説明

水銀誘導体の電気的検出および定量化

【課題】水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置および方法に関する。
【解決手段】2つの電極と、有機または無機半導体材料で作製された少なくとも1つの表面を含む基板とを含む電気デバイスであって、この電極が、前記有機または無機半導体材料に電気的に接触している電気デバイスと、2つの電極間の伝導電流の変化を測定するためのデバイスとを含むタイプであり、ジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテル化合物、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジ(カルボキシエチル)アミン、およびこれら化合物の少なくとも2種の混合物から選択された、水銀イオンHg2+と錯体を形成する少なくとも1種の化合物は、前記半導体材料または前記電気デバイスの電極に結合している。特に水銀イオンを検出する分野に適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水銀イオンHg2+を検出および定量するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水銀は、その有機形態の全てにおいて、またその化学的状態の全てに関して、毒性および/または生態毒性化合物であることがよく知られている。
【0003】
その理由は、水銀が生体内に蓄積し、特に腎臓、消化器系、および神経系を冒す数多くの疾患の原因となるからである。
【0004】
全ての酸化状態の中で、最も毒性があるのは水銀IIのイオン、Hg2+である。
【0005】
この元素に関して選択的なセンサーの開発は、自然環境、水、および食物においてこの元素を定量し検出することを目的に、特に関心が持たれている。
【0006】
さらに、食物での用途が意図される水の中の水銀濃度の決定は、飲料水および有害物質に関する規制との関連の中で必要である。
【0007】
水中の水銀を定量するために現在使用されている技法は、原子吸光法である。
【0008】
この技法は、正確で信頼性があるが、いくつかの欠点がある。
【0009】
特にこの技法では、輸送するのが難しい重い装置を用いる。
【0010】
水銀化合物は、ジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテル化合物に発色団または蛍光体をグラフトすることによって、選択的蛍光および比色センサーを使用して検出してもよい。
【0011】
ジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテル化合物は、Hg2+イオンと選択的に錯体を形成し、この錯体形成は、これに結合した発色団または蛍光体の性質に変化をもたらす。
【0012】
発色団または蛍光体の光学特性のこの変化は、発色団を枯渇させる水銀の電子吸引効果に起因する。
【0013】
それに応じて、ZhuらのOrg.Lett.、2008、10、1481〜1484頁は、水銀イオンHg2+用の化学センサーを提示しているが、このセンサーではトリカルボシアニン色素がグラフトされるジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテル化合物がHg2+イオンと錯体を形成するのに使用され、したがってHg2+イオンがクラウンエーテルと錯体を形成するときに色素の色に変化を引き起こす。
【0014】
この色の変化は、裸眼で見ることができる。
【0015】
しかしこの技法は、少量のHg2+イオンを検出することができず、さらに、分析下のサンプル中のHg2+濃度を決定することができない。
【0016】
同文献は、水銀イオンHg2+の検出を、クラウンエーテルにグラフトされた色素から放出された蛍光を分析することによって行うこともできることを示す。
【0017】
この技法は、Hg2+イオン濃度の決定が不可能であることの他に、減光条件下で行わなければならないという欠点があり、したがって現場で直接行うことができない。
【0018】
米国特許第7,385,267B2号は、導体材料のナノチューブまたはナノワイヤが、サンプル中の検出用の検体に接触すると性質に変化が生じる分子によって機能化される、電気デバイスについて記述する。
【0019】
このデバイスは、導体材料の性質の変化を検出することによって、サンプル中の検体を検出することが可能である。
【0020】
この文献では、Hg2+イオンの検出について、またはHg2+イオンと接触したときに水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物がグラフトされた半導体材料の伝導特性の変更について、言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第7,385,267B2号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Zhuら、Org.Lett.、2008、10、1481〜1484頁
【非特許文献2】Huang J.−H.、J,Org.Chem.2005、70、5827〜5832頁
【非特許文献3】Sotoら、J.Am.Chem.Soc.2003、125、3418〜3419頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、気体形態でまたは水溶液中にまたは未知の溶媒中に存在するHg2+イオンを検出および/または定量するための装置であって、光条件とは無関係に現場で使用することが可能でありかつ輸送可能な装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
このために、本発明は、水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置であって、
2つの電極と、有機または無機半導体材料で作製された少なくとも1つの表面を含む基板とを含み、これら電極が、前記有機または無機半導体材料と電気的に接触している電気デバイスと、
これら2つの電極間の伝導電流の変化を測定するためのデバイスと
を含むタイプであり、
ジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテル化合物、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジ(カルボキシエチル)アミン、およびこれら化合物の少なくとも2種の混合物から選択された、水銀イオンHg2+と錯体を形成する少なくとも1種の化合物が、前記半導体材料にまたは前記電気デバイスの電極にグラフトされている装置を提供する。
【0025】
本発明の、水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置の第1の実施形態では、電気デバイスの基板は、完全に、有機または無機半導体材料から構成される。
【0026】
本発明による、水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置の第2の特により好ましい実施形態では、電気デバイスの基板が、半導体材料で覆われたシリカ(SiO)支持体を含む。
【0027】
このデバイスの基板の半導体材料は、好ましくは、炭素、シリコン、ゲルマニウム、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム、またはこれらの少なくとも2種の混合物をベースにした材料から選択される。
【0028】
炭素、シリコン、ゲルマニウム、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム、またはこれらの少なくとも2種の混合物をベースにした材料は、この材料中の化合物の全モル数に対して、炭素、シリコンなどを少なくとも20モル%含有する材料である。
【0029】
より好ましくは、本発明の電気デバイスの基板の半導体材料は、炭素、シリコン、ゲルマニウム、シリコンおよびゲルマニウムの合金のナノワイヤおよび/またはナノチューブ、ならびにそのようなナノワイヤおよび/またはナノチューブの混合物から選択される。
【0030】
しかし、電気デバイスの基板の半導体材料は、チオフェン、例えばクアテルチオフェンやP3HT(ポリ−3−ヘキシルチオフェン)などのその誘導体;ポリピロールなどのピロール;アリールアミン、例えばトリフェニルアミンやポリ(トリアリールアミン)などのその誘導体;複素環式大環状分子、例えばポルフィリンおよびテトラフェニルポルフィリンおよびフタロシアニンおよびこれらの誘導体、例えば銅テトラフェニルポルフィリンやニッケルフタロシアニンなど;多環式芳香族アセン、例えばペンタセンや、トリイソプロピルシリルペンタセンなどのその誘導体;またはアリーレン、例えばピレンや、ジシアノペリレンジイミド(PDI−CN)などのその誘導体をベースにする材料から選択された有機材料であってもよい。
【0031】
好ましくは、電気デバイスの基板の半導体材料が有機材料である場合、この材料はP3HT(ポリ−3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(トリアリールアミン)、アントラセン、ペンタセン、ペリレン、ポリ−パラ−フェニレン、ポリ−パラ−フェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの混合物から好ましくは選択される。
【0032】
電気デバイスの電極に関して、好ましい一実施形態では、電極の1つが、カーボンナノチューブおよびポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホネート)から選択された半導体材料で作製される。
【0033】
しかし、本発明の特に好ましい一実施形態では、基板は、シリコンナノワイヤがエッチングされているシリコン層で覆われたシリカ支持体から構成される。
【0034】
本発明による、水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置の同様の好ましい一実施形態では、水銀イオンHg2+と錯体を形成する少なくとも1種の化合物が、電気デバイスの電極の1つにグラフトされている。
【0035】
本発明の、水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置の特定の一実施形態では、電気デバイスの基板の半導体材料がシリコンで作製され、水銀イオンHg2+と錯体を形成する少なくとも1種の化合物は、アルキン基、アルケン基、ジアゾニウム基、またはトリアゼン基から選択されたグラフト基によって、この半導体材料にグラフトされている。
【0036】
本発明による、水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置の別の特定の実施形態では、電気デバイスの基板の半導体材料が、薄い酸化物層で覆われたシリコンで作製され、水銀イオンHg2+と錯体を形成する少なくとも1種の化合物は、グラフト基およびシラン基、好ましくはトリアルコキシシラン基またはトリハロシラン基、より好ましくはトリメトキシシラン基またはトリクロロシラン基によって、この半導体材料にグラフトされている。
【0037】
本発明による、水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置のさらに別の特定の実施形態では、電気デバイスの基板の半導体材料がカーボンナノワイヤおよび/またはナノチューブから構成され、水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物は、ジアゾニウム基、トリアゼン基、フリーラジカル前駆体基、芳香族もしくは複素芳香族基、例えばピレンやアントラセン、ポルフィリン基など、またはアミン基、またはアルコール基から選択されたグラフト基によって、これらのカーボンナノチューブおよび/またはナノワイヤにグラフトされている。
【0038】
本発明による、水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置のさらに別の特定の実施形態によれば、電気デバイスの1つの電極が金で作製され、水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物は、有機硫黄基、好ましくはチオール基、保護チオール基、例えばチオアセテート基、またはジスルフィド基などから選択されたグラフト基によって、この電極にグラフトされている。
【0039】
本発明の、水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置の実施形態の全てにおいて、水銀イオンHg2+と錯体を形成する少なくとも1種の化合物は、ジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテルである。
【0040】
本発明は、水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための方法も提供し、この方法は、おそらくは水銀イオンHg2+を含有するサンプルを、本発明による水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置の水銀イオンHg2+と錯体を形成する少なくとも1種の化合物に接触させるステップと、本発明の水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置の測定デバイスによって測定された、伝導電流の変化を読み取るステップとを含む。
【0041】
以下の例示的な記述を読むことによって、本発明はより良く理解され、その他の特徴およびそれらの利点はより明瞭に浮かび上がるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、半導体材料にグラフトされた、水銀と錯体を形成する化合物による水銀イオンHg2+の錯化が、前記半導体材料の静電環境を劇的に変化させ、その伝導特性に変化をもたらし、したがって、水銀と錯体を形成する化合物で機能化されたトランジスタまたはレジスタにより、Hg2+イオンの電気的検出および/または定量化が可能になるという知見に基づく。
【0043】
したがって、水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物は、その主要な部分として、ジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテル化合物、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジ(カルボキシエチル)アミン、およびこれらの混合物から選択された、水銀イオンHg2+と錯体を形成する基を含む。
【0044】
この基は、水銀イオンHg2+に対して非常に高い選択性を有する。
【0045】
水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物は、グラフト基によって、純然たる抵抗デバイスまたは電界効果トランジスタデバイスであってもよい電気デバイスの部分に結合し、それによって、容易に輸送可能なデバイスを得ることが可能になる。
【0046】
このタイプのデバイスは、水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物が水銀イオンHg2+に接触したときの、これら2つの電極間の伝導電流の変化を測定するために、半導体材料で作製された少なくとも1つの部分を含む基板と、この半導体材料に電気的に接触する位置にある2つの電極とを本質的に含む。
【0047】
水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物が結合する電気デバイスの部分は、電極の1つ、または、本発明の水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置の電気デバイスの基板の半導体材料で作製された部分であってもよい。
【0048】
水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物は、半導体材料または電極の材料に応じて、共有結合によってまたは弱い安定化相互作用によって、グラフト基またはその他を介して半導体材料にまたは電極の1つに結合していてもよい。
【0049】
しかし本発明では、水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物のグラフトによる結合が使用されるが、それはこのタイプの結合が、経時的な耐久力を有しており、本発明の装置に長い寿命および高い再現性および感受性を与えるからである。
【0050】
水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物が、電気デバイスの基板の半導体材料にまたは電極に、グラフトによって結合する場合、水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物は、水銀イオンHg2+と錯体を形成する前述の部分に加えて、ピレンなどの飽和または不飽和の単環式または多環式芳香族炭化水素基、ビニル型のアルケン基、アセチレン基などのアルキン基、シラン基、例えばトリクロロシラン基などのトリハロシラン基、またはトリアルコキシシラン基、好ましくはトリメトキシシラン基、ジアゾ基、アジド基、フリーラジカル前駆体、例えばジアゾニウム基、イソシアネート基、有機金属基、例えばフェニルリチウムなどの有機リチウム基、または有機マグネシウム基もしくは有機亜鉛基など、チオールもしくはジスルフィド基などの硫黄基、カルボン酸もしくはスルホン酸もしくはリン酸基、およびカルボン酸メチルなどのこれらのエステル誘導体、アルコール基、フェノール基、アミン基、アミド基、またはヨウ化物基などのハロゲン化物基から選択されたグラフト基を含む。
【0051】
「タイプXの基」という用語は、本発明において、化学基または化学元素Xを含む基を示す。
【0052】
グラフト基は、より詳細には、エチニルフェニル、ビニルフェニル、ジアゾフェニル、またはピレン基であってもよい。
【0053】
より具体的には、半導体材料がシリコンである場合、グラフト基は、アルキン基、アルケン基、ジアゾニウム基、またはトリアゼン基であってもよい。
【0054】
シリコンは、半導体材料が例えば自然酸化物などの薄い酸化物層で覆われたシリコンである場合、その表面で容易に酸化可能であるので、グラフト基は、好ましくはシラン基であり、例えばトリメトキシシラン基などのトリアルコキシシラン基、または例えばトリクロロシラン基などのトリハロシラン基であり、または酸化物の表面に結合する任意のその他の種である。
【0055】
半導体材料は、当業者に明らかである任意の半導体材料であってもよい。
【0056】
好ましくは、炭素、シリコン、ゲルマニウム、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム、またはこれらの混合物で作製されまたはこれらの材料をベースにした材料であってもよい。
【0057】
既に述べたように、「Xをベースにした材料」は、本発明において、材料中に存在する全モル数に対してXを少なくとも20モル%含む材料を示す。
【0058】
半導体材料は、ペンタセンなどの質量平均分子量が1000g/モル未満であるオリゴマー、ポリマー、または小分子などの有機半導体材料であってもよい。
【0059】
例えば有機半導体材料は、複素環式芳香族化合物、例えばチオフェンやクアテルチオフェンと、P3HT(ポリ−3−ヘキシルチオフェン)などのそれらの誘導体;ポリピロールなどのピロール;アリールアミン、例えばトリフェニルアミンやポリ(トリアリールアミン)などのその誘導体;複素環式大環状分子、例えばテトラフェニルポルフィリンなどのポルフィリン、およびフタロシアニン、および銅テトラフェニルポルフィリンやニッケルフタロシアニンなどのこれらの誘導体;多環式芳香族アセン、例えばペンタセンと、トリイソプロピルシリルペンタセンなどのこれらの誘導体;およびアリーレン、例えばピレンと、ジシアノペリレンジイミド(PDI−CN)などのその誘導体をベースにした材料であってもよい。
【0060】
そのような好ましい有機半導体材料の例は、ポリ−3−ヘキシルチオフェン、ポリ(トリアリールアミン)、アントラセン、ペンタセン、ペリレン、ポリ−パラ−フェニレン、ポリ−パラ−フェニレンビニレン、およびポリフルオレンである。
【0061】
しかし、特に非常に好ましい半導体材料は、シリコンナノワイヤおよび/またはナノチューブ、および/またはカーボンナノワイヤおよび/またはナノチューブ、および/またはモル組成Si0.7Ge0.3の合金やモル組成Si0.1Ge0.9スーパーネットワークのSi/合金など、シリコンおよびゲルマニウムをベースとした材料のナノワイヤおよび/またはナノチューブから構成される。
【0062】
「スーパーネットワーク」とは、その最大寸法の方向に沿って、Si層とSiおよびGeの合金で作製された層とが交互に配されて構成された基本単位の繰返しから構成される、ナノワイヤまたはナノチューブを意味し、この場合、SiおよびGeの全モル数に対してシリコンを10モル%含んでいる。
【0063】
最も好ましくは、半導体材料は、絶縁材料の表面のシリコン層にエッチングされた、シリコンナノワイヤから構成される。
【0064】
このタイプの材料を、一般に、「シリコンオンインシュレータ」に因んでSOIと呼ぶ。
【0065】
上述の場合で記述された半導体材料は、電気デバイスの基板を構成する半導体材料であり、伝導特性の変化は、水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物によるHg2+イオンの錯化によって誘発される。
【0066】
水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物によるHg2+イオンの錯化に起因した伝導特性を測定することができるようにするために、電極を、上記にて定義された半導体材料で作製された基板上に配置する。
【0067】
電極は、例えば金、銀、パラジウム、白金、チタン、ドープシリコン、銅、またはニッケルで作製された金属電極であってもよい。
【0068】
しかし電極は、カーボンナノチューブおよび/またはナノワイヤなどの半導体材料で、または半導体ポリマーであるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホネート)で作製されてもよい。
【0069】
水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物はまた、電極の1つに結合していてもよい。
【0070】
好ましくは、この化合物は、半導体基板の場合のように、電極を構成する材料にはグラフトによって結合し、その場合、水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物は、半導体材料に関して記述されたグラフト基をさらに含むことになる。
【0071】
グラフト基による、水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物のグラフトは、1つまたは複数のステップで行ってもよい。
【0072】
例えば、半導体材料の表面と第1の分子とを反応させ、次いでこのグラフトされた分子の官能基と、水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物を含む第2の有機分子とを反応させることが可能である。
【0073】
例えばシリコンまたはその自然酸化膜は、有機、有機金属、または無機合成の従来の技法によって、第2の段階で、水銀イオンと錯体を形成する分子がグラフトされる末端官能基を含有する第1の一連の有機分子によって、官能化することができる。
【0074】
共有結合によってまたは弱い相互作用によって生成されたアセンブリが可能である。
【0075】
例えばπ−π結合(軌道の重複を安定化させる)によるアセンブリを、好ましくは半導体材料がカーボンナノチューブおよび/またはナノワイヤから構成された場合に考えることができる。
【0076】
さらに、1種または複数のカーボンナノチューブおよび/またはナノワイヤを半導体材料として使用する場合、グラフト基は、トリアゼン基、フリーラジカル前駆体基、例えばジアゾニウム基、または炭素原子と共有結合を形成することが可能な任意の分子、ピレンやアントラセン、ポルフィリン基などの芳香族もしくは複素芳香族基、または非共有の、即ち超分子の官能化を可能にするアミンの種類から誘導された基、アミン基、またはアルコール基であって、エステルまたはアミドを形成するために例えばカップリング剤を用いて必要に応じて化学的活性化をした後に、カーボンナノチューブおよび/またはナノワイヤの表面に存在するカルボン酸基と反応させるための基であってもよい。
【0077】
ゲルマニウムをベースにした半導体材料の場合、グラフト基は、アルキンまたはアルケンであってもよい。
【0078】
半導体材料がインジウムガリウムヒ素(InGaAs)である場合、グラフト基は、チオールなどの硫黄基であってもよい。
【0079】
カドミウムおよびセレン(CdSe)または硫化カドミウム(CdS)をベースにした半導体材料の場合、グラフト基は、アミンまたはチオールなどの硫黄基であってもよい。
【0080】
半導体材料が酸化亜鉛の場合、グラフト基はカルボン酸またはリン酸基であってもよい。
【0081】
半導体材料が硫化亜鉛(ZnS)の場合、グラフト基は硫黄基、例えばチオール基であってもよい。
【0082】
有機半導体材料の場合、水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物は、前記有機半導体材料の合成中に組み込まれる。
【0083】
水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物が電極の1つに結合する場合、また電極が金で作製される場合、好ましくは、有機硫黄基、例えばチオール基、保護チオール基、例えばチオアセテート基、またはジスルフィド基などがこの結合に使用されることになる。
【0084】
水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物のグラフト基は、グラフト基の他に、水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物と、基板の半導体材料または電極との間の距離を調節することが可能なスペーサー部分を含むことが有利である。
【0085】
このスペーサー部分は、S、O、およびNなどの1個または複数のヘテロ原子を含有してもよいCからC20アルキル基、および/またはビフェニル基などの芳香族基、またはチオフェン基などの複素芳香族基であってもよい。
【0086】
したがって本発明によるデバイスは:
有機または無機半導体材料で作製された少なくとも1つの表面を含む基板上に配置された、前記半導体材料に接触している2つの電極を含む電気デバイスと、
2つの電極間の伝導電流を測定するためのデバイスであって、ジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテル化合物、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジ(カルボキシエチル)アミン、およびこれら化合物の少なくとも2種の混合物から選択された、水銀と錯体を形成する化合物が、半導体材料で作製された電気デバイスの部品の1つにグラフトによって結合しているデバイスと
から構成される。
【0087】
この単純な構造により、低コストで大規模な生産が可能になる。
【0088】
さらに、この単純な構造のために、水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための本発明の装置は、非常に小さいサイズにすることができ、操作するのにエネルギーを少ししか必要とせず、これはその可搬性に有益である。
【0089】
水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための本発明による装置は、基板または電極の1つに結合した、ジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテル、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジ(カルボキシエチル)アミン、またはこれらの化合物の混合物から選択された、水銀イオンHg2+と錯体を形成する少なくとも1種の化合物が結合される上述の電気デバイスの他に電気デバイスの電極間の伝導電流の変化を測定するためのデバイスを含む。
【0090】
Hg2+イオンを検出および/または定量するための装置は、電気デバイスの2つの電極間を流れかつ測定デバイスにより測定された伝導電流が、分析下のサンプル中に存在するHg2+イオンの濃度に直接結び付けられるように較正できる。
【0091】
このサンプルは、気体または液体サンプル、特に水のサンプルであってもよい。
【0092】
本発明の、Hg2+イオンを検出および/または定量するための装置の単純な構造により、そのような装置の低コストで大規模な生産が可能になる。
【0093】
さらに、この単純な構造のために、本発明の装置は非常に小さいサイズにすることができ、操作するのにエネルギーを少ししか必要とせず、これはその可搬性に有益である。
【実施例】
【0094】
本発明の理解を助けるため、その例示的な実施形態を、単なる例示としてかつこれに限定することなく次に記述する。
【0095】
実施例1
トランジスタをベースにしたセンサー
水銀イオンHg2+を検出および定量するための装置をSOI(シリコンオンインシュレータ)上に製作し、この場合、半導体材料は、以下のようにシリコン酸化物の77nmの層にエッチングされた、幅280nm、長さ4μm、および厚さ16nmのエッチングされたシリコンナノワイヤである。
【0096】
1.そのグラフト基を用いた、水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物の合成:
N−(4−エチニルフェニル)ジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテル
【0097】
【化1】

【0098】
N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−4−エチニルアニリン(1)を、Fangらの手順によって得た(Huang J.−H.、J,Org.Chem.2005、70、5827〜5832頁)。1を、塩化メタンスルホニルと反応させた。次いで得られた生成物を、Sotoら、J.Am.Chem.Soc.2003、125、3418〜3419頁によって記述された手順に従って、3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオールおよび炭酸カリウムと合わせた。この方法によれば、2は、30%の収率で得られた。
【0099】
2.シリコンナノワイヤ上への上記ステップで得られた化合物のグラフト
上記ステップで得られた化合物2を、熱ヒドロシリル化によってシリコンナノワイヤにグラフトする。電気デバイスを、ピラニア溶液(濃硫酸3モルおよび30%過酸化水素1モルの混合物)を使用して清浄化し、次いで1%HF溶液で処理する。活性化した電気デバイスを、メシチレン中のレセプターの0.5mM溶液中で2時間、加熱還流する。
【0100】
電気デバイスを、引き続きジクロロメタンで濯ぐ。
【0101】
3.水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための、本発明による装置の試験
上記ステップで得られた電気デバイスを、1mmol/lのHg2+イオンを含有する溶液に浸漬し、次いで脱イオン水で濯ぐ。
【0102】
次いで5分間、空気乾燥する。
【0103】
Hg2+イオンの錯化は、電気デバイスのコンダクタンスに変化をもたらす。
【0104】
10%よりも大きいが20%未満であるコンダクタンスの相対的変化|Δg/g|が測定された。
【0105】
明らかなように、Hg2+イオンを検出および/または定量するための本発明による装置は、その製作に使用される、水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物の選択性により、Hg2+イオンに対して非常に高い選択性を示す。
【0106】
実施例2
この実施例は、下記の式1、2、および3の、水銀イオンと錯体を形成する化合物の1つが単に共有結合またはその他の結合によって結合し、グラフトによって結合しない場合、
【0107】
【化2】

【0108】
Hg2+イオンを検出および/または定量するための装置は3カ月未満でHg2+イオンに対するその感受性を失うのに対し、これら同じ化合物が実施例1で述べたようにグラフトされている場合、Hg2+イオンを検出および/または定量するための本発明の装置は、3カ月後にその完全な感受性を維持したままであることを示す。
【0109】
この目的で、式1、2、および3の化合物をそれぞれ、実施例1と同じデバイスに適用し、コンダクタンスの相対的変化|Δg/g|を、デバイスの製作後と1カ月、2カ月、および3カ月後に測定した。
【0110】
3カ月後、このデバイスは、Hg2+イオンをもはや検出しない。
【0111】
並行して、式1、2、および3の化合物がそれぞれ、実施例1のようにグラフトされている本発明によるデバイスについても、それらの製作直後、次いで1、2、および3カ月後に試験をした。3カ月後、これらのデバイスは依然として、その製作直後と同じ感受性でHg2+イオンを検出および/または定量することが可能である。
【0112】
実施例3
この実施例は、同じデバイス上にHg2+イオンと錯体を形成する2種の化合物をグラフトすることによって得られる相乗効果を示す。
【0113】
このために、式1の化合物のみグラフトされているデバイスを、実施例1のように用意した。
【0114】
このために、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−4−エチニルアニリン(1)を、熱ヒドロシリル化によって試験デバイスにグラフトした。このデバイスを、ピラニア溶液を使用して清浄化し、次いで1%HF溶液で処理した。活性化したデバイスを、メシチレンに溶かしたレセプター(1)の0.5mM溶液中で2時間、加熱還流する。デバイスを引き続きジクロロメタンで濯ぐ。
【0115】
試験デバイスを、1mmol/lのHg2+イオンを含有する溶液に浸漬し、次いで脱イオン水で濯ぐ。デバイスを引き続き5分間、空気乾燥する。Hg2+イオンの錯化は、デバイスのコンダクタンスに変化をもたらす。5%よりも大きいが10%未満であるコンダクタンスの相対的変化|Δg/g|が測定された。
【0116】
次いで実施例1のように、式3の化合物のみグラフトされているデバイスを用意した。
【0117】
このために、N,N−ジ(2−カルボキシエチル)−4−エチニルアニリン(1)を、熱ヒドロシリル化によって試験デバイスにグラフトした。デバイスを、ピラニア溶液を使用して清浄化し、次いで1%HF溶液で処理した。活性化したデバイスを、メシチレンに溶かしたレセプター(1)の0.5mM溶液中で2時間、加熱還流する。デバイスを引き続きジクロロメタンで濯ぐ。
【0118】
試験デバイスを、1mmol/lのHg2+イオンを含有する溶液に浸漬し、次いで脱イオン水で濯ぐ。デバイスを引き続き5分間、空気乾燥する。Hg2+イオンの錯化は、デバイスのコンダクタンスに変化をもたらす。5%よりも大きいが10%未満であるコンダクタンスの相対的変化|Δg/g|が測定された。
【0119】
その後、実施例1のように、式1および2の化合物がグラフトされているデバイスを用意した。
【0120】
このために、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−4−エチニルアニリン(1)および分子2を、熱ヒドロシリル化によって試験デバイスにグラフトした。デバイスを、ピラニア溶液を使用して清浄化し、次いで1%HF溶液で処理した。活性化したデバイスを、メシチレンに溶かしたレセプター1および2の0.5mM溶液で2時間、加熱還流する。デバイスを引き続きジクロロメタンで濯ぐ。
【0121】
試験デバイスを、1mmol/lのHg2+イオンを含有する溶液に浸漬し、次いで脱イオン水で濯ぐ。デバイスを引き続き5分間、空気乾燥する。Hg2+イオンの錯化は、デバイスのコンダクタンスに変化をもたらす。30%よりも大きいコンダクタンスの相対的変化|Δg/g|が測定された。相乗効果は、これら2種のレセプターが一緒にグラフトされたときに観察される。
【0122】
次いで実施例1のように、式2および3の化合物がグラフトされているデバイスを用意した。
【0123】
このために、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−4−エチニルアニリン(3)および分子(2)を、熱ヒドロシリル化によって試験デバイスにグラフトした。デバイスを、ピラニア溶液を使用して清浄化し、次いで1%HF溶液で処理した。活性化したデバイスを、メシチレン中のレセプター(3)および(2)の0.5mM溶液中で2時間、加熱還流する。デバイスを引き続きジクロロメタンで濯ぐ。
【0124】
試験デバイスを、1mmol/lのHg2+イオンを含有する溶液に浸漬し、次いで脱イオン水で濯ぐ。デバイスを引き続き5分間、空気乾燥する。Hg2+イオンの錯化は、デバイスのコンダクタンスに変化をもたらす。20%よりも大きいコンダクタンスの相対的変化|Δg/g|が測定された。相乗効果は、これら2種のレセプターが一緒にグラフトされたときに観察される。
【0125】
したがって、Hg2+イオンを検出および/または定量するための本発明による装置は、非常に感受性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置であって、
2つの電極と、有機または無機半導体材料で作製された少なくとも1つの表面を含む基板とを含み、前記電極が、前記有機または無機半導体材料と電気的に接触している電気デバイスと、
前記2つの電極間の伝導電流の変化を測定するためのデバイスと
を含むタイプであり、
ジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテル化合物、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジ(カルボキシエチル)アミン、およびこれら化合物の少なくとも2種の混合物から選択された、水銀イオンHg2+と錯体を形成する少なくとも1種の化合物が、前記半導体材料にまたは前記電気デバイスの電極にグラフトされている装置。
【請求項2】
前記電気デバイスの基板が、完全に、有機または無機半導体材料から構成される、請求項1に記載の水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置。
【請求項3】
前記電気デバイスの基板が、半導体材料で覆われたシリカ(SiO)支持体を含む、請求項1に記載の水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置。
【請求項4】
前記電気デバイスの基板の半導体材料が、炭素、シリコン、ゲルマニウム、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム、またはこれらの少なくとも2種の混合物をベースにした材料から選択される、請求項1から3のいずれかに記載の水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置。
【請求項5】
前記電気デバイスの基板の半導体材料が、
炭素;シリコン;ゲルマニウム;シリコンおよびゲルマニウムの合金
のナノワイヤおよび/またはナノチューブ、ならびにこれらの混合物から選択される、請求項4に記載の水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置。
【請求項6】
前記電気デバイスの基板の半導体材料が、チオフェン、例えばクアテルチオフェンや、P3HT(ポリ−3−ヘキシルチオフェン)などのその誘導体;ポリピロールなどのピロール;アリールアミン、例えばトリフェニルアミンや、ポリトリアリールアミンなどのその誘導体;複素環式大環状分子、例えばポルフィリンおよびテトラフェニルポルフィリンおよびフタロシアニンおよびこれらの誘導体、例えば銅テトラフェニルポルフィリンやニッケルフタロシアニンなど;多環式芳香族アセン、例えばペンタセンや、トリイソプロピルシリルペンタセンなどのその誘導体;またはアリーレン、例えばピレンや、ジシアノペリレンジイミド(PDI−CN)などのその誘導体をベースにした材料から選択される、請求項1から3のいずれかに記載の水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置。
【請求項7】
前記電気デバイスの基板の半導体材料が、ポリ−3−ヘキシルチオフェン、ポリトリアリールアミン、アントラセン、ペンタセン、ペリレン、ポリ−パラ−フェニレン、ポリ−パラ−フェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの混合物から選択される、請求項1から3のいずれかに記載の水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置。
【請求項8】
前記電気デバイスの2つの電極の少なくとも一方が、カーボンナノチューブおよびポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホネート)から選択された半導体材料で作製されている、請求項1から7のいずれかに記載の水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置。
【請求項9】
前記基板が、シリコンナノワイヤがエッチングされているシリコン層で覆われたシリカ支持体から構成される、請求項1および3から7のいずれかに記載の水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置。
【請求項10】
水銀イオンHg2+と錯体を形成する前記少なくとも1種の化合物が、前記電気デバイスの基板の半導体材料にグラフトされている、請求項1から9のいずれかに記載の水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置。
【請求項11】
水銀イオンHg2+と錯体を形成する前記少なくとも1種の化合物が、前記電気デバイスの電極の1つにグラフトされている、請求項1から9のいずれかに記載の水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置。
【請求項12】
前記電気デバイスの基板の半導体材料がシリコンであり、水銀イオンHg2+と錯体を形成する前記少なくとも1種の化合物が、アルキン基、アルケン基、ジアゾニウム基、またはトリアゼン基から選択されたグラフト基によってこの半導体材料にグラフトされている、請求項10に記載の水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置。
【請求項13】
前記電気デバイスの基板の半導体材料が、酸化物層で覆われたシリコンであり、水銀イオンHg2+と錯体を形成する前記少なくとも1種の化合物が、トリアルコキシシラン基またはトリハロシラン基、好ましくはトリメトキシシラン基またはトリクロロシラン基から選択されたグラフト基によってこの半導体材料にグラフトされている、請求項10に記載の水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置。
【請求項14】
前記電気デバイスの基板の半導体材料が、カーボンナノワイヤおよび/またはナノチューブから構成され、水銀イオンHg2+と錯体を形成する前記少なくとも1種の化合物が、ジアゾニウム基;トリアゼン基;フリーラジカル前駆体基;芳香族もしくは複素芳香族基、例えばピレン、アントラセン、もしくはポルフィリン基;またはアミン基;またはアルコール基から選択された基によってこの半導体材料にグラフトされている、請求項10に記載の水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置。
【請求項15】
水銀イオンHg2+と錯体を形成する化合物がグラフトされている前記電極が、金で作製され、水銀イオンHg2+と錯体を形成する前記少なくとも1種の化合物が、チオール基、保護チオール基、好ましくはチオアセテート基またはジスルフィド基から選択されたグラフト基によってこの電極にグラフトされている、請求項11に記載の水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置。
【請求項16】
水銀イオンHg2+と錯体を形成する前記少なくとも1種の化合物が、ジチア−ジオキサ−モノアザクラウンエーテルである、請求項1から15のいずれかに記載の水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置。
【請求項17】
水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための方法であって、
a)おそらくは水銀イオンHg2+を含有するサンプルを、請求項1から16のいずれかに記載の水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置の水銀イオンHg2+と錯体を形成する前記少なくとも1種の化合物に、接触させるステップと、
b)請求項1から16のいずれかに記載の水銀イオンHg2+を検出および/または定量するための装置の測定デバイスによって測定された、伝導電流の変化を読み取るステップと
を含む方法。

【公開番号】特開2010−217174(P2010−217174A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−46660(P2010−46660)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(506423291)コミサリア ア レネルジィ アトミーク エ オ ゼネ ルジイ アルテアナティーフ (85)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【Fターム(参考)】