説明

水道メータの逆流防止部品

【課題】水道メータを逆付けした場合には水流を防止する逆流防止部品を提供する。
【解決手段】水道メータの流出口内壁に嵌合可能な円筒形の躯体1に、組立後の状態で躯体1内部に当該躯体1胴延長方向略端部に位置した枢軸4を軸として回動可能で形状が当該躯体1内壁と当接する半円形板状の開閉扉2と開閉扉3が装着され、躯体胴延長方向もう一方の略端部に位置して枢軸4と平行で躯体4直径線上の周壁に対となる孔に係止ロッド5が嵌合され、開閉扉2と開閉扉3が枢軸4を軸として開閉回動する場合係止ロッド5方向の回動は係止ロッド5によって躯体1胴方向中心線を越えて回動出来ないように係止され、一方係止ロッド5反対方向の回動は躯体1内径より小径のパッキング6が躯体1内壁に密着され開閉扉2と開閉扉3の回動が躯体胴延長中心線に対して略90度の位置から回動が阻止される構造を有していることを特徴とした逆流防止部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道メータの交換時に起こり得る逆付け、即ち配管の流入口側と流出口側に対して水道メータの流入口と流出口を逆に装着した場合に水流を抑える所謂逆流防止部品に関する。
【背景技術】
【0002】
水道メータはJIS規格の下、各自治体の管理下にあり計量法で有効期限が8年と定められている。水道メータの交換は各自治体から指名を受けた水道工事業者が各自治体水道局等に代わり交換工事の施工するのが通常であるが、水道メータの設置場所によっては配管の流入口側と流出口側の位置関係が不明瞭であったり、また水道工事業者の不注意等により水道メータの流入口を配管の流入口側にそして水道メータの流出口を配管の流出口側に接続する所謂水道メータの逆付け工事事故が毎年発生している。水道メータを逆付けした場合水道料金徴収の根拠である積算数値が逆進することになり水道使用量の適正な料金徴収が不可となる。
【0003】
水道メータは単箱式接線流羽根車式水道メータや複箱式接線流羽根車式水道メータに関わらず、一定方向の水流の動きを感知して使用した水道量を積算する構造となっている。水道メータの流入口と流出口は貫通しており中間部にはピボットが固定され当該ピボットを枢軸として羽根車が水平方向回転自在に装着されている。当該流入口から流入した水道水は当該羽根車の羽根に対して接線方向で且つ一定位置に衝突して押動するような構造を成している。通常は当該羽根車が反時計廻りに回転する構造である。当該羽根車の回転動は当該羽根車中心上部に装着されたマグネットと当該羽根車上方に収納されている歯車機構部の一部であるマグネット歯車のマグネットとが非接触方式のマグネットカップリングを成し連動する構造と成っている。当該歯車機構部内において当該マグネット歯車の回転動は使用した水道量が正しく表示されるように計算された歯数を有する複数の歯車に連動し積算表示される構造である。従い水道メータの流入口と流出口が配管の水流方向と逆に装着された場合、水道メータの上記羽根車は逆回転動となり正しく積算されないこととなる。
【0004】
また現行のJIS規格によると逆流に関して、逆流を計量するメータの場合、逆流体積は、積算体積から差引くか又は別途表示するかのいずれかでなければならない。正流と逆流には同じ最大許容器差が適される。逆流を計量しないメータの場合、逆流を防止するか、又は偶然に逆流した場合でも正流における計量性能にいかなる劣化も変化もなく耐えられなければならないと規定されている。
【特許文献】
【0005】
水道メータの逆流防止に関して従来の方法として、例えば特開報「特開平11−201785」に記載されている方法がある。この従来の方法によれば、メータ本体の流出口近傍に、給水時に流路を開口して水道水を流出させ、断水時に家屋から逆流した水道水を前記メータ本体内へ進入しないように流路を遮断する逆止弁を内蔵したことを特徴とし、該逆止弁の構造として水圧によって押動される弁体と該弁体を中央部に摺動可能に保持する弁枠体とを装備している。上記弁体の頭部は上記弁枠体の上流側に形成された水道水の流路となる弁開口部を閉塞するようにコイルスプリングにより左側に付勢されている。このコイルスプリングは、一端が弁体の頭部に突き当てられ、他端が受け枠に突き当てられて弾装されている。上記弁体は、メータ本体を通過して水道水が送り込まれると、水圧により上記コイルスプリングの付勢力に抗して流出口側に押動されて弁開口部を開口して水道水が流出口に向かって流出するようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水道メータの逆流防止に係る上記従来の方法は、逆止弁が流出口側に内蔵されているため、水道メータの流入口側から進入した水流は流出口側で速度の増加を招き結果としてベルヌーイの定理により圧力の低減が生じることになる。ここで当該逆止弁は水道メータの羽根車の近傍に装着されているため本来は水道メータの羽根車の羽根に対して接線方向に衝突して当該羽根を押動すべき水流がベンチュリー効果によって流出口側に吸引される状態となり当該羽根車の回転に影響を与えることとなる。加えて上記従来の方法の実施例である逆止弁は、摺動可能な弁体が水圧によって押動されコイルスプリングによって開口・閉塞する構造であるため、本管からの微妙な水圧変化によって水道メータ内の水流が瞬間的ではあるものの遮断されることになり当該羽根車の回動に変化を生じさせる結果となる。
【0007】
更に上記状態は現行JIS規格で規定されている水道メータの実用化に不可欠な検査項目である器差(水道メータの表示量と実際に流した水量の差)試験や圧力損失(流入口側と流出口側の圧力差)試験に影響を与えることにもなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明においては、水道メータの流入口側内径あるいは流出口側内径に対して嵌込可能な外径を有した内部が空洞な円筒状の躯体で、当該躯体胴延長方向の略端部に位置して当該躯体直径線上の周壁に対となる孔を有し、当該孔には棒状の枢軸が嵌込可能な構造で、組立後の状態で当該躯体内部に当該枢軸を軸として回動可能で形状が当該躯体内部壁より小で半円形板状の開閉扉2と上記枢軸を軸として回動可能で形状が上記躯体内部壁より小で半円形板状の開閉扉3と、前記躯体胴延長方向のもう一方の略端部に位置して前記枢軸と平行な状態で前記躯体直径線上の周壁に対となる孔に棒状の係止ロッドが嵌込され、前記開閉扉2と前記開閉扉3が前記枢軸を軸として開閉回動する場合前記係止ロッド方向の回動は当該係止ロッドによって前記躯体胴延長中心線を超えて回動出来ないように係止され、一方当該係止ロッド反対方向の回動は前記躯体内径より小さいパッキングが当該躯体に密着されており当該開閉扉2と当該開閉扉3の回動が当該パッキングによって当該躯体胴延長方向中心線に対して粗90度の位置から回動が阻止される構造を有していることを特徴とした逆流防止部品。
【発明の効果】
【0009】
本発明の逆流防止部品によれば、水道メータを故意あるいは過失によって流入口側と流出口側を逆に取り付けた場合、流出口から流入した水道水は水道メータの羽根車室を通過し流入口側に達するが、この時水道メータの流入口側あるいは流出口側に嵌込装着した本発明の逆流防止部品の開閉扉2と開閉扉3は係止ロッドによって隙間があり逆流による水流と水圧によって押広付勢され水路を塞ぐ状態となり逆流した水は流出口で止まり、また流入口側に装着すれば逆流によって流出口側から流入した水は羽根車を通過し流入口側に装着した逆流防止部品に到達するが、逆流防止部品の開閉扉2と開閉扉3は係止ロッドによって隙間があり逆流の水流と水圧によって押広付勢され水路を塞ぐ状態となり水流は停止する。この結果水流が停止することにより水道メータの取付施工者は容易に水道メータの逆付け状態を理解し、また水流が停止していることから利用者も水道を利用することが不可となるため水道メータの積算が減算することもない。
【0010】
本発明の逆流防止部品を流入口側に装着した場合流出口側から流入した水道水が上記羽根車室を通過して本発明の逆流防止部品で停止するまで上記羽根車は逆回転をするが、極少の水量であるため水道メータの計量法で定める+/−2%の誤差許容範囲内である。
【0011】
上記の発明の効果は水流を完全に停止させる構造を有した本発明の逆流防止部品を特徴としているが、上記開閉扉2と開閉扉3の回動部を密閉せずに水道メータの流出口側あるいは流入口側に装着した場合であっても当該開閉扉2と当該開閉扉3の回動部の間隙は微小であり当該間隙からの漏水は僅少であるため水道メータの取付施工者は容易に水道メータの逆付け状態を把握することが可能となる。従い当該開閉扉2と当該開閉扉3の回動部の間隙を密封しない構造であっても本発明の逆流防止部品の特徴となる。
【0012】
また本発明を装着した水道メータを正常に取り付けた場合、流入口から流入した水道水は上記開閉扉2と上記開閉扉3に衝突するが水道水の水圧によって当該開閉扉2と当該開閉扉3は流出口側に回動し水路に対して水平位置になるため水路を塞ぐことはない。この状態で水流の障害となるものは本発明の上記枢軸と上記開閉扉2と開閉扉3の板厚であるが断面上僅かであるので水流に影響はない。更に流入口側の本発明部品を通過した水量が水道メータの羽根車を押動するため水道メータの積算数値に影響を与えることもない。
【0013】
水道メータは各自治体によって管理されており、その形状及び仕様は磨耗部品を除いて水道メータ部品は再生使用される観点から各自治体で統一されている。本発明の整流効果を有する逆流防止部品は各自治体で統一されている形状及び仕様を変更することなく水道メータの流入口側内壁に嵌込するだけで使用できるという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて説明する。しかし下記の実施例は一例であり本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0015】
図1は水道メータの断面図である。下ケース7の下部には断面形状円形の流入口18と断面形状円形の流出口19が設けられている。流入口18と流出口19の端部外周は配管部品によって螺合接続され本管からの水道水が一貫して流水する構造である。本図例は単箱式接線流羽根車式水道メータであるため流入口側内壁断面において流入口18方向断面が流出口19方向断面よりストレーナ12を嵌込固定する目的のため大径となっている。下ケース7内面底中心にはピボット15が螺設され下ケース7内面底に垂直に固定されている。そしてピボット15を支持して中心部上部にはマグネット16を有する羽根車11を回転自在に収納しマグネット16と近接する状態で上部にレジスタボックス8を組み付ける。
レジスタボックス8内部にはレジスタボックス8底壁を挟んでマグネット17を有する歯車が回転自在に装着されており、羽根車11の回転動がマグネット16とマグネット17を介してレジスタボックス8内の歯車にマグネットカップリングの状態で伝達される構造である。レジスタボックス8内の歯車は流入口18を通過する水道水の流量が正しく表示されるように歯車の歯数が計算された複数の歯車から構成されている。レジスタボックス8の上部には水量を表示する計数表示部13を有し、計数表示部13が肉視可能となるようにガラス板14が上面に取付けられている。図示しないガスケットを挟んで上ケース9が下ケース7と螺合結合されレジスタボックス8を締付固定している。上ケース9の上面には枢軸を有した蓋10が開閉可能に設けられている。
【0016】
図2は上記図1の水道メータ流入口18あるいは流出口19に本発明の逆流防止部品を装着した場合の実施例であり本実施例では流出口19に本発明の逆流防止部品を装着した場合の実施例である。
図3は上記図2のF部を拡大した立体透視図である。水道メータの流出口内壁に対して嵌合可能な外形を有した内部が空洞な円筒形の躯体1に、当該躯体1胴延長方向略端部に位置して断面で当該躯体1直径線上の周壁に対となる孔を有し、当該孔には棒状の枢軸4が嵌合し、組立後の状態で躯体1内部に枢軸4を軸として回動可能で形状が当該躯体1内壁と当接する半円形板状の開閉扉2と開閉扉3が装着され、躯体胴延長方向もう一方の略端部に位置して枢軸4と平行で躯体4直径線上の周壁に対となる孔に係止ロッド5が嵌合され、開閉扉2と開閉扉3が枢軸4を軸として開閉回動する場合係止ロッド5方向の回動は係止ロッド5によって躯体1胴方向中心線を越えて回動出来ないように係止され、一方係止ロッド5反対方向の回動は躯体1内径より小径のパッキング6が躯体1内壁に密着され開閉扉2と開閉扉3の回動が躯体胴延長中心線に対して略90度の位置から回動が阻止される構造を有している。
【0017】
図4は本発明の逆流防止部品を水道メータの流出口側の取付、正常水流の場合の水流状態図である。1は躯体、2と3は開閉扉、4は枢軸、5は係止ロッドそして6はパッキングである。 図示していない水道メータの流入口から流入した水は本発明の逆流防止部品を装着した流出口側に到達する。ここで開閉扉2と開閉扉3は枢軸4を軸として回動自由であるため水流Aの水圧によって出口側即ち係止ロッド5の方向に回動し係止ロッド5で回動が阻止され開閉扉2と開閉扉3の回動は停止する。水流A方向に対し開閉扉2と開閉扉3は水平位置を維持し所謂全開状態となり水流Aの流水障害が最小限になる。
【0018】
水道メータの仕様を規制している現行JIS規格では水流障害で発生する圧力損失の最小値を制限しているが、水道メータ流入口及び流出口内径に対する枢軸4の径及び開閉扉2と開閉扉3の板厚を考慮すれば現行JIS規格で規制している圧力損失を最小値以下とすることが可能となる。
【0019】
図5は逆流の場合の水流状態図である。正常水流によって開閉扉2と開閉扉3は水道メータの流入口あるいは流出口内径中心線延長方向に対して水平位置の状態となっている。(図4参照)この状態で逆流が発生した場合開閉扉2と開閉扉3は係止ロッド5によって間隙があり逆流による水圧及び密閉配管内の逆流で生じる空気圧によって水圧あるいは空圧が開閉扉2と開閉扉3の間隙に入り込み枢軸4を軸とした開閉扉2と開閉扉3は押広される。
ここで開閉扉2と開閉扉3の押広回動は躯体1の内径より小さなパッキング6によって阻止され水道メータの流入口あるいは流出口内径中心線延長方向に対して略90度の位置で停止する。即ち水道メータ流入口あるいは流出口を遮断した全閉した状態となり水道メータの逆流を阻止する。
【0020】
開閉扉2と開閉扉3は枢軸4を軸として回動自由な構造であるため開閉扉2と開閉扉3の当接部には隙間がある。逆流による水流を完全に阻止するには開閉扉2と開閉扉3の当接部に軟質性のフィルムを貼ることによって解決される。また開閉扉2と開閉扉3の外輪部が当接するパンキング6は軟質材料であることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】水道メータの断面図
【図2】逆流防止部品を装着した水道メータの断面図
【図3】逆流防止部品の立体透視図
【図4】正常の水流状態図
【図5】逆流の水流状態図
【符号の説明】
【0022】
1・・・・躯体
2・・・・開閉扉
3・・・・開閉扉
4・・・・枢軸
5・・・・係止ロッド
6・・・・パッキング
7・・・・下ケース
8・・・・レジスタボックス
9・・・・上ケース
10・・・蓋
11・・・羽根車
12・・・ストレーナ
13・・・計数表示部
14・・・ガラス
15・・・ピボット
16・・・マグネット
17・・・マグネット
18・・・流入口
19・・・流出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道メータの流入口側あるいは流出口側内径に硬質材料から成る嵌込可能な外形を有した内部が空洞の円筒形状の躯体で、当該躯体胴延長方向略端部に位置して断面で当該躯体直径線上の周壁に対となる孔を有し、当該孔には棒状の枢軸が嵌込可能で、当該躯体内壁の径より小で硬質材料から成る半円形板状の開閉扉が当該枢軸を軸として回動可能に略対で当該枢軸に装着され、当該躯体胴延長方向の他方の略端部に位置して当該枢軸と平行な状態で断面で当該躯体直径線上の周壁に対となる孔を有し当該孔に硬質材料からなる棒状の係止ロッドが嵌込されている構造で、前記枢軸を軸として装着されている略対の前記開閉扉は回動自由で、前記係止ロッド方向への回動は当該係止ロッドによって前記躯体胴延長方向中心線を超えて回動出来ないように係止されまた当該躯体胴延長方向中心線に対して垂直方向の回動は当該躯体内壁の径より小でリング形状のパッキングによって当該躯体胴延長方向中心線に対して略90度の位置から回動が阻止されることを特徴とした逆流防止部品。
【請求項2】
前記請求項1記載の逆流防止部品において、前記開閉扉の回動を阻止するために前記躯体の前記枢軸側端部が当該開閉扉の外径より小の形状の構造であることを特徴とする逆流防止部品。
【請求項3】
前記請求項1記載の逆流防止部品において、前記略対の開閉扉の当接部の間隙を軟質材料から成る材料で密閉した構造であることを特徴とする逆流防止部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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