説明

永久磁石を利用した走行装置

【課題】 駆動流体管内の左右内壁面に案内支持されて走行する管内走行体の左右車輪と、該管内走行体に磁気吸着により同期して上記駆動流体管の両外側面に案内支持されて走行する両管外走行体の車輪の負荷をバランスさせることで、上記管内走行体の車輪と両管外走行体の車輪の磨耗を軽減することができる永久磁石を利用した走行装置を提供する。
【解決手段】 基台Kに取付けられて延設された駆動流体管1内の上下、左右の内壁面2には管内走行体9が車輪10,11を介して走行可能に案内支持され、上記管内走行体9の内部には走行方向と直交する複数の永久磁石から成る主永久磁石群Aが配設され、且つ駆動流体管1の両外側面には一対の管外走行体29,30が車輪16,17を介して走行可能に案内支持され、両管外走行体29,30を連結した連結部材28の略中央下面には被搬送体38が装着され、主永久磁石群Aの磁極に対し従永久磁石群B1,B2が異極となるように配列されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は永久磁石を利用した走行装置に係わり、詳しくはカメラや搬送具又は加工装置等、各種搬送物を装着して建築物内外や、例えば設備として炉内等を各方向に走行することができる装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、永久磁石を利用した走行装置は公知である。例えば、特許文献1にみられる。即ち、透明管又は透明窓部を有する管により構成されたガイド管と、該ガイド管内を流体圧により圧送されるピグと、該ピグに搭載された撮像装置とを備え、該撮像装置が上記ガイド管の透明な管壁又は透明窓部を通してガイド管の外側を撮像できるようにし、筒内側にガイド管外面を清掃するための清掃手段を有するガイド管清掃筒を、ガイド管外側に管長手方向移動可能に外装し、該ガイド管清掃筒をガイド管壁を挟んでピグに磁気吸着させることで、ピグを随伴して移動できるようにしたものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2005−210682
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の場合、流体圧によって走行する方の走行体であるピグ内の永久磁石と磁気吸着により同伴する方の走行体であるガイド管清掃筒内の永久磁石とは、互いに磁気吸着結合関係の対配置になっているから、ピグの走行に対してガイド管清掃筒を磁気吸着して同伴する構造となっているものである。然しながらピグ内の永久磁石に対して、磁気吸着により同伴するガイド管清掃筒内の永久磁石とは、上記のように1対1で磁気吸着結合関係の対配置になっているのみである。
【0005】
従って、上記ガイド管清掃筒は、ピグが走行を開始し又は停止した時に磁気吸着関係にある対の磁石によって磁気吸着されて移動しようとするが、上記ガイド管清掃筒は、ガイド管清掃筒がその慣性力によってピグの移動に対し直に同伴移動せずに、そのまま元の位置に取り残されて互いの位置がズレる場合がある。この結果、上記ガイド管清掃筒は、その後の流体圧によるピグの走行に対して同伴走行しなくなり、走行装置全体の走行性能が低下する。
とりわけ、磁気吸着結合によって同伴走行する走行体に大きな慣性力が生じたり、流体圧によって走行する走行体が急発進、停止する場合に上記のような不具合がより顕著になる。
【0006】
従って本発明の目的とするところは、駆動流体管内の左右内壁面に案内支持されて走行する管内走行体の左右車輪と、該管内走行体に磁気吸着により同期して上記駆動流体管の両外側面に案内支持されて走行する両管外走行体の車輪の負荷をバランスさせることで、上記管内走行体の車輪と両管外走行体の車輪の磨耗を軽減することができる永久磁石を利用した走行装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する為に本発明は次の技術的手段を有する。即ち実施例に対応する添付図面中の符号を用いて説明すると、本発明の請求項1に記載の永久磁石を利用した走行装置は、基台(K)に取付けられて一方側から他方側に向けて延設された駆動流体管(1)と、該駆動流体管(1)内の内壁面(2)に案内されて流体圧によって一方側から他方側に走行する管内走行体(9)と、上記駆動流体管(1)の外側面に支持されて上記管内走行体(9)の走行に追従して走行すべく被搬送体(38)を装備した管外走行体(29,30)と、上記管内走行体(9)内に配設された主永久磁石群(A)と、該主永久磁石群(A)の各磁極に対し互いに吸着し合う異極関係になるよう上記管外走行体(29,30)内に配設されて成る従永久磁石群(B1,B2)とから構成される永久磁石を利用した走行装置に於いて、上記管内走行体(9)は、上記駆動流体管(1)内の上下、左右の内壁面(2)に車輪を介して支持された状態で走行可能に案内支持され、上記管内走行体(9)の内部には、走行方向と直交する複数の永久磁石から成る主永久磁石群(A)が配設され、且つ上記管外走行体(29,30)は、上記駆動流体管(1)の両側上面に車輪を介して一方側から他方側に走行可能に案内支持されると共に、上記駆動流体管(1)の両外側面に車輪を介して該駆動流体管(1)に沿って走行可能に案内支持される一対の走行体から構成され、上記一対の管外走行体(29,30)には、上記駆動流体管(1)の下面を跨いで連結部材(28)が一体的に連結されて該連結部材(28)の下面には上記被搬送体(38)が装着され、上記主永久磁石群(A)の各磁極に対向する各磁極が互いに吸着し合う異極関係となるように走行方向と直交する複数の永久磁石から成る従永久磁石群(B1,B2)が配列されて成り、上記管内走行体(9)の主永久磁石群(A)と管外走行体(29,30)の従永久磁石群(B1,B2)の内、何れか一方の主永久磁石群(A)又は従永久磁石群(B1,B2)の走行方向に沿った両端部(V)、(W)に、何れか他方の従永久磁石群(B1,B2)又は主永久磁石群(A)の走行方向に沿った両端部の永久磁石に対して互いに反発する同極となる反発用永久磁石(G1a,G1b,G2a,G2b)を設けたことを特徴とする永久磁石を利用した走行装置である。
上記の永久磁石を利用した走行装置によれば、管内走行体(9)が、駆動流体管(1)内の長手方向一方側から他方側へ、又は他方側から一方側に向かって走行すると、上記管内走行体(9)の主永久磁石群(A)に対して、管外走行体(29,30)の従永久磁石群(B1,B2)が磁気吸着結合の対になっているので、管外走行体(29,30)も同方向へ走行する。
この際、駆動流体管(1)内の左右内壁面に案内支持されて走行する管内走行体(9)の左右車輪と、該管内走行体(9)に磁気吸着により同期して上記駆動流体管(1)の両外側面に案内支持されて走行する両管外走行体(29,30)の車輪の負荷がバランスする。
また、磁気吸着結合の対関係にある管外走行体(29,30)又は管内走行体(9)の主永久磁石群(A)の走行方向に沿った両端部(V)、(W)の永久磁石に対して、互いに反発する同極となる永久磁石が設けられているので、管内走行体(9)が一方向に走行すると管外走行体(29,30)が両端の永久磁石と反発永久磁石の互いの反発力により同じ走行方向へ押されるので、急発進または急停止時において慣性力が生じても管外走行体(29,30)は、管内走行体(9)の走行に同期して走行する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、駆動流体管内の左右内壁面に案内支持されて走行する管内走行体の左右車輪と、該管内走行体に磁気吸着により同期して上記駆動流体管の両外側面に案内支持されて走行する両管外走行体の車輪の負荷をバランスさせることで、上記管内走行体の車輪と両管外走行体の車輪や軌道面の磨耗を軽減することができる。これにより、管内走行体の車輪の寿命を延長することができ、管内走行体内の主永久磁石群と管外走行体内の従永久磁石群相互の吸着力を強力にすることが可能となり、管内走行体に対する管外走行体の追随走行性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1、図2には本発明の実施例が示されている。図1は本発明に係る永久磁石を利用した走行装置の長手方向と直交する横断面図、図2は図1のA−A断面図である。
【0011】
図1において、符号1は駆動流体管を示し、この駆動流体管1は、圧縮空気や油等の流体を利用して後述する管内走行体9を流体圧によって一方側から他方側に走行するものであって、建物、施設、機械、装置、設備、炉内等の壁、床、天井等の基台Kに沿って取付け具17を介して取り付けられている。上記の取付け具17は、駆動流体管1の上面に突設した支柱22の先端に幅広に形成した係止具20ないし支柱22を両側から基台K側に固設した一対の内側に屈曲したサポートアーム18により挟持して上記駆動流体管1を保持している。
【0012】
即ち、上記走行装置は、走行しながらカメラで監視したり、映像記録をする建物や、施設の壁面、床、天井を走行し、又は搬送物を移送したり、点検作業や掃除をする建物や施設あるいは炉内の壁面、床、天井等に沿って取り付けられている。
【0013】
そして、上記駆動流体管1の一側X及び他側Yには、例えば空圧源となるコンプレッサー3,6から圧縮空気を切換えて駆動流体管1の一側Xまたは他側Yに供給する電磁切換え弁4,5,7,8が管路を介して接続されている。
【0014】
上記管内走行体9は、上記電磁切換え弁4,5,7,8の切換えによって、矩形断面に形成された駆動流体管1の内部を一方側から他方側(又は他方側から一方側)に走行するもので、上記管内走行体9の両側面の走行方向前後には、両側に設けた上下の車輪10,11がそれぞれケース32内に収容され、図示しない垂直軸に軸受を介して回転可能に軸支されると共に、上面乃至下面の中央には、走行方向前後に一対の車輪12がケース32内に回転可能に軸支されており、上記両側面の車輪10,11ないし上下一対の車輪12は、軌道面を構成する上記駆動流体管1の両側内壁面2a,2b、及び上下内壁面2c,2dに一方側から他方側に向けて走行できるように案内支持されている。
【0015】
また、上記管内走行体9の一側X及び他側Yの端部には、圧縮空気等の流体圧を受ける受圧面体14、15が設けられ、駆動流体管1の内壁を気密にシールするように一方側から他方側に向けて摺動可能に設けられている。
【0016】
そして、上記管内走行体9の内部には、複数の永久磁石から成る主永久磁石群Aが取り付けられ、且つ図示しない磁気シール手段によってこの主永久磁石群Aの磁気漏洩を防止できるようになっており、上記の主永久磁石群Aの詳細については後述する。
【0017】
一方、上記駆動流体管1の両外側面には、中心に対し対称構造となる一対の管外走行体29,30が配設されており、これら一対の管外走行体29,30は、夫々の上面に設けた両屈曲アーム25,26先端に回転可能に軸支された車輪24a,24bが上記駆動流体管1の両側上面に一方側から他方側に向けて走行可能に案内支持されており、上記駆動流体管1の両内側面には上下一対の車輪16,19が、上記管内走行体9の走行方向前後の車輪10,11に対応するように垂直軸に図示しない軸受を介して回転可能に軸支され、上記駆動流体管1の両外側面に案内支持されている。
【0018】
また、上記一対の管外走行体29,30は、上記駆動流体管1の下面を跨いで横設された連結部材28により一体的に連結され、この連結部材28の略中央下面には被搬送体38となるカメラ等が装着されている。
【0019】
上記一対の管外走行体29,30の内部には複数の永久磁石から成る従永久磁石群B1,B2が取り付けられており、且つ図示しない磁気シール手段によってこの従永久磁石群B1,B2の磁気漏洩を防止できるようになっており、上記の従永久磁石群B1,B2の詳細については後述する。
【0020】
そして、上記駆動流体管1は、軌道面を構成する外周壁面が直線状平行に設けられており、水平に限らず垂直方向、斜め方向及び湾曲する方向に向くようにも構成されている。
【0021】
上記の例の場合は、建物、施設、設備、炉内等を走行しながら監視する走行装置の被搬送体38としてカメラを装備する例を示したが、これ以外に構造物や装置内部を掃除する清掃具や、ワークを加工する工具でも良い。
【0022】
次に、管内走行体9と一対の管外走行体29,30を磁気吸着結合関係にある主永久磁石群Aないし従永久磁石群B1,B2に付き詳述する。
【0023】
上記主永久磁石群Aは、駆動流体管1内部を流体圧によって一方側から他方側に走行する管内走行体9の内部に収容されると共に、従永久磁石群B1,B2は、上記駆動流体管1両外側面に配設された一対の管外走行体29,30の内部に収容されている。
【0024】
すなわち、上記管内走行体9の内部に配設された主永久磁石群Aと、上記管外走行体29,30の内部に配設された従永久磁石群B1,B2は、互いに対応する各極が異極関係になるように対応するように配設されている。
【0025】
詳しくは、主永久磁石群Aは、管内走行体9の内部に走行方向と直交する方向に複数の棒状の永久磁石1M1,1M2,1M3が並設されて、隣接する永久磁石1M1,1M2,1M3両端の磁極N,Sが、走行方向交互に異極となるように配設されると共に、従永久磁石群B1,B2は、上記永久磁石1M1,1M2,1M3両端の各磁極N,Sに対し、互いに吸着し合う異極関係になるように磁極が対応する複数の永久磁石から成り、上記管外走行体29,30内に収容される従永久磁石群B1,B2の隣接する永久磁石が走行方向交互に異極となるように配設されている。
【0026】
更に、本発明は上記の構成に於いて、更に一対の磁気吸着結合関係にある管内外の走行体9,29,30内の主永久磁石群Aと従永久磁石群B1,B2の内、何れか一方の主永久磁石群A又は従永久磁石群B1,B2の一方側から他方側に沿った端部V,Wに、何れか他方の従永久磁石群B1,B2又は主永久磁石群Aの走行方向に沿った端部V,Wの永久磁石に対して互いに反発する同極となる反発用永久磁石G1a,G1b及びG2a,G2bが設けられている。
【0027】
この図2に示す例では、管外走行体29,30の従永久磁石群B1,B2の一側端部Vには、互いに異極となるよう両端にS極、N極が形成された反発用の永久磁石G1a,G1bを隣接して配設し、他側端部Wには、両端に互いに異極となるS極、N極が配設された反発用の永久磁石G2a,G2bを隣接して配設した例を示してある。
【0028】
これらの反発用永久磁石G1a,G1b及びG2a,G2bは、管内走行体9の主永久磁石群Aの走行方向に沿った片側端部Vの永久磁石1M1のN極及びS極に対して反発するように同極が対応するように配設されている。
【0029】
これにより、管内走行体9が図2に於いてP方向(左側)に走行すると、理論的には管外走行体29,30も主永久磁石群Aと従永久磁石群B1,B2とが異極で対向する磁気吸着結合関係にあるのでP方向に同期して移動するが、実際には管外走行体29,30には慣性があるので、管内走行体9のP方向への移動に同期した移動ができなくなる。
【0030】
そこで、反発用永久磁石G1a,G1bが設けられていることから、管内走行体9の移動によって主永久磁石群Aの永久磁石1M1の左方向Pへの移動により、上記永久磁石1M1の磁極N又はS極に対し反発用永久磁石G1a,G1bの磁極が同極となるよう配設されることで、互いに反発して管外走行体29,30を左方向Pへ押すことになり、慣性があっても、管外走行体29,30のP方向への同期移動がより確実になる。
【0031】
同様に、管内走行体9が図1に示すQ方向に走行すると、管外走行体29,30も主永久磁石群Aと従永久磁石群B1,B2とが磁気吸着結合関係にあるのでQ方向に同期して移動することになるが、実際には管外走行体29,30には慣性があるので、管内走行体9のQ方向への移動に同期した移動ができなくなる。
【0032】
そこで、反発用磁石G2a,G2bが設けられているので、管内走行体9の移動により主永久磁石群Aの永久磁石1M3が右方向Qへ移動することにより、上記永久磁石1M3の磁極N又はS極に対し反発用磁石G2a,G2bの磁極が同極となるよう配設されることで、互いに反発して管外走行体29,30を右方向Qへ押すことになり、慣性があっても、管外走行体29,30のQ方向への同期移動がより確実になる。
【0033】
上記の例では、主永久磁石群A又は従永久磁石群B1,B2を3つの永久磁石として示しているが、これら永久磁石の数は、管内外の走行体の大きさ、形状、速度、その他使用条件等様々な設計及び他の条件に応じて適宜増減しても良く、各単一の永久磁石の長さ、幅、厚さも適宜なものを選択することができる。
【0034】
更に、反発用永久磁石G1a,G1b及びG2a,G2bについても以上までの例では上方の管外走行体29,30の従永久磁石群B1,B2の端部V,Wにそれぞれ隣接して設ける例を示したが、流体圧力によって駆動される管内走行体9の主永久磁石群A一側端部Vと他側端部Wに隣接して、管外走行体29,30の従永久磁石群B1,B2の一方及び他方端部の永久磁石に対して反発する為の反発用磁石を各々設けても良い。
【0035】
以上述べた、各永久磁石の1つ1つは、希土類の材料より成る永久磁石が望ましい。例えばネオジウム・鉄・ボロンを原料とする磁石やサマリウム・コバルトを原料とする磁石等であり、これらの永久磁石は、管内外の走行体9及び29、30に接着剤接合されるか、図示せざるも任意の取付手段を介してしっかりと固定される。又上記実施例では、管内外の走行体9及び29,30は、水平状態で走行する例を示してあるが、垂直走行、斜行走行、カーブ走行等するものである。
【0036】
上記構成に基き、図1、2を参照して走行装置の一連の動作を説明する。先ず、管内走行体9を左方P方向へ走行移動するには、電磁切換え弁7を開くと共に電磁切換え弁8を閉じてコンプレッサー6から圧縮空気を駆動流体管1内の他側Yに供給する。
【0037】
これにより受圧面体15で圧縮空気圧を受けた管内走行体9は、両側面に設けた車輪10,11及び上下一対の車輪12が、駆動流体管1の両側内壁面2a,2b及び上下内壁面2c,2dに案内されてP方向へ移動する。この際は、本実施例では一側Xの電磁切換え弁4を閉じると共に電磁切換え弁5を開き空気の排出を可能にする。これらの速度コントロールは、従来周知の方法を任意に採択できる。
【0038】
上記のように管内走行体9が、他側Yから一側Xへ向ってP方向(左側)へ走行すると、管内走行体9の主永久磁石群Aに対して管外走行体29,30の従永久磁石群B1,B2が磁気吸着結合関係の対になっているので、永久磁石1M1及び1M2,1M3は、従永久磁石群B1,B2に対して磁気吸着するので管外走行体29も左右の車輪10,11ないし上下一対の車輪12によって駆動流体管1の両側内壁面2a,2b及び上下内壁面2c,2dに案内支持されてP’方向へ走行する。
【0039】
次に、図1に示す管内走行体9を右方Q方向へ走行移動するには、電磁切換え弁4を開くと共に、電磁切換え弁5を閉じてコンプレッサー3から圧縮空気を駆動流体管1内の一側Xに供給する。
【0040】
これにより、受圧面体14で圧縮空気圧を受けた管内走行体9は、車輪10〜12が、駆動流体管1の両側内壁面2a,2b及び上下内壁面2c,2dに案内されてQ方向へ移動する。この際は、上記と同様に他側Yの電磁切換え弁7を閉じると共に電磁切換え弁8を開き空気の排出を可能にする。
【0041】
上記のように管内走行体9が、一側Xから他側Yへ向ってQ方向(右側)へ走行すると、管内走行体9の主永久磁石群Aに対して管外走行体29,30の従永久磁石群B1,B2が磁気吸着結合関係の対になっているので、永久磁石1M1及び1M2,1M3は、従永久磁石群B1,B2に対して磁気吸着するので管外走行体29も左右の車輪10,11ないし上下一対の車輪12によって駆動流体管1の両側内壁面2a,2b及び上下内壁面2c,2dに案内支持されてQ’方向へ走行する。
【0042】
以上述べてきたように、本実施例に係る永久磁石を利用した走行装置によれば、駆動流体管1内の左右内壁面に案内支持されて走行する管内走行体9の走行方向前後の車輪10,11と、該管内走行体9に磁気吸着により同期して上記駆動流体管1の両外側面に案内支持されて走行する両管外走行体29,30の車輪16,19の負荷がバランスするので、上記管内走行体9の車輪10,11と両管外走行体29,30の車輪16,19や軌道面の磨耗を軽減することができる。
【0043】
これにより、特に、管内走行体9の車輪10,11の寿命を延長することができ、管内走行体9内の主永久磁石群Aと管外走行体29,30内の従永久磁石群B1,B2相互の吸着力を強力にすることが可能となり、管内走行体9に対する管外走行体29,30の追随走行性を向上することができる。
【0044】
尚、上述した主永久磁石群Aを構成する各永久磁石1M1,1M2,1M3及び従永久磁石群B1,B2を構成する各永久磁石、ないし反発用永久磁石G1a,G1b及びG2a,G2bは、図示しないヨークによって保持されており、各永久磁石の面はヨークの端部よりやや下がった位置に配設される。
【0045】
このようにすることで、磁力線がヨークの端部に集中し、磁気吸着力又は反発力が強くなるもので管内走行体の走行に対する管外走行体の追従性が改善する。
【0046】
次に、永久磁石を利用した走行装置の他の実施例に付き、図3、図4を参照して説明する。図3は、本発明の他の実施例に係る永久磁石を利用した走行装置の走行方向と直交する横断面図、図4は図3のB−B断面図である。なお、上記実施例で述べた構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付してその説明を省略する。
【0047】
本実施例では、管内走行体9内部に収容される主永久磁石群を、幅方向の中央から左主永久磁石群A1’と右主永久磁石群A2’に分割配置したもので、これら両者は磁気的絶縁物で構成された隔壁Hで仕切られている。
【0048】
本実施例では、左主永久磁石群A1’と右主永久磁石群A2’は、両外側にN極が、内側にS極が向くように複数の永久磁石1M1’,1M2’,1M3’が左右対称に配列されており、走行方向には隣接する永久磁石1M1’,1M2’,1M3’が交互に異極となるように配設されている。
【0049】
一方、駆動流体管1の両外側面には、上記実施例と同様に中心に対し対称構造となる一対の管外走行体29,30が配設されており、管外走行体29,30の内部には、従永久磁石群B1’,B2’の各磁極が上記左主永久磁石群A1’及び右主永久磁石群A2’の両外側に向く磁極と互いに吸着し合う異極関係になるように対応している。
【0050】
そして、一対の磁気吸着結合関係にある管内外の走行体9,29,30内の主永久磁石群A1’,A2’と従永久磁石群B1’,B2’の内、何れか一方の主永久磁石群A’,A2’
又は従永久磁石群B1’,B2’の一方側から他方側に沿った端部V,Wに、何れか他方の従永久磁石群B1’,B2’又は主永久磁石群A1’,A2’の走行方向に沿った端部V,Wの永久磁石に対して互いに反発する同極となる反発用永久磁石G1a,G1b及びG2a,G2bが設けられている。
【0051】
これにより、走行方向に沿った端部Vには反発用永久磁石G1a,G1bが設けられていることから、管内走行体9の移動によって主永久磁石群A1’,A2’の永久磁石1M1’の左方向Pへの移動により、上記永久磁石1M1’の磁極N又はS極に対し反発用永久磁石G1a,G1bの磁極が同極となるよう配設されることで、互いに反発して管外走行体29,30を左方向Pへ押すことになり、慣性があっても、管外走行体29,30のP方向への同期移動がより確実になる。
【0052】
また、走行方向に沿った端部Wには、反発用磁石G2a,G2bが設けられていることから、管内走行体9の移動により主永久磁石群A1’,A2’の永久磁石1M3’が右方向Qへ移動することにより、上記永久磁石1M3’の磁極N又はS極に対し反発用磁石G2a,G2bの磁極が同極となるよう配設されることで、互いに反発して管外走行体29,30を右方向Qへ押すことになり、慣性があっても、管外走行体29,30のQ方向への同期移動がより確実になる。
【0053】
このようにすることで、重複する記載は省略するが上記実施例と同様な作用効果を得ることができる。なお、本実施例で述べた主永久磁石群A1’,A2’を構成する永久磁石1M1’,1M2’,1M3’は、隔壁Hに対し両外側にS極が、内側にN極が向くように左右対称に配列することもでき、または各磁極を非対称に配列することができる。この場合も、左主永久磁石群A1’と右主永久磁石群A2’の両外側に向く磁極に対向する管外走行体29,30の各磁極は、互いに吸着し合う異極関係になるよう配設されれば良い。また、上記実施例では、主永久磁石群および従永久磁石群は、複数の永久磁石を並設した構成として説明してきたが、これらは互いに磁気吸着結合する主、従関係が得られる単一の永久磁石どうしで構成できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る永久磁石を利用した走行装置の走行方向と直交する横断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の他の実施例に係る永久磁石を利用した走行装置の走行方向と直交する横断面図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 駆動流体管
1M1〜1M3 永久磁石
1M1’〜1M3’ 永久磁石
2a,2b 両側内壁面
2c,2d 上下内壁面
3,6 コンプレッサー
4,5,7,8 電磁切換え弁
9 管内走行体
10、11,12,13 車輪
14,15 受圧面体
16,19 車輪
17 取付け具
18 サポートアーム
20 係止具
22 支柱
24a,24b 車輪
25,26 両屈曲アーム
28 連結部材
29,30 管外走行体
34 ケース
38 被搬送体
A 主永久磁石群
A1’ 左主永久磁石群
A2’ 右主永久磁石群
B1,B2 従永久磁石群
B1’,B2’ 従永久磁石群
G1a,G1b 反発用永久磁石
G2a,G2b 反発用永久磁石
H 隔壁
K 基台
V 一側端部
W 他側端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台(K)に取付けられて一方側から他方側に向けて延設された駆動流体管(1)と、該駆動流体管(1)内の内壁面(2)に案内されて流体圧によって一方側から他方側に走行する管内走行体(9)と、上記駆動流体管(1)の外側面に支持されて上記管内走行体(9)の走行に追従して走行すべく被搬送体(38)を装備した管外走行体(29,30)と、上記管内走行体(9)内に配設された主永久磁石群(A)と、該主永久磁石群(A)の各磁極に対し互いに吸着し合う異極関係になるよう上記管外走行体(29,30)内に配設されて成る従永久磁石群(B1,B2)とから構成される永久磁石を利用した走行装置に於いて、
上記管内走行体(9)は、上記駆動流体管(1)内の上下、左右の内壁面(2)に車輪を介して支持された状態で走行可能に案内支持され、上記管内走行体(9)の内部には、走行方向と直交する複数の永久磁石から成る主永久磁石群(A)が配設され、且つ上記管外走行体(29,30)は、上記駆動流体管(1)の両側上面に車輪を介して一方側から他方側に走行可能に案内支持されると共に、上記駆動流体管(1)の両外側面に車輪を介して該駆動流体管(1)に沿って走行可能に案内支持される一対の走行体から構成され、上記一対の管外走行体(29,30)には、上記駆動流体管(1)の下面を跨いで連結部材(28)が一体的に連結されて該連結部材(28)の下面には上記被搬送体(38)が装着され、上記主永久磁石群(A)の各磁極に対向する各磁極が互いに吸着し合う異極関係となるように走行方向と直交する複数の永久磁石から成る従永久磁石群(B1,B2)が配列されて成り、上記管内走行体(9)の主永久磁石群(A)と管外走行体(29,30)の従永久磁石群(B1,B2)の内、何れか一方の主永久磁石群(A)又は従永久磁石群(B1,B2)の走行方向に沿った両端部(V)、(W)に、何れか他方の従永久磁石群(B1,B2)又は主永久磁石群(A)の走行方向に沿った両端部の永久磁石に対して互いに反発する同極となる反発用永久磁石(G1a,G1b,G2a,G2b)を設けたことを特徴とする永久磁石を利用した走行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−265363(P2008−265363A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107029(P2007−107029)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(390021485)株式会社相模化学金属 (9)