説明

水道用スキンケアカートリッジ

【課題】蛇口やシャワーなどの水道端から出る水にアミノ酸を含有させて、その水を使用することによって肌に保湿効果を与えることができる水道用スキンケアカートリッジにおいて、アミノ酸の放出量を適切に制御し、機械的故障なく安定してアミノ酸を徐放することができるようにする。
【解決手段】水不溶性樹脂、構造材料、及び一種類又は複数種類のアミノ酸を含み、これらを互いに分散させた樹脂組成物から構成され、上記樹脂組成物中の上記アミノ酸の含有割合が20〜90重量%であり、上記構造材料と上記水不溶性樹脂とのうち少なくとも一方が親水性であるアミノ酸徐放材を、水道水が流通する通液部に内包させた水道用スキンケアカートリッジを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蛇口やシャワーなどの水道端に取り付けて、通過する水にスキンケア効果を与えるカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
蛇口やシャワーヘッドなどの水道の終端口に、そこから出る水の成分を調整するためのカートリッジを取り付けることが一般に行われている。このようなカートリッジの中身は、例えば、特許文献1に記載のカルシウムやマグネシウムなどのミネラル分を付与するためのコーラルサンド、特許文献2に記載の亜硫酸カルシウムやビタミンCなどの脱塩素剤、特許文献3に記載の活性炭やセラミックスなどが挙げられる。これらのうち、活性炭や脱塩素剤は、水中に含まれる微量成分に対して作用するものである。また、ミネラル分を添加する場合は、必要とされる濃度はそれほど高くはない。これらの成分を含むカートリッジは、水道の終端口の流水に曝されるように設置されて、接する流水にそれらの成分を付加したり、流水が含む成分を吸着したりする。
【0003】
一方、アミノ酸は保湿効果が高く、肌へのなじみがよいため、特許文献4に記載のように、化粧品などの外用剤においてスキンケアに用いる保湿剤や安定剤として用いられている。また、入浴剤にアミノ酸を添加してアミノ酸水溶液とした浴湯に漬かることで、肌の保湿効果を得る方法が特許文献5に記載されている。さらに、シャワーヘッド内の流路に隣接して、余圧により封止し、負圧により開口する添加剤添加口を有するアミノ酸カートリッジを設け、遊離アミノ酸を水中に放出させて肌の保湿等を行う方法が特許文献6に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−136304号公報
【特許文献2】特開2007−29902号公報
【特許文献3】特開2007−29902号公報
【特許文献4】特開2001−206832号公報
【特許文献5】特開2001−226253号公報
【特許文献6】特開2004−275961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献4のようにアミノ酸を直接肌に塗り込んだり、特許文献5のように、長時間肌に触れている浴湯中に含ませたりする場合と比べて、蛇口やシャワーなどの水道端から出る流水や湯にアミノ酸を含ませる場合は、それらの水や湯が肌に接している時間が短く、また、触れる量が少なくなるため、流水にアミノ酸を添加して肌に保湿効果を与えるには必要量を適正に確保する必要があった。
【0006】
一方で、特許文献6に記載の方法では、カートリッジと添加剤添加口の構造が複雑になりすぎ、放出量を適正に制御することが難しく、機械的部分が故障して放出が止まった場合に、その故障を感知しにくいという問題もあった。また、一種類のアミノ酸のみを含有させるのであれば、流通後の水に含まれるアミノ酸の量をある程度調整することができるが、二種類以上のアミノ酸を適量含有させるために、接する水の量を調整しようとすると、徐放材を取り付けるカートリッジ部分の機構が複雑になりすぎてしまい、運用しにくくなってしまった。
【0007】
さらに、特許文献1乃至3に記載のカルシウムやビタミンCなどを水に含有させる場合と比べて、アミノ酸は単位重量あたりの単価が高いために、経済的な理由からも、使用量と放出量を抑えて適切に制御する必要があった。一方で、使用量を抑えつつ目的とする肌への保湿効果を与えるために、アミノ酸の種類や流水の量に対する使用量などに応じて、放出量を自在に調整する必要があった。
【0008】
そこでこの発明は、蛇口やシャワーなどの水道端から出る水にアミノ酸を含有させて、その水を使用することによって肌に保湿効果を与えることができる水道用スキンケアカートリッジであって、アミノ酸の放出量を自在かつ適切に制御し、機械的故障なく安定してアミノ酸を徐放することができるものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、水道用スキンケアカートリッジとして、水不溶性樹脂、構造材料、及び一種類又は複数種類のアミノ酸を含み、これらを互いに分散させた樹脂組成物から構成され、上記樹脂組成物中の上記アミノ酸の含有割合が20〜90重量%であり、上記構造材料と上記水不溶性樹脂とのうち少なくとも一方が親水性であるアミノ酸徐放材を、水道水が流通する通液部に内包させたものを用いることにより、上記の課題を解決したのである。
【0010】
このような水道用スキンケアカートリッジは、内包する上記アミノ酸徐放材が含む上記水不溶性樹脂の量を自在に調整することによって、上記アミノ酸の急激な放出を抑え、或いは、含有する上記アミノ酸が少量であっても必要な量を放出できるように、調整することができ、通液部を通過した水に、適切な量の上記アミノ酸を徐々に放出していくことができる。また、上記アミノ酸徐放材は、水流に耐えうる強度を有するので、水道の流水に直接曝される箇所に取り付けても、崩壊して上記アミノ酸を一気に放出してしまう可能性は低い。さらに、構造材料が水不溶性樹脂中に分散し、この構造材料と水不溶性樹脂との少なくとも一方が親水性であることで、材料内部に上記アミノ酸を外部へと徐放させる経路ができ、含有する上記アミノ酸を全量放出することができる。
【0011】
また、上記アミノ酸徐放材の表面をコーティング樹脂でコーティングすることにより、上記水不溶性樹脂による溶解量の制御と合わせて、上記アミノ酸の放出量を、必要かつ最適な量に調整することができる。
【0012】
さらに、複数種類のアミノ酸を水に含有させるためには、それらのアミノ酸を全て含有するアミノ酸徐放材を製造してもよいし、含有するアミノ酸の種類が異なるアミノ酸徐放材を製造してもよい。一つのアミノ酸徐放材に必要とするアミノ酸を全て含有させる場合には、放出されるそれぞれのアミノ酸の量比を調整するため、含有させるアミノ酸の量比を適切に調整したものを製造する。
【0013】
また、種類の異なるアミノ酸を含有させたアミノ酸徐放材を製造する場合は、それぞれのアミノ酸ごとに適した上記水不溶性樹脂の量を調整して個々のアミノ酸徐放材を製造し、あるいは、それぞれのアミノ酸ごとに適した溶解量での水中への放出を可能とするように調整した樹脂でのコーティングを行って個々のアミノ酸徐放材を製造し、このように個々のアミノ酸ごとに最適化された複数の種類のアミノ酸徐放材を併用することで、それぞれのアミノ酸を必要最適量だけ放出するようにすることができる。含有するアミノ酸の種類が異なるアミノ酸徐放材を併用するにあたっては、種類の異なるアミノ酸徐放材の粒子を混合してカートリッジに内包させてもよいし、アミノ酸の種類ごとにカートリッジ内を区分けして内包させてもよい。
【発明の効果】
【0014】
この発明にかかる水道用スキンケアカートリッジを蛇口やシャワー口などの水道端に取り付けることによって、そこから出る水に効率的にアミノ酸を含有させることができる。機械的に放出させるのではなく、水に接した徐放材の内部からアミノ酸を徐々に染み出させるので、機械的故障がなく、安定したアミノ酸の供給が可能となる。また、この水道用スキンケアカートリッジに含まれるアミノ酸徐放材は、上記構造材料と上記水不溶性樹脂によって強度を確保するため、水流に曝されたり攪拌されたりする箇所に設けても壊れにくく、上記アミノ酸を安定して徐放させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明について詳細に説明する。
この発明は、水不溶性樹脂、構造材料、及び、一種類又は複数種類のアミノ酸を含む樹脂組成物から構成されるアミノ酸徐放材を、水道水を流通させる通液部に内包し、前記通液部を通過した水にアミノ酸を含有させ得る、水道用スキンケアカートリッジである。
【0016】
上記アミノ酸としては、セリン、アルギニン、プロリン、グルタミン、グルタミン酸、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グリシン、リジン、システイン、スレオニン、メチオニン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン、バリン、ロイシン、イソロイシンなどが挙げられ、またアミノ酸一単位からなる化合物だけでなく、これらを構成成分とするポリマーや、ペプチド、コラーゲン、タンパク質も含み、これらのうち、肌に接することで保湿効果を与えるものを用いることができる。また、これらのアミノ酸を複数併用してもよい。ただしその場合、併用するアミノ酸同士が、互いに反応して効果を失うことのないものである必要がある。上記アミノ酸徐放材は、これらのアミノ酸を接する水に徐放して、その水に触れた肌に保湿効果を与える徐放材である。
【0017】
上記水不溶性樹脂とは、上記アミノ酸の急激な放出を抑えて徐放させるとともに、上記構造材料及び上記アミノ酸を成型する樹脂で、使用時に常温で固体である必要がある。この水不溶性樹脂としては、加熱溶融して冷却固化する樹脂、成型時に液状で反応固化する樹脂、成型時には水や有機溶媒に溶解または分散した状態で、後に溶媒が蒸発することにより固化する樹脂が挙げられ、上記アミノ酸と混合する際に、上記アミノ酸が変質するのを防ぐために、上記アミノ酸との反応性が低いものである必要がある。
【0018】
上記の加熱溶融して冷却固化する水不溶性樹脂の例としては、まず、疎水性の水不溶性樹脂として、ロジン系樹脂、ワックス、高級脂肪酸、高級アルコール、シュガーエステル等が挙げられる。このうち、上記ロジン系樹脂としては、(1)通常のロジンとして、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどが挙げられ、(2)変性ロジンとして水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなどが挙げられ、(3)ロジンエステルとしてロジンメチルエステル、水添ロジングリセリンエステルなどが挙げられる。上記ワックスとしては、(1)動物ワックスとして、蜜ロウ、牛ロウ、ラノリン等が挙げられ、(2)植物ワックスとして、木ロウ、ライスワックス、カルバナワックス等が挙げられ、(3)鉱物ワックスとして、オゾケライト等が挙げられ、(4)石油ワックスとして、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。上記高級脂肪酸としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等が挙げられる。上記高級アルコールとしては、ステアリルアルコール等が挙げられる。上記シュガーエステルとしては、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル等が挙げられる。また、親水性の水不溶性樹脂としては、酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。
【0019】
次に、成型時に液体で反応固化する水不溶性樹脂の例としては、まず、疎水性の水不溶性樹脂として、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂等が挙げられる。また、親水性の水不溶性樹脂としてポリビニルアルコールの架橋物や、ポリビニルアセタール等の水不溶化物などが挙げられる。
【0020】
さらに、成型時に水や有機溶媒に溶解または分散した状態で、後に溶媒が蒸発することにより固化する水不溶性樹脂の例としては、まず、疎水性の水不溶性樹脂として、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。また、ウレタン樹脂やアクリル樹脂等の水系エマルジョンのように、疎水性樹脂にイオン性基を導入し、親水化した水不溶性樹脂が挙げられる。
【0021】
上記構造材料は、上記水不溶性樹脂や上記アミノ酸中に分散可能であって、上記アミノ酸徐放材の強度を高めるものをいい、例えば、パルプ繊維、セルロース繊維等の親水性繊維や、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維などの疎水性繊維、層間に水を保持可能な親水性の粘性鉱物などが挙げられる。
【0022】
また、上記構造材料と上記水不溶性樹脂とのうち少なくとも一方が親水性であることが必要である。これにより、上記水不溶性樹脂と上記構造材料から構成される、上記アミノ酸を保持する成分に、必要な親水性を与えることが可能となる。上記水不溶性樹脂が疎水性であっても、上記構造材料が親水性であれば、その構造材料を経路として水と上記機能性水溶性物質とが移動可能となり、上記アミノ酸を放出することができる。また逆に、上記構造材料が疎水性であっても、上記水不溶性樹脂が親水性であれば、その水不溶性樹脂を通して上記アミノ酸を放出することができる。なお、上記水不溶性樹脂と上記構造材料との両方ともが親水性であってもよい。
【0023】
上記のアミノ酸徐放材に、上記アミノ酸を保持し、また、徐放可能とする成分に必要な親水性を有する条件は、具体的には、アミノ酸を入れずに製造した水不溶性樹脂と構造材料の成型物の吸水量により規定され、この成型物1g当りの吸水量は0.1〜2gであると好ましい。
【0024】
上記アミノ酸徐放材を製造するには、まず、上記水不溶性樹脂、上記構造材料及び上記アミノ酸を混合し、これらの物質を互いに分散させた樹脂組成物とする。なお、上記の水不溶性樹脂、構造材料及びアミノ酸以外に含有するものがあってもよい。
【0025】
例えば、上記のアミノ酸徐放材は、放出すべきアミノ酸とともに、スキンケアや化粧などに関連するその他の機能性水溶性物質を含んでいても良い。この機能性水溶性物質としては例えば、尿素、グリセリンなどの保湿成分、アスコルビン酸(ビタミンC)などの、水道水の脱塩素効果を有する化合物や、香料成分などが挙げられる。特に脱塩素化合物を含んでいると、水道水に含まれる塩素を除去することができるために、塩素由来の肌荒れを防ぐ効果が得られるので、特に好ましい。
【0026】
上記アミノ酸徐放材のうち、上記樹脂組成物中の上記アミノ酸の含有割合は、20〜90重量%である必要があり、30〜80重量%であると好ましい。上記アミノ酸の含有量が20重量%未満であると、量が少なすぎて上記アミノ酸の放出が早く終了してしまい、徐放材としての機能が不十分になってしまう。一方、で90重量%を超えると、材料を支える上記水不溶性樹脂と上記構造材料とが不足になるため、成形が難しかったり、成形できたとしても崩壊して放出制御ができなくなってしまう。
【0027】
また、上記樹脂組成物中の上記水不溶性樹脂の含有割合は5〜70重量%であると好ましく、上記構造材料の含有割合は5〜50重量%であると好ましい。このような割合で混合すると、水流や攪拌に耐える強度を有し、アミノ酸を徐放させることができる。さらに、用いるアミノ酸ごとに、最適となる溶解度で徐放できるように、上記水不溶性樹脂の含有量を調整すると好ましい。上記水不溶性樹脂が多くなると、その分アミノ酸の放出量を低下させることができるので、放出量をより低下させても十分に効果を発揮するアミノ酸であれば、その分上記水不溶性樹脂を多くすることで最適量に調整することができる。
【0028】
ただし、上記水不溶性樹脂だけでなく、後述する樹脂のコーティングによっても、放出量を低減させることができるので、上記アミノ酸徐放材に、合わせてコーティングを行う場合には、この最適な値は変わってくる。
【0029】
なお、上記のアミノ酸の最適となる溶解量とは、アミノ酸が含まれることで発揮される、肌の保湿効果を十分に発揮可能な溶解量をいい、この値はアミノ酸の種類によって異なるが、流水中に0.001重量%程度存在すれば手肌に保湿効果を与えるものが多い。例えば、グルタミン酸である場合、肌への保湿効果を与えるには、0.0001重量%〜0.01重量%であると好ましい。濃度が高すぎると、放出が早く、保湿効果を与える期間が短くなりすぎてしまう。
【0030】
これらの成分からなる樹脂組成物を成形して上記アミノ酸徐放材を得る方法としては、造粒する方法がある。造粒する方法としては、例えば、加熱溶融させた上記樹脂組成物を間欠に押し出し切断して冷却し、粒状物にする方法がある。また、水に分散した樹脂を使用する場合、樹脂組成物を押出し造粒、乾燥し、粒状物にする方法がある。
【0031】
上記の造粒により得られた造粒物を、そのまま上記アミノ酸徐放材として用いてもよいし、上記造粒物の表面をセラックなどのコーティング樹脂でコーティングすることによって、上記水不溶性樹脂と合わせて上記アミノ酸の放出量をさらに低下させたアミノ酸徐放材として用いてもよい。特に、上記水不溶性樹脂と上記構造材料とのどちらも親水性である場合など、上記アミノ酸の放出量が多い際に、コーティング樹脂でコーティングすることで、放出量を調整して効果をより長く持続させた徐放材にすることができる。このコーティング樹脂は、上記水不溶性樹脂と同じものでもよいし、違うものでもよい。また、上記樹脂が疎水性であるとコーティングにより得られる放出量の低下効果がより高い。コーティングする方法としては、例えば、加熱溶融した樹脂や、水や有機溶媒に溶解あるいは分散した樹脂を使用して、パンコーティング、転動コーティング、流動コーティングする方法が挙げられる。
【0032】
上記アミノ酸徐放材を、蛇口やシャワーなどの水道端に取り付けるスキンケアカートリッジの通液部に設置する。このカートリッジは、前記水道端の外側に取り付けるものでもよいし、前記水道端の内部に仕込むものでもよい。
【0033】
図1(a)及び(b)に、水道の蛇口の外側に取り付けるスキンケアカートリッジの例の外観図と断面図とを示す。このスキンケアカートリッジは、上下に水が流通するための貫通口12a,12bを有する保持器12内に、アミノ酸徐放材13を充填させたカートリッジ14がセットされている。カートリッジ14自体は、微細な孔を有するプラスチックケースや不織布などからなり、充填されたアミノ酸徐放材13を外部に漏らすことなく、かつ水が流通可能な構造をしている。上方の貫通口12aから流し込まれた流水は、カートリッジ14内を通過する際に、接するアミノ酸徐放材13から徐放されたアミノ酸を受け取る。その後下方の貫通口12bから出た水は、設置したアミノ酸徐放材13の上記水不溶性樹脂の含有率や、コーティングに応じた量のアミノ酸を含有し、その水で手洗いや洗顔、入浴等を行うことで、手や顔などの肌に対して保湿効果を与えることができる。なお、図中ネジ部16は、蛇口17の先端部に保持器12を固定するためのものである。
【0034】
また、図2(a)及び(b)に、水道のシャワー口の内側に取り付けるスキンケアカートリッジの例の外観図と断面図とを示す。ホース21の先に取り付けられたシャワーヘッド22内の通液部に、アミノ酸徐放材23を充填させたカートリッジ24がセットされている。上記の図1と同様に、カートリッジ24自体はアミノ酸徐放材23を外部に漏らすことなく、かつ水が流通可能である。シャワーヘッド22の下方から流通してきた水は、アミノ酸徐放材23から徐放されたアミノ酸を受け取り、上方へ抜け出て、最終的にシャワーヘッド22の放出孔22aから放射される。放射された水を受けた肌には、アミノ酸による保湿効果が与えられる。
【0035】
上記水不溶性樹脂及び上記コーティング樹脂によって調整される、アミノ酸の溶解量は、これらのカートリッジにおいて水と接する上記アミノ酸徐放材の合計表面積に応じて変わってくる。すなわち、カートリッジに仕込む上記アミノ酸徐放材が多い場合は、上記水不溶性樹脂及びコーティングによる溶解量をより強く抑制することで、長期間に亘ってアミノ酸の放出を続けられるようにするとよい。
【0036】
上記アミノ酸徐放材として、複数種類のアミノ酸を放出させる際には、種類の異なるアミノ酸を含有する上記アミノ酸徐放材を個々に製造し、それらを混合して図1(b)や図2(b)に記載のようなカートリッジに仕込んでも良い。また、含有するアミノ酸が異なるそれぞれの上記アミノ酸徐放材を、内部を水流に対して直列に区切ったカートリッジのそれぞれの区画に充填して、それぞれのアミノ酸が順番に流水に溶ける様にしてもよい。図1(c)及び図2(c)に、図1(b)及び図2(b)に示す蛇口用、シャワー用のそれぞれのカートリッジの中身を直列に仕切り、含有するアミノ酸の種類が異なる複数の種類のアミノ酸徐放材を充填させた例を示す。
【0037】
それぞれの種類の異なる上記アミノ酸を含有する上記アミノ酸徐放材は、それぞれ含有するアミノ酸が、最適となる溶解量を放出できるように、上記水不溶性樹脂、及びコーティングする場合にはコーティング樹脂の種類及び量を適切に調整する。この発明にかかる徐放材は何千リットルもの水に徐放するため、それぞれの上記アミノ酸ごとに放出量を適切に調整しなければ、一部の上記アミノ酸のみが放出されてしまうという状況になってしまう場合がある。この調整にあたっては、アミノ酸を造粒した後の表層のコーティングで調整するか、個々のアミノ酸を粉末の段階でコーティングして溶解度を調整し、それを造粒するかのどちらかになる。具体的なコーティング量は、粒子重量に対して1〜20重量%程度のコーティング樹脂をコーティングするとよく、この範囲で、溶解度の低いアミノ酸を含有する徐放材に対してはコーティングする樹脂量を少なく、溶解度の高いアミノ酸を含有する徐放材に対してはコーティングする樹脂量を多くして、最適な溶解量となるように調整する。なお、1重量%以下ではコーティングの効果がほとんど得られず、一方で20重量%を超えると放出が困難となってしまう場合がある。
【0038】
また、上記の場合とは逆に、一つの上記アミノ酸徐放材に複数の種類のアミノ酸を含有させることで、複数のアミノ酸を放出させることができるようにしてもよい。ただしこの場合、アミノ酸ごとに溶解度が異なるにも関わらず、その溶解量を制御すべき上記水不溶性樹脂とコーティングの程度が同じになるため、放出されるアミノ酸の量を適切に制御することが難しい。この場合、含有させるアミノ酸の量比自体を調整することで、放出されるアミノ酸の量比を調整することができる。また、アミノ酸の種類によって、上記水不溶性樹脂や上記コーティング樹脂による放出量の抑制効果が異なる場合は、それぞれのアミノ酸の放出量を調整できるように、用いる上記水不溶性樹脂や上記コーティング樹脂の種類や量を調整する。
【実施例】
【0039】
(実施例1〜11)
水不溶性樹脂である水分散性のウレタン樹脂水系エマルジョン(大日本インキ化学工業(株)製:ハイドランHW930、表中「ウレタン」と表記する。)と、表1に記載のそれぞれのアミノ酸と、構造材料であるパルプ繊維(日本製紙ケミカル(株)製:KCフロックW−200、表1中「パルプ」と表記する。)とを、表1に記載の質量比で混合して造粒し、かつ例によってはコーティングを行ってそれぞれの例についてアミノ酸徐放材を得た。得られたアミノ酸徐放材25gを、流速4L/分で2分間流水に曝した場合のアミノ酸の溶出量を分光光度計((株)日立製作所製:自動アミノ酸分析計L−8500)により測定した。
【0040】
【表1】

【0041】
なお、用いるアミノ酸の物性は以下の通りである。
・L−グルタミン酸……ナカライテスク(株)製、20℃での水への溶解度:0.72g/100g
・L−アルギニン……ナカライテスク(株)製、20℃での水への溶解度:14.8g/100g
・L−セリン……ナカライテスク(株)製、20℃での水への溶解度:38g/100g
【0042】
造粒は、高速攪拌造粒機((株)ダルトン製:SPG−25)に添加・混合して樹脂組成物を得て、これをディスクペレッター((株)ダルトン製:F−5)に投入してペレットとした後、マルメライザー((株)ダルトン製:Q−400)で球形整粒した。なお、ここで高速攪拌造粒機においては造粒までは行わず、混練のために用いている。これを100度に設定した振動乾燥機((株)ダルトン製:MDV−1200)で乾燥し、粒径約4mmの粒状物を得た。
【0043】
また、コーティングは、糖衣機((株)畑鉄工所製:HC−200)を用いて、ウレタン樹脂水系エマルジョンで表面コーティングした後、水を蒸発させ、表1記載の重量分だけコーティングした。なお、表1中コーティング量が0であるものは、コーティングを行わなかった例である。
【0044】
(結果)
実施例1〜11のいずれでも、アミノ酸の全量が流れ出ることはなく、アミノ酸を徐放することができた。また、コーティングを施すことで、いずれの場合もアミノ酸の放出速度を抑えることができ、コーティングする樹脂を増やすと、それに応じてアミノ酸の放出速度をより低下させることが出来た。ただし、異なるアミノ酸の徐放材を比較すると、水への溶解度が高いアミノ酸を用いた徐放材ほど、アミノ酸の放出量を同程度に抑制するためには、より厚くコーティングを行う必要があることがわかった。
【0045】
(実施例12,13)
実施例1と同一の手順により、アミノ酸を表1のようにそれぞれ2種、3種含む粒径約4mmの粒状物を得た。その構成を表1に示す。いずれの実施例でも、アミノ酸の全量が流れ出ることはなく、含有するアミノ酸のそれぞれを徐放させることができた。ただし、含有させるアミノ酸同士の量が同一であっても、徐放させるアミノ酸の濃度は異なるものとなった。中でも、L−グルタミン酸の濃度は低く、L−セリンの濃度は濃い高いものとなった。この濃度差は、実施例1〜11で得られるそれぞれのアミノ酸を単独で含有させた徐放材を用いた場合の濃度の違いに対応する。
【0046】
(実施例14)
水不溶性樹脂であるパラフィンワックス(日本精蝋(株)製:HNP−9、表中「ワックス」と表記する。)をヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製:FM20)に添加して90℃で融解させ、それにアミノ酸であるL−アルギニン、構造材料であるパルプ繊維(実施例1のパルプと同じ。)を表2に記載の割合で添加・混合し、これを孔径3mmの吐出ノズルを装備したディスペンサー(武蔵エンジニアリング(株)製:ML−505X)を使用して、冷却したスチール板上にノズルから間欠に押出、切断して、それぞれ粒径約4mmの粒状物を得た。
【0047】
【表2】

【0048】
得られたアミノ酸徐放材25gを図1のカートリッジに入れ、流速4L/分で流水し、累積通水量が1000L、2000L、3000Lとなった粒状物を取り出して、乾燥し、その重量減少率を測定して、最初に含まれていたアミノ酸の量に対する溶出率として算出した。その結果を表2に示す。
【0049】
(比較例1〜3)
比較例1として、構造材料であるパルプを使用しないこと以外は実施例14と同様の手順により粒状物を得た。また、比較例2として、構造材料を疎水性であるポリエチレン繊維(大和紡績(株)製:ダイワボウNBF、表中「PE」と表記する。)に変更した以外は実施例14と同様の手順により粒状物を得た。さらに、比較例3として、アミノ酸の含有率が90重量%を超えて92重量%であり、ワックスとパルプがそれぞれ4重量%である以外は、実施例14と同様の手順により粒状物を得た。それぞれについて実施例14と同様の測定を行った。その結果を表2に示す。
【0050】
(実施例15)
L−グルタミン酸源として実施例2の徐放材、L−アルギニン源として実施例6の徐放材、L−セリン源として実施例10の徐放材を各々8.3g用いて混合してカートリッジに入れ、実施例1と同様に流水に曝したところ、三種類のアミノ酸の濃度はいずれも4ppmとなり、溶解性の異なるアミノ酸をほぼ同じ濃度で徐放することができた。
【0051】
(実施例16)
実施例2のアミノ酸徐放材25gを図1のカートリッジに入れて、33名のモニターが1ヶ月間手洗いに使用し、手を洗っている時と、手を洗った後の感触について、表3のような回答を得た。6割以上のモニターがしっとり、すべすべ感があると回答し、アミノ酸の含有によるスキンケア効果を自覚した。
【0052】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】(a)蛇口外に取り付ける水道用スキンケアカートリッジの一例の外観図、(b)(a)の断面図、(c)充填するアミノ酸徐放材を流水に対して直列方向に区切った例の断面図
【図2】(a)水道用スキンケアカートリッジを内部に取り付けるシャワーヘッドの一例の外観図、(b)(a)の断面図、(c)充填するアミノ酸徐放材を流水に対して直列方向に区切った例の断面図
【符号の説明】
【0054】
12 保持器
12a (上方の)貫通口
12b (下方の)貫通口
13 アミノ酸徐放材
14 カートリッジ
16 ネジ部
17 蛇口
21 ホース
22 シャワーヘッド
22a (シャワーヘッドの)放出孔
23 アミノ酸徐放材
24 カートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性樹脂、構造材料、及び、一種類又は複数種類のアミノ酸を含み、これらを互いに分散させた樹脂組成物から構成され、上記樹脂組成物中の上記アミノ酸の含有割合が20〜90重量%であり、上記構造材料と上記水不溶性樹脂とのうち少なくとも一方が親水性であるアミノ酸徐放材を、水道水を流通させる通液部に内包し、前記通液部を通過した水に上記アミノ酸を含有させ得る、水道用スキンケアカートリッジ。
【請求項2】
上記アミノ酸徐放材が、上記樹脂組成物を造粒して得たものである、請求項1に記載の水道用スキンケアカートリッジ。
【請求項3】
上記アミノ酸徐放材が、上記樹脂組成物を造粒した後、得られる造粒物の表面をコーティング樹脂でコーティングし、上記アミノ酸徐放材から水へ含有される上記アミノ酸の量を調整したものである、請求項2に記載の水道用スキンケアカートリッジ。
【請求項4】
含有するアミノ酸の種類が異なる複数種類の上記アミノ酸徐放材を通液部に内包した、請求項1乃至3のいずれかに記載の水道用スキンケアカートリッジ。
【請求項5】
含有するアミノ酸の種類が異なる複数種類の上記アミノ酸徐放材を通液部に内包し、それぞれの上記アミノ酸徐放材が、上記水不溶性樹脂及び上記コーティング樹脂によってそれぞれの上記アミノ酸の水への含有量を調整したものである、請求項3に記載の水道用スキンケアカートリッジ。
【請求項6】
一つの上記アミノ酸徐放材が、複数種類のアミノ酸を含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の水道用スキンケアカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−102829(P2009−102829A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273646(P2007−273646)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000115980)レンゴー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】