説明

水質浄化・緑化用資材

【課題】河川、湖沼等における水質浄化及び緑化に有用であり、環境面でも優れた水質浄化・緑化用資材に関し、施工が簡易で製造コストが安価であり、水質浄化及び緑化の双方の機能を発揮させることができ、しかも資材の再利用、有効利用を図ることができる水質浄化・緑化用資材を提供することを課題とする
【解決手段】本発明は、このような課題を解決するために、瓦の廃材の粉粒体と、火山灰土の粉粒体若しくは木製素材の炭化物の粉粒体とが含有されていることを特徴とする水質浄化・緑化用資材を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川、湖沼等における水質浄化及び緑化に有用であり、環境面でも優れた水質浄化・緑化用資材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、河川、湖沼等における水辺の景観改善のための緑化や、湖沼の富栄養化による水質汚濁、さらには、これらに伴う水辺生態系の衰退や、自然景観の悪化が問題になっている。そこで、水生植物の植栽や水質浄化に関する係る技術が従来から開発されている。
【0003】
そのような技術に関する特許出願として、たとえば特許文献1や特許文献2のような出願がなされている。特許文献1に係る発明は、当該特許文献1の請求項1にも記載されているように、「イカダ底面と水面との間に空間が形成できるように浮き部材を取付けたイカダを水上に係留し,該イカダを構成する各バーの隙間を利用して陸生植物を植生し,この陸生植物の根上部を前記空間に曝したうえ根下部を水中に浸漬させながら陸生植物を水上定置栽培することからなる水上緑化兼水質浄化法。」に関するものであり、特許文献2に係る発明は、当該特許文献2の請求項1にも記載されているように、「溝部を有するポーラスコンクリート構造体の該溝部内に、マットと水質浄化部材とを配置したことを特徴とする緑化水質浄化構造体。」に関するものである。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された浮き部材を取付けたイカダを用いて陸生植物を水上定置栽培するものであるため、陸生植物の植栽に手間がかかり、植物の交換や保守性に労力を要するという問題がある。また、浮き部材を取付けたイカダを水上に係留するものであるため、風雨や波浪の影響により移動しないようにロープやワイヤー等で固定する作業も必要となる。さらに特許文献2に記載された緑化水質浄化構造体は、溝部を有するポーラスコンクリート構造体の該溝部内に、マットと水質浄化部材とを配置したものであるため、そのようなマットと水質浄化部材とを配置するための溝部を形成した専用のポーラスコンクリート構造体を新設のものとして製作しなければならず、施工の作業が煩雑となる。
【0005】
一方、上記特許文献1にかかる発明の問題点を解決するために、特許文献3のような特許出願もなされている。この特許文献3に係る発明は、当該特許文献3の請求項3にも記載されているように、「孔あきシートまたはネットからなる袋体内に,全体の比重が1未満になるように配合した軽量培地を装填してマット状の植栽床を形成し,このマット状植栽床に陸生植物を植栽した状態で該植栽床の上面が水面より高くなるように水に浮遊させることを特徴とする水質浄化兼水辺緑化法。」に関するものである。
【0006】
この特許文献3に係る発明によれば、上記特許文献1に係る発明の「植物の植栽に手間がかかり、植物の交換や保守性に労力を要する」という問題は解決することができるが、マット状植栽床に陸生植物を植栽した状態で該植栽床の上面が水面より高くなるように水に浮遊させるものであるため、風雨や波浪の影響により移動しないようにロープやワイヤー等で固定する作業が必要となるという問題点を解消することはできない。また、袋体内に装填する軽量培地の一部に、浮力を生じさせるために発泡スチロール片のような発泡性合成樹脂を含み、そのような発泡性合成樹脂は難分解性のものであるので、環境面の観点からは必ずしも好ましいものではない。
【0007】
さらに比較的最近の技術として、特許文献4のような特許出願もなされている。この特許文献4に係る発明は、当該特許出願4の請求項1にも記載されているように、「木材破砕物と、接着剤とを含むマット状に固結した基盤に、水生植物又はその苗木を植栽するための複数の底が閉塞した穴が設けられており、該穴に鉄含有セラミックス多孔体を充填してなり、前記鉄含有セラミックス多孔体の含有割合が、前記基盤が水中に沈降しうる比重1050〜1100kg/m3となる割合である水生植物植栽用基盤」に関するものである。
【0008】
しかし、この特許文献4にかかる発明では、鉄含有セラミックス多孔体を用いるので製作コストが必ずしも安価ではなく、また木材破砕物と接着剤とを含むマット状に固結した基盤に、底が閉塞した穴を設けるので、製作作業が必ずしも簡易なものではない。
【0009】
さらに、上記のような特許文献1乃至4に係る発明は、水質浄化及び緑化の双方の機能を発揮させることを意図するものではあるが、現実にはそのような双方の機能を効果的に発揮させるには至らないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−178626号公報
【特許文献2】特開平11−57755号公報
【特許文献3】特開平8−322406号公報
【特許文献4】特開2009−296939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、上記従来の特許文献1乃至4の技術のような問題点を生じさせることがなく、施工が簡易で製造コストが安価であり、水質浄化及び緑化の双方の機能を発揮させることができ、しかも資材の再利用、有効利用を図ることができる水質浄化・緑化用資材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、このような課題を解決するために、瓦の廃材の粉粒体と、火山灰土の粉粒体若しくは木製素材の炭化物の粉粒体とが含有されていることを特徴とする水質浄化・緑化用資材を提供するものである。火山灰土の粉粒体としては、赤玉土、ボラ土、又は鹿沼土のようなものが用いられる。また、この水質浄化・緑化用資材には、さらに火山砂利を含有させることが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水質浄化・緑化用資材は、上述のように、瓦の廃材を含有するものであるため、従来において廃棄後の有効利用が必ずしも図られていなかった廃瓦の再利用、有効利用を図ることができるという効果がある。
【0014】
また、この瓦の廃材は強度があるので、含有成分中において骨材として有効に機能し、比較的強度の弱い火山灰土の粉粒体や木製素材の炭化物と混合することによって、全体として水質浄化・緑化用資材に一定の強度を付与することができ、通水時の衝撃を緩和する作用を有することとなる。また瓦の廃材は濾過機能に優れているので、濾過材としても有効に機能することとなる。
【0015】
さらに、比重が大きく重量があるので、比較的軽量である火山灰土の粉粒体や木製素材の炭化物と混合することによって、全体として水質浄化・緑化用資材が安定した状態となる。また、瓦の廃材の粉粒体には吸水性もあり、水質浄化・緑化用資材全体としても吸水性を向上させることとなる。
【0016】
さらに、火山灰土の粉粒体や木製素材の炭化物が含有されているので、これらを含有する水質浄化・緑化用資材の吸水性が効果的に発揮され、水の吸着、濾過作用が良好となり、水質浄化作用が好適に発揮されることとなる。また吸水性が良好であるので、植物の生育も良好となり、緑化の機能も好適に発揮されることとなる。
【0017】
さらに、火山灰土の粉粒体は、水中のリンや有機物を好適に吸着させることができ、その結果、河川、湖沼等における水辺の景観改善のための緑化や、湖沼の富栄養化による水質汚濁なども効果的に防止することができる。
【0018】
このように、本発明の水質浄化・緑化用資材は、吸水作用、濾過作用、リンや有機物の吸着作用を好適に生じさせるので、水質浄化及び緑化の双方の機能を発揮させることができる水質浄化・緑化用資材を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一実施例としての濾過速度の試験に用いられる装置の概略ブロック図。
【図2】一実施例としての瓦の粒状物のpF値と体積含水率の相関関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の水質浄化・緑化用資材は、上述のように、瓦の廃材の粉粒体と、火山灰土の粉粒体若しくは木製素材の炭化物の粉粒体とが含有されたものである。「火山灰土の粉粒体若しくは木製素材の炭化物の粉粒体」が含有されるので、本発明の水質浄化・緑化用資材には、廃材の粉粒体、火山灰土の粉粒体、及び木製素材の炭化物の粉粒体の3種の粉粒体が含有される場合の他、廃材の粉粒体及び火山灰土の粉粒体の2種の粉粒体のみが含有される場合、或いは廃材の粉粒体及び木製素材の炭化物の粉粒体の2種の粉粒体のみが含有される場合がある。
【0021】
一般に、瓦は、釉薬を用いて焼成した陶器瓦と、釉薬を用いずに焼成したいぶし瓦とがある。いずれの瓦の廃材を用いることも可能であるが、陶器瓦を用いた場合には、釉薬の成分である銅、鉛、コバルト等が水中に溶出するおそれがあることから、本発明においては、いぶし瓦の廃材を用いるのが好ましい。
【0022】
また、廃材として、たとえば屋根瓦として使用した後の瓦の廃材を用いることも可能であるが、その場合には、釘、その他の不純物が混入されているおそれがあることから、本発明においては、瓦の製造工程において生じた不良品を用いることが好ましい。
【0023】
一般に、瓦は、原料の調製工程、調製された原料に水を添加する工程、水を添加した原料を型枠に充填して成型する工程、成型後に乾燥する工程、乾燥後に脱型して焼成する工程によって製造されるが、瓦の不良品は主に焼成工程において生じる。従って、本発明では、この焼成工程で生じた瓦の不良品の廃材が主として用いられる。
【0024】
従来では、このような焼成工程で生じた瓦の不良品は、そのまま埋め立てる等によって廃棄されていたため、その焼成工程で生じた瓦の不良品を、本発明の水質浄化・緑化用資材の一成分として用いることで、瓦の廃材の有効利用、再利用を好適に図ることができる。
【0025】
瓦の廃材は、破砕機等で粉砕されて粉粒体の状態で用いられる。その粉粒体の粒径は特に限定されるものではないが、5〜30mmのものを用いるのが好ましい。粒径が5mm未満になると透水性が不良になるおそれがあり、また30mmを超えることで特に不都合はないが、他の火山灰土の粉粒体や木製素材の炭化物の粉粒体と混合する場合に、30mm以下のものを用いることで調製が容易となる。この観点からは、10〜20mmのものを用いるのがより好ましい。
【0026】
また、火山灰土の粉粒体としては、たとえば赤玉土、ボラ土、或いは鹿沼土等を用いることができる。これら赤玉土、ボラ土、鹿沼土の粒径も特に限定されるものではないが10〜20mm程度のものを用いるのが好ましい。
【0027】
さらに、木製素材の炭化物の粉粒体としては、たとえば広葉樹の廃材の炭化物のようなものが用いられる。広葉樹の炭化物は比表面積が大きく、多孔質材料としては有用なものである。この木の廃材の炭化物も粉粒体として用いられ、その粒径も特に限定されるものではないが10〜20mm程度のものを用いるのが好ましい。尚、「木製素材の炭化物とは、上記のような木材の廃材の炭化物、木材自体の炭化物の他、たとえば紙やパルプの炭化物のようなものも含むことを意味する。
【0028】
上記火山灰土の粉粒体は、化学的吸着力が高いという特性を有し、水中のリンや有機物を吸着させることができる。また木製素材の炭化物の粉粒体は、物理的吸着力が高いという特性を有するものであるが、同様に水中のリンや有機物を吸着させることができる。リン、窒素、カリウム等は肥料としては有用なものであるが、水中に存在すると富栄養化の観点から好ましくないので、水中からは除去する必要がある。
【0029】
このような火山灰土の粉粒体や木製素材の炭化物の粉粒体を含有する水質浄化・緑化用資材をたとえば水辺等に設置すると、水中のリンや有機物を吸着することができ、また吸着したリンや有機物を水性植物又は陸生植物の生育用として利用することができる。
【0030】
さらに、本発明の水質浄化・緑化用資材には、上記のような瓦の廃材の粉粒体、火山灰土の粉粒体、木製素材の炭化物の粉粒体の他に、火山砂利を含有させることもできる。このような火山砂利を含有させることで、その火山砂利が骨材として機能する他、リンや有機物の吸着効果も良好となる。
【0031】
上記のような瓦の廃材の粉粒体と、火山灰土の粉粒体若しくは木製素材の炭化物の粉粒体等が含有された水質浄化・緑化用資材は、そのままの状態で使用することができる他、たとえば化学繊維、ヤシ繊維、樹脂等で製造された袋体や容器等に収容して使用することもできる。このような袋体や容器等に収容することで、紛失等を防止できるとともに、取り扱いが容易となる利点がある。
【0032】
また、上記水質浄化・緑化用資材をブロック状等の所望の形状に成形することによって、植物の植栽基盤として利用することができる。また、このようにして成形された植栽基盤を、単独若しくは複数個用い、河川、湖沼等の水辺等に設置することで、河川、湖沼等の水辺に良好な植生景観を形成することができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0034】
(実施例1)
本実施例は、本発明の水質浄化・緑化用資材に含有される粒状物を試料として、それぞれ濾過速度について試験したものである。試験には、図1に示すような装置を用いた。すなわち、この装置は、同図に示すように、原水容器1と、定量ポンプ2と、カラム3と、処理水容器4とを具備するものである。
【0035】
カラムの内径は25mm、カラムの高さは200mmで、この中に水質浄化・緑化用資材に含有される含有物の試料を、100mmの高さとなるように投入した。従って、投入された試料の体積は49cm3である。試料は、いずれも1〜2mmにふるい分けしたものを用いた。
【0036】
原水容器1に投入された原水は、定量ポンプ2によって一定速度で、試料が充填されたカラム3に流される。カラム3は、入口部3aと出口部3b以外は密閉されており、予め試料と同じ高さまで原水が収容されており、定量ポンプ2によって投入された原水と同量の処理水が、出口部3bから排出されるように構成されている。排出された処理水は処理水容器4に貯留され、一定期間の混合採水として分析を行った。
【0037】
試料としては、ボラ土、炭、瓦、赤玉土の4種類の粒状体を用いた。瓦としては淡路産のいぶし瓦を用い、炭としては広葉樹の炭化物を用いた。また通水速度は、2.45m/dayと4.90m/dayで行った。投入質量は、ボラ土が35.3g、炭が7.5g、瓦が45.2g、赤玉土が32.2gである。
【0038】
測定項目は、pH、電気伝導度(EC)、酸化還元電位(ORP)、全有機炭素(TOC)、及びT−P(全リン)について行った。TOC及びT−Pについては、濃度のみならず除去率も求めた。試験結果を表1及び表2に示す。表1は通水速度が2.45m/dayの場合の結果であり、表2は通水速度が4.90m/dayの場合の結果である。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
表1からも明らかなように、通水速度が2.45m/dayの場合には、pH、EC、及びORPについては、4種類のサンプルにおいてほぼ近似した数値であったが、T−P及びTOCの除去率については、赤玉土が最も優れていた。
【0042】
また表2からも明らかなように、通水速度が4.90m/dayの場合においても、pH、EC、及びORPについては4種類のサンプルにおいてほぼ近似した数値であったが、T−P及びTOCの除去率については赤玉土が最も優れていた。
【0043】
(実施例2)
本実施例では、本発明の水質浄化・緑化用資材に含有される一部の含有物について、加熱したものと加熱しないものとの比較試験を行ったものである。一部のサンプルについては600〜800度程度に加熱して用いた。加熱比較試験で用いたサンプルと投入質量を次表3に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
試験には、実施例1と同様に図1の装置を用い、測定項目は、pH、電気伝導度(EC)、T−P(全リン)、全有機炭素(TOC)について行った。試験結果を表4に示す。表4において、原水1とは、ボラ土、赤玉土、鹿沼土に使用した原水であり、原水2とは、炭、瓦、青土、浅黄土、黒土に使用した原水である。
【0046】
表4からも明らかなように、リン除去率は、加熱、非加熱を問わず、赤玉土及び鹿沼土が高かった。ボラ土は、非加熱の場合、80%を超える除去率を得た。しかし、加熱すると除去率は下がった。加熱によって、ボラ土に含まれている鉄の結晶構造が変化し、吸着能が低下したものと思われる。一方、赤玉土や鹿沼土は、鉄だけでなく、アルミニウムによる吸着が良好で、加熱によって大きな変化が生じなかったものと思われる。
【0047】
【表4】

【0048】
(実施例3)
本実施例では、本発明の水質浄化・緑化用資材に含有される含有物のうち、瓦について表乾比重と吸水率の試験を行った。試験は、室温25℃、湿度45%、水温20℃の条件下で行った。瓦としては淡路いぶし瓦の破砕品を用いた。
表乾比重の試験に際しては、先ず500mlのフラスコを準備し、そのフラスコに、上記のような瓦の破砕品の試料と水とを入れ、フラスコと試料と水との質量の総計を求め、その総計の質量から、フラスコの質量と試料の質量とを差し引き、水の質量を求めた。表乾比重は、求められた水の質量とフラスコの容量(500ml)と試料の質量とから、次式(1)で求められる。
表乾比重=(試料の質量)/〔(フラスコ容量)−(水の質量)〕・・・(1)
さらに、吸水率の試験に際しては、水に浸漬させた後の試料の質量を求め、その試料を乾燥させた後の試料の質量を求め、次式(2)から吸水率を求めた。

吸水率=〔(水浸漬後試料質量)−(乾燥後試料質量)〕/(乾燥後試料質量)× 100(%)・・・(2)

表乾比重と吸水率の試験結果を表5に示す。
【0049】
【表5】

【0050】
表5から、表乾比重の平均値は2.07、吸水率の平均値は14.14%であった。上記本実施例の結果から、瓦の破砕品の表乾比重と吸水率とはいずれも良好であることがわかった。
【0051】
(実施例4)
本実施例では、本発明の水質浄化・緑化用資材に含有される含有物のうち、瓦について保水性の試験を行った。具体的には、瓦の粒状物のpF値と体積含水率の相関関係について試験した。瓦としては実施例3と同様に淡路いぶし瓦の破砕品を用いた。
【0052】
pF値と体積含水率、含水比を表6に示し、pF値と体積含水率の相関関係を図2に示す。表6において、含水比の単位g/kgは、乾土あたりの水の質量である。この含水比は、JIS A 1210のモールド(容量1000cm3)に自然含水状態の試料(含水率51g/kg)を1層12.5cmで詰め、2.5kgランマーにより落下高10cm、回数10回の条件で突き固め、その中心部から100mlコアサンプラーで採取した試料を用いて測定した。
【0053】
分析方法としては、pF値0の場合は減圧飽和法で行い、pF値0.5、1.0の場合は砂柱法で行い、pF値1.5、1.8の場合は加圧板法で行い、pF値3.0、3.8、4.2の場合は遠心法で行い、pF値7.0の場合は加熱減量法で行った。
【0054】
さらに、pF値測定検体で瓦の粒状物の仮比重を測定した。仮比重は1.06mg/m3であった。
【0055】
【表6】

【0056】
上記含水比の結果から、体積含水率を求め、図2に示すようなpF値と体積含水率の相関関係のグラフを作成した。
【0057】
上記表6や図2の結果からも明らかなように、pF値0の場合の含水比は445(g/kg)と高いのに対して、pF値0.5の場合の含水比は169(g/kg)と低くなっているので、瓦の粒状物の初期の吸水が非常に多くて速いと認められる。
【0058】
一方、pF値1.8と3.0の含水比の差は4(g/kg)と少なく、いわゆる易効水(pF値1.8〜3.0)と称される通常の有効水分が多くはないことがわかった。これは、瓦の吸水性が良すぎるために、植物の生育に適したpF値1.8〜3.0程度の水が少なくなっていると認められる。ただし、このような易効水は、植物が利用し易い反面、蒸発し易いという欠点がある。
【0059】
夏場等、植物への水の供給がほとんどない時期には、難効水(pF値3.0〜4.2)と称される水が効果を発揮する。上記表6の結果からは、pF値3.0と4.2の含水比の差は84(g/kg)と多かったため、いわゆる難効水が多く含有されているものと認められる。従って、さほど水の流れがないような箇所での植栽には有効であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
瓦の廃材の粉粒体と、火山灰土の粉粒体若しくは木製素材の炭化物の粉粒体とが含有されていることを特徴とする水質浄化・緑化用資材。
【請求項2】
火山灰土の粉粒体が、赤玉土、ボラ土、又は鹿沼土である請求項1記載の水質浄化・緑化用資材。
【請求項3】
さらに、火山砂利が含有されている請求項1又は2記載の水質浄化・緑化用資材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−212561(P2011−212561A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82164(P2010−82164)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(510090335)菊川建材株式会社 (1)
【出願人】(591141784)学校法人大阪産業大学 (49)
【Fターム(参考)】