説明

汗よりのグリコアルブミン判定方法、および測定方法およびキット

【課題】これまでグリコアルブミンの測定法は、血液を用いて測定が実施されてきたが、採血による痛みが強くまた感染の危険性が高いために、被験者への負荷を軽減する方法を提供する。
【解決手段】汗を用いたグルコアルブミン測定方法を提供する。非侵襲・非観血で実施でき、痛みを伴わなく、また感染の危険性がなく、被験者への負荷を軽減し、かつ簡単で手軽に測定でき、血液中のグルコアルブミン濃度を判定できる、グルコアルブミンによる疾病の健康管理に有効な手段である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリコアルブミンの測定方法および測定キットに関する。また前記測定方法により得られた結果をもちいた発症リスクの判定方法、糖尿病態の判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病の血糖コントロールに関する指標には、いくつかの種類がある。それらはヘモクロビンA1c(HBA1c)、グリコアルブミン、フルクトサミンなどである。グリコアルブミンはアルブミンの半減期が17日間程度であるため、過去2週間から1ヶ月の血糖コントロールを反映する。HBA1cは過去の血糖値の反映は1〜2月間であり、グリコアルブミンのほうがHBA1cに比べて、早く大きく変動するので、治療効果の把握や薬剤投与の指標になる。このためにグリコアルブミンの臨床的な重要性があり、この測定方法の進歩が期待されている。
【0003】
血液からのグリコアルブミンの測定法については、血清分離の前処理を要せずに、グリコアルブミン値の測定を乾式試験具の提供について開示されている(特許文献1)。血清試料を分解して、グリコアルブミン由来のアミノ酸を測定することによる特定たんぱく質の糖化割合、グリコアルブミン割合の測定に関する方法が開示されている(特許文献2)。
しかしながらこれらのいずれもが、ヒトの血液を直接分析対象とした測定方法であり、あらかじめ血液採取を実施することが必要である。
【0004】
血液の採取はヒトに痛みを与え、また感染症の危険を伴う。非侵襲的な測定試料の採取とその試料の小型測定キットの開発が課題である。特に長期の治療を必要とする疾患に関しては非常に需要であり、また在宅での適用についても非侵襲的な測定方法であれば広く安全に適用ができる。非侵襲的、非観血的な測定試料としては唾液や、呼気、尿、汗などがある。
【0005】
ヒト汗を試料とする測定方法は優れて非侵襲的、非観血的である。この方法のための汗の採取についてはこれまで開示されている(特許文献3および特許文献4)。
【0006】
汗を採取し、汗中グルコース成分量について液体クロマトグラフィーにより測定した方法が開示されている。また汗中グルコース値は血糖値とのゆるやかな相関が開示されている(特許文献3)。
【0007】
【特許文献1】特許出願平7−308101
【特許文献2】特許出願2004−149230
【特許文献3】特許公開2003−315340
【特許文献4】特許公開2005−230188
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ヒト汗を試料とする測定方法は優れて非侵襲的、非観血的である。糖尿病疾患の病態把握にとって重要であるグリコアルブミン測定が汗を用いて実現されれば、健康管理に非常に大きな役割を果たす。手軽に得られる汗を試料とするグリコアルブミン測定は、いまだ開示されていない。汗を試料とするグリコアルブミン測定方法を提供し、血中グリコアルブミン値の変動の判定に関する新たな病態把握方法を提供する。汗を用いたグリコアルブミン測定はきわめて非侵襲的、非観血的であり、広く在宅医療に提供できる健康管理手法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
汗中のグリコアルブミンを測定することを特徴とする測定方法と手段である。汗としては皮膚表面に蓄積された汗をエタノール水溶液などの液体を用いて収集されたものを用いることができる。収集した汗中のグリコアルブミンの測定はエライザ法やそのほかの従来の測定方法を用いることができる。本発明は個人が簡便に実施することができるキットも提供する。
【実施例】
【0010】
次に、本発明の実施例を添付図面に沿って説明する。図1および図2は本発明により汗を検体とするグリコアルブミンを測定する方法を実施するための装置を示す。この装置は、測定前の環境設定(A)と、収集液噴霧による汗成分収集部(B)と、濃縮工程部(C)と、演算制御部(D)、計算器への表示(E)から構成している。汗収集部は検体液収集管▲10▼と、濃縮管▲7▼と、これを加熱するための加熱部▲4▼と、これに付随して開口部▲9▼と、専用蓋▲8▼を構成する。また検体液収集管▲10▼内には、発汗量計測部▲1▼と、指先表面計測部▲2▼と、汗回収に用いる収集液の吐出コントロール▲3▼を配置する。図2の濃縮部においては突沸防止用中空細管▲11▼を配置し、▲4▼による加熱を実施して濃縮を行なう。図2の測定評価部分においては、図1の演算制御部(D)と計算器への表示(E)で構成し、これらは図2の高感度旋光計測器▲5▼と、表示パネル▲6▼と、濃縮管▲7▼とからなる。
【0011】
以上の構成からなる測定装置の演算制御部(D)による、汗中グリコアルブミンの収集、濃縮と、測定動作を図3示すフローチャートに従ってステップ101〜113を用いながら説明する。まず、ステップ101で所定の検体収集管に指先を挿入する。このときの最適条件可否データが予め演算制御部へ出力される。次にステップ102にて指先の発汗量を計測する。ステップ103では測定対象となる指先面積を計算する。ステップ104では指先全面に、予め決められた収集用噴霧液を噴霧する。ステップ105では収集量が適切かどうかの判断を行い、OKの場合はステップ106にその作業を進める。
ステップ106では加熱(ヒーターあるいは超音波等、熱負荷装置を用いて)により所定の量まで液体の濃縮を行う。ステップ107で濃縮状態を判断して次のステップへ作業を進める。ステップ108では前段階で濃縮された検体を分析器(例えば旋光測定法)にマウント移動する。ステップ109、でそれらの分析を行い濃縮度、発汗量、指先面積等、個体差に関する情報データの演算制御をステップ110で各種データと共に累積作業を行う。ステップ111ではこれらのデータをパネルに表示し、その分析作業を完了させる。ステップ112では検体の排出を行い、次のステップへ進める事が可能である。
【0012】
図2の(イ)、(ロ)、(ハ)を分析キットとして構成することができる。
【0013】
実施分析例に従って説明する。汗中のグルコアルブミンを測定することを特徴とする測定方法と手段で、まず汗の収集について説明する。汗を収集するための水溶液として、人差し指の第二関節から指の先端までの部分に1%エタノールを含む水溶液を用いて、この溶液の噴霧により皮膚表面にたまったグルコアルブミンを回収した。同時に指先の発汗量についても測定して得た。
【0014】
次に汗収集液の濃縮について説明する。
内径8mm、たけ50mm長のガラス製濃縮管に0.5mlには汗を収集した水溶液がある。内径0.5mm、長さ65mmのポリフロロエチレンチューブを前期濃縮管に入れる。ついでこの濃縮管(図2の▲7▼に相当)底部を加熱した金属製のプレートに接触させた。底部で発生した気泡はポリフロロエチレンチューブ内部を通過して水面より突き出た中空細管の上端より放出されるので、非常にスムーズに汗を含む収集した水溶液が濃縮され、収集液の体積が約3分間で0.1mlまで5倍に濃縮できた。この手順は別に特許出願中(整理番号Hi−PICO−1)である。
【0015】
次に濃縮した汗収集液中のグルコアルブミンの測定について説明する。この濃縮液を図2に示す高感度旋光計測器▲5▼に示す所定の測定評価器システムにマウント、評価したところ、水溶液中のグリコアルブミン濃度が定量出来た。
汗中のグリコアルブミン測定システムとして、汗の水溶液を得る過程、汗を含む水溶液の濃縮、検出の3工程を含んでいる。
【0016】
図4は本発明の一実施測定例を示した。すなわち、血液中グリコアルブミン成分と汗中のグルコアルブミンの相関関係を示す。汗中グルコアルブミン濃度は本発明の方法により測定している。図4は被験者6名から得た汗中グルコアルブミン濃度が、同時に採血し測定した血中グリコアルブミン濃度と良好な直線関係にあることを示している。これにより汗中グルコアルブミン濃度から、血液中のグリコアルブミン濃度を判定することができることを示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
汗中グルコアルブミン測定システムとしては、人差し指の第二関節から指のまでの部分を1%エタノール水溶液を噴霧により皮膚表面にたまったグルコアルブミンを収集した水溶液0.5mlを得て、ついで濃縮管をもちいて濃縮し、ついでこの濃縮液を所定の例えば、感度旋光計測器にて評価し、水溶液中のグリコアルブミン濃度を定量検出する。
【0018】
糖尿病などの疾患を有する人は、図2に示す(イ)〜(ハ)のキットを使用する。または図2に示す(イ)と(ロ)のみのキットを使用し、(ハ)のキットは複数の人が使用できる場所、たとえば保健所などに設置して共用することも可能である。
【0019】
本発明の汗中グリコアルブミン測定法は、糖尿病患者の健康管理に用いることができる。またこれまでの簡易グルコース測定法と併用して、より詳しく健康状態を管理することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
患者さんの症状を確認する際、非侵襲・被観血で検体を採取し測定できることにより、痛みを伴わないで種々の検査ができるので、患者の健康管理において有効である。例えば心臓疾患にて特にワーファリン服用者においては出血に際してきめ細かな注意が必要であり、本発明の侵襲作業を伴わない測定手段は効果がある。また妊産婦糖尿病や、糖尿病疾患が進行した方は特に感染症などの注意が必要であるがこれらの方においても非侵襲作業により安全性が高められる効果が可能となる。また採血の際に血液を微量でも使用すると、血液による他の人への感染の危険があり、本発明の方法を採用すれば、この危険性を除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】検体測定の流れを示す。
【図2】汗収集部及び濃縮部及びグリコアルブミン測定評価器を示す。
【図3】検体測定流れに判定を加えた場合の流れを示す。
【図4】被験者名の汗中グリコアルブミン濃度と血中グルコアルブミン濃度の相関関係を示す。
【符号の説明】
【0022】
▲1▼.発汗量計測部
▲2▼.指先面積計測部
▲3▼.吐出液コントロール
▲4▼.加熱濃縮
▲5▼.高感度旋光計測器
▲6▼.パネル
▲7▼.濃縮管
▲8▼.フタ
▲9▼.開口部
▲10▼.検体収集管
▲11▼.中空細管
101〜113 操作のステップを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
採血の代わりに、ヒト汗を採集し、グリコアルブミン測定法による汗中グリコアルブミンを測定する方法。
【請求項2】
ヒト汗を採集し、汗中グリコアルブミンを測定する方法を特徴とする血液中グリコアルブミン値の判定方法
【請求項3】
ヒト汗を採集し、汗中グリコアルブミンを測定する方法を特徴とする血液中グリコアルブミン値の判定方法による糖尿病の健康管理評価方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−48791(P2010−48791A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243289(P2008−243289)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(504253980)有限会社ピコデバイス (11)
【出願人】(394000493)ヒーハイスト精工株式会社 (76)
【Fターム(参考)】