説明

汚泥の処理方法

【課題】陰陽両極共にカーボン電極を用いた場合と比較し、有効塩素発生効率を上げることで汚泥の殺菌率を高め、また、極変換によるスケール除去を行うことにより安定した電解処理を可能とし、さらに、陰陽両極を白金系金属電極とした場合と比較し、電極のコストを低減することができる汚泥の処理方法を提供すること。
【解決手段】有機性汚水の活性汚泥処理に伴って発生した余剰汚泥を電解処理し、電解処理汚泥を生物反応槽に返送して生物処理する汚泥の処理方法において、陽極を白金系金属電極、陰極をカーボン電極として交互に並列して複数枚配設し、1〜50mA/cm程度の電流密度で電解処理を行うとともに、通常の電解処理時間に対して1/3以下の時間、スケール除去のための極変換を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水等の有機性汚水を活性汚泥により生物処理する施設で発生する余剰汚泥に対し、その量を電解処理により低減するようにした汚泥の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理場等の汚水処理施設に流入する有機性汚水を処理するために、生物反応槽に汚水を流入し、これを曝気、攪拌して生物処理を行う活性汚泥法が用いられている。
この下水処理場等で発生する余剰汚泥は、通常、脱水を行った後、埋立処分されているが、処分地が次第になくなりつつある。
また、汚泥処分費の高騰等の理由から、余剰汚泥に対しオゾンや高熱性細菌等を添加して汚泥を可溶化し、系内で生物処理することにより、余剰汚泥量を低減する方法が試みられており、特に、電解処理を用いる方法は、処理コストが安価な方法として注目されている。
【0003】
この電解処理を用いる方法は、通常、汚泥中に塩化ナトリウム等の塩化物と少量の酸を添加し、電気分解を行うことにより、陽極側で生成する次亜塩素酸によって汚泥を殺菌する。
さらに、殺菌された汚泥を生物反応槽に戻し、酸化分解することにより余剰汚泥量を低減するものである。
【0004】
ここで、汚泥中にはカルシウムやマグネシウム等が含まれ、電解処理を行った場合、陰極側にスケールとしてこれらが析出し、電解効率を低下させる。
その解決法として、極変換を行い、陰極側に析出していたスケールを電気的に除去するという方法がある。
極変換可能な電極としては、安価なカーボン電極や高価な白金系金属電極が使用されている。
【0005】
汚泥を電解処理する場合には、通常、陰陽両極に安価なカーボン電極が用いられているが、カーボン電極の特性として、有効塩素の発生量が少なく、また、陰極でのスケール除去の目的で極の変換を行い陽極とした場合、カーボン電極は酸化され、白金系金属電極と比較すると溶出傾向が強いため、電極寿命が極端に短くなるといった問題点があった。
また、陰陽両極に白金及びイリジウムをコーティングした極変換可能な白金系金属電極を用いた場合、有効塩素の発生量は陰陽両極に安価なカーボン電極を用いた場合と比較して増加するが、電極のコストが2〜5倍となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の汚泥の処理方法が有する問題点に鑑み、陰陽両極共にカーボン電極を用いた場合と比較し、有効塩素発生効率を上げることで汚泥の殺菌率を高め、また、極変換によるスケール除去を行うことにより安定した電解処理を可能とし、さらに、陰陽両極を白金系金属電極とした場合と比較し、電極のコストを低減することができる汚泥の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の汚泥の処理方法は、有機性汚水の活性汚泥処理に伴って発生した余剰汚泥を電解処理し、該電解処理汚泥を生物反応槽に返送して生物処理する汚泥の処理方法において、陽極を白金系金属電極、陰極をカーボン電極として交互に並列して複数枚配設し、1〜50mA/cm程度の電流密度で電解処理を行うとともに、通常の電解処理時間に対して1/3以下の時間、スケール除去のための極変換を行うことを特徴とする。
【0008】
この場合において、チタン等の金属基材に、白金とイリジウムの重量比が1:0.2〜1:2となるよう調製した混合物をコーティングして電極を形成し、該電極を白金系金属電極として使用することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の汚泥の処理方法によれば、有機性汚水の活性汚泥処理に伴って発生した余剰汚泥を電解処理し、該電解処理汚泥を生物反応槽に返送して生物処理する汚泥の処理方法において、陽極を白金系金属電極、陰極をカーボン電極として交互に並列して複数枚配設し、1〜50mA/cm程度の電流密度で電解処理を行うとともに、通常の電解処理時間に対して1/3以下の時間、スケール除去のための極変換を行うことから、通常の電解処理では、有効塩素発生効率が両極をカーボン電極とした場合と比較して1.5〜3倍程度高くなり、これにより、汚泥殺菌率を高めて、余剰汚泥発生量を両極をカーボン電極とした場合と比較して10〜40%さらに低減することができる。
また、スケールを除去する際には、短時間、陽極がカーボン電極、陰極が白金系金属電極となるよう極変換を行うことにより、スケール析出による電解効率の低下を防ぎ、安定した電解処理を行うことができる。
そして、白金系金属電極とカーボン電極を組み合わせることにより、両極を白金系金属電極とした場合と比較し、電極コストを1/2〜1/5程度に大幅に低減できるという効果を有する。
【0010】
この場合、チタン等の金属基材に、白金とイリジウムの重量比が1:0.2〜1:2となるよう調製した混合物をコーティングして電極を形成し、該電極を白金系金属電極として使用することにより、白金系金属電極の耐久性と電解処理性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の汚泥の処理方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1〜図2に、本発明の汚泥の処理方法の一実施例を示す。
この汚泥の処理方法は、有機性汚水の活性汚泥処理に伴って発生した余剰汚泥を電解処理し、該電解処理汚泥を生物反応槽に返送して生物処理する汚泥の処理方法において、陽極を白金系金属電極、陰極をカーボン電極として交互に並列して複数枚配設し、1〜50mA/cm程度の電流密度で電解処理を行うとともに、通常の電解処理時間に対して1/3以下の時間、スケール除去のための極変換を行うものである。
【0013】
下水処理場等の汚水処理施設に流入した汚水Aは、通常、生物反応槽Iで活性汚泥によって生物処理され、汚泥と処理液との混合液Bとなって最終沈殿池IIに流入し、固液分離された後、処理水Cが放流される。
一方、固液分離された汚泥の大部分は、返送汚泥Dとして生物反応槽Iに返送され、再び生物処理されるが、通常は、一部の汚泥は余剰汚泥Eとして、さらに濃縮を行った後、濃縮汚泥の形でバキューム排出したり、濃縮汚泥を脱水して脱水ケーキの状態で搬出しなければならない。
【0014】
そのため、多量の汚泥を最終処分しなければならないことから、本実施例においては、余剰汚泥Eを汚泥供給ポンプ1により、電解処理装置IIIへと導く。なお、電解処理装置IIIへと導く汚泥は、余剰汚泥Eや返送汚泥D、汚泥濃縮槽にて濃縮した汚泥を用いることも可能である。
また、このとき途中の配管において、電解処理に必要な塩化ナトリウム等の塩化物と少量の酸を含む電解液Gを電解液供給ポンプ2により供給するが、ラインミキサーや攪拌水槽を設けて余剰汚泥Eと電解液Gを混合してもよい。
【0015】
図2に示すように、電解処理装置IIIは、電解処理槽IV及び脱泡槽Vから構成される。
電解処理槽IVの内部には、複数枚の白金系金属電極11及びカーボン電極12を交互に並列に配設し、直流電源13に接続する。
直流電源13からは、通常の電解処理時は白金系金属電極11を陽極、カーボン電極12を陰極として電流を供給するが、陰極のスケール除去時には極変換を行い、カーボン電極12を陽極、白金系金属電極11を陰極とすることが可能な極変換装置を設け、タイマー等を付属する。
【0016】
電解処理槽IVの端部の堰からオーバーフローした汚泥は、隣の脱泡槽Vへと流入するが、脱泡槽Vには表面攪拌機14が設けられ、水面においてインペラの回転により汚泥スカムの破砕を行う。
また、脱泡処理した汚泥を底部から引抜いて、汚泥返送ポンプ3により、電解処理槽IVへと返送する配管が設けられている。
脱泡槽Vからオーバーフローした電解処理汚泥Fは、水処理設備の生物反応槽Iへと返送される。
この電解処理汚泥Fは、電解処理によって微生物が死滅し、微生物を構成する細胞壁や細胞膜の一部が破損して細胞内の細胞質が溶出しているため、生物反応槽Iの汚泥微生物によって徐々に低分子化され、最終的には水と炭酸ガスに分解される。
【0017】
次に、本実施例の汚泥の処理方法の作用について説明する。
余剰汚泥Eには、電解処理に必要な塩素イオンを補充する目的で、電解液供給ポンプ2により、塩化ナトリウム等の塩化物と少量の酸を含む電解液Gが供給される。
そして、余剰汚泥Eは、電解処理槽IVに流入し、白金系金属電極11及びカーボン電極12の間を通過する。
このとき、汚泥に含まれる塩素イオンが電解作用により有効塩素に転換され、次亜塩素酸の強力な酸化力によって汚泥中の微生物が殺菌される。有効塩素の形態としてpHは4〜6程度で最も強い殺菌効果を示す次亜塩素酸が製成されるため、少量の酸を添加し、pH調整するのが望ましい。
塩素イオンは塩化ナトリウムとして汚泥重量の0.2〜1%程度を添加する必要がある。添加する塩素イオンは塩化ナトリウムに限定されるものではなく、塩化カリウム等、比較的安価で水に溶解する塩化物を利用することができる。
【0018】
通常の電解処理時は、陽極に白金系金属電極11、陰極にカーボン電極12を用いる。
その際の電解処理条件を、電流密度を1〜50mA/cm程度、好ましくは5〜40mA/cm程度とし、これにより、有効塩素発生効率(単位電力・単位電解面積当たりの塩素発生量)が両極をカーボン電極とした場合と比較して、1.5〜3倍程度高くなる。
有効塩素発生効率が、両極をカーボン電極とした場合と比較して1.5〜3倍程度高くなることにより、汚泥殺菌率を高め、余剰汚泥発生量を両極をカーボン電極とした場合と比較して10〜40%低減するという効果を有する。
なお、白金系金属電極11は、チタン等を基材として、白金のコーティング重量と、イリジウムのコーティング重量比を1:0.2〜1:2とし、白金及びイリジウムを電気メッキもしくは熱処理等によりコーティングした白金系金属電極の使用が望ましい。
【0019】
余剰汚泥Eにはカルシウムやマグネシウムが含まれているが、電解処理の際、このカルシウムやマグネシウムが陰極側に引き寄せられ、電子をもらって水酸化物等のスケールとなって陰極表面に析出し、次第に蓄積していき、電解効率を低下させる。
そこで、スケールを除去する際には、陽極がカーボン電極12、陰極が白金系金属電極11となるよう極変換を行い、スケールを除去する。
このとき、陽極でのカーボン電極は、酸化され、白金系金属電極と比較すると溶出傾向が強いため、スケールを除去の目的で、ごく短時間の極変換を行う。
極変換を行ってスケール除去を行う時間は、スケール成分の濃度によって異なるが、通常の電解処理(陽極に白金系金属電極11、陰極にカーボン電極12)の1/3以下の時間にすると、炭素電極の溶出量を大幅に減少させることが可能である。例えば、カルシウム濃度1%程度の汚泥を電解処理する場合、通常の電解処理(陽極に白金系金属電極11、陰極にカーボン電極12)の時間を1時間に設定したとき、スケール除去(陽極にカーボン電極12、陰極に白金系金属電極11)の時間は、20分程度以下、好ましくは、20〜0.5分程度、より好ましくは、10〜1分程度に設定する。
また、白金系金属電極とカーボン電極を組み合わせることにより、白金系金属電極のみの場合と比較し、電極のコストを1/2〜1/5と大幅に低減することが可能となる。
【0020】
以上、本発明の汚泥の処理方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、実施例に記載した構成を適宜組み合わせるなど、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の汚泥の処理方法は、陰陽両極共にカーボン電極を用いた場合と比較し、有効塩素発生効率を上げることで汚泥の殺菌率を高め、また、極変換によるスケール除去を行うことにより安定した電解処理を可能とし、さらに、陰陽両極を白金系金属電極とした場合と比較し、電極のコストを低減するという特性を有していることから、汚泥の電解処理の用途に広く好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の汚泥の処理方法の一実施例を示すフロー図である。
【図2】同汚泥の処理方法に用いる電解処理装置の断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 汚泥供給ポンプ
2 電解液供給ポンプ
3 汚泥返送ポンプ
11 白金系金属電極
12 カーボン電極
13 直流電源
14 表面攪拌機
A 汚水
B 混合液
C 処理水
D 返送汚泥
E 余剰汚泥
F 電解処理汚泥
G 電解液
I 生物反応槽
II 最終沈殿池
III 電解処理装置
IV 電解処理槽
V 脱泡槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性汚水の活性汚泥処理に伴って発生した余剰汚泥を電解処理し、該電解処理汚泥を生物反応槽に返送して生物処理する汚泥の処理方法において、陽極を白金系金属電極、陰極をカーボン電極として交互に並列して複数枚配設し、1〜50mA/cm程度の電流密度で電解処理を行うとともに、通常の電解処理時間に対して1/3以下の時間、スケール除去のための極変換を行うことを特徴とする汚泥の処理方法。
【請求項2】
チタン等の金属基材に、白金とイリジウムの重量比が1:0.2〜1:2となるよう調製した混合物をコーティングして電極を形成し、該電極を白金系金属電極として使用することを特徴とする請求項1記載の汚泥の処理方法。

【図1】
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【図2】
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