説明

汚染土壌中に浄化剤を配置する方法、および汚染土壌及び/又は地下水の原位置浄化方法

【課題】汚染土壌に設けた掘削部の最深部に浄化剤と透水用粒状物との混合浄化剤を混合ムラなく配置することができる汚染土壌中に浄化剤を配置する方法と汚染土壌及び/又は地下水の原位置浄化方法とを提供する。
【解決手段】地盤1に掘削部として孔2が形成されている。この孔2は地下水位よりも深く掘られている。バケット4にパワーショベル5によって鉄粉混合砂などの混合浄化剤6を供給する。バケット4を孔2の最深部にまで降下させる。バケット4が孔底2aに着底すると、ロック機構がロック解除状態となる。そこで、バケット4を徐々に引き上げると、底蓋4aが開き出し、バケット4内の混合浄化剤6がバケット4から孔2の底部に放出される。さらにバケット4を引き上げることにより、バケット4内のすべての混合浄化剤6が放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学物質によって汚染された土壌及び/又は地下水を原位置において浄化剤によって浄化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
有機塩素系化合物によって汚染された土壌及び地下水を原位置において浄化する方法としては、例えば特開平10−71386号や特開平10−263522号のように、汚染土壌中の所定位置に有機塩素系化合物を浄化するための金属鉄粉の分散層を形成する方法が知られている。このような浄化剤分散層を形成する方法としては、ケーシング掘削法、開削法、泥水掘削法などが利用されている。
【0003】
このような浄化剤の分散層を形成するとき、浄化用金属粉を単独で用いる場合もあるが、浄化用金属粉と透水用粒状物とを混合して混合浄化剤として用いる場合もある。この透水用粒状物は充填された状態での透水性を確保するためや、現場ごとに求められる浄化能力によって浄化用金属粉の添加量を調整するために用いられる。
【0004】
透水用粒状物を用いる場合、地中に分散層を形成したときに分散層のどの部位においても浄化用金属粉と透水用粒状物との混合比がムラなく一定範囲になっている必要がある。これは、混合ムラがあると、汚染土壌、汚染地下水の浄化が効率良く行われず、結果的に浄化期間が延びてしまうからである。
【0005】
しかし浄化用金属粉と透水用粒状物とは形状が大きく異なることがあり、その場合、混合して充填する施工中に浄化用金属粉と透水用粒状物との混合にムラが生じてしまうという問題がある。特に地下水位より深く掘削部、例えばボーリング孔を設け、該掘削部内に地上から浄化用金属粉と透水用粒状物との混合物からなる浄化剤を注入する場合、掘削部内に溜った水(地下水)中を該混合物が沈降するときに、金属粉と透水用粒状物との比重差により両者が分離してしまい、混合に大きなムラが生じてしまう。
【特許文献1】特開平10−71386号公報
【特許文献2】特開平10−263522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、汚染土壌に設けた掘削部の最深部に浄化剤と透水用粒状物との混合浄化剤を混合ムラなく配置することができる浄化剤配置方法と汚染土壌及び/又は地下水の原位置浄化方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の浄化剤配置方法は、土壌の掘削部の最深部に浄化剤と透水用粒状物とを含む混合浄化剤を配置する方法であって、底部が開閉可能な容器内に該混合浄化剤を収容し、該容器を掘削部の最深部に下ろし、次いで該容器の底部を開放して混合浄化剤を放出させることにより、該掘削部内に該混合浄化剤を配置することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の汚染土壌及び/又は地下水の原位置浄化方法は、汚染土壌に掘削部を設け、この掘削部の最深部に浄化剤と透水用粒状物とを含む混合浄化剤を配置し、該混合浄化剤によって土壌及び/又は地下水の浄化を行う汚染土壌及び/又は地下水の原位置浄化方法であって、底部が開閉可能な容器内に該混合浄化剤を収容し、該容器を掘削部の最深部に下ろし、次いで該容器の底部を開放して混合浄化剤を放出させることにより、該掘削部内に該混合浄化剤を配置することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、浄化剤と透水用粒状物との混合浄化剤を容器に収容して掘削部の最深部に下ろし、次いで容器底部を開放させて容器から混合浄化剤を該最深部に放出する。従って、掘削部が地下水位よりも深く設けてある場合であっても、混合浄化剤が掘削部内の水中を沈降落下することがなく、この沈降落下に起因した混合浄化剤の分離現象が防止される。これにより、汚染土壌及び/又は地下水を効率よく浄化することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0011】
本発明では、汚染土壌に掘削部を設け、この掘削部の最深部に浄化剤と透水用粒状物とを含む混合浄化剤を配置する。
【0012】
土壌を汚染している汚染物質としては、有機塩素化合物、アルカリ、フッ素、重金属などが例示される。
【0013】
浄化剤としては、例えば有機塩素化合物が対象であれば浄化用金属粉、アルカリが対象であれば酸性白土、フッ素が対象であれば酸化マグネシウム、重金属が対象の場合はキレートや鉄塩、アルミニウム塩などが例示されるが、これらに限定されず浄化対象によって様々な浄化剤を採用することができる。浄化用金属粉としては例えば鉄が例示され、酸化鉄、還元鉄、合金などが好適であるが、還元鉄がより好適である。土壌が複数種類の汚染物質を含むときには、これら浄化剤を複数混合して用いることもできるし、1種又は複数種の混合浄化剤を掘削部最深部に配置した後、その上に別種の混合浄化剤を配置してもよい。
【0014】
浄化剤の形状は特に限定されないが、例えば粒径0.1〜2mmの粗大粒子であって地下水の流動を妨げない形状のものが望ましい。
【0015】
透水用粒状物としては環境上問題ない材料であれば特に問題なく、充填状態時の透水係数が10−2〜10−3cm/sオーダーの材料、例えば砂や砂利などを好適に用いることができる。浄化剤と透水用粒状物との混合比は、体積比で1:9〜1:0.1程度が好適であるが、これに限定されない。
【0016】
掘削部の形状は土壌を掘削した孔状でもよいし、並列に掘削孔を作るなどした溝状でもよい。孔はボーリングによって形成されるのが好ましいが、ドリリングバケット等によって形成されてもよい。孔の直径は200〜3000mm程度が好適であるが、これに限定されない。本発明は、掘削部を地下水位よりも深く形成し、掘削部下部に地下水が貯留する場合に適用するのに好適である。
【0017】
容器としては、混合浄化剤を漏らすことなく収容保持でき、掘削部最深部に到達するまで、収容した混合浄化剤に混合ムラが生じず、最深部に達すると底部が開口して混合浄化剤を放出できる構造であればどのような構造のものでもよい。
【0018】
以下、第1図及び第2図を参照して、掘削部の最深部に混合浄化剤を配置する方法の一例について説明する。
【0019】
第1図(a),(b)は実施の形態に係る方法によって掘削部内に混合浄化剤を配置する作業を示す断面図である。
【0020】
第1図(a)の通り、地盤1に掘削部として孔2が形成されている。この孔2は地下水位よりも深く掘られている。また、この実施の形態では孔2は、オールケーシング工法によって掘削されたものである。
【0021】
第1図(a)では、クレーン車3のクレーンから垂下するワイヤロープの下端に容器としてバケット4が吊り下げられている。このバケット4は、上方が開放した有底円筒形であり、第2図に示すように、底部に開閉可能な底蓋4aを備えた底開き式バケットである。このバケット4は、この底蓋4aを閉鎖状態にロックするためのロック機構(図示略)と、このロック機構のロックを解除するためのアンロックレバー4bとを有している。このアンロックレバー4bは、ロック状態ではバケット4の底面から下方に突出しており、バケット4が孔底2aに着底すると上方に押し上げられてロック機構をアンロック状態とするよう構成されている。
【0022】
第1図(a)の通り、このバケット4にパワーショベル5によって鉄粉混合砂などの混合浄化剤6を供給する。次いで、クレーン車3はこのバケット4を孔2内に入れるように自走及びブーム旋回操作され、しかる後、第1図(b)の通り、ワイヤロープを送り出し、バケット4を孔2の最深部にまで降下させる。
【0023】
バケット4が孔底2aに着底すると、第2図(b)の通りアンロックレバー4bが孔底2aに当って押し上げられ、ロック機構がロック解除状態となる。そこで、第2図(c)の通りバケット4を徐々に引き上げると、底蓋4aが開き出し、バケット4内の混合浄化剤6がバケット4から孔2の底部に放出される。さらにバケット4を引き上げることにより、バケット4内のすべての混合浄化剤6が放出される。
【0024】
このように、孔底2aに着底したバケット4から混合浄化剤6が孔底2aに徐々に放出されるので、混合浄化剤6が孔2内に溜まった地下水中を沈降落下することがない。このため、混合浄化剤の鉄粉と砂とが分離することがない。この結果、効率よく汚染土壌及び地下水の浄化処理が行われる。
【0025】
なお、容器底部から水底に鉄粉混合砂を放出しても鉄粉と砂とが分離しないことを確認するための実験例と、鉄粉混合砂を水面から投入すると分離が生じること示す対比実験例とを次に示す。
【0026】
[実験例]
(1)第3図(a)の通り、水深1mのプール10中に水槽(高さ300mm、幅300mm、長さ300mm)11を沈設した。
(2)第3図(b)の通り、底面が開閉可能となっている容器(高さ100mm、幅100mm、長さ100mm)12内に、鉄粉と砂とを同体積で混合してなる鉄粉混合砂よりなる混合浄化剤6を充填した。なお、鉄粉の平均粒径は0.5mm、砂の平均粒径は1.0mmである。
(3)第3図(c)の通り、この容器12を水槽11の底面に着底させた。
(4)次いで、第3図(d)の通り、容器12の底部を開放すると共に容器12を引き上げ、容器12から水槽11内に混合浄化剤6を流出させた。
(5)(2)〜(4)の手順を繰り返し、水槽11内に鉄粉混合砂よりなる混合浄化剤6を充填した。
(6)プール10から水槽11を取り出し、この水槽11内の10箇所から鉄粉混合砂を採取し、鉄粉と砂を磁選して体積を測定した結果、表1のように各試料とも上面と底面とで鉄粉と砂の体積比がほぼ等しく、混合ムラなく充填できていることが判明した。
【0027】
なお、表1の第1〜第4の隅部は、水槽11内の4個の隅部を意味する。
【0028】
[比較実験例]
第3図(a)の状態において水槽11が満杯になるまで、上記の鉄粉混合砂を水面から静かに投入した。
【0029】
プール10から水槽11取り出し、この水槽内の10箇所から鉄粉混合砂を採取し、鉄粉と砂を磁選して体積を測定した結果、表1のように各試料とも上面と底面とで鉄粉と砂の体積比が異なっており、充填に際して分離してしまい混合ムラが生じていることが判明した。
【0030】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】現場における底開きバケットによる鉄粉混合砂充填手順を示す断面図である。
【図2】底開きバケットの作動説明図である。
【図3】実験例の手順を示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 地盤
2 孔
3 クレーン車
4 容器
5 パワーショベル
6 混合浄化剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌の掘削部の最深部に浄化剤と透水用粒状物とを含む混合浄化剤を配置する方法であって、
底部が開閉可能な容器内に該混合浄化剤を収容し、該容器を掘削部の最深部に下ろし、次いで該容器の底部を開放して混合浄化剤を放出させることにより、該掘削部内に該混合浄化剤を配置することを特徴とする汚染土壌中に浄化剤を配置する方法。
【請求項2】
汚染土壌に掘削部を設け、この掘削部の最深部に浄化剤と透水用粒状物とを含む混合浄化剤を配置し、該混合浄化剤によって土壌及び/又は地下水の浄化を行う汚染土壌及び/又は地下水の原位置浄化方法であって、
底部が開閉可能な容器内に該混合浄化剤を収容し、該容器を掘削部の最深部に下ろし、次いで該容器の底部を開放して混合浄化剤を放出させることにより、該掘削部内に該混合浄化剤を配置することを特徴とする汚染土壌及び/又は地下水の原位置浄化方法。
【請求項3】
請求項2において、前記掘削部を地下水位より深く設けることを特徴とする汚染土壌及び/又は地下水の原位置浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−29935(P2008−29935A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204887(P2006−204887)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【出願人】(000148346)株式会社錢高組 (67)
【Fターム(参考)】