説明

汚染物質を含む流体を処理するための凝集組成物

凝集組成物は不溶性希土類元素含有化合物とポリマーバインダとを含む。不溶性希土類元素含有化合物は、セリウム、ランタン、またはプラセオジムのうちの1つ以上を含むことが可能である。適切な不溶性セリウム含有化合物は、炭酸セリウムまたはセリウム塩に由来することが可能である。特定の一実施形態では、凝集組成物は、1つ以上のセリウム酸化物と、ポリマーバインダと、随意では流動補助剤と、のみからなる。この組成物を製造する方法は、不溶性希土類元素含有化合物をポリマーバインダと混合して混合物を形成することと、この混合物を機械的処理、化学処理、および/または熱処理にさらし、希土類元素化合物をポリマーバインダに付着させることと、を含む。この凝集組成物は、流体中の1つ以上の化学的および生物学的な汚染物質を除去するために、様々な流体処理用途において用いられることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に流体処理の分野に関し、特に、溶液および気体を処理するための組成物に関する。さらに特定の態様では、本発明は、1つ以上の化学的および生物学的な汚染物質を含有している水溶液および気体を処理する際の使用に適切な凝集組成物と、そのような凝集組成物を製造する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
水および他の水溶液の精製およびろ過は、飲用に適した安全な飲料水の提供、様々な工業プロセスに関連したフィード、処理流、および副産物の処理、ならびに都市廃水の処理および取扱いなど、多くの用途に必要である。水溶液を精製する既知の方法には、逆浸透、蒸留、イオン交換、化学吸着、凝固、凝集、およびろ過または滞留が含まれる。これらの精製方式の多くは、高価でエネルギ効率が悪く、大小の規模のいずれにおいても、実施には相当なノウハウや知識が必要である。その結果、多くの高度な流体精製技術では、都市用途または工業用途以外の用途は限定されたものであった。
【0003】
細菌および菌類など生物学的な汚染物質は、限外ろ過によって水溶液から除去可能であるが、ウィルスは一般に小さすぎるので、ろ過は精製の有効な手段ではない。ろ過はわずかにしか有効でないため、化学添加物を用いる処理が、そのような汚染物質の存在に対処するための方法として選択される傾向がある。化学添加物の例には、塩素、過酸化水素、オゾンまたは4級アミン塩などの強い酸化剤、凝集剤、および沈殿剤が含まれる。しかしながら、化学添加物の使用には、処理した溶液の入念な管理および監視や、取扱い、輸送、および貯蔵が必要であり、多くの用途において、それらの使用をより高価なものに、またあまり望ましくないものにしている。その結果、水溶液から生物学的汚染物質を除去するための単純化された手段が所望される。
【0004】
加えて、最近のテロリズムの高まりにより、世界中の政府は、化学兵器、生物学試薬、工業用化学薬品、および他の有毒物質の効果について、次第に関心を有するようになってきた。国家が産業用途および兵器用途の両方のためにそうした材料を備蓄しているので、そのような汚染物質は、軍人および民間人に対する、吸入、吸収、および/または食物摂取を通じた潜在曝露による危険を意味する。その結果、化学的および生物学的な汚染物質による地下水その他の飲用水源の汚染は、軍や、自治体およびユーティリィティ管轄の主要な懸念である。
【0005】
一般に知られている化学兵器には、2,2’−ジクロロジエチルスルフィド(HD、マスタード、マスタードガス、Sマスタード、またはサルファマスタード)など有機イオウ系の化合物が含まれる。2,2’−ジクロロジエチルスルフィドは「水疱」剤または「びらん性」剤として知られており、高用量では死に至ることもある。他の化学兵器には、O−エチル−S−(2−ジイソプロピルアミノ)エチルメチルホスホノチオラート(VX)、2−プロピルメチルホスホノフルオリダート(GBまたはサリン)、3,3’−ジメチル−2−ブチルメチルホスホノフルオリダート(GDまたはソマン)など、有機リン系の(「OP」)化合物が含まれる。これらは中枢神経系を攻撃して麻痺を引き起こし、場合によっては短期間で死に至らしめることがあるので、一般に「神経」剤と呼ばれる。他の化学種汚染物質には、パラチオン、パラオクソン、およびマラチオンなど、一定の工業用化学薬品、殺虫剤、および農薬が含まれ、それらも有害な効果を生じることがある。
【0006】
化学兵器に暴露された表面の汚染を除去する方法および物質は、本技術分野において知られている(非特許文献1)。これらの方法および物質は、化学兵器と化学的に反応する
ことおよび/または化学兵器を吸着することによって機能する傾向にあるが、その化学兵器に暴露された車両、装備、人、および他の表面の汚染を除去することに専ら関する。そのような方法および物質は、溶液中の化学兵器を処理するには適切でないまたは充分に有効ではないので、神経剤、びらん性剤、農薬、殺虫剤、および他の有毒化学物質を含むがそれらに限定されない広範な化学的な汚染物質を水溶液から除去するおよび/または取り除くための単純化された手段の必要が依然として存在する。
【0007】
さらに、吸入による化学的および生物学的な汚染物質への暴露も、適切に対処されていない懸念である。空気の質を制御するために用いられる基本的な方法には、ろ過、固体吸着剤上への吸収、静電気による沈殿、化学的な変換、熱、紫外線、およびマイクロ波を含む様々な形態の放射を用いる処理が含まれる。気体ろ過法は、フィルタのポアサイズによって制限される傾向があり、多くの生物学的および化学的な汚染物質を除去することは一般に不可能である。極小のポアサイズの使用はフィルタ上の粒子による詰まりのためにフィルタを挟んで過剰な圧力降下を発生させる傾向にあり、これは多くの用途には許容されるものではない。静電気による沈殿は、粒子に電荷を与え、次いで、気体流から収集プレート上など逆の電荷の与えられた表面上に、それらの粒子を除去することによって機能する。この技術は、高速の気体流、揮発性の化学的汚染物質を含有している流体、または電荷を与えることが困難な汚染物質に対しては、充分に適合していない。化学反応はわずかな体積の気体に対してしか有効でない傾向があり、残存する望ましくない(場合によっては有害な)薬剤および副生成物を除去するには、気体の追加の処理または取扱いが必要なことがある。加熱は、気体から多くの種類の生物学的および化学的な汚染物質を除去するのに有効であるが、比較的高速な気体流に対しては無効である傾向がある。紫外線は有効なことがあるが、紫外線光がガス流のうち光源のすぐ近くの部分における汚染物質にしか吸収されない傾向があるので、比較的大きな体積の気体に実施することは困難である。
【0008】
吸着剤上に気体を吸着することは、気体から除去される汚染物質に吸着剤が特異的に一致する場合、特に有効なことがある。しかしながら、汚染物質の詳細な性質が知られていない場合、または気体流が数々の多様な汚染物質を含有している場合には、既知の吸着剤の使用では適切に気体が精製されない場合がある。その結果、水溶液および気体の両方を含む様々な流体中に存在し得る細菌、ウィルス、神経剤、びらん性剤、農薬、殺虫剤、および他の有毒化学物質など、多様な生物学的および化学的な汚染物質を除去、不活性化、および/または除毒する組成物の必要が依然として存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ヤン(Yang)ら「化学兵器の汚染除去(Decontamination of Chemical Warfare Agents)」、Chem Rev.,1992年、第92巻、pp.1729−1743
【発明を実施するための形態】
【0010】
一実施形態では、本発明は、1つ以上の汚染物質を含有している流体を処理するための凝集組成物を提供する。この凝集組成物は、不溶性希土類元素含有化合物とポリマーバインダとを含む。
【0011】
ポリマーバインダは、組成物の約15重量%未満、一部の場合には約10重量%未満、さらに他の場合には組成物の約8重量%未満であってよい。ポリマーバインダは、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマー、エラストマー性ポリマー、セルロース性ポリマー、およびガラスからなる群から選択される1つ以上のポリマーを含んでよい。ポリマーバインダがエチレン−ビニルコポリマーを含む場合、不溶性希土類元素含有化合物は無水不溶性希土類元素含有化合物のみからなる。
【0012】
不溶性希土類元素含有化合物は、任意の不溶性希土類元素化合物を含んでよいが、特に、セリウム、ランタン、またはプラセオジムのうちの1つ以上を含んでよい。一部の実施形態では、不溶性希土類元素含有化合物は、炭酸セリウムの熱分解またはシュウ酸セリウムの分解に由来する、セリウム含有化合物を含んでよい。他の実施形態では、不溶性希土類元素含有化合物は、セリウム塩の沈殿に由来するセリウム含有化合物を含んでよい。他の実施形態では、不溶性希土類元素含有化合物はセリウム酸化物を含む。より詳細な一実施形態では、凝集組成物は、1つ以上のセリウム酸化物と、ポリマーバインダと、随意では流動補助剤と、のみからなる。不溶性希土類元素含有化合物は、ポリマーバインダの外面に付着した粒子を含んでよい。
【0013】
凝集組成物は、約1m/g以上、一部の場合には約5m/g以上、さらに他の場合には約25m/g以上の平均表面積を有する、凝集した粒子を含んでよい。凝集組成物は、約1μm以上の平均凝集寸法を有する凝集した粒子を含んでよい。凝集組成物は、水溶液から凝集組成物について約50mg/g以上のヒ素を除去する吸着能を有する。一部の場合には、水溶液からヒ素を除去するための組成物の吸着能は、凝集組成物について約60mg/g以上、他の場合には約70mg/g以上である。
【0014】
本発明の別の態様では、1つ以上の汚染物質を含有している流体を処理するための凝集組成物を製造する方法を提供する。この方法は、不溶性希土類元素含有化合物をポリマーバインダと混合して混合物を形成する最初の工程を含む。
【0015】
この混合物を機械的処理、化学処理、および熱処理のうちの1つ以上にさらして、不溶性希土類元素含有化合物をポリマーバインダに付着させる。機械的処理には、混合物の小型化、圧縮、プレス、混合、および押出、ならびに混合物に対する振動または波動の適用が含まれる。化学処理には、化学的な変換および接着剤の使用のうちの1つ以上が含まれる。熱処理には、混合物を一定の高温まで加熱し、混合物を冷却させて凝集組成物を形成することが含まれる。一部の実施形態では、この高温は、ポリマーバインダが柔軟性または粘着性を示し、不溶性希土類元素含有化合物がポリマーバインダに付着する、ポリマーバインダの融点未満の温度である。不溶性希土類元素含有化合物が粒子を含む一実施形態では、粒子はポリマーバインダの外面に付着してよい。
【0016】
不溶性希土類元素含有化合物は、ポリマーバインダの外面に付着した粒子を含んでよい。随意では、この方法は、不溶性希土類元素含有化合物とポリマーバインダとの加熱した混合物を圧縮することを含んでよい。
【0017】
随意の工程には、凝集組成物の寸法を減少させることが含まれる。寸法減少は、凝集組成物の切断、砕化、粉化、および篩分のうちの1つ以上によって行われてよい。
ポリマーバインダは、組成物の約15重量%未満、一部の場合には約10重量%未満、さらに他の場合には組成物の約8重量%未満であってよい。ポリマーバインダは、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマー、エラストマー性ポリマー、セルロース性ポリマー、およびガラスからなる群から選択される1つ以上のポリマーを含んでよい。ポリマーバインダがエチレン−ビニルコポリマーを含む場合、不溶性希土類元素含有化合物は無水不溶性希土類元素含有化合物のみからなる。
【0018】
ポリマーバインダは固体であってよい。一部の実施形態では、ポリマーバインダは、繊維、粒子、繊維または粒子のうちの1つ以上の凝集体、およびそれらの混合物のうちの1つ以上を含む。不溶性希土類元素含有化合物は、約1nmより大きい平均粒子寸法を有する粒子を含んでよい。不溶性希土類元素含有化合物は、任意の不溶性希土類元素化合物を含んでよいが、特に、セリウム、ランタン、またはプラセオジムのうちの1つ以上を含ん
でよい。一部の実施形態では、不溶性希土類元素含有化合物は、炭酸セリウムの熱分解に由来するセリウム含有化合物を含んでよい。他の実施形態では、不溶性希土類元素含有化合物は、セリウム塩の沈殿に由来するセリウム含有化合物を含んでよい。他の実施形態では、不溶性希土類元素含有化合物はセリウム酸化物を含む。より詳細な一実施形態では、凝集組成物は、1つ以上のセリウム酸化物と、ポリマーバインダと、随意では流動補助剤と、のみからなる。
【0019】
本発明の代表的な実施形態を以下に記載する。明瞭さのために、本明細書においては実際の実施形態の全ての特徴が必ずしも記載されている訳ではない。当然の事ながら、そのような実際の実施形態の開発においては、実施毎に異なるシステムや業種に関連した制約に準拠することなど、開発者の特定の目標を達成するために数々の実施に特異的な判断を行う必要があることが認められる。さらに、そのような開発努力は複雑で時間を必要とする場合があるとしても、本開示の利点を有する分野の当業者にはルーチン作業であることが認められる。
【0020】
本明細書に記載の凝集組成物を用いて、水溶液または気体中の1つ以上の化学的および生物学的な汚染物質を除去、不活性化、および/または除毒することが可能である。本明細書に記載の組成物を用いて処理することの可能な溶液の例には、特に、飲用水システム、廃水処理システム、ならびに様々な工業プロセスのフィード、処理流、および廃棄流における溶液が含まれる。さらに、戦場など開放環境において、建物その他同様の構造内、車両内(例えば、飛行機、宇宙船、船舶、または軍用車両内)など密閉空間において、および、そのような汚染物質の見出され得る任意の場所において、そのような汚染物質を含有する気体を処理する必要が存在する。記載の組成物を用いて、多様な体積および流速特性を有する水溶液および気体から、化学的および生物学的な汚染物質を除去することが可能であり、記載の組成物を様々な固定、移動、および携帯用途に適用することが可能である。本明細書における開示の一部では水からの汚染物質の除去について記載しているが、そのような参照は例示であって、限定として解釈されるものではない。
【0021】
本明細書において用いられる「1つ以上」および「少なくとも1つ」は、X、Y、およびZ、またはX−X、Y−Y、およびZ−Zなど、幾つかの要素または要素のクラスの前に置かれる場合、X、Y、Zから選択される1つの要素、同じクラスから選択される要素の組み合わせ(XおよびXなど)や、2つ以上のクラスから選択される要素の組み合わせ(YおよびZなど)を参照することが意図される。
【0022】
用語「除去」または「除去する」には、細菌、ウィルス、菌類、および原虫類などの病原性その他の微生物や、溶液または気体中に存在し得る化学的な汚染物質の吸着、沈殿、変換、および死滅が含まれる。用語「不活性化する」または「不活性化」、「除毒する」または「除毒」、および「中和」には、流体から生物学的または化学的な汚染物質を除去すること、または、例えば、微生物を死滅させることもしくは化学物質を無毒な形態もしくは種に変換することによってなど、ヒトその他の動物に対し非病原性または良性なものとすることが含まれる。
【0023】
用語「生物学的汚染物質」、「ばい菌」、「微生物」などには、水溶液中に見出されることのある細菌、菌類、原虫類、ウィルス、藻類、および他の生物学的存在および病原性の種が含まれる。生物学的汚染物質の特定の非限定的な例には、大腸菌(Escherichia coli)、大便連鎖球菌(Streptococcus faecalis)、赤痢菌(Shigella spp)、レプトスピラ(Leptospira)、レジオネラ・ニューモフィラ (Legimella pneumophila)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomo
nas aeruginosa)、クレブシェラ・テリゲナ(Klebsiella terrigena)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、およびチフス菌(Salmonella typhi)などの細菌、A型肝炎、ノロウイルス、ロタウイルス、および腸内ウイルスなどのウィルス、赤痢アメーバ (Entamoeba histolytica)、鞭毛虫(Giardia)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium parvum)などの原虫類が含まれる。生物学的汚染物質には、一般に非病原性であるが除去されることが有利である菌類または藻類など、様々な種も含まれてよい。そのような生物学的汚染物質はどのようにして溶液または気体中に存在するに至ったか(自然発生によってまたは意図的なもしくは意図的でない汚染によって)は、本発明を限定するものではない。
【0024】
用語「化学的汚染物質」または「化学物質」には、既知の化学兵器、ならびに農薬、殺虫剤、および肥料などの工業用化学薬品および物質が含まれる。一部の実施形態では、化学的汚染物質には、有機イオウ剤、有機リン剤、またはそれらの混合物のうちの1つ以上が含まれてよい。そのような薬剤の特定の非限定的な例には、サリンおよびソマンなどのO−アルキルホスホノフルオリダート、タブンなどのO−アルキルホスホラミドシアニダート、VXなどのO−アルキル−S−2−ジアルキルアミノエチルアルキルホスホノチオラートおよび対応するアルキル化またはプロトン化塩、マスタード化合物(2−クロロエチルクロロメチルスルフィド、ビス(2−クロロエチル)スルフィド、ビス(2−クロロエチルチオ)メタン、1,2−ビス(2−クロロエチルチオ)エタン、1,3−ビス(2−クロロエチルチオ)−n−プロパン、1,4−ビス(2−クロロエチルチオ)−n−ブタン、1,5−ビス(2−クロロエチルチオ)−n−ペンタン、ビス(2−クロロエチルチオメチル)エーテル、およびビス(2−クロロエチルチオエチル)エーテルを含む)、ルイサイト(2−クロロビニルジクロロアルシン、ビス(2−クロロビニル)クロロアルシン、トリス(2−クロロビニル)アルシン、ビス(2−クロロエチル)エチルアミン、およびビス(2−クロロエチル)メチルアミンを含む)、サキシトキシン、リシン、アルキルホスホニルジフルオリド、アルキルホスホニット、クロロサリン、クロロソマン、アミトン、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−1−プロペン、3−キヌクリジニルベンジラート、メチルホスホニルジクロリド、ジメチルメチルホスホナートジアルキルホスホラミジックジハライド、アルキルホスホラミダート、ジフェニルヒドロキシ酢酸、キヌクリジン−3−オール、ジアルキルアミノエチル−2−クロリド、ジアルキルアミノエタン−2−オール、ジアルキルアミノエタン−2−チオール、チオジグリコール、ピナコリルアルコール、ホスゲン、塩化シアン、シアン化水素、クロロピクリン、オキシ塩化リン、三塩化リン、五塩化リン、アルキルオキシ塩化リン、アルキルホスフィット、三塩化リン、五塩化リン、アルキルホスフィット、イオウ一塩化物、イオウ二塩化物、および塩化チオニルが含まれる。
【0025】
本明細書に記載の組成物と有効に処理され得る工業化学薬品および物質の非限定的な例には、リン酸塩、硫酸塩、および硝酸塩などのアニオン性官能基や、塩化物、フッ化物、臭化物、エーテル、およびカルボニル化合物などの電気陰性官能基を有する物質が含まれる。特定の非限定的な例には、アセトアルデヒド、アセトン、アクロレイン、アクリルアミド、アクリル酸、アクリロニトリル、アルドリン/ディルドリン、アンモニア、アニリン、ヒ素、アトラジン、バリウム、ベンジジン、2,3−ベンゾフラン、ベリリウム、1,1’−ビフェニル、ビス(2−クロロエチル)エーテル、ビス(クロロメチル)エーテル、ブロモジクロロメタン、ブロモホルム、ブロモメタン、1,3−ブタジエン、1−ブタノール、2−ブタノン、2−ブトキシエタノール、ブチルアルデヒド(butraldehyde)、二硫化炭素、四塩化炭素、硫化カルボニル、クロルデン、クロロデカオンおよびマイレック、クロルフェンビンホス、塩素化ジベンゾ−p−ダイオキシン(CDD)、塩素、クロロベンゼン、クロロジベンゾフラン(CDF)、クロロエタン、クロロホルム、クロロメタン、クロロフェノール、クロルピリホス、コバルト、銅、クレオソート
、クレゾール、シアニド、シクロヘキサン、DDT、DDE、DDD、DEHP、ジ(2−エチルヘキシル)フタラート、ジアジノン、ジブロモクロロプロパン、1,2−ジブロモエタン、1,4−ジクロロベンゼン、3,3’−ジクロロベンジジン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエテン、1,2−ジクロロエテン、1,2−ジクロロプロパン、1,3−ジクロロプロペン、ジクロルボス、ジエチルフタラート、ジイソプロピルメチルホスホナート、ジ−n−ブチルフタラート、ジメトエート、1,3−ジニトロベンゼン、ジニトロクレゾール、ジニトロフェノール、2,4−および2,6−ジニトロトルエン、1,2−ジフェニルヒドラジン、ジ−n−オクチルフタラート(DNOP)、1,4−ジオキサン、ダイオキシン、ジスルホトン、エンドスルファン、エンドリン、エチオン、エチルベンゼン、エチレンオキシド、エチレングリコール、エチルパラチオン、フェンチオン、フッ化物、ホルムアルデヒド、フロン113、ヘプタクロルおよびヘプタクロルエポキシド、ヘキサクロロベンゼン、ヘキサクロロブタジエン、ヘキサクロロシクロヘキサン、ヘキサクロロシクロペンタジエン、ヘキサクロロエタン、ヘキサメチレンジイソシアナート、ヘキサン、2−ヘキサノン、HMX(オクトゲン)、作動液、ヒドラジン、硫化水素、ヨウ素、イソホロン、マラチオン、MBOCA、メタミドホス、メタノール、メトキシクロル、2−メトキシエタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルメルカプタン、メチルパラチオン、メチル−t−ブチルエーテル、メチルクロロホルム、塩化メチレン、メチレンジアニリン、メタクリル酸メチル、メチル−tert−ブチルエーテル、マイレックスおよびクロルデコン、モノクロトホス、N−ニトロソジメチルアミン、N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソジ−n−プロピルアミン、ナフタレン、ニトロベンゼン、ニトロフェノール、ペルクロロエチレン、ペンタクロロフェノール、フェノール、ホスファミドン、リン、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、多環式芳香族炭化水素(PAH)、プロピレングリコール、無水フタル酸、ピレトリンおよびピレスロイド、ピリジン、RDX(シクロナイト)、セレン、スチレン、二酸化イオウ、三酸化イオウ、硫酸、1,1,2,2−テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、テトリル、タリウム、四塩化物、トリクロロベンゼン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン(TCE)、1,2,3−トリクロロプロパン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリニトロベンゼン、2,4,6−トリニトロトルエン(TNT)、酢酸ビニル、および塩化ビニルが含まれる。
【0026】
本発明の一実施形態では、凝集組成物は、1つ以上の化学的および生物学的な汚染物質を含有している流体を処理するために提供される。この凝集組成物は、不溶性希土類元素含有化合物とポリマーバインダとを含む。
【0027】
本明細書において用いられる「不溶性」は、水に不溶であるか、多くとも、標準状態の温度および圧力下において水にわずか(sparingly)にしか溶けない物質を表すことが意図される。
【0028】
この組成物は、10.01重量%未満または10.01重量%を超える不溶性希土類元素含有化合物を含んでよい。不溶性希土類元素含有化合物は、凝集組成物の約11重量%より多く、約12重量%より多く、または約15%重量%より多くを構成してよい。一部の場合には、より高い濃度の希土類元素含有化合物が望ましい。用途および組成物中の他の成分の性質に応じて、この組成物は、不溶性希土類元素含有化合物の約20重量%以上、他の場合には約50重量%以上、さらに他の場合には約75重量%以上、さらにまた他の場合には95%重量以上であってよい。
【0029】
不溶性希土類元素含有化合物は、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウムエルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテチウムを含む、リアアース
のうちの1つ以上を含んでよい。一部の実施形態では、不溶性希土類元素含有化合物は、セリウム、ランタン、またはプラセオジムのうちの1つ以上を含んでよい。不溶性希土類元素含有化合物は市販されており、任意の供給源から、または当業者に知られている任意の製法によって得ることができる。組成物は単一の希土類元素含有化合物を含む必要はなく、2つ以上の不溶性希土類元素含有化合物を含んでよい。そのような化合物は同じ希土類元素を含有しても異なる希土類元素を含有してもよく、混合した原子価または酸化状態を含んでよい。例として、不溶性希土類元素含有化合物がセリウム酸化物を含むとき、凝集組成物はCeO(IV)およびCe(III)など1つ以上のセリウム酸化物を含んでよい。
【0030】
不溶性希土類元素含有化合物がセリウム含有化合物を含む一実施形態では、セリウム含有化合物はセリウム塩の沈殿に由来してよい。別の実施形態では、不溶性セリウム含有化合物は炭酸セリウムまたはシュウ酸セリウムに由来してよい。より詳細には、表面積の大きな不溶性セリウム含有化合物は、空気の存在する炉中において、約100℃〜約350℃の温度で炭酸セリウムまたはシュウ酸セリウムを熱的に分解することによって調製されてよい。この温度および圧力の条件は、出発物質であるセリウム含有物質の組成と、不溶性希土類元素含有化合物の所望の物理的特性とに応じて変更されてよい。この反応は次のように要約できる:
Ce(CO + 1/2O → 2CeO+3CO
この生成物は、残留する炭酸塩を除去するために酸で処理され洗浄されてもよい。様々な特徴を有するセリウム酸化物を生成する熱分解方法は、米国特許第5,897,675号明細書(比表面積)、米国特許第5,994,260明細書号(一様なラメラ構造を有するポア)、米国特許第6,706,082号明細書(特定の粒径分布)、および米国特許第6,887,566号明細書(球状粒子)に記載されている。それらの記載を引用によって本明細書に援用する。炭酸セリウムおよび炭酸セリウムを含有している物質は市販されており、当業者に知られている任意の供給源から得ることができる。
【0031】
不溶性希土類元素含有化合物がセリウム酸化物を含む複数の実施形態では、不溶性希土類元素含有化合物は、CeOなどのセリウム酸化物を含んでよい。特定の一実施形態では、凝集組成物は、1つ以上のセリウム酸化物と、ポリマーバインダと、随意では流動補助剤と、のみからなってよい。
【0032】
不溶性希土類元素含有化合物は、凝集組成物中に、粒、結晶、晶子、粒子または他の粒子(本明細書では一般に「粒子」と呼ぶ)のうちの1つ以上の形態で存在してよい。不溶性希土類元素含有化合物の粒子は、約0.5nm以上〜約1μmまたはそれより大きな平均粒子寸法を有してよい。詳細には、そのような粒子は、約0.5nm以上の、約1nmより大きい、より詳細には約5nm以上の、またさらに詳細には約10nm以上の、平均粒子径を有してよい。他の実施形態では、この粒子は、約100nm以上、詳細には約250nm以上、より詳細には約500nm以上、またさらに詳細には約1μm以上の平均粒子寸法を有してよい。
【0033】
溶液または気体中における不溶性希土類元素含有化合物と汚染物質との相互作用を促進するために、凝集組成物は、約1m/g以上の平均表面積を有する不溶性希土類元素含有化合物の凝集された粒子を含んでよい。用途に応じて、より大きな表面積が望ましい場合もある。詳細には、この粒子は、約5m/g以上の、他の場合には約10m/g以上の、さらに他の場合には約25m/gより大きな表面積を有してよい。より大きな表面積が望ましい場合、この粒子は、約70m/gより大きな、他の場合には約85m/gより大きな、さらに他の場合には約115m/gより大きな、さらにまた他の場合には約160m/gより大きな表面積を有してよい。加えて、より大きな表面積を有する粒子が有効であることも想定される。当業者には、溶液または気体が組成物を通じて流
れる用途において、組成物の表面領域は流体と凝集組成物との流体力学に影響を与えることが認められる。その結果、表面積の増大による利益と生じ得る圧力降下などの欠点との考量が必要な場合がある。
【0034】
ポリマーバインダは、所望の寸法、構造、密度、孔隙率および流体の特性を有する凝集の形成のための構成に含まれている。一部の実施形態では、ポリマーバインダは、繊維、粒子、繊維または粒子のうちの1つ以上の凝集体、およびそれらの混合物のうちの1つ以上を含んでよい。適切なポリマーバインダは、使用条件下において、不溶性希土類元素含有化合物を拘束および/または支持する任意のポリマー材料を含んでよい。適切なポリマー性バインダには、天然に得られるポリマーおよび合成ポリマーの両方や、そのようなポリマーの合成修飾物が含まれる。当業者には、ポリマーバインダ材料は、組成物の成分、そのような成分の特性、それらの結合特性、最終組成物の特性、意図される使用方法などの因子に応じて選択されることが認められる。
【0035】
一般に、約50℃〜約500℃の間で溶融するポリマー、より詳細には約75℃〜約350℃の間、さらに詳細には約80℃〜約200℃の間で溶融するポリマーが、組成物の成分を凝集させる際に使用するために適切である。非限定的な例には、約85℃〜約180℃の範囲において軟化または溶融するポリオレフィン、約200℃〜約300℃の範囲において軟化または溶融するポリアミド、および約300℃〜約400℃の範囲において軟化または溶融するフッ素化ポリマーが含まれる。ポリマーバインダの融点は、好適には、選択された不溶性希土類元素含有化合物の焼結温度を超えない。
【0036】
そのようなポリマー材料は、一般に、組成物の全重量に基づき約0wt%〜約90wt%の量で凝集組成物に含まれる。一部の実施形態では、ポリマーバインダは組成物の重量の約15%未満である。より詳細には、ポリマーバインダは組成物の重量の約10%未満であってもよく、他の実施形態では、組成物の重量の約8%未満であってもよい。
【0037】
組成物の所望の特性に応じて、ポリマーバインダは、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマー、エラストマーとして一般に分類される1つ以上のポリマー、またはそれらの組み合わせや、セルロース性ポリマーおよびガラスを含んでよい。適切な熱硬化性ポリマーには、次に限定されないが、ポリウレタン、シリコーン、フルオロシリコーン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、メラミンホルムアルデヒド、および尿素ホルムアルデヒドが含まれる。適切な熱可塑性プラスチックには、次に限定されないが、ナイロンその他のポリアミド、LDPE、LLDPE、HDPEを含むポリエチレンおよび他のポリオレフィンとのポリエチレンコポリマー、ポリ塩化ビニル(可塑化および非可塑化の両方)、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレン、酢酸酪酸セルロースなどのセルロース樹脂、ポリアクリラートおよびポリメチルメタクリラートなどのアクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンまたはアクリロニトリル−スチレンなどの熱可塑性プラスチックブレンドまたはグラフト、ポリカルボナート、ポリビニルアセタート、エチレンビニルアセタート、ポリビニルアルコール、ポリオキシメチレン、ポリホルムアルデヒド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタラートなどのポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、およびレゾールおよびノボラックなどのフェノール−ホルムアルデヒド樹脂が含まれる。適切なエラストマー(elasomer)には、次に限定されないが、天然ゴムおよび/または合成ゴム(スチレン−ブタジエンゴム、ネオプレン、ニトリルゴム、ブチルゴム、シリコーン、ポリウレタン、アルキルクロロスルホン化ポリエチレン、ポリオレフィン、クロロスルホン化ポリエチレン、ペルフルオロエラストマー、ポリクロロプレン(ネオプレン)、エチレン−プロピレン−ジエンテルポリマー、塩素化ポリエチレン、フルオロエラストマー、およびZALAK(商標)(Dupont−Dowエラストマー))が含まれる。ポリマーバインダがエチレン−ビニルコポリマーを含む特定の一実施形態では、不溶性希土類元素含有化合物は無水不溶性希土類元素含有化
合物のみからなる。当業者には、上述の熱可塑性プラスチックのうちの一部は架橋の程度に応じて熱硬化性となること、各々の一部はその機械的特性に応じてエラストマーである場合があることが理解される。上述において用いた分類は理解を容易にするためのものであり、限定または制御と見なされるものではない。
【0038】
セルロース性ポリマーには、綿、紙、および樹木など天然に得られるセルロースおよびセルロースの化学修飾物が含まれる。特定の一実施形態では、不溶性希土類元素含有化合物は紙繊維に混合されてもよく、不溶性希土類元素含有化合物を含む紙ベースのフィルタを形成するために、製紙用パルプへ直接に組み込まれてもよい。
【0039】
ポリマーバインダには、ガラス繊維、ビーズ、およびマットなど、ガラス材料も含まれてよい。ガラス固体は、不溶性希土類元素含有化合物の粒子と混合され、この固体が軟化するまで、または粘着性になり不溶性希土類元素含有化合物がガラスに付着するまで、加熱されてもよい。同様に、押出または紡糸されたガラス繊維は、不溶性希土類元素含有化合物の粒子でコーティングされてもよく、この際、ガラスは溶融状態または部分的に溶融した状態にあるか、接着剤が用いられる。これに代えて、ガラス組成物は製造中、不溶性希土類元素含有化合物でドープされてもよい。基質材料に不溶性希土類元素含有化合物を堆積または付着させるための技術は、米国特許第7,252,694号明細書およびガラス研磨に関する他の参照文献に記載されている。例えば、電気堆積技術および金属接着剤の使用は、米国特許第6,319,108号明細書に記載されており、ガラス研磨の分野において有用である。そのような技術に関する記載を引用によって本明細書に援用する。
【0040】
一部の用途では、米国特許第5,330,770号明細書、米国特許第6,143,318号明細書、および米国特許第6,881,766号明細書に記載されているような水溶性ガラスが適切なポリマーバインダである場合がある。上記引用文献におけるそうしたガラスに関する記載を引用によって本明細書に援用する。他の用途では、次に限定されないが、合成されたポリアクリル酸、およびポリアクリルアミドや、セルロース誘導体など天然に得られる有機ポリマーなどのポリマーを含む、流体の吸収によって膨潤する物質も用いられてよい。ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ラクチドグリコリドコポリマーなどの生分解性高分子が、ポリマーバインダとして用いられてもよい。
【0041】
滅菌によって組成物を再生することが望ましい場合、選択されるポリマーバインダは滅菌条件下で安定であり、その他、意図される滅菌法に適合したものである。高温への暴露を伴う滅菌法に適切なポリマーバインダの特定の非限定的な例には、硝酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、および混合セルロースエステルが含まれる。これらのバインダを用いて調製される組成物は、既知の基準にしたがって、その調製時にオートクレーブ滅菌されることが可能である。この凝集組成物は、複数の滅菌法の組み合わせが効率的かつ効果的な再生に必要である場合、蒸気滅菌またはオートクレーブ滅菌や、酸化または還元化学種との接触による化学滅菌に対し、安定であることが可能である。滅菌に酸化または還元化学種の電気化学的な生成が含まれる一実施形態では、この組成物を電極のうちの1つとして用いることによって、該化学種の生成に必要な電位を得ることが可能である。例えば、通常の絶縁性ポリマーバインダを含有している組成物は、粒状活性炭、カーボンブラック、または金属粒子など充分に高レベルの導体粒子を含めることによって、導電性とすることが可能である。これに代えて、所望のレベルの炭素その他の粒子が絶縁性ポリマーを導電性にするには充分に高くない場合、元々導電性であるポリマーをバインダ材料に含めてもよい。
【0042】
凝集組成物における使用に適切な随意の成分には、可溶性希土類元素含有化合物、汚染除去剤、殺生物剤、吸着剤、流動補助剤、非ポリマーバインダおよび基質などのうちの1
つ以上が含まれてよい。そのような随意の成分は、組成物の意図される使途および/または所望の特性に応じて、凝集組成物に含められてよい。
【0043】
随意の可溶性希土類元素含有化合物は、様々な活性および効果を有することが可能である。例として、一部の可溶性希土類元素含有化合物は、静菌性または抗菌性の効果を有するものとして認められている。塩化セリウム、硝酸セリウム、無水硫酸セリウム、および塩化ランタンは、そのような活性を有するものとして、「セリウム、ランタン、およびタリウムの静菌活性(The Bacteriostatic Activity of Cerium, Lanthanum, and Thallium)」(バークス(Burkes)ら、Journal of Bateriology、54:417−24、1947年)に記載されている。同様に、硝酸セリウム、酢酸セリウム、硫酸セリウム、セリウムハロゲン化物、およびそれらの誘導体などの可溶性セリウム塩やシュウ酸セリウムの使用は、米国特許第4,088,754号明細書において熱傷治療における使用について記載されている。そのような記載を引用によって本明細書に援用する。他の可溶性希土類元素含有化合物は、性質が有機であるか無機であるかにかかわらず、組成物に他の望ましい特性を与える場合があるので、随意に用いられてよい。
【0044】
随意の汚染除去剤には、様々な表面から化学的汚染物質を除去するまたは除毒することの可能な物質が含まれる。適切な汚染除去剤の非限定的な例には、遷移金属およびアルカリ金属(米国特許第5,922,926号明細書に記載)、ポリ酸(米国特許出願第2005/0159307号明細書に記載)、Al、酸化アルミニウム(米国特許第5,689,038号明細書および米国特許第6,852,903号明細書に記載)、4級アンモニウム錯体(米国特許第5,859,064号明細書に記載)、ゼオライト(米国特許第6,537,382号明細書に記載)、および酵素(米国特許第7,067,294号明細書に記載)が含まれる。上記引用文献におけるそれらの汚染除去剤に関する記載を引用によって本明細書に援用する。
【0045】
殺生物剤は、随意で、溶液または気体における生物学的汚染物質を対象とするために含まれてよい。殺生物剤としての使用に適切であり得る物質には、次に限定されないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アクチノイド、ならびにそれらの誘導体および混合物が含まれる。二次殺生物剤の特定の非限定的な例には、銀、亜鉛、銅、鉄、ニッケル、マンガン、コバルト、クロム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、タリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、ヒ素、鉛、ビスマス、スカンジウム、チタン、バナジウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、カドミウム、インジウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、タリウム、トリウムなどの単体または化合物が含まれる。そのような剤の誘導体には、酢酸塩、アスコビル酸塩、安息香酸塩、炭酸塩、カルボン酸塩、クエン酸塩、ハロゲン化物、水酸化物、グルコン酸塩、乳酸塩、硝酸塩、酸化物、リン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、スルファジアジン塩、およびそれらの組み合わせが含まれる。凝集組成物が随意で酸化チタンなどのチタン含有化合物を含むとき、不溶性希土類元素含有化合物に対するチタン含有化合物の重量比は約2:1未満である。凝集組成物が随意でアルミニウム含有化合物を含むとき、不溶性希土類元素含有化合物に対するアルミニウム含有化合物の重量比は約10:1未満である。凝集組成物の成分のうちの1つ以上が焼結されるとき、組成物は、イットリウム、スカンジウム、およびユウロピウムからなる群から選択される2つ以内の元素を含有する。遷移金属、遷移金属酸化物、および遷移金属塩からなる群から選択される随意の殺生物剤を含む一実施形態では、凝集組成物は、重量で約0.01%未満の銀および銅の金属ナノ粒子の混合物を含む。
【0046】
殺生物剤としての使用に適切であり得る他の物質には、4級アンモニウム塩(米国特許第6,780,332号明細書に記載)および有機ケイ素化合物(米国特許第3,865,728号明細書に記載)など、有機剤が含まれる。生物学的汚染物質を不活性化することが知られている他の有機物およびそれらの誘導体も用いられてよい。例として、ポリ酸は、液体から生物学的汚染物質を除去する場合に効果的であると、米国特許第6,723,349号明細書に記載されている。この特許文献では、有効なポリ酸の例を記載するものとして、「M. T. in Heteropoly and Isopoly Oxometalates」(Springer Verlag、1983年)およびChemical Reviews(第98巻、第1号、pp.1−389、1998年)が参照されている。上記引用文献におけるそれらの有機殺生物剤に関する記載を引用によって本明細書に援用する。
【0047】
凝集組成物は、随意で1つ以上の流動補助剤を含んでもよい。流動補助剤は、部分的には、凝集組成物を通じたまたは凝集組成物における流体の流体力学を改良するため、凝集組成物の成分の分離を防止するため、微粒子の沈降を防止するため、また一部の場合には凝集組成物を適所に保持するために用いられる。適切な流動補助剤には、有機物および無機物の両方が含まれる。無機流動補助剤には、硫酸鉄、塩化鉄、硫酸鉄、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、ポリ塩化アルミニウム、三塩化アルミニウム、シリカ、珪藻土などが含まれる。有機流動補助剤には、ポリアクリルアミド(カチオン性、非イオン性、およびアニオン性)、EPI−DMA(エピクロルヒドリン−ジメチルアミン)、DADMAC(ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ジシアンジアミド/ホルムアルデヒドポリマー、ジシアンジアミド/アミンポリマー、天然グアーゴムなど、当技術分野において知られている有機綿状物が含まれる。存在する場合、流動補助剤は、凝集組成物の形成中に不溶性希土類元素含有化合物およびポリマーバインダと混合されてよい。これに代えて、凝集組成物および流動補助剤の粒子が、混合物の全体を通じて流動補助剤が一様に分散された物理的な混合物を与えるように混合されてもよい。さらに別の代替案では、流動補助剤が凝集組成物の上流および下流の1つ以上の異なる層に配置されてもよい。存在する場合、流動補助剤は、一般に低濃度、すなわち、凝集組成物の重量の約20%未満、一部の場合には15%未満、他の場合には10%未満の、さらに他の場合には約8%未満で用いられる。
【0048】
他の随意の成分には、イオン交換材料(合成イオン交換樹脂、活性炭、ゼオライト(合成または天然に得られる)など)、鉱物およびクレイ(ベントナイト、スメクタイト、カオリン、ドロマイト、モンモリロナイト(montmorillinite)、およびそれらの誘導体など)、金属ケイ酸塩および鉱物(リン酸塩および酸化物のクラスなど)を含む様々な無機剤が含まれてよい。特に、高濃度のリン酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化鉄、および/または酸化マンガンと、低濃度の炭酸カルシウムおよび硫酸カルシウムとを含有している鉱物組成物が適切である。これらの物質は、様々な組成の混合物を与えるように、数々の方法によって焼成および処理されてよい。
【0049】
凝集組成物の他の随意の成分には、粒子表面改質添加剤、カップリング剤、可塑剤、フィラー、発泡剤、繊維、帯電防止剤、開始剤、懸濁化剤、増感剤、潤滑剤、湿潤剤、界面活性剤、色素、染料、UV安定化剤、および懸濁化剤などの添加剤が含まれる。これらの物質の量は所望の特性を提供するために選択される。
【0050】
この凝集組成物を用いて、流体と該組成物とを接触させることによって、その水溶液または気体中の化学的および生物学的な汚染物質を除去、不活性化、または除毒することが可能である。流体処理の当業者には、凝集組成物の成分、物理的寸法、および形状は様々な用途に対し変更されてよいこと、それらの変数の変化によって流速、背圧、および一定の汚染物質を処理するための組成物の活性が変更されることが理解される。その結果、凝
集組成物の寸法、形態、および形状を、意図される使用方法に応じて相当変化させることができる。ヒ素を含有している水溶液を処理するために凝集組成物が用いられる一実施形態では、凝集組成物は、水溶液から凝集組成物のグラムあたり約50mg以上のヒ素を除去する吸着能を有する。一部の場合には、吸着能は約60mg/g以上、他の場合には約70mg/g以上である。吸着能は、部分的には、凝集組成物を調製するために用いられる不溶性希土類元素含有化合物と得られる凝集組成物との表面積に依存すると考えられる。
【0051】
凝集組成物は、混合、押出、成型、加熱、焼成、焼結、プレス、小型化、接着剤の使用、および/または当技術分野において知られている他の技術のうちの1つ以上によって、形成されてよい。凝集組成物がより大きな表面積を有することが望ましい実施形態では、焼結はあまり望ましくない。ポリマーバインダの使用によって、溶液および気体の処理における使用に充分な寸法、構造および耐久性を有する凝集組成物の生成が可能となる。ポリマーバインダと不溶性希土類元素含有化合物との組み合わせによって、処理される流体に対し有意な圧力低下を与えることなく、液体の汚染を除去する活性の上昇した凝集組成物が生成される。
【0052】
凝集組成物には、流動可能な粒子、粒状物、ビーズ、ペレット、粉体、繊維、または同様の形態が含まれてよい。そのような粒子は、約1μm以上、詳細には約5μm以上、より詳細には約10μm以上、およびさらに詳細には約25μm以上の平均粒子寸法を有してよい。他の実施形態では、この凝集物は、約0.1mm以上の、詳細には約0.5mm以上の、より詳細には約1mm以上の、さらに詳細には約2mm以上の、またさらに詳細には5.0mmを超える平均粒子寸法を有してよい。凝集組成物は、所望の粒子寸法を得るために、砕化、切断、チョップ、または粉化され、次いで篩によって分けられてよい。そのような流動可能粒子は、固定もしくは流動床または反応器、撹拌反応器、またはタンクにおいて用いられても、粒子フィルタ中に分散されても、膜、メッシュ、スクリーン、フィルタまたは他の流体透過性構造内に封入または封止されても、フィルタ基質上に堆積されてもよく、さらに、様々な用途のシート、フィルム、マット、またはモノリス(monolith)など、所望の形状へと成形されてよい。
【0053】
加えて、凝集組成物はフィルタ基質へ組み込まれてもよく、フィルタ基質上にコーティングされてもよい。フィルタ基質には、本明細書に記載のポリマーおよび非ポリマーバインダ材料や、セラミックス、金属、炭素の物質が含まれてよい。フィルタ基質は、粒子、繊維、シート、フィルム、およびそれらの組み合わせから形成されてよい。フィルタ基質の構造は用途に応じて異なるが、使用条件に適切な所望の形状および物理的寸法を有する任意の流体透過性構造が含まれてよい。非限定的な例にはメッシュ、スクリーン、フィルム、シート、チューブ、ハニカム構造、モノリス、ならびにシリンダおよびトーラスを含む様々な形状のブロックが含まれる。
【0054】
別の実施形態では、本発明は、1つ以上の汚染物質を含有している流体を処理するための凝集組成物を製造する方法を提供する。この方法は、不溶性希土類元素含有化合物をポリマーバインダと混合して混合物を形成する工程を含む。不溶性希土類元素含有化合物およびポリマーバインダ材料については、上述において詳細に記載した。より詳細な一実施形態では、不溶性希土類元素含有化合物は、不溶性セリウム含有化合物の大きな表面積の粒子、より詳細には、焼成された炭酸セリウム生成物を含む。不溶性希土類元素含有化合物と混合され得るポリマーバインダの特定の例には、ポリオレフィン、酢酸セルロース、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、PTFE、紙繊維、ガラス繊維またはビーズ、および接着剤ポリマーが含まれる。ポリマーバインダは、不溶性希土類元素含有化合物の焼結によって最終的な凝集組成物の表面積が減少することがあるので、選択される不溶性希土類元素含有化合物の焼結温度を超える融点を有しないように選択される。
【0055】
当技術分野において知られている粒子および繊維を混合するための技術および装置を用いて、成分を混合してよい。成分は、比較的均一な混合物を与えるのに充分な時間にわたり混合される。さらに、凝集組成物の全体を通じて不溶性希土類元素含有化合物がより一様に分散することを保証するために、混合物が熱処理にさらされる実施形態では、成分が加熱前に徹底的に混合されることが好適である。
【0056】
この混合物を機械的処理、化学処理、および熱処理のうちの1つ以上にさらして、不溶性希土類元素含有化合物をポリマーバインダに付着させる。機械的処理には、混合物の小型化、圧縮、プレス、混合、および押出、ならびに混合物を振動または波動にさらすことが含まれる。混合物の圧縮は、凝集組成物の所望の特性に応じて、混合の加熱前、加熱中、または加熱後に行われてよい。混合物は、所望の形状または形態へと材料を圧縮または小型化するために当技術分野において知られているプレス機、テストシリンダ、押出機その他の装置により、圧縮されてよい。圧力の大きさやそのような圧力が加えられる時間は、選択される成分、その結合特性、および凝集組成物の意図される使用に応じて異なる。限界内において、より高い圧力を加えること、および/またはより長い時間にわたり圧力を加えることによって、使用条件下において凝集組成物が劣化するまたは微粒子を生成することを防止することが意図される。化学処理には、当技術分野において知られているような化学的な変換および化学的な接着剤の使用のうちの1つ以上が含まれる。例として、ポリマーバインダの架橋を促進するために架橋剤が用いられてもよい。熱処理には、混合物を一定の高温まで加熱して、化学的および/または物理的な変換を促進することが含まれる。
【0057】
一実施形態では、混合物は、ポリマーバインダが軟化して柔軟にまたは接触に対し粘着性となる、ポリマーバインダの融点未満の温度まで加熱される。混合物は、ポリマーバインダが完全に溶融することなく不溶性希土類元素含有化合物がポリマーバインダに付着することを保証するのに充分な温度まで加熱される。具体的な温度は、選択されるポリマーバインダの組成に応じて異なる。混合物は、次いで、凝集組成物を形成するように冷却される。
【0058】
一部の実施形態では、ポリマーバインダは、繊維、粒子、繊維または粒子の凝集体、およびそれらの混合物のうちの1つ以上を含み、不溶性希土類元素含有化合物は、混合物の処理の際、ポリマーバインダの外面に付着する。不溶性希土類元素含有化合物が粒子の形態である場合、凝集組成物生成物は、ポリマーバインダの外面に付着したまたは埋め込まれた不溶性希土類元素含有粒子からなるマトリックスを含んでよい。
【0059】
随意の工程には、凝集組成物の寸法を減少させることが含まれる。寸法減少は、所望の寸法への凝集組成物の切断、砕化、粉化、および篩分のうちの1つ以上を含む、当業者に知られている技術によって行われてよい。
【0060】
以下の実施例を、本発明の特定の実施形態を示すために提供する。当業者には、以下の実施例により開示される方法は単に本発明の代表的な実施形態を表しているに過ぎないことが認められる。しかしながら、本開示に照らして、当業者には、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、記載の特定の実施形態において多くの変更がなされても、依然として同様のまたは類似の結果が得られることが認められる。
【0061】
[実施例1:粒状ポリマーバインダ]
この実施例では、Equistar社製の低密度ポリエチレンであるMicrothene(登録商標)F(FN50100)を用いて凝集物を調製した。Microthene(登録商標)Fは、超微細な球状に形成された粉体であり、平均粒子寸法が20μm、
メルトインデックスが23g/10min、溶融範囲が92.0℃〜114.5℃である。セリウム酸化物(CeO)は、HEFA Rare Earth Canada社から得た。
【0062】
物理的混合物を、組成(重量による)の異なるセリウム酸化物およびポリマーから作成した。各成分を秤量し、パドルアタッチメントセットの取り付けられたラボラトリミキサで混合し、≒160回毎分で約30分間、回転させ、均一な混合物を得た。内径約2.8575cm(1.125インチ)のCarverテストシリンダを、90℃〜100℃の異なる温度まで加熱した。4グラムのセリア/ポリマー混合物を、加温したダイへ注ぎ、ゲージ圧で約23.4MPa(3400psig)〜約68.9MPa(10000psig)の圧力まで加圧した。プレス時間は5〜20分間で変化させた。ペレットをプレス後に切断し、500μm程度の粒子が得られるように18×70メッシュの間で篩にかけた。比表面積は、製造者の定めた方法を用いて、Micromeritics社のFlowsorbII 2300の一点BET装置により測定した。
【0063】
テーブル1にはパラメータセットを詳細に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
[実施例2:粒状ポリマーバインダ]
この実施例では、 The Plastics Group of America社製の Polifil(r) RP ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)テルポリマーから凝集物を作成した。この熱可塑性樹脂は、4〜8g/10minのメルトフローおよび98.9℃のビカット軟化点を有する。
【0066】
このABSを100ミクロン未満の粒子が得られるように篩にかけ、次いで、セリウム酸化物と混合し、プレスし、実施例1の同じ手順に則して篩にかけた。テストシリンダの温度範囲を、105℃〜110℃に上昇させた。他の全てのパラメータは同じままとした。4gのペレットを次いで切断し、500μmの平均粒子寸法が得られるように18×70メッシュの間で篩にかけた。実施例1におけるのと同じようにして比表面積を決定した。
【0067】
10mgの調製した凝集物を400ppbのヒ素溶液500mlにさらすことによって、ヒ素能力を決定した。この溶液はNSF水により調製し、そのpHは7.5に調節した。500mlの溶液および10mgの物質の両方を広口のプラスチックボトルに入れられ、24時間回転させた。24時間後、凝集物をろ別し、Agilent社製のICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析)モデル番号7500CEを用いて、ヒ素濃度について分析した。各組成物について、3つの試料を調製し、試験および分析した。報告したAs能
力データは、各組成物の3つの試料の平均を表している。
【0068】
テーブル2にはパラメータセットを詳細に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
[実施例3:珪藻土を用いる粒状ポリマーバインダ]
この実施例では、実施例2のパラメータセットからの変更は、珪藻土(DE)を添加したことのみである。DEの組成は1%〜5%(重量で)の間の範囲とし、他の全てのパラメータおよび手順は同じままとした。4gのペレットを次いで切断し、500μmの平均粒子寸法が得られるように18×70メッシュの間で篩にかけた。先の実施例におけるのと同じようにして比表面積を決定した。
【0071】
テーブル3にはパラメータセットを詳細に示す。
【0072】
【表3】

【0073】
[実施例4]
実施例1〜3からの手順を、セリウム酸化物およびTicona社製の超高分子量ポリエチレンであるGUR(登録商標)2122を用いて繰り返した。この直鎖ポリオレフィンは、4.5MM g/molの分子量、80℃のビカット軟化点、および100μm程度の粒子寸法を有する。
【0074】
テストシリンダの温度を60℃〜100℃の間で変え、プレス圧力をゲージ圧で約23
.4MPa(3400psig)〜約68.9MPa(10000psig)とし、プレス時間を0.5〜5分間とした。4gのペレットを切断し、500μmの平均粒子寸法が得られるように18×70メッシュの間で篩にかけた。先の実施例におけるのと同じようにして比表面積を決定した。
【0075】
テーブル4には、この特定の実施例におけるパラメータ行列を示す。
【0076】
【表4】

【0077】
[実施例5−繊維性ポリマーバインダ]
この例では、Mini Fibers, Inc社製のShort Stuff(登録商標)ポリエチレンパルプを用いて凝集物を作成した。この繊維は高密度のフィブリル化ポリエチレンであり、125℃〜136℃の溶融範囲、0.1mm〜0.6mmの長さ、および5μmの直径を有する熱可塑性プラスチックである。セリウム酸化物は先の実施例のものと同じである。
【0078】
各成分を秤量し、ブレードアタッチメントセットの取り付けられたラボラトリミキサで混合し、≒160回毎分で約30分間、回転させ、均一な混合物を得た。内径約2.8575cm(1.125インチ)のCarverテストシリンダを、70℃〜115℃の異なる温度まで加熱した。4グラムのセリア/ポリマー混合物を、加温したダイへ注ぎ、ゲージ圧で約23.4MPa(3400psig)〜約68.9MPa(10,000psig)の圧力まで加圧した。この点において、プレス時間も30〜120秒間で変化させた。4gのペレットを切断し、500μmの最小粒子寸法が得られるように18×35メッシュの間で篩にかけた。実施例2におけるのと同じようにして比表面積およびAs性能を決定した。
【0079】
テーブル5にはパラメータセットを詳細に示す。
【0080】
【表5】

【0081】
[実施例6:珪藻土を用いる繊維性ポリマーバインダ]
この実施例では、珪藻土(DE)を添加し、実施例5におけるのと同じ材料および手順を用いて凝集物を調製した。DEの組成は1%〜5%(重量で)の間の範囲とし、バインダの組成は2%〜5%(重量で)の間の範囲とし、Carverテストシリンダの温度は70℃〜115℃とした。プレス圧力および時間については、1分間にわたってゲージ圧で約46.8MPa(6800psig)と一定に保持した。4gのペレットを切断し、500μmの最小粒子寸法が得られるように18×35メッシュの間で篩にかけた。実施例2におけるのと同じようにして比表面積およびAs性能を決定した。
【0082】
テーブル6にはパラメータセットを詳細に示す。
【0083】
【表6】

【0084】
上述において開示した特定の実施形態は例示に過ぎず、本明細書における教示の利点を有し、異なってはいても均等であることが当業者には明らかである手法により、本発明が変更および実施されてもよい。さらに、本明細書に示した構成または設計の詳細は、添付の特許請求の範囲において記載される以外、限定を意図したものではない。したがって、上述において開示した特定の実施形態が変更されてよいこと、またそのような変化はすべて本発明の範囲および精神内であると考えられることは明らかである。したがって、本明細書において求められる保護は添付の特許請求の範囲に述べる通りである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の汚染物質を含有している流体を処理するための凝集組成物であって、
不溶性希土類元素含有化合物と、
ポリマーバインダと、を含む凝集組成物。
【請求項2】
ポリマーバインダは組成物の約15重量%未満である請求項1に記載の凝集組成物。
【請求項3】
ポリマーバインダは組成物の約10重量%未満である請求項2に記載の凝集組成物。
【請求項4】
ポリマーバインダは組成物の約8重量%未満である請求項3に記載の凝集組成物。
【請求項5】
ポリマーバインダは、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマー、エラストマー性ポリマー、セルロース性ポリマー、およびガラスからなる群から選択される1つ以上のポリマーを含む、請求項1に記載の凝集組成物。
【請求項6】
ポリマーバインダは、エチレン−ビニルコポリマーと、無水不溶性希土類元素含有化合物のみからなる不溶性希土類元素含有化合物とを含む、請求項5に記載の凝集組成物。
【請求項7】
不溶性希土類元素含有化合物は、ポリマーバインダの外面に付着した粒子を含む、請求項1に記載の凝集組成物。
【請求項8】
不溶性希土類元素含有化合物は、セリウム、ランタン、およびプラセオジムのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の凝集組成物。
【請求項9】
不溶性希土類元素含有化合物は、炭酸セリウムの熱分解、シュウ酸セリウムの分解、およびセリウム塩の沈殿のうちの1つ以上に由来するセリウム含有化合物を含む、請求項7に記載の凝集組成物。
【請求項10】
不溶性希土類元素含有化合物はセリウム酸化物を含む、請求項7に記載の凝集組成物。
【請求項11】
1つ以上のセリウム酸化物と、ポリマーバインダと、随意では流動補助剤と、のみからなる、請求項10に記載の凝集組成物。
【請求項12】
不溶性希土類元素含有化合物は、約5m/g以上の平均表面積を有する粒子を含む、請求項1に記載の凝集組成物。
【請求項13】
不溶性希土類元素含有化合物は、約25m/g以上の平均表面積を有する粒子を含む、請求項12に記載の凝集組成物。
【請求項14】
約1μm以上の平均凝集寸法を有する凝集した粒子を含む、請求項1に記載の凝集組成物。
【請求項15】
水溶液から凝集組成物のグラムあたり約50mg以上のヒ素を除去する吸着能を有する、請求項1に記載の凝集組成物。
【請求項16】
水溶液から凝集組成物のグラムあたり約60mg以上のヒ素を除去する吸着能を有する、請求項16に記載の凝集組成物。
【請求項17】
水溶液から凝集組成物のグラムあたり約70mg以上のヒ素を除去する吸着能を有する
、請求項16に記載の凝集組成物。
【請求項18】
1つ以上の汚染物質を含有している流体を処理するための凝集組成物を製造する方法であって、
不溶性希土類元素含有化合物をポリマーバインダと混合して混合物を形成する工程と、
前記混合物を機械的処理、化学処理、および熱処理のうちの1つ以上にさらして、不溶性希土類元素含有化合物をポリマーバインダに付着させる工程と、を含む方法。
【請求項19】
ポリマーバインダは固体である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
機械的処理は、前記混合物の小型化、圧縮、プレス、混合、および押出、ならびに前記混合物に対する振動または波動の適用のうちの1つ以上を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
化学処理は、化学的な変換および接着剤の使用のうちの1つ以上を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
熱処理は、前記混合物を一定の温度まで加熱することを含み、前記方法は、前記混合物を冷却させ凝集組成物を形成する工程をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記温度は、ポリマーバインダが柔軟性または粘着性を示し、不溶性希土類元素含有化合物がポリマーバインダに付着する、ポリマーバインダの融点未満の温度である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
凝集組成物の切断、砕化、粉化、および篩分のうちの1つ以上によって、凝集組成物の寸法を減少させることをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
ポリマーバインダは、繊維、粒子、繊維および粒子のうちの1つ以上の凝集体、ならびにそれらの混合物のうちの1つ以上を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
不溶性希土類元素含有化合物は、約1nmより大きい平均粒子寸法を有する粒子を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
不溶性希土類元素含有化合物は、セリウム、ランタン、およびプラセオジムのうちの1つ以上を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
不溶性希土類元素含有化合物は、炭酸セリウムの熱分解、シュウ酸セリウムの分解、およびセリウム塩の沈殿のうちの1つ以上に由来するセリウム含有化合物を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
不溶性希土類元素含有化合物はセリウム酸化物を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
凝集組成物は、1つ以上のセリウム酸化物と、ポリマーバインダと、随意では流動補助剤と、のみからなる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
不溶性希土類元素含有化合物は、ポリマーバインダの外面に付着した粒子を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項32】
ポリマーバインダは、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマー、エラストマー性ポリマー、セルロース性ポリマー、およびガラスからなる群から選択される1つ以上のポリマーを
含む、請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2011−502045(P2011−502045A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532156(P2010−532156)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/081079
【国際公開番号】WO2009/058676
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(510120056)モリーコープ ミネラルズ エルエルシー (5)
【氏名又は名称原語表記】MOLYCORP MINERALS LLC
【Fターム(参考)】