説明

水酸基を含まないポリマー上におけるCe(IV)で開始されるグラフト重合

本発明は、結合能が改善された分離材料を製造する方法、ならびにまた製造された材料および場合により帯電させたバイオポリマーを液体から分離するためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な分離材料を調製するための方法、ならびに調製された分離材料および帯電した(charged)バイオポリマーを液体から分離するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
クロマトグラフィーは、バイオポリマーを液体から単離するための最も好適な方法の1つである。ポリマーを、加工の過程において必要となる、水酸化ナトリウム溶液による、充填したクロマトグラフィーカラムのクリーニングからそれらが残存するように調製することができるため、ポリマーをベースとするクロマトグラフィー材料は、特に、シリカをベースとする材料と比較して、バイオ医薬品の精製において有利である。
【0003】
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、混合モードクロマトグラフィーおよびアフィニティークロマトグラフィーに加えて、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)は、極めて頻繁に用いられる。さらに、他のタイプのクロマトグラフィー、例えば逆相クロマトグラフィーもまた、知られている。種々のクロマトグラフィー媒体および分取クロマトグラフィー方法の総説は、例えば、"Bioseparation and Bioprocessing", 2007, 編者Ganapathy Subramanian, Wiley-VCH Verlag GmbH & Co KGaA中に示されている。
【0004】
対応する官能化されたモノマーを多数の異なる表面上にグラフトさせることによって得られる線状ポリマーが、クロマトグラフィー材料の所望の機能を生じさせるのに適することは、長年にわたり知られていた。官能化が化学的に結合したイオン性基を伴う場合には、対応する材料を、イオン交換クロマトグラフィーのために用いることができる(W. Mueller, J. Chromatography 1990, 510, 133-140)。バイオポリマーの分別を意図する比較的多数の可能なグラフトポリマー構造は、特許明細書EP 0 337 144またはUS 5,453,186中に見出される。共重合によって得られる1種より多いモノマー単位を含むグラフトポリマーはまた、特許文献から知られている。
【0005】
EP 0337144またはWO 9614151に開示されている、Ce(IV)イオンによって開始されるグラフト重合において、ベース担体からポリマーへの共有結合を生じさせるために、用いる担体材料の表面上に水酸基が存在することを利用する。したがって、この方法は、水酸基を表面上に所定の反応条件下で有する担体材料に適するに過ぎず、これらの基が欠如した材料には適さないと見られる。クロマトグラフィーとして活性な基がCe(IV)で開始されるグラフト重合によって結合する、用いる担体材料は、通常、無機担体材料、例えばSiO、Al、MgO、TiOまたはZrOなどである。これらの材料の場合において、表面上に位置するOH基の数を増大させて、その後の反応において反応性基と共に、より密集した被覆を達成することもまた、可能である(EP 1 051 254 B1)。これらの酸化性の(oxidic)無機担体材料の反応多用途性のため、通常、グラフト重合によって得られるクロマトグラフィー材料は、対応する酸化性の無機担体材料、特に好適にはケイ酸塩、またはシリカゲルを用いて調製される。
【0006】
極めて広範囲の種類のクロマトグラフィー分離課題に対し、有機担体材料を用いて調製されるクロマトグラフィー材料を用いることは有利である。高流量率にて用いることができる、クロマトグラフィーのためのアルカリ安定な、しかしまた圧力安定な(pressure-stable)吸着剤を調製することが所望される場合には、これは特に望ましい。有機担体材料のこれらの特性はまた、誘導体化の後に保持されなければならず、損なわれてはならない。
【0007】
EP 0337144 A1またはWO 96/31549 A1には、Ce(IV)で開始されるグラフト重合のための、ポリマーベース担体の表面上に水酸基を有する担体材料の、イオン交換体を調製するための使用が開示されている。EP 0337144 A1には、とりわけジオール置換(メタ)アクリレート架橋ポリマーを、誘導体化されたアクリルアミドモノマーをグラフトするベース材料として用いて調製される、イオン交換クロマトグラフィーのための吸着剤が記載されている。このようにして調製されるイオン交換体は、良好な分離特性および良好な圧力安定性を示すが、アルカリ性溶液に対する安定性が限定されている。他方、WO 03/031062には、ポリマーがセリウム(IV)で開始される重合反応において適用されるベース材料としてジオール基を含む架橋ビニルポリマーの使用が開示されている。
【0008】
水酸基を有する担体材料上でのグラフト重合の本質的な欠点は、反応にアクセス可能な表面上のOH基の数が限定されていることにある。グラフトオン(grafted-on)ポリマーで表面のより大きい被覆を達成することが所望される場合には、(EP 1 051 254 B1)に記載されているように、反応性OH基の数を付加的かつ予備反応段階によって増大させることが必要である。
【0009】
対照的に、DE 41 29 901 A1には、グラフト重合したクロマトグラフィー材料のためのベース材料としてのポリアミド粒子の使用が記載されている。この場合において、グラフト重合は放射線誘起性である。しかし、このプロセスは、実施することが複雑であり、時間がかかる。さらに、この原則で調製されるクロマトグラフィー材料が、すべての分離方法に適するというわけではない。
【発明の概要】
【0010】
達成するべき目的
したがって、本発明の目的は、表面上に反応性水酸基を有しないが、しかしCe(IV)イオンによって開始されるグラフト重合反応において単純な方法で誘導体化することができる、ポリマーを基にしてグラフト重合されたクロマトグラフィー材料を、単純かつ多用途性の方法で調製する可能性を提供するプロセスを提供することにある。本発明の他の目的は、実施することが単純かつ安価である対応するプロセスを提供すること、および広範囲の由来の物質の混合物を分離する可能性に関して、しかしまた酸、塩基、圧力または流量条件の影響に対する安定性に関して、広い適用範囲を有するクロマトグラフィー材料を提供することにある。
【0011】
発明の主題
本目的は、OH基を表面上に有しない有機ポリマーベース材料の、Ce(IV)開始剤の存在下でのグラフト重合による、クロマトグラフィー材料を調製するための新規な方法によって達成される。用いるポリマーベース材料は、ビニル基を含み、遊離の水酸基を含まないモノマーの重合によって形成されるホモポリマーまたはコポリマーからなる粒状ポリマーを含んでいてもよい。
【0012】
この目的に適するポリビニル基を含むモノマーは、例えば、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルピリジン、ジビニルナフタレン、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、N,N−メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジビニルエチレン尿素およびN,N−ジビニルプロピレン尿素であり得る。
【0013】
モノビニル基を含むモノマー、例えばグリシジルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、クロロスチレンまたはアミノスチレンなどを、本開示にしたがって、適するコポリマーを調製するために、前述のポリビニル化合物の1種と組み合わせて、単独で反応させる。その後の反応において、水酸基を含まないこれらのポリマー粒子を、好適な方法でグラフト重合させる。
【0014】
水酸基を含まない、用いるベース材料は、好ましくは20nm〜1000μmの範囲内の平均粒径を有する粒子からなる。しかし、グラフト重合をまた、成形ポリマー体の表面上で、またはモノリシックの多孔質ポリマー体、例えばモノリシック分離カラムなどの表面上で行うことができる。驚くべきことに、記載したポリマー材料の表面をCe(IV)で誘起されたグラフト重合によって誘導体化することは、本発明に従って可能である。誘導体化を、対応するポリマー粒子上で、およびまた対応する成形したモノリシックポリマー体上の両方で行うことができる。特に、ポリマー粒子の内部の孔表面を含み、担体材料のマクロ孔とメソ細孔との両方の内部の孔表面を均一に誘導体化することが可能である。しかし、ポリマー分離膜をまた、このようにして処理することができる。
【0015】
水酸基を含まない表面の誘導体化を、同一のタイプのモノマーから、または少なくとも2種の異なるモノマー単位から構築されるグラフトポリマーによって行うことができる。分離材料の表面に共有結合したグラフトポリマーの調製を、好ましくは一般式(1)
【化1】

または一般式(2)
【化2】

【0016】
式中
Yは、R−SOMを示し、
およびRは、互いに独立して
H、1〜6個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、カルボキシル、カルボキシメチルを示し、
は、H、1〜6個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、Yを示し、
は、8個までのC原子を有し、任意にアルコキシもしくはカルボキシル基によって単置換もしくは多置換されている、直鎖状もしくは分枝状アルキレン、
および/または
10個までのC原子を有し、任意にアルキル、アルコキシもしくはカルボキシル基によって単置換もしくは多置換されているアリーレン、または
メチレン、エチレン、プロピレン、ヘキシレン、イソプロピレン、イソブチレンまたはフェニレン
を示し、
Mは、H、Na、KまたはNHを示し、
Zは、Yを示す、
で表される水溶性モノマー単位を用いて行う。
【0017】
このタイプの共有結合したグラフトポリマーを、同様に、一般式(1)
【化3】

または一般式(2)
【化4】

【0018】
式中
Yは、R−COOMを示し、
およびRは、互いに独立して
H、1〜6個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、カルボキシル、カルボキシメチルを示し、
は、H、1〜6個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、Yを示し、
は、8個までのC原子を有し、任意にアルコキシもしくはカルボキシル基によって単置換もしくは多置換されている、直鎖状もしくは分枝状アルキレン、
および/または
10個までのC原子を有し、任意にアルキル、アルコキシもしくはカルボキシル基によって単置換もしくは多置換されているアリーレン、または
メチレン、エチレン、プロピレン、ヘキシレン、イソプロピレン、イソブチレンまたはフェニレン
を示し、
Mは、H、Na、KまたはNHを示し、
Zは、MまたはYを示す、
で表される少なくとも1種の水溶性モノマー単位を用いて調製することができる。
【0019】
メタクリルアミド、アクリルアミドまたは不飽和カルボン酸の群から選択される少なくとも1種の化合物を用いて調製したグラフトポリマーを含む分離材料は、特に有利な特性を有する。
【0020】
本発明はまた、スルホアルキルアクリレート、例えば3−スルホプロピルアクリレートまたは2−スルホエチルアクリレートなど、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸およびビニルトルエンスルホン酸の群から、またはスルホアルキルメタクリレート、例えば2−スルホエチルメタクリレートまたは3−スルホプロピルメタクリレートなどの群から選択される少なくとも1種の化合物を用いて調製された、上記のグラフトポリマーを含む分離材料に関する。
【0021】
しかし、本発明にしたがって、好適な誘導体化された分離材料をまた、マレイン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸もしくはフマル酸の群、またはカルボキシアルキルアクリレート、例えばカルボキシエチルアクリレートもしくはカルボキシアルキルメタクリレートなどの群から選択される少なくとも1種の化合物を用いて調製することができる。
【0022】
グラフトポリマーを、カルボキシメチルアクリルアミド、カルボキシエチルアクリルアミド、アクリロイル−ガンマ−アミノ酪酸およびアクリロイルフェニルアラニン、アクリル酸、メタクリル酸およびエタクリル酸の群から選択される少なくとも1種の化合物を用いて調製する場合には、本発明の目的に高度く適した分離材料を、さらに調製することができる。
【0023】
本発明はまた、同様に表面上にOH基を有しない有機ポリマーベース材料上で好適なモノマーをグラフト重合することによって得られる、対応するアニオン交換体材料に関する。
本発明のアニオン交換体材料を調製するためのモノマーは、例えば、第一、第二もしくは第三アミノ基を担持するか、または第四アンモニウム塩であり得る。
【0024】
アミノ基を含む好適なモノマーは、例えば、一般式(2)
【化5】

式中、Z=R−NR10であり、
式中、RおよびRは、互いに独立して水素または6個までのC原子を有するアルキル、好ましくは水素またはメチルの意味を有することができ、また式中Rは、1〜8個のC原子を有する直鎖状アルキレン基、例えばメチレン、エチレン、プロピレンもしくはヘキシレンなど、または1〜8個のC原子を有する分枝状アルキレン基、例えばイソプロピレンもしくはイソブチレンなどであり得、また式中RおよびR10は、互いに独立して水素、アルキル、フェニルまたはアルキルフェニル、例えばメチル、エチルまたはベンジルなどの意味を有する、
で表されるアクリレートである。アミノアルキルアクリレート、例えば2−(ジエチルアミノエチル)アクリレート、2−(ジメチルアミノエチル)アクリレートまたは2−(ジメチルアミノプロピル)アクリレート、およびアミノアルキルメタクリレート、例えば2−(ジエチルアミノエチル)メタクリレート、2−(ジメチルアミノエチル)メタクリレートまたは3−(ジエチルアミノプロピル)メタクリレートなどを例として記述する。
【0025】
好ましいのは、式(1)
【化6】

式中、R=R−NR10であり、
式中、R、RおよびYは、互いに独立して水素または6個までのC原子を有するアルキル、好ましくは水素またはメチルの意味を有し、また式中、
は、1〜8個のC原子を有する直鎖状アルキレン基、例えばメチレン、エチレン、プロピレンもしくはヘキシレンなど、または1〜8個のC原子を有する分枝状アルキレン基、例えばイソプロピレンもしくはイソブチレンなどであり得、また式中
およびR10は、互いに独立して水素、アルキル、フェニルまたはアルキルフェニル、例えばメチル、エチルまたはベンジルなどの意味を有する、
で表されるアクリルアミドを用いることである。
【0026】
本明細書中で例により述べることができる好適なアクリルアミドは、2−(ジエチルアミノエチル)アクリルアミド、2−(ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、3−(ジエチルアミノプロピル)アクリルアミドまたは3−(ジエチルアミノプロピル)アクリルアミドであり、本明細書中で例により述べることができる好適なメタクリルアミドは、2−(ジエチルアミノエチル)メタクリルアミド、2−(ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、3−(ジエチルアミノプロピル)メタクリルアミドまたは3−(ジエチルアミノプロピル)メタクリルアミドである。
【0027】
第四アンモニウム塩である好適なモノマーは、例えば、式(2)
【化7】

式中、Z=R−NR1011Xであり、式中、
およびRは、互いに独立して水素または6個までのC原子を有するアルキル、好ましくは水素またはメチルの意味を有することができ、また式中Rは、1〜8個のC原子を有する直鎖状アルキレン基、例えばメチレン、エチレン、プロピレンもしくはヘキシレンなど、または1〜8個のC原子を有する分枝状アルキレン基、例えばイソプロピレンもしくはイソブチレンなどであり得、また式中R、R10およびR11は、互いに独立して水素、アルキル、フェニルまたはアルキルフェニル、例えばメチル、エチルまたはベンジルなどの意味を有する、
で表されるアクリレートである。
【0028】
Xはアニオンであり、モノマーが水溶性であるように選択され、例えば塩化物またはヨウ化物であり得る。アクリルオキシアンモニウム塩、例えば塩化[2−(アクリルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムおよびメタクリルオキシアンモニウム塩など、例えば塩化[2−(メタクリルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムなどを例として記述する。
【0029】
好ましいのは、一般式(1)
【化8】

式中
、RおよびYは、互いに独立して水素または6個までのC原子を有するアルキル、好ましくは水素またはメチルの意味を有し、また式中Rは、1〜8個のC原子を有する直鎖状アルキレン基、例えばメチレン、エチレン、プロピレンもしくはヘキシレンなど、または1〜8個のC原子を有する分枝状アルキレン基、例えばイソプロピレンもしくはイソブチレンなどであり得、また式中R、R10およびR11は、互いに独立して水素、アルキル、フェニルまたはアルキルフェニル、例えばメチル、エチルまたはベンジルなどの意味を有する、
で表されるアクリルアミドの使用である。
【0030】
Xはアニオンであり、モノマーが水溶性であるように選択され、例えば塩化物、ヨウ化物またはメチルスルフェートであり得る。本明細書中で例により述べることができる好適なアクリルアミドは、塩化2−(アクリロイルアミノエチル)トリメチルアンモニウムおよび塩化3−(アクリロイルアミノプロピル)トリメチルアンモニウムであり、本明細書中で例により述べることができる好適なメタクリルアミドは、塩化2−(メタクリロイルアミノエチル)トリメチルアンモニウムおよび塩化3−(アクリロイルアミノプロピル)トリメチルアンモニウムである。
【0031】
分離材料の疎水性成分との相互作用が起こり得る場合、特定の生体分子を分離することが有利であり得るため、好ましいのはまた、共有結合したグラフトポリマーを表面上に有し、次に好適な数の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキルまたはアリール基の形態にある顕著な疎水性の成分を有する少なくとも1種のモノマー単位および荷電された少なくとも1種の他のモノマー単位を用いて順に調製される分離材料である。それらが、疎水性成分によって、およびまたグラフトポリマーの帯電した成分の両方によって分離されるべきバイオポリマーと相互作用することができるため、このタイプの分離材料は、特に有効であることが明らかになった。
【0032】
したがって、アルキルビニルケトン、アリールビニルケトン、アリールアルキルビニルケトン、スチレン、アルキルアクリレート、アリールアクリレート、アリールアルキルアクリレート、アルキルアリールアクリレート、アルキルメタクリレート、アリールメタクリレート、アリールアルキルメタクリレートおよびアルキルアリールメタクリレートの群から選択される、疎水性成分を有する少なくとも1種のモノマー単位を用いた誘導体化が、特に望ましい。
【0033】
特に有効な分離材料をまた、疎水性成分を有する一般式(1)
式中、Y=Rであり、
また式中、
およびRは、互いに独立して
H、6個までのC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルを示し、
および/またはRは、互いに独立して
H、非分枝状または分枝状アルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキルを示し、
ここでアルキル基は、オキソ基を担持してもよく、
ここでアルキルおよび/またはアリール基は、アルコキシ、フェノキシ、シアノ、カルボキシル、アセトキシまたはアセトアミノ基によって単置換または多置換されていてもよく、
またここで、RおよびRは一緒に、少なくとも6個のC原子を担持する、
で表される少なくとも1種のモノマー単位を用いて調製することができる。
【0034】
したがって、本発明の分離材料を、疎水性成分を有する一般式(1)ここで
、Rは、互いに独立して
H、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、2−、3−または4−オキサペンチル、2−、3−、4−または5−オキサヘキシル、2−、3−、4−、5−または6−オキサヘプチル、3−ブトキシプロピル、イソプロピル、3−ブチル、イソブチル、2−メチルブチル、イソペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−オキサ−3−メチルブチル、2−メチル−3−オキサヘキシル、2−フェニル−2−オキソエチル、フェノキシエチル、フェニル、ベンジル、フェニルエチルおよびフェニルプロピルを示し、
ここで、RおよびRは、一緒に少なくとも6個のC原子を担持する、
で表される少なくとも1種のモノマー単位を用いて調製することができる。
【0035】
したがって、本発明の分離材料をまた、電荷を有する官能基を含むこれらのモノマー単位の少なくとも1種および、電荷に加えて疎水性特性をコポリマー上で付与する疎水性基を含む少なくとも1種のモノマー単位、および任意に親水性であり得る少なくとも1種の中性モノマー単位を用いて調製する。
【0036】
特に好ましいのは、親水性であり得る一般式(1)
ここでY=Rであり、式中、
、Rは、互いに独立してHまたはメチルを示し、
、Rは、互いに独立して
H、各々4個までのC原子を有するアルキル、アルコキシアルキルを示す、
で表される少なくとも1種の中性モノマー単位を用いて調製した分離材料である。
【0037】
極めて特に好ましいのは、一般式(1)
ここでY=Rであり、式中、
、Rは、互いに独立してHまたはメチルを示し、
、Rは、互いに独立して
H、メチル、エチル、ブチル、イソプロピル、3−ブチル、イソブチル、メトキシエチルまたはエトキシエチルを示す、
で表される、親水性であり得る少なくとも1種の中性モノマー単位を含む分離材料である。
【0038】
グラフトポリマーをまた、アクリルアミド(AAm)、ジメチルアクリルアミド、メタクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、メトキシエチルアクリルアミドおよびエトキシエチルアクリルアミドの群から、またはメチルアクリレートおよびメチルメタクリレートの群から選択される少なくとも1種の中性モノマー単位を用いて、ならびに2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸、N−アリールアルキルアクリルアミド、例えばベンジルアクリルアミドおよびアクリロイルフェニルアラニンなど、N−カルボキシアルキルアクリルアミド、例えばアクリロイル−ガンマ−アミノ酪酸およびN−アルキルアクリルアミドなどの群から選択される2種または3種のモノマーを用いて、調製することができる。
【0039】
本発明はまた、特に、上記のようにグラフトポリマーを含む分離材料に関し、ここで、荷電された単位の芳香族基を含む単位に対する比は、99:1〜10:90の範囲内、好ましくは96:4〜40:60の範囲内にある。
【0040】
水酸基を含まない表面上における本発明の実際のグラフト重合反応は、セリウム(IV)イオンによって開始される。この反応を通常、希薄な鉱酸中で、例えば希硝酸中などで行い、ここで疎水性モノマーは不溶性であるかまたは事実上不溶性である。反応をまた、希硫酸または塩酸中で行うことができる。しかし、好ましくは1〜0.00001mol/lの範囲内の濃度の希硝酸中で行う。可溶化剤または共溶媒(co-solvent)、好ましくはジオキサンの添加により、疎水性モノマーを溶解し、グラフトすることが可能になる。0.05〜100molのモノマーを、好ましくは、沈降した担体材料1リットルあたり用いる。
【0041】
分離材料を調製するための本発明のプロセスを、好ましくは、
a)モノマーを水に溶解し、それを任意でさらなるモノマーと混合すること、
b)0.05〜100molの全モノマーを、沈降したポリマー材料1リットルあたり用いるように、得られた溶液を担体材料と混合すること、
c)鉱酸に溶解したセリウム(IV)塩を得られた懸濁液に加え、0〜5の範囲内のpHとすること、および
d)反応混合物を0.5〜72時間にわたりグラフト重合させること
によって行う。
【0042】
したがって、本発明はまた、クロマトグラフィーカラムの形態であってもよく、本発明に従ってグラフト重合により誘導体化された、得られた分離材料に関する。
【0043】
本発明は同様に、バイオポリマーを液状媒体から分離するための、特にタンパク質を液状媒体から分離するための、または抗体を液状媒体から分離するための、本発明の分離材料の使用を包含する。バイオポリマーが、担体材料の表面に共有結合したグラフトポリマーのイオン性、親水性および存在する場合には疎水性基と相互作用する場合には、分離は特に選択的である。バイオポリマーは、本明細書において、グラフトポリマーの帯電した成分と、およびまた疎水性成分の両方と相互作用することによって吸着される。
【0044】
液体から分離された、吸着されたバイオポリマーのその後の遊離を、
a)イオン強度を増大させることによって、および/または
b)溶液中のpHを変更することによって、
および/または
c)吸着緩衝液のそれとは異なる極性を有する好適な溶離剤によって、
再びイオン性および存在する場合には疎水性基との相互作用によって、分離材料に結合したバイオポリマーを脱着させることによって行うことができる。
【0045】
本発明に従い、記載した、グラフト重合した分離材料をまた、分離エフェクター(separation effectors)を付与されたポリマーとして記載することができる。それらを、以下のために用いることができる。
・1種または2種以上の目標の成分の、マトリックスから分離する目的での、選択的、部分的に選択的、または非選択的結合または吸着
・1種または2種以上の第2の成分の、第2の成分をマトリックスから分離する目的での、選択的、部分的に選択的、または非選択的結合または吸着
・1種または2種以上の成分の結合または吸着を伴わない、単にサイズ排除クロマトグラフィーによる分子サイズに基づく、物質の混合物の分離
【0046】
・バイオポリマーの天然源からの単離、濃縮および/または枯渇(depletion)
・バイオポリマーの組換え源からの単離、濃縮および/または枯渇
・バイオポリマーの不死化細胞株およびその培養上清からの単離、濃縮および/または枯渇
【0047】
・バイオポリマーのB細胞株およびその誘導体、リンパ細胞およびハイブリドーマ細胞株ならびにその培養上清からの単離、濃縮および/または枯渇
・タンパク質およびペプチドの単離、濃縮および/または枯渇
・酵素の単離、濃縮および/または枯渇
・モノクローナルおよびポリクローナル抗体ならびに天然に存在するかまたは組換え抗体断片の単離、濃縮および/または枯渇
【0048】
・リン酸化されたペプチド/タンパク質および核酸の単離、濃縮および/または枯渇
・食品添加物の単離、濃縮および/または枯渇
・単糖類および多糖類の単離、濃縮および/または枯渇
・グリコシル化タンパク質の単離、濃縮および/または枯渇
【0049】
・一本鎖または二本鎖DNAの単離、濃縮および/または枯渇
・プラスミドDNAの単離、濃縮および/または枯渇
・RNAの単離、濃縮および/または枯渇
・ウイルスの単離、濃縮および/または枯渇
【0050】
・宿主細胞タンパク質の単離、濃縮および/または枯渇
・オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドの単離、濃縮および/または枯渇
・リポソームの単離、濃縮および/または枯渇
・血液および乳汁からの生成物の単離、濃縮および/または枯渇
【0051】
・低分子量の医薬品有効成分(API)の単離、濃縮および/または枯渇
・APIの、API薬剤担体(例えばAPI−リポソーム付加体またはAPI−ナノ粒子付加体)からの分離
・鏡像異性体の単離、濃縮および/または枯渇
【0052】
分離エフェクターの性質に依存して、本発明のポリマーの使用は、例によりアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、キラルクロマトグラフィーまたは混合モードクロマトグラフィーまたは液液分配クロマトグラフィーに該当する。
【0053】
所望の用途に従い、分離エフェクターを付与された本発明のポリマーを、吸着剤を用いる既知のクロマトグラフィー法において用いることができる。これらの方法を、基本的に不連続的方法と連続的方法とに分けることができる。不連続的方法の例は、"Preparative Chromatography" (H. Schmidt-Traub編、Wiley-VCH Verlag Weinheim, 2005, ISBN 3-527-30643-9, 183〜189頁)中に述べられている。さらなる例は、とりわけフラッシュクロマトグラフィー、拡張床クロマトグラフィー(expanded bed chromatography)である。さらに、それらの天然の形態における、または用途に応じて分離エフェクターを付与された本発明のポリマーを、連続的方法、例えば疑似床クロマトグラフィー(simulated bed chromatography)などにおいて用いることができる。不連続的方法のさらなる例は、"Preparative Chromatography" (H. Schmidt-Traub編、Wiley-VCH Verlag Weinheim, 2005, ISBN 3-527-30643-9, 190〜204頁)に記載されている。
【0054】
連続的方法およびまた不連続的方法共に、目的に依存して、アイソクラチカルに(isocratically)、またはグラジエント法を用いて、行うことができる。当業者は、天然の形態における、または分離エフェクターを付与された本発明の吸着剤を、いかにして前述の方法の1つにおいて所望の目的のために用いるべきかを認識している。
本発明のポリマーをまた、薄層クロマトグラフィーにおいて用いることができる。
【0055】
発明の詳細な説明
驚くべきことに、実験により、Ce(IV)で開始されるグラフト重合をまた、水酸基を含まないポリマー上でうまく行うことができることが示され、改善された特性を有する、新規なグラフト重合したクロマトグラフィー材料の調製を可能にする。
【0056】
本発明に相当し、改善された特性を有する、グラフト重合したクロマトグラフィー材料は、例えば、ポリ(メチルメタクリレート−コ−エチレングリコールジメタクリレート)骨格(ポリ(MMA/EGDMA)、MMA/EGDMA−SO3バッチ06MJ−DZ109)上で、またはポリ(1−ビニル−2−ピロリドン−コ−1,3−ジビニルイミダゾリン−2−オン)骨格(ポリ(NVP/DVH)、DVH−SO3バッチ07MJ−DZ077)上で、またはポリ(エチルスチレン−コ−ジビニルベンゼン)骨格(ポリ(ES/DVB))上で、Ce(IV)で開始されるグラフト重合を行うことによって調製された。このようにして得られたイオン交換体を、水酸基を含むベース担体上で調製したイオン交換体と同様にして用いることができる。特に、それらを、クロマトグラフィー材料のように用いることができる。本明細書中で、それらは、荷電のまたは非荷電の生体分子を液体から分離するのに特に適する。
【0057】
グラフト重合を行うために用いる担体材料を、粒子の形態で、またはモノリシック成形品として用いることができる。担体材料が多孔質構造を有することは、この点において必須である。バイモーダル(bimodal)孔構造は、この点において特に所望され、ここで粒子、しかし特にモノリシック成形品は、マクロ孔およびメソ細孔の両方を有する。本発明の分離材料を、好ましくは20nm〜1000μmの範囲内の平均粒径を有する対応するポリマー粒子を用いて調製する。
【0058】
本発明のグラフト重合のために用いることができる、モノリシック、多孔性、ポリマー成形品は、数ミリメートルから数センチメートルの直径および対応する長さを有する成形品である。バイモーダル孔構造は、本発明において特に必須であり、ここで、200nm〜100μm、好ましくは500nm〜10μmの平均直径を有するマクロ孔を有し、1〜50nm、好ましくは2〜20nmの平均直径を有するメソ細孔を有する対応する材料を、本発明のグラフト重合によって誘導体化して、良好な分離効率を有する分離材料を得ることができる。用いるベース材料は、特に好ましくは、20〜1200m/g、好ましくは100〜600m/gの範囲内の平均粒子表面積を有する対応する有機ポリマー粒子である。
【0059】
本発明のグラフト重合を、好ましくはセリウム触媒の存在下で行う。種々のセリウム(IV)塩、例えばまた硫酸アンモニウムセリウム(IV)などは、この使用のための触媒として好適であることが明らかになったが、硝酸アンモニウムセリウム(IV)を、グラフト重合のための触媒として特に好ましく用いる。グラフト重合を行うために、触媒を一般的に、最初に導入するモノマーの総量を基準として好適な量で用い、粒状の担体材料をグラフト重合する場合には、触媒を、最初に導入した担体材料およびモノマーの懸濁液に加える。触媒を、好ましくは酸性水溶液中の反応物の懸濁液に加える。大気中の酸素との副反応を防止するために、実際のグラフト重合を、不活性ガスの下で行う。反応を、好ましくは窒素雰囲気下で行う。
【0060】
反応を、本発明においては、反応混合物を絶えず混合しながら、特に絶えず撹拌しながら行う。重合を行うために、温度をいくぶん上昇させる。反応を、すでに述べたように、硝酸、硫酸および塩酸から選択される少なくとも1種の無機酸の存在下で行う。反応を、好ましくは硝酸または硫酸の存在下で行う。特に好ましくは硝酸を用いる。用いる溶媒は、好ましくは水である。反応を、有利には共溶媒の存在下で行う。特に有利な共溶媒は、ジオキサンであることが明らかになっている。しかし、他の有機溶媒、例えば種々のアルコールなどもまた、用いることができる。好適なアルコールは、例えばドデカノールである。しかし、同様の極性を有するアルコールもまた、用いることができる。
【0061】
重合反応を行うために、最初に導入した懸濁液におけるpHを、5.5〜6.1の範囲内、好ましくは5.7〜5.9の範囲内の値に、酸および塩基、好ましくはNaOHまたはKOH、特に好ましくはNaOHを加えることによって調整する。
【0062】
担体材料を含む得られた溶液を、最初に導入した量のモノマー溶液と、沈降するポリマー材料1リットルあたり0.05〜100molの全モノマーの比率が生じるようにして混合する。鉱酸に溶解したセリウム(IV)塩を、この最初に導入した懸濁液に加え、pHを0〜5の範囲内に設定する。得られた反応混合物を、0.5〜72時間にわたりグラフト重合する。この時間の間、反応溶液を激しく撹拌する。
【0063】
Ce(IV)イオンで触媒作用を受ける反応を、このように基本的に少なくとも1種の無機酸の存在下で行う。反応を、好ましくは硝酸の存在下で行うが、上述の酸を、しかしながら、また、重合反応における混合物として用いることができる。
用いる粒状の担体材料は、水酸基を含まない沈降したポリマーである。
【0064】
「沈降するポリマー」または沈降する担体材料は、上清溶媒から遊離した懸濁液から沈降によって得られる湿潤した担体材料を意味するものと解釈される。対応する担体材料は通常、湿潤状態において保管される。本発明の使用のために、上清溶媒を、吸引によって予め除去する。誘導体化を行うために、測定した容積または秤量した量(フィルター湿潤材料)をその後、好適な容積または好適な量のモノマー溶液に懸濁させ、これをグラフト重合する。本発明の担体材料は、水酸基を含まない有機のポリマー担体材料である。
【0065】
有機のモノリシックの多孔性成形品のグラフト重合のために、記載した手順を変更し、対応する重合溶液の流れを成形品の周囲に通じ、それを適切な期間にわたり保管する。
グラフト重合が完了したところで、得られた分離材料を、希薄な酸性の、または塩基性の溶液で多数回洗浄し、好適な前処理の直後に分離カラム中に導入し、物質分離のために用いることができる。
【0066】
本説明により、当業者が本発明を総合的に適用し、行うことが可能になる。したがって、さらなる解説がなくても、当業者は、上記の説明を最も広い範囲で利用することが可能であると考えられる。
何らかが不明瞭である場合には、引用した刊行物および特許文献を参照するべきであることは言うまでもない。これらの文献は、対応して、本説明の開示内容の一部と見なされる。
【0067】
さらなる理解のために、および本発明を例示するために、本発明の保護の範囲内である例を以下に示す。これらの例はまた、可能な変法を例示する役割を果たす。しかし、記載した本発明の原理の一般的な妥当性のために、当該例は、本願の保護の範囲をこれらのみに減縮させるのには適さない。
【0068】
さらに、より高い値が示した百分率範囲から生じ得た場合であっても、示す例およびまた説明の残りの両方において、組成物中に存在する成分量は常に、全体としての組成物を基準として合計100重量%または100mol%まで加えられるに過ぎず、これを超過し得ないことは、当業者には言うまでもない。他に示さない限り、%データは、比率を除いて重量%またはmol%であるものと解釈され、それを、例えば溶媒を特定の体積比における混合物として用いる調製物のための容積データ、例えば溶離剤などにおいて示す。
例および説明において、ならびに特許請求の範囲において示す温度は、常に℃である。
【0069】

例1
ベース担体ポリMMA/EGDMA(内部EGDMA−L01)の合成
2.4gのポリビニルアルコール40−88(Merck)、5.28gの硫酸ナトリウム(Merck)、0.36gのリン酸トリブチル(Merck)および0.48gの乳化剤E30(Leuna Tenside)を、1200mlの水に溶解する。この水相を、40℃に加温する。2.4gのAIBN(Merck)を、120gのトルエン(Merck)、160gのn−ヘプタノール(Merck)、1gのメチルメタクリレート(MMA、Merck)および120gのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA、Merck)に、室温にて溶解する(有機相)。有機相を、不活性化された重合器中の水相に、激しく撹拌しながら迅速に加える。混合物を、50分にわたり65℃に加熱する。この温度を2時間維持し、最後に、混合物を80℃にてさらに4時間重合させる。有機溶媒を、蒸気蒸留によって実質的に除去する。得られたポリマーを、吸引濾過器上でアセトンおよび水で洗浄する。ポリマーの表面積は、488m/gである。
【0070】
例2
ベース担体ポリNVP/DVH(内部:DVH−L06)の合成
36gのポリビニルアルコール40−88(Merck)、36gの塩化ナトリウム(Merck)および0.48gの乳化剤E30(Leuna Tenside)を、1200mlの水に溶解する。この水相を、40℃に加温する。1.2gのAIBN(Merck)を、260gの酢酸ブチル(Merck)、1gのN−ビニルピロリドン(NVP、Merck)および140gの1,3−ジビニルイミダゾリン−2−オン(BASF)に、室温にて溶解する(有機相)。有機相を、不活性化された重合器中の水相に、激しく撹拌しながら迅速に加える。混合物を、50分にわたり65℃に加熱する。この温度を2時間維持し、最後に、混合物を80℃にてさらに4時間重合させる。得られたポリマーを、吸引濾過器上でアセトンおよび水で洗浄する。ポリマーの表面積は、408m/gである。
【0071】
例3
ベース担体ポリES/DVBの合成
19.8gの水酸化マグネシウム(Merck)、32gの硫酸ナトリウム(Merck)および0.189gの乳化剤E30(Leuna Tenside)を、1050mlの水に溶解する。この水相を、50℃に加温する。1.05gのAIBN(Merck)を、185gのトルエン(Merck)、63gのジビニルベンゼン(Aldrich)および37gのエチルスチレン(Aldrich)に、室温にて溶解する(有機相)。有機相を、不活性化された重合器中の水相に、激しく撹拌しながら迅速に加える。混合物を、50分にわたり72℃に加熱する。この温度を2時間維持し、最後に、混合物を80℃にてさらに4時間重合させる。有機溶媒を、蒸気蒸留によって実質的に除去する。得られたポリマーを、吸引濾過器上でアセトンおよび水で洗浄する。ポリマーの表面積は、596m/gである。
【0072】
例4
例1に従って調製したポリMMA/EGDMAベース担体を基にした本発明の強いカチオン交換体(内部06MJ−DZ109)の合成
6.22gの2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(AMPS、Merck)および17gの脱塩水を、最初に250mlの3つ口フラスコ(滴下漏斗、ガス入口管および精密ガラス撹拌器)中に導入する。フラスコを、8℃に冷却する(溶液中における、大気中の酸素の過度の蓄積を防止するため、窒素の穏やかな流れを用いる)。2mlの2M水酸化ナトリウム溶液(Merck)を加え、硝酸(65%、Merck)を用いて、pH5.8に設定する。フラスコを、再び放置して室温とし、これにさらに窒素を流す。一晩重力下で沈降した、例1に従って調製した20mlのポリマーを、この溶液に加える。混合物を、脱塩水で60mlの総容積とする。pHを、5.8に再設定する。また、16μlのドデカノールを加える。1.4gの脱塩水を、ビーカー中で0.29gの65%硝酸と混合する。0.66gの硝酸アンモニウムセリウム(IV)(Merck)を、この溶液に溶解する。フラスコ中の懸濁液を、42℃に加温する。
【0073】
硝酸アンモニウムセリウム(IV)溶液を、激しく撹拌しながら懸濁液に迅速に加える。硝酸アンモニウムセリウム(IV)溶液を加えた後、撹拌機の速度を、粒子がちょうど懸濁液中に残留するように直ちに低下させる。混合物を、この速度にて3時間撹拌する。その後、吸引濾過ケークを、3×125mlの水、5×15mlの1M硫酸/0.2Mアスコルビン酸、3×15mlの脱塩水、5×15mlの1M NaOH、3×15mlの脱塩水、3×15mlの1M HClおよび3×15mlの脱塩水で、125mlのホウケイ酸塩3.3ガラス原料(Borosilicate 3.3 frit)上で洗浄する。乾燥生成物のCHNS分析により、2.0重量%の硫黄含量が示される。
【0074】
例5
例2に従って調製したポリNVP/DVHベース担体を基にした、本発明の強いカチオン交換体(内部07MJ−DZ078)の合成
3.73gの2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(AMPS、Merck)および25gの脱塩水を、最初に250mlの3つ口フラスコ(滴下漏斗、ガス入口管および精密ガラス撹拌器)中に導入する。フラスコを、8℃に冷却する(溶液中における、大気中の酸素の過度の蓄積を防止するため、窒素の穏やかな流れを用いる)。2mlの2M水酸化ナトリウム溶液(Merck)を加え、硝酸(65%、Merck)を用いて、pH5.8に設定する。フラスコを再び室温に放冷し、これにさらに窒素を流す。一晩重力下で沈降した、例2に従って調製した15mlのポリマーを、この溶液に加える。混合物を、脱塩水で90mlの総容積とする。pHを、5.8に再設定する。また、24μlのドデカノールを加える。1.0gの脱塩水を、ビーカー中で0.44gの65%硝酸と混合する。0.49gの硝酸アンモニウムセリウム(IV)(Merck)を、この溶液に溶解する。フラスコ中の懸濁液を、42℃に加温する。
【0075】
硝酸アンモニウムセリウム(IV)溶液を、激しく撹拌しながら懸濁液に迅速に加える。硝酸アンモニウムセリウム(IV)溶液を加えた後、撹拌機の速度を、粒子がちょうど懸濁液中に残留するように直ちに低下させる。混合物を、この速度にて3時間撹拌する。その後、吸引濾過ケークを、3×125mlの水、5×15mlの1M硫酸/0.2Mアスコルビン酸、3×15mlの脱塩水、5×15mlの1M NaOH、3×15mlの脱塩水、3×15mlの1M HClおよび3×15mlの脱塩水で、125mlのホウケイ酸塩3.3ガラス原料上で洗浄する。乾燥生成物のCHNS分析により、2.2重量%の硫黄含量が示される。
【0076】
例6
例3に従って調製したポリES/DVBベース担体を基にした、強いカチオン交換体(内部07MJ−PP005)の合成
15.55gの2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(AMPS、Merck)および34gの脱塩水を、最初に250mlの3つ口フラスコ(滴下漏斗、ガス入口管および精密ガラス撹拌器)中に導入する。フラスコを、8℃に冷却する(溶液中における、大気中の酸素の過度の蓄積を防止するため、窒素の穏やかな流れを用いる)。3gの32%水酸化ナトリウム溶液(Merck)を加え、硝酸(65%、Merck)を用いて、pH5.8に設定する。フラスコを再び室温に放冷し、これにさらに窒素を流す。一晩重力下で沈降した、例3に従って調製した50mlのポリマーを、この溶液に加える。混合物を、脱塩水で120mlの総容積とする。pHを、5.8に再設定する。また、32μlのドデカノールを加える。6.75gの脱塩水を、ビーカー中で0.725gの65%硝酸と混合する。1.65gの硝酸アンモニウムセリウム(IV)(Merck)を、この溶液に溶解する。フラスコ中の懸濁液を、42℃に加温する。
【0077】
硝酸アンモニウムセリウム(IV)溶液を、激しく撹拌しながら懸濁液に迅速に加える。硝酸アンモニウムセリウム(IV)溶液を加えた後、撹拌機速度を、粒子がちょうど懸濁液中に残留するように直ちに低下させる。混合物を、この速度にて4時間撹拌する。その後、吸引濾過ケークを、3×125mlの水、5×100mlの1M硫酸/0.2Mアスコルビン酸、3×100mlの脱塩水、5×100mlの1M NaOH、3×100mlの脱塩水、3×100mlの1M HClおよび3×100mlの脱塩水で、125mlのホウケイ酸塩3.3ガラス原料上で洗浄する。乾燥生成物のCHNS分析により、2.8重量%の硫黄含量が示される。
【0078】
例7
例4からの記載に従って調製した強いイオン交換体の静的タンパク質結合能
静的タンパク質結合能を決定するために、例4に従って調製した強いイオン交換体を、pH5.0に調整された25mMのリン酸塩および25mMの酢酸塩からなる緩衝液混合物で洗浄する。100μlのゲルを、pH5.0の25mMのリン酸塩および25mMの酢酸塩中の、12.5mg/mlのリゾチーム溶液1mlで帯電させ、シェーカー上で120分間インキュベートする。未結合のリゾチームを除去するために、ゲルを、その後、pH5.0に調整された25mMのリン酸塩および25mMの酢酸塩を含む緩衝液混合物で洗浄する。強いイオン交換体に結合したタンパク質を、pH7.0の25mMのリン酸塩、25mMの酢酸塩および1M NaClからなる緩衝液混合物を用いて溶出する。溶離液中のタンパク質濃度を、254nmにおけるUV吸収によって決定する。用いた強いイオン交換体1mlあたり、67.3mgのタンパク質の結合能が得られる。
【0079】
例8
例5からの記載に従って調製した強いイオン交換体の静的タンパク質結合能
静的タンパク質結合能を決定するために、例5に従って調製した強いイオン交換体を、pH5.0に調整された25mMのリン酸塩および25mMの酢酸塩からなる緩衝液混合物で洗浄する。100μlのゲルを、pH5.0の25mMのリン酸塩および25mMの酢酸塩中の、12.5mg/mlのリゾチーム溶液1mlで帯電させ、シェーカー上で120分間インキュベートする。未結合のリゾチームを除去するために、ゲルを、その後、pH5.0に調整された25mMのリン酸塩および25mMの酢酸塩を含む緩衝液混合物で洗浄する。強いイオン交換体に結合したタンパク質を、pH7.0の25mMのリン酸塩、25mMの酢酸塩および1M NaClからなる緩衝液混合物を用いて溶出する。溶離液中のタンパク質濃度を、254nmにおけるUV吸収によって決定する。用いた強いイオン交換体1mlあたり、67.5mgのタンパク質の結合能が得られる。
【0080】
例9
例6からの記載に従って調製した強いイオン交換体の静的タンパク質結合能
静的タンパク質結合能を決定するために、例6に従って調製した強いイオン交換体を、pH5.0に調整された25mMのリン酸塩および25mMの酢酸塩からなる緩衝液混合物で洗浄する。100μlのゲルを、pH5.0の25mMのリン酸塩および25mMの酢酸塩中の、12.5mg/mlのリゾチーム溶液1mlで帯電させ、シェーカー上で120分間インキュベートする。未結合のリゾチームを除去するために、ゲルを、その後、pH5.0に調整された25mMのリン酸塩および25mMの酢酸塩を含む緩衝液混合物で洗浄する。強いイオン交換体に結合したタンパク質を、pH7.0の25mMのリン酸塩、25mMの酢酸塩および1M NaClからなる緩衝液混合物を用いて溶出する。溶離液中のタンパク質濃度を、254nmにおけるUV吸収によって決定する。用いた強いイオン交換体1mlあたり、57.6mgのタンパク質の結合能が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィー材料の調製方法であって、表面上にOH基を有しない有機ポリマーベース材料を、
Ce(IV)触媒の存在下でグラフト重合させる
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
用いるポリマーベース材料が、ポリビニル基含有モノマーであるジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルピリジン、ジビニルナフタレン、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、N,N−メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジビニルエチレン尿素およびN,N−ジビニルプロピレン尿素、ならびにモノビニル基含有モノマー、例えばグリシジルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、N−ビニルピロリドン、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、アクリロニトリル、クロロスチレンおよびアミノスチレンの群から選択されるモノマーを重合または共重合することによって調製される粒子状ポリマーまたは成形ポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
用いるベース材料が、20nm〜1000μmの範囲内の平均粒径を有する粒子を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
用いるベース材料が、20〜1200m/gの範囲内の平均粒子表面積を有し、好ましくは100〜600m/gの範囲内の粒子表面積を有する粒子を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
モノリシック体の形態のベースポリマーをグラフト重合させることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
グラフト重合を、触媒としての硝酸アンモニウムセリウム(IV)の存在下で行うことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
Ce(IV)イオンで触媒される反応を、硝酸、硫酸および塩酸の群から選択される少なくとも1種の無機酸の存在下で行うことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
グラフト重合を、プロトン性溶媒中で行うことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
用いる溶媒が水であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
a)親水性モノマーを、水に溶解し、それを任意でさらなるモノマーと混合し、
b)得られた溶液を担体材料と混合することにより、沈降したポリマー材料1リットルあたり0.05〜100molの全モノマーを用いるようにし、
c)鉱酸に溶解したセリウム(IV)塩を、得られた懸濁液に加え、0〜5の範囲内のpHとし、
d)反応混合物を、0.5〜72時間にわたりグラフト重合させる
ことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法によって調製される、分離材料。
【請求項12】
請求項11に記載の分離材料を含有する、クロマトグラフィーカラム。
【請求項13】
請求項11に記載の分離材料の、クロマトグラフィーカラムにおける使用。
【請求項14】
バイオポリマーを液状媒体から分離するための、請求項11に記載の分離材料の使用。

【公表番号】特表2011−523707(P2011−523707A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510858(P2011−510858)
【出願日】平成21年5月5日(2009.5.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003195
【国際公開番号】WO2009/143953
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】