説明

汚染土壌の浄化方法および浄化装置

【課題】汚染物質をより高い収率で回収できる汚染土壌の浄化方法および浄化装置を提供する。
【解決手段】汚染物質を含み且つ粒子径0.075mm以上の粗粒土壌粒子と粒子径0.075mm未満の細粒土壌粒子とで構成される土壌粒子8を、粗粒土壌粒子の2〜40質量%を細粒土壌粒子に移行する摩砕処理を行い、摩砕処理後の粗粒土壌粒子と細粒土壌粒子に水を加えて土壌スラリー9とし、土壌スラリー9を浄化槽(柱状分離回収機)4内に供給し、浄化槽4の下部から土壌スラリー9に向けて空気を供給して、土壌粒子8の一部を泡沫10とともに浮上させて回収し、土壌粒子8に含まれる細粒土壌粒子および粗粒土壌粒子の残部を浄化槽4に沈降させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属や油などで汚染された土壌を浄化するための浄化方法および浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土壌と重金属との選別には、浮遊選鉱の原理を応用した泡沫浮上法が行われている。その装置としては、鉱山設備を流用できることから、インペラの回転を利用した一般的な浮選機が利用されてきた(例えば特許文献1)。ところが、建設費や操業費が高いうえ、大きな設置床面積を必要とするという課題があった。
【0003】
そのため、選鉱分野では、近年、反応塔内で鉱石パルプと空気とを向流接触させるカラム浮選機が導入されている。カラム浮選機は、円筒または角柱状の外形を有し、底部に気泡発生装置、中間部に給鉱部、最上部に浮鉱排出口を備えている。最上部からは洗浄水がスプレーされ、尾鉱は底部から排出される。カラム浮選機は、給鉱部よりも上側に、スプレー水により洗われて土壌の精選が進行するクリーニングゾーン(精選域)、給鉱部よりも下側に、給鉱中の浮き易い粒子を気泡で捕集して上部へ送るリカバリーゾーン(捕集域)を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−186056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、カラム浮選機は、得られる精鉱品位が向上する反面、収率は従来型浮選機より劣るため、主に精選工程に導入されてきた。しかし、鉱山設備を土壌浄化装置として用いる場合には、精鉱の濃縮効果は重要ではなく、汚染物質の収率を上げることが要求される。また、一般的に、細粒化するほど精選効率が向上するため、カラム浮選機は、鉱石がよく細粒化されたスラリー、例えば50%分級点が130μm程度まで摩砕されたスラリーを対象に使用されている。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、汚染物質をより高い収率で回収できる汚染土壌の浄化方法および浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては、摩砕機にて粉砕媒体を用いて、汚染物質を含有している所定粒度範囲の土壌粒子の表面を強く研磨して細粒化し、スラリー原料である汚染土壌を、比較的細かい汚染物質粒子と、汚染物質が剥離された比較的粗い土壌粒子とに分ける。また、高さを有する浄化槽を用い、土壌スラリー中の粗粒土壌粒子と細粒土壌粒子との沈降分離スピードの差を利用することで、汚染物質が濃縮している細粒土壌粒子を上部から越流させ、分級する機能を有する。さらに、浄化槽に気泡を導入することによって、界面活性化させた細粒土壌粒子および粗粒土壌粒子の一部を気泡に付着させ越流させることにより、分級効果のみでは粗粒に分級される粗粒土壌粒子までも効果的に浮上させて回収する。あるいは、浄化対象とする土壌の汚染物質が油あるいはその他の疎水性化学物質のみに限られる場合は、摩砕機を用いずに分離回収機のみを用いてもよい。
【0008】
すなわち、本発明は、汚染物質を含み且つ粒子径0.075mm以上の粗粒土壌粒子と粒子径0.075mm未満の細粒土壌粒子とで構成される土壌粒子を、前記粗粒土壌粒子の2〜40質量%を前記細粒土壌粒子に移行する摩砕処理を行い、前記摩砕処理後の粗粒土壌粒子と細粒土壌粒子に水を加えて土壌スラリーとし、前記土壌スラリーを浄化槽内に供給し、この浄化槽の下部から前記土壌スラリーに向けて空気を供給して、前記土壌粒子の一部を泡沫とともに浮上させて回収し、前記土壌粒子に含まれる細粒土壌粒子および粗粒土壌粒子の残部を前記浄化槽に沈降させることを特徴とする汚染土壌の浄化方法を提供する。
【0009】
この浄化方法において、前記土壌スラリーを前記浄化槽の上部から前記浄化槽内に供給し、沈降した土壌スラリーを前記浄化槽の下部より排出し、このときの前記土壌スラリーの供給速度を排出速度よりも大きくして越流を発生させてもよい。
【0010】
前記土壌スラリーにおいて、土壌粒子の濃度を10〜70質量%に調整することが好ましい。さらに、前記摩砕処理で、前記粗粒土壌粒子の5〜30質量%を前記細粒土壌粒子に移行することが好ましい。前記汚染物質が重金属でもよい。
【0011】
さらに、本発明は、摩砕手段と、土壌スラリー貯留槽と、浄化槽とが順次連結された汚染土壌の浄化装置であって、前記浄化槽は、スラリー供給手段と、空気供給手段と、上部排出手段と、下部排出手段を備え、前記摩砕手段では、汚染物質を含む土壌粒子が摩砕処理され、前記土壌スラリー貯留槽では、摩砕された前記土壌粒子に水を加えた土壌スラリーが貯留され、前記浄化槽では、前記スラリー供給手段から前記土壌スラリーが供給され、前記空気供給手段から空気が供給され、前記上部排出手段から泡沫及び/又は越流水が排出され、前記下部排出手段から沈降物が排出されることを特徴とする汚染土壌の浄化装置を提供する。
【0012】
前記空気供給手段は、孔径0.005mm〜50mmの孔を複数有する散気装置でもよい。また、前記空気供給手段による空気の散気速度が、前記浄化槽の断面積に対して1〜400m/m/hでもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、汚染土壌の一部を一定粒度まで摩砕処理することで、汚染物質と土壌粒子とが効率よく分離され、効果的な浄化が可能となる。また、粗粒を含む汚染土壌であっても、汚染物質粒子を高い収率で回収できるため、粗粒粒子を含む大容量のスラリー状汚染土壌を、小面積のスペースで浄化処理することが可能となる。
【0014】
さらに、本発明によれば、柱状分離回収機には、大型の回転インペラ等の駆動や広い設置床面積が必要ではなく、低コストで実現可能であり、しかも汚染物質粒子の分離回収能力が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による汚染土壌の浄化装置の概略図である。
【図2】実施例1における処理バランスを示す図である。
【図3】実施例2〜5、比較例1における粗流土壌の移行率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。
【0017】
本発明は、鉛等の重金属や油などで汚染された土壌を浄化する方法であって、使用場所を問わず広く実施することができる。本発明では、汚染物質を含んだ土壌を、予め水を加えてスラリー化した状態で浄化装置へ供給することを原則とする。
【0018】
図1は本発明にかかる浄化装置1の例であり、汚染物質を含む土壌粒子8を摩砕する摩砕機2、土壌粒子8を摩砕処理した後に水を加えてスラリー状にした土壌スラリー9を一時的に貯留する土壌スラリー貯留槽3、土壌スラリー9を浄化する浄化槽として用いられる柱状分離回収機4、柱状分離回収機4へ空気を供給する空気供給装置5を備えている。
【0019】
図1では省略しているが、摩砕機2に入れる前の土壌粒子は、粒子径0.075mm未満の細粒土壌粒子と、それよりも大きい粒子径の粗粒土壌粒子とを含む。これら土壌粒子としては、例えば、最大粒子同士の粒径差が25〜30倍となるものが使用できる。
【0020】
摩砕機2では、粉砕媒体12を用いて、粗粒土壌粒子の2〜40質量%が細粒土壌粒子に移行するように摩砕する。汚染物質の除去効率をより高める点からは、細粒土壌粒子への移行率を5〜30質量%とすることが好ましい。例えば2mm〜0.075mmの粒度範囲内の粗粒土壌粒子は、摩砕することで、汚染物質粒子と、汚染物質粒子が剥離された清浄土壌粒子とに分離される。このように摩砕処理をすることで汚染物質が効率に除去でき、処理後の土壌粒子の再利用が可能となる。なお、各粒度範囲に含まれる土壌質量の比率は、JIS規格‐標準ふるい (公称目開き0.075mm,0.15mm,0.3mm,0.5mm,1.0mm,2.0mm,5.0mm,10.0mmを使用)を使用して求める。分級装置は、例えば、湿式サイクロンやハイメッシュセパレーターなどを使用できる。
【0021】
摩砕機2は、例えば円筒形状の回転体からなる摩砕機本体11の内部に、所要量の粉砕媒体12を入れたものであり、汚染土壌粒子8を摩砕する機構を有する装置として一般的な各種ミルやスクラバー等の湿式摩鉱機を用いることができる。粉砕媒体12としては、例えば、直径10mm〜300mm(好ましくは15mm〜150mm)の金属製(好ましくは鉄製)のボールや、直径20mm〜300mm(好ましくは30mm〜200mm)の金属製(好ましくは鉄製)のロッドが用いられる。摩砕機2に入れる粉砕媒体12の量は、例えば500kg〜150000kgとする。なお、摩砕機2は、複数台を組み合わせて使用してもよく、使用する粉砕媒体12の種類や大きさは、対象とする汚染土壌に応じて決定するのが好ましい。また、状況に応じて、湿式サイクロンを併用することで閉回路を用いることもできる。
【0022】
土壌スラリー貯留槽3は、土壌スラリー9を一時的に溜めることができる機能を有していれば、その形状や材質は問わない。土壌スラリー貯留槽3内には、一般的な攪拌機能を有するインペラや水中ミキサ等の攪拌手段を用いたスラリー攪拌機を備えることが好ましい。
【0023】
さらに、土壌スラリー貯留槽3には、柱状分離回収機4へ土壌スラリー9を供給するための供給ポンプ13と、土壌スラリー9の移送経路となるスラリー供給配管14が設けられている。
【0024】
柱状分離回収機4は、本体21が好ましくは高さ1m以上(さらに好ましくは3m〜15m)の柱状であり、形状は円筒や四角柱、その他の任意の形状の柱状で構わない。柱状分離回収機4の本体21に、スラリー供給配管14を移送されてきた土壌スラリー9を柱状分離回収機4内へ供給するためのスラリー供給口25が設けられている。スラリー供給口25は、本体21の中間よりも上部に設けることが、効率的な分離回収を行うために好ましい。本体21の下方には、柱状分離回収機4の底部から一定量のスラリー状沈降産物を排出する機能を有する引き抜きポンプ22が設けられ、さらに本体21の底部に散気装置23が配置される。また、柱状分離回収機4の最上端には、汚染物質を捕集した泡沫10を越流回収する泡沫排出口24が設けられている。これらの基本的な構造に加えて、本体21の下方の側面から、例えば0.5mm以下程度の所定粒度の粒子を含む土壌スラリー9を抜き出し、再度柱状分離回収機4内の上方へ導入するための閉回路システム26を設けてもよい。
【0025】
空気供給装置5としては、一般的な散気装置であるコンプレッサやルーツブロアを用いることができるが、これらの形式に限定されることはない。空気供給量は、柱状分離回収機4の断面積1m当り1〜400m/h(好ましくは10m/m/h〜300m/m/h)とする。空気供給装置5からの空気は、散気装置23へ供給される他、スラリー供給配管14や閉回路システム26へも供給可能であり、配置位置は図1の例に限らない。
【0026】
散気装置23としては、孔径0.005mm〜50mmの複数の孔を有する散気管、メンブレン等のディフューザ、または、空気あるいは空気と水のジェット式エアレータ等が用いられ、気泡径5μm〜50mm(好ましくは0.1mm〜20mm)の気泡を発生させる。散気装置23は、上記のうちいずれか一種類ではなく、複数の装置を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
さらに、柱状分離回収機4の最上端において、汚染物質粒子を付着した泡沫10の泡沫排出口24への越流性を助長するために、回転式のパドル等を設けてもよい。
【0028】
以上の構成を有する浄化装置1による汚染土壌の浄化方法について説明する。
【0029】
例えば鉛等の重金属による汚染物質を含む例えば2mm〜0.075mmの粒度範囲内の粗粒土壌粒子8を、摩砕機2に供給する。摩砕機2では、粉砕媒体12によって土壌粒子8が摩砕され、摩砕処理された土壌が土壌スラリー貯留槽3へ送られる。なお、汚染物質の種類によって、土壌スラリー貯留槽3へは、粒子が10mm以下(好ましくは2mm以下)となるように分級で粗粒を除去するか、摩砕機2によって粗粒の粉砕を行ってから、土壌を供給する。
【0030】
土壌スラリー貯留槽3内において、土壌は、必要に応じて水で希釈され、スラリー濃度10%〜70質量%に調整された土壌スラリー9となって、供給ポンプ13、スラリー供給配管14を介して、柱状分離回収機4へ移送される。また、土壌スラリー貯留槽3では、土壌スラリー9に気泡剤の添加が行われる。使用する気泡剤は、一般的な気泡剤でよく、必要に応じて、条件剤、活性剤、捕集剤、抑制剤などを添加してもよい。
【0031】
柱状分離回収機4の中間よりも上部に設けられたスラリー供給口25から、土壌スラリー9が供給されるとともに、柱状分離回収機4の下部の散気装置23から気泡が吹き付けられ、土壌スラリー9と気泡が接触する。これにより、汚染物質を含む細粒土壌粒子、例えば、疎水性あるいは疎水化した汚染物質を含む細粒土壌粒子、コロイドが、泡沫とともに柱状分離回収機4の上方へ浮上する。この汚染物質を含む泡沫10を泡沫排出口24から排出させ、フロスとして回収する。一方、土壌スラリー9中の粗粒土壌粒子は徐々に沈降し、柱状分離回収機4の底部から、引き抜きポンプ22を介して、沈降産物として排出される。なお、ここで、フロスとは、洗浄液中に浮遊する汚染物質、またはこれを含んだ土砂の細粒分等が気泡剤に吸着(捕集)された絹綿状の浮遊物を示す。
【0032】
なお、供給ポンプ13による土壌スラリー9の供給量と、引き抜きポンプ22による沈降産物の引き抜き量を調整管理することにより、柱状分離回収機4内の水位を一定に保つようにする。あるいは、引き抜きポンプ22による沈降産物の引き抜き量よりも、供給ポンプ13による土壌スラリー9の供給量を多くして、沈降速度が速い粗粒土壌粒子を急速に沈降させ、沈降速度の遅い細粒土壌粒子を越流水とともに回収することによって、土壌スラリー9中の粒子から剥離された汚染物質の細粒粒子を除去することもできる。
【0033】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
以上述べた条件に基づいて、本発明にかかる浄化装置により、汚染土壌の浄化処理を実施した。
【0035】
先ず、汚染土壌に分級処理を施して2mm超の礫石を除いた。摩砕処理に用いる摩砕機2として、直径40mm以下の鉄球を1750kg充填した直径1800mm、長さ4000mmの第一のスクラバーと、直径40mm以下の鉄球を4000kg充填した直径1800mm、長さ4300mmの第二のスクラバーを直列に配置した。この摩砕機によって、スラリー濃度50%の汚染土壌粒子を、25m/hで摩砕処理した。摩砕処理は、0.075mm〜2mmの粒度範囲内の粗粒土壌粒子の0.075mm未満への移行率が16質量%となるように行った。
【0036】
摩砕処理後、土壌スラリー貯留槽3で、捕集剤および気泡剤と18m/hの希釈水を添加し、スラリー濃度32%の汚染土壌スラリーとして、柱状分離回収機4へ45m/hで供給した。柱状分離回収機4は、1辺が2200mm、高さ5800mmの四角柱とし、高さ5400mmの位置にスラリー供給口25を設け、本体21内へ土壌スラリーを供給するとともに、引き抜きポンプ22による沈降産物の引き抜き量を37m/h、泡沫排出口24からのフロスの回収量を8m/hとした。この条件において、鉛含有量618mg/kgの汚染土壌の処理を実施した。柱状分離回収機4に供給された汚染土壌スラリーと、フロスとして回収された浮上回収汚染物質ならびに沈降産物のマテリアルバランスを図2に示す。
【0037】
図2に示すように、供給した2mm以下の土壌粒子のうち、5.8質量%が泡沫とともに分離回収され、94.2質量%が沈降粒子として得られた。得られた沈降粒子の鉛含有量は294mg/kg、浮上粒子の鉛含有量は5913mg/kgとなり、55.2%の鉛を汚染土壌スラリーから分離回収することができた。
【0038】
浮上回収により分離回収された55.2%の鉛のうち、0.075mm未満の細粒粒子が43.8%と約80%を占め、摩砕機において細粒化された鉛粒子を効果的に回収することができた。0.075mm以上の粗粒粒子の浮上回収重量は、供給重量の約1%と少ないが、8800mg/kgの鉛高含有量粒子を選択的に分離回収することができた。
【0039】
土壌浄化の装置として優れていると評価される基準は、鉛粒子の濃縮性(精選)ではなく、単純に、より多くの鉛を分離回収することである。本実施例の浄化方法で浮上回収された鉛粒子は、図2に示すように、0.075mm未満の細粒粒子からの回収率が特に高いだけでなく、0.075mm〜2mm範囲の粗粒粒子からも効果的に鉛含有粒子を回収できている。これより、本発明の浄化装置は、粒度範囲によらず、効果的に重金属粒子の回収性が可能であり、土壌の浄化装置として優れていると言える。
【0040】
また、本発明で用いられる柱状分離回収機は、大型の回転インペラ等の駆動を必要とせず、また、設置床面積も縮小できることから、従来型浮選機の課題であった建設と運転に要するコストを低減できる。したがって、汚染物質粒子の分離回収能力向上とコスト削減の両立を果たすことができる。
【0041】
(実施例2〜5、比較例1)
実施例1で用いた土壌粒子を摩砕処理するにあたり、摩砕機2における運転条件を替えることで、0.075mm〜2mmの粒度範囲内の粗粒土壌粒子の0.075mm未満への移行率を、0質量%(比較例1)、2質量%(実施例2)、7質量%(実施例3)、16質量%(実施例4)、38質量%(実施例5)となるように調整した。その他は実施例1と同様の条件により汚染土壌の処理を行った。
【0042】
これらの処理における、供給土壌からの鉛含有量の低減率を図3のグラフに示す。なお、鉛含有量の低減率は、次式
(鉛含有量低減率)=[(供給土壌の鉛含有量−処理後土壌の鉛含有量)/(供給土壌の鉛含有量)]×100
より求めた。この低減率が大きいほど、処理に伴う土壌からの鉛除去効果が高いことを示す。
【0043】
図3に示すように、比較例1(移行率0質量%)では、処理土壌の全粒度範囲に対する鉛含有量の低減率では20%に達するものの、0.075mm以上の粗粒土壌のみに対しては、鉛含有量の低減率が3%と殆ど鉛が除去されなかった。これに対し、実施例2〜5(移行率2質量%以上)では、0.075mm以上の粗粒土壌からも鉛含有量の低減が可能となった。言い換えれば、粗粒土壌を細粒土壌とする摩砕処理を行わない場合は、柱状分離回収機4にて回収される鉛粒子は0.075mm以下の細粒粒子に限られてしまうと言える。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、汚染土壌の浄化装置として広く利用され、特に高濃度の重金属汚染土壌や油汚染土壌に対する経済的な土壌浄化装置として適用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 浄化装置
2 摩砕機
3 土壌スラリー貯留槽
4 柱状分離回収機
5 空気供給装置
8 土壌粒子
9 土壌スラリー
10 泡沫
11 摩砕機本体
12 粉砕媒体
13 供給ポンプ
14 スラリー供給配管
21 本体
22 引き抜きポンプ
23 散気装置
24 泡沫排出口
25 スラリー供給口
26 閉回路システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質を含み且つ粒子径0.075mm以上の粗粒土壌粒子と粒子径0.075mm未満の細粒土壌粒子とで構成される土壌粒子を、前記粗粒土壌粒子の2〜40質量%を前記細粒土壌粒子に移行させる摩砕処理を行い、前記摩砕処理後の粗粒土壌粒子と細粒土壌粒子に水を加えて土壌スラリーとし、
前記土壌スラリーを浄化槽内に供給し、この浄化槽の下部から前記土壌スラリーに向けて空気を供給して、前記土壌粒子の一部を泡沫とともに浮上させて回収し、前記土壌粒子に含まれる細粒土壌粒子および粗粒土壌粒子の残部を前記浄化槽に沈降させることを特徴とする、汚染土壌の浄化方法。
【請求項2】
前記土壌スラリーを前記浄化槽の上部から前記浄化槽内に供給し、沈降した土壌スラリーを前記浄化槽の下部より排出し、
このときの前記土壌スラリーの供給速度を排出速度よりも大きくして越流を発生させることを特徴とする、請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項3】
前記土壌スラリーにおいて、土壌粒子の濃度を10〜70質量%に調整することを特徴とする、請求項1または2に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項4】
前記摩砕処理で、前記粗粒土壌粒子の5〜30質量%を前記細粒土壌粒子に移行することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項5】
前記汚染物質が重金属であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項6】
摩砕手段と、土壌スラリー貯留槽と、浄化槽とが順次連結された汚染土壌の浄化装置であって、
前記浄化槽は、スラリー供給手段と、空気供給手段と、上部排出手段と、下部排出手段を備え、
前記摩砕手段では、汚染物質を含む土壌粒子が摩砕処理され、
前記土壌スラリー貯留槽では、摩砕された前記土壌粒子に水を加えた土壌スラリーが貯留され、
前記浄化槽では、前記スラリー供給手段から前記土壌スラリーが供給され、前記空気供給手段から空気が供給され、前記上部排出手段から泡沫及び/又は越流水が排出され、前記下部排出手段から沈降物が排出されることを特徴とする汚染土壌の浄化装置。
【請求項7】
前記空気供給手段は、孔径0.005mm〜50mmの孔を複数有する散気装置であることを特徴とする、請求項6に記載の汚染土壌の浄化装置。
【請求項8】
前記空気供給手段による空気の散気速度が、前記浄化槽の断面積に対して1〜400m/m/hであることを特徴とする、請求項6または7に記載の汚染土壌の浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−61374(P2012−61374A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205101(P2010−205101)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(506347517)DOWAエコシステム株式会社 (83)
【Fターム(参考)】