:燃料ガス
S1,S2,S:水蒸気
W:水
X,11,15,17,19,21,23,25,27,32:水蒸気利用機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギを消費して発生した熱により水を加熱して水蒸気を生成する水蒸気生成手段を備えた水蒸気供給装置であって、
家庭に設置され、
前記水蒸気生成手段が生成した水蒸気を前記家庭に設けられた複数の水蒸気利用機器に分配供給するように構成された水蒸気供給装置。
【請求項2】
前記水蒸気利用機器に接続される水蒸気供給管を着脱自在に接続する水蒸気供給コンセントを備えた請求項1に記載の水蒸気供給装置。
【請求項3】
前記水蒸気利用機器が、調理対象物が収容される庫内に水蒸気を供給して該調理対象物の調理を行う調理機器、水蒸気を噴射して掃除を行う可搬式の掃除機器、室内に水蒸気を供給して該室内の加湿を行う加湿機器、食器が収容される食器収容部に水蒸気を噴射して該食器の洗浄を行う食器洗浄機器、水に水蒸気を混合して温水を生成する温水生成器、及び、調理物に水蒸気を吹きかけて該調理物を温める調理物加熱器の少なくとも1つを含む機器である請求項1又は2に記載の水蒸気供給装置。
【請求項4】
前記家庭のキッチンに設置されるよう構成されている請求項1〜3の何れか一項に記載の水蒸気供給装置。
【請求項5】
前記水蒸気生成手段として、燃焼空間において燃料ガスを燃焼させる燃焼器を有し、その燃焼空間に前記水が流通する伝熱管を配置してなるガスボイラを備え、
前記伝熱管が、前記燃焼空間において蛇行状態で密集配置されていると共に、前記燃焼空間において前記燃焼器から遠い領域である遠領域に配置され前記水供給部から水が供給される予熱部、前記燃焼空間において前記遠領域よりも前記燃焼器に近い領域である近領域に配置され前記予熱部から水が供給される第1加熱部、及び、前記燃焼空間において前記遠領域と前記近領域との間の領域である中間領域に配置され前記第1加熱部から水が供給される第2加熱部を有するよう配置されている請求項1〜4の何れか一項に記載の水蒸気供給装置。
【請求項6】
前記水蒸気生成手段で生成された水蒸気を過熱する電気ヒータを備えると共に、
前記電気ヒータで過熱された水蒸気の温度を検出する水蒸気温度検出手段と、
前記水蒸気温度検出手段の検出手段に基づいて前記電気ヒータの出力を制御する制御手段とを備えた請求項1〜5の何れか一項に記載の水蒸気供給装置。
【請求項7】
エネルギを消費して発生した熱により水を加熱して水蒸気を生成する水蒸気生成手段を備えた水蒸気生成装置であって、
前記水蒸気生成手段として、燃焼空間において燃料ガスを燃焼させる燃焼器を有し、その燃焼空間に前記水が流通する伝熱管を配置してなるガスボイラを備え、
前記ガスボイラで生成された水蒸気を過熱する電気ヒータを備えると共に、
前記電気ヒータで過熱された水蒸気の温度を検出する水蒸気温度検出手段と、
前記水蒸気温度検出手段の検出手段に基づいて前記電気ヒータの出力を制御する制御手段とを備えた水蒸気供給装置。
【請求項8】
エネルギを消費して熱を発生する加熱調理部を上面に設けたコンロであって、
請求項1〜7の何れか一項に記載の水蒸気供給装置を内蔵し、
前記加熱調理部が、前記水蒸気生成手段で消費されるエネルギと同じエネルギを消費して熱を発生するコンロ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−10274(P2007−10274A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−194091(P2005−194091)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】