説明

汚染土壌洗浄槽

【課題】洗浄処理がなされる汚染土壌全体に対して十分な攪拌作用を及ぼすことができ、且つ耐久性に優れた土壌洗浄槽を提供することを目的とする。
【解決手段】略円筒状の有底の筒状体62内に汚染土壌PSを投入し、水と共に攪拌洗浄する土壌洗浄槽60であって、筒状体62内の底部66に沈殿する汚染土壌PSを水と共に底部66近傍に取付けられた排出口70から筒状体62外へ排出し、周壁68に取付けられた再供給口72から筒状体62内に再供給して攪拌する。再供給口72は、周壁68内面に沿って同一円周方向に汚染土壌PSを水と共に噴出するように開口して複数取り付けられており、これにより筒状体62内に継続的な回転流が生じ、汚染土壌PSを効果的に攪拌洗浄することができる。従って、別途攪拌装置を設ける必要が無く、攪拌装置の劣化等の問題が無くなり土壌洗浄槽60自体の耐久性が向上している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染土壌、特に、汚染物質が蓄積しやすい汚染土壌の細粒部の洗浄に用いる汚染土壌洗浄槽に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汚染土壌Polluted Soil(以下、汚染土壌PSと略す)の修復は、汚染土壌PSを清浄土壌と入れ替えることにより行われており、この汚染土壌PSの入れ替えには汚染土壌PSの処理場への輸送費用と、それに代わる清浄土壌の確保及び輸送に係る費用とが発生するという問題があった。また、輸送された汚染土壌PSの処理は、焼却、セメント原料化及び管理型処分場への埋め立て等により行われていたが、これらの処理量が、上述の汚染土壌PSの修復方法により発生する汚染土壌PSの発生量に対して追いつかなくなるという可能性もあった。
【0003】
そこで、代替する土壌修復の方法として、掘削された汚染土壌PSを洗浄により浄化し、浄化された土壌を埋め戻す土壌修復方法が実施化されている。一般的に汚染土壌PS中には、その細粒部に汚染濃度が高い粒子が多いことが知られているので、土壌の洗浄はこの細粒部に対して行われることが効果的である。この細粒部に対する洗浄を行うために、掘削された汚染土壌塊に対して解泥・分級処理が行われ、抽出された汚染土壌PSの細粒部に対して洗浄処理が行われる。
【0004】
特許文献1には、従来の汚染土壌PSの洗浄処理に用いる攪拌羽根を有する攪拌槽が開示されている。この攪拌槽は略円筒形状であり、底部に軸体が軸支された攪拌羽根が設けられている。この攪拌槽内に土壌を洗浄するための洗浄水及び分級処理により抽出された細粒部を投入し、攪拌羽根を回転させることによりこれら洗浄水及び細粒部を混合し、土粒子に付着した汚染物質を脱離させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−001238
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、洗浄処理に用いられる汚染土壌の土粒子の比重は通常水より大きい。従って、特許文献1に記載の攪拌槽では、攪拌中においても汚染土壌が攪拌槽底部、さらには、攪拌羽根の回転により生じる渦の中心である軸体近傍に集まりやすい。この攪拌槽底部の軸体近傍は、渦の中心であるので水の勢いが弱く、従って、攪拌槽底部における軸体近傍に沈殿した汚染土壌には十分な攪拌作用が及ばず、土粒子に付着した汚染物質の脱離が不十分となるおそれがある。
【0007】
また、攪拌時においては、土粒子と攪拌羽根の衝突により攪拌羽根が物理的に摩耗する。特に、洗浄処理に酸化力の強い洗浄剤を使用した場合、上記物理的衝突による攪拌羽根の摩耗部位から攪拌羽根が腐食することにより攪拌羽根のメンテナンス頻度が増大すると共に、攪拌羽根自体の耐用年数が短くなってしまっている。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は洗浄処理がなされる汚染土壌全体に対して十分な攪拌作用を及ぼすことができ、且つ耐久性に優れた土壌洗浄槽を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決するための請求項1に記載の発明は、有底の筒状体内に汚染土壌を投入し、水と共に攪拌して洗浄する土壌洗浄槽であって、前記汚染土壌を前記水と共に前記筒状体の底部又は底部近傍の排出口から排出させ、前記筒状体の上部側の再供給口から前記筒状体内に再供給して環流させる環流機構を有し、該環流機構は、一端が前記筒状体の前記排出口に取り付けられ、他端が前記筒状体の前記再供給口に取付けられた環流管と、該環流管の途中位置に設けられた流体移送ポンプと、を有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、土壌洗浄槽内において、筒状体の底部に沈殿しやすい汚染土壌を、環流機構を介して水と共に筒状体の上部側から筒状体内に再供給することにより攪拌することができる。従って、筒状体に投入された汚染土壌全体に対して十分な攪拌作用を及ぼすことができる。
【0011】
更に、本土壌洗浄槽における汚染土壌の攪拌は、環流機構によって汚染土壌と水とを環流することのみで的確に行うことができるので、土壌洗浄槽に別途攪拌装置を付与する必要が無く、従って、攪拌装置の劣化の心配も無く土壌洗浄槽自体の耐久性が向上している。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の土壌洗浄槽において、前記筒状体は略円筒状に形成されており、前記再供給口が、前記汚染土壌を前記水と共に前記筒状体の周壁内面に沿って同一円周方向に噴出するように前記周壁に対し開口していることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、汚染土壌が水と共に再供給口から筒状体の周壁内面に沿って同一円周方向に噴出することにより、同一円周方向に継続的に回転する回転流が筒状体内に発生する。従って、筒状体の底部に沈殿した汚染土壌の筒状体上部側への再供給、及び筒状体内に発生する回転流という二重の攪拌作用により汚染土壌が効果的に攪拌され、洗浄される。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の土壌洗浄槽において、前記再供給口は複数設けられており、前記環流管の前記再供給口側の端部は、前記複数の再供給口の数に対応して分岐されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、再供給口が複数設けられているので、水と共に再供給された汚染土壌の分散、攪拌効率を更に高めることができる。また、筒状体内に同一円周方向に継続的に回転する回転流を発生させる場合には、複数の再供給口を設けることにより回転流の流勢をさらに強めることができる。従って、筒状体内に投入された汚染土壌をさらに強力に攪拌することが可能となる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の土壌洗浄槽において、前記複数の再供給口が、前記筒状体の高さ方向に所定間隔をおいて配置されていることを特徴とする。
この構成によれば、筒状体の上部側から所定の高さ範囲に亘って汚染土壌と水が再供給されることにより、ある程度一定の勢いを有する回転流を発生させることができる。従って、筒状体の上部側から所定の高さ範囲の領域に亘って汚染土壌をある程度均質に攪拌し、洗浄することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の記載の土壌洗浄槽において、前記筒状体の前記底部には、前記筒状体内方へ向けて突出し、斜面が前記底部の縁部近傍まで延在する略錐体の突出部が設けられ、前記排出口は、前記筒状体の底部の最下部又は前記筒状体の側壁の最下部近傍に設けられたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、筒状体の底部に沈殿する汚染土壌を、略錐体の突出部の斜面の傾斜に沿って自重により筒状体の底部縁部へと移動させ、筒状体の底部の最下部又は筒状体の側壁の最下部近傍に設けられた排出口から排出させて環流管を介して再供給口から筒状体内へと再供給させることにより、汚染土壌を再分散させることができる。特に、筒状体が略円筒状であって、筒状体内の同一円周方向に継続的に回転する回転流を発生させる場合には、回転流の渦中心となる底部の中央近傍に沈殿しがちな汚染土壌を底部縁部方向へ移動させることができると共に、底部の中央近傍から底部の縁部側に移行するにつれて流勢が増す回転流によって再びこの沈殿した汚染土壌を巻き上げて攪拌することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5に記載の土壌洗浄槽において、微細気泡を前記筒状体内に噴出可能な複数の噴出口が、前記筒状体の前記底部に設けられていることを特徴とする。この構成によれば、筒状体の底部に沈殿しやすい汚染土壌を、筒状体の底部に設けられた噴出口から噴出される微細気泡によって筒状体の上方へ噴き上げることができるので、汚染土壌と水との環流攪拌効果と合わせてさらに効果的に汚染土壌を攪拌し、洗浄することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、土壌洗浄槽の筒状体内に投入された汚染土壌に対して十分に攪拌作用を及ぼすことができるので、汚染土壌に対して十分な洗浄を施すことができる。更に、土壌洗浄槽には別途攪拌装置を付与する必要が無いので攪拌装置のメンテナンス費用及びその手間が発生せず、経済的な土壌洗浄槽となっている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る土壌洗浄槽60を説明するための図である。
【図2】図1の土壌洗浄槽60を矢印100方向から見た図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】解泥・分級機構である解泥機10の概略断面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】洗浄システム全体における解泥・分級機構1と洗浄機構2の具体的配置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について図面に基いて詳細に説明する。本発明に係る土壌洗浄槽は汚染土壌PSの洗浄システムの中の1部として用いられる。汚染土壌PSの洗浄システムは、掘削された汚染土壌塊PSを解泥・分級処理する解泥・分級機構、解泥・分級機構の処理により抽出された一定粒度未満の土壌の細粒部を洗浄する洗浄機構からなる。このシステムにより、掘削された汚染土壌塊PSの解泥処理、この解泥処理により分解された汚染土壌PSの分級処理及び分級処理により抽出された汚染土壌PSの細粒部の洗浄処理が連続的に速やかに行われる。
【0023】
以下、まず汚染土壌の洗浄システムのうち本件発明の土壌洗浄槽の前段階である解泥・分級機構及び解泥・分級機構による汚染土壌塊PS−0の解泥・分級処理について説明する。
【0024】
図4は、解泥・分級機構である解泥機10の概略断面図であり、図5は、同図のV−V線断面図である。図示のように、解泥機10は、設置面Eに対して3度傾斜して横置きされた筒体12として構成され、筒体12内の空間は板状の濾過体14によって上部領域16と、濾過体14の下側領域18に分割されている。上部領域16は解泥・分級処理の場となり、分級物の一部が濾過体14の下側領域18に移行する。
【0025】
まず、筒体12の上部領域16の構成について説明する。筒体12の上部領域16は、円形の側面20a、周壁20b及び円形の他方の側面20cを有する略円筒状の略円筒体20の内部空間として構成されており、この略円筒体20は、筒体12の傾斜に伴い側面20cが側面20aより高位置となるように傾斜して横置きされている。
【0026】
略円筒体20の傾斜上方側の端部、すなわち、略円筒体20における周壁20bの傾斜上方側であって高位置側の端部面には、汚染した土壌地盤から掘削された汚染土壌塊PS−0を投入するホッパー17が取付けられた矩形の開口部19が設けられ、これらホッパー17及び開口部19により土壌塊投入口が構成されている。
【0027】
略円筒体20の周壁20bの下側半周、すなわち、設置面E側の半周壁面は、全域に亘って汚染土壌塊PS−0の一部が通過可能な孔径4mmの小孔を多数有する濾過体14として構成されている。従って、略円筒体20は、側面20a、周壁20bの高位置側の半周壁面、及び側面20cからなる筒体12の上部外壁と、周壁20bの下側半周壁面である濾過体14とから構成されている。
【0028】
筒体12の上部領域16の傾斜下方側の端部、すなわち、略円筒体20の側面20aの下方側には、濾過体14の小孔を通過できず、濾過体14上に残留した土壌塊の残渣PS−1を筒体12の外部へ排出する土壌塊残渣排出口22が設けられており、土壌塊残渣排出口22は、下方へ傾斜した断面コ字状のスロープ24に連続している。
【0029】
筒体12の上部領域16、すなわち、略円筒体20内において、略円筒体20の伸長方向の軸中心に、略円筒体20の伸長方向に伸長し、側面20aと側面20cとに回転可能に軸架された軸体26が設けられており、この軸体26は側面20c側の軸体26端部に取付けられたモータ28によって駆動されて回転する。軸体26の外表面には、所定間隔置きに軸体26の径方向に向かって突出するワイヤ30が複数取り付けられている。この軸体26とワイヤ30とによりロータ32が構成されている。
【0030】
略円筒体20における周壁20bの高位置側の半周壁面(濾過体14では無い側の周壁20b面)のV−V線断面上(図5参照乞)には、土壌塊投入口から投入された土壌塊PS−0に対して水を供給するためのシャワーノズル34が4つ、ノズルを濾過体14方向に向けてほぼ等間隔に設けられている。この4つを1組として、シャワーノズル34は、略円筒体20の伸長方向に一定間隔ごとに5カ所に設けられており(図4参照乞)、合計20個設けられたシャワーノズル34によって水供給手段が構成され、水が濾過体14全面に供給される。供給する水には、適宜、他の液体が添加されても良い。例えば、水供給手段により供給される水が、後述する汚染土壌PSの洗浄機構において用いられる洗浄水であると、解泥・分級工程から土壌の洗浄を行うことができるので、汚染土壌PSの洗浄システム全体が更に効率化される。更に、洗浄機構に送られない細粒土以外の土壌塊の残渣PS−1に対しても一定の洗浄処理を施すことができる。
【0031】
次に、筒体12における濾過体14の下側領域18の構成について説明する。濾過体14の下側には、濾過体14の下面に沿って断面視略U字状の板材36が略円筒体20の伸長方向に延在しており、この板材36の端縁36a−1、36a−2が(図5参照乞)、周壁20bの高位置側の半周壁面との境界面に位置する濾過体14の縁部14a−1、14a−2と、略円筒体20の外周側から重合して結合している。そして、板材36は、端縁36a−1、36a−2から下方へ垂下するに従って濾過体14と離間し、略U字状の頂部においてその離間距離が最大となるように形成されている。この略U字状の頂部は、略円筒体20の軸中心と略円筒体20の長さ方向に亘って平行となるように設置面Eに対して傾斜して延在している。板材36の傾斜上方側は、略円筒体20の側面20cから連続する板材38により密閉されており、板材36の傾斜下方側は、略円筒体20の側面20aから連続する板材40により密閉されている。これら板材36、38、40及び濾過体14に囲まれた領域が、濾過体14の下側領域18である。この濾過体14の下側領域18には、両端が板材38と板材40とに軸架されたスクリューコンベヤ42が設けられており、このスクリューコンベヤ42はモータ44により駆動され、濾過体14に設けられた孔を通過して濾過体14の下側領域18に移行した土壌塊の濾物PS−2を筒体12の傾斜下方側へ送る。濾過体14の下側領域18の板材36頂部の傾斜下方側の端部面には、スクリューコンベヤ42により筒体12の傾斜下方側へ送られた土壌塊の濾物PS−2を筒体12外へ排出する矩形の土壌塊濾物排出口46が設けられている。
【0032】
図6は、洗浄システム全体における解泥・分級機構1と洗浄機構2の具体的配置を説明するための図である。本図により解泥・分級機構1の残りの構成と解泥・分級機構1と洗浄機構2の連携を説明する。
【0033】
解泥・分級機構1である解泥機10の土壌塊濾物排出口46の下部には、水平方向に振動する略矩形のふるい部48とふるい部48により濾過された濾物を受けることができる大きさの濾物受け部50とからなるふるい機構を構成する振動ふるい52が設置されている。ふるい部48は、2mm目の網目を有し、2mm未満の細粒土と、2mm以上の礫を分級することができる。濾物受け部50の底部には、2mm未満の細粒土を後述する洗浄機構2へ移送する移送管59が取り付けられている。移送管59の途中位置には流体移送ポンプP1が設けられており、この流体移送ポンプP1を起動することにより2mm未満の細粒土が解泥・分級機構1と隣接する洗浄機構2へと移送される。
【0034】
振動ふるい52には、ふるい部48上に残った礫を受ける役割を担う礫受け槽54が隣接している。振動ふるい52のふるい部48は、礫受け槽54方向に向けて若干設置面E方向へ傾斜して濾物受け部50に取り付けられており、ふるい部48の礫受け槽54側の端部は、礫受け槽54の上部に架け渡されると共に下方へ傾斜するスロープ56となっている。
【0035】
また、解泥機10の土壌塊残渣排出口22から排出された土壌塊の残渣PS−1を受けるズリ受け槽58が、筒体12の傾斜下方側で解泥機10と隣接して配置されている。土壌塊残渣排出口22から連続して設けられたスロープ24は、ズリ受け槽58の上部に架け渡されている。
【0036】
次に、解泥・分級機構1による汚染土壌塊PS−0の解泥・分級処理操作について説明する。
【0037】
汚染土壌地盤から掘削された汚染土壌塊PS−0は、直接ホッパー17から解泥機10の筒体12内に投入される。筒体12内に投入された汚染土壌塊PS−0は、濾過体14上に落下し、濾過体14上で側面20cから側面20a方向への傾斜に従って側面20a側にゆっくりと移動する。その移動の際、汚染土壌塊PS−0は、シャワーノズル34から濾過体14に向けて供給される水によって湿潤しつつ、回転するロータ32のワイヤ30による打撃による衝撃を受け、徐々に分解する。汚染土壌塊PS−0の分解物のうち、粒径が4mmより小さいものは濾過体14を通過して濾過体14の下側領域18に落下する。粒径が4mm以上の土壌塊の残渣PS−1(例えば、ガラ、石、金属片、木片等)は、略円筒体20内の濾過体14上を側面20a側までゆっくりと移動した後、土壌塊残渣排出口22から筒体12外へと排出される。
【0038】
濾過体14を通過して濾過体14の下側領域18に落下した土壌塊の濾物PS−2は、シャワーノズル34より供給された水と共にスクリューコンベヤ42により筒体12の傾斜下方側へ送られ、土壌塊濾物排出口46から振動ふるい52のふるい部48上に落下する。
【0039】
ふるい部48上に落下した土壌塊の濾物PS−2のうち、粒径が2mmより小さい細粒土PS−3は、ふるい部48を通過して濾物受け部50へと落下する。この細粒土PS−3、すなわち、汚染物が蓄積しやすいスラリー状態の細粒土は、移送管59を介して後述する洗浄機構2へ移送され、洗浄処理を受ける。
【0040】
土壌塊の濾物PS−2からの分級物のうち、ふるい部48を通過しなかった分級物PS−4(粒径が4mmより小さく、且つ2mm以上の砂粒、礫等)は、ふるい部48の傾斜に従って礫受け槽54方向へと移動し、スロープ56を介して礫受け槽54内へと落下する。また、略円筒体20内における土壌塊PS−0の解泥後、濾過体14を通過できなかった粒径4mm以上の土壌塊の残渣PS−1は、土壌塊残渣排出口22から筒体12外へと排出された後、スロープ24を介してズリ受け槽58内へと落下する。
【0041】
次に、本発明の実施の形態に係る土壌洗浄槽60を説明する。図6に示したように、当該土壌洗浄槽60は汚染土壌PSの洗浄システムにおける洗浄機構2を構成している。図1は、本発明の実施の形態に係る土壌洗浄槽60を説明するための図であり、図2は、同図における土壌洗浄槽60を矢印100方向から見た図である。また、図3は図2のIII−III線断面図である。図示のように、土壌洗浄槽60は、解泥・分級機構1から移送管59を介して移送されてきた細粒土PS−3が投入される有底の筒状体62と、筒状体62の底部近傍から細粒土PS−3を水と共に排出させ、筒状体62の上部側から筒状体62内に再供給して環流させる環流機構64とから主に構成されている。
【0042】
まず、筒状体62の構成について説明する。筒状体62は円形の底部66と周壁68を有する略円筒体として構成されている。周壁68の下部、すなわち、底部66近傍には、細粒土PS−3を水と共に排出する排出口70が設けられており、更に周壁68には、排出口70から排出された細粒土PS−3と水を筒状体62内に再供給する再供給口72が設けられている。再供給口72は、周壁68の上部側から下部側まで、すなわち、筒状体62の上部側から下部側まで、筒状体62の高さ方向略全長に亘って一定の間隔をおいて6口を一組として多段式に設けられている。この6口一組の再供給口72は、筒状体62の伸長方向の中心線を軸として周壁68の周方向に90度ずつ回転した位置に、計4箇所設けられている。従って、筒状体62全体では、合計24個の再供給口72が設けられている。これら再供給口72は全て、筒状体62の径方向に対して平行に、且つ細粒土PS−3と水とが周壁68内面に沿って筒状体62の円周方向に噴出するように周壁68に対し開口して設けられている。そして、これら再供給口72は全て、図1における100方向から筒状体62を見た場合に、筒状体62の伸長方向の中心線を軸として反時計回りとなる方向を向くように、すなわち、細粒土PS−3と水とが同一円周方向に噴出するように設けられている。
【0043】
筒状体62の底部66には、底部66の中心点Cが筒状体62内方へ突出しており、この中心点Cを頂点として、側面が底部66の縁部近傍まで延在する略円錐体の突出部67が設けられている。そして、底部66には筒状体62内に微細気泡を噴出可能な噴出口76が、底部66の中心点Cから底部66の縁部にかけて放射状に多数配置されているので、底部66の全面に亘って噴出口76が設けられた構成となっている。
【0044】
筒状体62の周壁68の上部には、移送管59を介して解泥・分級機構1から移送された細粒土PS−3を土壌洗浄槽60に投入するための汚染土壌投入口78が設けられている。さらに、筒状体62の周壁68の上部には細粒土PS−3の土壌洗浄槽60への投入時において、筒状体62からあふれ出したウワ水を排出するウワ水排出口80が設けられている。
【0045】
次に、細粒土PS−3を水と共に筒状体62内から筒状体62外へ排出させ、再び水と共に筒状体62内へと再供給して環流させる環流機構64の構成を説明する。環流機構64は、一端が筒状体62の周壁68の排出口70に取り付けられており、他端が筒状体62の周壁68の再供給口72に取り付けられた環流管82を有する。環流管82の他端側は、9つの分岐口を有する中空の柱体として構成された分岐柱84−1の分岐口の1つに接続されて8叉に分岐されている。そして分岐柱84−1の6つの分岐口から、6叉の他端が分岐柱84−1の正面に位置して筒状体62の高さ方向に縦列する6口一組の再供給口72にそれぞれ取り付けられている。また、他の1つの分岐口には、洗浄後の筒状体62内の汚染土壌PSを水と共に筒状体62外部へと抜き出して洗浄済み土壌貯留槽等(図示せず)へと移送する移送管75が取り付けられており、移送管75の分岐柱84−1近傍には、ボールバルブVが開閉自在に設けられている。残りの1つ分岐口から、残りの1叉の他端が、分岐柱84−1と一定の間隔をおいて隣接する分岐柱84−2(84−1と異なり、分岐口は8つである。後述する84−3、84−4も同様である。)に取り付けられて更に7叉に分岐している。以降同様に分岐柱84−3、84−4(図示せず)を介して残り18口の再供給口72に対し、残り18叉に分岐した環流管82の他端がそれぞれ取り付けられる。分岐柱84−1と環流管82の一端との間の環流管82の途中位置には、流体移送ポンプP2が設けられており、流体移送ポンプP2を起動することにより筒状体62内の細粒土PS−3が水と共に環流する。更に、移送管75が取り付けられた分岐口以外の分岐柱84の全ての分岐口には、1方コック(図示せず)が取り付けられており、これによりそれぞれの再供給口72からの細粒土PS−3と水の噴出量を好適な量に調節することができる。
【0046】
細粒土PS−3の洗浄に用いる水、すなわち、洗浄水は、土壌の汚染物質によって適宜変更可能である。例えば、油等有機の汚染物質に対しては、次亜塩素酸を含む強酸性電解水を有効に使用することができ、重金属等無機の汚染物質に対しては、塩酸等の強酸性水溶液を有効に使用することができる。
【0047】
次に、洗浄機構2、すなわち、本発明の実施の形態に係る土壌洗浄槽60を用いた細粒土PS−3の洗浄処理について説明する。まず、上述の解泥・分級機構1による処理が実施され、抽出された細粒土PS−3が移送管59を介して洗浄水と共に汚染土壌投入口78から筒状体62内に投入される。細粒土PS−3は一定量になるまで筒状体62中に投入され続け、その間、洗浄水の上澄み液はウワ水排出口80から排出される。ウワ水排出口80から排出された洗浄水は、回収して解泥・分級機構1、具体的には、解泥機10のシャワーノズル34から土壌塊PS−0に対して供給されても良く、サイクロン等により土壌粒子を除去した後に洗浄水の貯水槽(図示せず)に回収されても良い。一定量の細粒土PS−3が筒状体62内に投入されたら、細粒土PS−3の筒状体62内への投入を停止する。その後、流体移送ポンプP2を起動し、筒状体62の周壁68下部に設けられた排出口70から細粒土PS−3が洗浄水と共に筒状体62外に排出され、環流管82を通って再供給口72から筒状体62内に再供給されることにより、細粒土PS−3は筒状体62を環流する。この環流作用により、底部66に沈殿した細粒土PS−3を再供給口72から再供給し、攪拌洗浄することができる。
【0048】
更に、筒状体62全体で計24個の再供給口72が、細粒土PS−3と水を同一円周方向に噴出するように設けられているので、筒状体62内には周壁68内面に沿って円周方向に継続的に回転する強力な回転流が発生し、この回転流により細粒土PS−3の効果的な攪拌洗浄が行われる。そして、筒状体62の周壁68の上部側から下部側まで、すなわち、周壁68の高さ方向全長に亘って一定間隔置きに6口一組の再供給口72が多段式に設けられており、この6組一口の再供給口72が円周方向に均等間隔で4箇所設けられている。従って、筒状体62の上部側から汚染土壌が沈殿する下部側までほぼ均等な勢いを有する回転流を発生させることができ、筒状体62の高さ方向全域に亘って細粒土PS−3をほぼ均質に攪拌洗浄することが可能となる。また、土壌洗浄槽60に投入される汚染土壌PSの細粒部の性質によっては、分岐柱84の分岐口に設けられた一方コックの開き量の調節により、筒状体62の高さ方向で回転流の勢いを調節することも可能である。例えば、洗浄する汚染土壌PSの粒子が比較的大きく、そして比重が比較的大きいものであった場合、筒状体62の上部側の再供給口72に取り付けられた他端の分岐口の一方コックの開き量を絞り、筒状体62の下部側に取付けられた他端の分岐口の一方コックの開き量を上げることで、筒状体62の下部側の回転流の勢いを相対的に強め、この筒状体62の下部側に向かって流勢が強められた回転流により筒状体62の下部側に沈降する汚染土壌PSの粒子に対してより効果的な攪拌洗浄を施すことが可能になる。
【0049】
ここで、筒状体62内に周壁68内面に沿って円周方向に継続的に回転する回転流が生じるということは、筒状体62の伸長方向の軸中心が回転流の渦中心となるために軸中心において流勢が弱くなり、底部66の中心点C近傍に沈殿した細粒土PS−3には十分な攪拌作用が及ばないことが懸念される。しかし、底部66には上述のように筒状体62の内方に突出する略円錐体の突出部67が設けられているので、中心点C近傍に沈殿する細粒土PS−3は、この略円錐体の突出部67の側面の傾斜に沿って自重により筒状体62の径方向へ移動し、移動すると共に流勢が増す回転流により再び攪拌作用を受けることができる。同時に、上述のように底部66には空気を噴出する噴出口76が全面に亘って設けられているため、ここから噴出された空気によって底部66に沈降する細粒土PS−3は筒状体62上方へと噴き上げられ、回転流によってさらなる攪拌を受けることができる。
【0050】
所定時間の環流による細粒土PS−3の攪拌操作の終了後、底部66の溝部66aに設けられた水供給口(図示せず)より水を供給すると共にウワ水排出口80から洗浄水を排出し、細粒土PS−3のすすぎが行われる。ウワ水排出口80から排出された洗浄水は、濾過処理された後、貯水槽に送られて洗浄水として再利用される。
【0051】
すすぎが行われた後、分岐柱84−1の、筒状体62及び分岐柱84−2へ向かう側に設けられた一方コック(図示せず)が閉じられ、移送管75に設けられたボールバルブVが開かれ、環流管82の流路が筒状体62外部へ液を抜き出す方向へ変更される。そして、流体移送ポンプP2を起動することにより、すすぎ後の細粒土PS−3が、移送管75を介して水と共に筒状体62外へ抜き出され、洗浄済み土壌貯留槽等(図示せず)へと移送される。そこで、細粒土PS−3は、汚染物質が除去されたか否かを試験により確認される。試験結果に応じ、再度土壌洗浄槽60へ送られて洗浄処理が行われるか、又は浄化済み土壌と認定され、適宜、地盤への埋め戻し等が行われるかが判断される。
【0052】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0053】
例えば、本実施の形態においては、6口一組の再供給口72を一定間隔置きに周壁68全長に亘って配置する構成としたが、再供給口72の配置は、汚染土壌PSの性質に合わせて効果的な洗浄が行われるように配置されていれば良い。例えば、比較的粒子径が大きく、比重が大きい汚染土壌PSを洗浄するための土壌洗浄槽ならば、筒状体62の下部側の再供給口72の配置間隔を密にすることで、比較的粒子径が大きく、比重が大きい汚染土壌PSに対してより効果的な攪拌洗浄を施すことが可能となる。
【0054】
また、本実施の形態において、排出口70は周壁68の下部に設けられているが、これに限定されるものではない。排出口70は、筒状体62の底部66に沈殿する汚染土壌PSを排出することができる構成であれば良く、例えば、筒状体62の底部66の溝部66a、すなわち、筒状体62の底部66の溝部66aに設けられていても良い。
【0055】
更に、本実施の形態においては、土壌洗浄槽に投入される汚染土壌として粒径が2mmより小さい細粒土PS−3が用いられているが、この粒径に限定されるものではない。具体的には、本発明に係る土壌洗浄槽に投入される汚染土壌PSは、水と共にポンプ輸送等する際に汚染土壌PSが流動性をもって移送可能な粒径以下であれば良い。
【符号の説明】
【0056】
1 解泥・分級機構
2 洗浄機構
10 解泥機
60 土壌洗浄槽
62 筒状体
64 環流機構
66 底部
67 略円錐体の突出部
68 周壁
70 排出口
72 再供給口
76 噴出口
82 環流管
P1 流体移送ポンプ
P2 流体移送ポンプ
PS−0 汚染土壌塊
PS−1 土壌塊の残渣
PS−2 土壌塊の濾物
PS−3 細粒土
PS−4 土壌塊の濾物PS−2からの分級物のうち、ふるい部48を通過しなかった分級物
V ボールバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底の筒状体内に汚染土壌を投入し、水と共に攪拌して洗浄する土壌洗浄槽であって、
前記汚染土壌を前記水と共に前記筒状体の底部又は底部近傍の排出口から排出させ、前記筒状体の上部側の再供給口から前記筒状体内に再供給して環流させる環流機構を有し、
該環流機構は、
一端が前記筒状体の前記排出口に取り付けられ、他端が前記筒状体の前記再供給口に取付けられた環流管と、該環流管の途中位置に設けられた流体移送ポンプと、を有することを特徴とする土壌洗浄槽。
【請求項2】
前記筒状体は略円筒状に形成されており、
前記再供給口が、前記汚染土壌を前記水と共に前記筒状体の周壁内面に沿って同一円周方向に噴出するように前記周壁に対し開口していることを特徴とする請求項1に記載の土壌洗浄槽。
【請求項3】
前記再供給口は複数設けられており、
前記環流管の前記再供給口側の端部は、前記複数の再供給口の数に対応して分岐されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の土壌洗浄槽。
【請求項4】
前記複数の再供給口が、前記筒状体の高さ方向に所定間隔をおいて配置されていることを特徴とする請求項3に記載の土壌洗浄槽。
【請求項5】
前記筒状体の前記底部には、前記筒状体内方へ向けて突出し、斜面が前記底部の縁部近傍まで延在する略錐体の突出部が設けられ、
前記排出口は、前記筒状体の底部の最下部又は前記筒状体の側壁の最下部近傍に設けられたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の土壌洗浄槽。
【請求項6】
微細気泡を前記筒状体内に噴出可能な複数の噴出口が、前記筒状体の前記底部に設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の土壌洗浄槽。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−106158(P2012−106158A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255523(P2010−255523)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(390034430)大和小田急建設株式会社 (13)
【Fターム(参考)】