説明

水酸化アルミニウム複合材

【課題】水酸化アルミニウムが樹脂に混合された難燃性を有する樹脂組成物は、破断点応力、破断点伸度などの機械的強度が必ずしも十分でない場合があり、機械的強度に優れる樹脂組成物を付与することができる水酸化アルミニウムが求められていた。
【解決手段】水酸化アルミニウムの水酸基の水素原子がポリマー鎖に置き換わった水酸化アルミニウム複合材であって、
該ポリマー鎖が、水酸化アルミニウムの水酸基と反応し得る基および原子移動ラジカル重合開始基を含む化合物に由来する構造単位と、
ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーに由来する構造単位と
を含むことを特徴とする水酸化アルミニウム複合材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸化アルミニウム複合材等に関する。
【背景技術】
【0002】
水酸化アルミニウムは、熱分解により、多量の水を発生すると同時に、吸熱作用があるため、例えば、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂等の樹脂に混合される難燃剤あるいは充填剤(フィラー)として用いられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】実用プラスチック事典、第2章副資材第6節難燃剤836頁、第8節充填剤、4.充填剤各論(3)水酸化物 1)水酸化アルミウム第869頁、株式会社産業調査会(1993)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水酸化アルミニウムが樹脂に混合された難燃性を有する樹脂組成物は、破断点応力、破断点伸度などの機械的強度が必ずしも十分でない場合があり、機械的強度に優れる樹脂組成物を付与することができる水酸化アルミニウムが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような状況下、本発明者らは、水酸化アルミニウム複合材について鋭意検討した結果、以下の発明に至った。すなわち、本発明は、
<1> 水酸化アルミニウムの水酸基の水素原子がポリマー鎖に置き換わった水酸化アルミニウム複合材であって、
該ポリマー鎖が、
水酸化アルミニウムの水酸基と反応し得る基および原子移動ラジカル重合開始基を含む化合物に由来する構造単位と、
ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーに由来する構造単位と
を含むことを特徴とする水酸化アルミニウム複合材;
【0006】
<2> 原子移動ラジカル重合開始基が、式(1)〜(6)で示される基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基であることを特徴とする<1>記載の水酸化アルミニウム複合材;

(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表わす。Rは、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表わし、Xは、ハロゲン原子を表わす。*は結合手を意味する。)
【0007】
<3> ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーが、α−オレフィン系モノマー、スチレン系モノマー、アクリレート系モノマー、メタクリレート系モノマー、アクリルアミド系モノマー、メタクリルアミド系モノマー、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、4−ビニルピリジン、塩化ビニルおよびビニルエステル系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする<1>又は<2>記載の水酸化アルミニウム複合材;
<4> ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーが、スチレン系モノマー、アクリレート系モノマーまたはメタクリレート系モノマーであることを特徴とする<1>又は<2>のいずれか記載の水酸化アルミニウム複合材;
【0008】
<5> 水酸化アルミニウムの水酸基と反応し得る基が、式(a)〜(i)で示されるいずれかの構造を有する基であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか記載の水酸化アルミニウム複合材;

(式中、X’は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表わし、R’は、炭素数1〜4のアルキル基を表わす。*は結合手を意味する。)
【0009】
<6> 水酸化アルミニウムの水酸基と反応し得る基および原子移動ラジカル重合開始基を含む化合物が、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(トリメトキシシリル)へキシル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(トリエトキシシリル)へキシル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(トリエトキシシリル)ペンチル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(メチルジエトキシシリル)へキシルまたは2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(ジメチルエトキシシリル)へキシルである<1>〜<4>のいずれかに記載の水酸化アルミニウム複合材;
<7> 水酸化アルミニウムと、水酸化アルミニウムの水酸基と反応し得る基および原子移動ラジカル重合開始基を含む化合物とを反応させ、次いで、ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーを反応させて得られる水酸化アルミニウム複合材;
【0010】
<8> 樹脂と<1>〜<7>のいずれか記載の水酸化アルミニウム複合材とを含むことを特徴とする樹脂組成物;
<9> 樹脂が、ラジカル重合性不飽和結合を有する少なくとも1つのモノマーを重合させて得られる樹脂である<8>記載の樹脂組成物;
<10> 樹脂が、アクリレート系モノマー、メタクリレート系モノマーまたはスチレン系モノマーを重合させて得られる<8>記載の樹脂組成物;
<11> 樹脂が、ポリメチルメタクリレートまたはポリスチレンである<8>記載の樹脂組成物;
【0011】
<12> 水酸化アルミニウムと<1>〜<7>のいずれか記載の水酸化アルミニウム複合材とを含むことを特徴とする水酸化アルミニウム組成物;
<13> 水酸化アルミニウムと、水酸化アルミニウムの水酸基と反応し得る基および原子移動ラジカル重合開始基を含む化合物とを反応させ、次いで、ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーを反応させることを特徴とする水酸化アルミニウム複合材の製造方法;
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水酸化アルミニウム複合材は、該複合材を含有する樹脂組成物に優れた機械的強度を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の水酸化アルミニウム複合材は、水酸化アルミニウムの水酸基の水素原子がポリマー鎖に置き換わった水酸化アルミニウム複合材であって、該ポリマー鎖が、水酸化アルミニウムの水酸基と反応し得る基および原子移動ラジカル重合開始基を含む化合物(以下、化合物(I)と略記する。)に由来する構造単位と、ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマー(以下、モノマー(II)と略記する。)に由来する構造単位とを含む。
【0014】
本発明に用いられる水酸化アルミニウムとしては、例えば、下記式
Al・nH
(式中、nは1〜3を表わす。)
で示されるアルミナ水和物等を挙げることができ、好ましくは、例えば、アルミナ三水和物等が挙げられる。
水酸化アルミニウムの比表面積としては、例えば、1〜300m/g等を挙げることができ、好ましくは、例えば、3〜200m/g等が挙げられる。
水酸化アルミニウムの結晶形としては、例えば、ギブサイト型およびベーマイト型等が挙げられる。
【0015】
化合物(I)中の水酸化アルミニウムの水酸基と反応し得る基としては、式(a)〜(i)で示されるいずれかの構造を有する基が挙げられる。

(式中、X’は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表わし、R’は、炭素数1〜4のアルキル基を表わす。*は結合手を意味する。)
【0016】
R’で示される炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
式(g)で示される構造を有する基としては、例えば、トリクロロシリル基等が挙げられる。式(h)で示される構造を有する基としては、例えば、トリヒドロキシシリル基等が挙げられる。式(i)で示される構造を有する基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリプロポキシシリル基、トリブトキシシリル基等が挙げられる。
好ましいR’としては、例えば、式(i)で示される構造を有する基等が挙げられる。
ここで、式(a)で示される構造を有する基は、水酸化アルミニウムの水酸基と反応し、リン酸エステル構造を形成する。式(b)、式(c)および式(d)で示される構造を有する基は、水酸化アルミニウムの水酸基と反応し、カルボン酸エステル構造を形成する。式(e)で示される構造を有する基は、水酸化アルミニウムの水酸基と反応し、カルバミン酸エステル構造を形成する。式(f)で示される構造を有する基は、水酸化アルミニウムの水酸基と反応し、−O−CH−CH(OH)−CH−で示される構造を形成する。式(g)、式(h)および式(i)で示される構造を有する基は、水酸化アルミニウムの水酸基と反応し、−O−Si−で示される構造を形成する。
【0017】
原子移動ラジカル重合開始基は、ハロゲン原子と炭素原子との共有結合、又は、ハロゲン原子とスルホニル基との共有結合が、触媒と反応してラジカルを発生し得る官能基であり、すなわち、該官能基は、原子移動ラジカル重合の開始点となり得る官能基である。
原子移動ラジカル重合開始基としては、Chem.Rev. 2001,101,2921−2990およびChem.Rev. 2001,101,3689−3745に具体的に例示されている。
【0018】
なかでも、下記式(1)〜(6)で示される基が好ましく、式(1)または式(2)で示される基がより好ましい。

(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表わす。Rは、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表わし、Xは、ハロゲン原子を表わす。*は結合手を意味する。)
【0019】
化合物(I)としては、例えば、4−クロロメチルフェニルホスホン酸、4−ブロモメチルフェニルホスホン酸、2−クロロプロピオン酸、2−ブロモプロピオン酸、2−ヨードプロピオン酸、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸、2−クロロプロピオニルクロリド、2−クロロプロピオニルブロミド、2−ブロモプロピオニルクロリド、2−ブロモプロピオニルブロミド、2−クロロ−2−メチル−プロピオニルクロリド、2−クロロ−2−メチル−プロピオニルブロミド、2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルクロリド、2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルブロミド、トリクロロアセチルイソシアネート、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸6−(トリクロロシリル)ペンチル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(トリクロロシリル)へキシル、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸6−(トリクロロシリル)ブチル、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸6−(トリメトキシシリル)へキシル、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸6−(トリエトキシシリル)へキシル、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸6−(トリエトキシシリル)ブチル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(トリメトキシシリル)へキシル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(トリエトキシシリル)へキシル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(トリエトキシシリル)ペンチル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(メチルジエトキシシリル)へキシル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(ジメチルエトキシシリル)へキシル、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸6−(トリメトキシシリル)へキシル、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸6−(トリエトキシシリル)へキシル、4−{2−(トリメトキシシリル)エチル}ベンゼンスルホニルクロリド、4−{2−(トリエトキシシリル)エチル}ベンゼンスルホニルクロリド、4−{2−(メチルジエトキシシリル)エチル}ベンゼンスルホニルクロリド、4−{2−(ジメチルエトキシシリル)エチル}ベンゼンスルホニルクロリド、1−(クロロメチル)−4−(トリメトキシシリル)ベンゼン、1−(クロロメチル)−4−(トリエトキシシリル)ベンゼン、1−(ブロモメチル)−4−(トリメトキシシリル)ベンゼン、1−(ブロモメチル)−4−(トリエトキシシリル)ベンゼン、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸6−(トリヒドロキシシリル)ペンチル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(トリヒドロキシシリル)へキシル、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸6−(トリヒドロキシシリル)ブチル、2−ブロモプロピオン酸6−(トリヒドロキシシリル)へキシル等が挙げられる。
【0020】
なかでも、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸6−(トリメトキシシリル)へキシル、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸6−(トリエトキシシリル)へキシル、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸6−(トリエトキシシリル)ブチル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(トリメトキシシリル)へキシル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(トリエトキシシリル)へキシル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(トリエトキシシリル)ペンチル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(メチルジエトキシシリル)へキシル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(ジメチルエトキシシリル)へキシル、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸6−(トリメトキシシリル)へキシル、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸6−(トリエトキシシリル)へキシル、4−{2−(トリメトキシシリル)エチル}ベンゼンスルホニルクロリド、4−{2−(トリエトキシシリル)エチル}ベンゼンスルホニルクロリド、4−{2−(メチルジエトキシシリル)エチル}ベンゼンスルホニルクロリド、4−{2−(ジメチルエトキシシリル)エチル}ベンゼンスルホニルクロリド、1−(クロロメチル)−4−(トリメトキシシリル)ベンゼン、1−(クロロメチル)−4−(トリエトキシシリル)ベンゼン、1−(ブロモメチル)−4−(トリメトキシシリル)ベンゼン、1−(ブロモメチル)−4−(トリエトキシシリル)ベンゼン等の式(i)で示される構造および原子移動ラジカル重合開始基を有する化合物が好ましく、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(トリメトキシシリル)へキシル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(トリエトキシシリル)へキシル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(トリエトキシシリル)ペンチル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(メチルジエトキシシリル)へキシルおよび2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(ジメチルエトキシシリル)へキシルがより好ましい。
【0021】
化合物(I)は公知の方法に準じて製造することができる。例えば、式(i)で示される構造および式(1)で示される基を有する化合物(I)は、式(1)で示される基と炭素−炭素二重結合とを有する化合物と、トリアルコキシシランとを、白金錯体存在下に反応させることにより、製造することができる(Macromolecules,2005,38,2137参照)。
【0022】
本発明に用いられるモノマー(II)は、原子移動ラジカル重合反応が進行し得る不飽和結合を有するモノマーであり、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリレート系モノマー、アクリレート系モノマー、スチレン系モノマー、α−オレフィン系モノマー、ビニルエステル系モノマー、ビニル置換複素芳香族系モノマー、アクリルアミド系モノマー、メタクリルアミド系モノマー、ハロゲン化ビニル系モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0023】
メタクリレート系モノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
アクリレート系モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、グリシジルアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート等が挙げられる。
【0024】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−tert−ブチルスチレン、m−tert−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、o−スチレンスルホン酸、m−スチレンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸等が挙げられる。
α−オレフィン系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブテン、1−へキセン、シクロヘキセン等が挙げられる。
ビニルエステル系モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、イソノナン酸ビニルおよびバーサチック酸ビニルが挙げられる。
【0025】
ビニル置換複素芳香族系モノマーとしては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール等のN−ビニル複素芳香族系モノマー;4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン等のビニルピリジン系モノマー等が挙げられる。
アクリルアミド系モノマーとしては、例えば、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等が挙げられ、メタクリルアミド系モノマーとしては、例えば、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド等が挙げられる。
ハロゲン化ビニル系モノマーとしては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラクロロエチレン、ヘキサクロロプロピレン、フッ化ビニル等が挙げられる。
好ましいモノマー(II)としては、例えば、スチレン系モノマー、アクリレート系モノマー、メタクリレート系モノマー等を挙げることができ、好ましくは、例えば、スチレン、メチルアクリレート、メチルメタクリレート等が挙げられ、なかでもより好ましくは、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート等が挙げられる。
本発明の水酸化アルミニウム複合材は、異なる複数のモノマー(II)に由来する構造単位を有していてもよい。
【0026】
本発明の水酸化アルミニウム複合材の製造方法としては、例えば、水酸化アルミニウムと化合物(I)とを反応させ、次いで、モノマー(II)を原子移動ラジカル重合により重合させることにより製造する方法等を挙げることができる。
水酸化アルミニウムと化合物(I)との反応は、無溶媒で行ってもよいが、好ましくは溶媒中で、その両者を混合する方法である。その混合順序は限定されず、水酸化アルミニウムと溶媒との混合物に、化合物(I)を加えてもよいし、溶媒に、水酸化アルミニウムおよび化合物(I)を同時並行的に加えてもよいし、化合物(I)と溶媒との混合物に、水酸化アルミニウムを加えてもよい。
【0027】
水酸化アルミニウムと化合物(I)との反応に用いられる溶媒としては、例えば、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合溶媒等が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、tert―ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド;およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド等が挙げられる。
【0028】
水酸化アルミニウムと化合物(I)との反応に用いられる溶媒の使用量は、水酸化アルミニウム1重量部に対して、例えば、5〜150重量部の範囲等が挙げられる。
水酸化アルミニウムと化合物(I)との反応に用いられる化合物(I)の使用量は、水酸化アルミニウム1モルに対して、例えば、0.001〜100モルの範囲等が挙げられる。
【0029】
水酸化アルミニウムと化合物(I)との反応温度は、例えば、−78〜200℃の範囲等を挙げることができ、好ましくは、例えば、0〜150℃の範囲等が挙げられる。
必要に応じて、酢酸等の酸やアンモニア等の塩基等の添加物の存在下に水酸化アルミニウムと化合物(I)との反応を行ってもよい。その使用量は、水酸化アルミニウム1モルに対して、例えば、0.001〜100モルの範囲等が挙げられる。また、プロピルトリエトキシシラン等の炭素数4〜18のトリアルコキシアルキルシランの存在下に反応を行ってもよい。
反応時間は、例えば、1〜48時間の範囲等を挙げることができる。
反応終了後、例えば、得られた反応混合物を濃縮、濾過または遠心分離することにより、水酸化アルミニウムと化合物(I)とが反応して得られた化合物を取り出すことができる。また、取り出した化合物は、水、有機溶媒または水と有機溶媒の混合溶媒で洗浄してもよい。
【0030】
水酸化アルミニウムと化合物(I)とが反応して得られた化合物(以下、化合物(II))と、モノマー(II)とを、原子移動ラジカル重合により重合させることにより、化合物(II)中の原子移動ラジカル重合開始基を起点として、原子移動ラジカル重合反応が進行し、本発明の水酸化アルミニウム複合材が生成する。
モノマー(II)の使用量は、化合物(II)中の原子移動ラジカル重合開始基1モルに対して、例えば、10〜10000モルの範囲等を挙げることができる。
【0031】
重合反応は、原子移動ラジカル重合開始基の種類に応じて、適宜、原子移動ラジカル重合反応を行う。
原子移動ラジカル重合反応は、通常、触媒の存在下に行われ、触媒としては、例えば、銅錯体、鉄錯体、ルテニウム錯体、ニッケル錯体等の0〜2価の金属錯体等が挙げられる。具体的には、例えば、2価の銅錯体、1価の銅錯体、0価の銅錯体、2価のルテニウム錯体、2価の鉄錯体および2価のニッケル錯体等が挙げられる。なかでも、銅錯体が好ましい。かかる銅錯体としては、例えば、塩化第二銅、臭化第二銅、塩化第一銅、臭化第一銅等のハロゲン化銅や銅粉等の銅化合物と配位子とを反応させることにより調製することができる。配位子としては、2,2’−ビピリジル、ピリジン環の水素原子が炭素数1〜15のアルキル基で置換されたアルキル置換−2,2’−ビピリジル、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンおよびトリス(ジメチルアミノエチル)アミンが挙げられ、その使用量は、銅金属1モルに対して、通常0.3〜5モルである。
触媒の使用量は、化合物(II)中の原子移動ラジカル重合開始基1モルに対して、金属換算で、例えば、0.0001〜100モルの範囲等、好ましくは、例えば、0.001〜50モルの範囲等が挙げられる。
【0032】
重合反応は、無溶媒で行ってもよいし、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、tert―ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル等のエーテル;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;および酢酸エチル等のエステル等が挙げられる。二種以上の溶媒を混合して用いてもよい。
【0033】
重合反応の反応温度は、例えば、−20〜200℃の範囲等を挙げることができ、好ましくは、例えば、0〜150℃の範囲等が挙げられる。
反応時間としては、例えば、10分〜40時間の範囲等を挙げることができる。
重合反応は、常圧下で行ってもよいし、加圧下で行ってもよい。
重合反応終了後、例えば、得られた反応混合物を濃縮、濾過または遠心分離することにより、水酸化アルミニウム複合材を取り出すことができる。取り出した水酸化アルミニウム複合材は、さらに、有機溶媒等で洗浄してもよい。
【0034】
続いて、本発明の水酸化アルミニウム複合材と樹脂とを含む樹脂組成物について説明する。
樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂およびゴム等が挙げられ、好ましくは、例えば、前記モノマー(II)を重合させて得られる重合体との相溶性を示す樹脂等が挙げられ、より好ましくは、ラジカル重合性不飽和結合を有する少なくとも1つのモノマーを重合させて得られる樹脂等が挙げられる。
かかるモノマーとしては、前記モノマー(II)と同様のものが挙げられる。具体的には、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリレート系モノマー、アクリレート系モノマー、スチレン系モノマー、α−オレフィン系モノマー、ビニルエステル系モノマー、ビニルケトン系モノマー、ビニル置換複素芳香族系モノマー、アクリルアミド系モノマー、メタクリルアミド系モノマー、ハロゲン化ビニル系モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイン酸および無水マレイン酸等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物において、水酸化アルミニウム複合材中のモノマー(II)に由来する構造単位と樹脂中のモノマー由来の構造単位とが同一であってもよいし、異なっていてもよい。
樹脂組成物における樹脂としては、例えば、スチレン系モノマー、アクリレート系モノマーまたはメタクリレート系モノマーを重合させて得られる樹脂等が好ましく、ポリスチレン、ポリメチルアクリレートおよびポリメチルメタクリレート等がより好ましく、ポリスチレンおよびポリメチルメタクリレート等が特に好ましい。
【0035】
樹脂組成物中の水酸化アルミニウム複合材と樹脂の重量比(水酸化アルミニウム複合材:樹脂)は、例えば、1:99〜99:1の範囲等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、水酸化アルミニウム複合材と樹脂とを混合すればよく、例えば、両者を直接混合する方法、両者を混練する方法、両者を溶媒中で混合した後、溶媒を除去する方法等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形、シート加工後の真空成形や圧縮成形等の方法を用いて成形加工することもできる。
【0036】
かくして得られた本発明の樹脂組成物は、破断点応力、破断点伸度などの機械的強度に優れる。また、該組成物は透明性に優れる傾向がある。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
水酸化アルミニウム複合材のガラス転移温度は、示差走査熱量測定法(装置:TAインスツルメンツ製DSC Q2000、昇温速度20℃/分)により求めた。
【0038】
[参考例1]
[2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)へキシル}の合成]
冷却装置を備えた反応容器に、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸5−ヘキセニル50gおよびトルエン625mLを加えた。得られた溶液に、約25℃で、トリエトキシシラン184mLを滴下した。得られた混合物に、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金(0)錯体の0.10Mキシレン溶液(アルドリッチ製)740μLを加えた。得られた混合物を攪拌し、30℃へ昇温した後、さらに前記白金錯体溶液740μLを加えた。得られた混合物を、約25℃で一晩攪拌した。得られた反応溶液を濃縮し、減圧下、55℃で4時間乾燥し、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(トリエトキシシリル)へキシル72.52gを得た。ガスクロマトグラフィー分析の結果、純度(面積百分率値)は、88%であった。
【0039】
[実施例1]
(1)冷却装置を備えた反応容器に、室温で、ギブサイト型水酸化アルミニウム(BET比表面積27m/g(JIS Z8830に規定された方法に従って窒素吸着法により求めた。))20.00g、エタノール398.7mLおよび28重量%アンモニア水239.0mLを加えた。得られた混合物を40℃で2時間攪拌した後、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(トリエトキシシリル)へキシル39.75gをエタノール79.3mLに溶解させて得られた溶液を滴下した。得られた混合物を40℃で20時間攪拌した。得られた反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分を、エタノール、テトラヒドロフランおよびクロロホルムで洗浄した。得られた固体を、減圧下、60℃で4時間乾燥し、水酸化アルミニウムの水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、6−(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシ)ヘキシル基が結合した化合物(以下、化合物(x)と略記する。)20.16gを得た。
元素分析:C:1.1%、Br:0.44%
【0040】
(2)冷却装置を備えた反応容器に、室温で、化合物(x)10.0g、臭化銅(I)15.8mg、銅粉14.4mg、アニソール18.1mL、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミンのアニソール溶液1.65mL(0.40mol/L)およびメチルメタクリレート35.4mLを加えた。得られた混合物を、約25℃で2分間攪拌し、さらに、90℃で2時間攪拌した。得られた反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分を、テトラヒドロフランおよびクロロホルムで洗浄した。得られた固体を、減圧下、約25℃で2時間乾燥し、さらに、減圧下、60℃で4時間乾燥し、水酸化アルミニウムの水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、下記式(10)
【0041】

で示される構造および下記式(11)
【0042】

で示される構造単位を有するポリマー鎖が結合した水酸化アルミニウム複合材26.6gを得た。
元素分析:C:35.1%、Br:1200ppm
ポリマー鎖が仕込み量の比のまま式(10)及び式(11)記載の構造単位を含むものとし、炭素分は全て該構造単位の炭素分であると仮定して、水酸化アルミニウム複合材中のポリマー鎖含有率を求めたところ、58.6%であった。
尚、水酸化アルミニウム複合材のガラス転移温度は123.8℃であった。
用いたポリメチルメタクリレート(アルドリッチ製、Mw〜120,000)のガラス転移温度を同様に測定したところ、113.9℃であった。
【0043】
[実施例2]
冷却装置を備えた反応容器に、上記実施例1(1)で得た化合物(x)4.5g、臭化銅(I)14.2mg、銅粉58.5mg、アニソール2.8mL、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンのアニソール溶液5mL(0.40mol/L)およびスチレン17mLを加えた。得られた混合物を、室温で1分間攪拌し、さらに、90℃で2時間30分攪拌した。得られた反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分をテトラヒドロフランおよびクロロホルムで洗浄した。得られた固体を、減圧下、60℃で4時間乾燥し、水酸化アルミニウムの水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、上記式(10)で示される構造および下記式(12)

で示される構造単位を有するポリマー鎖が結合した水酸化アルミニウム複合材8.99gを得た。
元素分析:C:53.3%、Br:1200ppm
【0044】
[実施例3]
(1)冷却装置を備えた反応容器に、9.1重量%ベーマイト型水酸化アルミニウム水溶液(水酸化アルミニウムのBET比表面積79m/g(JIS Z8830に規定された方法に従って窒素吸着法により求めた。))219.8g、エタノール117.4mLおよび28重量%アンモニア水99.8mLを加えた。得られた混合物を40℃で2時間攪拌した。該混合物に、参考例1で得た2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(トリエトキシシリル)へキシル1.68gとプロピルトリエトキシシラン3.35gとをエタノール23.4mLに溶解させて得られた溶液を滴下した。得られた混合物を40℃で20時間攪拌した。得られた反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分を、エタノール、テトラヒドロフランおよびクロロホルムで洗浄した。得られた固体を、減圧下、60℃で4時間乾燥し、水酸化アルミニウムの水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、6−(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシ)ヘキシル基が結合した化合物(以下、化合物(y)と略記する。)20.58gを得た。
元素分析:Br:0.5%
【0045】
(2)冷却装置を備えた反応容器に、化合物(y)4.00g、臭化銅(I)7.18mg、銅紛6.56mg、アニソール8.22mL、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンのアニソール溶液0.751mL(0.40mol/L)およびメチルメタクリレート16mLを加えた。得られた混合物を室温で1分間攪拌し、さらに、90℃で50分攪拌した。得られた反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分をテトラヒドロフランおよびクロロホルムで洗浄した。得られた固体を、減圧下、室温で2時間乾燥し、さらに、減圧下、60℃で4時間乾燥し、水酸化アルミニウムの水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、上記式(10)で示される構造および上記式(11)で示される構造単位を有するポリマー鎖が結合した水酸化アルミニウム複合材6.22gを得た。
元素分析:C:31.6%
実施例1と同様にして、水酸化アルミニウム複合材中のポリマー鎖含有率を求めたところ、52.7%であった。
尚、ガラス転移温度は119.5℃であった。
【0046】
[実施例4]
(1)冷却装置を備えた反応容器に、10重量%ベーマイト型水酸化アルミニウム水溶液(水酸化アルミニウムのBET比表面積140m/g(JIS Z8830に規定された方法に従って窒素吸着法により求めた。))100g、エタノール104mLおよび28重量%アンモニア水62.4mLを加えた。得られた混合物を40℃で2時間攪拌した後、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(トリエトキシシリル)へキシル1.48gとプロピルトリエトキシシラン2.96gとをエタノール20.7mLに溶解させて得られた溶液を滴下した。得られた混合物を40℃で20時間攪拌した。得られた反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分を、エタノール、テトラヒドロフランおよびクロロホルムで洗浄した。得られた固体を、減圧下、60℃で4時間乾燥し、水酸化アルミニウムの水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、6−(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシ)ヘキシル基が結合した化合物(以下、化合物(z)と略記する。)11.31gを得た。
元素分析:C:5.4%、Br:1.3%
【0047】
(2)冷却装置を備えた反応容器に、化合物(z)2.00g、臭化銅(I)18.7mg、銅粉76.8mg、アニソール3.7mL、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンのアニソール溶液6.5mL(0.40mol/L)およびスチレン22.4mLを加えた。得られた混合物を室温で1分間攪拌し、さらに、90℃で1時間45分攪拌した。得られた反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分を、テトラヒドロフランおよびクロロホルムで洗浄した。得られた固体を、減圧下、60℃で4時間乾燥し、水酸化アルミニウムの水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、上記式(10)で示される構造および上記式(12)で示される構造単位を有するポリマー鎖が結合した水酸化アルミニウム複合材4.64gを得た。
元素分析:C:64.6%、Br:0.1%
【0048】
[実施例5]
(1)冷却装置を備えた反応容器に、10重量%ベーマイト型水酸化アルミニウム水溶液(水酸化アルミニウムのBET比表面積140m/g(JIS Z8830に規定された方法に従って窒素吸着法により求めた。))100g、エタノール260mLおよび28重量%アンモニア水56mLを加えた。得られた混合物を40℃で2時間攪拌した。該混合物に、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(トリエトキシシリル)へキシル1.86gとプロピルトリエトキシシラン8.33gとをエタノール52mLに溶解させて得られた溶液を滴下した。得られた混合物を、40℃で20時間攪拌した。得られた反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分を、エタノール、テトラヒドロフランおよびクロロホルムで洗浄した。得られた固体を、減圧下、60℃で4時間乾燥し、水酸化アルミニウムの水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、6−(2−ブロモ−2−メチルプロピオニルオキシ)ヘキシル基が結合した化合物(以下、化合物(w)と略記する。)9.70gを得た。
【0049】
(2)冷却装置を備えた反応容器に、化合物(w)4.00g、臭化銅(I)8.61mg、銅粉35.38mg、アニソール1.69mL、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンのアニソール溶液2.999mL(0.40mol/L)およびスチレン10.31mLを加えた。得られた混合物を約25℃で1分間攪拌し、さらに、90℃で1時間15分攪拌した。得られた反応混合物から、不溶分を遠心分離により取り出した。取り出した不溶分をテトラヒドロフランおよびクロロホルムで洗浄した。得られた固体を、減圧下、60℃で4時間乾燥し、水酸化アルミニウムの水酸基の水素原子がケイ素原子に置換し、該ケイ素原子に、上記式(10)で示される構造および上記式(12)で示される構造単位を有するポリマー鎖が結合した水酸化アルミニウム複合材5.33gを得た。
元素分析:C:23.3%、Br:0.2%
【0050】
[実施例6]
<樹脂組成物の製造例>
実施例1で得た水酸化アルミニウム複合材5.33gおよびポリメチルメタクリレート(アルドリッチ製、Mw〜120,000)1.17gを混合した。得られた混合物を、小型混練機ミニラボ(ThermoHaake製)に加え、200℃で20分間溶融混練し(回転数50rpm)、次いで、押し出し機により造粒し、樹脂組成物を得た。プレス成形機(神藤金属工業所製;圧縮成形機 NF−37)を用いて、得られた樹脂組成物を、200℃(予熱5分、15MPaへ昇圧後、3分)でプレスした後、30℃で5分冷却し、厚さ約100μmの150mm×150mmの樹脂シートを作製した。樹脂シート中のポリマー成分(ポリメチルメタクリレートと水酸化アルミニウム複合材中のポリマー鎖)の重量は、約4.29gであった。
【0051】
<引張強度試験>
得られた樹脂シートを、40mm×10mmに切断し、試料片を作製した。下記条件で長手方向に引張試験を行った。破断点応力は53.5MPaであった。また、破断点伸度は6.1%GLであった。これは、試験片の初期長さ(40mm)を100%としたとき、破断時の試料片の長さが106.1%であったことを意味する。
(条件)
装置:(オリエンテック社製;UNIVERSAL TESTING MACHINE STA−1225)
引張荷重:196N(20kgf)、
引張速度:5.0mm/分
環境温度:23℃
環境湿度:50%RH
【0052】
(比較例1)
実施例6において、実施例1で得た水酸化アルミニウム複合材5.33gに代えて、ギブサイト型水酸化アルミニウム(水酸化アルミニウムのBET比表面積27m/g(JIS Z8830に規定された方法に従って窒素吸着法により求めた。))1.95gを用い、ポリメチルメタクリレートの使用量を4.55gとした以外は、実施例6と同様に行い、樹脂シートを作製した。
得られた樹脂シートの破断点応力は34.8MPaであり、破断点伸度は2.1%GLであった。このように、本発明の水酸化アルミニウム複合材及び樹脂の組成物(実施例6)と、水酸化アルミニウム及び樹脂の組成物(比較例1)とについて、それぞれの組成物に含まれるポリマー成分をほぼ同量として機械的強度を比較すると、本発明の水酸化アルミニウム複合材及び樹脂の組成物が機械的強度に優れることがわかる。
【0053】
[実施例7]
実施例6において、実施例1で得た水酸化アルミニウム複合材5.33gに代えて、実施例3で得た水酸化アルミニウム複合材4.47gを用い、ポリメチルメタクリレートの使用量を2.03gとした以外は実施例6と同様に行い、樹脂組成物を得、該樹脂組成物を用いて、樹脂シートを作製した。樹脂シート中のポリマー成分(ポリメチルメタクリレートと水酸化アルミニウム複合材中のポリマー鎖)の重量は、約4.38gであった。
【0054】
実施例6、7および比較例1で得た樹脂シートの曇価および全光線透過率を、JIS K7136に準拠した条件で、日本電色工業株式会社製HAZE METER NDH2000を用いて、測定した。結果を表1に示す。表1によれば、本発明の水酸化アルミニウム複合材及び樹脂の組成物(実施例6及び7)と、水酸化アルミニウム及び樹脂の組成物(比較例1)とについて、それぞれの組成物に含まれるポリマー成分をほぼ同量として曇価を比較すると、本発明の水酸化アルミニウム複合材及び樹脂の組成物の曇価が半分以下に低減されて透明性に優れることがわかる。また、全光線透過率についても本発明の水酸化アルミニウム複合材及び樹脂の組成物の値が高く、透明性に優れることがわかる。
【0055】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の水酸化アルミニウム複合材は、該複合材を含有する樹脂組成物に優れた機械的強度を付与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化アルミニウムの水酸基の水素原子がポリマー鎖に置き換わった水酸化アルミニウム複合材であって、
該ポリマー鎖が、
水酸化アルミニウムの水酸基と反応し得る基および原子移動ラジカル重合開始基を含む化合物に由来する構造単位と、
ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーに由来する構造単位と
を含むことを特徴とする水酸化アルミニウム複合材。
【請求項2】
原子移動ラジカル重合開始基が、式(1)〜(6)で示される基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基であることを特徴とする請求項1記載の水酸化アルミニウム複合材。

(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表わす。Rは、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を表わし、Xは、ハロゲン原子を表わす。*は結合手を意味する。)
【請求項3】
ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーが、α−オレフィン系モノマー、スチレン系モノマー、アクリレート系モノマー、メタクリレート系モノマー、アクリルアミド系モノマー、メタクリルアミド系モノマー、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、4−ビニルピリジン、塩化ビニルおよびビニルエステル系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1又は2記載の水酸化アルミニウム複合材。
【請求項4】
ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーが、スチレン系モノマー、アクリレート系モノマーまたはメタクリレート系モノマーであることを特徴とする請求項1又は2記載の水酸化アルミニウム複合材。
【請求項5】
水酸化アルミニウムの水酸基と反応し得る基が、式(a)〜(i)で示されるいずれかの構造を有する基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の水酸化アルミニウム複合材。

(式中、X’は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表わし、R’は、炭素数1〜4のアルキル基を表わす。*は結合手を意味する。)
【請求項6】
水酸化アルミニウムの水酸基と反応し得る基および原子移動ラジカル重合開始基を含む化合物が、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(トリメトキシシリル)へキシル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(トリエトキシシリル)へキシル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(トリエトキシシリル)ペンチル、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(メチルジエトキシシリル)へキシルまたは2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸6−(ジメチルエトキシシリル)へキシルである請求項1〜4のいずれかに記載の水酸化アルミニウム複合材。
【請求項7】
水酸化アルミニウムと、水酸化アルミニウムの水酸基と反応し得る基および原子移動ラジカル重合開始基を含む化合物とを反応させ、次いで、ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーを反応させて得られる水酸化アルミニウム複合材。
【請求項8】
樹脂と請求項1〜7のいずれか記載の水酸化アルミニウム複合材とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項9】
樹脂が、ラジカル重合性不飽和結合を有する少なくとも1つのモノマーを重合させて得られる樹脂である請求項8記載の樹脂組成物。
【請求項10】
樹脂が、アクリレート系モノマー、メタクリレート系モノマーまたはスチレン系モノマーを重合させて得られる請求項8記載の樹脂組成物。
【請求項11】
樹脂が、ポリメチルメタクリレートまたはポリスチレンである請求項8記載の樹脂組成物。
【請求項12】
水酸化アルミニウムと請求項1〜7のいずれか記載の水酸化アルミニウム複合材とを含むことを特徴とする水酸化アルミニウム組成物。
【請求項13】
水酸化アルミニウムと、水酸化アルミニウムの水酸基と反応し得る基および原子移動ラジカル重合開始基を含む化合物とを反応させ、次いで、ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーを反応させることを特徴とする水酸化アルミニウム複合材の製造方法。

【公開番号】特開2010−111850(P2010−111850A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206769(P2009−206769)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】