説明

汚染土壌の浄化方法

【課題】人体や生物に対して有害性を示す汚染物質のバイオオーグメンテーションにおいて、汚染浄化後の投与した嫌気性微生物および汚染浄化をする過程で発生した嫌気性微生物による生態系の変化を浄化前の状態に戻し、また、これら嫌気性微生物による環境の変化を浄化前の状態に戻すことのできる汚染浄化方法を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明の汚染浄化方法は上記目的を達成するために、汚染物質の浄化後、地上のオゾン水製造機15と貯水槽14より製造されたオゾン水17を、注入井戸5から汚染土壌2中に注入し、浄化対象領域の酸素濃度を上げる方法としたものである。この手段により汚染浄化のために投与する嫌気性微生物および汚染浄化をする過程で発生または増殖した嫌気性微生物を殺菌し、汚染浄化後の有害な嫌気性微生物を無害化することができる土壌の浄化方法が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に揮発性有機塩素化合物等によって汚染された土壌や地下水などの浄化の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境中において難分解性であり、また有害でもある揮発性有機塩素化合物による環境汚染が大きな問題となっている。現在、汚染の原因となっている揮発性有機塩素化合物は、ドライクリーニング用溶剤、金属の脱脂洗浄、冷媒、殺虫剤等の原料として産業上広く用いられていた。これまでにも揮発性有機塩素化合物を廃棄する段階などで無害化処理は行われていたが、当時は有害物質である認識が薄かったため完全な処理が成されていたとは言えない。また、溶剤として使用中に床にこぼしてしまった場合、工場の敷地内の土壌中にはテトラクロロエチレンやトリクロロエチレン等の揮発性有機塩素化合物が浸透してしまっていると考えられている。また、実際にこうした揮発性有機塩素化合物による土壌汚染はすでに報告されている。また揮発性有機塩素化合物の特性として水より重いということから、地下水の汚染も次々と報告されている。これらの揮発性有機塩素化合物は、土壌中に浸透したものが雨水等により地下水中に溶解して周辺地域一帯に拡がるとされている。このような化合物は環境中では比較的安定であり、中には発癌性が疑われるものもあるので、特に飲料水の水源として利用されている地下水の流域近傍での土壌汚染は大きな社会問題とされている。
【0003】
このようなことから、揮発性有機塩素化合物の分解・除去による、汚染土壌の浄化、及び汚染地下水等の水性媒体の浄化、及びそれに伴う周辺気相の浄化は、一般住民の健康維持や環境保全の視点からも重要な課題であり、浄化に必要な技術が開発されてきている。
【0004】
例えば、活性炭に代表されるような物理的・化学的吸着処理、電磁波や熱による分解処理等が検討されてきたが、コスト、操作性、分解効率などの面をすべて満たすようなものであるとはいえない。一方、環境中において安定であるテトラクロロエチレンのような揮発性有機塩素化合物に対して微生物による分解が報告され、汚染現場に揮発性有機塩素化合物を分解する土着の微生物が存在する場合、汚染浄化対象領域に土着の微生物の栄養源等を加え、土着の微生物を活性化することで汚染物質の分解を促進するバイオスティミュレーションという工法が実用化されている。また人為的に揮発性有機塩素化合物に対する分解能力の高い微生物を培養し、汚染現場等に投与して浄化を行うバイオオーグメンテーションと呼ばれる技術もある。
【0005】
揮発性有機塩素化合物の微生物による脱塩素化は、好気性微生物による脱塩素化と嫌気性微生物による脱塩素化に大別できる。
【0006】
好気性微生物による脱塩素化は、地中に電子供与体としてのトルエンやフェノール、メタンと電子受容体としての酸素を供給することにより、共代謝を起こすことができる。好気性微生物による脱塩素化は、脱塩素化の速度は大きいが、微生物の増殖と脱塩素化が独立しているため、脱塩素化とは別に微生物を増殖させるための余分なエネルギーを獲得するための炭素源が必要となるため、非効率な面がある。
【0007】
そこで注目されているのが嫌気性微生物による脱塩素化である。嫌気性微生物による脱塩素化の場合は、ハロゲン呼吸による脱塩素化と連動してエネルギーを獲得するので、共代謝のように増殖のための余分なエネルギーを獲得するための炭素源がいらないため効率がよく、脱塩素化の本命として期待されている。図8に示される様に、嫌気性微生物による脱塩素化は土壌中および地下水中でテトラクロロエチレンからトリクロロエチレン、ジクロロエチレン、ビニルクロライド、エチレンへと脱塩素化されることが観察されている。土壌中のアルコールや糖、有機酸などが電子供与体として利用され、有機塩素化合物が電子受容体として働くハロゲン呼吸により、塩素が水素に置換されるというメカニズムが有力とされている。
【0008】
しかしながら、嫌気性微生物は大気中の遊離酸素が生存あるいは成長を阻害するため、嫌気性微生物の生存あるいは成長には遊離酸素の除去が必要となる。好気性菌は遊離酸素の有毒物質を分解するのに必要なカタラーゼやSuperoxide dismutaseなどの酵素をもっているが、一方、嫌気性菌はこれらの酵素をもたず、活性酸素が致死的に作用する。
【0009】
そこで地中に存在する土着の好気生微生物を増殖させるために糖や有機酸などを加え、過飽和になった土着の好気性微生物の好気呼吸により嫌気状態をつくりだす。また、嫌気性微生物による脱塩素化用の資材の開発も進み、一旦地中に注入すると6〜12ヶ月の間、徐々に乳酸がピルビン酸と酢酸に嫌気分解され水素イオンを発生し続けるポリ乳酸グリセリンエステルを主成分とする資材などが商業化されている。以上のように汚染浄化対象領域を嫌気状態にすることにより、脱塩素化する嫌気性微生物にとって最適な環境を提供する。同時に、汚染浄化対象領域において嫌気状態にすることによって電子受容体である酸素を消失させることにより投与した脱塩素化する嫌気性微生物を捕食する可能性のある原生動物や好気性微生物を殺菌することができる。
【0010】
こうして汚染土壌は嫌気性微生物によるテトラクロロエチレンからエチレンまでの脱塩素化によって浄化されることとなる。
【0011】
ただしバイオオーグメンテーションにおいて、揮発性有機塩素化合物を脱塩素化する微生物を高濃度で土壌や地下水などに注入する際、投与する微生物の安全性や、投与後の現場での消長を十分に予測していても、微生物の高濃度投与により汚染浄化対象領域における微生物の生態系のバランスを変動させる可能性を含んでいる。
【0012】
こういった課題を解決するために汚染物質を微生物により分解する浄化方法において、汚染浄化対象領域に投与する微生物として栄養要求性の高い微生物を用い、栄養とする要求物質の量を調節して、投与する微生物の存続期間を制御し、汚染浄化後には投与した微生物を処理するといった技術がある(例えば、特許文献1参照)。以下、その汚染浄化対象領域に投与する微生物の制御法について図9を参照しながら説明する。
【0013】
栄養要求性の高い微生物が要求する栄養素を添加し、ある一定の菌数になるまで培養する。前記栄養要求性の高い微生物とは環境中にはあまり存在しないある特定の栄養素を投与しなければ増殖できない微生物のことである。次にこの培養液をAとBに2等分し、A液では以前同様、要求する栄養素の供給を続けたが、B液ではその後一切の要求する栄養素の供給を行わなかった。
【0014】
図9から分かるように供給する栄養素の供給を行わなかったB液では時間経過とともにその菌数が減少していることがわかる。つまり、汚染浄化対象領域に投与する微生物として栄養要求性の高い微生物を用い、浄化後に前記微生物が要求する要求物質の供給を行わないことによって、前記微生物の処理をすることができる。
【0015】
このように特許文献1のような技術では汚染物質の処理のみならず、汚染浄化のために投与した微生物の処理まで考慮に入れている。
【0016】
ただし、汚染浄化対象がテトラクロロエチレンやトリクロロエチレン等の揮発性有機塩素化合物であって、その脱塩素化のために嫌気性微生物を用いる場合、以上の汚染浄化方法では、汚染浄化における過程で人為的に嫌気状態にした領域において、その過度の嫌気状態により、脱塩素化のために投与する嫌気性微生物以外の嫌気性微生物をも活性化させ、増殖させてしまう危険性を無くすことはできない。
【0017】
嫌気性微生物にはその生成物として悪臭を放つものや毒性のある物質を生成する性質を持っているものもあり、人為的に嫌気状態にされた浄化対象領域の環境に対して変化をもたらし、人間に害をもたらす可能性もある。
【0018】
前記嫌気性微生物の生成物による害の例を以下に挙げる。Clostridium tetaniの破傷風毒素は感染巣近傍の筋肉のこわばり、顎から頚部のこわばり、開口障害、四肢の強直性痙攣、呼吸困難(痙攣性)、刺激に対する興奮性の亢進、反弓緊張(opisthotonus)などの症状の原因となる。また、Clostridium botulinumは弛緩性麻痺をもたらす毒素を産生し、ボツリヌス中毒、創傷ボツリヌス症、乳児ボツリヌス症の原因となる。創傷ボツリヌス症は創傷部位がClostridium botulinumで汚染されることにより感染する。乳児ボツリヌス症はClostridium botulinumの芽胞を乳児が摂取することにより感染する。また、Clostridium perfringensは少なくとも12種類の毒素を作る。そのうちのアルファー毒素は、ガス壊疽のときに見られる毒素で組織破壊作用があり、吸引すると致命的な肺の障害などを起こす可能性がある。また、芽胞産生性通性嫌気性グラム陽性桿菌であるBacillus anthracisの感染により起こる炭疽の症例は、皮膚炭疽、肺炭疽、腸炭疽に区別される。なかでも、皮膚炭疽が95%以上を占める。皮膚の小さな傷口から感染し、局所に発赤、浮腫、水泡を形成する。多くの場合治癒するが、放置すると局所リンパ節からさらに血中にはいり、敗血症に発展することがある。肺炭疽は芽胞の吸入によるもので、腸炭疽は主に炭疽に感染した動物の肉を食することにより起こる。いずれも致死率が高い。また、同じく芽胞産生性通性嫌気性菌であるBacillus cereusはセレウリドやエンテロトキシンなどの毒素を産生し、嘔吐や下痢などの症状を引き起こす。
【0019】
また、人為的に過度の嫌気状態にすることによって、土着の好気性微生物を殺菌し、嫌気性微生物が発生または増殖することにより浄化対象領域における生態系のバランスが崩れるといった不必要な懸念を招きかねない。
【0020】
しかし、以上に記載した危険性は空気中の酸素の拡散にともない、土壌中の過度の嫌気状態が緩和していくとともに減少する。また近年の衛生環境の向上により一般の生活者が上記に示した病原菌に感染する可能性は低くなっていると考えられる。
【特許文献1】特開平06−134433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、以上に記載の環境の変化や生態系の変化は環境保全という点から見ると好ましくなく、汚染物質の分解除去処理が終了した時点で、浄化対象領域に汚染物質が無く、かつ汚染物質の分解除去処理をする過程で発生する汚染対象領域における過度の嫌気状態などによる環境の変化を浄化前の状態に迅速に戻すことが好ましく、また汚染物質の分解除去処理をする過程で発生する、汚染浄化対象領域において投与する嫌気性微生物以外の嫌気性微生物の増殖や発生と好気性微生物の殺菌などによる生態系の変化を浄化前の状態に戻す必要がある。
【0022】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、汚染浄化後の投与した微生物および汚染浄化をする過程で発生した嫌気性微生物による生態系の変化を浄化前の状態に戻すこと、すなわち好気性微生物と嫌気性微生物の均衡を保つことができ、また、これら嫌気性微生物による環境の変化を浄化前の状態に戻すことができ、嫌気性微生物の生成物を無くすことのできる汚染浄化方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の汚染浄化方法は上記目的を達成するために、汚染物質の浄化後、浄化対象領域における環境を嫌気性微生物の生育できない状態にする方法としたものである。
【0024】
この手段により汚染浄化後の投与微生物および汚染浄化をする過程で発生した嫌気性微生物による生態系の変化を浄化前の状態に戻す、すなわち好気性微生物と嫌気性微生物の均衡を保つことができ、また、これら嫌気性微生物による環境の変化を浄化前の状態に戻す、すなわち嫌気性微生物の生成物を無くすことのできる汚染浄化が得られる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、汚染浄化をする過程で発生した生態系の変化を浄化前の自然の状態に戻すことができ、好気性微生物と嫌気性微生物の均衡を保ち、そして、汚染浄化後の有害な嫌気性微生物を無害化することができるという効果のある汚染浄化方法を提供できる。
【0026】
また本発明によれば、汚染対象領域における環境を嫌気性微生物の生育できない状態にする方法において、前記汚染浄化対象領域の酸素濃度を上げることによって汚染浄化をする過程で発生した生態系の変化や環境の変化を浄化前の状態に戻すことができ、そして、汚染浄化後の有害な嫌気性微生物を無害化することができるという効果のある汚染浄化方法を提供できる。
【0027】
また本発明によれば、酸素を発生させる方法においてオゾン水を汚染浄化対象領域に注入することによってその強力な酸化力により殺菌の促進をすることができ、そして汚染浄化をする過程で発生した嫌気性微生物の生成物を脱臭・分解する。さらにオゾンの不安定な性質により数十分で水に戻るので処理後の水にも残留しないため安全に処理するという効果のある汚染浄化方法を提供できる。
【0028】
また本発明によれば、酸素を発生させる方法において過酸化水素水を汚染浄化対象領域に注入することによって、発生するOHラジカルによって殺菌を促進、嫌気性微生物の生成物を脱臭・分解することができ、そして触媒の添加量を多量にすることによって酸素の発泡を促進させ、また少量にする、または触媒を添加しないことによって酸素発生を遅延させ土壌における過酸化水素水の拡散性を高めるという効果のある汚染浄化方法を提供できる。
【0029】
また本発明によれば、酸素を供給する方法において酸素分子を含む混合物を汚染浄化対象領域に注入することによって、汚染浄化対象領域内において酸化以外の化学反応が起こらないため、安全に作業できるという効果のある汚染浄化方法を提供できる。なお、酸素分子を含む混合物とは酸素分子を含んだ水溶液や気体ガスのことである。
【0030】
また本発明によれば、汚染対象領域における環境を嫌気性微生物の生育できない状態にする方法において、汚染浄化対象領域の土壌中と大気中の空気の循環を良くすることによって、特別なガス、水溶液、施設などが不必要なため安価に実現できるという効果のある汚染浄化方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の請求項1記載の発明は、有害物質により汚染された土壌を嫌気性微生物により浄化する土壌の浄化方法において、前記土壌中の環境を嫌気性微生物により浄化する前の状態に戻すようにすることを特徴とする汚染浄化の方法としたものであり、汚染浄化のために投与する嫌気性微生物および汚染浄化をする過程で発生または増殖した嫌気性微生物を減少させて、土壌中の環境を嫌気性微生物により浄化する前の状態に戻すという作用を有する。
【0032】
本発明の請求項2記載の発明は、有害物質により汚染された土壌を嫌気性微生物により浄化する方法において、前記嫌気性微生物を前記土壌に投与後、前記土壌における環境を嫌気性微生物の生育できない状態にすることを特徴とする汚染浄化の方法としたものであり、汚染浄化のために投与する嫌気性微生物および汚染浄化をする過程で発生または増殖した嫌気性微生物を殺菌し、土壌中の環境を嫌気性微生物により浄化する前の状態に戻すという作用を有する。
【0033】
また、本発明の請求項3記載の発明は、前記嫌気性微生物を前記土壌に投与後、前記土壌の酸素濃度を上げることを特徴とする汚染浄化の方法としたものであり、酸素分子が汚染浄化のために投与する嫌気性微生物および汚染浄化をする過程で発生または増殖した嫌気性微生物の細胞障害を引き起こすという作用を有する。
【0034】
また、本発明の請求項4記載の発明は、有害物質により汚染された土壌を嫌気性微生物により浄化する方法において、前記土壌中で酸素を発生させることを特徴とする汚染浄化の方法としたものであり、発生した酸素分子が汚染浄化のために投与する嫌気性微生物および汚染浄化をする過程で発生または増殖した嫌気性微生物の細胞障害を引き起こすという作用を有する。
【0035】
また、本発明の請求項5記載の発明は、有害物質により汚染された土壌を嫌気性微生物により浄化する方法において、前記嫌気性微生物を前記土壌に投与後、前記土壌中にオゾン水を注入することを特徴としたものであり、オゾンが酸素に解離し発生させ、またその強力な酸化力により細菌を酸化するという作用を有する。
【0036】
また、本発明の請求項6記載の発明は、有害物質により汚染された土壌を嫌気性微生物により浄化する方法において、前記嫌気性微生物を前記土壌に投与後、前記土壌中に過酸化水素水を注入することを特徴としたものであり、前記過酸化水素水が酸素を発泡し、OHラジカルを発生するという作用を有する。
【0037】
また、本発明の請求項7記載の発明は、有害物質により汚染された土壌を嫌気性微生物により浄化する方法において、前記嫌気性微生物を前記土壌に投与後、前記土壌中に過酸化水素水と二酸化マンガンを注入することを特徴としたものであり、前記二酸化マンガンが過酸化水素水の酸素の発泡を促進するという作用を有する。
【0038】
また、本発明の請求項8記載の発明は、有害物質により汚染された土壌を嫌気性微生物により浄化する方法において、前記嫌気性微生物を前記土壌に投与後、前記土壌中に酸素分子を注入することを特徴としたものであり、前記酸素分子が嫌気性微生物の細胞障害を引き起こし、また土壌の酸素濃度をあげるという作用を有する。
【0039】
また、本発明の請求項9記載の発明は、有害物質により汚染された土壌を嫌気性微生物により浄化する方法において、前記嫌気性微生物を前記土壌に投与後、前記土壌中に酸素含有物を注入することを特徴としたものであり、前記酸素含有水に含まれる酸素分子が嫌気性微生物の細胞障害を引き起こし、また土壌の酸素濃度をあげるという作用を有する。
【0040】
また、本発明の請求項10記載の発明は、有害物質により汚染された土壌を嫌気性微生物により浄化する方法において、前記嫌気性微生物を前記土壌に投与後、前記土壌中に酸素分子を含むガスを注入することを特徴としたものであり、ガスに含まれる酸素分子が嫌気性微生物の細胞障害を引き起こし、また土壌の酸素濃度をあげるという作用を有する。
【0041】
また、本発明の請求項11記載の発明は、有害物質により汚染された土壌を嫌気性微生物により浄化する方法において、前記嫌気性微生物を前記土壌に投与後、前記土壌中に酸素分子を含む水溶液を注入することを特徴としたものであり、水溶液に含まれる酸素分子または水溶液から発泡した酸素分子が嫌気性微生物の細胞障害を引き起こし、また土壌の酸素濃度をあげるという作用を有する。
【0042】
また、本発明の請求項12記載の発明は、酸素分子を含む混合物において酸素分子が飽和また過飽和であることを特徴としたものであり、混合物に含まれる酸素分子が嫌気性微生物の細胞障害を促進し、また土壌の酸素濃度をあげることを促進するという作用を有する。
【0043】
また、本発明の請求項13〜15記載の発明は、土壌中と大気中の空気の循環を良くすることを特徴とする汚染浄化の方法であり、大気中に含まれる酸素を土壌中に迅速に拡散させるという作用を有する。
【0044】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0045】
(実施の形態1)
本発明の方法において、有害物質の対象としては、揮発性有機塩素化合物等、好気性微生物処理では完全に分解、無毒化することが困難な難分解性の有害物質などである。そのような有害物質としては、例えば、テトラクロロエチレン(PCE)、トリクロロエチレン(TCE)、シス−1、2−ジクロロエチレン(cis−1、2−DCE)、ビニルクロライド(VC)などの化学物質である。
【0046】
本発明の浄化方法は、汚染物質によって汚染された土壌中の酸素濃度を上げることを特徴としており、汚染物質を浄化するために投与した脱塩素化する嫌気性微生物による汚染物質浄化後、前記土壌中の酸素濃度を上げることによって、前記投与した嫌気性微生物および汚染物質を浄化する過程で発生または増殖した嫌気性微生物を殺滅するものである。なお、本発明において、汚染物質によって汚染された場所であれば土壌に限定せず、地下水においても適用されるものとする。
【0047】
なお、本発明において、土壌中の酸素濃度を上げるタイミングは嫌気性微生物の投与後に浄化が完了した段階だけでなく、嫌気性微生物の投与後であれば投与直後または投与後の浄化途中の段階であっても同様の効果を得ることができる。何らかの理由で嫌気性微生物による浄化を中断したければ、嫌気性微生物を投与した直後に土壌中の酸素濃度を上げてもよい。また、浄化途中の段階で嫌気性微生物による浄化の効果が見られないとの理由で、別の浄化方法に変更する場合には、浄化途中に土壌中の酸素濃度を上げることで、土壌中の環境を嫌気性微生物により浄化する前の状態に戻すことができる。
【0048】
嫌気性微生物を汚染浄化に用いる際には、投与する嫌気性微生物を汚染対象領域で問題なく増殖させ効率よく汚染浄化するために、まず汚染浄化対象領域を嫌気状態にする必要がある。汚染浄化対象領域中に糖や有機酸などの好気性微生物における栄養源を加えると好気性微生物が増殖し、その好気呼吸の働きで汚染浄化対象領域中の酸素が減り、嫌気状態をつくりだすことができる。なお、嫌気性処理中の制御は、酸素のガス濃度もしくは液中濃度を常時モニタリングを行い、これらの計測値に基づき、前記好気性微生物の栄養源の添加量を制御することで対応できる。目標とする制御レベルは、液中条件は酸化還元電位が− 1 0 0 m V 以下であり、かかるレベルに制御すべく、随時、前記好気性微生物の栄養源の添加を行う。
【0049】
本発明の浄化方法の実現しうる嫌気性微生物注入装置の一具体例として、図1に脱塩素化する嫌気性微生物を注入井戸に注水する場合を示した。1は土壌、2は汚染土壌、3は難透水層、4は汚染物質、5は注入井戸である。
【0050】
地下の汚染土壌2に達する注入井戸5を汚染物質4の蓄積場所の近傍に設け、この注入井戸5に脱塩素化する嫌気性微生物13を注水する注水管6を挿入してある。地上には、脱塩素化する嫌気性微生物13を培養するための嫌気培養槽8とその栄養分を貯留している栄養素貯留槽11が設置してある。嫌気培養槽8で培養した脱塩素化する嫌気性微生物13は、第1のポンプ7により微生物供給管9を通って注水管6に供給され、注入井戸5から土壌中に注入される。また、汚染土壌2に注入された嫌気性微生物13を活性化するための栄養素は栄養素貯留槽11から第2のポンプ10により栄養素供給管12を通って注水管6に供給され、注入井戸5から汚染土壌2中に注入される。なお、この装置では、嫌気性微生物13が通る微生物供給管9、注水管6等の送水設備は気密構造になっている。
【0051】
汚染浄化に使用する嫌気性微生物として、好ましくは、Methanosarcina属、Methanococcus属、Methanobacterium属、Methanobrevibacter属、Methanogenium属、Desulfobacterium属、Clostridium属、Acetobacterium、Dehalobacter属、Dehalococcoides属などに属する微生物を例示することができるが、嫌気性微生物であり揮発性有機塩素化合物を脱塩素化する能力を持っている微生物であれば必ずしも上記の微生物学的な分類に限定されない。
【0052】
また、上記投与する嫌気性微生物は、それぞれを単独で作用させてもよいし、または適切に組み合わせて作用させてもよい。
【0053】
また、上記投与する嫌気性微生物の量は、投与する嫌気性微生物の種類、汚染浄化対象領域の汚染の程度を考慮して、望ましい浄化の結果が得られるように決定しうる。
【0054】
なお、任意の微生物を添加する場合、その微生物は既に単離されているもの、また、環境中から目的に応じて新たにスクリーニングされたものを利用することが可能であり、複数の株の混合系でもかまわない。また、人為的な変異を施した微生物や遺伝子工学的に改良した微生物も使用することが可能である。また、微生物をセラミックスなどの担体に固定化して使用することも可能である。
【0055】
前記栄養素貯留槽から土壌に注入する栄養素としては、限定するものではないが、脱塩素化する嫌気性微生物の増殖を促進する培養液、グルコース溶液、不飽和脂肪酸、アミノ酸、硫酸マンガン等が挙げられる。
【0056】
汚染浄化対象領域の浄化をさらに効率的に行うために、上記投与する嫌気性微生物およびその栄養素を汚染土壌に随時追加してもよい。
【0057】
以上のように汚染浄化対象領域を嫌気性微生物にとって最適な環境に整え、嫌気性微生物による揮発性有機塩素化合物などの汚染物質の脱塩素化を促進する。これにより、脱塩素化する嫌気性微生物が活性化および増殖するが、これと共に投与する嫌気性微生物以外の嫌気性微生物も活性化および増殖する。
【0058】
上記投与する嫌気性微生物以外の嫌気性微生物にはClostridium属、Propionibacterium属、Arachnia属、Bifidobacterium属、Lactobacillus属、Actinomyces属、Eubacterium属、Lachnospira属、Fusobacterium属、Laptotrichia属、Desulfomonas属、Anaerorhabdus属、Bacteroides属、Bilophila属、Dichelobacter属、Fibrobacter属、Megamonas属、Mitsuokella属、Porphyromonas属、Prevotella属、Rikenella属、Ruminobacter属、Sebaldella属、Tissierella属、Butyrivibrio属、Anaerobiospirillum属、Succinivibrio属、Succinimonas属、Anaerovibrio属、Selenomonas属、Pectinatus属、Wolinella属、Campylobacter属、Treponema属、Borrelia属、Sarcina属、Coprococcus属などに属する微生物があげられる。
【0059】
環境基準以下になっていることを確認することができ次第、汚染浄化対象領域における酸素濃度を上昇させる。汚染浄化を確認する指標として、汚染浄化対象領域における土壌を採取し、それに含まれる揮発性塩素化合物をガスクロマトグラフィーなどにより計測する。なお、何らかの原因により嫌気性微生物による脱塩素化を中断する場合、脱塩素化する嫌気性微生物を投与後、すぐに汚染浄化対象領域の酸素濃度を上昇させることもできる。
【0060】
酸素濃度を上昇させるために、汚染浄化対象領域内にオゾン水を注入する。そのため、地上部に溶存オゾン製造器を設置し、溶存オゾンが外気に逃げないように気密構造の送水設備を使用して注入井戸から注水する。溶存オゾン製造器はオゾン発生器と溶存オゾン化槽を備えたものでも良い。溶存オゾン製造器またはオゾン発生器のオゾン発生方式には紫外線式、放電式、水電解式の3つがあるが、任意の方式を採用できる。比較的低コストな紫外線式のものでも良いし、大規模な放電式のオゾナイザーを用いても良い。
【0061】
本発明の浄化方法の実現しうる汚染浄化装置の一具体例として、図2にオゾン水と注入井戸に注水する場合を示した。
【0062】
汚染土壌2に達する注入井戸5にはオゾン水17を注水する注水管6を挿入してある。地上には、オゾン水製造機15と貯水槽14が設置してあり、貯水槽14から供給した水にオゾンを溶存させてオゾン水17を製造するようになっている。オゾン水17は、第1のポンプ7により送水管16を通って注水管6に供給され、注入井戸5から汚染土壌2中に注水される。なお、この装置では、オゾン水17が通る送水管16等の送水設備は気密構造になっている。
【0063】
注入井戸5への注入時における溶存オゾン濃度は、修復環境や修復規模に応じて任意に変化させることができるが、溶存オゾン濃度で4 mg /L 以上にあることが望ましい。事実、細菌およびウイルスはいずれも4 mg / L のオゾン水と数秒間の接触でほぼ完全に殺滅される。また、溶存オゾン濃度の設定を高めるほど、必要なオゾン関連機材の設備コストが高くなり不経済である。
【0064】
なお、汚染浄化対象内にオゾンを注入する際、ガスとして注入し、土壌中の水分や土壌中に溶存させてもよい。
【0065】
なお、オゾン水が、各種のオゾナイザーで発生させた気体オゾンを溶存オゾン化槽により溶存化させる方式である場合には、オゾナイザーの能力によっては曝気時の溶存酸素濃度が曝気前に比べ低下するケースもありうる。その場合でも、溶存酸素から置き換わった溶存オゾンは、土壌に注入された後、拡散する過程で徐々に分解して酸素に変わるので、供給する実質の酸素量が低下することにはならない。
【0066】
オゾンは1個の分子が3個の酸素原子によって構成された酸素の同素体で、大気中に微量(0.1 ppm 以下)に存在する。独特のにおいを持つ気体物質であり、常温で徐々に分解して完全な酸素に戻る。汚染浄化をする過程で発生した嫌気性雰囲気を過度の嫌気状態から浄化前の状態に戻すためにオゾンが酸素に戻るという性質とオゾンがその強力な酸化力で浄化終了時に不要となった投与する嫌気性微生物および汚染浄化をする過程で発生した嫌気性微生物を殺菌する性質を利用するものである。
【0067】
また、汚染土壌に生息する可能性のある嫌気性微生物であるBacillus属やClostridium属は汚染浄化対象領域内の酸素濃度が上昇してくると菌体内に芽胞をつくる可能性がある。芽胞は物理化学的処理に対する抵抗がきわめて強く、100 ℃ の加熱にも耐える。乾燥にも強く、乾燥状態で数十年間死滅しなかったという例もある。芽胞は細菌の一種の耐久型であって、酸素濃度が高くなるなどの生育条件が悪い場合に形成され、いっさいの代謝が止まるが、生命は維持され、酸素濃度が低くなるなどの適当な環境になると、再び細菌に復元し増殖する。オゾンはこういった細菌芽胞にも有効である。
【0068】
また、汚染対象領域の土壌中と大気中の空気の循環を良くし、大気中の空気に含まれる酸素を土壌中および土壌中に迅速に拡散させるために、ショベルカーなどの機械などを用いて土壌を掘り起こす。
【0069】
図3は土壌を掘り起こす前の土壌堆積物の概要図である。土壌中には主に固形物18、ガス19、水分20が含まれている。ガス19には窒素や酸素などが含まれており、土壌が嫌気状態の場合、ガス19には嫌気性微生物による生成物が含まれる可能性がある。土壌の孔隙は比較的大きな空間と小さな空間とによりできている、小さな空間にはその毛管圧により水分20で満たされており、空気は出入りをすることができない状態となっている。
【0070】
図4はショベルカーなどの機械を用いて土壌を掘り起こした土壌堆積物の概要図である。土壌を掘り起こし、土壌に比較的大きな孔隙をつくることによって、毛管圧を減少させ水分をなくし、その部分に酸素を含むガスを含ませる。また、孔隙に含まれる水分を無くすことにより空気が出入りできるようになり、土壌中と大気中の空気の循環を良くする事ができる。
【0071】
また、汚染対象領域の土壌中と大気中の空気に含まれる酸素を効率的に拡散させるために、図5に記載されているような通気管21を土壌に設置してもよい。通気管は円柱状の形状でその軸方向中心に通気孔があり、ここから大気中の空気が直接、汚染土壌にふれる。なお、通気管21は汚染浄化対象領域の範囲によって1つ以上設置してもよい。
【0072】
なお、好気性処理中の制御は、酸素のガス濃度もしくは液中濃度を常時モニタリングを行い、これらの計測値に基づき、汚染浄化対象領域へのオゾン水の添加量を制御することで対応できる。目標とする制御レベルは、液中条件は酸化還元電位が好ましくは+100mV 以上+400 mV 以下であり、かかるレベルに制御すべく、随時、上記オゾン水の添加を行う。
【0073】
(実施の形態2)
本発明の浄化方法の実現しうる汚染浄化装置の一具体例として、図6に過酸化水素水を注入井戸に注水する場合を示した。
【0074】
図6に示すように、投与する嫌気性微生物による汚染物質の分解が完了後、過酸化水素水22は過酸化水素水貯留槽23から注水管6を経て汚染土壌2に注入される。
【0075】
過酸化水素水22を注水管6から汚染土壌2に注入する際、土壌の酸性化、過酸化水素水22の周辺影響などの状況から、過酸化水素水22を適正濃度に希釈後、注入する必要がある。注入の適正条件は事前のトリータビリティ試験によって見出す必要があるが、注入濃度の範囲は15 % (H22)以下である。
【0076】
過酸化水素水22からの酸素の発泡を高効率で行いたい場合は過酸化水素水22を汚染土壌2に注入後に、触媒である二酸化マンガン24を溶解させた水溶液を注入する。また、触媒を汚染対象領域に注入後、過酸化水素水22を注入してもよい。ただし、酸素が早期に発生し、距離を有する場所に到達する前に過酸化水素水22が消費される場合があるのであまり好ましくない。また、過剰な触媒の添加によっても酸素が早期に発生するので、触媒の添加を控えることにより、酸素の発生を遅延させることが可能である。
【0077】
また、過酸化水素22における酸素発生の反応速度を大きくする触媒において過マンガン酸ナトリウムや過マンガン酸カルシウム、ビタミンC、グルタチオンペルオキシターゼ、ペルオキシターゼ、カタラーゼなどの水溶液でも代用可能である。
【0078】
過酸化水素水22からのOHラジカルを高効率で発生させたい場合は、フェントン反応を起こすために過酸化水素水22に硫酸第一鉄を添加する。しかし、日本の主な沖積・洪積層では特に細粒相に適度の硫化鉱物が含有していることおよび土壌に相当量の鉄分を含有する場合が多い。過酸化水素水22を注入した場合、土壌中の鉄分、あるいは硫化鉱物と過酸化水素水22が反応し硫酸第一鉄(FeSO4)が生成され、最終的にフェントン反応が成立することになり、多量の鉄分を新たに添加する必要がない場合が多い。また、過剰な鉄分の添加によりOHラジカルが早期に発生し、距離を有する汚染源に到達する前に消費される場合がある。注入井戸5と汚染源の間に距離がある場合は、鉄分の添加を控えることにより、OHラジカルの発生を遅延させることが可能である。さらに過酸化水素水22からの酸素の過剰な発泡をできるだけ避ける必要がある。過酸化水素水22からの酸素の過剰な発泡はOHラジカルの発生制御を阻害する。また、その他の発泡の主な原因は腐植物などの有機物質(腐植物など)、関東ロームなどの火山灰土、ルーズな粘性土、マンガン成分、油汚染などが汚染浄化対象領域にある場合である。
【0079】
目標の酸化還元電位を達成するために上記過酸化水素水22および二酸化マンガン24を随時添加する。
【0080】
また、汚染対象領域の土壌1に大気中の空気に含まれる酸素を効率的に拡散させるために、ショベルカーなどの機械を用いて土壌を掘り起こしたり、土壌に通気管21を設置することによって、汚染対象領域の土壌1に大気中の空気に含まれる酸素を効率的に拡散させてもよい。
【0081】
(実施の形態3)
本発明の浄化方法の実現しうる汚染浄化装置の一具体例として、図7に酸素含有水を注入井戸に注水する場合を示した。
【0082】
図7に示すように、投与する嫌気性微生物による汚染物質の分解が完了後、酸素含有水25は酸素含有水貯留槽26から注水管6を経て汚染土壌2に注入される。
【0083】
土壌1の周囲を、地下の難透水層3に至る不通気性層27で遮断し、その内側の土壌1の上に不通気性のシート28で覆う。
【0084】
必要により吸水管29より揚水することにより減圧して、酸素の拡散性を高め、嫌気性微生物を酸化する。
【0085】
以上の浄化方法において、酸素含有水25は、酸素の飽和水、特に過飽和水であることが好ましい。酸素の濃度が高いほど、酸素濃度の上昇速度は向上する。
【0086】
酸素含有水25は、一般に水1L中に酸素5〜200mg、好ましくは酸素8〜150 mg有するものである。酸素の過飽和水および飽和水は、例えば、水の入った注水管付き容器を加圧状態に保ちながら、注水管より酸素ガスを注入することにより得ることができる。酸素含有水25の代わりに、土壌に酸素ガスを直接注入しても良いが、一般に効率が低下する。
【0087】
酸素含有水25はオゾン水や過酸化水素水のように反応性が高くなく、殺菌効果は弱いがオゾンや過酸化水素より反応性が低い分、土壌中において拡散性が高く、それに伴い酸素の拡散性も高い。
【0088】
また、酸素含有水25を汚染対象領域に注入後、好ましくは揚水により減圧することにより、酸素含有水25中の酸素が過飽和となり、酸素含有水に溶存できなくなった酸素が発泡を始める。発泡した酸素は、難透水層3であっても通過するため、汚染されたこのような層も浄化することができる。なお、難透水層3は種々な物質が蓄積されている場合があり、酸素の通過のみで浄化される場合がある。
【0089】
目標の酸化還元電位を達成するために上記酸素含有水25を随時添加する。
【0090】
また、汚染対象領域の土壌1に大気中の空気に含まれる酸素を効率的に拡散させるために、ショベルカーなど機械を用いて土壌を掘り起こしたり、土壌に通気管21を設置することによって、汚染対象領域の土壌1に大気中の空気に含まれる酸素を効率的に拡散させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
人体もしくは生物に対して毒性が認められる化合物の分解能を有する嫌気性微生物を投与する際に、嫌気性微生物の活性をあげるために汚染浄化対象領域を嫌気状態にするので、嫌気状態の修復手段として土壌浄化や地下水の浄化などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施の形態1における嫌気性微生物を注入する装置の概略を示す断面図
【図2】本発明の実施の形態1におけるオゾン水を注入する装置の概略を示す断面図
【図3】本発明の実施の形態1における土壌を掘り起こす前の土壌堆積物の概要図
【図4】本発明の実施の形態1における土壌を掘り起こした後の土壌堆積物の概要図
【図5】本発明の実施の形態1における通気管の概略を示す断面図
【図6】本発明の実施の形態2における過酸化水素水を注入する装置の概略を示す断面図
【図7】本発明の実施の形態3における酸素含有水を注入する装置の概略を示す断面図
【図8】テトラクロロエチレンの脱塩素化概要図
【図9】栄養要求性の微生物の残存菌数を示す説明図
【符号の説明】
【0093】
1 土壌
2 汚染土壌
3 難透水層
4 汚染物質
5 注入井戸
6 注水管
7 第1のポンプ
8 嫌気培養槽
9 微生物供給管
10 第2のポンプ
11 栄養素貯留槽
12 栄養素供給管
13 嫌気性微生物
14 貯水槽
15 オゾン水製造機
16 送水管
17 オゾン水
18 固形物
19 ガス
20 水分
21 通気管
22 過酸化水素水
23 過酸化水素水貯留槽
24 二酸化マンガン
25 酸素含有水
26 酸素含有水貯留槽
27 不通気性層
28 不通気性のシート
29 吸水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害物質により汚染された土壌を嫌気性微生物により浄化する土壌の浄化方法において、前記嫌気性微生物を前記土壌に投与後、前記土壌中の環境を嫌気性微生物により浄化する前の状態に戻すようにすることを特徴とする汚染土壌の浄化方法。
【請求項2】
有害物質により汚染された土壌を嫌気性微生物により浄化する土壌の浄化方法において、前記嫌気性微生物を前記土壌に投与後、前記土壌中の環境を嫌気性微生物が生存できない状態にすることを特徴とする汚染土壌の浄化方法。
【請求項3】
前記嫌気性微生物を前記土壌に投与後、前記土壌内の酸素濃度を上げることを特徴とする請求項1または2記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項4】
前記土壌中で酸素を発生させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項5】
前記土壌中にオゾン水を注入することを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項6】
前記土壌中に過酸化水素水を注入することを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項7】
前記土壌中に過酸化水素水と二酸化マンガンを注入することを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項8】
前記土壌中に酸素を注入することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項9】
前記土壌中に酸素分子を含む混合物を注入することを特徴とする請求項1乃至3または8のいずれかに記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項10】
前記土壌中に酸素分子を含むガスを注入することを特徴とする請求項1乃至3、8または9のいずれかに記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項11】
前記土壌中に酸素分子を含む水溶液を注入することを特徴とする請求項2、3、8または9記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項12】
前記酸素分子を含む混合物において酸素が飽和または過飽和である請求項9乃至11 のいずれかに記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項13】
土壌中と大気中の空気の循環を良くすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項14】
土壌を掘り起こすことを特徴とする請求項1乃至3または13のいずれかに記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項15】
土壌に通気管を設置することを特徴とする請求項1乃至3または13のいずれかに記載の汚染土壌の浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−272530(P2008−272530A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171125(P2006−171125)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】