説明

水質改善塊及びそれを用いた水質改善塊装置

【課題】
低廉な製造コストにより種々の水質改善必要箇所において簡易に設置し、長期かつ充分にその浄化機能を保持し得る水質改善塊ならびにそれを用いた水質改善塊装置を提供する。
【解決手段】
水中改善塊は、水中あるいは少なくとも一部が水に浸かるように配置されて適用される。水質改善塊は、任意の形状の塊本体と、塊本体の中央部に設けられた中空空間と、塊本体に設けられ外部と中空空間を連通する1個又は複数個の貫通孔と、有する。そして、塊本体が多数の連続空隙を有するポーラスコンクリートから構成されている。塊本体は球体や多面体で構成され、その外部と内部の中空空間とを水が自由に通流して水質改善を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川、水路、池、湖沼、海洋、水質浄化槽等の水中または水際に設置して水質改善を行なう水質改善塊及びそれを用いた水質改善塊装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、高度の生活環境より排出される汚水が、自然界の治癒能力以上に負荷をかけ続けて、悪化の一途をたどっている。したがって、増大する負荷に対し、それ以上に治癒力の増強を図る必要がある。特に、河川の汚染源として排水中に含まれる有機物や、窒素、リン成分は、水域の富栄養化を生起し藻類の光合成を介した異常増殖により有機性汚濁物質が生成されて水質汚濁を進行させる。水質汚濁原因となる有機物質のうち、特にリン除去には高価な装置を要し、実用化にはコスト面の課題がある。河川や海洋の水質低下は、例えば生活排水,産業排水,廃農薬類、廃棄物からの排水など種々の原因がありこれらを排出する工程と、排出後の処理工程の両面からの対策がその改善には必要である。水質の改善に関し、例えば特許文献1のような水質浄化用排水溝が提案されている。
【特許文献1】特開平11−19670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の従来の水質浄化用排水溝は、U字型排水溝に適宜間隔ごとに土砂沈殿枡を底部に設け、溝の内側に長方形の中空格子状の箱上枠組を配置し、その箱状枠組内部に、上面にフロート体を取り付けた軽石等の浮上性の水質浄化体を収容して構成したものである。この排水溝は、逆噴射工程等を不要として溝内を流れる水の水位に応じて箱状枠組全体が上下動することにより、溝底部に滞留した沈殿物や嫌気性微生物を繁殖させる人的環境面で好ましくない水底状態を解消して水質浄化にある程度貢献し得るものといえる。しかしながら、この従来の水質浄化用排水溝は、土砂沈殿枡に挟まれる部分に設置される等により、適用部位が極めて限られており、河川の川床根固めや木工沈床浄化、水路の堰部分の浄化、ダム水浄化等について,簡易に設置し機能を生じさせるような使用ができず、よって、そのような種々の適用場面で、浄化機能を充分にかつ長期に保持させ得る浄化構造体の出現が待望されていた。
【0004】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その1つの目的は、低廉な製造コストにより種々の水質改善必要箇所において簡易に設置し、長期かつ充分にその浄化機能を保持し得る水質改善塊ならびにそれを用いた水質改善塊装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明は、水中あるいは少なくとも一部が水に浸かるように配置される水質改善塊であり、任意の形状の塊本体12と、塊本体の中央部に閉鎖状に設けられた中空空間14と、塊本体12に設けられ外部300と中空空間14を連通する1個又は複数個の貫通孔16と、有し、塊本体12が多数の空隙を有する多孔質体から構成された水質改善塊から構成される。中空空間は必ずしも塊本体の中心部に位置するだけでなく、偏心した位置に設定しても良い。
【0006】
その際、貫通孔16は、その径hが塊本体12の肉厚tよりも小さな孔からなるように構成すると良い。
【0007】
また、貫通孔16は、中空空間14内に流入した水が該中空空間内で流動しやすいように、断面対称位置に少なくとも2個設けられているとよい。
【0008】
また、貫通孔16は中空空間14に対してオフセット状に連通する少なくとも2個1対の貫通孔を含むとよい。
【0009】
また、オフセット状に連通する貫通孔16の連通口18bが中空空間に対して略接線方向となるように連通して構成するとよい。
【0010】
また、貫通孔16が、外部300との連通口18aから中空空間14に向けて、あるいは、中空空間との連通口18bから外部に向けてテーパ状に次第に縮径または拡径する孔であるとよい。
【0011】
また、貫通孔16は断面長孔形状としてもよい。
【0012】
さらに、塊本体12の外殻は球体または多面体形状で構成されるようにしてもよい。
【0013】
また、中空空間14は球体または多面体からなるようにしてもよい。
【0014】
また、本発明の水質改善塊装置は、上記の請求項1ないし9のいずれかに記載の水質改善塊10を水が通流する部分か、あるいは水中にあって、所要の収容枠体52に充填した状態で配置させて構成される。
【0015】
また、本発明の水質改善塊装置は、同一サイズの単粒塊、あるいは異形粒塊で形成された請求項1ないし7のいずれかに記載の水質改善塊を水が通流する部分か,あるいは水中にあって,所要の収容枠体に充填した状態で配置させて構成される。
【0016】
すなわち、本発明は、ある種の構造体に生物化学的に生物膜を生成させること、並びに、構造体もしくは構造体に含有される素材と処理水とを反応させることによって水質の汚濁要素の一因である有機系汚濁水及び全窒素と全リン等で富栄養化した水を、浄化させる水質改善塊並びにそれを用いた装置に関するものである。そして、例えば構造体を優れた浄化処理機能を生じさせるポーラスコンクリートを主構造とする中空球体から構成し、これによって、既存の設備施設をできるだけ改造あるいは再築造することなく水質改善を実現する。このような自然環境保護に優れた水質改善塊ならびに水質改善塊装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の水質改善塊は、水中あるいは少なくとも一部が水に浸かるように配置される水質改善塊であり、任意の形状の塊本体と、塊本体の中央部に閉鎖状に設けられた中空空間と、塊本体に設けられ外部と中空空間を連通する1個又は複数個の貫通孔と、有し、塊本体が多数の空隙を有する多孔質体から構成されているから、単一の塊あるいはブロック形状でありながらそれ単独で大きくしかも長期に及ぶ水質改善機能を有し、水質浄化の機械的装置に比べトータルコストで設置が可能である上に、要水質改善環境に簡易に設置し得る。また、塊本体は例えば多数の連続空隙を有するポーラスコンクリートから形成することにより、微生物の生息による水質浄化が良好に行なわれ、しかも塊本体の内部にチャンバ室状の中空空間を設けているから貫通孔を介して水が常時流入、流出し、充分な空気を取り入れて生物の生息を促し、生物サイクルより水質浄化に寄与し得る。
【0018】
また、貫通孔は、その径が塊本体の肉厚よりも小さな孔からなる構成とすることにより、塊本体の多孔質の機能を充分に保持しつつ、中空空間との貫通孔による水の出入りを効率よく行なわせることができる。
【0019】
また、貫通孔は、複数個設けられ、中空空間内に流入した水が該中空空間内で流動しやすいように、外部と中空空間とを連通させる少なくとも2個の貫通孔が、空間的に異なる方向を向けて中空空間と連通接続されている構成とすることにより、中空空間内での流動が促進され常時新鮮な空気を取り込んで水質浄化を促進させることができる。また、塊本体の外部の水の圧力や水流に応じて塊本体の周囲から中空空間内に水が流入、あるいは中空空間から水が流出しやすくなる。また、塊本体の内外の水の流動入れ替えをより円滑に行なえる。
【0020】
また、貫通孔は中空空間に対してオフセット状に連通する少なくとも2個1対の貫通孔を含む構成であるから、中空空間内に入る水の渦状回転を確実に生起させ、水質改善機能を実効化あらしめる。
【0021】
また、オフセット状に連通する貫通孔の連通口が中空空間に対して略接線方向となるように連通して構成されていることにより、中空空間内に入る水が例えば渦状に回転し、水質改善機能を実効化あらしめる。
【0022】
また、貫通孔が、外部との連通口から中空空間に向けて、あるいは、中空空間との連通口から外部に向けてテーパ状に次第に縮径または拡径する孔である構成とすることにより、処理すべき水の流れや、環境に応じて外部と中空空間との水の流動を円滑に行なわせる貫通孔の態様として施工できる。また、外部との連通口から中空空間に向けてテーパ状に次第に縮径する孔として構成すると、塊本体の外部から貫通孔に水が流入しやすくなり、中空空間への連通口付近で流速を大きくし、中空空間内に高速で噴出され、中空空間が高圧となって円滑に外部に排出させるサイクルを実現し得る。さらに、成形工程での接合型との関係で型抜きがしやすく、製造を容易化させることができる。
【0023】
また、貫通孔は断面長孔形状であることにより、塊本体外部の種々の圧力あるいは流速条件の水を円滑に中空空間内に導入させ得る。
【0024】
また、塊本体の外殻は球体または多面体形状で構成されているから、例えば中空半割れ体どうしを接合させて簡易に低コスト量産製造ができるばかりでなく、種々の水域での施工場所において簡単に設置でき、しかも設置後の安定状態が短時間で決まるから、施工も短時間で高効率に行なえる。
【0025】
また、中空空間は、球体または多面体からなる構成であるから、例えば中空半割れ殻体どうしを接合させて簡易に低コスト量産製造ができるばかりでなく、種々の水域での施工場所において比較的に簡単に設置できる。
【0026】
また、本発明の水質改善塊装置は、請求項1ないし9のいずれかに記載の水質改善塊を水が通流する部分か、あるいは水中にあって、所要の容器状固定枠に充填した状態で配置させた構成であるから、河川,ダム、堰部分、池,湖、港湾,海洋などで簡単な構造の構築構造で設置できる。
【0027】
また、本発明の水質改善塊装置は、同一サイズの単粒塊あるいは異形粒塊で形成された請求項1ないし7のいずれかに記載の水質改善塊を水が通流する部分か,あるいは水中にあって、所要の容器状固定枠に充填した状態で配置させた構成とすることにより、容器状固定枠において投入時の投入空間内での各改善塊どうしの配置が略均等間隔で構成され、塊同士の緊結がなくとも強固に槽内で一種の嵌合状態となって、短時間で施工を終了でき、装置の強度も高く、しかも水質の高い改善効率を保持し得る。また、川の蛇行状態等の地形に沿って簡易、確実に水質改善塊装置を設置し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。本発明の水質改善塊は、水中あるいは少なくとも一部が水に浸かるように配置させて、その優れた浄化処理機能により、水質を改善し、また、既設の水処理あるいは水質改善用設備や施設等の特殊な設置構造を必要とすることなく簡易に水質改善構造体として適用し得る水質改善塊である。図1ないし図7は、本発明の水質改善塊の実施の形態を示している。図1、2は、本発明の第1実施形態に係る水質改善塊10−1を示しており、図において、この水質改善塊10−1は、任意形状の塊本体12の中央部に中空空間14を設け、該中空空間と外部とを連通する貫通孔16を設けて構成されている。塊本体12は、多数の空隙を有する多孔質体から構成されている。
【0029】
塊本体12は、内部に中空空間14を形成し、かつ、その塊本体自体に多数の空隙を有する多孔質体から構成されている。塊本体12は、任意の外形形状でよく、正多面体を含む任意の表面形状の多面体、あるいは表面に大あるいは小の凹凸を形成した立体、異形形状立体(球体、正多面体以外の立体)、その他任意の立体構造体であればよい。本実施形態では、球体から構成されている。また、本実施形態では、球体の直径D1は例えば300mmに設定されており、取り扱いが容易で、河川堰、川床根固め、堰、ダム等の施工時に単に配置するだけで位置が安定しやすく、施工完了となる。塊本体を構成する多孔質体は、例えば、粉状体の固化体や焼成体、あるいは天然の多孔質構造体を用いても良い。例えば木炭,多孔質セラミック等を素材としてこれらを適宜の無機あるいは有機無害のバインダを用いて任意形状の塊として固めたものでもよいし、あるいは焼成固着しても良い。多孔質セラミックとしては、例えばゼオライト,シリカゲル,活性炭、ケイソウ土、ガラス繊維等がある。多孔質体内の多数あるいは無数の孔に微生物が繁殖しし、水質浄化に寄与する。本実施形態において、多孔質体としては、たとえばポーラスコンクリートが用いられている。ポーラスコンクリートは、内部に多数の連続空隙を有する塊あるいはブロックないしはブロック殻体であり、軽量で取り扱いが簡単である剛性体である。上記のように、塊本体12は、任意形状でよく、正多面体を含む任意の表面形状の多面体、あるいは表面に大あるいは小の凹凸を形成した立体、異形形状立体、その他任意の立体構造体であればよい。本実施形態では、球体から構成されている。また、本実施形態では、球体の直径D1は例えば300mmに設定されており、取り扱いが容易で、河川堰、川床根固め、堰、ダム等の施工時に単に配置するだけで位置が安定しやすく、施工完了となる。
【0030】
本実施形態において、塊本体12は、上記のように、ポーラスコンクリートを成形して形成される。ポーラスコンクリートは、軽量コンクリートに採用される独立気泡成型体としてのコンクリートではなく、通常のコンクリートに比して粗骨材に対する細骨材の割合を極端に低くしてある。実施形態では、20〜30%程度の連続空隙率を有する多孔質コンクリートであり、内部の空隙内の無数の孔には微生物や多種多様の水棲生物が繁殖し、水質浄化を行なう。ポーラスコンクリートは、微視的には外部と中空空間14とを微細空隙が貫いて自由に水や生物等が移動し得る成型体である。ポーラスコンクリートは、軽量であるのに加え、ポーラスコンクリートの無数の孔には微生物が着床生息し、水質を浄化させる。また、ポーラスコンクリートは、ゼロスランプに近い状態で成形し、空隙率をコントロールできる。したがって、型枠の上面開口等から投入しながら、効率よく充填しつつ良好な作業性で成形し得る。なお、塊本体を球体形状で構成する場合には、例えば同一の型により複数の中空半割れ球体を製造し、これらの半割れ面どうしを接合させることにより、簡易に低コスト量産製造ができる。
【0031】
中空空間14は、塊本体12の中央部に形成されて後述する貫通孔16と連通し、塊本体の内側と外側との大きな水路を形成させる一種のチャンバであり、貫通孔16を介して塊本体自体の中に大きな水の流れを常時生じさせ、あるいは生じさせやすくする。中空空間14の大きさは、任意でも良いが、外殻を球体とすると例えばその直径の10分の1〜10分の7程度、好ましくは10分の3〜10分の6、より好ましくは、10分の4〜10分の6程度がよい。実施形態では、塊本体の外径300mmに対し、中空空間の直径D2は140mmに設定されている。また、中空空間の形状は、多面体、球体、その他任意の空間形状でよいが、内部での水の流動性が高い形状とするのが好ましい。
【0032】
貫通孔16は、塊本体12の外部300と中空空間14とを連通する孔であり、塊本体の内側と外側とをつなぐ少なくとも塊本体素材自体の連続空隙よりも大きな断面を有する水路である。貫通孔16内を水が自由に通流し、内部の中空空間と塊本体の外表面側との間を流入,流出移動するようになっている。貫通孔16は、単に1個のみ設けても良いが、中空空間14の機能を効果的に利用する意味では複数個設けるのが良い。直線孔あるいは直線状の孔が好ましいが、曲線状に曲げられた孔でも良い。また、その際、進行方向に螺旋状に曲げられた孔としてもよく、孔の出口側等の状況に対応させるようにし得る。実施形態において、貫通孔16は、中空空間内に流入した水が該中空空間内で流動しやすいように、断面対称位置に少なくとも2個設けられている。詳細には、本実施形態において、該貫通孔は10ヶ所に形成されており、本実施形態では、図1,2に示すように、直棒に球体の中心を刺し貫くように直径方向に一直線となるような1対の孔が5対設けられている。実施形態ではこの貫通孔16の孔径h(流入と流出側で径が異なる場合は大きいほうの径)は、塊本体の肉厚tより小さな径の孔で形成されている。さらに、本実施形態では貫通孔16は、中空空間14から放射状にしかも対称に塊本体の外部に向けて広がるように形成されている。さらに、本実施形態では、貫通孔16は、いずれかの側の開口から他の側の開口に向けてテーパ状に拡径又は縮径するテーパ孔として形成されている。詳しくは、本実施形態では、貫通孔の外部300との連通口18aはその中空空間14との連通口18bとの連通口18bよりも大きく設定されている。これによって、塊本体の外部からは水が入りやすく、また、入った水は拡散するように外部に向けて放出される。また、このような孔構成とすることにより、外部から引き抜かれる抜き型を用いて製造できるので、例えば半割れ体を接合させて成形する方法により製造ができ、内部の中空空間の形状や、内部への充填物の充填作業を円滑に行なえる。本実施形態では、外部との連通口18aから中空空間14に向けてテーパ状に次第に縮径する孔あるいは、中空空間14との連通口18bから外部300に向けてテーパ状に次第に拡径する孔が球体の中心を含む中空空間14から放射対称に外部300に向けて形成されている。貫通孔の大きさは塊本体の機能や強度を害しない範囲で任意に設定してよい。また、貫通孔の径も必要な範囲で任意の大きさに設定できる。さらに貫通孔の数は1個でもよいが、少なくとも流入と流出用の計2個は設けることが好ましい。例えば、3ないし10個、あるいは11個ないし20個、さらには21個ないし30個等任意に設定できる。貫通孔は上記のように、例えば球体の中心を通る線に対して線対称、あるいは中心に対して点対称となる位置に配置させても良いが、水の中空空間と外部との流通性あるいは流動性を良好に保持する範囲で、非対称位置に該貫通孔を配置させてもよい。
【0033】
この中空空間14中には必要に応じて水質改善に資する物質を中込してもよい。例えば、蛎殻、真珠貝の殻、焼成した貝殻,間伐材で形成した木毛、木炭、人工ゼオライト、リモナイト、脱鉄スラッジ、高炉スラグ等を容易に分散しないように網袋等に入れたものを予め中込めしても良い。
【0034】
これによって、該水質改善塊10−1を河川、海岸、ダムなどに配置させるだけで塊本体としてのポーラスコンクリートの強固な球体に30%程度の空隙率と内部に中空空間14を有するから、塊本体12の全表面からの水の流入出が可能となる。そして、塊本体自体のポーラス素材による空隙部には,それぞれの河川等に生息する微生物により,生物叢が形成され、この生物叢に汚濁水を接触させることで有機物の浄化が促進される。また、塊本体としての球体の中央部に設けた中空空間、貫通孔16や、塊本体の多孔質部の空隙と球体間の間隙に、水流や水圧を変化させながら接触し、通水させることで水の集散や渦流を起こしながら繰り返し空気を取り入れることが可能となり,これによって、浄化処理を効果的に増大させ得る。これらの水質改善塊は、既設のコンクリート製水路はもとより,新設されるコンクリートその他,間伐材などで構成された水路,あるいは構造材内部に間伐材など,各種素材を用いた枠組内に,単粒径の球体を敷設することにより,それらの枠組み内で強固に安定的な水質改善構造を形成し得る。なお、池、湖等の閉鎖水域では、ポンプ等により人工的に流水を生起させることなどで、水質改善塊への水の接触量を高めて効果を増大し得る。中空空間には必要に応じた浄化処理目的により、例えば蛎殻、真珠貝の殻、焼成した貝殻,間伐材で形成した木毛、木炭、人工ゼオライト、リモナイト、脱鉄スラッジ、高炉スラグ等の中込め材を収容させても良く、これによって、生物的,化学的,物理的に汚濁水質の窒素、リン、有機物の浄化処理を効果的に行なえる。なお、中空空間14及び塊本体12は、任意の形状でよく、多面体などで構成しても良いが、正多面体あるいは球形状であるとなおよい。上記の実施形態では、塊本体を構成する多孔質体として、ポーラスコンクリートを適用しているが、先に示した木炭、竹炭、その他多孔質セラミックの固化体などを用いても良い。
【0035】
次に、図3,4により、本発明の第2の実施形態について説明するが、第1実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。この第2実施形態の水質改善塊10−2の塊本体12には、貫通孔16が、球体の中心に対して点対称となる位置の計6ヶ所に形成されている。図3,4に示すように、本実施形態では、貫通孔16は、直棒に球体の中心を刺し貫くように直径方向に一直線となるような孔ではなく、中空空間に入る水が該中空空間内でより円滑に渦状に回転するように貫通孔16の中空空間との連通口18bが互いに離隔する位置に設けられている。すなわち、本実施形態の貫通孔16は、中空空間に対してオフセット状に連通する少なくとも2個1対の貫通孔を含む。より詳しくは、図4において、異なる4箇所に連通口18bを有する貫通孔のうち、円の略直径を含む線上の対向位置にある貫通孔は、それぞれ略同じ方向に向けられて穿孔され,相互にオフセット状に中空空間に対して連通されている。すなわち、それぞれオフセット状に空間14に連通する貫通孔16は、球状の中空空間14に対して連通口18bは接線状に(断面が接線を含む孔)連通接続されている。これによって、塊本体12の外部300(塊本体の外表面部分)から流入した水は矢視aのように反時計方向に回り、渦流を生じさせやすくなる。また、本実施形態では、外部との連通口18aから中空空間14に向けてテーパ状に次第に縮径する孔あるいは、中空空間14との連通口18bから外部300に向けてテーパ状に次第に拡径する孔が球体の中心を含む中空空間14から放射状に外部300に向けて形成されている。
【0036】
この第2実施形態の水質改善塊10−2は、例えば、球の中心を通る基準線350よりも左上側では、水圧側(水流の上流方向)より貫通孔16a,16bに流入し、通過した水が中空空間14を例えば乱流状あるいは渦巻き状に流動しながら,水圧の低い側(下流方向)へと流れて右下側の2個の貫通孔16c、16dから放出される。実際には、小さな渦流を複数個作りながら消失させる流れを連続的に形成させると考えられるが、これによって、本体の多孔質部の空隙と球体間の間隙に、水流や水圧を変化させることによる接触効率を多くして、より多くの空気を取り入れることが可能となり,これによって、浄化処理効率をより一層向上させることができる。
【0037】
本発明の水質改善塊は、上記の第1,第2の実施形態に示したような貫通孔16の形成態様に限られない。孔の数はより多く設けても良い。塊本体を直線状に刺し貫かれる孔の構成ではなく、流入した水が流入方向と交差するように曲げられて連通するような貫通孔でもよい。
【0038】
なお、上記した第1、第2実施形態では、貫通孔を球体中心を通る線に対して線対称、あるいは中心に対して点対称位置に配置させた例を示すが、例えば図5,6,7に示すように、外部側連通口18aが4面体の頂点位置に対応する位置に設定されて中空空間14と連通するような孔構成としても良い。この図5〜7の例の水質改善塊10−3では、正4面体の頂点位置に対応した外部側連通口18aを有する貫通孔16が外部側から中空空間に向ってテーパ状に縮径する孔として構成されているが、非正4面体頂点位置に設定してもよいし、また、孔形状も直状の孔としてもよい。また、テーパ状の広がりを中空空間側から外部側に向けて拡径するようなテーパ孔としてもよい。
【0039】
次に、本発明の第3の実施形態について図8、図9を参照して説明するが、前記した第1実施形態と同一部材には同一符号を付し,詳細な説明は省略する。本実施形態は、前記した水質改善塊を用いて構成された水質改善塊装置50について示している。水質改善塊装置は、河川等の水が通流する部分か、あるいは湖,池、ダム、海岸等の水中にあって、所要の収容枠体に前述した水質改善塊を投入充填することにより構成される。
【0040】
この第3実施形態の水質改善塊装置50は、河川等の水が通流する部分にあって、所要の収容枠体52に例えば第1、第2実施形態に示した水質改善塊を充填した状態で配置させた構成である。図8において、この実施形態の水質改善塊装置50は、非透水性コンクリート等により形成された断面上開口コ字状の一方向に長い水路枠54と、水路枠54の内壁に沿うように周囲壁が収容され図9に示すような長手所要間隔に設けた堰状の複数の仕切り部56を有する囲み枠からなる収容枠体52と、収容枠体52内に投入充填される本発明の水質改善塊10と、を含む。実施形態では収容枠体52は間伐材で構成されて資源の有効利用を図り、水流によって発生する微細な震動を減衰し水質改善塊の損傷を防ぐ。収容枠体52は底部を有しない囲み枠として構成してるが、有底の容器状の枠体としてもよい。水路枠54の底部には砂礫が敷き込まれている。図8は、装置の一断面を示すが、本装置は一方向に長い長枠槽体から構成されており、例えば図9の収容枠体52を水路枠54が収容した構成となっている。図9では水質改善塊は図示していないが収容枠体52の仕切り部の間にたとえば球状の水質改善塊10が投入充填される。堰状の複数の仕切り部56を上流側から下流側に水が流れる際に、各仕切り枠間に存在する水質改善塊により、高効率に水質改善される。水質改善された水は再び河川に戻されたりあるいは,農業用水等として利用可能である。この実施例では、球体から成る水質改善塊が適用されており、同一サイズの半径球体の水質改善塊を充填することにより、強固で安定した装置を構成し得る。なお、水質改善塊装置箱の実施形態の構成に限定されず、収容枠体の形状,サイズ、構造は任意の物を設定してよい。また、設置環境、具体的施工箇所等は水中あるいは少なくとも一部が水に浸かるような場所であれば好適に適用し得る。
【0041】
また、単粒径(単一の粒径を有する)球体を配置させた枠の中で相互の球体間に充分な大きさのしかも移動しにくい間隙Sが形成されるから、エビ・カニ類、小魚などを含む生物の生息あるいは避難域を形成し得る。特に、同一半径球体による単粒径球体であるから、投入時の投入空間内での各改善塊どうしの配置バランスが優れ、また、敷設の幅や長さ、深さを適宜に調整して最適の水質改善作用を起こさせるように設定し得る。また,この際、囲み枠58の長手側の側板や仕切り部の仕切り板の形状や取り付け方法を変化させることにより、流水を上越しさせたり下潜りさせることができ、これによって,水質改善塊の内部、表面に生息する好気・嫌気性菌の活動域を人為的に作り出すことができる。また,それによって、微生物による水質浄化機能を向上させ得る。また、前述のような水質改善塊の中空空間内に中込材を収容配置させることにより、中込材との反応効果を向上させ機能面での付加価値を向上させ得る。また、単一粒径の球体でなくとも異なるサイズの粒径を含む異形粒塊の水質改善塊を含む混合粒塊を収容枠体内に配置させて水質改善塊装置を構成するようにしても良い。
【0042】
なお、池,湖、ダム周辺等の閉鎖水域で本装置50を適用する場合には、槽内に積極的に水の流れを生じさせる必要から例えば図10のように、槽の水排出端側から再び水の投入端側に水を戻す戻しパイプ60を配管し、図示しないポンプで水を循環させることで水循環装置62を介して水質改善を行なわせることができる。
【0043】
上記の第3実施形態の水質改善塊装置は、一つの装置例にすぎない。例えば、図11の砂防ダムの堰部、図12の港湾護岸沿いに設置された海水浄化設備、図13の川床根固め装置、図14の川床に設置される木工沈床等に簡易に適用することができる。この際、それぞれに設けられた収容枠体52内に水質改善塊10を投入充填するだけで水質改善を行なうとともに生物の生息域を形成させることができる。また、水質改善塊を球体から形成することにより収容枠体内で安定嵌合位置が短時間で決まり、また小魚等の棲息空間を充分に大きく形成させ得る。さらに中込材を予め水質改善塊の中空空間内に充填しておくことにより、水質改善塊の水質改善機能を向上させることができる。
【0044】
以上説明した本発明の水質改善塊及び水質改善塊装置は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の袋体の水質改善塊及び水質改善塊装置は、河川、ダム、海域沿岸、池、湖その他の水域、浄水設備、その他の水設備において水質改善塊単体で、あるいは容器状固定枠内に配置させて水質改善塊装置として自在に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態に係る水質改善塊の正面図である。
【図2】図1の水質改善塊の縦断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る水質改善塊の正面図である。
【図4】図3の水質改善塊の作用説明を兼用した縦断面図である。
【図5】水質改善塊の他の実施形態の正面図である。
【図6】図5の水質改善塊の縦断面図である。
【図7】図5の水質改善塊の外部連通口位置を説明する説明図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る水質改善塊装置の縦断面図である。
【図9】図8の装置の一部破断した収容枠体を示す斜視説明図である。
【図10】図9の収容枠体に水循環装置を設けた例の斜視説明図である。
【図11】図8の装置の他の施工例を示す斜視説明図である。
【図12】図8の装置の他の施工例を示す斜視説明図である。
【図13】図8の装置の他の施工例を示す斜視説明図である。
【図14】図8の装置の他の施工例を示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0047】
10 水質改善塊
12 塊本体
14 中空空間
16 貫通孔
50 水質改善塊装置
52 収容枠体
300 外部
D1 外殻直径
D2 中空空間の直径
S 球体どうしの間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中あるいは少なくとも一部が水に浸かるように配置される水質改善塊であり、
任意の形状の塊本体と、
塊本体の中央部に閉鎖状に設けられた中空空間と、
塊本体に設けられ外部と中空空間を連通する1個又は複数個の貫通孔と、を有し、
塊本体が多数の空隙を有する多孔質体から構成されていることを特徴とする水質改善塊。
【請求項2】
貫通孔は、その径が塊本体の肉厚よりも小さな孔からなることを特徴とする請求項1記載の水質改善塊。
【請求項3】
貫通孔は、中空空間内に流入した水が該中空空間内で流動しやすいように、断面対称位置に少なくとも2個設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の水質改善塊。
【請求項4】
貫通孔は中空空間に対してオフセット状に連通する少なくとも2個1対の貫通孔を含む請求項1または2記載の水質改善塊。
【請求項5】
オフセット状に連通する貫通孔の連通口が中空空間に対して略接線方向となるように連通して構成されていることを特徴とする請求項4記載の水質改善塊。
【請求項6】
貫通孔が、外部との連通口から中空空間に向けて、あるいは、中空空間との連通口から外部に向けてテーパ状に次第に縮径または拡径する孔であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の水質改善塊。
【請求項7】
貫通孔は断面長孔形状であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の水質改善塊。
【請求項8】
塊本体の外殻は球体又は多面体形状で構成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の水質改善塊。
【請求項9】
中空空間は球体又は多面体からなる請求項1ないし8のいずれかに記載の水質改善塊。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の水質改善塊を水が通流する部分か、あるいは水中にあって、所要の収容枠体に充填した状態で配置させたことを特徴とする水質改善塊装置。
【請求項11】
同一サイズの単粒塊、あるいは異形粒塊で形成された請求項1ないし7のいずれかに記載の水質改善塊を水が通流する部分か、あるいは水中にあって、所要の収容枠体に充填した状態で配置させたことを特徴とする水質改善塊装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−205068(P2006−205068A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−20924(P2005−20924)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(596002424)不二高圧コンクリート株式会社 (8)
【出願人】(502308620)株式会社哲建設 (2)
【出願人】(505036010)株式会社憲翔技研工業 (4)
【出願人】(504293274)高原木材有限会社 (2)
【Fターム(参考)】