説明

水道メータ

【課題】非常事態時に水道使用量の積算値データを保持でき、且つ、水道水の逆流による計測誤差を防止し、高価なCPUを不要とし電池の消費電流を低減させる。
【解決手段】水道メータ11は、水道水の流量に応じて回転数が増減する羽根車21を有し、羽根車21の回転数を複数の歯車33等を介して伝達し、該回転数を積算表示する。歯車33の軸部32に、水道水計量用回転部材34を歯車33と一体に回転できるように設け、回転部材34の被検出部35を2個の光センサ36,37で検出して羽根車21の回転状態をセンシングする。光センサ36,37には正逆転判定部41、演算・積算回路部42、記憶部43及び通信機能部44を有するマイクロコンピュータ40に接続し、羽根車21の正転又は逆転に応じて積算値に加算又は減算処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水道メータに関するものであり、特に、水道水の使用流量を自動検針できるようにした水道メータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、此種水道メータ1は一般に,図14に示すように、計量部2内に、2極着磁タイプのマグネット3を上頭部に固定して成る羽根車4が回転可能に設けられ、計量室2を通過する水道水の流量に応じて羽根車4が回転し、マグネット3の回転数を磁気センサ(流量センサ)5により検知するように構成されている。そして、該磁気センサ5により検知された信号を、プリント回路基板6に搭載されたマイクロコンピュータ(CPU)の内部回路にて演算・積算処理している。次いで、その処理結果を記憶部(図示せず)に積算値データとして記憶保持し、該積算値データを液晶表示部7に送出して表示するように構成されている。尚、図中、8はレジスターボックス、9は指示窓、10は電池である。
【0003】
又、通信機能を有する電子式水道メータにあっては、前記積算値データをシリアル通信で送出する通信機能を備え、外部の自動検針器等にデータ送信できるように構成されている。これにより、電子式水道メータより離れた場所からでも、検針データである積算値を容易に知ることができる(例えば、関連先行技術の水道メータ構造例として特許文献1の図1参照)。
【特許文献1】特開2002−081975号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の上記電子式水道メータは、マイクロコンピュータで算出された積算値を液晶表示するように構成しているが、電子式であるために落雷などで記憶部などが破壊されたり、或いは、マイクロコンピュータ等に電源を供給する電池の寿命が無くなった時、計測不良な状態に陥ることがある。このよう非常事態時に陥ると、最悪の場合は積算値のデータを保持できないという不具合を生じる。
【0005】
又、電子式水道メータは、羽根車に取り付けたマグネットの回転数を磁気センサにより感知しているが、このマグネット感知方式は外部からの磁気による悪影響を受け易いということが判っている。従って、磁気の影響を受けにくい安定した計測結果を得るためには、磁気センサを使用しない方式を採用する必要がある。
【0006】
更に、従来の電子式水道メータは、羽根車の高速回転を直接カウントするため、多数の電子部品が搭載された高性能なCPUを必要とし、消費電流も多くなり大容量の電池を必要とし、総じて構造が複雑になりコスト高を招く。
【0007】
前記電子式水道メータは水道使用量の計測の他に多くの機能を有し、例えば、水道管を流れる瞬間流量を計測し、その計測結果を外部の自動検針器等にデータ送信できるように構成されている。しかし、この瞬間流量も電子的に計測しているので、前記同様に磁気の影響を受け易く、安定した計測結果が得がたいという欠点を有していた。
【0008】
そこで、非常事態時に水道水の積算値データを安定して保持でき、且つ、外部からの磁気の影響を受けずに、高価なCPUや大容量の電池の使用を不要とし低コスト化を図るために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、水道水の流量に応じて回転数が増減する羽根車を計量部に有し、且つ、該羽根車の回転数を複数の歯車を介して伝達し、該回転数の積算値を表示するようにした水道メータにおいて、前記複数の歯車のいずれか1つを構成する歯車の軸部に、円周上に光遮蔽部等の被検出部を有する水道水計量用回転部材を前記歯車と一体に回転するように設けると共に、該被検出部を検出して前記歯車の回転方向、回転数などの回転状態をセンシングする水道水計量用の光センサを2個配設し、且つ、該光センサにマイクロコンピュータを接続し、該マイクロコンピュータは、前記羽根車の正転又は逆転を判断する正逆転判定部と、前記羽根車が正転の時に前記積算値に加算処理を行い、且つ、該羽根車が逆転の時に前記積算値に減算処理を行う演算・積算回路部と、該積算値データを記憶する記憶部と、該積算値データを外部の自動検針器等に送信する通信機能部を備えて成る水道メータを提供する。
【0010】
この構成によれば、上記羽根車の回転に伴い上記歯車が回転すると共に、該歯車の軸部に設けた水道水計量用回転部材も回転する。この回転部材には被検出部、例えば、光遮蔽部、光反射部又はスリット等が設けられているため、該被検出部は2個の水道水計量用の光センサにより検出され、該検出信号はマイクロコンピュータの正逆転判定部及び演算・積算回路部に送出される。更に、正逆転判定部では、該検出信号に基づき羽根車の回転方向が正転又は逆転のいずれであるかを判断する。又、演算・積算回路部では、羽根車の正転時には回転数の積算値を加算し、且つ、羽根車の逆転時には積算値を減算する。
【0011】
前記加算又は減算された積算値のデータは、マイクロコンピュータの記憶部に記憶される。又、記憶部に記憶された積算値のデータは、外部からの要求に応じて自動検針器などに送信される。本発明の信号処理方式は、羽根車の回転数を光学的に検出するので、外部からの磁気(磁力)に対して影響を受けない。
【0012】
請求項2記載の発明は、上記光センサによるセンシングは間欠的に行うように構成して成る請求項1記載の水道メータを提供する。
【0013】
この構成によれば、上記光センサは羽根車の回転速度等に応じて設定した周期毎に間欠駆動される。従って、電源電池から光センサ(周辺回路を含む)への駆動電流は、必要な時間のみ供給され、不必要な時間には駆動電流は供給されない。
【0014】
請求項3記載の発明は、上記2個の光センサは互いに上記水道水計量用回転部材の回転方向に所定間隔を有して配置され、且つ、上記正逆転判定部は2個の光センサから送出されるセンサ出力の位相差に基づいて上記羽根車の回転方向を判定するように構成して成る請求項1記載の水道メータを提供する。
【0015】
この構成によれば、上記2個の光センサは、回転部材の回転方向にて互いに所定間隔を有しているので、2個の光センサの検知信号であるセンサ出力S1,S2が、該回転部材の正転又は逆転に応じた正又は負の位相差を有して正逆転判定部に入力される。これにより、正逆転判定部は2つのセンサ出力S1,S2で生ずる正又は負の位相差に基づいて、羽根車の回転方向を判断する。例えば、センサ出力S2の立ち上がり時でのセンサ出力S1の状態が「H(ハイ)」のときには「正転」であると判断する(図10参照)。これとは逆に、センサ出力S2の立ち上がり時でのセンサ出力S1の状態が「L」のときには「逆転」であると判断する(図11参照)。
【0016】
請求項4記載の発明は、水道水の流量に応じて回転数が増減する羽根車を計量部に有し、且つ、該羽根車の回転数を複数の歯車を介して伝達し、該回転数の積算値を表示するようにした水道メータにおいて、前記羽根車と連動して回転する歯車の軸部(瞬間流量計測用軸部)に、円周上に光遮蔽部等の被検出部を有する瞬間流量計測用回転部材を前記歯車と一体に回転するように設けると共に、該被検出部を検出して前記歯車の回転数をセンシングする瞬間流量計測用の光センサを1個配設し、且つ、該光センサにマイクロコンピュータを接続し、該マイクロコンピュータは、前記光センサで検出した前記歯車の回転数に基づいて瞬間流量を計測する演算回路部と、該計測された瞬間流量を外部の自動検針器等に送出する通信機能部とを備えて成る水道メータを提供する。
【0017】
この構成によれば、上記羽根車の回転に伴い上記歯車が回転すると共に、該歯車の軸部に設けた瞬間流量計測用回転部材も回転する。この回転部材には被検出部が設けられているため、該被検出部は瞬間流量計測用の光センサにより検出され、該検出信号はマイクロコンピュータの演算回路部に送出され、検出した前記歯車の回転数に基づいて瞬間流量が計測される。該計測された瞬間流量は、上記通信機能部により外部の自動検針器等に送信される。
【0018】
請求項5記載の発明は、上記瞬間流量の計測は外部から通信で要求があったときのみ行われる請求項4記載の水道メータを提供する。
【0019】
この構成によれば、外部から通信で瞬間流量計測の要求があったときのみ瞬間流量の計測が開始され、それ以外は瞬間流量の計測は実行されない。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明は、歯車連動伝達方式であるので、仮に落雷や電池の寿命切れ等により計測不能状態に陥っても、積算値をそのまま保存でき、外部データ出力機能を除く主なメータ機能も良好に維持することができる。又、羽根車の回転状態は、光学的にセンシングするので、外部からの磁力に対して影響を受けることなく、正確な計測結果を安定して得ることができる。
【0021】
更に、羽根車が逆転した場合は積算値を減算して補正するので、水道水の逆流による誤計測を防止して、水道使用量を常に正確に計量することができる。又、羽根車の回転方向の検出は2個の光センサにより行えるので、光センサの数が必要最小限で済み、構造が簡単でありながら羽根車の回転方向を正確に検知することができる。更に又、羽根車の高速回転ではなく、減速された歯車の回転をカウントするため、高性能なCPUが不要となり、且つ、消費電流も少なくなり、小容量の電池を使用できる。
【0022】
請求項2記載の発明は、上記光センサに間欠的に駆動電流を供給すればよいので、請求項1記載の発明の効果に加えて、不必要な電流供給が省略される分だけ、電流消費量を低減させることができる。
【0023】
請求項3記載の発明は、2個の光センサの検出信号の位相差に基づいて羽根車の回転方向を検出できるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、正逆転判定部などの回路構成を一層シンプルに構成でき、且つ、羽根車の回転方向を正確に判別することができる。
【0024】
請求項4記載の発明は、1個の光センサで検出したデータに基づき瞬間流量を計測できるので、構造が簡単でありながら、必要時に外部の自動検針器等に随時送出することができる。又、外部からの磁力に対して影響を受けない。
【0025】
請求項5記載の発明は、外部の検針器等から通信を通して瞬間流量計測の要求があったときのみ瞬間流量を計測するので、請求項4記載の発明の効果に加えて、瞬間流量の計測時に余分な電気消費を節減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、非常事態時に水道水の積算値データを安定して保持でき、且つ、外部からの磁気の影響を受けにくく、高価なCPUや大容量の電池の使用を無くし低コスト化を図るという目的を達成するため、水道水の流量に応じて回転数が増減する羽根車を計量部に有し、且つ、該羽根車の回転数を複数の歯車を介して伝達し、該回転数の積算値を表示するようにした水道メータにおいて、前記複数の歯車のいずれか1つを構成する歯車の軸部に、円周上に光遮蔽部等の被検出部を有する水道水計量用回転部材を前記歯車と一体に回転するように設けると共に、該被検出部を検出して前記歯車の回転方向、回転数などの回転状態をセンシングする水道水計量用の光センサを2個配設し、且つ、該光センサにマイクロコンピュータを接続し、該マイクロコンピュータは、前記羽根車の正転又は逆転を判断する正逆転判定部と、前記羽根車が正転の時に前記積算値に加算処理を行い、且つ、該羽根車が逆転の時に前記積算値に減算処理を行う演算・積算回路部と、該積算値データを記憶する記憶部と、該積算値データを外部の自動検針器等に送信する通信機能部を備えることにより実現した。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の一実施例を図1乃至図13に従って詳述する。図1は本実施例に係る水道メータを示す縦断面図、図2は水道メータの平面図である。図1において、11は水道メータであって、相互一体に組み付けられた下ケース12と上ケース13を備えている。
【0028】
上ケース13の上面開口部は表示機構用の透明カバー17により施蓋されている。また、下ケース12に形成した通路(計量室)19内には、羽根車21がピボット20を介して回転自在に設けられている。従って、通路19を水道水が流れることで、該道水の流量に応じて羽根車21の回転数が増減する。羽根車21の上頭部には4極着磁タイプの駆動側マグネット24が取り付けられ、該駆動側マグネット24の上側には、被駆動側マグネット25が回転可能に磁気結合されている。又、被駆動側マグネット25の上部にはセンタ歯車26が一体回転可能に設けられている。
【0029】
従って、水道水の流れにより羽根車21が回転すると、羽根車21の回転力は、磁気結合作用により被駆動側マグネット25に伝達されるため、被駆動側マグネット25と共にセンタ歯車26が回転する。このセンタ歯車26は羽根車21と一体回転するように直接連結することもできる。なお、符号22は後述の数字車30の表示部、27はレジスターボックス、28はOリング、29はストレーナである。
【0030】
前記レジスターボックス27の上部には数字車30が配置され、該数字車30とセンタ歯車26との間には、複数の歯車から成る減速用歯車列(図示せず)が駆動伝達可能に設けられている。この減速用歯車列等を介して、羽根車21の回転力が数字車30に伝達されることで数字車30が回転する。該数字車30の回転数の積算値は、羽根車21の回転数の積算値と対応し、該積算値は表示部22にて表示される。又、図1に示す下台板31上面には第1の軸部(水道水計量用軸部)32が一体に設けられている。第1の軸部32には、図3(b)に示すように、第1の歯車33が回転自在に取り付けられ、第1の歯車33は減速用歯車列の一つを構成している。更に、第1の軸部32の上端部には、水道水計量用回転部材34が第1の歯車33と一体に回転できるように設けられている。尚、水道水計量用回転部材34は、第1の歯車33と一体に回転する構成であれば、具体的な構造は特に限定されない。
【0031】
この水道水計量用回転部材34上面の外周縁部には、図3(a)〜(c)に示すように、被検出部である半円弧状光遮蔽部(突起片)35が1個形成されている。又、水道水計量用回転部材34の上面と対向する固定部には、図4に示すように、フォトインターラプター型の検出器である第1の光センサ36及び第2の光センサ37が配設されている。本実施例では、前記固定部は具体的には、透明カバー17の下方に固定されたプリント回路基板38の下面側に設けられている。このプリント回路基板38上面側には電池39が設けられている。
【0032】
第1の光センサ36及び第2の光センサ37は、水道水計量用回転部材34の正転方向において90度の位相差を有するように配置されている。個々の光センサ36,37は発光素子と受光素子から成り、これら光センサ36,37により、水道水計量用回転部材34の回転時に半円弧状光遮蔽部35を検出してパルス波を発生させる。そして、2つのパルス波により、羽根車21の回転方向、回転数、回転速度などの回転状態が測定される。即ち、個々の光センサ36,37からのパルス波を光電変換させた後にデジタル信号を出力することにより、羽根車21の回転状態が間欠的にセンシングされる。
【0033】
前記プリント回路基板38には、図5に示すように、制御手段としてのマイクロコンピュータ(CPU)40が搭載され、マイクロコンピュータ40には前記光センサ36,37が接続されている。このマイクロコンピュータ40は、羽根車21の正転又は逆転を判断する正逆転判定部41と、羽根車21が正転の時に水道使用量の積算値(検針データ)に加算処理を行い、且つ、該羽根車21が逆転の時に前記積算値に減算処理を行う演算・積算回路部42と、該積算値データを記憶する記憶部43と、該積算値データを外部の自動検針器等に送信する通信機能部44とを備えている。
【0034】
本実施例では、羽根車21の正転または逆転は、前記両第光センサ36,37からの検出信号に生ずる位相差に基づいて判定される。尚、水道水が順方向(下流側方向)に通過するときの羽根車21の回転方向を「正転」とし、これと逆の回転方向を「逆転」と定義する。このように正逆転判定部41は、第1の光センサ36及び第2の光センサ37からの検出信号を入力して、該2つの検出信号で生ずる位相差(正又は負の位相差90度)に基づき羽根車21の回転方向を判別する。又、演算・積算回路部42は、正逆転判定部41の判定結果に応じて、羽根車21の回転数に加算又は減算処理を実行して水道使用の積算値を逐次算出する。更に、記憶部43は、前記光センサ36,37からの検出信号を一時保持すると共に、演算・積算回路部42で算出された積算値等のデータを記憶する。この記憶部43に保持された記憶データは、外部からの要求に応じて、通信機能部44により外部の自動検針器等に送信される。
【0035】
本実施例の水道メータ11は、瞬間流量も光学的に計測できる。瞬間流量計測のための具体的構成は、図6(a)〜(c)に示すように、前記羽根車21と連動して回転する第2の歯車45の軸部46に、瞬間流量計測用回転部材47を第2の歯車45と一体に回転するように設けている。この瞬間流量計測用回転部材47の円周上には、被検出部である円周角45度の円弧状光遮蔽部(突起片)48a〜48dが4個形成され、該円弧状光遮蔽部48a〜48dは互いに等間隔を有して配置されている。
【0036】
4個の円弧状光遮蔽部48a〜48d同士の間には円周角45度のスリット49a〜49dが4個形成されている。又、瞬間流量計測用回転部材47の上面と対向する固定部には、図8に示すように、瞬間流量計測用の第3の光センサ50が配設され、該固定部は前記プリント回路基板38の下面側に設けられている。第3の光センサ50は発光素子と受光素子から成り、第3の光センサ50により、回転する円弧状光遮蔽部48a〜48dを検出してパルス波形を発生することで、羽根車21と連動する第2の歯車45の回転速度などが測定される。即ち、第3の光センサ50からのパルス波形を光電変換させた後にデジタル信号を出力することにより、第2の歯車45の回転状態(羽根車21の回転状態)が検出される。
【0037】
図7に示すように、第3の光センサ50はマイクロコンピュータ40に接続されている。このマイクロコンピュータ40は、第3の光センサ50で検出した第2の歯車45の回転数に基づいて瞬間流量を計測する演算回路部51と、該計測データ等を記憶する記憶部43と、該計測データを外部の自動検針器等に送信する通信機能部44と、外部から通信で瞬間流量計測の要求があったときに瞬間流量の計測を開始させる制御部52とを備えている。
【0038】
次に、上記構成の水道メータ11において、第1の光センサ36及び第2の光センサ37の検出信号に基づく演算・積算処理等について詳しく説明する。尚、第1の光センサ36及び第2の光センサ37の検出信号をそれぞれ第1のセンサ出力S1及び第2のセンサ出力S2とする。いま、水道水が順方向に流れることにより、羽根車21が正転方向に1回転したとすると、羽根車21と連動して第1の歯車33が正転方向に所定回転数だけ回転する。
【0039】
その結果、第1の歯車33と一体に回転する水道水計量用回転部材34の半円弧状光遮蔽部35が正転方向に回転する。この半円弧状光遮蔽部35の正転動作は光センサ36,37により検知され、図10に示すように、第1のセンサ出力S1及び第2のセンサ出力S2が所定の位相差(図示例ではプラス90度)を有して信号を発生する。該検知信号はマイクロコンピュータ40に送信されて、記憶部43に記憶保持される。又、前記両センサ出力S1,S2は正逆転判定部41に送出される。而して、正逆転判定部41は、図10に示す前記両センサ信号の正の位相差に基づき、羽根車21の回転方向が「正転」であると判定し、その判定結果を演算・積算回路部42に送り、水道水使用量の積算値が1だけ加算(+1)される。
【0040】
一方、水道水が逆方向に流れることにより、羽根車21が逆転方向に1回転したとすると、上記と反対に、水道水計量用回転部材34上面の半円弧状光遮蔽部35が逆転方向に所定回転数だけ回転する。この半円弧状光遮蔽部35の逆転動作は光センサ36,37より検知され、図11に示すように、第2のセンサ出力S2及び第1のセンサ出力S1が正転時とは逆の負の位相差(正転時とは180度ずれたマイナス90度)を有して信号を発生する。該検知信号はマイクロコンピュータ40に送信されて、記憶部43に記憶保持される。
【0041】
又、前記両センサ出力S1,S2は正逆転判定部41に送出される。而して、正逆転判定部41は、図11に示す両センサ信号の前記位相差に基づき、羽根車21の回転方向が「逆転」であると判定し、その判定結果を演算・積算回路部42に送り、水道水使用量の積算値が1だけ減算(−1)される。このように、水道水計量用回転部材34の回転方向、即ち、羽根車21の回転方向は双方のセンサ出力S2,S1で作る正又は負の位相差に基づいて判別される。ここで、各光センサ36,37から出力されるパルスは、水道水計量用回転部材34の1回転に対して、1パルスだけ出力されるように配置される。このとき、1パルスの重み付け、すなわち、1パルスに相当する水道水の量は10L(リッタ)になるように設定されている。又、このパルスのデュ−ティ比は、図9に示すように、1:1になるように機械的に強制設定されている。
【0042】
図示例では、羽根車21の回転状態を検出するために、各光センサ36,37から出力される2つのパルスの間に90度の位相差が生ずるように、両光センサ36,37は、水道水計量用回転部材34の回転方向にて互いに90度の間隔を有するように配置する。
【0043】
次に、水道水計量用回転部材34の正転又は逆転の判定方法について詳述する。2個の光センサ36,37から出力されるパルスの間に位相差があれば、水道水計量用回転部材34の正転時又は逆転時に応じて発生する正又は負の位相差に基づいて、水道水計量用回転部材34の正転又は逆転の判別が可能になる。例えば、水道水計量用回転部材34が正転の場合は、図10に示すように、第2のセンサ出力S2の立ち上がり時での第1のセンサ出力S1の状態が「H(ハイ)」であり、又、第2のセンサ出力S2の立ち下がり時での第1のセンサ出力S1の状態が「L(ロー)」である。これに対して、水道水計量用回転部材34が逆転の場合は、図11に示すように、第2のセンサ出力S2の立ち上がり時での第1のセンサ出力S1の状態が「L」であり、又、第2のセンサ出力S2の立ち下がり時での第1のセンサ出力S1の状態が「H」である。
【0044】
而して、水道水計量用回転部材34の正転又は逆転を検出判定した後、その判定結果は記憶部43に記憶される。尚、この記憶データは後述の瞬間流量計測時にも使用できる。又、記憶データ初期値の瞬間流量の値には、回転部材34の正転時又は逆転時に応じて「0」又は「1」が付記される。
【0045】
次に、水道使用量の積算値のカウント処理について説明する。積算値をカウントする場合、羽根車21が正転又は逆転、即ち、水道水計量用回転部材34の正転又は逆転を確認した上で、水道水計量用回転部材34の回転数に応じた値を積算値に加算又は減算する。加算の場合は、9999.99m(立方メータ)の次は0000.00mとなり、この次は0000.01mとなって「1」ずつ加算されていく。以下同様に、この後の加算は「1」ずつ積算値が増加していく。一方、減算の場合は、0000.00mの次は9999.99mとなり、この次は9999.98mとなって「1」ずつ減算されていく。以下同様に、この後の減算は「1」ずつ積算値が減少していく。従って、オーバーフロー又はアンダーフローで停止することなく、積算値のカウント処理が続行される。
【0046】
例えば、第2のセンサ出力S2のパルスの立ち上がり時及び立ち下がり時に、現在の水道使用量の積算値をカウントして記憶部43に記憶する。その際、水道水計量用回転部材34の正転又は逆転を確認した上で、カウントアップ又はカウントダウンを行うが、このときの1パルスに相当する水道水は5Lである。
【0047】
図12に示すように、水道水計量用カウンタの構成は、m単位の桁数を4桁とし、且つ、L(リッタ)単位の桁数を100Lと10Lの2桁とする。図示例では、10L単位の桁の後に、補助桁として1L単位の桁を設けている。第2のセンサ出力S2の立ち上がり時又は立ち下がり時、補助カウントに「5」を加算又は減算し、このときの加算又は減算の判定は、水道水計量用回転部材34の正転又は逆転を確認した上で決定される。尚、図示例では10進法のカウンタを表示しているが、これに限らずバイナリーカウンタ等を採用してもよい。
【0048】
次に、水道水計量用回転部材34の正転時におけるカウント例について説明する。先ず、第2のセンサ出力S2が立ち上がる時に、第1のセンサ出力S1が「H」の状態であれば補助桁に「5」を加算する。又、第2のセンサ出力S2が立ち下がる時に、第1のセンサ出力S1が「L」の状態であれば補助桁に「5」を加算する。そして、補助桁にキャリーが出たところで、10L単位の桁に「1」を加算する。この後、前記同様に加算処理を行う。
【0049】
一方、水道水計量用回転部材34の逆転時でのカウントの際、第2のセンサ出力S2の立ち上がり時又は及び立ち下がり時にパルスをカウントするのは、図10に示す正転時でのセンサ出力の波形において、第2のセンサ出力S2が立ち上がった後に水道水計量用回転部材34が逆転して、第2のセンサ出力S2が立ち下がることを想定すると、正転時に第2のセンサ出力S2が立ち上がったときにカウンタが加算され、逆転時に第2のセンサ出力S2が立ち下がった時にカウンタが減算される。即ち、センサ出力波形の振動により、水道水計量用回転部材34が正転及び逆転を繰り返すことにより、第2のセンサ出力S2の波形が立ち上がりと立ち下がりを繰り返した場合、これに伴いカウンタも加算又は減算を繰り返すのでカウントミスは生じない。
【0050】
次に、センサ出力S1,S2のサンプリングについて説明する。各光センサ36,37の駆動部(センサ周辺回路を含む)の消費電力が大きくて許容できない場合がある。これに対しては、消費電流を節減するためには、サンプリングによる間欠駆動が極めて有効になる。前記サンプリングにより各光センサ36,37を作動させる場合、最大パルス速度が例えば3秒/パルスであれば、センサ出力の波形状態を検出するには、最低でも3秒間に1パルスを検出する必要がある。
【0051】
又、サンプリング幅については、消費電流が許容される範囲で、光センサ36,37の応答速度よりも十分長い時間となるように設定する。このとき、光センサ36,37の出力状態を取り込むタイミングは、サンプリングの終了エッジ又はその手前で取り込むように設定する。前記サンプリングパルスは、光センサ36,37を間欠駆動するためのパルスである(図13参照)。又、光センサ36,37のオン−オフのタイミングは、該光センサ36,37が常時通電にて作動したと仮定したときの出力波形を示す。更に、光センサ36,37によるサンプリング後の波形のイメージは、センサ出力の状態を内部に取り込んだ時の仮想的なセンサ出力波形である。
【0052】
本実施例に係る水道メータ11は水道水の計量だけでなく、瞬間流量も計測できる。瞬間流量の計測手段は、水道水計量用の第1の歯車33とは別に設けられた第2の歯車45と、該歯車45の回転状態を検出する第3の光センサ50とを備えている。この歯車45は羽根車21の回転数と略同等の高速で回転するように設けられている。上記瞬間流量計測は、通信で要求信号を受信した時のみ実行し、それ以外では実行しない。従って、限られた時間しか瞬間流量計測を実行しないので、計測時に常時通電してもよい。但し、瞬間流量計測を実行しない時は電源オフにする。
【0053】
次に、瞬間流量の計測について詳述する。図6に示したように、光遮蔽部48a〜48dの間には各スリット49a〜49dが45度の範囲で形成されているので、円弧状光遮蔽部48a〜48dが1回転すると、これを第3の光センサ50が検知して4個のパルスを出力する。この瞬間流量の計測では、演算回路部(瞬間流量計測回路)51を作動させて、第3の光センサ50からの出力パルスが計測される。そして、計測データに基づいて瞬間流量を算出したのち、該算出結果を瞬間流量用要求応答電文に表示して送信する。
【0054】
瞬間流量を計算する際、1パルス当たりの立ち上がり及び立ち下がりの両方のエッジにて第2の歯車45の回転数をカウントする。このようにすると、第3の光センサ50により出力されるパルスは、前記歯車45の1回転当たり4パルスであれば、演算回路部51内で処理されるパルス数は1回転当たり8パルスとなる。尚、瞬間流量を算出する際に必要となる第2の歯車45の1回転当たりの重み付けをレートという。ここで、例えば4秒間のパルス数をPパルス、レートをK×10−4〔L/1回転〕とすると、瞬間流量Qは
【式1】
【0055】

【0056】
瞬間流量Qは漏水判定に利用される。その際、漏水対象である家などの蛇口全てを閉め切って、その時の瞬間流量が0でないときは「漏水」と判定する。
【0057】
本実施例によれば、水道水が逆方向に流れて羽根車21が逆回転した場合は、積算値を減算して補正される。従って、水道水の逆流によって生じる算出ミスを防止して、水道水の使用量を常に正確に計測できる。又、この水道メータ11は歯車伝達方式であるので、落雷や電池寿命等により計測不能状態に陥った場合でも、計測済みの積算値はそのまま保存され、主なメータ機能も良好に維持される。更に、羽根車21の回転状態を光学的にセンシングして、水道水使用量の演算・積算処理を行うため、外部から磁気の影響を受けずに、正確な計測結果を安定して得ることができる。更に又、センシング時、水道水計量用の光センサ36,37は間欠的に駆動されるので、光センサ36,37及びその周辺回路に供給される消費電気量が大幅に低減する。
【0058】
本発明は羽根車21の高速回転ではなく、減速された歯車の回転数をカウントするため、高性能なCPUが不要となり、且つ、消費電流も少なくなり低容量の電池を使用でき、大幅なコストダウンが図れる。
【0059】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る一実施例を示し、水道メータの構成を説明する縦断面図。
【図2】一実施例に係る水道メータの平面図。
【図3】一実施例に係る水道水計量用回転部材を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は斜視図。
【図4】一実施例に係る水道水計量用光センサの配置例を示す平面図。
【図5】一実施例に係るマイクロコンピュータの水道水計量手段を説明するブロック図。
【図6】一実施例に係る瞬間流量計測用回転部材を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は斜視図。
【図7】一実施例に係るマイクロコンピュータの瞬間流量計測手段を説明するブロック図。
【図8】一実施例に係る瞬間流量計測用光センサの配置例を示す平面図。
【図9】一実施例に係る水道水計量用光センサのデューティ比を説明するセンサ出力波形図。
【図10】一実施例に係る水道水計量用光センサの正転時のパルス波を説明するセンサ出力波形図。
【図11】一実施例に係る水道水計量用光センサの逆転時のパルス波を説明するセンサ出力波形図。
【図12】一実施例に係るカウンタ部の構成例を示す説明図。
【図13】一実施例に係るパルスサンプリングを説明する出力波形図。
【図14】従来の電子式水道メータの構成例を説明する縦断面図。
【符号の説明】
【0061】
11 水道メータ
19 通路(計量室)
21 羽根車
30 数字車
32 第1の軸部
33 第1の歯車
34 水道水計量用回転部材
35 半円弧状光遮蔽部(被検出部)
36 第1の光センサ(水道水計量用光センサ)
37 第2の光センサ(水道水計量用光センサ)
38 プリント回路基板
40 マイクロコンピュータ(CPU)
41 正逆転判定部
42 演算・積算回路部
43 記憶部
44 通信機能部
45 第2の歯車
46 第2の軸部
47 瞬間流量計測用回転部材
48a〜48d 円弧状光遮蔽部(被検出部)
50 第3の光センサ(瞬間流量計測用光センサ)
51 演算回路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道水の流量に応じて回転数が増減する羽根車を計量部に有し、且つ、該羽根車の回転数を複数の歯車を介して伝達し、該回転数の積算値を表示するようにした水道メータにおいて、
前記複数の歯車のいずれか1つを構成する歯車の軸部に、円周上に光遮蔽部等の被検出部を有する水道水計量用回転部材を前記歯車と一体に回転するように設けると共に、該被検出部を検出して前記歯車の回転方向、回転数などの回転状態をセンシングする水道水計量用の光センサを2個配設し、且つ、該光センサにマイクロコンピュータを接続し、
該マイクロコンピュータは、前記羽根車の正転又は逆転を判断する正逆転判定部と、前記羽根車が正転の時に前記積算値に加算処理を行い、且つ、該羽根車が逆転の時に前記積算値に減算処理を行う演算・積算回路部と、該積算値データを記憶する記憶部と、該積算値データを外部の自動検針器等に送信する通信機能部とを備えて成ることを特徴とする水道メータ。
【請求項2】
上記光センサによるセンシングは間欠的に行うように構成したことを特徴とする請求項1記載の水道メータ。
【請求項3】
上記2個の光センサは互いに上記水道水計量用回転部材の回転方向に所定間隔を有して配置され、且つ、上記正逆転判定部は2個の光センサから送出されるセンサ出力の位相差に基づいて上記羽根車の回転方向を判定するように構成したことを特徴とする請求項1記載の水道メータ。
【請求項4】
水道水の流量に応じて回転数が増減する羽根車を計量部に有し、且つ、該羽根車の回転数を複数の歯車を介して伝達し、該回転数の積算値を表示するようにした水道メータにおいて、
前記羽根車と連動して回転する歯車の軸部に、円周上に光遮蔽部等の被検出部を有する瞬間流量計測用回転部材を前記歯車と一体に回転するように設けると共に、該被検出部を検出して前記歯車の回転数をセンシングする瞬間流量計測用の光センサを1個配設し、且つ、該光センサにマイクロコンピュータを接続し、
該マイクロコンピュータは、前記光センサで検出した前記歯車の回転数に基づいて瞬間流量を計測する演算回路部と、該計測された瞬間流量を外部の自動検針器等に送出する通信機能部とを備えて成ることを特徴とする水道メータ。
【請求項5】
上記瞬間流量の計測は外部から通信で要求があったときのみ行われることを特徴とする請求項4記載の水道メータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−164544(P2008−164544A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356797(P2006−356797)
【出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【出願人】(591085422)高畑精工株式会社 (16)
【Fターム(参考)】