説明

汎用コンバイン

【課題】天板を開いた状態で、脱穀部の上方側からのメンテナンスを行う汎用コンバインにおいて、上記メンテナンス作業の効率化と、構成の簡略化とを両立させた汎用コンバインを提供することを課題としている。
【解決手段】本発明は、脱穀処理を行う脱穀部22を備え、脱穀部22の外側側面の前端側に梯子39を配置し、該梯子39を介して脱穀部22に登り降りする時に把持する手摺を設け、脱穀部22の上部をカバーする天板33を上下回動可能に支持し、天板33の上下回動によって脱穀部22の上方側が開閉される汎用コンバインであって、上記梯子39の登り降り時に把持可能な天板開閉用取っ手41を、天板33の前端部に設け、該天板開閉用取っ手41を前記手摺と兼用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱穀部のメンテナンスが容易な汎用コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
脱穀処理を行う脱穀部を備え、脱穀部の上部をカバーする天板を上下回動可能に支持し、天板の上下回動によって脱穀部の上方側が開閉され、このようにして上方側を開放することにより、脱穀部内のメンテナンスを行う汎用コンバインが従来公知であるが、脱穀部の上方側の高い位置からメンテナンスを行う必要があるため、作業者は、脱穀部を登り降りする必要があるとともに、高位置にある天板を旨く開閉させる必要がある。
【0003】
このような事情から、梯子と、該梯子を介して脱穀部に登り降りする時に把持する手摺とを、脱穀部の周囲に設けた特許文献1に示す汎用コンバインが公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−187028号公報(第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に示された梯子及び手摺の他に、天板をスムーズに開閉させるために取っ手を設けると、脱穀部の上方側からのメンテナンスをより効率的に行うことができる反面、これらの部材を全て設けると、部品点数が増加して、構成が複雑化し、製造コストが高くなる。
本発明は、天板を開いた状態で、脱穀部の上方側からのメンテナンスを行う汎用コンバインにおいて、上記メンテナンス作業の効率化と、構成の簡略化とを両立させた汎用コンバインを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1に、脱穀処理を行う脱穀部22を備え、脱穀部22の外側側面の前端側に梯子39を配置し、該梯子39を介して脱穀部22に登り降りする時に把持する手摺を設け、脱穀部22の上部をカバーする天板33を上下回動可能に支持し、天板33の上下回動によって脱穀部22の上方側が開閉される汎用コンバインであって、上記梯子39の登り降り時に把持可能な天板開閉用取っ手41を、天板33の前端部に設け、該天板開閉用取っ手41を前記手摺と兼用してなることを特徴としている。
【0007】
第2に、脱穀部22に向かって穀稈を搬送するフィーダ7を脱穀部22の前方に配置し、側面視梯子39の後端が脱穀部22の前端に近接するように、フィーダ7の外側側方且つ脱穀部22の前方に形成されたスペースSに梯子39を配置し、天板33の前部を前方に向かって下降傾斜する傾斜面33aによって構成し、側面視該傾斜面33aに沿って天板開閉用取っ手41が傾斜するように、該天板開閉用取っ手41を傾斜面33aに設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
天板開閉用取っ手と、梯子を介した脱穀部の登り降り時に把持する手摺は、天板を開いた状態で脱穀部のメンテナンス作業を効率的に行ううえで、重要な部材であり、この天板開閉用取っ手が手摺と兼用され、それぞれを各別に設ける必要がないため、構成の簡略化を、上記メンテナンス作業の効率化と併せて図ることが可能になる。
【0009】
また、脱穀部に向かって穀稈を搬送するフィーダを脱穀部の前方に配置し、側面視梯子の後端が脱穀部の前端に近接するように、フィーダの外側側方且つ脱穀部の前方に形成されたスペースに梯子を配置し、天板の前部を前方に向かって下降傾斜する傾斜面によって構成し、側面視該傾斜面に沿って天板開閉用取っ手が傾斜するように、該天板開閉用取っ手を傾斜面に設ければ、梯子を脱穀部に近接させて設け、これによって省スペース化した場合でも、手摺と兼用される天板開閉用取っ手が、適度に梯子から離れた位置に配置されるため、梯子の登り降り時に天板開閉用取っ手を把持し易くなる他、天板の曲げ部分に取っ手を設けたため、天板の変形も防止される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用した汎用コンバインの側面図である。
【図2】本発明を適用した汎用コンバインの平面図である。
【図3】脱穀部の上部側をメンテナンスする際の状態を示す汎用コンバインの要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び図2は、本発明を適用した汎用コンバインの側面図及び平面図である。図示する汎用コンバインは、稲や麦や豆類等の作物の刈取作業を行うものであり、該汎用コンバインは、左右一対のクローラ式走行装置1L,1Rを有する走行機体2と、走行機体2の前方に昇降駆動可能に連結された刈取部3と、左右方向に延びる筒状のリール4と、該リール4を昇降可能及び前後動可能に刈取部3側に支持する可動機構6とを備えている。
【0012】
上記刈取部3は、後側半部のフィーダ7及び前側半部の刈取フレーム8を一体的で備え、刈取フレーム8の左右の側壁からは前方に向かって分草体9が突出され、刈取フレーム8の左右の側壁間における下部且つ後部には、左右方向に延びる円柱状の掻込オーガ11が軸回りに回転駆動可能に支持され、該掻込オーガ11の前方には、左右方向のレシプロ式の刈刃12が設置されている。ちなみに、平面視刈取フレーム8の左右の側壁間に前記リール4が位置している。
【0013】
フィーダ7は、刈取った作物の穀稈を後方搬送する前後方向のフィーダコンベア13をフィーダケース7a内に備え、全体が後述する走行機体2側の操縦部14の側方に位置しており、このフィーダ7の後端部が走行機体2の前部に支持されている他、刈取フレーム8は操縦部14の前側からフィーダ7の前側に至る左右範囲に形成されている。
【0014】
上記リール4は、周囲及び左右両側方が内外で連通し且つ内部が空洞となる左右方向の角柱状に成形され、このリール4は、回動軸17によって、自身の軸回りに回転駆動可能に、可動機構6に支持されている他、リール4の周囲には、所定間隔毎にリールタイン18が配設されている。
【0015】
回転するリール4によって掻込まれた圃場の作物の穀稈は、左右に往復スライド駆動される刈刃12によって刈取られ、掻込オーガ11によってフィーダ7側に掻込まれる。フィーダ7側に導入された作物の穀稈は、フィーダコンベア13によって走行機体2側まで後方搬送される。ちなみに、可動機構6によってリール4が刈取部3に対して昇降又は前後動されることにより、リール4の前後及び上下の位置調整が行われる。
【0016】
上記走行機体2の左側半部には、刈取った稲や麦等の穀稈の脱穀処理を行うとともに該脱穀処理された処理物から籾等の穀粒を選別する脱穀部22が設置され、走行機体2の右側半部には、脱穀部22からの穀粒を蓄えるグレンタンク23が配設され、グレンタンク23の前方には、オペレータが乗込む前記操縦部14が設置されている。
【0017】
脱穀部22は、フィーダコンベア13からの作物の穀稈が導入される扱室24と、扱室24の真下側に形成された選別室26とを備え、扱室24内には、前後方向に延びる円柱状の扱胴27が自身の軸回りに回転自在に軸支され、選別室26内の上部には、前後動する揺動選別体28が設置され、選別室26内の下部前側には、後方斜め上方の選別風を起風する唐箕ファン29が配置され、選別室26内の下部の前後方向中途部には、一番ラセン31と、二番ラセン32が前後に配置されている。
【0018】
フィーダ7から脱穀部22に導入された穀稈は扱室24内の回転する扱胴27によって後方搬送されながら脱穀処理され、その処理物は、選別室26に落下する。選別室26に落下した処理物は揺動選別体28によって揺動選別されるとともに、上記選別風によって選別(風選)される。
【0019】
具体的には、選別風の影響を受けずに前側の一番ラセン31に落下する一番物と、選別風の影響を若干受けて後側の二番ラセン32に落下する二番物と、選別風の影響を受けて後方斜め上方に吹上げられる藁屑等の排出物とに選別される。ちなみに、一番物は穀粒としてグレンタンク23内に搬送され、二番物は選別室26内に再度導入されて風選され、排出物は走行機体2の後端側から機外に排出される。
【0020】
該構成の脱穀部22は、扱室24の上方が天板33によってカバーされ、扱室24の外側側方が側板34によってカバーされ、選別室26の前部の外側側方が前カバー36によってカバーされ、選別室26の中途部及び後部の外側側方が後カバー37によってカバーされている。
【0021】
具体的には、天板33が、左右内側端部を支点に上下回動するように、脱穀部22に支持され、側板34が、上端部を支点に上下回動するように、脱穀部22に支持されている。天板33は、上方に回動する開操作によって、扱室24の上方を開状態とする一方で、下方に回動する閉操作によって、扱室24の上方を閉状態とする。また、側板34は、左右外側に回動する開操作によって、扱室24の外側側方を開状態とする一方で、左右内側に回動する閉操作によって、扱室24の外側側方を閉状態とする。
【0022】
グレンタンク23内の穀粒は、走行機体2の後端部に支持された排出オーガ38によって機外に排出される。具体的には、全体が上下揺動可能且つ水平回動可能なように排出オーガ38の基端部が走行機体2の後端部右側に支持され、該排出オーガ38の先端部には穀粒を排出する排出部38aが設けられており、上下揺動又は水平回動によって排出オーガ38の排出部38aを所定位置に移動させ、その場で穀粒を排出させることができる。
【0023】
次に、図1乃至図3に基づいて、脱穀部22のメンテナンス手段を説明する。
図3は、脱穀部の上部側をメンテナンスする際の状態を示す汎用コンバインの要部正面図である。上記汎用コンバインでは、天板33を開いて開放し、扱胴27等のメンテナンスを脱穀部22の上方側から行う際、脱穀部22に登る必要があり、このため、脱穀部22を登り降りする梯子39を脱穀部22の外側側面の前端側に設けるとともに、梯子39を介した脱穀部22の登り降り時に把持する手摺41とを設け、該手摺41が天板33を回動させる際に把持する天板開閉用取っ手と兼用されるようにする。以下詳細を説明する。
【0024】
上記天板33は、閉状態で、脱穀部22の上面の中央側に位置し、天板33の前部が、前方に向かって下降傾斜した前傾斜面(傾斜面)33aになり、天板33の左部が左側方に向かって下降傾斜した左傾斜面33bになり、天板33の右部が右側方に向かって下降傾斜した右傾斜面33cになる。
【0025】
上記手摺としても機能する天板開閉用取っ手41は、丸パイプを正面視逆U字状に屈曲形成することにより構成され、天板33の前端部に取付固定されている。具体的には、天板開閉用取っ手41は、右方向に水平の延びる水平部42と、水平部42よりも左寄りに位置して左側方に向かって下降傾斜した左傾斜部43Lと、水平部42よりも右寄りに位置して右側方に向かって下降傾斜した右傾斜部43Rと、左右の傾斜部43L,43Rにおける下部後端側から互いに近づく側に一体的に延設された取付座44、44とから構成されている。
【0026】
そして、左右の取付座44,44を天板33の前傾斜面33aに面接触させた状態でボルト固定することにより、天板開閉用取っ手41を天板33の前端部に取付けると、該天板開閉用取っ手41は、側面視前傾斜面33aに沿って傾斜するとともに、正面視左右の傾斜部43L,43Rが天板33の左右の傾斜面33b、33cに沿って傾斜した状態になる他、この天板開閉用取っ手41が前傾斜面33aから1個分前側に突出した状態になる。該構成によって、天板開閉用取っ手41は、左右に傾斜面33b、33cを有する天板33の左右幅中の大きな範囲に設置することが可能になる。
【0027】
上記梯子39は、前後に所定間隔を介して並べられた一対の縦フレーム46,46と、縦フレーム46,46間に架設された前後方向(横方向)の横フレーム47とから構成され、この横フレーム47は、上下方向に所定間隔毎に複数並列配置されている。この梯子39は、脱穀部22に向かって穀稈を搬送するフィーダ7の外側側方且つ脱穀部22の前方に形成されたスペースSに配置され、側面視梯子39の後端が脱穀部22の前端側に位置している。そして、この梯子39は、脱穀部22の下端高さから、天板開閉用取っ手41の下端側の高さに至る上下範囲に形成され、ブラケット48を介して、脱穀部22の前端側に取付固定されている。
【0028】
ちなみに、オーガ38は、未使用時、走行機体2の後端部右側から刈取部3の左側に至る範囲に倒伏した状態で、収納されている。
【0029】
該構成の汎用コンバインによれば、作業者Pは、手摺41の左傾斜部43L又は水平部42を把持し、梯子39の横フレーム47に足を掛けた状態で、脱穀部22の登り降りを容易に行うことができる他、この登り降り時に、未使用状態のオーガ38に掴まって、登り降りを行うことも可能である。そして、脱穀部22の上面において、天板33の周囲を囲繞するように形成されたステップ22aに足を乗せた作業者Pは、ロックを解除して、天板33を開け、脱穀部22の上方側から扱胴27等のメンテナンスを効率的に行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0030】
7 フィーダ
22 脱穀部
33 天板
33a 前傾斜面(傾斜面)
39 梯子
41 天板開閉用取っ手(手摺)
S スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀処理を行う脱穀部(22)を備え、脱穀部(22)の外側側面の前端側に梯子(39)を配置し、該梯子(39)を介して脱穀部(22)に登り降りする時に把持する手摺を設け、脱穀部(22)の上部をカバーする天板(33)を上下回動可能に支持し、天板(33)の上下回動によって脱穀部(22)の上方側が開閉される汎用コンバインであって、上記梯子(39)の登り降り時に把持可能な天板開閉用取っ手(41)を、天板(33)の前端部に設け、該天板開閉用取っ手(41)を前記手摺と兼用してなる汎用コンバイン。
【請求項2】
脱穀部(22)に向かって穀稈を搬送するフィーダ(7)を脱穀部(22)の前方に配置し、側面視梯子(39)の後端が脱穀部(22)の前端に近接するように、フィーダ(7)の外側側方且つ脱穀部(22)の前方に形成されたスペース(S)に梯子(39)を配置し、天板(33)の前部を前方に向かって下降傾斜する傾斜面(33a)によって構成し、側面視該傾斜面(33a)に沿って天板開閉用取っ手(41)が傾斜するように、該天板開閉用取っ手(41)を傾斜面(33a)に設けた請求項1記載の汎用コンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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